説明

二酸化チタン顔料及びその製造方法並びにそれを含む樹脂組成物

【課題】分散性、耐光性、耐候性が優れ、しかも表面欠陥が発生し難いプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料を提供するものである。特に、高濃度で配合しても、分散性、耐レーシング性に優れた汎用プラスチック樹脂組成物に好適な二酸化チタン顔料、並びに、分散性、耐シルバーストリーク性、分子量低下の抑制、耐熱変色性のいずれの物性も、高水準で満足できるエンジニアリングプラスチックス樹脂組成物に好適な二酸化チタン顔料及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂組成物を提供するものである。
【解決手段】二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を有し、前記被覆層上に中間層を介することなく有機化合物の被覆層を有することを特徴とするプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料及びその製造方法並びにそれを含む樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックス樹脂は、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、メタクリル樹脂等の汎用プラスチックス樹脂と呼ばれるもの、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリアミド樹脂等のエンジニアリングプラスチックス樹脂と呼ばれるもの等、多種多様であり、それぞれの特性に応じて、シート、フィルム、ラミネート、注形品等に成形され、種々の分野で用いられている。これらのプラスチックス樹脂を用いた組成物には隠蔽性を求められるものも多く、通常、可視光の屈折率が高い二酸化チタン顔料が配合されている。
【0003】
しかし、二酸化チタン顔料は表面の触媒活性が高いので、これを配合したプラスチックス樹脂組成物は耐光性、耐候性が低く、経時的に劣化や変色が生じ易い。また、二酸化チタン顔料を高温度で樹脂組成物に配合し、加工する際に、一般的にレーシング(発泡)、ピンホール等と呼ばれる表面欠陥が生じ易く、樹脂組成物の商品価値を大きく損ねている。このような表面欠陥は、二酸化チタン顔料からの揮発水分に起因している言われている。
【0004】
プラスチックス樹脂の中でもエンジニアリングプラスチックス樹脂は、耐衝撃性、耐熱性、電気特性、透明性が優れ、加工精度が高いという特徴を有しているが、溶融温度が高いものが多く、汎用プラスチックス樹脂より高温度で加工する必要があり、前記のような表面欠陥が生じ易くなる。エンジニアリングプラスチックス樹脂では、この表面欠陥が射出成形品の表面に白っぽい筋状の模様となって現れ易く、この模様はシルバーストリークと呼ばれることがある。更に、揮発水分によりエンジニアリングプラスチックス樹脂が加水分解反応し、樹脂の分子量が低下して強度を損うという問題もある。また、ポリカーボネート樹脂のように一部の樹脂種では、高温度で黄味がかった色調に変色し易いという問題もある。
【0005】
このような現象に対処するため、例えば、汎用プラスチックス樹脂組成物用の、とりわけポリオレフィン樹脂組成物用の二酸化チタン顔料の表面に、有機シラン化合物の加水分解生成物を被覆する技術(特許文献1参照)が知られている。これは前記加水分解生成物の被覆により、二酸化チタン顔料を疎水化して、水分の吸着を抑制することで揮発水分量の低減を図り、表面欠陥の生成を抑制するものである。
【0006】
また、ポリカーボネート樹脂組成物及びポリエチレンテレフタレート樹脂組成物に配合する二酸化チタン顔料では、例えば、含水シリカ、含水アルミナ等の含水酸化物で被覆した後、反応性ポリシロキサンで被覆し、更に有機ケイ素化合物等の有機金属化合物で被覆する技術(特許文献2参照)が知られている。
【0007】
【特許文献1】特開平10−324817号公報
【特許文献2】特開平9−3211号公報
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、表面欠陥を抑制する効果が高いが、二酸化チタン顔料の有する触媒活性を抑えて、耐光性、耐候性を改良することに関しては十分とはいえない。
【0009】
また、特許文献2記載の二酸化チタン顔料は、エンジニアリングプラスチックス樹脂組成物の加水分解の抑制や耐熱変色性には優れた効果を示すものの、シルバーストリークの発生を抑制する点においては十分とはいえない。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、分散性、耐光性、耐候性が優れ、しかも表面欠陥が発生し難いプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料を提供するものである。特に、高濃度で配合しても、分散性、耐レーシング性に優れた汎用プラスチック樹脂組成物に好適な二酸化チタン顔料、並びに、分散性、耐シルバーストリーク性、分子量低下の抑制、耐熱変色性のいずれの物性も、高水準で満足できるエンジニアリングプラスチックス樹脂組成物に好適な二酸化チタン顔料及びその製造方法、並びにそれを用いた樹脂組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、二酸化チタン粒子の表面に無機化合物として含水シリカのみを用いて緻密な層として被覆し、更に有機化合物を中間層を介することなく被覆すれば、優れた耐光性、耐候性を付与でき、しかもこのものを樹脂組成物に配合したとき分散性に優れ、表面欠陥がほとんど認められないプラスチックス樹脂組成物が得られることを見出し、本発明を完成した。
【0012】
すなわち、本発明は、二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を有し、前記被覆層上に中間層を介することなく有機化合物の被覆層を有することを特徴とするプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラスチックス樹脂組成物用二酸化チタン顔料により、表面欠陥がほとんどなく、しかも分散性、耐光性、耐候性が優れた組成物が得られる。
【0014】
特に、本発明の二酸化チタン顔料を、高濃度で配合しても、レーシング、シルバーストリークのような表面欠陥の発生がほとんどなく、強度が高い樹脂組成物が得られる。しかもポリカーボネート樹脂のような一部の樹脂種においては、熱変色がほとんど生じないという効果をも奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明は、プラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料であって、二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を有し、前記被覆層上に中間層を介することなく有機化合物の被覆層を有することを特徴とする。二酸化チタン顔料は、前述のように表面の触媒活性が高く、二酸化チタン顔料の耐光性、耐候性を改良する技術としては、従来より、シリカ、アルミナ等の含水酸化物(または水和酸化物、または水酸化物)、無水酸化物等の無機化合物を表面に被覆する技術が知られている。ところが、含水酸化物は高温度下で結晶水が脱離するので、脱離した結晶水が揮発水分となり、表面欠陥を発生させる要因になると考えられる。このため、含水酸化物では被覆量を多くできず、表面欠陥の抑制と耐光性、耐候性の改良とを両立させることが困難であった。無水酸化物を被覆した二酸化チタン顔料は、通常、含水酸化物を被覆した後、高温で加熱焼成して得られるので、顔料の粒子が焼結して分散性の大幅な低下を招く。本発明で用いる緻密含水シリカは、含水酸化物であっても結晶水が脱離し難く、しかも、二酸化チタン顔料の触媒活性を抑制する効果が高いと考えられる。一方、シリカの被覆は緻密、多孔質、含水、無水に係らずプラスチックス樹脂との親和性を低下させる傾向にあり、このため、本発明では有機化合物を被覆することで、親和性を改良して優れた分散性を付与している。
【0016】
本発明においては、二酸化チタン粒子に被覆する無機化合物として緻密含水シリカのみを用いることが重要であり、十分な耐光性、耐候性を付与するために、含水アルミナ、含水酸化ジルコニウム、含水酸化チタン、含水酸化スズ、含水酸化アンチモン等を被覆したり、これらを緻密含水シリカと併用して被覆したり、あるいは、多孔質含水シリカを単独で被覆しても、揮発水分量を低減できず、本発明の効果が得られ難い。緻密含水シリカの被覆量は、二酸化チタン粒子に対しSiO換算で0.5〜6重量%の範囲にあることが好ましい。緻密含水シリカの被覆量が前記範囲より少ないと、所望の耐光性、耐候性、更にはポリカーボネート樹脂に配合する際には耐変色性が得られ難く、前記範囲より多いと、結晶水の含有量が多くなり過ぎ、揮発水分量を低減させ難くなる。より好ましい被覆量の範囲は、1〜3重量%である。
【0017】
本発明で用いる有機化合物としては、例えば、ポリオール類、有機ケイ素化合物、アルカノールアミン類またはその誘導体、高級脂肪酸類またはその金属塩、高級炭化水素類またはその誘導体等が好ましい。より好ましくは、ポリオール類及び/又は有機ケイ素化合物である。これらは、単独で被覆しても、2種以上を混合物で被覆しても、積層して被覆してもよい。有機化合物の被覆量は、二酸化チタン粒子に対し0.5〜5重量%の範囲にあるのが好ましく、この範囲より被覆量が少ないと、二酸化チタン顔料の疎水化が不十分になり、樹脂との親和性に劣りやすくなるなど所望の効果が得られ難く、この範囲より多くても更なる効果は得られず、二酸化チタン顔料から遊離して樹脂組成物の表面にブリードしてしまう場合がある。より好ましい被覆量は、0.5〜4重量%の範囲である。
【0018】
これらの有機化合物は、用いるプラスチック樹脂の種類に応じて、適宜選択することができる。中でも、ポリオール類は樹脂種の選択性が低く、広範囲に適用できるので好ましい。また、ポリオール類は、水分の吸着量をある程度まで低下させる効果も有する。ポリオール類を用いる最も好ましい実施形態は、緻密含水シリカを1〜3重量%の範囲で、ポリオール類を0.5〜2重量%の範囲で被覆した二酸化チタン顔料である。高温度における揮発水分量を表す指標として、例えば、100℃及び300℃の温度下でのカールフィッシャー水分量の差で表すと、この二酸化チタン顔料は多くとも2500ppmとなる。
【0019】
一方、有機ケイ素化合物は二酸化チタン顔料を高度に疎水化でき、水分の吸着を抑制して揮発水分量を大幅に低減させることができるので、好ましい有機化合物の一つである。有機ケイ素化合物を用いる最も好ましい実施形態は、緻密含水シリカを1〜3重量%の範囲で、有機ケイ素化合物を0.5〜2重量%の範囲で被覆した二酸化チタン顔料である。この実施形態における100℃及び300℃の温度下でのカールフィッシャー水分量の差は、多くとも2000ppmとなる。
【0020】
本発明の二酸化チタン顔料は分散性にも優れており、下記の分散性評価方法で評価した場合、40kg/cm以下の分散性を有している。特に、有機ケイ素化合物は分散性を向上させる効果が高く、有機ケイ素化合物を用いた前記実施形態では、30kg/cm以下の分散性が得られる。
【0021】
(分散性評価方法)
二酸化チタン顔料500gと冷凍粉砕したポリチレン樹脂(スミカセンL−705:住友化学工業製)500g及びステアリン酸亜鉛20gをジュースミキサーで5分間混合する。このものを、ラボプラストミル二軸押出し機(東洋精機製)を用いて、樹脂温度を280℃に設定し、排出側に1450メッシュのスクリーンを設置し、1時間かけて溶融押出しする。押出し開始時と1時間押出し後の樹脂圧を測定し、その差を分散性の値とする。
【0022】
本発明で用いることができるポリオール類として、具体的には、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、ジトリメチロールプロパン、トリメチロールプロパンエトキシレート、ペンタエリスリトール等が挙げられ、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンが好ましい。
【0023】
また、本発明で用いることができる有機ケイ素化合物として、例えば、オルガノシラン類、オルガノポリシロキサン類、オルガノシラザン類が挙げられる。
【0024】
具体的には、オルガノシラン類としては(a)アミノシラン(アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等)、(b)エポキシシラン(γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等)、(c)メタクリルシラン(γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン等)、(d)ビニルシラン(ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等)、(e)メルカプトシラン(3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等)、(f)クロロアルキルシラン(3−クロロプロピルトリエトキシシラン等)、(g)アルキルシラン(n−ブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルメチルジメトキシシラン、ヘキシルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジエトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等)、(h)フェニルシラン(フェニルトリエトキシシラン等)、(i)フルオロアルキルシラン(トリフルオロプロピルトリメトキシシラン、トリデカフルオロオクチルトリメトキシシラン等)等、またはそれらの加水分解生成物が挙げられる。
【0025】
また、オルガノポリシロキサン類としては(a)ストレート型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサン、メチルメトキシポリシロキサン、メチルフェニルポリシロキサン等)、(b)変性型ポリシロキサン(ジメチルポリシロキサンジオール、ジメチルポリシロキサンジハイドロジェン、側鎖または両末端アミノ変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端エポキシ変性ポリシロキサン、両末端または片末端メタクリル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端カルボキシル変性ポリシロキサン、側鎖または両末端または片末端カルビノール変性ポリシロキサン、両末端フェノール変性ポリシロキサン、側鎖または両末端メルカプト変性ポリシロキサン、両末端または側鎖ポリエーテル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル変性ポリシロキサン、側鎖メチルスチリル変性ポリシロキサン、側鎖高級カルボン酸エステル変性ポリシロキサン、側鎖フルオロアルキル変性ポリシロキサン、側鎖アルキル・カルビノール変性ポリシロキサン、側鎖アミノ・両末端カルビノール変性ポリシロキサン等)等、またはそれらの共重合体が挙げられる。
【0026】
さらに、オルガノシラザン類としてはヘキサメチルシラザン、ヘキサメチルシクロトリシラザン等が挙げられる。
【0027】
上記有機ケイ素化合物の中でも、疎水性の官能基、例えば、メタクリル基(−OCOC(CH)=CH)、ビニル基(−CH=CH)、アルキル基(−R)、アリール基(−Ph、−Ar等)、カルボン酸エステル基(−OCOR)、アシル基(−COR)、ポリエーテル基(−(RO)(RO))、フッ素含有基(−(CHCF、−(CFCF等)等を有する有機ケイ素化合物がより好ましく、疎水性官能基を有するオルガノシラン類またはオルガノポリシロキサン類であれば更に好ましい。
【0028】
特に、プラスチックス樹脂として汎用プラスチックス樹脂に配合する場合には、有機ケイ素化合物としては、炭素数が4〜10のアルキルシランまたはその加水分解生成物および/またはジメチルポリシロキサンであればいっそう好ましい。また、プラスチックス樹脂としてエンジニアリングプラスチックス樹脂に配合する場合には、有機ケイ素化合物として炭素数が4〜10のアルキルシラン、その加水分解生成物、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサンから選ばれる少なくとも一種であればいっそう好ましい。アルキルシランとして、アルキル基の中で炭素数が最大のものが6(ヘキシル基)であるアルキルシランを用いると、より一層分散性と耐熱性とに優れた二酸化チタン顔料が得られる。尚、オルガノシラン類の加水分解生成物とは、オルガノシラン類が有する加水分解性基が加水分解されてシラノールになったもの、シラノール同士が縮重合してダイマー、オリゴマー、ポリマーになったものを言う。
【0029】
エンジニアリングプラスチックス樹脂の中でも、特に、ポリカーボネート樹脂に本発明の二酸化チタン顔料を配合する場合には、有機化合物としてはメチル水素ポリシロキサンを用いるのが最も好ましい。ポリカーボネート樹脂はエンジニアリングプラスチックス樹脂の1種であり、高温度での成形時に変色し易いことが知られているが、有機化合物にメチル水素ポリシロキサンを用いると、ポリカーボネート樹脂の耐熱変色性にも優れたものとなる。ポリカーボネート樹脂の熱変色は樹脂の酸化に起因し、更に二酸化チタン顔料の触媒活性が酸化を促進すると言われている。メチル水素ポリシロキサンは還元性を有し、緻密含水シリカの被覆との相乗効果により、耐熱変色性を付与していると考えられる。
【0030】
また、本発明で用いることができるその他の有機化合物についても具体的に挙げると、アルカノールアミン類としては、モノエタノールアミン、モノプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、トリエタノールアミン、トリプロパノールアミン等が、それらの誘導体としては、それらの酢酸塩、シュウ酸塩、酒石酸塩、ギ酸塩、安息香酸塩等の有機酸塩等である。高級脂肪酸類としては、ステアリン酸、ラウリン酸、オレイン酸等が、それらの金属塩としては、アルミニウム塩、亜鉛塩、マグネシウム塩、カルシウム塩、バリウム塩等である。高級炭化水素類としては、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等が、それらの誘導体としては、パーフルオロ化物等である。
【0031】
本発明の酸化チタン顔料は、0.1〜0.4μmの範囲の平均粒子径(電子顕微鏡写真法)を有するものが好ましく、0.1〜0.25μmの範囲にあれば更に好ましい。その結晶形はアナタ−ゼ型、ルチル型のいずれでもよく、両者の混合物であってもよく、本発明の目的が損なわれない範囲で、非晶質の二酸化チタンが一部に含まれていてもよい。二酸化チタン顔料は、例えば、硫酸チタン溶液を加水分解するいわゆる硫酸法によって得ても、あるいはハロゲン化チタンを気相酸化するいわゆる塩素法によって得てもよく、特に制限は無い。
【0032】
次に、本発明は、プラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料の製造方法であって、二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を形成した後、更にその被覆層の表面に有機化合物の被覆層を形成することを特徴とする。
【0033】
まず、二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を形成する。その方法は、特開昭53−33228号公報等に記載されているような公知の方法を用いることができる。特開昭53−33228号公報に記載の方法は、二酸化チタン粒子のスラリーを80〜100℃の範囲の温度に維持しながら、好ましくはスラリーのpHを9〜10.5の範囲に調整し、ケイ酸ナトリウムを急速に添加した後、9〜10.5の範囲のpHで中和し、その後、80〜100℃の範囲の温度を50〜60分間保持するものである。本発明においては、更に、以下の方法によっても緻密含水シリカの被覆層を得ることができる。
【0034】
(緻密含水シリカの被覆層の形成方法)
先ず、二酸化チタン粒子を水中に分散させて、水性スラリーを得る。この際に、二酸化チタン粒子の凝集程度に応じて、縦型サンドミル、横型サンドミル、ボールミル等の湿式粉砕機を用いてもよい。水性スラリーのpHを9以上に調整すると、二酸化チタン粒子が水中に安定して分散するので好ましい。pH調整には、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の水酸化物または炭酸塩、アンモニウム化合物等の公知の塩基性化合物を用いることができ、中でも水酸化ナトリウムを用いるのが工業的に好ましい。また、必要に応じて、例えば、ヘキサメタリン酸ナトリウム、ピロリン酸ナトリウム等のリン酸化合物、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等のケイ酸化合物等の分散剤を用いてもよい。水性スラリー中の二酸化チタン粒子の固形分濃度は、50〜800g/リットルの範囲であり、好ましくは100〜500g/リットルの範囲である。800g/リットルより濃度が高いと、水性スラリーの粘度が高くなり過ぎ、緻密シリカの均一な被覆が困難になる。また、50g/リットルより低いと、工業上の操作性が低下する。
【0035】
調製した水性スラリー中で、ケイ酸塩を酸性化合物で30分間以上かけて中和し、緻密含水シリカの被覆を二酸化チタン粒子の表面に形成する。中和は1時間以上で行うのが、更に好ましい。中和pHは4〜7.5の範囲に、また、中和時の水性スラリーの温度が少なくとも80℃であれば、緻密な被覆が形成され易いので好ましい。より好ましい中和pHの範囲は4.5〜7であり、中和温度は90℃以上である。ケイ酸塩には、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム等を用いることができ、酸性化合物には、硫酸、塩酸等の無機酸や、酢酸、ギ酸等の有機酸等を用いることができる。
【0036】
被覆した含水シリカの被覆層が緻密であるかは、SiO換算で同量処理した多孔質含水シリカと比表面積や酸溶解性を測定し比較することで確認される。すなわち、シリカ被覆層が緻密になっていれば、多孔質のものより比表面積が小さく酸溶解性も小さい。尚、本発明における酸溶解性とは次に記載の方法で測定したものである。
【0037】
(酸溶解性測定方法)
試料0.2gを、98%硫酸10ミリリットル中に添加し、1分間超音波分散させた後、180℃の温度で1時間加熱した。続いて、遠心分離機を用いて試料を硫酸から固液分離し、硫酸中の酸化チタン量(TiO換算)を比色法により測定し、測定値から下式により算出する。
式:酸溶解性(%)=(酸化チタン量(g)/0.2(g)(試料の仕込み量))×100
【0038】
緻密含水シリカを被覆した二酸化チタン粒子に、有機化合物を被覆するには、(1)前記二酸化チタン粒子を水性スラリーから固液分離、乾燥した後、有機化合物と気相中で接触させることにより、有機化合物の被覆層を形成する方法、若しくは、(2)前記二酸化チタン粒子と有機化合物とを水性スラリー中で接触させる方法が挙げられる。一般的に、(1)の方法は有機化合物の歩留まりが良く、(2)の方法は均一な被覆が行えるので、有機化合物の種類に応じて適宜選択する。例えば、ポリオール類、アルカノールアミン類またはその誘導体、オルガノポリシロキサン類、高級脂肪酸類はその金属塩、高級炭化水素類のように、二酸化チタン粒子との結合力があまり強くないか、結合しない化合物であれば、(1)の方法を適用するのが好ましい。一方、オルガノシラン類の加水分解生成物のように、二酸化チタン粒子と強固に結合する化合物や、高級脂肪酸類の中でも、ステアリン酸ナトリウム等のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩は中和されると、二酸化チタン粒子と強固に結合するので、(2)の方法を適用することもできる。
【0039】
(1)の方法において、前記二酸化チタン粒子と有機化合物とを気相中で接触させるには、流体エネルギー粉砕機、衝撃粉砕機等の乾式粉砕機や、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサー等の高速攪拌機等を用い、両者を攪拌、混合することで行うことができる。特に、乾式粉砕機を用いる方法は、二酸化チタン粒子の粉砕と被覆を同時に行うことができるので、製造工程が合理的であり、工業的に好ましい。乾式粉砕機としては、粉砕効率が良く混合性にも優れた流体エネルギー粉砕機が更に好ましく、中でもジェットミルのような旋回式のものが、より一層好ましい。尚、固液分離の際には、必要に応じて洗浄を行ってもよい。
【0040】
(2)の方法においては、二酸化チタン粒子に緻密含水シリカを被覆した後、引き続き、水性スラリーに有機化合物を添加し、攪拌、混合すると、工程を連続的に行えるので好ましい。疎水性が非常に強い有機化合物であっても、低級アルコール等の相溶剤を加えると、本方法を適用し易くなる。二酸化チタン粒子との結合に最適のpH領域を有する化合物を被覆する場合、酸性化合物または塩基性化合物を用いて、水性スラリーのpHを調整するのが好ましい。例えば、オルガノシラン類の加水分解生成物であれば、pHが0.5〜6の範囲に調整するのが好ましく、1.5〜4の範囲が更に好ましい。有機化合物を被覆した後は、必要に応じて洗浄を行い、固液分離、乾燥、粉砕を行う。
【0041】
さらに、本発明はプラスチックス樹脂組成物であって、前記二酸化チタン顔料及びプラスチックス樹脂とを含むことを特徴とする。
【0042】
本発明で用いるプラスチックス樹脂としては、(I)熱可塑性樹脂((1)汎用プラスチックス樹脂((a)ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレン等)、(b)ポリ塩化ビニル樹脂、(c)ABS樹脂、(d)ポリスチレン樹脂、(e)メタクリル樹脂、(f)ポリ塩化ビニリデン樹脂等)、(2)エンジニアリングプラスチックス樹脂((a)ポリカーボネート樹脂、(b)ポリエチレンテレフタレート樹脂、(c)ポリアミド樹脂、(d)ポリアセタール樹脂、(e)変性ポリフェニレンエーテル、(f)フッ素樹脂等)、(II)熱硬化性樹脂((a)エポキシ樹脂、(b)フェノール樹脂、(c)不飽和ポリエステル樹脂、(d)ポリウレタン樹脂、(e)メラミン樹脂、(f)シリコーン樹脂等)等、特に制限は無い。さらに、耐衝撃性、耐スクラッチ性、耐薬品性、流動性等の物性改良の目的で、上記樹脂の2種以上を併用することもできる。
【0043】
本発明では、樹脂種がポリエチレン樹脂等の汎用プラスチックス樹脂の場合には、前記の汎用プラスチックス用の二酸化チタン顔料、すなわち、有機化合物としてトロメチロールプロパン、トリメチロールエタン、炭素数が4〜10のアルキルシランまたはその加水分解生成物、ジメチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも一種の有機化合物の被覆層を有する二酸化チタン顔料を用いることが好ましい。本発明の汎用プラスチックス樹脂組成物は、レーシング、ピンホール等の表面欠陥がほとんど無く、優れた耐光性、耐候性を有する。このため、日用雑貨、フィルム、機械部品、電気・電子部品、建築部材、医療用器具等の成形品に有用である。また、本発明はこのような成形品ばかりでなく、マスターバッチ、カラーペレット等の中間品にも適用でき、特に高顔料濃度にしても表面欠陥が生じ難いので、マスターバッチに有用である。
【0044】
本発明では、樹脂種がポリカーボネート樹脂等のエンジニアリングプラスチックス樹脂の場合には、前記のエンジニアリングプラスチックス用の二酸化チタン顔料、すなわち、有機化合物としてトロメチロールプロパン、トリメチロールエタン、炭素数が4〜10のアルキルシランまたはその加水分解生成物、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサンから選ばれる少なくとも一種の有機化合物の被覆層を有する二酸化チタン顔料を用いることが好ましい。本発明のエンジニアリングプラスチックス樹脂組成物は、シルバーストリークのような加工不良がほとんど無く、強度等の物性も優れている。また、ポリカーボネート樹脂組成物としては、優れた耐熱変色性を有している。このため、機械部品、電気・電子機器の部品やハウジング、医療器具、光学部品、包装材、プリペイドカード、自動車部材等の成形品として有用である。また、本発明はこのような成形品ばかりでなく、マスターバッチ、カラーペレット等の中間品にも適用でき、特に高顔料濃度にしても耐変色性、耐シルバーストリークス性が優れているので、マスターバッチに有用である。
【0045】
二酸化チタン顔料とプラスチックス樹脂との配合割合は特に制限されないが、プラスチックス樹脂100重量部に対し、通常は二酸化チタン顔料が1〜80重量部の範囲、更に好ましくは1〜60重量部の範囲であり、マスターバッチであれば、10〜900重量部の範囲、更に好ましくは50〜500重量部の範囲である。また、用途に応じて当業者に公知のガラス繊維等の補強材や、安定剤、分散剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、充填剤等の種々の添加剤を加えてもよい。
【0046】
これらの樹脂組成物は、溶融した樹脂に前記二酸化チタン顔料を混練機を用いて配合して得られる。混練機としては、一般的に使用されるものでよく、例えば一軸押出機、二軸押出機、バンバリーミキサー等のインテンシブルミキサー、ロール成形機等が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に実施例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明の範囲がこれによって制限されるものではない。
【0048】
1.汎用プラスチックス樹脂組成物用二酸化チタン顔料に係わる実施例
【0049】
実施例1
(緻密含水シリカ被覆の形成)
平均粒子径が0.2μmのルチル型二酸化チタン粒子を水と混合し、水酸化ナトリウムでpHを10に調整し、二酸化チタンの重量として300g/リットルの水性スラリーを調整した。このスラリーを80℃に保持したまま、攪拌しながらケイ酸ナトリウムをSiOとして二酸化チタン粒子の重量に対して2重量%添加し、次いで1時間かけて硫酸でpHを5近辺に中和し、緻密含水シリカの被覆を形成した。
【0050】
(トリメチロールプロパンの被覆の形成)
緻密含水シリカの被覆層を形成した二酸化チタン粒子を、水性スラリーから濾別、洗浄し、120℃で16時間乾燥し、ジェットミルで粉砕しながら、二酸化チタン粒子に対してトリメチロールプロパンを0.5重量%を添加して混合して被覆し、本発明の二酸化チタン顔料(試料A)を得た。
【0051】
実施例2
緻密含水シリカの被覆量を3重量%とした以外は実施例1と同様にして、本発明の二酸化チタン顔料(試料B)を得た。
【0052】
実施例3
トリメチロールプロパンに替えてヘキシルトリエトキシランの加水分解生成物を0.8重量%添加した以外は実施例1と同様にして、本発明の二酸化チタン顔料(試料C)を得た。
【0053】
実施例4
トリメチロールプロパンに替えてジメチルポリシロキサンを用いた以外は実施例1と同様にして、本発明の二酸化チタン顔料(試料D)を得た。
【0054】
比較例1
緻密含水シリカを被覆しないこと以外は実施例1と同様にして、二酸化チタン顔料(試料E)を得た。
【0055】
比較例2
実施例1の第1の工程で緻密含水シリカを被覆した後、引き続き水性スラリーを攪拌しながら、アルミン酸ナトリウムをAlとして二酸化チタン粒子の重量に対して2重量%添加し、次いで硫酸でpHを5に中和し含水アルミナを被覆した以外は、実施例1と同様にして二酸化チタン顔料(試料F)を得た。
【0056】
比較例3
実施例1の第1の工程で、中和時間を10分とし、多孔性含水シリカの被覆を形成した以外は、実施例1と同様にして二酸化チタン顔料(試料G)を得た。
【0057】
評価1(酸溶解性)
実施例1及び比較例3で得られた試料(A、G)について、先に記載の方法に従い酸溶解性を測定した。酸溶解性の数値が小さい程、緻密な含水シリカの被覆層が形成されていると考えられる。
【0058】
評価2(比表面積)
実施例1及び比較例3で得られた試料(A、G)の比表面積を、比表面積測定装置(フローソーブ2300型:株式会社島津製作所製)を用い、BET法により測定した。比表面積が小さい程、緻密な含水シリカの被覆層が形成されていると考えられる。
【0059】
以上の評価結果を表1に示す。本発明の二酸化チタン顔料には、緻密な含水シリカが被覆されていることが判る。
【0060】
【表1】

【0061】
評価3(カールフィッシャー水分)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた試料(A〜G)を、温度25℃、相対湿度55%の恒温恒湿度下で24時間放置し、平衡状態にした後、その試料1gをカールフィッシャー水分測定装置及びそれに付属した水分気化装置(いずれも三菱化学株式会社製)を用いて100℃及び300℃の温度でカールフィッシャー水分量を測定し、その差(Δ300−100)を算出した。前述のように、Δ300−100の値が小さい程、高温度での揮発水分量が小さいと考えられる。
【0062】
以上の評価結果を表2に示す。本発明の二酸化チタン顔料は、揮発水分が少ないことが判る。
【0063】
【表2】

【0064】
評価4(分散性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた試料(A〜G)を、先に記載の方法に従い、樹脂圧上昇を測定し、分散性の評価とした。
【0065】
評価5(耐レーシング性)
上記の分散性試験時に、ラボプラストミルの排出側にストランドダイを装着し、ストランドから押出される溶融物を目視で観察し、発泡の状態から優劣を判定した。判定基準は以下の通りである。
判定◎:発泡が全く認められない。
判定○:発泡がわずかに認められる。
判定△:発泡が一部に認められる。
判定×:発泡が全体に認められる。
【0066】
評価6(耐光性)
実施例1〜4及び比較例1〜3で得られた試料(A〜G)を用い、表3、4に示す処方1、2を、V型ブレンダーを用いて混合した。排出側にTダイを装着した二軸押出し機(池貝製:PCM‐30型)を用い、樹脂温度が250℃になるように混合物を加熱溶融して混練し押出し、シートロールで厚さが0.8mmのシートに成形した。作製したシートをブラックライト(波長:λ=360nm)を用いて、照射距離を30cmに設定して10日間曝露した。曝露前後のハンター表色系によるシートのL値、a値、b値をカラーコンピューター(SM−7型:スガ試験機製)を用いて測色し、下式に従いΔEを算出した。ΔEが小さい方が変色が小さく、耐光性に優れている。
式:ΔE={(ΔL)+(Δa)+(Δb)1/2
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
以上の評価結果を表5に示す。本発明の二酸化チタン顔料は、汎用プラスチックス樹脂における耐レーシング性、分散性、耐光性に優れていることが判る。
【0070】
【表5】

【0071】
2.エンジニアリングプラスチックス樹脂組成物用二酸化チタン顔料に係わる実施例
【0072】
実施例5、6
実施例1、2において、トリメチロールプロパンに替えてメチル水素ポリシロキサンを用いたこと以外はそれぞれ実施例1、2と同様にして、本発明の二酸化チタン顔料を得た。それぞれを試料H、Iとする。
【0073】
比較例4〜6
比較例1〜3において、トリメチロールプロパンに替えてメチル水素ポリシロキサンを用いたこと以外はそれぞれ比較例1〜3と同様にして、二酸化チタン顔料を得た。それぞれを試料J〜Lとする。
【0074】
比較例7
(多孔質含水シリカ被覆層及び含水アルミナ被覆層の形成)
実施例1で用いたスラリーを60℃の温度に保持したまま、攪拌しながらケイ酸ナトリウムをSiOとして二酸化チタン粒子の重量に対して1重量%添加し、次いで10分かけて硫酸でpHを約5に中和し含水多孔質シリカの被覆層を形成し、引き続き、攪拌しながらアルミン酸ナトリウムをAlとして二酸化チタン粒子の重量に対して0.3重量%添加し、次いで硫酸でpHを5に中和し含水アルミナの被覆層を形成した。
【0075】
(ヘキシルトリエトキシシランの加水分解生成物及びメチル水素ポリシロキサンの被覆)
多孔質含水シリカ被覆層、含水アルミナ被覆層を形成した二酸化チタン粒子を、水性スラリーから濾別、洗浄し、120℃で16時間乾燥した。その後、ジェットミルで粉砕しながら、メチル水素ポリシロキサンを酸化チタン粒子に対して2重量%粉砕機中に添加し、更に、ヘキシルトリエトキシシランの加水分解生成物を二酸化チタン粒子に対して1重量%添加して二酸化チタン顔料(試料M)を得た。
【0076】
評価7(酸溶解性及び比表面積)
実施例5及び比較例6で得られた試料(H、L)の酸溶解性及び比表面積を、それぞれ評価1、2と同様にして測定した。
【0077】
以上の評価結果を表6に示す。本発明の二酸化チタン顔料には、緻密な含水シリカが被覆されていることが判る。
【0078】
【表6】

【0079】
評価8(カールフィッシャー水分)
実施例5、6及び比較例4〜7で得られた試料H〜Mを、評価1と同様にしてカールフィッシャー水分を測定し、Δ300−100を算出した。
【0080】
以上の結果を表7に示す。本発明の二酸化チタン顔料は、揮発水分が少ないことが判る。
【0081】
【表7】

【0082】
評価9(耐シルバーストリーク性、耐変色性)
実施例5、6及び比較例4〜7で得られた試料H〜M各々120gとポリカーボネート樹脂(ユーピロンS−2000:三菱ガス化学製)400gとをポリエチレン製の袋に入れ5分間ハンドブレンドした。このものを、排出側にペレタイザー装着した二軸押出機(池貝(株)製:PCM−30型)を用いて樹脂温度を300℃に設定し、7分間かけて溶融押し出してペレットを作製した。縦型射出成形機を用い、作製したペレットを樹脂温度300℃で厚さ1mmのシートに成形した。シート表面の状態を目視で観察し、耐シルバーストリーク性の優劣を判定した。判定基準は以下のとおりである。また、シートのYI値(イエローインデックス)を、カラーコンピューター(SM−7型:スガ試験機製)を用いて計測した。YI値が小さい程、黄色への変色が小さく、耐変色性が優れている。
判定◎:シルバーストリークが全く認められない。
判定○:シルバーストリークがわずかに認められる。
判定△:シルバーストリークが一部に認められる。
判定×:シルバーストリークが全体に認められる。
【0083】
以上の評価結果を、表8に示す。本発明の二酸化チタン顔料は、ポリカーボネート樹脂系における耐シルバーストリーク性と耐変色性とが優れていることが判る。
【0084】
【表8】

【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の汎用プラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料は、日用雑貨、フィルム、機械部品、電気・電子部品、建築部材、医療用器具等に用いられる汎用プラスチックス樹脂組成物に配合して用いることができる。
【0086】
本発明のエンジニアリングプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料は、機械部品、電気・電子部品や電気・電子機器の部品やハウジング、医療器具、光学部品、包装材、プリペイドカード、自動車部材等に用いられるエンジニアリングプラスチックス樹脂組成物に配合して用いることができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を有し、前記被覆層上に有機化合物の被覆層を有することを特徴とするプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料。
【請求項2】
有機化合物がポリオール類、有機ケイ素化合物、アルカノールアミン類またはそれらの誘導体、高級脂肪酸類またはそれらの金属塩、高級炭化水素類またはそれらの誘導体から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項3】
有機化合物がポリオール類及び/又は有機ケイ素化合物であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項4】
有機化合物がトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、炭素数が4〜10のアルキルシランまたはその加水分解生成物、ジメチルポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種であり、プラスチックス樹脂が汎用プラスチックス樹脂であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項5】
有機化合物がトリメチロールプロパン、トリメチロールエタン、炭素数が4〜10のアルキルシランまたはその加水分解生成物、ジメチルポリシロキサン、メチル水素ポリシロキサンから選ばれる少なくとも1種であり、プラスチックス樹脂がエンジニアリングプラスチックス樹脂であることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項6】
有機化合物がメチル水素ポリシロキサンであり、エンジニアリングプラスチックス樹脂がポリカーボネート樹脂であることを特徴とする請求項5記載の二酸化チタン顔料。
【請求項7】
二酸化チタン粒子に対し、緻密含水シリカの被覆量がSiO換算で0.5〜6重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項8】
二酸化チタン粒子に対し、有機化合物の被覆量が0.5〜5重量%の範囲にあることを特徴とする請求項1記載の二酸化チタン顔料。
【請求項9】
二酸化チタン粒子の表面に緻密含水シリカの被覆層を形成した後、更にその表面に有機化合物の被覆層を形成することを特徴とするプラスチックス樹脂組成物用の二酸化チタン顔料の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の二酸化チタン顔料及びプラスチックス樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項11】
請求項4記載の二酸化チタン顔料及び汎用プラスチックス樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物。
【請求項12】
請求項5記載の二酸化チタン顔料及びエンジニアリングプラスチックス樹脂を含むことを特徴とする樹脂組成物。


【公開番号】特開2006−37090(P2006−37090A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−183315(P2005−183315)
【出願日】平成17年6月23日(2005.6.23)
【出願人】(000000354)石原産業株式会社 (289)
【Fターム(参考)】