説明

二眼式立体内視鏡用レーザープローブ

【課題】レーザープローブを利用する場合においても、術者の目に大きな負担が掛かることがなく、しかもレーザープローブの先端部の位置を確実に把握できる二眼式立体内視鏡用レーザープローブを提供する。
【解決手段】挿入部12の先端面に、一対の対物レンズLL、LRと、プローブチャンネル20の開口孔18と、を備える二眼式立体内視鏡10のプローブチャンネルに挿脱されるレーザープローブ60において、導光ファイバ61の先端部周面を覆う不透光性被覆材64と、導光ファイバの周面の先端部に連続する部分を覆う透光性被覆材63と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二眼式立体内視鏡のプローブチャンネルに挿脱されるレーザープローブに関する。
【背景技術】
【0002】
挿入部の先端面に一対の対物レンズを備える二眼式立体内視鏡と、二眼式立体内視鏡の一対の対物レンズが観察した観察像を表示する立体ディスプレイと、を組み合わせた立体式内視鏡システムは従来から知られている。
立体式内視鏡システムは被写体を立体的に映し出すことが出来るので、術者はより正確な処置を行うことができる。
【特許文献1】特開平4−285550号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
立体式内視鏡システムは上述の利点がある反面、以下のような問題が存在していた。
図8に示すように、二眼式立体内視鏡010の挿入部012の先端面には鉗子チャンネルの先端開口018が一対の対物レンズLL、LRと共に設けてある。従って、鉗子チャンネルにレーザープローブ060を挿入し、レーザープローブ060の先端部を二眼式立体内視鏡010の挿入部012の先端面から突出させれば、レーザープローブ060の先端面から照射されるレーザー光を利用した処置を行うことができる。
【0004】
しかし、レーザープローブ060の先端部を二眼式立体内視鏡010の挿入部012の先端面から突出させると、一方の対物レンズLRはレーザープローブ060を図9(a)に示す態様で観察し、他方の対物レンズLLはレーザープローブ060を図9(b)に示す態様で観察するので、立体ディスプレイには図10に示す態様でレーザープローブ060が映し出される(レーザープローブ060はややぼやけた状態で映し出される)。このように立体ディスプレイには1本しか存在しないはずのレーザープローブ060が2本映し出されてしまうので、立体ディスプレイを見ながら処置を行う術者の目には大きな負担が生じてしまう。
【0005】
本発明は、レーザープローブを利用する場合においても、術者の目に大きな負担が掛かることがなく、しかもレーザープローブの先端部の位置を確実に把握できる二眼式立体内視鏡用レーザープローブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の二眼式立体内視鏡用レーザープローブは、挿入部の先端面に一対の対物レンズ及びプローブチャンネルの開口孔を備え、該開口孔が、一対の対物レンズの間に形成された一対の対物レンズを結ぶ直線に対して直交する方向に延びる領域内に位置する二眼式立体内視鏡の上記プローブチャンネルに挿脱されるレーザープローブにおいて、レーザー光を伝送するための透光性材料からなる導光ファイバと、該導光ファイバの先端部周面を覆う不透光性被覆材と、上記導光ファイバの周面の上記先端部に連続する部分を覆う透光性被覆材と、を備えることを特徴としている。
【0007】
上記導光ファイバの周面の上記透光性被覆材で覆った部分より基端側の部分を不透光性被覆材で覆うのが好ましい。
【0008】
上記透光性被覆材が無色透明であるのが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によると、一対の対物レンズがレーザープローブをそれぞれ観察するので、二眼式立体内視鏡の観察像を立体ディスプレイに表示すると、立体ディスプレイにはレーザープローブが2本として表示される。しかし、レーザープローブの周面の先端部に連続する部分は透光性被覆材によって覆われており、さらに被覆材の内部に位置する導光ファイバも透光性なので、これらの部分は殆ど目立たずその裏側に位置する被写体(例えば体腔壁や患部など)とほぼ同化した状態で立体ディスプレイに表示される。従って、術者の目に生じる負担は従来の立体内視鏡システムに比べて極めて小さい。
さらに、レーザープローブの先端部は不透光性被覆材によって覆われているので、術者はレーザープローブの先端部の位置を確実に視認できる。そのため、術者はレーザープローブの先端部と被写体との距離感を正確に把握できる。
【0010】
請求項2のように、レーザープローブの周面の先端部に連続する部分のみを透光性被覆材で覆い、その他の部分を不透光性被覆材で覆えば、導光ファイバから外部に漏れる光量を少なくすることができる。
【0011】
請求項3のように、透光性被覆材を無色透明とすれば、立体ディスプレイに映し出された透光性被覆材はいかなる色の被写体とも同化するので、透光性被覆材がより目立たなくなる。そのため、術者の目にかかる負担をより軽減することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1に示すように、本実施形態の立体式内視鏡システムは大きな構成要素として、内視鏡10、ビデオプロセッサ30、立体ディスプレイ40、レーザー光源装置50及びレーザープローブ60を有している。
内視鏡10は医療用の二眼式立体内視鏡であり、操作者が把持する操作部11と、操作部操作部11から前方に延出する可撓性のある挿入部12と、操作部11から挿入部12と反対方向に延びるユニバーサルチューブ13と、ユニバーサルチューブ13の端部に接続された信号接続部14及びファイババンドルスリーブ15を具備するコネクタ部16と、を備えている。図4に示すように、挿入部12の先端面には照明用レンズL1と、対をなす左側対物レンズ(対物レンズ)LL及び右側対物レンズ(対物レンズ)LRが設けてある。挿入部12の先端部内には、左側対物レンズLLと右側対物レンズLRの直後にそれぞれ位置する集光レンズL2、L3と、左右の集光レンズL2、L3の直後にそれぞれ位置する撮像素子DL、DRが設けてある。さらに、挿入部12、操作部11、ユニバーサルチューブ13、コネクタ部16及びファイババンドルスリーブ15の内部にはその一端が照明用レンズL1に接続すると共に他端がファイババンドルスリーブ15内に位置する導光ファイバ(不図示)が配設してある。また、挿入部12、操作部11、ユニバーサルチューブ13、コネクタ部16及び信号接続部14の内部にはその一端が撮像素子DL、DRにそれぞれ接続すると共に他端が信号接続部14内に位置する信号ケーブルCL、CRが配設してある。
さらに挿入部12内には、その一端が挿入部12の先端面において開口孔18として開口し、他端が挿入部12の基端部において鉗子口19として開口する鉗子チャンネル(プローブチャンネル)20が形成してある。
さらに、挿入部12の鉗子口19近傍には、鉗子口19を開閉するためのキャップ21が設けてある。
【0013】
ビデオプロセッサ30のケーシング31の正面には、内視鏡10の信号接続部14とファイババンドルスリーブ15がそれぞれ嵌合可能な信号接続部支持孔32と光源接続用孔33が設けてある。図示は省略してあるが、ビデオプロセッサ30の内部にはスイッチS1の操作によって点灯と消灯を行うランプ(通常光源)や、信号ケーブルCL、CRが電送した画像データを画像処理するための画像処理装置などが設けてある。
ビデオプロセッサ30と電気的に接続する立体ディスプレイ40は、ビデオプロセッサ30の画像処理装置によって処理された画像データに基づいて左側対物レンズLL及び右側対物レンズLRが観察した観察像を表示面41に立体的に表示するものであり、特殊な偏光眼鏡やヘッドマウントは不要な表示装置である。
レーザー光源装置50は、そのケーシング51の内部に不図示のレーザー光源を備えており、ケーシング51に設けたスイッチS2を操作することにより該レーザー光源の点灯と消灯を行う。さらに、ケーシング51の正面にはレーザー光源と対向する接続孔52が設けてある。
【0014】
図2に全体形状を示すレーザープローブ60は、多数の無色透明な透光性材料からなる導光ファイバを束ねた導光ファイバ束61の周面を被覆材によって被覆し(先端面は被覆しない)、その後端部にレーザー光源装置50の接続孔52に挿脱可能なコネクタ62を設けたものである。
導光ファイバ束61の周面を被覆する被覆材は2種類の被覆材から構成されている。具体的には、導光ファイバ束61の周面の先端部よりやや基端側の部分を無色透明な透光性被覆材63によって被覆し、この透光性被覆材63を除く部分、即ち先端部と透光性被覆材63より基端側の部分全体を共に黒色の不透光性被覆材64及び不透光性被覆材65によって被覆している。
【0015】
次に、以上の構成からなる本実施形態の立体式内視鏡システムの使用要領について説明する。
まず、内視鏡10の信号接続部14とファイババンドルスリーブ15をそれぞれビデオプロセッサ30の信号接続部支持孔32と光源接続用孔33にそれぞれ挿入(嵌合)する。さらに、レーザープローブ60のコネクタ62をレーザー光源装置50の接続孔52に挿入(嵌合)し、内視鏡10の鉗子口19からキャップ21を外した後にレーザープローブ60の先端部を鉗子口19から鉗子チャンネル20に挿入し開口孔18から突出させる。
次いでビデオプロセッサ30のスイッチS1、立体ディスプレイ40のメインスイッチ(不図示)をそれぞれONにすると、ビデオプロセッサ30のランプの光が内視鏡10内の導光ファイバを介して照明用レンズL1から内視鏡10の外部に照射されるので、この状態で鉗子チャンネル20を患者(不図示)の体腔内に挿入する。すると、照明用レンズL1から照射された照明光により体腔内が照明されるので、左側対物レンズLL及び右側対物レンズLRが観察した観察像が左右の撮像素子DL、DRによってそれぞれ画像データに変換される。この画像データは左右の信号ケーブルCL、CRによってビデオプロセッサ30の画像処理装置に送られ、該画像処理装置よって画像処理された後に、立体ディスプレイ40の表示面41に立体映像として映し出される。
さらにレーザー光源装置50のスイッチS2をONにすると、レーザー光源装置50に内蔵されたレーザー光源が点灯し、レーザー光がレーザープローブ60の導光ファイバ束61を介して導光ファイバ束61の先端面(レーザー光射出面)から外部に射出されるので、レーザー光を利用した処置が可能となる。
【0016】
このようにレーザープローブ60を開口孔18から突出させた場合、右側対物レンズLRは図5(a)に示す態様でレーザープローブ60の突出部分を観察し、左側対物レンズLLは図5(b)に示す態様でレーザープローブ60の突出部分を観察する。そのため、レーザープローブ60の開口孔18からの突出量が比較的小さい場合は、レーザープローブ60は立体ディスプレイ40の表示面41に図6の態様で表示される。レーザープローブ60の開口孔18からの突出量が増加すると、図7に示すように左右のレーザープローブ60の不透光性被覆材64が表示面41上で重なる。
【0017】
このように本実施形態では、レーザープローブ60の開口孔18からの突出部分が表示面41に2本として表示されるが、透光性被覆材63及び透光性被覆材63の内側に位置する導光ファイバ束61は無色透明なので、図6の場合も図7の場合もこれらの部分は患者の対向壁や患部と同化し殆ど目立たない状態で表示面41に表示される。従って、従来に比べて表示面41を見ながら処置を行う術者に掛かる目の負担は大幅に軽減される。
一方、レーザープローブ60の先端部は黒色の不透光性被覆材64によって被覆されているので、術者はレーザープローブ60の先端部を体腔壁や患部等と明確に識別できる。そのため、術者は表示面41の先端部(不透光性被覆材64)と対向壁や患部との距離感を正確に把握することが可能であり、レーザー光を利用した処置を無理なく正確に実行できる。
しかも、レーザープローブ60の周面は殆どの部分が不透光性被覆材64と不透光性被覆材65によって被覆されているので、導光ファイバ束61から外部に漏れる光量は最小限に留められている。
【0018】
以上、上記実施形態を利用して本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、様々な変更を施しながら実施可能である。
例えば、立体ディスプレイ40は特殊な偏光眼鏡やヘッドマウントを利用するタイプであってもよい。
さらに、レーザープローブ60の不透光性被覆材64や不透光性被覆材65は不透光性材料であれば、黒色以外の色(例えば緑色)であってもよい。
また、透光性被覆材63の色は無色透明でなくてもよく、例えば緑色の透明色であってもよい。
要よい。
また、本実施形態の開口孔18は図4に示す位置に形成してある。しかし、左側対物レンズLLと右側対物レンズLRの間に形成されかつ左側対物レンズLLと右側対物レンズLRの中心点を結ぶ直線に対して直交する方向に延びる幅Wの領域内であれば、開口孔18を鉗子チャンネル20の先端面のどの位置に設けても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態の内視鏡システムの各構成要素の斜視図である。
【図2】レーザープローブの平面図である。
【図3】二眼式立体内視鏡の挿入部の先端部の横断平面図である。
【図4】二眼式立体内視鏡の挿入部の先端面の正面図である。
【図5】(a)は右側の対物レンズが観察した観察像を示す図であり、(b)は左側の対物レンズが観察した観察像を示す図である。
【図6】内視鏡の挿入部の先端面からの突出量が小さいときのレーザープローブを映し出した立体ディスプレイの表示面を示す図である。
【図7】レーザープローブの挿入部の先端面からの突出量が増加し、立体ディスプレイに映し出された2本のレーザープローブの先端部が重なったときの立体ディスプレイを示す図である。
【図8】従来の二眼式立体内視鏡の挿入部とレーザープローブの斜視図である。
【図9】(a)は右側の対物レンズが観察した観察像を示す図であり、(b)は左側の対物レンズが観察した観察像を示す図である。
【図10】内視鏡の挿入部の先端面から突出したレーザープローブを映し出した立体ディスプレイの表示面を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
10 内視鏡(二眼式立体内視鏡)
11 操作部
12 挿入部
13 ユニバーサルチューブ
14 信号接続部
15 ファイババンドルスリーブ
16 コネクタ部
18 開口孔
19 鉗子口
20 鉗子チャンネル(プローブチャンネル)
21 鉗子キャップ
30 ビデオプロセッサ
31 ケーシング
32 信号接続部支持孔
33 光源接続用孔
40 立体ディスプレイ
41 表示面
50 レーザー光源装置
51 ケーシング
52 接続孔
60 レーザープローブ
61 導光ファイバ束
62 コネクタ
63 透光性被覆材
64 65 不透光性被覆材
CL CR 信号ケーブル
DL DR 撮像素子
L1 照明用レンズ
L2 L3 集光レンズ
LL 左側対物レンズ(対物レンズ)
LR 右側対物レンズ(対物レンズ)
S1 スイッチ
S2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
挿入部の先端面に一対の対物レンズ及びプローブチャンネルの開口孔を備え、該開口孔が、一対の対物レンズの間に形成された一対の対物レンズを結ぶ直線に対して直交する方向に延びる領域内に位置する二眼式立体内視鏡の上記プローブチャンネルに挿脱されるレーザープローブにおいて、
レーザー光を伝送するための透光性材料からなる導光ファイバと、
該導光ファイバの先端部周面を覆う不透光性被覆材と、
上記導光ファイバの周面の上記先端部に連続する部分を覆う透光性被覆材と、を備えることを特徴とする二眼式立体内視鏡用レーザープローブ。
【請求項2】
請求項1記載の二眼式立体内視鏡用レーザープローブにおいて、
上記導光ファイバの周面の上記透光性被覆材で覆った部分より基端側の部分を不透光性被覆材で覆った二眼式立体内視鏡用レーザープローブ。
【請求項3】
請求項1または2記載の二眼式立体内視鏡用レーザープローブにおいて、
上記透光性被覆材が無色透明である二眼式立体内視鏡用レーザープローブ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−136671(P2008−136671A)
【公開日】平成20年6月19日(2008.6.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−326111(P2006−326111)
【出願日】平成18年12月1日(2006.12.1)
【出願人】(000000527)ペンタックス株式会社 (1,878)
【Fターム(参考)】