二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法
【課題】ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージの発生を検出すること。
【解決手段】車両に搭載されている二次電池14の状態を検出する二次電池状態検出装置1において、二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段(電流センサ12)と、二次電池の電圧を検出する電圧検出手段(電圧センサ11)と、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、自車両および他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、自車両の二次電池において、電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを電流検出手段および電圧検出手段(制御部10)によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、を有する。
【解決手段】車両に搭載されている二次電池14の状態を検出する二次電池状態検出装置1において、二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段(電流センサ12)と、二次電池の電圧を検出する電圧検出手段(電圧センサ11)と、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、自車両および他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、自車両の二次電池において、電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを電流検出手段および電圧検出手段(制御部10)によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等においては、二次電池に蓄積されている電力によって動作する電気デバイスの数が増加するとともに、例えば、電動ステアリングおよび電動ブレーキ等のように走行の安全に関連するデバイスも二次電池によって駆動されるようになっている。このため、二次電池の充電状態(例えば、SOC:State of Charge)を正確に知る必要が高くなっている。
【0003】
一般的に、二次電池が安定した状態では、その開放端電圧(OCV:Open Circuit Voltage)と充電状態との間には比例関係があるので、開放端電圧を検出することで、充電状態を推定することができる。しかし、自動車等の車両の場合には、エンジン始動時に二次電池から各負荷への電力の供給があるとともに、オルタネータから二次電池への電力の供給があり、充電および放電が繰り返し発生する。充放電を行った後の蓄電池は、電気化学反応による極板表面でのイオンの生成・消滅反応、および、電解液の拡散や対流によるイオンの移動のそれぞれの影響を受けることから、開放電圧と充電状態の比例関係が成立しなくなってしまう。
【0004】
特許文献1,2には、充放電後でも、開放電圧および充電状態を正確に推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−2691号公報
【特許文献2】特開2009−300209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車等においては、二次電池の残容量が不足してエンジンの始動が困難になった場合の応急処置として、故障車の二次電池の端子と救援車の二次電池の端子をケーブルによって直接接続し、救援車からの電力の供給を受けることによってエンジンを始動する、いわゆる「ジャンプスタート」が実行される場合がある。
【0007】
このようなジャンプスタートが実行された場合、二次電池の端子同士が接続されることから、電流センサをバイパスして電流が流れる。より詳細には、故障車側では二次電池が電流センサを介さずに充電されるブラインドチャージが発生し、救援車側では電流センサを介さずに放電されるブラインドディスチャージが発生する。これらブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合、特許文献1および2に記載された技術では、分極や成層化の影響を正確に推定することができない。このため、推定される開放電圧や充電状態が誤差を含んでしまう。そこで、ブラインドチャージとブラインドディスチャージの発生を検出し、それぞれの場合において補正を行う必要があるが、従来においては、ブラインドチャージとブラインドディスチャージを検出する技術が存在しなかった。
【0008】
そこで、本発明はブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出装置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載されている二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能となる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記電流検出手段によって検出された電流の変化をΔIとし、前記電圧検出手段によって検出された電圧の変化をΔVとし、前記二次電池の内部抵抗をZとした場合に、ΔV−ΔI×Zによって得られる値の正負に応じてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる正の値または負の値にそれぞれ対応する閾値を有し、当該閾値との比較に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ノイズ等の影響を受けることなく、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が前記正または負の閾値を超えた場合、判定対象となった電圧および電流のうち、時間的に前に測定した電圧および電流を基準値として固定し、当該基準値と最新の電圧および電流によってΔVおよびΔIを求め、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が一定期間継続して前記正または負の閾値を超えた場合に、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ノイズ等の影響を受けることなく、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記自車両のエンジンが停止している場合にのみ前記ブラインドチャージの判定を行うことを特徴とする。
このような構成によれば、エンジンが動作している場合は、二次電池が上がっていることはないので、判定を停止することにより、処理の負荷を軽減することができるとともに、誤判定を防ぐことができる。
【0014】
また、他の発明は、前記判定手段は、前記ブラインドチャージが発生したと判定した場合には、前記自車両のエンジンが停止されるまでの間は、前記ブラインドディスチャージの判定を行わないことを特徴とする。
このような構成によれば、ジャンプスタートを受けた後に、バッテリ上がりを起こした車両が他の車両に対してジャンプスタートを行うことは極めて希であるので、そのような判定を停止することにより、処理の負荷を軽減することができるとともに、誤判定を防ぐことができる。
【0015】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ブラインドディスチャージが発生したと判定した場合であっても、前記変化前よりも電圧が上昇した場合には前記ブラインドチャージが発生したと判定を修正することを特徴とする。
このような構成によれば、自車両が故障車である場合に、他の車両がエンジン停止状態で二次電池同士を接続してエンジンを始動したとき、一時的に流れる電流によってブラインドディスチャージが発生したと誤判定したとしても、判定を修正することができる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージによって生じる分極現象または成層化現象の変化量を考慮して前記二次電池の状態を推定する状態検出手段を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合には、分極現象または成層化現象の変化量を考慮して二次電池の状態を正しく推定することができる。
【0017】
また、本発明は、車両に搭載されている二次電池の状態を、電流検出手段および電圧検出手段の検出結果を参照して検出する二次電池状態検出方法において、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定ステップ、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置の構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】成層化および分極の影響による二次電池の電圧の変化を示す図である。
【図4】成層化および充電分極と実容量の関係を示す図である。
【図5】車両の走行中と休止中における電圧の変化を示す図である。
【図6】故障車と救援車の二次電池同士が接続ケーブルで接続された状態を示す図である。
【図7】ブラインドチャージを検出するためのフローチャートである。
【図8】ブラインドチャージが発生したときの電圧と電流の変化を示す図である。
【図9】ブラインドディスチャージを検出するためのフローチャートである。
【図10】ブラインドディスチャージが発生したときの電圧と電流の変化を示す図である。
【図11】救援車のエンジンを停止した状態で故障車と救援車の二次電池が接続ケーブルで接続された場合の電圧と電流の変化を示す図である。
【図12】ブラインドチャージをブラインドディスチャージと誤判定した場合に判定を修正するためのフローチャートである。
【図13】救援車のエンジンを停止した状態で故障車と救援車の二次電池が接続ケーブルで接続されて救援車のエンジンが始動された場合の故障車の電圧と電流の変化を示す図である。
【図14】ブラインドチャージが発生した場合に分極補正係数と成層化補正係数を求めるためのフローチャートである。
【図15】ブラインドディスチャージが発生した場合に分極補正係数を求めるためのフローチャートである。
【図16】ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合にクランキング抵抗を廃棄するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、二次電池状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、および、放電回路15を主要な構成要素としており、二次電池14の状態を検出する。ここで、制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の状態を検出する。電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、二次電池14自体または周囲の環境温度を検出し、制御部10に通知する。放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチと抵抗素子等によって構成され、制御部10によって半導体スイッチがオン/オフ制御されることにより二次電池14を間欠的に放電させる。
【0022】
二次電池14は、例えば、正極(陽極板)に二酸化鉛、負極(陰極板)に海綿状の鉛、電解液として希硫酸を用いた、いわゆる液式鉛蓄電池によって構成され、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジンを始動するとともに、負荷19に電力を供給する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。
【0023】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、二次電池14およびオルタネータ16からの電力によって動作する。
【0024】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、通信部10d、表示部10e、I/F(Interface)10fを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10baを実行する際に生成されるパラメータ10caを格納する。通信部10dは、他の装置(例えば、図示しないECU(Engine Control Unit))等に通信線を介して接続され、他の装置との間で情報を授受する。表示部10eは、CPU10aから供給される情報を表示する、例えば、液晶ディスプレイ等によって構成される。I/F10fは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、放電回路15に駆動電流を供給してこれを制御する。
【0025】
(B)実施形態の動作の概略の説明
つぎに、図3〜5を参照して、実施形態の動作の概略について説明する。以下では、液式鉛蓄電池の分極現象および成層化現象について説明した後に本実施形態の動作の概略について説明する。まず、分極現象について説明する。分極現象には充電時に発生する充電分極と放電時に発生する放電分極とが存在する。ここで、充電分極現象とは、充電時の二次電池14の電極表面における電気化学反応の遅れなどにより電極表面のイオン密度が高くなり、二次電池14の出力電圧が高くなる現象をいう。また、放電分極現象とは、放電時に電極表面にイオン密度が低くなり、二次電池14の出力電圧が低くなる現象をいう。
【0026】
一方、成層化現象とは、放電中や充電中に電解液の上部と下部に比重差が生じ、これによって出力電圧が変化する現象をいう。具体的には、液式鉛蓄電池では、放電初期は電極の垂直方向の上部が優先的に放電されるため、電解液の上部の比重は下部よりも低くなる。つぎに充電では、放電で生成した硫酸鉛は金属鉛と硫酸に変化するので電解液中へ高濃度の硫酸が放出される。そのため、放出された硫酸は下部に向かって沈降し、電解液の上部と下部に比重差が生じる成層化が発生する。
【0027】
図3は、分極現象および成層化現象と電圧との関係を示している。図3に示すように、成層化現象および充電分極現象は、二次電池14の電圧が開放電圧よりも高くなる方向に影響し、時間とともにその影響は減少していく。また、放電分極現象は、二次電池14の電圧が開放電圧よりも低くなる方向に影響し、時間とともにその影響は減少していく。
【0028】
図4は、開放電圧と成層化および充電分極の関係を示す図である。図4の左側に示すように、二次電池14の見かけの電圧として測定される電圧は、成層化および充電分極による電圧の増加分を含んでいる。前述のように、成層化および充電分極による電圧の増加分は、時間の経過とともに減少するので、所定の時間が経過した後は、図4の右側に示すように図4の左側に比較して成層化および充電分極の部分が減少している。
【0029】
図5は、二次電池14の走行中および車両休止中における電圧変化を示している。図5では、走行中においては二次電池14の電圧は14V程度を保っているが、車両休止中においては時間の経過とともに電圧が減少し、開放電圧に近づいて行く。
【0030】
ここで、成層化および分極による電圧変化は、単なる見かけの電圧上昇であって、二次電池14の放電可能な容量とは無関係である。したがって、成層化および充電分極を含む見かけの電圧に基づいて二次電池14の開放電圧および充電率を判定すると、実際の開放電圧または充電率よりも大きい値が得られてしまう。そこで、成層化および分極による影響を除外して、正確な開放電圧および充電率を得るために、二次電池14に流れる充放電電流の積算値から分極量および成層化量を推定し、推定された分極量および成層化量に基づいて図4の実容量を示す開放電圧を求めることが従来から行われており、例えば、特許文献2等に具体的な方法が記載されている。
【0031】
ところで、二次電池14があがった場合(充電量が低下し、エンジンを始動できなくなった場合)には、他の車両の二次電池と故障車の二次電池14を接続ケーブルによって直接接続し、他の車両の二次電池から電力の供給を受けて、エンジン17を始動する、いわゆる「ジャンプスタート」が実行される場合がある。このようなジャンプスタートでは、二次電池の端子同士がケーブルによって直接接続されることから、2つの二次電池の間に流れる電流は、電流センサ12では検出されない。具体的には、故障車側では、電流センサ12に検出されない充電である「ブラインドチャージ」が発生し、一方、救援車側では電流センサ12に検出されない放電である「ブラインドディスチャージ」が発生する。なお、ジャンプスタートが実行された場合であっても、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生しない場合がある。例えば、図6に示すように、車両Aと車両Bの間でジャンプスタートを実行する場合において、接続ケーブル21が車両Aの二次電池14Aのプラス端子と車両Bの二次電池14Bのプラス端子との間に接続され、接続ケーブル22が車両Aのエンジン17A(ボディー)と車両Bの二次電池14Bのマイナス端子との間に接続されたとする。この場合、車両Aが図1に示すように二次電池14Aとボディーとの間に電流センサ12Aが配置されているときには、車両Bとの間でやりとりされる電流は、電流センサ12を経由する。このため、車両Aが故障車であっても、あるいは、救援車であってもブラインドチャージおよびブラインドディスチャージは発生しない。一方、車両Bでは、車両Aとの間でやりとりされる電流は、電流センサ12を経由しない。このため、車両Bが故障車である場合にはブラインドチャージが発生し、救援車である場合にはブラインドディスチャージが発生する。しかしながら、近年では、エンジン音を低減するために、エンジン17には樹脂製のカバーが付されている場合が多いことから、車両Bの態様で接続されることが多いため、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生する機会が多い。
【0032】
ブラインドチャージが発生すると、前述した二次電池14に流れる充放電電流の積算値に誤差が生じるため、分極量および成層化量の推定値が誤差を含んでしまう。この結果、実際の開放電圧または充電率よりも高い値が推定されてしまい、充電量に余裕があると思って二次電池14を使用すると、電池があがってしまったり、エンジン17が再始動不能になったりする場合がある。また、ブラインドディスチャージが発生した場合、分極量および成層化量による影響はブラインドチャージよりも少ないが、故障車に対して電力が供給されるので、充電率が低下してしまうことから、電池があがってしまう場合がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、後述するように二次電池14に流れる電流と電圧の変化から、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージの発生の有無を判定する。そして、これらが発生したと判定された場合には、フラグを立てて、二次電池状態検出装置1の通信部10dに接続されさている他の装置(例えば、図示せぬECU)に対してこれらの発生を通知する。また、電流積算から求めた開放電圧OCV1および電圧推移から求めたOCV2に基づいて成層化および分極による影響を排除するための補正係数の値をブラインドチャージまたはブラインドディスチャージのそれぞれの場合において調整する。さらに、ジャンプスタートの際に求めた二次電池14の内部抵抗については、他の二次電池との間で電流の授受が行われることから正確でないため廃棄する。このような処理により、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが実行された場合に、他の装置に対してこれらの発生を通知し、例えば、通常とは異なる(電力消費を抑えた)動作モードで動作させることで、電力の消費を抑えることができる。また、成層化および分極による影響を排除するための補正係数の値を調整することで、実容量を正確に知ることができる。また、二次電池14の内部抵抗を廃棄することで、正確ではないパラメータに基づいて誤った判断がなされることを防止できる。
【0034】
(C)実施形態の詳細な動作の説明
つぎに、図7〜15を参照して、本実施形態の詳細な動作について説明する。図7は、ジャンプスタートに伴うブラインドチャージの発生を検出するために、図2に示す制御部10において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図7に示す処理は、電流および電圧の変動が激しい車両の走行中においては、例えば、10ms周期で実行され、これらの変動が緩やかな停止中においては、例えば、1s周期で実行される。図7に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0035】
ステップS10では、CPU10aは、電圧センサ11および電流センサ12の出力を参照し、その時点における電圧値Vおよび電流値Iを検出する。
【0036】
ステップS11では、CPU10aは、エンジン17が停止しているか否かを判定し、エンジン17が停止している場合(ステップS11:Yes)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:No)には処理を終了する。ここで、エンジン17が動作している場合に処理を終了するのは、エンジン17が動作している場合には自車両が故障車としてブラインドチャージが発生することは想定できないからである。
【0037】
ステップS12では、CPU10aは、前回の処理で検出した電圧V1をV2に代入するとともに、ステップS10で新たに検出した電圧VをV1に代入する。また、前回の処理で検出した電流I1をI2に代入するとともに、ステップS10で新たに検出した電流IをI1に代入する。
【0038】
ステップS13では、CPU10aは、ブラインドチャージの発生を示すBC(Blind Charge)検出フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS13:Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合(ステップS13:No)にはステップS14に進む。なお、BC検出フラグは、後述するステップS16の処理においてYesと判定された場合にステップS17において“1”にされるフラグである。
【0039】
ステップS14では、CPU10aは、変数V2の値を変数Vrefに代入するとともに、変数I2の値を変数Irefに代入する。
【0040】
ステップS15では、CPU10aは、変数V1の値から変数Vrefの値を減じて得られた値を変数ΔVに代入するともに、変数I1の値から変数Irefの値を減じて得られた値を変数ΔIに代入する。
【0041】
ステップS16では、CPU10aは、ΔV−Z×ΔI>Th1が成立するか否かを判定し、成立する場合(ステップS16:Yes)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS16:No)には処理を終了する。なお、Zは二次電池14の静的内部抵抗であり、Th1は判定のための閾値である。ここで、静的内部抵抗Zとは、二次電池14が電気的に平衡な状態において測定される二次電池14の内部抵抗をいう。この静的内部抵抗は、車両が停止中において、放電回路15によって所定の周期でパルス放電が実行され、そのときの電流および電圧の変化から測定される。なお、後述するクランキング抵抗は、スタータモータ18によってエンジン17を始動する際(大電流が流れる際)に検出される電流および電圧から求められる抵抗であり、これを静的内部抵抗に対して、動的内部抵抗と称する。
【0042】
ここで、二次電池14の電圧Vと、電流Iと、内部抵抗Zとの間には、オームの法則が成り立つことから、正常時にはΔV=Z×ΔI(ΔV−Z×ΔI=0)が成立する。しかし、ブラインドチャージが発生した場合、故障車側では電流Iは検出されないにも拘わらず、救援車からの電流の供給によって電圧が上昇する。この結果、故障車側では、図8に示すように、電流が変化しない状態で、電圧が上昇する。なお、図8では、横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示し、図の中央部分でジャンプスタートが実行され(二次電池同士がケーブルで接続され)、その際に一時的にΔV−Z×ΔI>0となっている。したがって、ブラインドチャージの発生を検出するためには、ΔV−Z×ΔIが所定の閾値Th1よりも大きいことを検出すればよい。なお、閾値Th1としては、使用環境等に応じて最適な値を設定することが望ましい。
【0043】
ステップS17では、CPU10aは、BC検出フラグを“1”の状態とするとともに、BC検出フラグが“1”の状態を継続する回数をカウントするBC検出カウンタの値を1だけインクリメントする。
【0044】
ステップS18では、CPU10aは、BC検出カウンタの値が所定の閾値Th2よりも大きいか否かを判定し、大きい場合(ステップS18:Yes)にはステップS19に進み、それ以外の場合(ステップS18:No)には処理を終了する。なお、閾値Th2の具体的な値としては、例えば、“5”を用いることができる。もちろん、これ以外の値であってもよい。
【0045】
ステップS19では、CPU10aは、ブラインドチャージが発生したとの判定を確定する。また、CPU10aは、通信部10dを介して他の機器に対してブラインドチャージの発生を通知するために、ブラインドチャージ確定フラグを“1”の状態とする。これにより、他の機器はブラインドチャージの発生を知ることができるので、例えば、動作モードをブラインドチャージに対応したものに変更することで、電力の消費を抑えることができる。
【0046】
つぎに、図7の処理の具体的な動作について、図8を参照して説明する。図8に示すように、ブラインドチャージが発生する前の状態(エンジン停止状態)では、電圧Vは11.75Vと11.80Vの中間付近で一定である。このとき、BC検出フラグおよびBCカウンタは“0”の状態であるとする。このような状態では、ステップS11ではエンジン停止状態であるのでステップS12に進み変数への値の代入が実行された後、ステップS13においてBC検出フラグが“0”であるので、Yesと判定されてステップS14に進む。ステップS14では、前回の測定値であるV2がVrefに代入されるとともに、同じく前回の測定値であるI2がIrefに代入される。そして、ステップS15では前回測定値(Vref,Iref)と今回測定値(V1,I1)の差分であるΔVとΔIが計算されステップS16に進む。ステップS16では、ΔVおよびΔIの双方が0に近い値であることから、Noと判定されて処理を終了する。
【0047】
このような状態において、図8の中央付近においてジャンプスタートが実行されてブラインドチャージが発生したとすると、電圧が12.20V付近まで上昇する。この結果、V1,V2,I1,I2はそれぞれ図の中央付近に示すような値となるので、ステップS16ではYesと判定され、ステップS17に進む。ステップS17では、BC検出フラグが“1”とされるとともに、BC検出カウンタが“0”からインクリメントされて“1”となる。この結果、これ以降の処理では、ステップS13においてYesと判定されてステップS14の処理が実行されないので、VrefおよびIrefの値は、図8に示す変化前のV2およびI2の値に固定される。これにより、ΔVおよびΔIは、図8に示す変化前のV2およびI2の値と、新たな検出値であるV1,I1との差分になるので、電圧および電流が変化後の値を維持している場合にはステップS16においてYesと判定され、BC検出カウンタがインクリメントされ続ける。そして、BC検出カウンタの値がTh2よりも大きくなると、ステップS18でYesと判定され、ステップS19でブラインドチャージの発生が確定され、ブラインドチャージ確定フラグ(BC確定フラグ)が“1”の状態とされる。
【0048】
なお、以上の処理によってブラインドチャージが確定した場合、ブラインドチャージ確定フラグは、例えば、後述する図14の処理によって補正係数の値の調整が完了された場合に取り消される。
【0049】
以上の処理によれば、ΔV−Z×ΔI>Th1が成立するか否かに基づいてブラインドチャージを検出するようにしたので、ブラインドチャージを確実に検出することができる。また、Th1を適切に設定することで、ノイズ等の影響を受けにくくすることができる。
【0050】
また、以上の処理では、エンジンが始動しているときには、処理を終了するようにしたので、誤検出を防ぐとともに、処理を省略することで、CPU10aへの負荷を低減し、消費電力を減少させることができる。
【0051】
また、以上の処理では、BC検出カウンタを設けて、BC検出カウンタの値がTh2よりも大きくなった場合にブラインドチャージを確定するようにしたので、突発的なノイズの影響を避けることで、誤検出の発生を低減することができる。
【0052】
つぎに、図9を参照して、ブラインドディスチャージを検出する処理について説明する。このフローチャートの処理は、図7の場合と同様に、例えば、一定の周期で実行される。このフローチャートが開始されると、以下のステップが実行される。
【0053】
ステップS30では、CPU10aは、電圧センサ11および電流センサ12の出力を参照し、その時点における電圧値Vおよび電流値Iを検出する。
【0054】
ステップS31では、CPU10aは、図7の処理においてブラインドチャージが確定していないか判定し、ブラインドチャージが確定している場合(ステップS31:No)には処理を終了し、ブラインドチャージが未確定である場合(ステップS31:Yes)にはステップS32に進む。ここで、ブラインドチャージが確定している場合に処理を終了するのは、ブラインドチャージが確定するのは、故障車としてジャンプスタートを受けている場合であるので、そのような場合において他の故障車をジャンプスタートすることは通常はあり得ないからである。
【0055】
ステップS32では、CPU10aは、前回の処理で検出した電圧V1をV2に代入するとともに、ステップS30で新たに検出した電圧VをV1に代入する。また、前回の処理で検出した電流I1をI2に代入するとともに、ステップS30で新たに検出した電流IをI1に代入する。
【0056】
ステップS33では、CPU10aは、ブラインドディスチャージの発生を示すBD(Blind Discharge)検出フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS33:Yes)にはステップS35に進み、それ以外の場合(ステップS33:No)にはステップS34に進む。なお、BD検出フラグは、後述するステップS36の処理においてYesと判定された場合にステップS37において“1”にされるフラグである。
【0057】
ステップS34では、CPU10aは、変数V2の値を変数Vrefに代入するとともに、変数I2の値を変数Irefに代入する。
【0058】
ステップS35では、CPU10aは、変数V1の値から変数Vrefの値を減じて得られた値をΔVに代入するともに、変数I1の値から変数Irefの値を減じて得られた値をΔIに代入する。
【0059】
ステップS36では、CPU10aは、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するか否かを判定し、成立する場合(ステップS36:Yes)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS36:No)には処理を終了する。なお、Zは図7の場合と同様に静的内部抵抗である。
【0060】
ここで、ブラインドディスチャージが発生した場合、救援車側では電流Iは検出されないにも拘わらず、故障車に電流を供給するので、二次電池14の電圧が低下する。この結果、救援車側では、図10に示すように、電流が変化しない状態で、電圧が低下する。なお、図10の例では、横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示し、図の中央部分でジャンプスタートが実行され、その際に一時的にΔV−Z×ΔI<0となっている。したがって、ブラインドディスチャージの発生を検出するためには、ΔV−Z×ΔIが所定の閾値Th3よりも小さいことを検出すればよい。なお、図7の場合と同様に、閾値Th3としては、使用環境等に応じて最適な値を設定することが望ましい。
【0061】
ステップS37では、CPU10aは、BD検出フラグを“1”の状態とするとともに、BD検出フラグが“1”の状態を継続する回数をカウントするBD検出カウンタの値を1だけインクリメントする。
【0062】
ステップS38では、CPU10aは、BD検出カウンタの値が所定の閾値Th4よりも大きいか否かを判定し、大きい場合(ステップS38:Yes)にはステップS39に進み、それ以外の場合(ステップS38:No)には処理を終了する。なお、閾値Th4の具体的な値としては、例えば、“5”を用いることができる。もちろん、これ以外の値であってもよい。
【0063】
ステップS39では、CPU10aは、ブラインドディスチャージが発生したとの判定を確定する。また、CPU10aは、通信部10dを介して他の機器に対してブラインドディスチャージの発生を通知するために、ブラインドディスチャージ確定フラグ(BD確定フラグ)を“1”の状態とする。これにより、他の機器はブラインドディスチャージの発生を知ることができるので、例えば、動作モードをブラインドディスチャージに対応したものに変更することで、電力の消費を抑えることができる。
【0064】
ステップS40では、CPU10aは、変数Vrefの値を変数Vbd_fixに代入し、処理を終了する。なお、変数Vbd_fixについては、後述する図11の処理において使用する。
【0065】
なお、以上の処理によってブラインドディスチャージが確定した場合、ブラインドディスチャージ確定フラグは、例えば、後述する図15の処理によって補正係数の値の調整が完了された場合に“0”の状態にされる。
【0066】
つぎに、図9の処理の具体的な動作について、図10を参照して説明する。ブラインドディスチャージが発生する前の状態では、電圧Vは12.55Vと12.60Vの中間付近で一定である。このとき、BD検出フラグおよびBDカウンタは“0”の状態であるとする。このような状態において、図7の処理によりブラインドチャージが未確定の場合には、ステップS31においてYesと判定されるのでステップS32に進み、変数間で値の交換が行われる。ステップS33ではBD検出フラグが“0”であるので、ステップS34に進み、V2,I2がVref,Irefに代入される。そして、ステップS35では前回測定値(Vref,Iref)と今回測定値(V1,I1)の差分であるΔVとΔIが計算されてステップS36に進む。ステップS36では、ΔVおよびΔIの双方が0に近い値であることから、Noと判定されて処理を終了する。
【0067】
このような状態において、図10の中央付近においてブラインドディスチャージが発生したとすると、電圧が12.35V以下に下降する。この結果、V1,V2,I1,I2はそれぞれ図の中央付近に示すような値となるので、ステップS36ではYesと判定され、ステップS37に進む。ステップS37では、BD検出フラグが“1”とされるとともに、BD検出カウンタが“0”からインクリメントされて“1”となる。この結果、これ以降の処理では、ステップS33においてYesと判定されてステップS34の処理が実行されないので、VrefおよびIrefの値は、図10に示す変化前のV2およびI2の値に固定される。これにより、ΔVおよびΔIは、図10に示す変化前のV2およびI2の値と、新たな検出値であるV1,I1との差分になるので、電圧および電流が変化後の値を維持している場合にはステップS36においてYesと判定され、BD検出カウンタがインクリメントされ続ける。そして、BD検出カウンタの値がTh4よりも大きくなると、ステップS38でYesと判定され、ブラインドディスチャージが確定し、ステップS40でVbd_fixにVrefの値が代入される。
【0068】
以上の処理によれば、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するか否かに基づいてブラインドディスチャージを検出するようにしたので、ブラインドディスチャージを確実に検出することができる。また、Th3を適切に設定することで、ノイズ等の影響を受けにくくすることができる。
【0069】
また、故障車としてジャンプスタートを受けた後に、他の故障車をジャンプスタートさせることは非常に希であるという事実に鑑みて、ブラインドチャージが確定していない場合にのみ処理を実行するようにしたので、不要な処理を省略して、誤検出を減らすとともに、CPU10a等にかかる負担を軽減することができる。
【0070】
また、以上の処理によれば、救援車がエンジンを始動した後に、救援車と故障車の二次電池同士を接続ケーブルで接続した場合であっても、救援車におけるブラインドディスチャージの発生を検出することができる。図11は、救援車のエンジンを始動した状態で接続ケーブルを接続した場合における救援車の二次電池14の電圧および電流の変化を示す図である。この図11において、矢印で示す62.55秒のタイミングで接続ケーブルによって二次電池同士が接続されたとする。この場合、接続ケーブルによる接続がなされると、救援車の二次電池14の電圧が下降することから、ステップS36において、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するので、このような場合でも、正確にブラインドディスチャージを検出することができる。
【0071】
つぎに、図12を参照して、故障車から救援車への一時的な電源供給に起因して、故障車側でブラインドディスチャージが発生したと判定した場合に、当該判定を修正するための処理について説明する。例えば、救援車のエンジンが停止された状態で接続ケーブルが接続された後に、救援車のエンジンが始動されたとする。この場合、救援車のエンジンを始動する際に、故障車から救援車に向けて電力が一時的に供給される場合がある。そのような場合、救援車のエンジン始動後に救援車から故障車に向けて供給される電力の方が、一時的に供給される電力よりも大きいにも拘わらず、故障車ではエンジンを始動する時点の電力の供給により、前述した図9の処理によって、ブラインドディスチャージが発生したと判定してしまう。このような場合には、図12の処理によってブラインドディスチャージの判定をブラインドチャージの判定に変更することができる。なお、図12の処理は、自車両のエンジンが停止している場合に実行される。図12の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0072】
ステップS50では、CPU10aは、電流Iおよび電圧Vを検出する。
【0073】
ステップS51では、CPU10aは、図9の処理によってブラインドディスチャージが確定しているか否かを判定し、確定していると判定した場合(ステップS51:Yes)にはステップS52に進み、それ以外の場合(ステップS51:No)には処理を終了する。
【0074】
ステップS52では、CPU10aは、ブラインドディスチャージ(BD)が確定してから所定時間Th5以内であるか否かを判定し、Th5以内である場合(ステップS52:Yes)にはステップS53に進み、それ以外の場合(ステップS52:No)には処理を終了する。このステップS52の処理は、エンジン始動から所定期間以外においてブラインドディスチャージをブラインドチャージに修正する処理を行わないようにするためである。ここで、エンジンの始動に要する時間は通常は2秒程度であるので、Th5としては“2”よりも大きい所定の値を設定すればよい。
【0075】
ステップS53では、CPU10aは、V−Vbd_fix>Th6を満たすか否かを判定し、満たす場合(ステップS53:Yes)にはステップS54に進み、それ以外の場合(ステップS53:No)には処理を終了する。ここで、Vbd_fixには、図9のステップS40において、変化する前の電圧(図10のV2)が格納されている。したがって、現在の電圧Vから、変化前の電圧Vbd_fixを減算した値が所定の閾値Th6よりも大きい場合には、変化前の電圧よりも現在の電圧の方が高いことを示す。このような状態は、救援車のエンジン始動によって、救援車から故障車に向けて電力の供給が開始されることに伴う電圧の上昇であると考えられるので、その場合にはステップS54に進む。
【0076】
ステップS54では、BD確定フラグを“1”から“0”に変更するとともに、BC確定フラグを“0”から“1”に変更する。これにより、BD検出の判定を、BC検出の判定に修正する。
【0077】
つぎに、図13を参照して、図12に示す処理の具体的な動作について説明する。図13は、救援車のエンジンが停止された状態で接続ケーブルが接続された後に、救援車のエンジンが始動された場合の故障車の電圧と電流の変化を示す図である。接続ケーブルによって二次電池同士が接続された後に、図13に示す矢印の時点において救援車のエンジンが始動されると、救援車ではスタータモータに大きな電流が流れることから、故障車から救援車に電力が供給される。この結果、図13に示すように、故障車の二次電池の電圧が一時的に降下する。すると、図9に示す処理により、ブラインドディスチャージが発生したと判定される。
【0078】
その後、図12の処理が開始されると、ステップS51においてブラインドディスチャージの判定が確定していることからYesと判定され、ステップS52に進む。ステップS52では、ブラインドディスチャージの確定から所定時間Th5以内である場合にはステップS53に進む。ここで、ブラインドディスチャージの判定がなされるのは救援車のエンジンが始動される時点(スタータモータが回転開始される時点)であり、一般的に、エンジンの始動に要する時間は2秒程度である。このため、ブラインドディスチャージの確定からTh5(>2秒)以内である場合には、救援車のエンジンが始動されて救援車から故障車への電力の供給が開始されているので、図13に示すように、12V以下であった電圧が、13V以上に上昇する。このような状態になると、図12のステップS53においてYesと判定される。すなわち、図13の例では、Vbd_fixには矢印の時点の電圧が格納されており、Vは現在の電圧であるので、V−Vbd_fix>Th6を満たすため、Yesと判定されて、ステップS54に進み、BD確定フラグが“0”とされ、BC確定フラグが“1”とされる。これにより、故障車におけるブラインドディスチャージの誤判定がブラインドチャージの判定に修正される。
【0079】
以上の処理によれば、故障車において、ブラインドディスチャージが発生したと判定された場合であっても、ブラインドチャージの発生に修正することができる。
【0080】
つぎに、図14を参照して、ブラインドチャージが検出された場合に、成層化および分極による影響を除外するための補正係数の値を調整するための処理について説明する。図14の処理は、例えば、所定の周期で実行される処理である。このフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0081】
ステップS70では、CPU10aは、BC確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS70:Yes)にはステップS71に進み、それ以外の場合(ステップS70:No)には処理を終了する。
【0082】
ステップS71では、CPU10aは、電圧推移から開放電圧OCV2を求める。具体的には、図5に示すように、エンジン17が停止されると、二次電池14の電圧は時間の経過とともに徐々に低下し、開放電圧に近づいていく。このとき、ある時点における電圧の変化率mと、開放電圧との間の差の電圧dVとの間には、一定の相関関係が存在することが知られている。そこで、このような相関関係を数値化したテーブルまたは数式をRAM10cに格納しておき、ある時点における二次電池14の電圧Vと変化率mとに基づいてテーブル等を参照することで、数十時間待たなくても短時間の電圧推移からOCV2を求めることができる。
【0083】
ステップS72では、CPU10aは、電流積算によって求められ、RAM10cにパラメータ10caとして格納されている開放電圧OCV1の最終更新値を取得する。ここで、電流積算とは、二次電池14から放電または充電される電流値を常時測定し、その電流測定値を積算することで二次電池14の充電率を求める方法である。開放電圧OCV1と充電率SOC1との間には、略線形の関係が存在するので、このような関係に基づいて充電率SOC1から開放電圧OCV1を求めることができる。電流積算に基づく開放電圧OCV1および充電率SOC1の計算は、所定の時間間隔で実行され、求められた開放電圧OCV1および充電率SOC1はRAM10cにパラメータ10caとして上書きして格納される。
【0084】
ステップS73では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、分極補正係数C1rを求めるための関数f1()に適用し、分極補正係数C1rを求める。ここで、分極補正係数C1rとは、分極による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している分極量C1を、ブラインドチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドチャージが検出された場合には、例えば、C1←C1−C1r(←は変数への値の代入を示す)とされ、分極量C1が補正される。
【0085】
ここで、開放電圧OCV1は電流積算によって求められる。このため、ブラインドチャージが実行された場合、他の二次電池との間で流れる電流については、電流センサ12で検出できないため、このとき流れる電流は開放電圧OCV1には反映されない。一方、開放電圧OCV2については、電流積算とは異なる方法(詳細は後述する)で求められ、この方法では他の二次電池との間で流れる電流を含めた状態でOCV2が測定される。このため、これらの差(OCV1−OCV2)の値は、ブラインドチャージが実行された場合には、実行されない場合に比較して大きくなる。そこで、関数f1()を実現する方法の一例としては、例えば、(OCV1−OCV2)の値と分極補正係数C1rとを対応付けしたテーブルをRAM10cに予め準備し、当該テーブルに前述した差の値を適用することで、分極補正係数C1rを得ることができる。
【0086】
ステップS74では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、成層化補正係数C2rを求めるための関数f2()に適用し、成層化補正係数C2rを求める。ここで、成層化補正係数C2rとは、成層化による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している成層化量C2を、ブラインドチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドチャージが検出された場合には、例えば、C2←C2−C2rとされ、成層化量C2が補正される。なお、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の関係は前述した場合と同様であり、また、成層化補正係数C2rと(OCV1−OCV2)との対応関係を示すテーブルをRAM10cに予め準備し、当該テーブルに基づいて判断することで、成層化補正係数C2rを得ることができることも前述の場合と同様である。
【0087】
以上の処理により、分極補正係数C1rと成層化補正係数C2rとを得る。このような補正係数を用いることにより、ブラインドチャージの発生によって成層化および分極が変化した場合でも、変化前の成層化量および分極量をこれらの補正係数によって補正することで、変化後の成層化量および分極量を得ることができる。
【0088】
つぎに、図15を参照して、ブラインドディスチャージが検出された場合に、分極による影響を除外するための補正係数の値を調整するための処理について説明する。図15の処理は、例えば、所定の周期で実行される処理である。このフローチャートが開始されると以下のステップが実行される。
【0089】
ステップS80では、CPU10aは、BD確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS80:Yes)にはステップS81に進み、それ以外の場合(ステップS80:No)には処理を終了する。
【0090】
ステップS81では、CPU10aは、電圧推移から開放電圧OCV2を求める。なお、この処理は、図14のステップS71の処理と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0091】
ステップS82では、CPU10aは、電流積算によって求められ、RAM10cにパラメータ10caとして格納されている開放電圧OCV1の最終更新値を取得する。なお、この処理は、図14のステップS72の処理と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0092】
ステップS83では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、成層化補正係数C3rを求めるための関数f3()に適用し、成層化補正係数C3rを求める。ここで、成層化補正係数C3rとは、成層化による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している成層化量C2を、ブラインドディスチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドディスチャージが検出された場合には、例えば、C2←C2−C3r(←は変数への値の代入を示す)とされ、成層化量C2が補正される。関数f3()の求め方は前述したf2()の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0093】
なお、ブラインドディスチャージの場合、分極よりも成層化の方が充電率推定に与える影響が顕著であり、分極による影響は僅少であるので、図15の処理では分極補正係数については算出しなくても特に問題にならないので省略している。
【0094】
以上の処理により、成層化補正係数C3rを得る。このような補正係数を用いることにより、ブラインドディスチャージの発生によって成層化量が変化した場合でも、変化前の成層化量をこれらの補正係数によって補正することで、変化後の成層化量を得ることができる。
【0095】
つぎに、図16を参照して、クランキング抵抗Rを廃棄する処理について説明する。図15に示すフローチャートの処理は、例えば、一定の時間間隔で実行される。この図15の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0096】
ステップS90において、CPU10aは、BC確定フラグまたはBD確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS90:Yes)にはステップS91に進み、それ以外の場合(ステップS90:No)には処理を終了する。
【0097】
ステップS91では、CPU10aは、ジャンプスタート時におけるクランキング(スタータモータ18によってエンジン17を回転駆動すること)において測定され、RAM10cにパラメータ10caとして格納されているクランキング抵抗Rを廃棄する。ここで、クランキング抵抗Rとは、スタータモータ18によってエンジン17を回転駆動する際に二次電池14からスタータモータ18に流れる電流と、二次電池14の端子電圧とから求めるインピーダンスの実部成分である。すなわち、ジャンプスタートにおけるクランキングでは、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが生じるため、クランキング抵抗Rを正確に求めることができないため、このようなクランキング抵抗Rは廃棄する。このため、誤差を含むクランキング抵抗に基づいて誤った判断がされることを防止できる。
【0098】
なお、ブラインドチャージが発生した場合には、図14および図16の処理が終了した後に、BC確定フラグを“0”の状態にし、ブラインドディスチャージが発生した場合には、図14および図16の処理が終了した後に、BD確定フラグを“0”の状態にすることで、新たなブラインドチャージまたはブラインドディスチャージの発生に備えることができる。
【0099】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、式(1)に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを検出するようにしたが、これ以外の式を用いるようにしてもよい。例えば、内部抵抗ではなくコンダクタンスGを用いて、以下の式(2)に基づいて判定するようにしてもよい。
【0100】
D=ΔI−G×ΔV・・・(2)
【0101】
あるいは、静的内部抵抗Zではなく、一定の定数Kを用いて、ΔI×KとΔVとの差が変化した場合にブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定するようにしてもよい。
【0102】
また、分極量および成層化量については、ステップS73,S74,S83に示す式に基づいて補正を行うようにしたが、これ以外の式に基づいて補正を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 二次電池状態検出装置
10 制御部(判定手段、状態検出手段)
10a CPU
10b ROM
10c RAM
10d 通信部
10e 表示部
10f I/F
11 電圧センサ(電圧検出手段)
12 電流センサ(電流検出手段)
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車等においては、二次電池に蓄積されている電力によって動作する電気デバイスの数が増加するとともに、例えば、電動ステアリングおよび電動ブレーキ等のように走行の安全に関連するデバイスも二次電池によって駆動されるようになっている。このため、二次電池の充電状態(例えば、SOC:State of Charge)を正確に知る必要が高くなっている。
【0003】
一般的に、二次電池が安定した状態では、その開放端電圧(OCV:Open Circuit Voltage)と充電状態との間には比例関係があるので、開放端電圧を検出することで、充電状態を推定することができる。しかし、自動車等の車両の場合には、エンジン始動時に二次電池から各負荷への電力の供給があるとともに、オルタネータから二次電池への電力の供給があり、充電および放電が繰り返し発生する。充放電を行った後の蓄電池は、電気化学反応による極板表面でのイオンの生成・消滅反応、および、電解液の拡散や対流によるイオンの移動のそれぞれの影響を受けることから、開放電圧と充電状態の比例関係が成立しなくなってしまう。
【0004】
特許文献1,2には、充放電後でも、開放電圧および充電状態を正確に推定する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−2691号公報
【特許文献2】特開2009−300209号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、自動車等においては、二次電池の残容量が不足してエンジンの始動が困難になった場合の応急処置として、故障車の二次電池の端子と救援車の二次電池の端子をケーブルによって直接接続し、救援車からの電力の供給を受けることによってエンジンを始動する、いわゆる「ジャンプスタート」が実行される場合がある。
【0007】
このようなジャンプスタートが実行された場合、二次電池の端子同士が接続されることから、電流センサをバイパスして電流が流れる。より詳細には、故障車側では二次電池が電流センサを介さずに充電されるブラインドチャージが発生し、救援車側では電流センサを介さずに放電されるブラインドディスチャージが発生する。これらブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合、特許文献1および2に記載された技術では、分極や成層化の影響を正確に推定することができない。このため、推定される開放電圧や充電状態が誤差を含んでしまう。そこで、ブラインドチャージとブラインドディスチャージの発生を検出し、それぞれの場合において補正を行う必要があるが、従来においては、ブラインドチャージとブラインドディスチャージを検出する技術が存在しなかった。
【0008】
そこで、本発明はブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出装置方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、車両に搭載されている二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段と、前記二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能となる。
【0010】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記電流検出手段によって検出された電流の変化をΔIとし、前記電圧検出手段によって検出された電圧の変化をΔVとし、前記二次電池の内部抵抗をZとした場合に、ΔV−ΔI×Zによって得られる値の正負に応じてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0011】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる正の値または負の値にそれぞれ対応する閾値を有し、当該閾値との比較に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ノイズ等の影響を受けることなく、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0012】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が前記正または負の閾値を超えた場合、判定対象となった電圧および電流のうち、時間的に前に測定した電圧および電流を基準値として固定し、当該基準値と最新の電圧および電流によってΔVおよびΔIを求め、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が一定期間継続して前記正または負の閾値を超えた場合に、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする。
このような構成によれば、ノイズ等の影響を受けることなく、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を正確に検出することが可能となる。
【0013】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記自車両のエンジンが停止している場合にのみ前記ブラインドチャージの判定を行うことを特徴とする。
このような構成によれば、エンジンが動作している場合は、二次電池が上がっていることはないので、判定を停止することにより、処理の負荷を軽減することができるとともに、誤判定を防ぐことができる。
【0014】
また、他の発明は、前記判定手段は、前記ブラインドチャージが発生したと判定した場合には、前記自車両のエンジンが停止されるまでの間は、前記ブラインドディスチャージの判定を行わないことを特徴とする。
このような構成によれば、ジャンプスタートを受けた後に、バッテリ上がりを起こした車両が他の車両に対してジャンプスタートを行うことは極めて希であるので、そのような判定を停止することにより、処理の負荷を軽減することができるとともに、誤判定を防ぐことができる。
【0015】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記判定手段は、前記ブラインドディスチャージが発生したと判定した場合であっても、前記変化前よりも電圧が上昇した場合には前記ブラインドチャージが発生したと判定を修正することを特徴とする。
このような構成によれば、自車両が故障車である場合に、他の車両がエンジン停止状態で二次電池同士を接続してエンジンを始動したとき、一時的に流れる電流によってブラインドディスチャージが発生したと誤判定したとしても、判定を修正することができる。
【0016】
また、他の発明は、上記発明に加えて、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージによって生じる分極現象または成層化現象の変化量を考慮して前記二次電池の状態を推定する状態検出手段を有することを特徴とする。
このような構成によれば、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合には、分極現象または成層化現象の変化量を考慮して二次電池の状態を正しく推定することができる。
【0017】
また、本発明は、車両に搭載されている二次電池の状態を、電流検出手段および電圧検出手段の検出結果を参照して検出する二次電池状態検出方法において、自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定ステップ、を有することを特徴とする。
このような方法によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ブラインドチャージおよびブラインドディスチャージの発生を検出することが可能な二次電池状態検出装置および二次電池状態検出方法を提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置の構成例を示す図である。
【図2】図1の制御部の詳細な構成例を示すブロック図である。
【図3】成層化および分極の影響による二次電池の電圧の変化を示す図である。
【図4】成層化および充電分極と実容量の関係を示す図である。
【図5】車両の走行中と休止中における電圧の変化を示す図である。
【図6】故障車と救援車の二次電池同士が接続ケーブルで接続された状態を示す図である。
【図7】ブラインドチャージを検出するためのフローチャートである。
【図8】ブラインドチャージが発生したときの電圧と電流の変化を示す図である。
【図9】ブラインドディスチャージを検出するためのフローチャートである。
【図10】ブラインドディスチャージが発生したときの電圧と電流の変化を示す図である。
【図11】救援車のエンジンを停止した状態で故障車と救援車の二次電池が接続ケーブルで接続された場合の電圧と電流の変化を示す図である。
【図12】ブラインドチャージをブラインドディスチャージと誤判定した場合に判定を修正するためのフローチャートである。
【図13】救援車のエンジンを停止した状態で故障車と救援車の二次電池が接続ケーブルで接続されて救援車のエンジンが始動された場合の故障車の電圧と電流の変化を示す図である。
【図14】ブラインドチャージが発生した場合に分極補正係数と成層化補正係数を求めるためのフローチャートである。
【図15】ブラインドディスチャージが発生した場合に分極補正係数を求めるためのフローチャートである。
【図16】ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生した場合にクランキング抵抗を廃棄するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
次に、本発明の実施形態について説明する。
【0021】
(A)実施形態の構成の説明
図1は、本発明の実施形態に係る二次電池状態検出装置を有する車両の電源系統を示す図である。この図において、二次電池状態検出装置1は、制御部10、電圧センサ11、電流センサ12、温度センサ13、および、放電回路15を主要な構成要素としており、二次電池14の状態を検出する。ここで、制御部10は、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13からの出力を参照し、二次電池14の状態を検出する。電圧センサ11は、二次電池14の端子電圧を検出し、制御部10に通知する。電流センサ12は、二次電池14に流れる電流を検出し、制御部10に通知する。温度センサ13は、二次電池14自体または周囲の環境温度を検出し、制御部10に通知する。放電回路15は、例えば、直列接続された半導体スイッチと抵抗素子等によって構成され、制御部10によって半導体スイッチがオン/オフ制御されることにより二次電池14を間欠的に放電させる。
【0022】
二次電池14は、例えば、正極(陽極板)に二酸化鉛、負極(陰極板)に海綿状の鉛、電解液として希硫酸を用いた、いわゆる液式鉛蓄電池によって構成され、オルタネータ16によって充電され、スタータモータ18を駆動してエンジンを始動するとともに、負荷19に電力を供給する。オルタネータ16は、エンジン17によって駆動され、交流電力を発生して整流回路によって直流電力に変換し、二次電池14を充電する。
【0023】
エンジン17は、例えば、ガソリンエンジンおよびディーゼルエンジン等のレシプロエンジンまたはロータリーエンジン等によって構成され、スタータモータ18によって始動され、トランスミッションを介して駆動輪を駆動し車両に推進力を与えるとともに、オルタネータ16を駆動して電力を発生させる。スタータモータ18は、例えば、直流電動機によって構成され、二次電池14から供給される電力によって回転力を発生し、エンジン17を始動する。負荷19は、例えば、電動ステアリングモータ、デフォッガ、イグニッションコイル、カーオーディオ、および、カーナビゲーション等によって構成され、二次電池14およびオルタネータ16からの電力によって動作する。
【0024】
図2は、図1に示す制御部10の詳細な構成例を示す図である。この図に示すように、制御部10は、CPU(Central Processing Unit)10a、ROM(Read Only Memory)10b、RAM(Random Access Memory)10c、通信部10d、表示部10e、I/F(Interface)10fを有している。ここで、CPU10aは、ROM10bに格納されているプログラム10baに基づいて各部を制御する。ROM10bは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10ba等を格納している。RAM10cは、半導体メモリ等によって構成され、プログラム10baを実行する際に生成されるパラメータ10caを格納する。通信部10dは、他の装置(例えば、図示しないECU(Engine Control Unit))等に通信線を介して接続され、他の装置との間で情報を授受する。表示部10eは、CPU10aから供給される情報を表示する、例えば、液晶ディスプレイ等によって構成される。I/F10fは、電圧センサ11、電流センサ12、および、温度センサ13から供給される信号をデジタル信号に変換して取り込むとともに、放電回路15に駆動電流を供給してこれを制御する。
【0025】
(B)実施形態の動作の概略の説明
つぎに、図3〜5を参照して、実施形態の動作の概略について説明する。以下では、液式鉛蓄電池の分極現象および成層化現象について説明した後に本実施形態の動作の概略について説明する。まず、分極現象について説明する。分極現象には充電時に発生する充電分極と放電時に発生する放電分極とが存在する。ここで、充電分極現象とは、充電時の二次電池14の電極表面における電気化学反応の遅れなどにより電極表面のイオン密度が高くなり、二次電池14の出力電圧が高くなる現象をいう。また、放電分極現象とは、放電時に電極表面にイオン密度が低くなり、二次電池14の出力電圧が低くなる現象をいう。
【0026】
一方、成層化現象とは、放電中や充電中に電解液の上部と下部に比重差が生じ、これによって出力電圧が変化する現象をいう。具体的には、液式鉛蓄電池では、放電初期は電極の垂直方向の上部が優先的に放電されるため、電解液の上部の比重は下部よりも低くなる。つぎに充電では、放電で生成した硫酸鉛は金属鉛と硫酸に変化するので電解液中へ高濃度の硫酸が放出される。そのため、放出された硫酸は下部に向かって沈降し、電解液の上部と下部に比重差が生じる成層化が発生する。
【0027】
図3は、分極現象および成層化現象と電圧との関係を示している。図3に示すように、成層化現象および充電分極現象は、二次電池14の電圧が開放電圧よりも高くなる方向に影響し、時間とともにその影響は減少していく。また、放電分極現象は、二次電池14の電圧が開放電圧よりも低くなる方向に影響し、時間とともにその影響は減少していく。
【0028】
図4は、開放電圧と成層化および充電分極の関係を示す図である。図4の左側に示すように、二次電池14の見かけの電圧として測定される電圧は、成層化および充電分極による電圧の増加分を含んでいる。前述のように、成層化および充電分極による電圧の増加分は、時間の経過とともに減少するので、所定の時間が経過した後は、図4の右側に示すように図4の左側に比較して成層化および充電分極の部分が減少している。
【0029】
図5は、二次電池14の走行中および車両休止中における電圧変化を示している。図5では、走行中においては二次電池14の電圧は14V程度を保っているが、車両休止中においては時間の経過とともに電圧が減少し、開放電圧に近づいて行く。
【0030】
ここで、成層化および分極による電圧変化は、単なる見かけの電圧上昇であって、二次電池14の放電可能な容量とは無関係である。したがって、成層化および充電分極を含む見かけの電圧に基づいて二次電池14の開放電圧および充電率を判定すると、実際の開放電圧または充電率よりも大きい値が得られてしまう。そこで、成層化および分極による影響を除外して、正確な開放電圧および充電率を得るために、二次電池14に流れる充放電電流の積算値から分極量および成層化量を推定し、推定された分極量および成層化量に基づいて図4の実容量を示す開放電圧を求めることが従来から行われており、例えば、特許文献2等に具体的な方法が記載されている。
【0031】
ところで、二次電池14があがった場合(充電量が低下し、エンジンを始動できなくなった場合)には、他の車両の二次電池と故障車の二次電池14を接続ケーブルによって直接接続し、他の車両の二次電池から電力の供給を受けて、エンジン17を始動する、いわゆる「ジャンプスタート」が実行される場合がある。このようなジャンプスタートでは、二次電池の端子同士がケーブルによって直接接続されることから、2つの二次電池の間に流れる電流は、電流センサ12では検出されない。具体的には、故障車側では、電流センサ12に検出されない充電である「ブラインドチャージ」が発生し、一方、救援車側では電流センサ12に検出されない放電である「ブラインドディスチャージ」が発生する。なお、ジャンプスタートが実行された場合であっても、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生しない場合がある。例えば、図6に示すように、車両Aと車両Bの間でジャンプスタートを実行する場合において、接続ケーブル21が車両Aの二次電池14Aのプラス端子と車両Bの二次電池14Bのプラス端子との間に接続され、接続ケーブル22が車両Aのエンジン17A(ボディー)と車両Bの二次電池14Bのマイナス端子との間に接続されたとする。この場合、車両Aが図1に示すように二次電池14Aとボディーとの間に電流センサ12Aが配置されているときには、車両Bとの間でやりとりされる電流は、電流センサ12を経由する。このため、車両Aが故障車であっても、あるいは、救援車であってもブラインドチャージおよびブラインドディスチャージは発生しない。一方、車両Bでは、車両Aとの間でやりとりされる電流は、電流センサ12を経由しない。このため、車両Bが故障車である場合にはブラインドチャージが発生し、救援車である場合にはブラインドディスチャージが発生する。しかしながら、近年では、エンジン音を低減するために、エンジン17には樹脂製のカバーが付されている場合が多いことから、車両Bの態様で接続されることが多いため、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生する機会が多い。
【0032】
ブラインドチャージが発生すると、前述した二次電池14に流れる充放電電流の積算値に誤差が生じるため、分極量および成層化量の推定値が誤差を含んでしまう。この結果、実際の開放電圧または充電率よりも高い値が推定されてしまい、充電量に余裕があると思って二次電池14を使用すると、電池があがってしまったり、エンジン17が再始動不能になったりする場合がある。また、ブラインドディスチャージが発生した場合、分極量および成層化量による影響はブラインドチャージよりも少ないが、故障車に対して電力が供給されるので、充電率が低下してしまうことから、電池があがってしまう場合がある。
【0033】
そこで、本実施形態では、後述するように二次電池14に流れる電流と電圧の変化から、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージの発生の有無を判定する。そして、これらが発生したと判定された場合には、フラグを立てて、二次電池状態検出装置1の通信部10dに接続されさている他の装置(例えば、図示せぬECU)に対してこれらの発生を通知する。また、電流積算から求めた開放電圧OCV1および電圧推移から求めたOCV2に基づいて成層化および分極による影響を排除するための補正係数の値をブラインドチャージまたはブラインドディスチャージのそれぞれの場合において調整する。さらに、ジャンプスタートの際に求めた二次電池14の内部抵抗については、他の二次電池との間で電流の授受が行われることから正確でないため廃棄する。このような処理により、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが実行された場合に、他の装置に対してこれらの発生を通知し、例えば、通常とは異なる(電力消費を抑えた)動作モードで動作させることで、電力の消費を抑えることができる。また、成層化および分極による影響を排除するための補正係数の値を調整することで、実容量を正確に知ることができる。また、二次電池14の内部抵抗を廃棄することで、正確ではないパラメータに基づいて誤った判断がなされることを防止できる。
【0034】
(C)実施形態の詳細な動作の説明
つぎに、図7〜15を参照して、本実施形態の詳細な動作について説明する。図7は、ジャンプスタートに伴うブラインドチャージの発生を検出するために、図2に示す制御部10において実行される処理の流れを説明するためのフローチャートである。なお、図7に示す処理は、電流および電圧の変動が激しい車両の走行中においては、例えば、10ms周期で実行され、これらの変動が緩やかな停止中においては、例えば、1s周期で実行される。図7に示すフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0035】
ステップS10では、CPU10aは、電圧センサ11および電流センサ12の出力を参照し、その時点における電圧値Vおよび電流値Iを検出する。
【0036】
ステップS11では、CPU10aは、エンジン17が停止しているか否かを判定し、エンジン17が停止している場合(ステップS11:Yes)にはステップS12に進み、それ以外の場合(ステップS11:No)には処理を終了する。ここで、エンジン17が動作している場合に処理を終了するのは、エンジン17が動作している場合には自車両が故障車としてブラインドチャージが発生することは想定できないからである。
【0037】
ステップS12では、CPU10aは、前回の処理で検出した電圧V1をV2に代入するとともに、ステップS10で新たに検出した電圧VをV1に代入する。また、前回の処理で検出した電流I1をI2に代入するとともに、ステップS10で新たに検出した電流IをI1に代入する。
【0038】
ステップS13では、CPU10aは、ブラインドチャージの発生を示すBC(Blind Charge)検出フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS13:Yes)にはステップS15に進み、それ以外の場合(ステップS13:No)にはステップS14に進む。なお、BC検出フラグは、後述するステップS16の処理においてYesと判定された場合にステップS17において“1”にされるフラグである。
【0039】
ステップS14では、CPU10aは、変数V2の値を変数Vrefに代入するとともに、変数I2の値を変数Irefに代入する。
【0040】
ステップS15では、CPU10aは、変数V1の値から変数Vrefの値を減じて得られた値を変数ΔVに代入するともに、変数I1の値から変数Irefの値を減じて得られた値を変数ΔIに代入する。
【0041】
ステップS16では、CPU10aは、ΔV−Z×ΔI>Th1が成立するか否かを判定し、成立する場合(ステップS16:Yes)にはステップS17に進み、それ以外の場合(ステップS16:No)には処理を終了する。なお、Zは二次電池14の静的内部抵抗であり、Th1は判定のための閾値である。ここで、静的内部抵抗Zとは、二次電池14が電気的に平衡な状態において測定される二次電池14の内部抵抗をいう。この静的内部抵抗は、車両が停止中において、放電回路15によって所定の周期でパルス放電が実行され、そのときの電流および電圧の変化から測定される。なお、後述するクランキング抵抗は、スタータモータ18によってエンジン17を始動する際(大電流が流れる際)に検出される電流および電圧から求められる抵抗であり、これを静的内部抵抗に対して、動的内部抵抗と称する。
【0042】
ここで、二次電池14の電圧Vと、電流Iと、内部抵抗Zとの間には、オームの法則が成り立つことから、正常時にはΔV=Z×ΔI(ΔV−Z×ΔI=0)が成立する。しかし、ブラインドチャージが発生した場合、故障車側では電流Iは検出されないにも拘わらず、救援車からの電流の供給によって電圧が上昇する。この結果、故障車側では、図8に示すように、電流が変化しない状態で、電圧が上昇する。なお、図8では、横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示し、図の中央部分でジャンプスタートが実行され(二次電池同士がケーブルで接続され)、その際に一時的にΔV−Z×ΔI>0となっている。したがって、ブラインドチャージの発生を検出するためには、ΔV−Z×ΔIが所定の閾値Th1よりも大きいことを検出すればよい。なお、閾値Th1としては、使用環境等に応じて最適な値を設定することが望ましい。
【0043】
ステップS17では、CPU10aは、BC検出フラグを“1”の状態とするとともに、BC検出フラグが“1”の状態を継続する回数をカウントするBC検出カウンタの値を1だけインクリメントする。
【0044】
ステップS18では、CPU10aは、BC検出カウンタの値が所定の閾値Th2よりも大きいか否かを判定し、大きい場合(ステップS18:Yes)にはステップS19に進み、それ以外の場合(ステップS18:No)には処理を終了する。なお、閾値Th2の具体的な値としては、例えば、“5”を用いることができる。もちろん、これ以外の値であってもよい。
【0045】
ステップS19では、CPU10aは、ブラインドチャージが発生したとの判定を確定する。また、CPU10aは、通信部10dを介して他の機器に対してブラインドチャージの発生を通知するために、ブラインドチャージ確定フラグを“1”の状態とする。これにより、他の機器はブラインドチャージの発生を知ることができるので、例えば、動作モードをブラインドチャージに対応したものに変更することで、電力の消費を抑えることができる。
【0046】
つぎに、図7の処理の具体的な動作について、図8を参照して説明する。図8に示すように、ブラインドチャージが発生する前の状態(エンジン停止状態)では、電圧Vは11.75Vと11.80Vの中間付近で一定である。このとき、BC検出フラグおよびBCカウンタは“0”の状態であるとする。このような状態では、ステップS11ではエンジン停止状態であるのでステップS12に進み変数への値の代入が実行された後、ステップS13においてBC検出フラグが“0”であるので、Yesと判定されてステップS14に進む。ステップS14では、前回の測定値であるV2がVrefに代入されるとともに、同じく前回の測定値であるI2がIrefに代入される。そして、ステップS15では前回測定値(Vref,Iref)と今回測定値(V1,I1)の差分であるΔVとΔIが計算されステップS16に進む。ステップS16では、ΔVおよびΔIの双方が0に近い値であることから、Noと判定されて処理を終了する。
【0047】
このような状態において、図8の中央付近においてジャンプスタートが実行されてブラインドチャージが発生したとすると、電圧が12.20V付近まで上昇する。この結果、V1,V2,I1,I2はそれぞれ図の中央付近に示すような値となるので、ステップS16ではYesと判定され、ステップS17に進む。ステップS17では、BC検出フラグが“1”とされるとともに、BC検出カウンタが“0”からインクリメントされて“1”となる。この結果、これ以降の処理では、ステップS13においてYesと判定されてステップS14の処理が実行されないので、VrefおよびIrefの値は、図8に示す変化前のV2およびI2の値に固定される。これにより、ΔVおよびΔIは、図8に示す変化前のV2およびI2の値と、新たな検出値であるV1,I1との差分になるので、電圧および電流が変化後の値を維持している場合にはステップS16においてYesと判定され、BC検出カウンタがインクリメントされ続ける。そして、BC検出カウンタの値がTh2よりも大きくなると、ステップS18でYesと判定され、ステップS19でブラインドチャージの発生が確定され、ブラインドチャージ確定フラグ(BC確定フラグ)が“1”の状態とされる。
【0048】
なお、以上の処理によってブラインドチャージが確定した場合、ブラインドチャージ確定フラグは、例えば、後述する図14の処理によって補正係数の値の調整が完了された場合に取り消される。
【0049】
以上の処理によれば、ΔV−Z×ΔI>Th1が成立するか否かに基づいてブラインドチャージを検出するようにしたので、ブラインドチャージを確実に検出することができる。また、Th1を適切に設定することで、ノイズ等の影響を受けにくくすることができる。
【0050】
また、以上の処理では、エンジンが始動しているときには、処理を終了するようにしたので、誤検出を防ぐとともに、処理を省略することで、CPU10aへの負荷を低減し、消費電力を減少させることができる。
【0051】
また、以上の処理では、BC検出カウンタを設けて、BC検出カウンタの値がTh2よりも大きくなった場合にブラインドチャージを確定するようにしたので、突発的なノイズの影響を避けることで、誤検出の発生を低減することができる。
【0052】
つぎに、図9を参照して、ブラインドディスチャージを検出する処理について説明する。このフローチャートの処理は、図7の場合と同様に、例えば、一定の周期で実行される。このフローチャートが開始されると、以下のステップが実行される。
【0053】
ステップS30では、CPU10aは、電圧センサ11および電流センサ12の出力を参照し、その時点における電圧値Vおよび電流値Iを検出する。
【0054】
ステップS31では、CPU10aは、図7の処理においてブラインドチャージが確定していないか判定し、ブラインドチャージが確定している場合(ステップS31:No)には処理を終了し、ブラインドチャージが未確定である場合(ステップS31:Yes)にはステップS32に進む。ここで、ブラインドチャージが確定している場合に処理を終了するのは、ブラインドチャージが確定するのは、故障車としてジャンプスタートを受けている場合であるので、そのような場合において他の故障車をジャンプスタートすることは通常はあり得ないからである。
【0055】
ステップS32では、CPU10aは、前回の処理で検出した電圧V1をV2に代入するとともに、ステップS30で新たに検出した電圧VをV1に代入する。また、前回の処理で検出した電流I1をI2に代入するとともに、ステップS30で新たに検出した電流IをI1に代入する。
【0056】
ステップS33では、CPU10aは、ブラインドディスチャージの発生を示すBD(Blind Discharge)検出フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS33:Yes)にはステップS35に進み、それ以外の場合(ステップS33:No)にはステップS34に進む。なお、BD検出フラグは、後述するステップS36の処理においてYesと判定された場合にステップS37において“1”にされるフラグである。
【0057】
ステップS34では、CPU10aは、変数V2の値を変数Vrefに代入するとともに、変数I2の値を変数Irefに代入する。
【0058】
ステップS35では、CPU10aは、変数V1の値から変数Vrefの値を減じて得られた値をΔVに代入するともに、変数I1の値から変数Irefの値を減じて得られた値をΔIに代入する。
【0059】
ステップS36では、CPU10aは、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するか否かを判定し、成立する場合(ステップS36:Yes)にはステップS37に進み、それ以外の場合(ステップS36:No)には処理を終了する。なお、Zは図7の場合と同様に静的内部抵抗である。
【0060】
ここで、ブラインドディスチャージが発生した場合、救援車側では電流Iは検出されないにも拘わらず、故障車に電流を供給するので、二次電池14の電圧が低下する。この結果、救援車側では、図10に示すように、電流が変化しない状態で、電圧が低下する。なお、図10の例では、横軸は時間を示し、縦軸は電圧および電流を示し、図の中央部分でジャンプスタートが実行され、その際に一時的にΔV−Z×ΔI<0となっている。したがって、ブラインドディスチャージの発生を検出するためには、ΔV−Z×ΔIが所定の閾値Th3よりも小さいことを検出すればよい。なお、図7の場合と同様に、閾値Th3としては、使用環境等に応じて最適な値を設定することが望ましい。
【0061】
ステップS37では、CPU10aは、BD検出フラグを“1”の状態とするとともに、BD検出フラグが“1”の状態を継続する回数をカウントするBD検出カウンタの値を1だけインクリメントする。
【0062】
ステップS38では、CPU10aは、BD検出カウンタの値が所定の閾値Th4よりも大きいか否かを判定し、大きい場合(ステップS38:Yes)にはステップS39に進み、それ以外の場合(ステップS38:No)には処理を終了する。なお、閾値Th4の具体的な値としては、例えば、“5”を用いることができる。もちろん、これ以外の値であってもよい。
【0063】
ステップS39では、CPU10aは、ブラインドディスチャージが発生したとの判定を確定する。また、CPU10aは、通信部10dを介して他の機器に対してブラインドディスチャージの発生を通知するために、ブラインドディスチャージ確定フラグ(BD確定フラグ)を“1”の状態とする。これにより、他の機器はブラインドディスチャージの発生を知ることができるので、例えば、動作モードをブラインドディスチャージに対応したものに変更することで、電力の消費を抑えることができる。
【0064】
ステップS40では、CPU10aは、変数Vrefの値を変数Vbd_fixに代入し、処理を終了する。なお、変数Vbd_fixについては、後述する図11の処理において使用する。
【0065】
なお、以上の処理によってブラインドディスチャージが確定した場合、ブラインドディスチャージ確定フラグは、例えば、後述する図15の処理によって補正係数の値の調整が完了された場合に“0”の状態にされる。
【0066】
つぎに、図9の処理の具体的な動作について、図10を参照して説明する。ブラインドディスチャージが発生する前の状態では、電圧Vは12.55Vと12.60Vの中間付近で一定である。このとき、BD検出フラグおよびBDカウンタは“0”の状態であるとする。このような状態において、図7の処理によりブラインドチャージが未確定の場合には、ステップS31においてYesと判定されるのでステップS32に進み、変数間で値の交換が行われる。ステップS33ではBD検出フラグが“0”であるので、ステップS34に進み、V2,I2がVref,Irefに代入される。そして、ステップS35では前回測定値(Vref,Iref)と今回測定値(V1,I1)の差分であるΔVとΔIが計算されてステップS36に進む。ステップS36では、ΔVおよびΔIの双方が0に近い値であることから、Noと判定されて処理を終了する。
【0067】
このような状態において、図10の中央付近においてブラインドディスチャージが発生したとすると、電圧が12.35V以下に下降する。この結果、V1,V2,I1,I2はそれぞれ図の中央付近に示すような値となるので、ステップS36ではYesと判定され、ステップS37に進む。ステップS37では、BD検出フラグが“1”とされるとともに、BD検出カウンタが“0”からインクリメントされて“1”となる。この結果、これ以降の処理では、ステップS33においてYesと判定されてステップS34の処理が実行されないので、VrefおよびIrefの値は、図10に示す変化前のV2およびI2の値に固定される。これにより、ΔVおよびΔIは、図10に示す変化前のV2およびI2の値と、新たな検出値であるV1,I1との差分になるので、電圧および電流が変化後の値を維持している場合にはステップS36においてYesと判定され、BD検出カウンタがインクリメントされ続ける。そして、BD検出カウンタの値がTh4よりも大きくなると、ステップS38でYesと判定され、ブラインドディスチャージが確定し、ステップS40でVbd_fixにVrefの値が代入される。
【0068】
以上の処理によれば、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するか否かに基づいてブラインドディスチャージを検出するようにしたので、ブラインドディスチャージを確実に検出することができる。また、Th3を適切に設定することで、ノイズ等の影響を受けにくくすることができる。
【0069】
また、故障車としてジャンプスタートを受けた後に、他の故障車をジャンプスタートさせることは非常に希であるという事実に鑑みて、ブラインドチャージが確定していない場合にのみ処理を実行するようにしたので、不要な処理を省略して、誤検出を減らすとともに、CPU10a等にかかる負担を軽減することができる。
【0070】
また、以上の処理によれば、救援車がエンジンを始動した後に、救援車と故障車の二次電池同士を接続ケーブルで接続した場合であっても、救援車におけるブラインドディスチャージの発生を検出することができる。図11は、救援車のエンジンを始動した状態で接続ケーブルを接続した場合における救援車の二次電池14の電圧および電流の変化を示す図である。この図11において、矢印で示す62.55秒のタイミングで接続ケーブルによって二次電池同士が接続されたとする。この場合、接続ケーブルによる接続がなされると、救援車の二次電池14の電圧が下降することから、ステップS36において、ΔV−Z×ΔI<Th3が成立するので、このような場合でも、正確にブラインドディスチャージを検出することができる。
【0071】
つぎに、図12を参照して、故障車から救援車への一時的な電源供給に起因して、故障車側でブラインドディスチャージが発生したと判定した場合に、当該判定を修正するための処理について説明する。例えば、救援車のエンジンが停止された状態で接続ケーブルが接続された後に、救援車のエンジンが始動されたとする。この場合、救援車のエンジンを始動する際に、故障車から救援車に向けて電力が一時的に供給される場合がある。そのような場合、救援車のエンジン始動後に救援車から故障車に向けて供給される電力の方が、一時的に供給される電力よりも大きいにも拘わらず、故障車ではエンジンを始動する時点の電力の供給により、前述した図9の処理によって、ブラインドディスチャージが発生したと判定してしまう。このような場合には、図12の処理によってブラインドディスチャージの判定をブラインドチャージの判定に変更することができる。なお、図12の処理は、自車両のエンジンが停止している場合に実行される。図12の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0072】
ステップS50では、CPU10aは、電流Iおよび電圧Vを検出する。
【0073】
ステップS51では、CPU10aは、図9の処理によってブラインドディスチャージが確定しているか否かを判定し、確定していると判定した場合(ステップS51:Yes)にはステップS52に進み、それ以外の場合(ステップS51:No)には処理を終了する。
【0074】
ステップS52では、CPU10aは、ブラインドディスチャージ(BD)が確定してから所定時間Th5以内であるか否かを判定し、Th5以内である場合(ステップS52:Yes)にはステップS53に進み、それ以外の場合(ステップS52:No)には処理を終了する。このステップS52の処理は、エンジン始動から所定期間以外においてブラインドディスチャージをブラインドチャージに修正する処理を行わないようにするためである。ここで、エンジンの始動に要する時間は通常は2秒程度であるので、Th5としては“2”よりも大きい所定の値を設定すればよい。
【0075】
ステップS53では、CPU10aは、V−Vbd_fix>Th6を満たすか否かを判定し、満たす場合(ステップS53:Yes)にはステップS54に進み、それ以外の場合(ステップS53:No)には処理を終了する。ここで、Vbd_fixには、図9のステップS40において、変化する前の電圧(図10のV2)が格納されている。したがって、現在の電圧Vから、変化前の電圧Vbd_fixを減算した値が所定の閾値Th6よりも大きい場合には、変化前の電圧よりも現在の電圧の方が高いことを示す。このような状態は、救援車のエンジン始動によって、救援車から故障車に向けて電力の供給が開始されることに伴う電圧の上昇であると考えられるので、その場合にはステップS54に進む。
【0076】
ステップS54では、BD確定フラグを“1”から“0”に変更するとともに、BC確定フラグを“0”から“1”に変更する。これにより、BD検出の判定を、BC検出の判定に修正する。
【0077】
つぎに、図13を参照して、図12に示す処理の具体的な動作について説明する。図13は、救援車のエンジンが停止された状態で接続ケーブルが接続された後に、救援車のエンジンが始動された場合の故障車の電圧と電流の変化を示す図である。接続ケーブルによって二次電池同士が接続された後に、図13に示す矢印の時点において救援車のエンジンが始動されると、救援車ではスタータモータに大きな電流が流れることから、故障車から救援車に電力が供給される。この結果、図13に示すように、故障車の二次電池の電圧が一時的に降下する。すると、図9に示す処理により、ブラインドディスチャージが発生したと判定される。
【0078】
その後、図12の処理が開始されると、ステップS51においてブラインドディスチャージの判定が確定していることからYesと判定され、ステップS52に進む。ステップS52では、ブラインドディスチャージの確定から所定時間Th5以内である場合にはステップS53に進む。ここで、ブラインドディスチャージの判定がなされるのは救援車のエンジンが始動される時点(スタータモータが回転開始される時点)であり、一般的に、エンジンの始動に要する時間は2秒程度である。このため、ブラインドディスチャージの確定からTh5(>2秒)以内である場合には、救援車のエンジンが始動されて救援車から故障車への電力の供給が開始されているので、図13に示すように、12V以下であった電圧が、13V以上に上昇する。このような状態になると、図12のステップS53においてYesと判定される。すなわち、図13の例では、Vbd_fixには矢印の時点の電圧が格納されており、Vは現在の電圧であるので、V−Vbd_fix>Th6を満たすため、Yesと判定されて、ステップS54に進み、BD確定フラグが“0”とされ、BC確定フラグが“1”とされる。これにより、故障車におけるブラインドディスチャージの誤判定がブラインドチャージの判定に修正される。
【0079】
以上の処理によれば、故障車において、ブラインドディスチャージが発生したと判定された場合であっても、ブラインドチャージの発生に修正することができる。
【0080】
つぎに、図14を参照して、ブラインドチャージが検出された場合に、成層化および分極による影響を除外するための補正係数の値を調整するための処理について説明する。図14の処理は、例えば、所定の周期で実行される処理である。このフローチャートの処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0081】
ステップS70では、CPU10aは、BC確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS70:Yes)にはステップS71に進み、それ以外の場合(ステップS70:No)には処理を終了する。
【0082】
ステップS71では、CPU10aは、電圧推移から開放電圧OCV2を求める。具体的には、図5に示すように、エンジン17が停止されると、二次電池14の電圧は時間の経過とともに徐々に低下し、開放電圧に近づいていく。このとき、ある時点における電圧の変化率mと、開放電圧との間の差の電圧dVとの間には、一定の相関関係が存在することが知られている。そこで、このような相関関係を数値化したテーブルまたは数式をRAM10cに格納しておき、ある時点における二次電池14の電圧Vと変化率mとに基づいてテーブル等を参照することで、数十時間待たなくても短時間の電圧推移からOCV2を求めることができる。
【0083】
ステップS72では、CPU10aは、電流積算によって求められ、RAM10cにパラメータ10caとして格納されている開放電圧OCV1の最終更新値を取得する。ここで、電流積算とは、二次電池14から放電または充電される電流値を常時測定し、その電流測定値を積算することで二次電池14の充電率を求める方法である。開放電圧OCV1と充電率SOC1との間には、略線形の関係が存在するので、このような関係に基づいて充電率SOC1から開放電圧OCV1を求めることができる。電流積算に基づく開放電圧OCV1および充電率SOC1の計算は、所定の時間間隔で実行され、求められた開放電圧OCV1および充電率SOC1はRAM10cにパラメータ10caとして上書きして格納される。
【0084】
ステップS73では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、分極補正係数C1rを求めるための関数f1()に適用し、分極補正係数C1rを求める。ここで、分極補正係数C1rとは、分極による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している分極量C1を、ブラインドチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドチャージが検出された場合には、例えば、C1←C1−C1r(←は変数への値の代入を示す)とされ、分極量C1が補正される。
【0085】
ここで、開放電圧OCV1は電流積算によって求められる。このため、ブラインドチャージが実行された場合、他の二次電池との間で流れる電流については、電流センサ12で検出できないため、このとき流れる電流は開放電圧OCV1には反映されない。一方、開放電圧OCV2については、電流積算とは異なる方法(詳細は後述する)で求められ、この方法では他の二次電池との間で流れる電流を含めた状態でOCV2が測定される。このため、これらの差(OCV1−OCV2)の値は、ブラインドチャージが実行された場合には、実行されない場合に比較して大きくなる。そこで、関数f1()を実現する方法の一例としては、例えば、(OCV1−OCV2)の値と分極補正係数C1rとを対応付けしたテーブルをRAM10cに予め準備し、当該テーブルに前述した差の値を適用することで、分極補正係数C1rを得ることができる。
【0086】
ステップS74では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、成層化補正係数C2rを求めるための関数f2()に適用し、成層化補正係数C2rを求める。ここで、成層化補正係数C2rとは、成層化による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している成層化量C2を、ブラインドチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドチャージが検出された場合には、例えば、C2←C2−C2rとされ、成層化量C2が補正される。なお、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の関係は前述した場合と同様であり、また、成層化補正係数C2rと(OCV1−OCV2)との対応関係を示すテーブルをRAM10cに予め準備し、当該テーブルに基づいて判断することで、成層化補正係数C2rを得ることができることも前述の場合と同様である。
【0087】
以上の処理により、分極補正係数C1rと成層化補正係数C2rとを得る。このような補正係数を用いることにより、ブラインドチャージの発生によって成層化および分極が変化した場合でも、変化前の成層化量および分極量をこれらの補正係数によって補正することで、変化後の成層化量および分極量を得ることができる。
【0088】
つぎに、図15を参照して、ブラインドディスチャージが検出された場合に、分極による影響を除外するための補正係数の値を調整するための処理について説明する。図15の処理は、例えば、所定の周期で実行される処理である。このフローチャートが開始されると以下のステップが実行される。
【0089】
ステップS80では、CPU10aは、BD確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS80:Yes)にはステップS81に進み、それ以外の場合(ステップS80:No)には処理を終了する。
【0090】
ステップS81では、CPU10aは、電圧推移から開放電圧OCV2を求める。なお、この処理は、図14のステップS71の処理と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0091】
ステップS82では、CPU10aは、電流積算によって求められ、RAM10cにパラメータ10caとして格納されている開放電圧OCV1の最終更新値を取得する。なお、この処理は、図14のステップS72の処理と同様であるので詳細な説明は省略する。
【0092】
ステップS83では、CPU10aは、開放電圧OCV1と開放電圧OCV2の差(OCV1−OCV2)を、成層化補正係数C3rを求めるための関数f3()に適用し、成層化補正係数C3rを求める。ここで、成層化補正係数C3rとは、成層化による誤差を除外するために制御部10が推測値として有している成層化量C2を、ブラインドディスチャージの検出に応じて補正するための係数である。具体的には、ブラインドディスチャージが検出された場合には、例えば、C2←C2−C3r(←は変数への値の代入を示す)とされ、成層化量C2が補正される。関数f3()の求め方は前述したf2()の場合と同様であるのでその説明は省略する。
【0093】
なお、ブラインドディスチャージの場合、分極よりも成層化の方が充電率推定に与える影響が顕著であり、分極による影響は僅少であるので、図15の処理では分極補正係数については算出しなくても特に問題にならないので省略している。
【0094】
以上の処理により、成層化補正係数C3rを得る。このような補正係数を用いることにより、ブラインドディスチャージの発生によって成層化量が変化した場合でも、変化前の成層化量をこれらの補正係数によって補正することで、変化後の成層化量を得ることができる。
【0095】
つぎに、図16を参照して、クランキング抵抗Rを廃棄する処理について説明する。図15に示すフローチャートの処理は、例えば、一定の時間間隔で実行される。この図15の処理が開始されると、以下のステップが実行される。
【0096】
ステップS90において、CPU10aは、BC確定フラグまたはBD確定フラグが“1”であるか否かを判定し、“1”である場合(ステップS90:Yes)にはステップS91に進み、それ以外の場合(ステップS90:No)には処理を終了する。
【0097】
ステップS91では、CPU10aは、ジャンプスタート時におけるクランキング(スタータモータ18によってエンジン17を回転駆動すること)において測定され、RAM10cにパラメータ10caとして格納されているクランキング抵抗Rを廃棄する。ここで、クランキング抵抗Rとは、スタータモータ18によってエンジン17を回転駆動する際に二次電池14からスタータモータ18に流れる電流と、二次電池14の端子電圧とから求めるインピーダンスの実部成分である。すなわち、ジャンプスタートにおけるクランキングでは、ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが生じるため、クランキング抵抗Rを正確に求めることができないため、このようなクランキング抵抗Rは廃棄する。このため、誤差を含むクランキング抵抗に基づいて誤った判断がされることを防止できる。
【0098】
なお、ブラインドチャージが発生した場合には、図14および図16の処理が終了した後に、BC確定フラグを“0”の状態にし、ブラインドディスチャージが発生した場合には、図14および図16の処理が終了した後に、BD確定フラグを“0”の状態にすることで、新たなブラインドチャージまたはブラインドディスチャージの発生に備えることができる。
【0099】
(D)変形実施形態の説明
以上の実施形態は一例であって、本発明が上述したような場合のみに限定されるものでないことはいうまでもない。例えば、以上の実施形態では、式(1)に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを検出するようにしたが、これ以外の式を用いるようにしてもよい。例えば、内部抵抗ではなくコンダクタンスGを用いて、以下の式(2)に基づいて判定するようにしてもよい。
【0100】
D=ΔI−G×ΔV・・・(2)
【0101】
あるいは、静的内部抵抗Zではなく、一定の定数Kを用いて、ΔI×KとΔVとの差が変化した場合にブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定するようにしてもよい。
【0102】
また、分極量および成層化量については、ステップS73,S74,S83に示す式に基づいて補正を行うようにしたが、これ以外の式に基づいて補正を行うようにしてもよい。
【符号の説明】
【0103】
1 二次電池状態検出装置
10 制御部(判定手段、状態検出手段)
10a CPU
10b ROM
10c RAM
10d 通信部
10e 表示部
10f I/F
11 電圧センサ(電圧検出手段)
12 電流センサ(電流検出手段)
13 温度センサ
14 二次電池
15 放電回路
16 オルタネータ
17 エンジン
18 スタータモータ
19 負荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されている二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、
前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、
を有することを特徴とする二次電池状態検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記電流検出手段によって検出された電流の変化をΔIとし、前記電圧検出手段によって検出された電圧の変化をΔVとし、前記二次電池の内部抵抗をZとした場合に、ΔV−ΔI×Zによって得られる値の正負に応じてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを判定することを特徴とする請求項1に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる正の値または負の値にそれぞれ対応する閾値を有し、当該閾値との比較に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が前記正または負の閾値を超えた場合、判定対象となった電圧および電流のうち、時間的に前に測定した電圧および電流を基準値として固定し、当該基準値と最新の電圧および電流によってΔVおよびΔIを求め、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が一定期間継続して前記正または負の閾値を超えた場合に、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする請求項3に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記自車両のエンジンが停止している場合にのみ前記ブラインドチャージの判定を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記ブラインドチャージが発生したと判定した場合には、前記自車両のエンジンが停止されるまでの間は、前記ブラインドディスチャージの判定を行わないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記ブラインドディスチャージが発生したと判定した場合であっても、前記変化前よりも電圧が上昇した場合には前記ブラインドチャージが発生したと判定を修正することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項8】
前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージによって生じる分極現象または成層化現象の変化量を考慮して前記二次電池の状態を推定する状態検出手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項9】
車両に搭載されている二次電池の状態を、電流検出手段および電圧検出手段の検出結果を参照して検出する二次電池状態検出方法において、
自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定ステップ、
を有することを特徴とする二次電池状態検出方法。
【請求項1】
車両に搭載されている二次電池の状態を検出する二次電池状態検出装置において、
前記二次電池に流れる電流を検出する電流検出手段と、
前記二次電池の電圧を検出する電圧検出手段と、
自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定手段と、
を有することを特徴とする二次電池状態検出装置。
【請求項2】
前記判定手段は、前記電流検出手段によって検出された電流の変化をΔIとし、前記電圧検出手段によって検出された電圧の変化をΔVとし、前記二次電池の内部抵抗をZとした場合に、ΔV−ΔI×Zによって得られる値の正負に応じてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージを判定することを特徴とする請求項1に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項3】
前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる正の値または負の値にそれぞれ対応する閾値を有し、当該閾値との比較に基づいてブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする請求項2に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項4】
前記判定手段は、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が前記正または負の閾値を超えた場合、判定対象となった電圧および電流のうち、時間的に前に測定した電圧および電流を基準値として固定し、当該基準値と最新の電圧および電流によってΔVおよびΔIを求め、前記ΔV−ΔI×Zによって得られる値が一定期間継続して前記正または負の閾値を超えた場合に、前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージが発生したと判定することを特徴とする請求項3に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項5】
前記判定手段は、前記自車両のエンジンが停止している場合にのみ前記ブラインドチャージの判定を行うことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項6】
前記判定手段は、前記ブラインドチャージが発生したと判定した場合には、前記自車両のエンジンが停止されるまでの間は、前記ブラインドディスチャージの判定を行わないことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項7】
前記判定手段は、前記ブラインドディスチャージが発生したと判定した場合であっても、前記変化前よりも電圧が上昇した場合には前記ブラインドチャージが発生したと判定を修正することを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項8】
前記ブラインドチャージまたはブラインドディスチャージによって生じる分極現象または成層化現象の変化量を考慮して前記二次電池の状態を推定する状態検出手段を有することを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の二次電池状態検出装置。
【請求項9】
車両に搭載されている二次電池の状態を、電流検出手段および電圧検出手段の検出結果を参照して検出する二次電池状態検出方法において、
自車両または他車両の二次電池の上がりを救済するために、前記自車両および前記他車両の二次電池同士がケーブルによって接続された場合に、前記自車両の二次電池において、前記電流検出手段を経由せずに充電されるブラインドチャージが発生したか、または、前記電流検出手段を経由せずに放電されるブラインドディスチャージが発生したかを前記電流検出手段および前記電圧検出手段によって検出された電流値と電圧値の変化の大小関係に基づいて判定する判定ステップ、
を有することを特徴とする二次電池状態検出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−176661(P2012−176661A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40144(P2011−40144)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【出願人】(391045897)古河AS株式会社 (571)
[ Back to top ]