説明

二連式吐出装置

【課題】チューブ容器の外形から内容物のおおよその残量を判断することができ、しかも内容物の残存量を少なくすることのできる二連式吐出装置を提供する。
【解決手段】二連式吐出装置100は、二剤混合式の毛髪化粧料の第1剤及び第2剤を収容する2つのチューブ容器10,20と、これらから一定比率の第1剤及び第2剤を同時に吸引して吐出する吐出器40とを備える。このうち、第1剤を収容する第1チューブ容器10は、金属製の外装チューブ及び樹脂製の内装チューブからなる二重チューブ容器であり、外部からの気体の流入を防ぐ気密構造とされている。このため、吐出器40により第1剤が吸引されて樹脂製の内装チューブが変形すると、この変形に伴い、金属製の外装チューブも変形する。したがって、第1チューブ容器10の外形から内容物のおおよその残量を判断することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つのチューブ容器に別々に収容された二剤混合式の毛髪化粧料の第1剤及び第2剤をポンプで同時に吸引して吐出する構成の二連式吐出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、酸化染料及びアルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤とを混合して使用する染毛剤や、アルカリ剤を含有する第1剤と過酸化水素を含有する第2剤とを混合して使用する脱色剤など、二剤混合式の毛髪化粧料が知られている。こうした毛髪化粧料は、第1剤及び第2剤が2つのチューブ容器に別々に収容されており、使用直前にトレイなどに絞り出されてブラシ等で混合された上で使用されることが一般的である。
【0003】
ここで、第1剤を収容するチューブ容器としては、例えば、気体及び液体を通さないように密閉(シール)された金属製(例えばアルミニウム製)のチューブ容器を用いることができる。
【0004】
これに対し、第2剤は過酸化水素を主成分とする酸性溶液であるため、第1剤と同じ金属製のチューブ容器では内面が腐食してしまう。また、第2剤では過酸化水素が分解して酸素が発生するため、気体及び液体を通さないように密閉されたチューブ容器では酸素が充満することにより破裂してしまうおそれがある。
【0005】
そこで、第2剤を収容するチューブ容器としては、例えば、金属製(例えばアルミニウム製)の外装チューブの内側に、気体は通すが液体は通さない性質(ガス透過性)を有する樹脂製の内装チューブが内装された二重チューブ容器を用いることができる(特許文献1参照)。具体的には、この種の二重チューブ容器は、裾部が接着剤等により密閉されておらず、単に折り返しによって封止されており、内容物である第2剤が外部に漏れないようにしつつ、第2剤から発生した酸素のみが裾部から外部に放出されるようになっている。
【0006】
ところで、こうした二剤混合式の毛髪化粧料を簡便に使用するための装置として、2つのチューブ容器に別々に収容された第1剤及び第2剤をポンプで同時に吸引して吐出する構成の二連式吐出装置が提案されている(特許文献2〜4参照)。
【0007】
そして、特許文献2に記載の構成では、第1剤を収容するチューブ容器を、外層を低密度ないし高密度ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂から形成し、中間層をエチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム、メタキシレンジアミンを用いたポリアミドフィルム等の酸素ガスバリア層、好ましくは水分バリア性、酸化染料のバリア性に優れた環状ポリオレフィン層から形成し、内層をポリオレフィン層とした積層構造としており、第2剤を収容するチューブ容器については、外層を低密度ポリエチレンから形成し、内層を直鎖低密度ポリエチレンから形成するようにしている。
【0008】
また、特許文献3に記載の構成では、第1剤を収容するチューブ容器を、内側から酸素透過性樹脂層、酸素バリア性樹脂層、最外層樹脂層が順次積層された積層体から形成し、第2剤を収容するチューブ容器については、酸素バリア性樹脂層が積層されていない酸素透過性領域を形成するようにしている。
【0009】
一方、特許文献4には、チューブ容器をアルミラミネート樹脂によって形成することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平9−30541号公報
【特許文献2】特開2005−126144号公報
【特許文献3】特開2006−69581号公報
【特許文献4】特開2009−154899号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2,3に記載の構成では、第1剤及び第2剤を収容するチューブ容器がいずれも復元力の強い軟質可撓性材料によって形成されていることから、内容物の吸引時にはチューブ容器が一時的に変形する(つぶれる)ものの、その変形状態が維持されにくく、吐出口からの空気の流入により膨らんでしまう。このため、チューブ容器の外形(変形度合い)から内容物(第1剤及び第2剤)の残量を判断することができないという問題がある。
【0012】
また、特許文献4に記載のようなアルミラミネート樹脂であっても、ラミネート樹脂のアルミニウム層は非常に薄いため(約5〜50μm程度)、樹脂層の復元力に対抗できない。したがって、特許文献2,3に記載の構成と同様、チューブ容器の外形から内容物の残量を判断することができない。
【0013】
一方、前述したように、第1剤を収容するチューブ容器としては金属製のチューブ容器が知られており、第2剤を収容するチューブ容器としては二重チューブ容器が知られている。
【0014】
このうち、二重チューブ容器は、内容物の吸引時に内装チューブが変形しても、外装チューブが同じように変形する訳ではないため、特許文献2〜4に記載の構成と同様、チューブ容器の外形から内容物の残量を判断することができない。
【0015】
これに対し、金属製のチューブ容器は、復元力が弱く、吸引時の変形状態が維持されやすいため、チューブ容器の外形から内容物のおおよその残量を判断する面では都合がよい。しかしながら、金属製のチューブ容器は、内容物が十分に残っている状態では良好に変形するものの、肩部がつぶれにくいことから、内容物が残り少なくなると変形しにくくなり、樹脂製のチューブ容器に比べて内容物を十分に使い切ることができない(残存量が多くなる)という問題がある。
【0016】
本発明は、こうした問題にかんがみてなされたものであり、チューブ容器の外形から内容物のおおよその残量を判断することができ、しかも内容物の残存量を少なくすることのできる二連式吐出装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するためになされた本発明の請求項1に記載の二連式吐出装置は、二剤混合式の毛髪化粧料の第1剤及び第2剤を収容する2つのチューブ容器と、2つのチューブ容器から一定比率の第1剤及び第2剤をポンプで同時に吸引して吐出する吐出器とを備える。そして、第1剤を収容するチューブ容器は、金属製の外装チューブ及び樹脂製の内装チューブからなる二重チューブ容器であり、外部からの気体の流入を防ぐ気密構造とされている。
【0018】
このような気密構造の二重チューブ容器では、吐出器により第1剤が吸引されて樹脂製の内装チューブが変形する(つぶれる)と、この変形に伴い、金属製の外装チューブも変形する(つぶれる)。ここで、内装チューブの変形に伴い外装チューブが変形するのは、内装チューブと外装チューブとの間に形成される空間が負圧となるからである。すなわち、第2剤を収容するために用いられていた従来の二重チューブ容器であれば、内装チューブが変形しても外部から空気が流入するため負圧状態が解消されるが、本発明のように気密構造の二重チューブ容器では空気が流入しないため負圧状態が解消されず、外部(大気圧)との圧力差により外装チューブが変形することになる。
【0019】
したがって、この二連式吐出装置によれば、第1剤を収容するチューブ容器の外形から内容物(第1剤)のおおよその残量を判断することができる。また、第1剤及び第2剤は一定比率で吸引されるため、第2剤についてもおおよその残量を判断することができる。しかも、内装チューブが樹脂製のものであるため、内容物の残存量を少なくすることができる。
【0020】
なお、金属製の外装チューブは肩部がつぶれにくいことから、内容物が残り少なくなった状態では内装チューブの変形度合いと完全には一致しないことも考えられるが、おおよその残量を判断する上では大きな問題にはならない。
【0021】
次に、請求項2に記載の二連式吐出装置は、チューブ容器の裾部の位置決めをする位置決め手段を備える。このような二連式吐出装置によれば、裾部の変形に伴う密閉状態の悪化などを防ぐことができる。また、チューブ容器の曲がりを矯正してチューブ容器同士がぶつかることを防ぐことができ、加えて、チューブ容器が折れ曲がることを防ぐことで吐出不良を生じにくくすることができる。
【0022】
さらに、請求項3に記載の二連式吐出装置は、吐出器を支持するとともに、少なくとも第1剤を収容するチューブ容器の外形が外部から視認可能な状態で2つのチューブ容器を収容する外装容器を備え、前述した位置決め手段は、この外装容器に設けられている。このような二連式吐出装置によれば、2つのチューブ容器を、裾部の位置決めをした状態で収容することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施形態の二連式吐出装置の外観形状の説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明が適用された実施形態について、図面を用いて説明する。
図1は、実施形態の二連式吐出装置100の外観形状の説明図であり、(a)は側面図、(b)は正面図である。
【0025】
この二連式吐出装置100は、二剤混合式の毛髪化粧料(本実施形態ではヘアカラー)の第1剤及び第2剤を別々に収容する2つのチューブ容器(第1チューブ容器10及び第2チューブ容器20)と、これら2つのチューブ容器10,20を並列に支持した状態で内部に収容する外装容器30と、各チューブ容器10,20から第1剤及び第2剤を同時に吸引して吐出する吐出器40とを備えている。
【0026】
第1チューブ容器10及び第2チューブ容器20には、二剤混合式の毛髪化粧料(本実施形態ではヘアカラー)の第1剤及び第2剤が別々に収容されている。
このうち、第2剤を収容する第2チューブ容器20には、金属製(例えばアルミニウム製)の外装チューブの内側に、気体は通すが液体は通さない性質(ガス透過性)を有する樹脂製の内装チューブが内装された二重チューブ容器が用いられている。具体的には、第2チューブ容器20は、裾部22が接着剤により密封(シール)されておらず、単に折り返しによって封止されており、内容物である第2剤が外部に漏れないようにしつつ、第2剤から発生した酸素のみが裾部から外部に放出されるようになっている。なお、外装チューブの厚みは、例えば約50〜200μm程度とすることが好ましい。
【0027】
一方、第1剤を収容する第1チューブ容器10にも、第2チューブ容器20と同様、金属製の外装チューブの内側に樹脂製の内装チューブが内装された二重チューブ容器が用いられている。ただし、第1チューブ容器10は、第2チューブ容器20とは異なり、外部からの気体の流入を防ぐ気密構造とされている。具体的には、裾部12が接着剤により密封(シール)された上で折り返されており、気体が裾部12を通過できないようになっている。なお、裾部12側だけでなく、口部11側も気体が通過できない構造となっている。
【0028】
そして、これら2つのチューブ容器10,20を収容する外装容器30は、透明な材料(例えば透明なプラスチック)で形成されており、収容されているチューブ容器10,20の外形を外部から視認できるようになっている。
【0029】
具体的には、外装容器30における上方位置には、各チューブ容器10,20を支持する支持部31が形成されており、各チューブ容器10,20は、口部11,21が支持部31に支持されてぶら下げられた状態となっている。
【0030】
そして、外装容器30の上部に固定された吐出器40には、各チューブ容器10,20から第1剤及び第2剤を同量(1:1の比率で)吸引して吐出する2つのポンプ41,41が設けられており、各チューブ容器10,20の口部11,21が各ポンプ41,41に装着されている。
【0031】
また、吐出器40は、利用者が簡単な押操作で2つのポンプ41,41を同時に操作できるようにするための吐出ヘッド42を備えており、この吐出ヘッド42の内部には、2つのポンプ41,41により吸引・吐出された第1剤及び第2剤を合流させて共通の吐出口43から吐出する混合流路が形成されている。なお、ポンプ41,41としては、手動操作により流体を吸い上げて吐出するタイプの周知のポンプ(いわゆるディスペンサーポンプ)が用いられる。
【0032】
一方、外装容器30の底部には、各チューブ容器10,20の裾部12,22(本実施形態では各裾部12,22の両端部分)をそれぞれ挿入可能な位置決め手段としての溝部32が形成されており、各チューブ容器10,20の裾部12,22は、この溝部32により位置決めされる。
【0033】
以上のように構成された二連式吐出装置100は、吐出ヘッド42に対して下方への外力を加える(吐出ヘッド42の上面を指などで押下する)操作及びその外力を解放する操作(つまりポンピング操作)が行われることにより、各チューブ容器10,20内の第1剤及び第2剤が各ポンプ41,41により吸引され、吐出ヘッド42内部の混合流路で合流して、共通の吐出口43から吐出される。
【0034】
そして、第1チューブ容器10から第1剤が吸引されることにより樹脂製の内装チューブが変形する(つぶれる)と、この変形に伴い、金属製の外装チューブも変形する(つぶれる)。このため、第1チューブ容器10の外形から第1剤のおおよその残量を判断することができる。
【0035】
一方、第2チューブ容器20は、内装チューブの変形と外装チューブの変形とが一致しないため、第2チューブ容器20の外形からは第2剤の残量を判断することができないが、第1剤及び第2剤は1:1の比率で吸引されるため、第2剤についても第1チューブ容器10の外形からおおよその残量を判断することができる。
【0036】
しかも、第1チューブ容器10及び第2チューブ容器20は、内装チューブが樹脂製のものであるため、内容物の残存量を少なくして十分に使い切ることができる。
加えて、本実施形態の二連式吐出装置100では、外装容器30に、チューブ容器10,20の裾部12,22の位置決めをする溝部32が形成されているため、第1チューブ容器10の裾部12の変形に伴う密閉状態の悪化を防ぐことができる。また、第2チューブ容器20の裾部22の変形に伴い封止効果が薄れることにより、第2剤に外部からの空気が混入してしまうといったことを防ぐことができる。
【0037】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
例えば、上記実施形態では、第1剤と第2剤とが1:1の比率で吸引・吐出される構成を例示したが、混合比率は1:1に限定されるものではなく、一定の比率(例えば2:1等)であれば、第1チューブ容器10の外形(変形度合い)に基づき第1剤及び第2剤のおおよその残量を判断することができる。
【0038】
また、上記実施形態では、第2剤を収容する第2チューブ容器20として二重チューブ容器を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、背景技術で挙げた特許文献に示されているように、多層樹脂フィルム等の軟質可撓性材料によって形成されたチューブ容器を用いてもよい。
【0039】
さらに、上記実施形態では、外装容器30を透明にすることでチューブ容器10,20の外形を外部から視認できるようにしているが、これに限定されるものではない。例えば、透明でない材料であっても、視認用の穴を形成することなどによりチューブ容器10,20の外形を外部から視認できるようにすることは可能である。また、第1チューブ容器10のみを視認できるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0040】
10,20…第1チューブ容器,第2チューブ容器、11,21…口部、12,22…裾部、30…外装容器、31…支持部、32…溝部、40…吐出器、41…ポンプ、42…吐出ヘッド、43…吐出口、100…二連式吐出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二剤混合式の毛髪化粧料の第1剤及び第2剤を収容する2つのチューブ容器と、
前記2つのチューブ容器から一定比率の第1剤及び第2剤をポンプで同時に吸引して吐出する吐出器と、
を備える二連式吐出装置において、
第1剤を収容するチューブ容器は、金属製の外装チューブ及び樹脂製の内装チューブからなる二重チューブ容器であり、外部からの気体の流入を防ぐ気密構造とされていること
を特徴とする二連式吐出装置。
【請求項2】
前記チューブ容器の裾部の位置決めをする位置決め手段を備えること
を特徴とする請求項1に記載の二連式吐出装置。
【請求項3】
前記吐出器を支持するとともに、少なくとも第1剤を収容するチューブ容器の外形が外部から視認可能な状態で前記2つのチューブ容器を収容する外装容器を備え、
前記位置決め手段は、前記外装容器に設けられていること
を特徴とする請求項2に記載の二連式吐出装置。

【図1】
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【公開番号】特開2011−157087(P2011−157087A)
【公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−18807(P2010−18807)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【出願人】(000113274)ホーユー株式会社 (278)
【Fターム(参考)】