説明

二酸化チタン顔料の製造方法

【課題】本発明は、塗料組成物に配合したときに、耐侯性に優れ、しかも優れた光沢を有する二酸化チタン顔料を提供するものである。
【解決手段】二酸化チタン粒子の水性スラリー中で水溶性ケイ酸塩を少なくとも70℃の温度下で、4.5〜10.5の範囲のpHで少なくとも30分かけて中和して二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカを処理するシリカ処理工程を有する二酸化チタン顔料の製造方法において、前記中和前及び/又は後に、二酸化チタン粒子に対し酸化物換算で0.005重量%以上0.1重量%未満の範囲に相当するアルミニウム、ジルコニウム、チタン、リン、スズ、アンチモンまたは亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素の水溶性塩を添加する工程を含むことを特徴とする二酸化チタン顔料の製造方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塗料用組成物に好適な二酸化チタン顔料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化チタン顔料は可視光の屈折率が高く、白色顔料として、塗料、インキ、プラスチックス、紙等の広い分野で使用されている。一方で、二酸化チタンは光触媒活性が高く、これらに配合されている有機系樹脂成分の分解、劣化を促進する性質も有している。このため、高度の耐候性を要求される自動車、建築材料等の分野で用いる二酸化チタン顔料は、一般的に、その粒子表面に無機化合物、例えば、ケイ素、アルミニウム、ジルコニウム、チタン等の無機酸化物または含水酸化物等の無機化合物を被覆して耐候性を付与しており、中でも、緻密含水シリカは二酸化チタン顔料の耐候性を向上させる効果が高いことが知られている。緻密含水シリカの処理工程を含む二酸化チタン顔料の製造方法としては、例えば、二酸化チタンに高密度(緻密含水)シリカを沈着させ、つづいてアルミナを沈着させる方法(特許文献1参照)、二酸化チタン基体粒子表面に1〜10%の高密度シリカの含水酸化物を被覆し、引続いて0.1〜2%のアンチモンの含水酸化物を被覆し、最後に0.5〜5%のアルミニウムの含水酸化物を被覆する方法(特許文献2参照)、及び二酸化チタンに先ず約2〜12重量%の高密度無定形シリカを沈積し、次いで約1〜4重量%のジルコニウムの含水酸化物の第二被覆を沈積後、約1〜6重量%の含水アルミナの外部被覆を沈積させる方法(特許文献3参照)が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開昭53−33228号公報
【特許文献2】特開平2−214783号公報
【特許文献3】特公平2−12504号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、塗料組成物に配合したときに、耐侯性に優れ、しかも優れた光沢を有する二酸化チタン顔料を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、二酸化チタン粒子の水性スラリー中で水溶性ケイ酸塩を、含水緻密シリカが形成される特定の条件下で中和する方法において、中和前及び/又は後に特定種の水溶性無機塩類を微量添加すると、耐侯性に優れ、しかも優れた光沢を有する二酸化チタン顔料が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0006】
即ち、本発明は、二酸化チタン粒子の水性スラリー中で水溶性ケイ酸塩を少なくとも70℃の温度下で、4.5〜10.5の範囲のpHで少なくとも30分かけて中和して二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカを処理するシリカ処理工程を有する二酸化チタン顔料の製造方法において、前記中和前及び/又は後に、二酸化チタン粒子に対し酸化物換算で0.005重量%以上0.1重量%未満の範囲に相当するアルミニウム、ジルコニウム、チタン、リン、スズ、アンチモンまたは亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素の水溶性塩を添加する工程を含むことを特徴とする二酸化チタン顔料の製造方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の製造方法によって得られる二酸化チタン顔料は、このものを塗料用組成物に配合したとき高耐候性と高光沢を有するものである。また、工業的にも有利に製造することのできる製造方法である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、二酸化チタン顔料の製造方法であって、二酸化チタン粒子の水性スラリー中で水溶性ケイ酸塩を少なくとも70℃の温度下で、4.5〜10.5の範囲のpHで少なくとも30分かけて中和して二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカを処理するシリカ処理工程を有する二酸化チタン顔料の製造方法において、前記中和前及び/又は後に、二酸化チタン粒子に対し酸化物換算で0.005重量%以上0.1重量%未満の範囲に相当するアルミニウム、ジルコニウム、チタン、リン、スズ、アンチモンまたは亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素の水溶性塩を添加する工程を含むことを特徴とする。前記の特定種の水溶性塩が、水溶性ケイ酸塩の中和前及び/又は後の水性スラリー中に、前記範囲のような微量で含まれていると、得られた二酸化チタン顔料の分散性が特異的に向上し、このものを配合した塗料用樹脂組成物を塗布した塗膜が優れた光沢を有するものと考えられる。このため、本発明で製造された二酸化チタン顔料は緻密含水シリカを多量に処理していても分散性が優れ、これを塗料用組成物に用いると、高耐候性と優れた光沢とが得られる。
【0009】
二酸化チタン粒子には、0.1〜0.4μmの範囲の平均粒子径(電子顕微鏡写真法)を有するものを用いるのが好ましく、0.1〜0.3μmの範囲にあれば更に好ましい。工業的に供給される二酸化チタン粒子の結晶形には、アナタ−ゼ型とルチル型とがあり、本発明では耐候性が優れたルチル型を用いるのが好ましい。二酸化チタン粒子は、例えば、硫酸チタン溶液を加水分解するいわゆる硫酸法によって得ても、あるいはハロゲン化チタンを気相酸化するいわゆる塩素法によって得てもよく、特に制限は無い。
【0010】
水性スラリーは、二酸化チタン粒子を、水を水または水を主成分とする媒液中に分散させて調整することができる。この際に、二酸化チタン粒子の凝集程度に応じて、縦型サンドミル、横型サンドミル、ボールミル等の湿式粉砕機を用いて予備粉砕を行ってもよい。スラリーのpHを9以上に調整すると、二酸化チタン粒子が水中に安定して分散するので好ましい。また、必要に応じて、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸化合物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸化合物等の分散剤を用いてもよい。水性スラリー中の二酸化チタン粒子の固形分濃度は、50〜800g/リットルの範囲であり、好ましくは100〜500g/リットルの範囲である。固形分濃度が800g/リットルより濃度が高いと、水性スラリーの粘度が高くなり過ぎ、緻密含水シリカの均一な処理が困難になる。また、固形分濃度が50g/リットルより低いと、工業上の操作性が低下する。
【0011】
本発明では、水溶性ケイ酸塩の中和前及び/又は後に水性スラリー中にアルミニウム、ジルコニウム、チタン、リン、スズ、アンチモンまたは亜鉛から選ばれる少なくとも1種の水溶性塩を添加する。中和前に前記水溶性塩を添加するには、予め水性スラリーに添加しておくか、水溶性ケイ酸塩と同時に並行添加するか、水溶性ケイ酸塩の添加後且つ中和前に添加する等して、その存在下で水溶性ケイ酸塩を中和する。水溶性塩の使用量は、二酸化チタン粒子に対し酸化物換算で0.005重量%以上0.1重量%未満の範囲であり、好ましくは0.01重量%以上、0.08重量%以下である。尚、水溶性無機塩の酸化物換算のベースとなる酸化物とは、アルミニウムではAl、ジルコニウムではZrO、チタンではTiO、リンではP、スズではSnO、アンチモンではSb、亜鉛ではZnOを意味する。
【0012】
緻密含水シリカを処理する際の中和温度は、少なくとも70℃であって、80℃とするのが好ましく、100℃以下とすると中和を常圧下で行えるので、80〜100℃の範囲とするのが更に好ましい。また、水溶性ケイ酸塩の中和時間は、少なくとも30分であって、少なくとも1時間かけるのが好ましい。中和pHは、4.5〜10.5の範囲であって、4.5〜9の範囲が好ましく、5〜8の範囲が更に好ましい。緻密含水シリカの処理量は、二酸化チタン粒子に対しSiO換算で1〜10重量%の範囲が好ましい。前記範囲より少ないと、二酸化チタン顔料に十分な耐候性を付与できず、多いと二酸化チタン粒子の凝集が非常に強固になり、本発明によっても所望される高光沢が得られ難い。より好ましい処理量の範囲は、2〜8重量%である。
【0013】
シリカ処理工程に続いて、その表面に、更に含水シリカ以外の無機化合物、例えば、アルミウム、ジルコニウム、チタン、スズ、アンチモン、亜鉛等の酸化物、含水酸化物、リン酸塩等の無機化合物を処理する工程を設けてもよい。これらの無機化合物は、1種を処理しても、2種以上を混合して処理しても、積層してもよい。
【0014】
無機化合物が含水アルミナであれば、有機系バインダーとの親和性を改良したり、製造工程における濾過、脱水性が改良されるので好ましい。含水アルミナの処理量は、二酸化チタン粒子に対しAl換算で、0.5〜5重量%の範囲が好ましく、1〜4重量%の範囲が更に好ましい。含水アルミナの処理は、前記シリカ処理工程が終了後のスラリー中で、水溶性アルミニウム塩を中和することで行える。その具体的な方法としては、(1)水溶性アルミニウム塩と中和剤とを同時に並行添加するか、(2)水溶性アルミニウム塩の添加後に中和剤を添加する等、特に制限は無いが、(1)の方法を用いると、含水アルミナが均一に処理され易いので好ましい。水溶性アルミニウム塩の中和は、4.5〜9の範囲が好ましく、5〜8の範囲が更に好ましい。中和温度は50℃以上であればよいが、前段の含水緻密シリカの処理と同じ温度にしておくと、連続的に操作が行えるので好ましい。
【0015】
本発明では、水溶性ケイ酸塩やアルミニウム等の水溶性塩には、公知のものを用いることができる。例えば、水溶性ケイ酸塩としては、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等が挙げられる。また、水溶性アルミウム塩としては、アルミン酸ナトリウム、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等、塩化アルミニウムが挙げられる。水溶性ジルコニウム塩であれば、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニウム、塩化ジルコニウム、酸塩化ジルコニウム等が挙げられる。水溶性チタン塩であれば、四塩化チタン、硫酸チタン等が挙げられる。水溶性リン塩であれば、ピロリン酸ナトリウム、オルトリン酸ナトリウム、正リン酸等が挙げられる。水溶性スズ塩であれば、硫酸スズ、硝酸スズ、酢酸スズ、オキシ塩化スズ等が挙げられる。水溶性アンチモン塩であれば、塩化アンチモン、硫酸アンチモン等が挙げられる。また、水溶性亜鉛塩であれば、硫酸亜鉛等が挙げられる。中和やpH調整には、硫酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸等の有機酸等の酸性化合物、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニウム化合物等の塩基性化合物等公知のものを用いることができる。
【0016】
シリカ処理工程において、中和時及び/又は中和後にスラリーを湿式粉砕処理すると、二酸化チタン粒子の分散が更に進み、優れた光沢が得られ易くなるので好ましい。また、シリカ処理工程に続いてアルミナ処理工程等の無機化合物処理工程を設ける場合は、無機化合物の処理前に湿式粉砕を行うのが好ましい。湿式粉砕機には、予備粉砕と同様に縦型サンドミル、横型サンドミル、ボールミル等を用いることができる。
【0017】
緻密含水シリカを処理した後または無機化合物を処理した後は、必要に応じて洗浄を行い、固液分離、乾燥、乾式粉砕する。
【0018】
有機系樹脂成分との親和性をいっそう向上させる目的で、更に有機化合物を処理する工程を設けることが好ましい。具体的には、(1)緻密含水シリカで表面を処理した二酸化チタン、若しくは更に無機化合物で処理した二酸化チタンを、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機で粉砕する際に、乾式粉砕機に有機化合物を添加する方法、(2)乾式粉砕後に、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、二酸化チタンと有機化合物を攪拌、混合する方法、(3)含水緻密シリカを処理した後または更に無機化合物を処理した後、水性スラリー中に有機化合物を添加、撹拌する方法等が挙げられる。特に、(1)の方法は、二酸化チタンの粉砕と有機化合物処理を同時に行うことができるので、製造工程が合理的であり、工業的に好ましい。乾式粉砕機としては、粉砕効率がよく混合性にも優れた流体エネルギー粉砕機が好ましく、中でもジェットミルのような旋回式のものがより好ましい。
【0019】
本発明で用いることができる有機化合物としては、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、ペンタエリスリトール等のポリオール類、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミンジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等のアルカノールアミン類及びそれらの酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等の誘導体が挙げられる。これらは、1種を処理しても、2種以上を混合物で処理しても、積層してもよい。有機化合物の中では、ポリオール類が好ましく、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが更に好ましい。有機化合物の処理量は、二酸化チタン粒子に対し0.1〜5重量%の範囲にあるのが好ましく、0.1〜2重量%の範囲であれば更に好ましい。
【0020】
本発明で得られた二酸化チタン顔料を、塗料組成物に用いるのあれば、樹脂成分としては、例えば、アルキド系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ系樹脂、アミノ系樹脂、フッ素系樹脂、変成シリコーン系樹脂、ウレタン系樹脂、ビニル系樹脂等が挙げられ、適宜選択できる。これらの樹脂成分は、有機溶剤溶解型、水溶型、エマルジョン型等特に制限は無く、硬化方式も加熱硬化型、常温硬化型、紫外線硬化型、電子線硬化型等制限は受けない。塗料用組成物には、アルコール類、エステル類、エーテル類、ケトン類、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等の有機溶剤、水またはそれらの混合溶剤が、溶媒として含まれていてもよく、溶媒は樹脂成分との適性に応じて選択する。その他にも、目的に応じて有機顔料、無機顔料、染料等の着色剤、増量剤、界面活性剤、可塑剤、硬化助剤、ドライヤー、消泡剤、増粘剤、乳化剤、フロー調整剤、皮張り防止剤、色分れ防止剤、紫外線吸収剤、防カビ剤等の各種添加剤、充填剤等が含まれていてもよい。あるいは、硬化剤、硬化助剤、硬化性樹脂成分を別に硬化液とし、塗装時に塗料に混合して用いる二液性塗料とすることもできる。
【実施例】
【0021】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0022】
実施例1
(1)シリカ処理工程
塩素法で得られた平均粒子径が0.25μmの二酸化チタン粒子を用い、これと分散剤としてP換算で0.05重量%に相当するピロリン酸ナトリウムとを水に添加し、サンドミルを用いて予備粉砕を行い二酸化チタン濃度300g/リットルの水性スラリー(試料a)を得た。このスラリー0.4リットルを攪拌しながら80℃に昇温し、この温度を維持しながら、二酸化チタン粒子に対し、SiO換算で4重量%に相当するケイ酸ナトリウム水溶液を添加した後、pHが7.5前後になるよう硫酸(1規定)を80分かけて添加して中和した。その後、1時間撹拌して熟成させ二酸化チタン粒子の表面を緻密含水シリカで処理した。次に、液温を70℃に調整し、二酸化チタン粒子に対し、Al換算で0.05重量%に相当するアルミン酸ナトリウム水溶液を、攪拌しながら添加し、添加後30分間撹拌して熟成した。
【0023】
(2)アルミナ処理工程及び有機化合物処理工程
引き続き、二酸化チタン粒子に対し、Al換算で2重量%に相当するアルミン酸ナトリウム水溶液と、硫酸(1規定)をpHが7.5前後に保持されるように、同時に並行して添加して中和し、更に1時間撹拌して熟成させ、含水アルミナ処理をした。その後、pHを6〜8の範囲に調整し、ろ過、洗浄してから、120℃で15時間乾燥した。次いで、気流粉砕機で粉砕しながら、二酸化チタン粒子に対し、0.5重量%のトリメチロールプロパンを添加、撹拌してトリメチロールプロパン処理して、本発明の二酸化チタン顔料(試料A)を得た。
【0024】
実施例2
実施例1において、(1)のシリカ処理工程の後で、サンドミルを用いて湿式粉砕を行った以外は、実施例1と同様にして本発明の二酸化チタン顔料(試料B)を得た。
【0025】
実施例3〜5
実施例2において、(1)のシリカ処理工程で、アルミン酸ナトリウムに替えて、二酸化チタン粒子に対し、それぞれP換算で0.05重量%に相当するピロリン酸ナトリウム、ZrO換算で0.05重量%に相当する硫酸ジルコニウム、TiO換算で0.05重量%に相当する四塩化チタンを用いた以外は、実施例2と同様にして本発明の二酸化チタン顔料(試料C〜E)を得た。
【0026】
実施例6
実施例1の水性スラリー(試料a)0.4リットルを攪拌しながら80℃に昇温し、この温度を維持しながら、二酸化チタン粒子に対し、SiO換算で4重量%に相当するケイ酸ナトリウム水溶液を添加し、次いで二酸化チタン粒子に対し、Al換算で0.05重量%に相当するアルミン酸ナトリウム水溶液を添加した後、pHが7.5前後になるよう硫酸(1規定)を80分かけて添加して中和した。その後、1時間撹拌して熟成させ二酸化チタン粒子の表面を緻密含水シリカで処理した。その後は実施例2と同様に湿式粉砕、アルミナ処理、有機化合物(トリメチロールプロパン)処理を行い、本発明の二酸化チタン顔料(試料F)を得た。
【0027】
比較例1及び2
実施例1及び2において、(1)のシリカ処理工程でアルミン酸ナトリウムを添加しなかった以外は、それぞれ実施例1、実施例2と同様にして比較例の二酸化チタン顔料(試料G、H)を得た。
【0028】
比較例3
実施例1の水性スラリー(試料a)0.4リットルを攪拌しながら70℃に昇温し、Al換算で2重量%に相当するアルミン酸ナトリウム水溶液と、硫酸(1規定)をpHが9.0〜9.5の範囲に保持されるように、同時に並行して添加して中和し、更に1時間撹拌して熟成させ、二酸化チタン粒子の表面を含水アルミナで処理した。その後は、実施例1と同様に、pH調整、ろ過洗浄、乾燥、トリメチロールプロパンの処理を行い比較例の二酸化チタン顔料(試料I)を得た。
【0029】
評価1:光沢の評価
実施例1〜6及び比較例1〜3で得られた試料(A〜I)を用い、表1に示す処方1の各成分とガラスビーズ80gとを容量225ccのガラス製容器に仕込み、ペイントコンディショナー(レッドデビル社製)を用いて20分間分散して分散液を調整した後、表2に示す処方2にて、樹脂成分1重量部に対し二酸化チタン顔料1重量部、固形分体積濃度46%の塗料組成物とした。次いで、得られた塗料組成物を4ミルアプリケーターを用いてガラス板上に塗布し、120℃で30分間焼きつけ、塗膜化した。ガラス板上に塗布した塗膜上の20度光沢値を、光沢計(GM−26D型:村上色彩研究所製)を用いて計測した。結果を表3に示す。自動車、建築材料等の高光沢が要求される高級工業用塗料の分野では、20度光沢値が2〜3ポイント程度高ければ、光沢が良好であると見なされる。従って、本発明で得られた二酸化チタン顔料は、光沢が優れていることが判る。
【0030】
【表1】

【0031】
【表2】

【0032】
評価2:耐候性の評価
評価1で得られた塗料組成物を、乾燥膜厚が70μmになるようにバーコーターを用いてプライマー(リン酸亜鉛)処理済鋼板上に塗布し、140℃で30分間焼きつけ試験片を作製した。この試験片を、キセノンウェザーメーターを用いて促進曝露試験(試験条件:5分間のキセノンランプ照射毎に1重量%の濃度の過酸化水素水を2分間噴霧、ブラックパネル温度50℃)した。一定間隔毎に、60度光沢値を光沢計(GM−26D型:村上色彩研究所製)を用いて計測し、白亜化度をJISK5400に準じた方法で評価した。結果を表3に示す。60度光沢値が初期60度光沢値の70%以下になるのに要する時間、及び、白亜化が発生するのに要する時間が長い程、耐候性が優れている。本発明で得られた二酸化チタン顔料は、耐候性が優れていることが判る。
【0033】
【表3】

【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明で得られた二酸化チタン顔料は、自動車、建築材料等の高級工業用塗料に有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン粒子の水性スラリー中で水溶性ケイ酸塩を少なくとも70℃の温度下で、4.5〜10.5の範囲のpHで少なくとも30分かけて中和して二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカを処理するシリカ処理工程を有する二酸化チタン顔料の製造方法において、前記中和前及び/又は後に、二酸化チタン粒子に対し酸化物換算で0.005重量%以上0.1重量%未満の範囲に相当するアルミニウム、ジルコニウム、チタン、リン、スズ、アンチモンまたは亜鉛から選ばれる少なくとも1種の元素の水溶性塩を添加する工程を含むことを特徴とする二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項2】
緻密含水シリカの処理量が二酸化チタン粒子に対しSiO換算で1〜10重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項3】
シリカ処理工程において、中和時及び/又は中和後にスラリーを湿式粉砕処理する工程を有することを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項4】
シリカ処理工程に続いて、更に水性スラリー中で二酸化チタン粒子に対しAl換算で0.5〜5重量%の範囲に相当する水溶性アルミニウム塩を中和して含水アルミナを処理するアルミナ処理工程を有することを特徴とする請求項1に記載の二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項5】
アルミナ処理工程の後に、更に二酸化チタン顔料の表面に有機化合物を処理する工程を有することを特徴とする請求項4に記載の二酸化チタン顔料の製造方法。
ある。