説明

二値化回路

【課題】RFアナログ信号に直流成分が含まれていても正しく二値化する。
【解決手段】光ディスクから読み取ったRFアナログ信号をコンパレータ16でスライスレベルと比較することで二値化する。第1スライサ10はRFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値をスライスレベルとして出力し、第2スライサ12は信号列の連続したパターンの部分におけるピークレベルとボトムレベルの平均値をスライスレベルとして出力する。切替スイッチ14でスライスレベルを切り替えて出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は二値化回路に関し、特にRFアナログ信号を二値化するためのしきいレベルの設定技術に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスク装置等においては、光ディスクから読み取ったRFアナログ信号を二値化して復調する際に、スライスレベルを設けてRFアナログ信号をコンパレータで二値化する、あるいはRFアナログ信号をAD変換し、このAD値により二値化する方法が採用されている。
【0003】
RFアナログ信号には、信号源の種々の特性、例えば光ディスクの場合には光ディスク上の信号品質ムラやレーザ光量の変動、光ディスク反射率の変動などにより直流成分を有するため、RFアナログ信号にHPFをかける、あるいはRFアナログ信号のピーク値とボトム値を検出することでスライスレベルのセンター値を求めることで直流成分(DC成分)を除去している。
【0004】
特許文献1には、常にデューティ比が50%の安定した二値化出力を得るために、入力信号に正弦波成分が含まれているときは、ピークホールド回路の出力電圧とボトムホールド回路の出力電圧の平均値を、参照電圧として入力信号に含まれる直流成分の変動に追従して変動させ、入力信号に含まれる直流成分の周波数が低下して停止状態にあるときは、参照電圧を固定することが開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、入力信号のDCレベルが変化しても、DCレベルを実質的に一定に保持するために、入力信号の可変ゲイン増幅出力をピークホールド及びボトムホールドし、ピーク値とボトム値を可変ゲイン増幅器に帰還することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−135800号公報
【特許文献2】特開2000−134049号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、RFアナログ信号には、特定の信号パターンにより極端な直流成分あるいはDC偏りが生じることがあり、このような直流成分は従来の方法では除去できず、結果として正確に二値化できない問題があった。
【0008】
例えば、DVDにデータを記録する場合、光ディスク装置は、ホストコンピュータから受け取った記録データにID等付加、エラー検出コード付加、スクランブル、エラー訂正コード付加、インターリーブ、Syncコード付加等を経て、8/16変調した後に光ディスクに記録するので、ホストコンピュータから受け取った記録データが連続パターンであったとしても、実際に記録されるパターンはほぼランダムパターンになるため記録データを再生する場合にもランダムパターンとして再生されるが、稀に規則性のあるパターンになってしまう場合がある。実際に記録されるデータ列の奇数番目と偶数番目は互いに極性が逆であるため、奇数番目あるいは偶数番目のいずれかのデータ長が極端に長くなるような特定のパターンが出現すると、直流成分が大きくなってしまう。そして、直流成分が極端に大きくなってしまうと、スライスレベルもこれに追従するように変動してしまうため、正しく二値化できない問題が生じる。例えば、スライスレベルがプラス方向に変動してオフセットすると、振幅の小さい3T信号や4T信号等を検出できない。
【0009】
言い換えるならば、2つの状態をとるビット列の一方の状態(例えば1)を+1、他方の状態(例えば0)を−1としてビット列の先頭から累積した値であるDSV(Digital Sum Value)値は直流成分の大きさを表す指標として用いられるが、DSV値の絶対値が極端に大きい場合には従来のスライスレベルでは正確に二値化できない問題が生じる。
【0010】
本発明の目的は、相対的に大きな直流成分が出現するような場合であっても、RFアナログ信号を正確に二値化できる回路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、RFアナログ信号を二値化する二値化回路であって、RFアナログ信号の信号列の連続したパターンを検出する手段と、前記連続したパターンにおける前記RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値を検出し、二値化用のスライスレベルとして出力する手段とを有し、前記スライスレベルを用いて前記RFアナログ信号を二値化することを特徴とする。
【0012】
本発明の1つの実施形態では、さらに、前記RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値を検出し、二値化用の他のスライスレベルとして出力する手段と、前記スライスレベルと前記他のスライスレベルを選択的に切り替えて出力する切替手段とを有し、前記スライスレベルあるいは前記他のスライスレベルのいずれかを用いて前記RFアナログ信号を二値化する。
【0013】
また、本発明の他の実施形態では、前記切替手段は、前記RFアナログ信号のDSV値に基づいて切り替えるものであり、前記DSV値が所定の範囲内である場合に前記他のスライスレベルを出力し、前記DSV値が所定の範囲外である場合に前記スライスレベルを出力する。
【0014】
また、本発明の他の実施形態では、前記切替手段は、前記RFアナログ信号の最初の二値化の場合に前記他のスライスレベルを出力し、前記RFアナログ信号の再度の二値化の場合に前記スライスレベルを出力する。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、RFアナログ信号に大きな直流成分が含まれていて、RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値では二値化できない場合においても、二値化のためのスライスレベルを適応的に設定することで正確に二値化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態における二値化回路の回路構成図である。
【図2】第2スライサの回路構成図である。
【図3】第2スライサの動作タイミングチャートである。
【図4】リトライ時におけるスライスレベルの切替を示す説明図である。
【図5】第1スライサの回路構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面に基づき本発明の実施形態について説明する。
【0018】
図1に、本実施形態における二値化回路の回路構成を示す。DVDやBlu−ray等の光ディスクから読み取ったRFアナログ信号を二値化してデコーダに出力するための回路である。なお、光ディスクからRFアナログ信号を読み取るための光ピックアップ回路は公知であるのでその説明は省略する。また、記録データは、ID等付加、エラー検出コード付加、スクランブル、エラー訂正コード付加、インターリーブ、Syncコード付加等を経て、8/16変調(DVD)あるいは1−7PP変調(Blu−ray)されて光ディスクに記録されるものとする。
【0019】
本実施形態の二値化回路は、スライサとコンパレータ16を備え、スライサから供給されたスライスレベルを用いてコンパレータ16でRFアナログ信号を二値化する。スライサは、第1スライサ10と第2スライサ12から構成され、切替スイッチ14で第1スライサ10あるいは第2スライサ12のいずれかの出力を選択的に切り替えてコンパレータ16に出力する。なお、一般的に「スライサ」とは、入力電圧と基準電圧とを比較し、基準電圧以下を切り落として出力する回路を意味するが、本実施形態におけるスライサは、このようなスライス機能を実現するために必要な基準電圧、すなわちスライスレベルを生成する回路の意味で用いるものとする。
【0020】
第1スライサ10は、RFアナログ信号から、このRFアナログ信号を二値化するためのスライスレベル(これを第1スライスレベルとする)を生成して出力する回路であり、生成した第1スライスレベルを切替スイッチ14に出力する。第1スライサ10は、図5に示す従来と同様の構成、すなわちピーク検波回路と、ボトム検波回路と、ピーク検波回路の出力とボトム検波回路の出力を平均化する平均化回路を備え、RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値を常に検出し、これを第1スライスレベルとして出力する。
【0021】
第2スライサ12は、RFアナログ信号から第1スライスレベルと異なるスライスレベル(これを第2スライスレベルとする)を生成して出力する回路であり、生成した第2スライスレベルを切替スイッチ14に出力する。第2スライサ12は、RFアナログ信号に含まれる信号列の連続パターンにおいてのみそのピークレベルとボトムレベルの平均値を検出し、第2スライスレベルとして出力する。
【0022】
切替スイッチ14は、第1スライサ10からの第1スライスレベルと、第2スライサ12からの第2スライスレベルとを選択的に切り替えてコンパレータ16に出力する。切替スイッチ14には、プロセッサから構成される光ディスク装置のシステムコントローラで生成されるスライサ選択信号が供給される。切替スイッチ14は、システムコントローラから供給されたスライサ選択信号により、第1スライスレベルあるいは第2スライスレベルのいずれかを選択的に切り替えてコンパレータ16に出力する。
【0023】
光ディスク装置のシステムコントローラは、RFアナログ信号を二値化して得られた信号のDSV値を監視し、DSV値の絶対値が所定の範囲内であるか否かに応じてスライサ選択信号を生成し、切替スイッチ14に出力する。DSV値とは、上記したように、2つの状態をとるビット列の一方の状態(例えば1)を+1、他方の状態(例えば0)を−1としてビット列の先頭から累積した値である。システムコントローラは、DSV値の絶対値が所定の範囲内であれば第1スライスレベルを選択する信号を出力し、DSV値の絶対値が所定の範囲外であれば第2スライスレベルを選択する信号を出力する。例えば、DSV値が、
−50<DSV値<50
であれば第1スライスレベルを選択する信号を出力し、これ以外であれば第2スライスレベルを選択する信号を出力する。もちろん、システムコントローラは、DSV値が所定の範囲外である場合のみその旨の信号をスライサ選択信号として出力し、切替スイッチ14は、システムコントローラからの信号がない状態では常に第1スライスレベルを選択して出力し、システムコントローラから範囲外であることを示す信号が供給された場合に第2スライスレベルを選択して出力してもよい。
【0024】
なお、上記したDSV値の範囲は、第1スライサ10の時定数により決められるため、設計により任意に設定することが可能である。本実施形態で示している範囲は、第1スライサ10の時定数(エラーの発生しない範囲でスライスできる時定数)を3.5μSと想定し、信号列の最悪パターンとして、
3T、11T、3T、11T、3T、11T、3T、11T、・・・
の繰り返しパターンを想定した場合の設定範囲を示している。さらに詳述すると、3T−11TでDSV値は+8であるため、3T長が0.12μS、11T長が0.44μSとすると、上記パターンにおいては3.5μSでDSV値が+50に到達することになる。つまり、DSV値+50で第1スライサ10の時定数に到達し、これ以上はエラーが発生することになるため、この時点で第2スライスレベルに切り替えればよいということになる。
【0025】
また、システムコントローラは、スライサ選択信号とは別に、RFアナログ信号を二値化して得られた信号からスイッチ信号を生成して第2スライサ12に供給する。このスイッチ信号は、第2スライサ12に含まれる後述の各スイッチを切り替えるための信号である。スイッチ信号は、第2スライサ12を間欠的に動作させるための制御信号として機能する。
【0026】
コンパレータ16は、RFアナログ信号と切替スイッチ14から出力された第1スライスレベルあるいは第2スライスレベルを大小比較し、RFアナログ信号を二値化してデコーダに出力する。コンパレータ16の非反転入力端子(+)にはRFアナログ信号が供給され、反転入力端子(−)には第1スライスレベルあるいは第2スライスレベルが供給される。コンパレータ16は、RFアナログ信号と第1スライスレベルを大小比較し、あるいはRFアナログ信号と第2スライスレベルを大小比較し、大小比較結果に応じてRFアナログ信号を論理レベル「1」あるいは「0」のいずれかに二値化して出力する。コンパレータ16で二値化された信号はデコーダに出力されるとともにシステムコントローラにも供給される。システムコントローラは、この二値化信号からスイッチ信号及びスライサ選択信号を生成して切替スイッチ14あるいは第2スライサ12の動作を制御する。
【0027】
図2に、第2スライサ12の回路構成を示す。第2スライサ12は、ピーク検波回路12aと、ボトム検波回路12bとを備える。
【0028】
ピーク検波回路12aは、コンパレータComp1と、コンパレータComp1の出力に順方向接続されたダイオードD1と、ダイオードD1に直列接続されたスイッチSW2、抵抗R1、コンパレータComp2と、ダイオードD1とスイッチSW2の接続節点と接地電位GNDとの間に接続されたコンデンサC1と、コンデンサC1に並列接続されたスイッチSW1と、抵抗R1とコンパレータComp2の接続節点と接地電位GNDとの間に接続されたコンデンサC2から構成される。
【0029】
スイッチSW1及びスイッチSW2には、システムコントローラからのスイッチ信号が供給される。スイッチSW1及びスイッチSW2は、スイッチ信号に応じてオンオフ制御される。具体的には、スイッチSW1は、二値化信号において信号列の連続するパターンが出現した場合に、その連続したパターンの開始時においてのみオンし、それ以外はオフ制御される。また、スイッチSW2は、二値化信号において信号列の連続するパターンが出現した場合に、その連続したパターンが存在する期間においてオンし、それ以外はオフ制御される。連続したパターンとは、同一T(但し、Tは基準長)信号が連続して存在する場合であり、3T信号が連続する場合、あるいは4T信号が連続する場合等である。例えば信号列が、
3T、4T、6T、5T、3T、3T、5T、4T、4T、4T、6T、・・・
である場合、2つの3Tが連続した部分の開始タイミングにおいてスイッチSW1がオンし、3Tが連続した期間においてスイッチSW2がオンする。また、3つの4Tが連続した部分の開始タイミングにおいてスイッチSW1がオンし、4Tが連続した期間においてスイッチSW2がオンする。
【0030】
また、信号列が、
3T、3T、4T、4T、5T、6T、・・・
である場合、3T、3T、4T、4Tの部分が連続したパターンの部分であり、この期間においてスイッチSW2がオンする。
【0031】
さらに、信号列が、
3T、3T、5T、5T、4T、4T、3T、・・・
である場合、 3T、3T、5T、5T、4T、4Tの部分が連続したパターンの部分であり、この期間においてスイッチSW2がオンする。
【0032】
ピーク検波回路12aのコンデンサC1には、RFアナログ信号のピークレベルがホールドされる。スイッチSW1はコンデンサC1に並列に接続されており、スイッチSW1がオンするとコンデンサC1に充電された電荷は放電されるため、ピークレベルはリセットされる。スイッチSW1は、連続したパターンの開始タイミングにおいてオンするので、連続したパターンの開始タイミングにおいてコンデンサC1の蓄積電荷はリセットされ、これ以後のピークレベルが新たにコンデンサC1にホールドされる。
【0033】
また、スイッチSW2はコンパレータComp1とコンパレータComp2との間に接続されており、連続したパターンの期間においてオンするので、連続したパターンの期間においてコンデンサC1にホールドされたピークレベルがコンパレータComp2に供給される。スイッチSW2とコンパレータComp2との間には、抵抗R1とコンデンサC2からなる積分回路あるいはフィルタが接続されており、時定数C2R1でピークレベルが変動してコンパレータComp2に供給される。時定数C2R1は、光ディスクの欠陥等に反応しない程度に設定するのが望ましく、これにより光ディスクの欠陥等の影響を排除した正確なピークレベルが検出できる。
【0034】
また、ボトム検波回路12bは、コンパレータComp3と、コンパレータComp3の出力側に逆方向接続されたダイオードD2と、ダイオードD2に直列接続されたスイッチSW4、抵抗R2、コンパレータComp4と、ダイオードD2とスイッチSW4の接続節点と接地電位GNDとの間に接続されたコンデンサC3と、コンデンサC3に並列接続されたスイッチSW3と、抵抗R2とコンパレータComp4の接続節点と接地電位GNDとの間に接続されたコンデンサC4から構成される。
【0035】
スイッチSW3及びスイッチSW4には、システムコントローラからのスイッチ信号が供給される。スイッチSW3及びスイッチSW4は、スイッチ信号に応じてオンオフ制御される。具体的には、スイッチSW3は、二値化信号において連続するパターンが出現した場合に、その連続したパターンの開始時においてのみオンし、それ以外はオフ制御される。また、スイッチSW4は、二値化信号において連続するパターンが出現した場合に、その連続したパターンが存在する期間においてオンし、それ以外はオフ制御される。
【0036】
ボトム検波回路12bのコンデンサC3には、RFアナログ信号のボトムレベルがホールドされる。スイッチSW3はコンデンサC3に並列に接続されており、スイッチSW3がオンするとコンデンサC3に充電された電荷は放電されるため、ボトムレベルはリセットされる。スイッチSW3は、連続したパターンの開始タイミングにおいてオンするので、連続したパターンの開始タイミングにおいてコンデンサC3の蓄積電荷はリセットされ、これ以後のボトムレベルが新たにコンデンサC3にホールドされる。
【0037】
また、スイッチSW4はコンパレータComp3とコンパレータComp4との間に接続されており、連続したパターンの期間においてオンするので、連続したパターンの期間においてコンデンサC3にホールドされたボトムレベルがコンパレータComp4に供給される。スイッチSW4とコンパレータComp4との間には、抵抗R2とコンデンサC4からなる積分回路あるいはフィルタが接続されており、時定数C4R2でボトムレベルが変動してコンパレータComp4に供給される。時定数C4R2は、光ディスクの欠陥等に反応しない程度に設定するのが望ましく、これにより光ディスクの欠陥等の影響を排除した正確なボトムレベルが検出できる。
【0038】
ピーク検波回路12aの出力端及びボトム検波回路12bの出力端は、分圧抵抗R5及び分圧抵抗R6を介して接続され、分圧抵抗R5と分圧抵抗R6の接続節点は出力端子に接続され、この出力端子から第2スライスレベルが出力される。分圧抵抗R5,R6は同一抵抗値であり、ピークレベルとボトムレベルの平均値が第2スライスレベルとして出力される。
【0039】
図3に、第2スライサ12の動作タイミングチャートを示す。図3(a)はRFアナログ信号100の波形であり、図3(b)はスイッチSW1のタイミングチャートであり、図3(c)はスイッチSW2のタイミングチャートである。RFアナログ信号100は、3T、3T、3Tと3Tの連続したパターンが続き、その後にランダムなパターンが続いた後、4T、4Tと4Tの連続したパターンが続くものとする。この場合、3Tの連続したパターンの開始タイミングt1においてシステムコントローラからのスイッチ信号に基づいてスイッチSW1が瞬間的にオンし、所定時間経過後に直ぐにオフに戻る。また、3Tが連続したパターンの期間t1〜t2においてシステムコントローラからのスイッチ信号に基づいてスイッチSW2がオンし続ける。スイッチSW1がオンしたタイミングでコンデンサC1が放電し、このタイミングからRFアナログ信号100のピークレベル200がホールドされる。
【0040】
また、スイッチSW3はスイッチSW1と同じタイミングでオン/オフし、スイッチSW4はスイッチSW2と同じタイミングでオン/オフする。スイッチSW3がオンしたタイミグでコンデンサC3が放電し、このタイミングからRFアナログ信号100のボトムレベル300がホールドされる。4Tが連続したパターンの部分t3〜t4についても同様である。
【0041】
連続したパターンが継続する限り、スイッチSW2及びスイッチSW4はオンし続けるので、ピークレベル200及びボトムレベル300がそれぞれコンパレータComp2、Comp4から出力され、ピークレベルとボトムレベルの平均値が分圧抵抗R5,R6で生成され、第2スライスレベルとして出力端子から出力される。
【0042】
連続したパターンが途切れると、スイッチSW2及びスイッチSW4はオフとなるので、第2スライスレベルは出力されない。
【0043】
以上のように、第2スライサ12からは、RF信号の連続したパターンが存在する場合にそのピークレベルとボトムレベルの平均値が第2スライスレベルとして出力される。一方、第1スライサ10からは、連続したパターンが存在するか否かによらず、RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値が第1スライスレベルとして出力される。そして、図1に示すように、切替スイッチ14はスライサ選択信号に基づき、RFアナログ信号のDSV値が所定範囲内のときに第1スライスレベルを選択的にコンパレータ16に出力し、DSV値が所定範囲外のときに第2スライスレベルを選択的にコンパレータ16に出力するから、DSV値が所定範囲内のときに第1スライスレベルでRFアナログ信号が二値化され、DSV値が所定範囲外のときに第2スライスレベルでRFアナログ信号が二値化される。
【0044】
RFアナログ信号のDSV値が所定範囲内であるときには、RFアナログ信号の直流成分は相対的に小さいため、RFアナログ信号全体のピークレベルとボトムレベルの平均値をスライスレベルとして用いて二値化しても問題ない。一方、RFアナログ信号のDSV値が所定範囲外であるときには、RFアナログ信号の直流成分は相対的に大きいため、このようにRFアナログ信号全体のピークレベルとボトムレベルの平均値をスライスレベルとして用いたのでは信号を正しく検出することはできないが、本実施形態ではDSV値が所定範囲外のときには第1スライスレベルではなく、連続したパターンにおけるピークレベルとボトムレベルの平均値である第2スライスレベルで二値化するため、正しいスライスレベルで二値化することができる。すなわち、連続したパターンの部分では、直流成分は存在しないので(隣接する信号列は互いに極性が反対であり、信号長が等しければ互いに相殺されて直流成分はゼロとなる)、連像したパターンの部分においてピークレベルとボトムレベルの平均値を取得することで、二値化のための正確なスライスレベルを得ることができる。言い換えれば、本実施形態では、RFアナログ信号に含まれる直流成分が大きくなった場合に、これに応じて二値化のためのスライスレベルを適応的に設定することで正確な二値化を行うものである。
【0045】
なお、第2スライサ12におけるスイッチSW1、SW2、SW3、SW4のオンオフを制御するためのスイッチ信号は、システムコントローラで生成するものであり、システムコントローラで連続したパターンを検出するために一定の時間を要することから、この時間分だけRFアナログ信号を遅延させる遅延回路を第2スライサ12の前段に設けることが望ましい。
【0046】
また、本実施形態では、システムコントローラでDSV値が所定の範囲内にあるか否かによりスライサ選択信号を生成して切替スイッチ14を制御しているが、第1スライスレベルを用いてRFアナログ信号を二値化して再生できなかった場合のリトライ時に、第2スライスレベルに切り替えてリトライすることもできる。
【0047】
図4に、この場合のスライスレベルの切り替えを模式的に示す。1回目の再生において、第1スライスレベル、すなわちRFアナログ信号全体のピークレベルとボトムレベルの平均値を用いて再生する。光ディスクのアドレスn〜n+5までは再生OKであり、アドレスn+6〜n+8で再生エラーとなり、アドレスn+9〜n+13で再生OKであるとする。
【0048】
この場合、光ディスクの再生を行うリトライに移行するが、正常に再生できたアドレスn〜n+5、及びアドレスn+9〜n+13では1回目の再生時と同様に第1スライスレベルを用いて再生するが、1回目で再生エラーとなったアドレスn+6〜n+8を再生する場合には、第2スライスレベルに切り替えて再生する。すなわち、システムコントローラは、1回目の再生時に再生エラーとなったアドレスをメモリに記憶しておき、リトライ時にメモリに記憶したアドレスではスライサ選択信号を切替スイッチ14に供給して第1スライスレベル(図では「第1」と略記する)から第2スライスレベル(図では「第2」と略記する)に切り替えて二値化する。これにより、リトライ時の再生成功率を向上させることができる。
【0049】
本実施形態の二値化回路は、光ディスク装置に適用することができ、PRML方式を用いた再生にも適用することができる。PRML方式は公知であるが、簡単に説明すると連続するN時刻の再生信号と目標信号とを比較しながら、最も確からしいビット列に2値化するものである。PRML方式では、RFアナログ信号をA/Dコンバータで二値化し、イコライザを介してビタビ復号器に供給するが、システムコントローラはビタビ復号器で復号された二値化信号から連続したパターンを検出してスイッチ信号やスライサ選択信号を生成し、第2スライサ12や切替スイッチ14に供給する。切替スイッチ14からの第1スライスレベルあるいは第2スライスレベルはA/Dコンバータに供給され、A/Dコンバータでのスライスレベルが調整される。
【0050】
また、本実施形態の第2スライサ12のピーク検波回路12a及びボトム検波回路12bにはそれぞれ時定数C2R1、C4R2のフィルタが設けられ、これらの時定数により光ディスクの欠陥がスライスレベルの検出に影響しないようにしているが、これらの時定数を再生速度に応じて適応的に設定してもよい。なお、これらの時定数は、あるタイミングにおける連続したパターンのみならず、それ以前の連続したパターンのピークレベル及びボトムレベルをも考慮したスライスレベルの設定も可能としている。
【0051】
なお、本実施形態では、DSV値に基づいて第1スライスレベルと第2スライスレベルを選択して出力しているが、第1スライサ10からの第1スライスレベルが所定の範囲を逸脱した場合に、DC偏りが大きいと判断し、第2スライサ12からの第2スライスレベルに切り替えるようにしてもよい。例えば、基準となるディスクを再生しながらスライスレベルを変動させてジッタの変化を調べ、例えばジッタが10%(設計的に決められる基準であり、絶対的な数値ではない)を超えるスライス範囲を予め求めておき、求めたスライス範囲を逸脱する場合に、第2スライスレベルに切り替えるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10 第1スライサ、12 第2スライサ、14 切替スイッチ、16 コンパレータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RFアナログ信号を二値化する二値化回路であって、
RFアナログ信号の信号列の連続したパターンを検出する手段と、
前記連続したパターンにおける前記RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値を検出し、二値化用のスライスレベルとして出力する手段と、
を有し、前記スライスレベルを用いて前記RFアナログ信号を二値化することを特徴とする二値化回路。
【請求項2】
請求項1記載の二値化回路において、さらに、
前記RFアナログ信号のピークレベルとボトムレベルの平均値を検出し、二値化用の他のスライスレベルとして出力する手段と、
前記スライスレベルと前記他のスライスレベルを選択的に切り替えて出力する切替手段と、
を有し、前記スライスレベルあるいは前記他のスライスレベルのいずれかを用いて前記RFアナログ信号を二値化することを特徴とする二値化回路。
【請求項3】
請求項2記載の二値化回路において、
前記切替手段は、前記RFアナログ信号のDSV値に基づいて切り替えるものであり、前記DSV値が所定の範囲内である場合に前記他のスライスレベルを出力し、前記DSV値が所定の範囲外である場合に前記スライスレベルを出力する
ことを特徴とする二値化回路。
【請求項4】
請求項2記載の二値化回路において、
前記切替手段は、前記RFアナログ信号の最初の二値化の場合に前記他のスライスレベルを出力し、前記RFアナログ信号の再度の二値化の場合に前記スライスレベルを出力する
ことを特徴とする二値化回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−199876(P2012−199876A)
【公開日】平成24年10月18日(2012.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64049(P2011−64049)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000003676)ティアック株式会社 (339)
【Fターム(参考)】