説明

二次電池

【課題】電気化学反応に伴うカルシウムイオンの脱離及び挿入に対して、高容量を有する二次電池を提供することである。
【解決手段】正極電極に下式(1)で表される正極用活物質と、負極電極に下式(2)で表される負極用活物質とを含むことを特徴とする二次電池であって、
Ca3−xCo (1) (式中、0≦x<2)
Ca (2) (式中、0≦y<2)
該正極用活物質の母骨格であるCoがCoO型のカラム状構造を有し、該カラム状構造を有する該正極用活物質のCu−Kα線を用いたX線回折の回折パターンが、2θ=15.0〜25.0°且つ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有することを特徴とする二次電池である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池として優れた性能を有し、二価のイオンを可逆的に脱離及び挿入できるカルシウムイオン電池を提供する。
【背景技術】
【0002】
リチウム(Li)イオン二次電池は、4Vを超える比較的高い容量を備え、携帯電話やノート型パソコンなど様々な携帯電子機器に応用されている。これら携帯電子機器は情報処理量や表示画面の面積が増大する傾向にあり、電源としてのLiイオン二次電池に対して、より高いエネルギー密度が求められている。
また、近年、環境持続社会の実現に向けた、環境への負荷が少なくて輸送エネルギー効率の高いプラグインハイブリッド自動車や電気自動車の開発が活発になっており、そのため、二次電池は、将来的には電気自動車などの充電ステーションとして、発電及び蓄電機能を配備した住宅用途への展開も期待されるので、二次電池市場の急拡大とともに、二次電池に要求されるエネルギー密度も増大すると考えられる。その一方で、電池性能の向上のために、高容量化のみを追求すると、安全性に問題が生じる。
【0003】
この様な高容量化実現への指針として、イオン1個が運ぶ電荷が1価であるLiに対して、2価のマグネシウムやカルシウム(Mg、Ca)などのアルカリ土類金属を用いた二次電池の開発が期待される。また、Liは非常に反応性が高く、過充電や内部短絡が発生すると、発煙・発火などを引き起こし電池の安全性に問題があるが、CaやMgはLiと比べ融点も高く、Liよりも安全性は高いと考えられる。
【0004】
更に、Liは希少金属の一つである上に、その主要な産出国は南米や中国など偏在しており、高コストになりやすく、資源調達が困難になる可能性も高い。一方で、CaやMgは資源量が非常に豊富であり、コスト面でも資源確保の点でもLiより優位である。将来的に、電気自動車用途あるいは住宅用蓄電池への市場が拡大すれば、正極用活物質や電解質などに用いられるLi量は飛躍的に増大すると予測され、Liイオン電池を消費し続ける限り、いずれは資源問題に発展する危険性がある。
しかしながら、上記の通り、資源的に豊富でかつ安価なMgやCaイオンを用いた二次電池が実現すれば、将来的な供給不足や高生産コスト等の心配をする必要はなく、更にはより安全な二次電池が提供できる。
【0005】
このような理由等から、多価イオンを用いた二次電池において、電位や容量などの電池性能に求められる水準に関して、少なくとも従来のLiイオン二次電池と同等以上の性能が得られることが求められている。
【0006】
特許文献1によると、Caイオンを用いた二次電池を作製している。しかし、従来得られているLiイオン二次電池よりも大きな放電容量を示しているものの、作動電圧は約1Vと極めて低い。
【0007】
一方、特許文献2によると、Mgイオンを用いた二次電池を作製しているが、Liイオン二次電池以下の放電容量に加えて、約1Vと極めて低い電圧しか示していない。
【0008】
非特許文献1によると、バナジウム酸化物(V)に対して、電気化学的にCaイオンを可逆的に挿入及び脱離しており、約400mAh/gの容量が得られている。しかしながら、VのCaに対するポテンシャルが低いため、Vを正極用活物質として利用するのは適当ではない。
【0009】
上記文献に記載されている従来のCaイオン二次電池はいずれも、電位が低いことが課題である。これは、正極に用いられる活物質のCaに対するポテンシャルが負極活物質のポテンシャルに比べて余り高くないことに起因している。
【0010】
従来のLiイオン二次電池に用いられる正極用活物質には、コバルト酸リチウム(LiCoO:150mAh/g)等に代表される層状岩塩型構造を有する正極材料が用いられており、負極電極にグラファイトを用いた場合約4Vの起電力が得られている。しかしながら、この場合、充電時に約50%以上のLiイオンを放出すると母骨格の積層構造に不可逆なずれが生じて充放電特性が変化し、結果的に容量が低下することが問題となっていた。
一方、非特許文献2によると、構成元素として、従来のコバルト酸リチウムのLiをCaに代替した化合物であるコバルト酸カルシウム(CaCo)の合成が報告されている。しかしながら、結晶構造や用途目的等がコバルト酸リチウムとは全く異なっているため、これを正極用活物質に用いて電気化学反応によるCaイオンの脱離や挿入を実施した例は今までになかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3587791号
【特許文献2】特開2005−228589号
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Hayashiら、Journal of Power Sources、vol. 119-121、pp. 617-620(2003)
【非特許文献2】Fjellvagら、Journal of Solid State Chemistry、vol. 124、pp. 190-194(1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、Caイオンを脱離及び挿入することが可能な、正極用活物質と負極用活物質とを用いて、高容量の二次電池を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記の課題を解決するため、本発明者らは、鋭意検討した結果、二次電池の正極電極に下式(1)で表される活物質を、負極電極に下式(2)で表される活物質を用いた。
Ca3−xCo (1) (式中、0≦x<2)
Ca (2) (式中、0≦y<2)
ここで、該正極用活物質の母骨格であるCoは、CoO型のカラム状構造を有し、該カラム状構造を有する該正極用活物質のCu−Kα線を用いたX線回折の回折パターンが2θ=15.0〜25.0°且つ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有することを特徴とする。
【0015】
前記CoO型のカラム状構造として、コバルト酸カルシウムの結晶構造を図1に示す。この結晶構造では、単位セル内にCoOの組成からなる一次元的なカラム状構造を備えており、その周囲にCaイオンが配置されていることを特徴とする。
【0016】
このようにCoO型カラム状構造の周囲に多数のCaイオンが配置されているため、従来の層状或いは格子状構造を有する正極用活物質と比較して本質的に高容量を示す。また、該カラム状構造は、Caイオンの電気化学的反応に伴う脱離及び挿入に対して安定である。そして、本発明者らは、該活物質を正極電極として用いることが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
また、該正極電極を備えてなる二次電池として、好適な電池性能を発現させるためには、電気化学反応に対して安定にCaイオンを収容し得る負極電極との組合せや、更には、Caイオンを対極に輸送する性能を持つ電解質との好適な組合せによってのみ実現可能であることを見出し、最終的に本発明を完成させた。
【0017】
即ち、本発明は、以下に示す二次電池を提供するものである。
【0018】
1. 前記の式(1)で表される正極用活物質を用いた正極電極と、前記の式(2)で表される負極用活物質を用いた負極電極とを含むことを特徴とする二次電池であって、該正極用活物質の母骨格であるCoがCoO型のカラム状構造を有し、該カラム状構造を有する該活物質のCu−Kα線を用いたX線回折の回折パターンが2θ=15.0〜25.0°且つ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有することを特徴とする二次電池。
2. Ca[N(SOCFを溶質とする電解質を含むことを特徴とする上記1に記載の二次電池。
3. エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒、或いはジメチルスルホキシド(DMSO)を非水電解液溶媒とする電解質を含むことを特徴とする上記2に記載の二次電池。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、Ca3−xCo(0≦x<2)を正極用活物質とする正極電極を用いており、従来用いられていた正極用活物質の結晶構造とは全く異なる。前記CoO型カラム状構造を有する結晶構造を実現し、それによりCaイオンの内蔵量を著しく増大させることを達成せしめた。
また、本発明者らは該活物質の結晶構造を丹念に調べた結果、ブラッグ−ブレンターノ光学系におけるCu−Kα線を用いたX線回折による回折パターンが、2θ=15.0〜25.0°かつ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有していることを見出した。 本発明によればCaイオンの脱離及び挿入反応による充放電において、結晶構造の変化が可逆的で小さく、前記CoO型カラム状構造の安定性が高いために、内蔵する多くのCaイオンを脱離及び挿入することができる。
更に、本発明によれば、母骨格が前記CoO型カラム状構造を取っているため、それらの周囲により多くのCaイオンが配置されることになり、本質的にCaイオンの内蔵量が多いという特徴を併せ持つ。
また、本発明による正極電極を用いれば、電気化学的反応によるCaイオンの脱離及び挿入に伴うCoの酸化還元反応を利用することができるため、従来よりも高電圧な二次電池を提供することが可能になる。その一方で、充電時に正極電極から脱離したCaイオンを安定に収容する能力を有する負極電極と組み合わせなければ、充放電サイクルを達成することができない。
そのため、本発明では、Ca(式中、0≦y<2)を負極用活物質とする負極電極を組み合わせることにより、より多くのCaイオンを脱離及び挿入することを可能にしている。その結果、本発明によれば、該正極用活物質の正極電極と該負極用活物質の負極電極を併せて用いることにより、高容量な二次電池が実現可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】CaCoの結晶構造を示す図である。
【図2】実施例1で得られたCaCoのX線回折パターンを示す図である。
【図3】本発明の実施例で用いた三電極セルの概念図を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施態様においては、下式(1)で表される正極用活物質であって
Ca3−xCo (1) (式中、0≦x<2)
該活物質の母骨格であるCoがCoO型のカラム状構造を有し、該カラム状構造を有する該活物質のCu−Kα線を用いたX線回折の回折パターンが、2θ=15.0〜25.0°かつ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有する活物質を正極電極として備えた二次電池であることが好ましい。より好ましくは、2θ=17.0〜22.0°と30.0〜35.0°の両範囲に回折ピークを有することが好ましい。尚、本発明におけるCoO型カラム状構造は、Caイオンの出入りによって、2θ=15.0〜25.0°の範囲にある回折強度の高い1本の回折ピークと2θ=30.0〜35.0°の範囲にある2本の回折ピークの相対強度比が変化することを特徴とする。
【0022】
該正極用活物質を構成する遷移金属であるCoは、結晶構造中のCoサイトに他の金属を固溶させることが可能であり、該金属としてはMn、Fe、Ni、Cu、Zn、Al、Zr、Nb、Mo等が好ましい。該固溶金属を該活物質に固溶させることにより、電圧や結晶相安定性、充放電容量などの二次電池電極性能を向上させることができる。前記固溶金属としては、Mn、Fe、Ni、Alがより好ましい。
【0023】
本発明を構成する正極用活物質は、目的とする元素成分比率と同様の比率となるように原料を混合し、焼成することによって得ることができる。原料物質としては、焼成により酸化物を形成するものであれば特に限定はされない。元素単体或いは酸化物、その他の化合物であっても構わない。例示すれば、カルシウム源としては、Ca単体、CaCO、CaO等を用いることが可能であり、コバルト源としては金属Co、CoO、Co、Co等が挙げられる。前記遷移金属を該活物質に固溶させる場合についても同様に単体か酸化物を用いることができ、所望の比率で原材料を混合して焼成すればよい。また、生成した酸化物の組成比を確認するためには、蛍光X線分光法や誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS)、誘導結合プラズマ発光分光法(ICP−AES)等の分析手法を用いればよい。
【0024】
焼成温度および焼成時間については、950〜1200℃程度の温度で10〜50時間ほど焼成すればよい。原材料を混合した粉末を加圧形成して、第一段階として950℃程度の温度で約12時間焼成し、さらに第二段階として、目的物質によっては多少の調整が必要であるが、1000〜1200℃程度の温度で約48時間焼成して、前述したCoO型のカラム状構造を有する結晶相を形成することが可能になる。
【0025】
また、本発明の一実施態様においては、前記正極電極を備え、かつ、下式(2)で表される負極用活物質を負極電極として有することを特徴とする二次電池であることが好ましい。
Ca (2) (式中、0≦y<2)
【0026】
なお、本発明における効果を奏するために、負極電極としては、前記正極電極に対してより低い(卑な)電位でCaイオンを脱離及び挿入できるものを使用する必要がある。そのようなものであれば、上記負極電極以外にも、公知の負極電極(例えば、Ca金属、Caとシリコンとからなる合金、炭素(グラファイト)等)を用いることも可能である。つまり、負極電極としては、前記正極電極よりも卑な電位で充放電反応が進行するものであれば、これらの材料に特に限られない。
また、生成した負極用活物質についても、酸化物の組成比を確認するためには、前記蛍光X線分光法やICP−MS法、ICP−AES法等の分析手法を用いればよい。
【0027】
更に、本発明の一実施態様において、前記正極電極並びに前記負極電極に用いられる両活物質は粒状に粉砕されたものであることが好ましい。前記正極用活物質並びに前記負極用活物質の粒径は50μm以下であることが好ましく、前記活物質の粒径が小さいほど、電極材料としては電気化学反応に関わる表面積が大きくなるために好ましい。
しかしながら、粒径が小さすぎると活物質表面の欠陥密度が増大するため、表面における電気化学反応が活発になり、活物質が劣化し易くなる。
従って、前記正極用活物質並びに前記負極用活物質の粒径はより好ましくは500nm以上50μm以下である。更により好ましくは、500nm以上20μm以下である。
【0028】
前記実施態様の正極電極並びに負極電極は、粒状に粉砕された前記活物質に、アセチレンブラック、カーボンブラック、黒鉛などの導電性材料と、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレンなどの結着剤と混合されていることが好ましい。これらの高分子材料は前記活物質と導電材料を結着させ、本発明の効果を奏する限りにおいて制限されるものではない。
【0029】
また、本発明の一実施態様において、前記正極電極と前記負極電極を備えた電池に用いられる電解質のうち、Ca[N(SOCFを溶質として有することを特徴とする電池であることが好ましい。本発明における二次電池に使用される電解質は溶質と溶媒とから成り、上記溶質以外に用いることのできる溶質について具体的に例示すれば、Ca(BF、Ca(ClO、Ca(SOCF、Ca(PF、Ca(AsF、Ca(SbF等の材料が挙げられる。
【0030】
また、本発明の一実施態様において、前記正極電極と前記負極電極を備え、前記溶質を備えた電解質を構成する非水電解液溶媒が、エチレンカーボネート(EC)とジメチルカーボネート(DMC)の混合溶媒、或いはジメチルスルホキシド(DMSO)を含むこと特徴とする二次電池であることが好ましい。電解質としては、Caイオン伝導をし得る前記溶質を含む非水電解液溶媒を有していればよく、上記溶媒以外に具体的に例示すれば、プロピレンカーボネート、ビニレンカーボネート、アセトニトリル、テトラヒドロフラン等を用いることができる。
【実施例】
【0031】
以下、実施例によって本発明をさらに具体的に説明するが、これらにより記載された本発明の請求項の範囲を制限するものではない。
【0032】
[実施例1]
カルシウム源としてCaCO、コバルト源としてCoを用い、元素比がCa:Co=3:2となるように原料を十分混合した後、該混合物を加圧形成して、坩堝に入れて電気炉で、970℃で12時間焼成した。ここで得られた一次焼成物を粉砕し、再度加圧形成した。該焼成物を970℃、48時間焼成してCaCoの組成からなる母骨格がCoO型のカラム状構造を有する正極用活物質を得た。得られた該活物質のX線回折パターンを図2に示した。該XRDパターンはCaCo結晶構造データと一致しており、また、XRF元素分析およびICP−AES元素分析によって、Ca/Coの組成比を確認したところ、Ca:Co=3:2を得た。
[実施例2]
実施例1で得られた本発明の正極用活物質CaCoを正極電極として用い、負極電極にVを負極用活物質として用いた。正極電極並びに負極電極の両電極作製には、活物質:アセチレンブラック:ポリテトラフルオロエチレン=70:25:5の重量比で混合したペレットを用いた。正極電極と負極電極の活物質の混合量は、両活物質のCaイオンの可逆的な脱離及び挿入量を考慮して、負極用活物質を正極用活物質の2倍量とした。電解質には、溶質に1MのCa[N(SOCFをEC/DMC混合溶媒に混合させた電解質を用いた。また、参照極に、非水溶媒系用の銀(Ag/Ag)電極を用いて充放電特性を評価した。本発明における実施例に用いた上記三電極セルの概念図を図3に示した。このようにして作製した電池を、電流密度50μA/cmで充放電試験を実施したところ、約3.2Vの電圧で作動し、その充電容量は正極活物質当たり約180mAh/gであった。
[実施例3]
実施例2と同様の正極電極及び負極電極を用いて、実施例2で用いた溶質を溶媒としてDMSOに混合させた電解質を用いて三電極セルを作製し、実施例1と同様、銀参照極を用いて充放電特性を評価した。上記のようにして作製した電池を、電流密度50μA/cmで充放電試験を実施したところ、約2.7Vの電圧で作動し、その充電容量は正極活物質当たり約180mAh/gであることを確認した。
[実施例4]
実施例2および3で充放電反応を行った正極電極について、XRF法およびICP−AES法による元素組成分析を行った。充電後の正極用活物質は、100%放電状態の正極用活物質がCaCoであるのに対して、過渡的な充電ステージにおいて、Ca3−xCo(0<x<2)の組成比で表されることを確認し、Caイオンが該活物質の母骨格であるCoO型のカラム状構造の中に、充放電反応に伴って脱離及び挿入をしていることを確認した。
[実施例5]
実施例2および3で充放電反応を行った負極電極について、実施例4と同様に、XRF法およびICP−AES法による元素組成分析を行った。充電後の負極用活物質は、100%放電状態の負極用活物質がVであるのに対して、過渡的な充電ステージにおいて、Ca(0<y<2)の組成比で表されることを確認し、Caイオンが充放電反応に伴って該活物質の母骨格であるV中に挿入及び脱離反応をしていることを確認した。
【0033】
[比較例1]
正極用活物質としてLiCoOを用いて、実施例2と同様の方法で正極電極を作製した。負極電極は、金属リチウム箔を使用し、電解質については、溶質を1MのLiClOをEC/DMC混合溶媒に混合させた電解質を用いた。上記の電極と電解質を用いて、実施例2および3と同様の三電極セルを作製し、電流密度500μA/cmで充放電試験を実施したところ、約3.8Vの電圧で作動し、充電容量が正極活物質当たり約140mAh/gであった。
【0034】
本発明を構成する正極電極及び負極電極を用いて、良好な充放電反応を実現するためには、電極に用いられた活物質と電解質との好適な組合せが必要であり、それによって良好な充放電反応が達成されることを確認した。上記の実施例により得られた電池の性能を比較した結果を表1にまとめた。その結果、本発明によるCa二次電池の作動電圧は、従来のLiCoOを正極電極に用いた電池と比較すると、低電圧ではあるものの、容量は従来のLiCoOを正極電極に用いた電池と同等以上の大きな値を示すことが分かった。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、安定性が高く、高容量を有する二次電池を利用することが可能となる。スマートフォンやノート型パソコン等の電子機器、プラグインハイブリッド車や電気自動車等の輸送機器、蓄電装置等の電力貯蔵機器等の様々な分野での利用が可能となる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極電極に下式(1)で表される正極用活物質と、負極電極に下式(2)で表される負極用活物質とを含むことを特徴とする二次電池であって、
Ca3−xCo (1) (式中、0≦x<2)
Ca (2) (式中、0≦y<2)
該正極用活物質の母骨格であるCoがCoO型のカラム状構造を有し、該カラム状構造を有する該正極用活物質のCu−Kα線を用いたX線回折の回折パターンが、2θ=15.0〜25.0°且つ30.0〜35.0°の範囲に回折ピークを有することを特徴とする二次電池。
【請求項2】
Ca[N(SOCF)を溶質とする電解質を含むことを特徴とする請求項1に記載の二次電池。
【請求項3】
エチレンカーボネートとジメチルカーボネートの混合溶媒、或いはジメチルスルホキシドを非水電解液溶媒とする電解質を含むことを特徴とする請求項2に記載の二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−248470(P2012−248470A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120502(P2011−120502)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000000033)旭化成株式会社 (901)
【出願人】(304027349)国立大学法人豊橋技術科学大学 (391)
【Fターム(参考)】