説明

二酸化炭素の回収方法及び回収装置

【課題】吸収液の再生に要するエネルギーを削減して操業費用を低減可能な二酸化炭素の回収方法及び回収装置を提供する。
【解決手段】二酸化炭素の回収装置は、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔と、吸収液を加熱して二酸化炭素を放出させて再生する再生塔と、吸収液を循環させる循環システムとを有する。吸収塔は第1吸収部及び第2吸収部を有し、ガスは第1吸収部を経て第2吸収部に供給され、再生塔は第1再生部及び第2再生部を有し、第1再生部は外部加熱手段を有し、第2再生部は第1再生部から放出されるガスの熱によって加熱される。循環システムは、第1吸収部と前記第2再生部との間で吸収液を循環させる第1循環路と、第2吸収部と第1再生部との間で吸収液を循環させる第2循環路とを有し、個別に吸収液を循環させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼ガスなどの二酸化炭素を含むガスから二酸化炭素を分離回収し、清浄なガスを大気に還元するための二酸化炭素の回収方法及び回収装置に関する。
【背景技術】
【0002】
火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備では、石炭、重油、超重質油などの燃料を多量に使用しており、燃料の燃焼によって排出される硫黄酸化物、窒素酸化物及び二酸化炭素は、大気汚染防止や地球環境保全の見地から放出に関する量的及び濃度的制限が必要とされている。近年、二酸化炭素は地球温暖化の主原因として問題視され、世界的にも排出を抑制する動きが活発化している。このため、燃焼排ガスやプロセス排ガスの二酸化炭素を大気中に放出せずに回収・貯蔵を可能とするために、様々な研究が精力的に進められ、二酸化炭素の回収方法として、例えば、PSA(圧力スウィング)法、膜分離濃縮法や、塩基性化合物による反応吸収を利用する化学吸収法などが知られている。
【0003】
化学吸収法においては、主にアルカノールアミン系の塩基性化合物を吸収剤として用い、その処理プロセスでは、概して、吸収剤を含む水性液を吸収液として、ガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収工程と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する再生工程とを交互に繰り返すように吸収液を循環させる(例えば、下記特許文献1参照)。再生工程においては、二酸化炭素を放出させるための加熱が必要であり、二酸化炭素回収の操業費用を削減するには、再生のために加熱/冷却に要するエネルギーを低減することが重要となる。
【0004】
特許文献1に示されるように、再生工程において二酸化炭素を放出した高温の吸収液(リーン液)を、吸収工程において二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)と熱交換することによって、熱エネルギーを回収して再生工程で再利用することができる。
【0005】
また、吸収液から二酸化炭素を回収する際に要するエネルギーの削減を目的として、下記特許文献2では、再生工程の吸収液を抜き出して高温スチームによって熱交換するための再生加熱器から生じるスチーム凝縮水の余熱を、吸収液の加熱に利用している。更に、下記特許文献3では、吸収された二酸化炭素の放出を促進するために、二酸化炭素を随伴するようにストリッピング用ガスを導入することを記載する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−214089号公報
【特許文献2】特開2005−254212号公報
【特許文献3】特開2005−230808号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
再生工程において必要とされるエネルギーには、吸収液の温度上昇に要する顕熱、吸収液から二酸化炭素を放出する際の反応熱、及び、吸収液の水分蒸発による熱損失を補うための潜熱がある。しかし、上述の先行技術は、顕熱又は反応熱に関連する技術であり、潜熱に関するエネルギーは、回収二酸化炭素に含まれる水蒸気と共に排出される。従って、エネルギー効率の改善には未だ余地がある。
【0008】
環境保全のために二酸化炭素の回収を普及させるには、経済的観点から、可能な限りエネルギー効率を高めて回収に要する費用を削減することが望ましく、吸収液からの熱エネルギーの回収効率を高めることは省エネルギーにおいて重要であり、又、二酸化炭素の回収効率に対しても有効に作用し得る。
【0009】
本発明の課題は、上述の問題を解決し、吸収液を再生するために要するエネルギーを削減して操業費用を低減可能な二酸化炭素の回収方法及び回収装置を提供することである。
【0010】
又、本発明の課題は、装置や吸収液への負担を軽減でき、二酸化炭素の回収率を低下させずに吸収液の再生に要するエネルギーを削減して二酸化炭素の回収コストを低減可能な二酸化炭素の回収方法及び回収装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究を重ねた結果、吸収工程及び再生工程を各々少なくとも2段階に区分して2つに分離した循環系を用いて吸収液を循環させることにより、2組の二酸化炭素の吸収/回収サイクルを実施するように構成することを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収装置は、ガスを吸収液に接触させてガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔であって、第1吸収部及び第2吸収部を有し、前記ガスは前記第1吸収部を経て前記第2吸収部に供給されるように配設される前記吸収塔と、前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱し、二酸化炭素を放出させて再生する再生塔であって、第1再生部及び第2再生部を有し、前記第1再生部は外部加熱手段を有し、前記第2再生部は前記第1再生部から放出されるガスの熱によって加熱されるように配設される前記再生塔と、前記第1吸収部と前記第2再生部との間で吸収液を循環させる第1循環路、及び、前記第2吸収部と前記第1再生部との間で吸収液を循環させる第2循環路を有する循環システムとを有することを要旨とする。
【0013】
又、本発明の一態様によれば、二酸化炭素の回収方法は、ガスを吸収液に接触させてガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収処理であって、第1吸収工程及び第2吸収工程を有し、ガスは前記第1吸収工程を経て前記第2吸収工程に供給される前記吸収処理と、前記吸収処理で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱し、二酸化炭素を放出させて再生する再生処理であって、第1再生工程及び第2再生工程を有し、前記第1再生工程は外部加熱手段を利用して加熱し、前記第2再生工程は前記第1再生工程において放出されるガスの熱によって加熱される前記再生処理と、前記第1吸収工程と前記第2再生工程との間で吸収液を循環させる第1循環工程と、前記第2吸収工程と前記第1再生工程との間で吸収液を循環させる第2循環工程とを有することを要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ガスに含まれる二酸化炭素を回収するプロセスにおいて、吸収液の再生に使用する熱の回収効率が向上し、二酸化炭素の回収率を低下させずに再生に要する熱エネルギーを削減できるので、運転コストの軽減に有効な二酸化炭素の回収方法及び回収装置が提供される。異なる組成の2つの吸収液を使用可能であり、各吸収液の吸収/再生条件に応じて吸収液の特性を各々に特化することができ、その特性を活かして二酸化炭素の回収及び吸収液の再生を効率的に行うことができるので、吸収液に対する再生時の負荷が軽減され、効率よく安定的に吸収液を利用することができるため、操業費及び設備維持費の低減に有効である。特殊な装備や高価な装置を必要とせず、一般的な設備を活用して簡易に実施できるので、経済的に有利である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る二酸化炭素の回収装置の一実施形態を示す概略構成図。
【図2】本発明に係る二酸化炭素の回収装置の他の実施形態を示す概略構成図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
化学吸収法による二酸化炭素の吸収プロセスにおいては、ガスに含まれる二酸化炭素を低温の吸収液に吸収させる吸収処理と、吸収された二酸化炭素を吸収液から放出させて吸収液を再生する高温の再生処理との間で吸収液を循環させて、吸収処理と再生処理とを交互に繰り返す。再生処理における吸収液の再生度は吸収液の加熱温度に依存し、温度が高いほど二酸化炭素ガスを放出して吸収液の残留二酸化炭素濃度が低くなる(参照:Jong I. Lee, Frederick D. Otto and Alan E. Mather, "Equilibrium Between carbon Dioxide and Aqueous Monoethanolamine Solutions", J. appl. Chem. Biotechnol. 1976, 26, PP541-549)。従って、通常、再生処理における吸収液は、外部熱源から供給される熱エネルギーを用いた外部加熱手段によって沸騰温度近辺に維持される。再生処理において二酸化炭素を放出した高温の再生吸収液(リーン液)は、吸収処理で二酸化炭素を吸収した吸収液(リッチ液)と熱交換することによって、加熱されたリッチ液が再生処理に供給されるので、熱エネルギーが回収・再利用される。しかし、再生処理において吸収液から放出される二酸化炭素を含んだガスは、その熱を含んだ高温の状態で排出され、排出ガスに含まれる熱量は無駄になる。排出ガスの温度低下、つまり、再生塔の塔頂温度の低下は、上述のリッチ液とリーン液との熱交換率を下げることによって可能であるが、熱交換において回収される顕熱が減少するため、熱量の削減には寄与しない。
【0017】
本発明では、吸収処理及び再生処理を、各々、少なくとも二段階に区分して2組の吸収工程及び再生工程を構成し、吸収液を循環させる循環路も独立した2つの経路に分離して各組の吸収工程及び再生工程間で吸収液を循環させるように構成する。1つの再生工程では外部エネルギー源を利用する外部加熱手段によって吸収液を積極的に加熱するが、この工程で放出される高温のガスは、もう1つの再生工程に供給されて熱源となることで吸収液が加熱再生される。つまり、ガスからの放出回収熱が吸収液の再生に直接利用される。この構成において、2組の経路を循環する吸収液は、各々、個別に選定可能となるので、その経路における処理条件に応じて適した特性に各々調整することができ、異なる組成に調製した2種類の吸収液の使用も可能になる。吸収液に含まれる吸収剤は、概して、吸収性及び再生性の両方に優れたものを開発するのは難しく、何れか一方に優れているのが一般的であるので、異なる濃度・組成の吸収液が使用可能な構成では、各循環系の吸収工程及び再生工程の処理条件に特化した吸収液を選択して用いることにより、吸収効率及び再生効率の低下を回避しつつ再生に要するエネルギーの削減を有利に進めることができる。
【0018】
以下、本発明の二酸化炭素の回収方法及び回収装置について、図面を参照して詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の二酸化炭素の回収装置の一実施形態を示す。回収装置1は、二酸化炭素を含有するガスGを吸収液に接触させて二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔10と、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して二酸化炭素を吸収液から放出させ、吸収液を再生する再生塔20とを有する。回収装置1に供給されるガスGについて特に制限はなく、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの様々なガスの取扱いが可能である。吸収塔10及び再生塔20は、各々、向流型気液接触装置として構成され、接触面積を大きくするための充填材11,21が各々内部に装填されている。吸収液として、アルカノールアミン類等の二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。充填材11,21は、処理温度における耐久性及び耐腐食性を有する素材製で、所望の接触面積を提供し得る形状のものを適宜選択して使用することができ、概して、ステンレス鋼、炭素鋼等の鉄系金属材料製のものが用いられるが、特に限定されない。更に、必要に応じて、吸収塔10に供給されるガスGを二酸化炭素の吸収に適した低温に維持するための冷却塔を設けてもよい。
【0020】
二酸化炭素を含んだガスGは、吸収塔10の下部から供給される。吸収塔10内は、充填材11aが収容される下側の第1吸収部12aと、充填材11bが収容される上側の第2吸収部12bとに区画され、第1吸収部12aと第2吸収部12bとの間には、水平環状板の中央穴周縁に管状壁が立設された区画部材13が介在し、区画部材13の管状壁の上端穴の上方を笠が覆い、吸収塔10の内側壁と区画部材13の管状壁との間において水平環状板上に液溜まりが形成されるように構成されている。吸収塔10下部から供給されるガスGは、塔内を上昇して第1吸収部12aの充填材11aを通過した後に、区画部材13の管状壁内孔を通って第2吸収部12bの充填材11bを通過する。一方、吸収液は、第1及び第2吸収液の2つに分けられ、第1吸収液は、吸収塔10の第1吸収部12a上部から供給されて、充填材11aを流下した後に吸収塔底部10に貯留され、第2吸収液は、吸収塔10の第2吸収部12b上部から供給されて、充填材11bを流下した後に区画部材13の液溜まりに貯留され、第1吸収部には流下せずに塔外へ導出されるように構成されている。ガスGが充填材11a,11bを通過する間に2つの吸収液と順次気液接触してガスG中の二酸化炭素が吸収液に吸収される。第1吸収部を通過した後のガスの二酸化炭素濃度は低下しているので、第2吸収液は、第1吸収液が接触するガスGより二酸化炭素濃度が低いガスと接触する。第1吸収部12aにおいて二酸化炭素を吸収した第1吸収液(リッチ液)A1’は、吸収塔10底部に貯溜され、ポンプ14によって、吸収塔10底部と再生塔20上部とを接続する第1供給路15を通じて再生塔20へ供給される。第2吸収部12bにおいて二酸化炭素を吸収した第2吸収液(リッチ液)A2’は、区画部材13の液溜まりに貯溜され、ポンプ16によって、吸収塔10中央部と再生塔20中央部とを接続する第2供給路17を通じて再生塔20へ供給される。二酸化炭素が除去されたガスG’は、吸収塔10の頂部から排出される。
【0021】
吸収液が二酸化炭素を吸収することによって発熱して液温が上昇するので、必要に応じて、ガスG’に含まれ得る水蒸気等を凝縮するための冷却凝縮部18が吸収塔10頂部に設けられ、これにより、水蒸気等が塔外へ漏出するのをある程度抑制できる。これを更に確実にするために、吸収塔外に付設される冷却器31及びポンプ32を有し、冷却凝縮部18下に貯留される凝縮水の一部(塔内のガスG’を含んでも良い)は、ポンプ32によって冷却器31との間で循環させる。冷却器31で冷却されて塔頂部に供給される凝縮水等は冷却凝縮部18を低温に維持し、冷却凝縮部18を通過するガスG’を確実に冷却する。塔外へ排出されるガスG’の温度は60℃程度以下が好ましく、より好ましくは45℃以下となるようにポンプ32の駆動が制御される。図1の構成において、冷却凝縮部18で凝縮する水は充填材11bに供給されるが、凝縮水は塔内の吸収液の組成変動を補整するために使用できるので、必要に応じて第1及び第2吸収液の濃度組成を検知して濃度変動の割合に応じて凝縮水を分配して充填材11a,11bに供給するように構成してもよい。後述する再生塔20における凝縮水による補整を勘案すると、概して、吸収塔10における凝縮水は、第2吸収液へ添加するとよい。
【0022】
再生塔20内は、充填材21aが収容される下側の第1再生部22aと、充填材21bが収容される上側の第2再生部22bとに区画され、第1再生部22aと第2再生部22bとの間には、区画部材13と同様の構造によって液溜まりを形成する区画部材23が介在する。吸収塔10底部から第1供給路15を通じて供給される第1吸収液A1’は、再生塔20の第2再生部22b上部に導入されて、充填材21bを流下した後に区画部材23の液溜まりに貯留され、第1再生部には流下せずに塔外へ導出されるように構成される。吸収塔10の第2吸収部12bから第2供給路17を通じて供給される第2吸収液A2’は、第1再生部22a上部に供給されて、充填材21aを流下した後に再生塔20底部に貯留される。
【0023】
再生塔20の底部には、外部からの供給エネルギーを用いて吸収液を積極的に加熱するための外部加熱手段としてリボイラーが付設される。即ち、再生塔20外に付設されるスチームヒーター24と、塔底部に貯留される第2吸収液A2をスチームヒーター24を介して循環させる循環路25とが付設され、塔底部の第2吸収液A2の一部が循環路25を通してスチームヒーター24に分流され、高温蒸気との熱交換によって継続的に加熱されて塔内へ還流される。これにより、底部の第2吸収液A2は、積極的に加熱されて二酸化炭素を十分に放出し、又、充填材21aも間接的に加熱されて充填材21a上での気液接触による二酸化炭素の放出が促進される。第2吸収液から放出される二酸化炭素及び水蒸気を含む高温のガスは、上昇して第1再生部22aの充填材21aを通過した後に、区画部材23の管状壁内孔を通って第2再生部22bの充填材21bを通過する。この間に、充填材21aを流下する第2吸収液A2’、及び、充填材21bを流下する第1吸収液A1’は加熱され、吸収液A1’,A2’中の二酸化炭素が放出される。第2再生部22bに供給される第1吸収液A1’は、外部加熱手段による積極加熱を受けず、第1再生部22aから放出されるガスの熱によってのみ加熱されるので、その温度は第2吸収液A2’より低い。従って、第1及び第2吸収液が同じ組成である場合は、区画部材23の液溜まりの第1吸収液A1の再生度は、塔底部の第2吸収液A2の再生度より低くなり、セミリーン液となる。二酸化炭素を放出した第1吸収液A1は、区画部材23の液溜まりからポンプ26によって、再生塔20中央部と吸収塔10中央部とを接続する第1還流路27を通じて吸収塔10の第1吸収部12aの上部へ還流される。再生塔20底部に貯溜されて二酸化炭素を十分に放出した第2吸収液A2(リーン液)は、ポンプ28によって、吸収塔10上部と再生塔20底部とを接続する第2還流路29を通じて吸収塔10の第2吸収部12bの上部へ還流される。この結果、第1吸収液A1,A1’は、第1供給路15及び第1還流路27によって第1吸収部12aと第2再生部22bとの間を往復して第1の循環系を構成し、第2吸収液A2,A2’は、第2供給路17及び第2還流路29によって第2吸収部12bと第1再生部22aとの間を往復して第2の循環系を構成する。再生塔20において吸収液から放出された二酸化炭素を含むガスは、再生塔20頂部から排出される。
【0024】
第2再生部22bで二酸化炭素を放出した第1吸収液A1は、第1還流路27を還流する間に第1熱交換器33を通過し、第1熱交換器33において、第1供給路15と第1還流路27との間で熱交換が行われる。従って、第1吸収液A1は、第1供給路15の第1吸収液A1’によって冷却され、更に、冷却水を用いた冷却器35によって二酸化炭素の吸収に適した温度まで十分に冷却された後に第1吸収部12a上部に導入される。又、第1再生部22aで二酸化炭素を放出した第2吸収液A2は、第2還流路29を流れる間に第2熱交換器34を通過し、第2熱交換器34において、第2供給路17と第2還流路29との間で熱交換が行われる。従って、第2吸収液A2は、第2供給路17の第2吸収液A2’によって冷却され、更に、冷却水を用いた冷却器36によって同様に十分に冷却された後に、第2吸収部12b上部に導入される。熱交換器には、スパイラル式、プレート式、二重管式、多重円筒式、多重円管式、渦巻管式、渦巻板式、タンクコイル式、タンクジャケット式、直接接触液液式等の様々な種類があり、本発明における第1及び第2熱交換器33,34として何れのタイプを使用しても良いが、装置の簡素化及び清掃分解の容易さの点ではプレート式が優れている。
【0025】
再生塔20における加熱によって吸収液から放出される二酸化炭素を含むガスは、再生塔20上部の凝縮部37を通過した後に、頂部から排気管38を通って排出され、冷却水を用いた冷却器39によって充分に冷却して含まれる水蒸気等を可能な限り凝縮し、気液分離器40によって凝縮水を除去した後に回収ガスCとして回収される。凝縮部37は、ガスに含まれる水蒸気を凝縮させて放出を抑制し、また、吸収剤の放出も抑制する。回収ガスCに含まれる二酸化炭素は、例えば、地中又は油田中に注入することによって、地中での炭酸ガス固定及び再有機化が可能である。気液分離器40において分離された凝縮水は、ポンプ41によって所定流量で流路42から再生塔20の凝縮部37上へ供給され、冷却水として機能する。
【0026】
再生塔20において、第1再生部22aの底部で加熱された第2吸収液A2の温度をT1とし、第2熱交換器34から第1再生部22a上部へ導入される第2吸収液A2’の温度をT2とすると、T1>T2となる。又、第1再生部22aから放出されるガスによって第2再生部22bで加熱された液溜まりの第1吸収液A1の温度をT3とし、第1熱交換器33から第2再生部22bへ導入される第1吸収液A1’の温度をT4、第1再生部22aから第2再生部22bへ放出されるガスの温度をt1、第2再生部22bから放出されるガスの温度をt2とすると、t1>T3>T4、t1>t2となる。一般的に、再生塔における吸収液は、再生度を高めるために吸収液の沸点近辺に加熱され、熱交換性能が高い熱交換器を用いて熱回収率を高めて温度差(T1−T2)が小さくなると、第1再生部22aから放出されるガスの温度t1も高くなり、このまま再生塔20から排出すれば、顕熱分のエネルギーを放出するだけでなく、水蒸気と共に多量の潜熱分のエネルギーも放出することになる。本発明においては、第1再生部22aから放出されるガスの熱量を第2再生部22bにおいて回収して吸収液の再生に利用し、ガスの温度をt1からt2へ低下させて顕熱の放出量を削減する。温度低下に伴って水蒸気の凝縮も進行するので、第2再生部22bから放出されるガスに含まれる水蒸気及び潜熱も減少する。尚、上述の構成においては、吸収液から気化する水蒸気の凝縮水は、吸収塔10においては第2吸収部12bの第2吸収液A2,A2’へ、再生塔20においては第2再生部22bの第1吸収液A1,A1’に供給されるが、第1再生部22aにおける第2吸収液A2からの気化分が第2吸収部12bにおいて補われる凝縮水分を超える場合には、第2吸収液の濃度上昇を抑制するための希釈水として気液分離器40の凝縮水を利用するように構成しても良い。また、同一組成の第1吸収液及び第2吸収液を使用する場合には、気化によって変動した第1吸収液及び第2吸収液の濃度を均一化するために、第1吸収液の一部を第2吸収液に混合するか、或いは、第2液の一部を第1吸収液に混合してもよい。この場合、吸収液の部分混合に起因するエネルギー損失は、運転条件(吸収液の循環量等)の調整によって減少可能であり、再生後の第1吸収液A1及び吸収後の第2吸収液A2’の二酸化炭素濃度が同程度になるように運転条件を調整して吸収液を混合するとよい。
【0027】
第2熱交換器34として、熱交換性能が高い熱交換器を用いると、第2熱交換器34から第1再生部22aへ至る第2供給路17中の第2吸収液A2’(リッチ液)においては、温度上昇による二酸化炭素の気泡が生じ易くなり、気泡が伝熱の障害となって温度差(T1−T2)の縮小を妨げる場合が生じ得る。この場合には、リッチ液を加圧状態で第2熱交換器34に投入することで起泡を抑制することが可能であり、リッチ液の温度上昇の妨げが解消される。従って、リーン液の熱交換器入口温度とリッチ液の熱交換器出口温度との温度差は、熱交換性能を反映して縮小され、熱交換器で与えられる熱エネルギーは効率的に再生工程に供給される。熱交換時の上記温度差は、概して10℃未満、好適には3℃程度に温度差を設定可能であり、吸収液に加えられた圧力は、再生工程に投入する際に開放すると、二酸化炭素の放出促進にも有効である。吸収液を加圧状態で第2熱交換器34に投入するには、例えば、第2熱交換器34と再生塔20との間の第2供給路17上(例えば、第1再生部22aへの導入口近辺)に背圧弁を設けることによって、ポンプ16の駆動力を利用して加圧することができ、圧力センサーを用いた圧力調節も可能である。同様にして、第1熱交換器33を通る吸収液についても、加圧によって起泡を抑制して第2再生部22bへ供給する第1吸収液A1’が温度上昇し易くすることができる。加圧状態の吸収液が再生塔への導入時に圧力開放されると、二酸化炭素の放出が促進され、その際に潜熱が消費されるので、放出ガスの温度低下に寄与する効果もある。
【0028】
図1の回収装置1において実施される回収方法について説明する。
【0029】
吸収塔10において、燃焼排ガスやプロセス排ガスなどの二酸化炭素を含有するガスGを底部から供給し、第1及び第2吸収液A1,A2を第1及び第2吸収部12a,12bの上部から各々供給すると、充填材11a,11b上でガスGと第1及び第2吸収液A1,A2とが気液接触し、吸収液に二酸化炭素が吸収される。二酸化炭素は、低温において良好に吸収されるので、概して50℃程度以下、好ましくは40℃以下となるように吸収液A1,A2の液温又は吸収塔10(特に充填材11a,11b)の温度を調整する。吸収液は二酸化炭素の吸収によって発熱するので、これによる液温上昇を考慮し、液温が60℃を超えないように配慮することが望ましい。吸収塔10に供給されるガスGについても、上述を勘案して、冷却塔を用いて予め適正な温度に調整するとよい。第1及び第2吸収液A1,A2として、二酸化炭素に親和性を有する化合物を吸収剤として含有する水性液が用いられる。吸収剤としては、アルカノールアミン類やアルコール性水酸基を有するヒンダードアミン類などが挙げられ、具体的には、アルカノールアミンとして、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン(MDEA)、ジイソプロパノールアミン、ジグリコールアミン等を例示することができ、アルコール性水酸基を有するヒンダードアミンとしては、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール(AMP)、2−(エチルアミノ)エタノール(EAE)、2−(メチルアミノ)エタノール(MAE)等を例示でき、上記のような化合物の複数種を混合使用しても良い。吸収液の吸収剤濃度は、処理対象とするガスに含まれる二酸化炭素量や処理速度、吸収液の流動性や消耗損失抑制等に応じて適宜設定することができ、概して、10〜50質量%程度の濃度で使用され、例えば、二酸化炭素含有量20%程度のガスGの処理に対して、濃度30質量%程度の吸収液が好適に使用される。
【0030】
本発明においては、第1及び第2吸収液A1,A2として、同質の吸収液を用ることも、或いは、1)吸収剤濃度の異なる吸収液、2)吸収剤の種類や含有組成が異なる吸収液を用いることも可能である。例えば、1)の形態では、再生塔20における加熱温度が相対的に高い第2吸収液A2の吸収剤濃度が第1吸収液より低くなるように設定することによって、第2吸収液A2の熱変質を抑制して耐熱性を高め、第1吸収液A1は吸収能を高くすることができるので、耐熱性に難のある吸収剤の中から吸収性及び再生性(再生容易性)の良いものを選択して用いることが可能となる。2)の形態では、第1吸収部12aにおいては、処理するガスの二酸化炭素濃度が第2吸収部12bより高く、二酸化炭素の吸収が容易な条件であるので、第1吸収液A1については吸収液の再生性を優先し、ガスの二酸化炭素濃度が相対的に低い第2吸収部12bで接触する第2吸収液A2については、吸収性を優先して吸収液を選択することによって、全体として吸収効率を低下させずに吸収液の再生を容易にして再生に要するエネルギーを削減することができる。再生性の良い吸収液を第1吸収液A1として使用することにより、第2再生部22bにおける低めの温度での再生度が高まり、第1吸収部12aへ還流する吸収液をリーン液に近づけることができる。一般的に使用が好まれるモノエタノールアミン(MEA)は、吸収性が高い吸収剤であり、他方、再生性の良い吸収剤としては、AMPやMDEAが挙げられる。屡々、AMPやMDEAの吸収性を改善する目的でMEAを混合して吸収液が構成されているが、混合割合によって吸収性及び再生性をある程度調整することができるので、本発明においてこの手法を利用して第1及び第2吸収液を調製すると、各吸収液の特性を活かして吸収及び再生を効率よく実施できる。例えば、第1吸収液A1として、MDEA又はAMPの濃度が相対的に高く再生性の良い吸収液を使用し、第2吸収液A2として、MEAの濃度が相対的に高く吸収性の高い吸収液を使用すると、再生エネルギーを削減する上で好ましい。
【0031】
ガスGの供給速度及び第1及び第2吸収液の循環速度は、ガスGに含まれる二酸化炭素量、吸収液の二酸化炭素吸収能及び充填材における気液接触効率等を考慮して、吸収が良好に進行するように適宜設定される。各吸収液の循環によって、吸収処理/再生処理が繰り返し実行される。
【0032】
二酸化炭素を吸収した第2吸収液A2’は、第2供給路17から第1再生部22aに供給されるが、この間に、再生塔20から還流する第2吸収液A2との熱交換によって加熱される。第1再生部22aにおいて外部熱により加熱される第2吸収液A2の温度T1は、使用する吸収液組成や再生条件によって異なるが、概して100〜130℃程度(沸点付近)に設定され、これに基づくと、第2吸収液A2’の熱交換器出口温度、つまり、第2再生部22aへの導入温度T2は、95〜125℃程度とすることができる。第1再生部22aから第2再生部22bへ放出されるガスの温度t1は、85〜115℃程度となり、又、第1再生部22aから放出されるガスによって第2再生部22bで加熱された第1吸収液A1の温度T3は、85〜115℃程度となる。第1熱交換器33における熱交換によって、第2再生部22bに導入される第1吸収液A1’の温度T4は、80〜110℃程度とすることができる。第2再生部22bから放出されるガスの温度t2は、100℃以下に低下させることが可能である。
【0033】
第1及び第2熱交換器33,34を流れる第1及び第2吸収液A1’,A2’の少なくとも一方について加圧する場合は、150kPaG以上、好ましくは200kPaG以上、より好ましくは250kPaG以上の一定圧(但し、器機等の耐圧性を考慮し、900kPaG程度以下)に調節するとよい。
【0034】
再生塔20底部に貯留される第2吸収液A2は、部分循環加熱によって沸点付近に加熱され、この時、吸収液の沸点は組成(吸収剤濃度)及び再生塔20内の圧力に依存する。加熱において、吸収液から失われる水の気化潜熱及び吸収液の顕熱の供給が必要であり、加圧によって気化を抑制すると、沸点上昇により顕熱が増加するので、これらのバランスを考慮して、再生塔20内を100kPaG程度に加圧し、吸収液は120〜130℃に加熱する条件設定を用いるとエネルギー効率上好ましい。再生塔20内の加圧は、排気管38の出口に圧力調節弁を設けて制御することによって調整可能である。
【0035】
第2再生部22bにおいて第1再生部22aより低い温度において再生を行うことにより、再生塔20上部の温度t2は、投入される第1吸収液A1’の温度T4に近い温度に低下させることができる(t2<t1、T4<T3<t1)。従って、凝縮部37を通過する回収ガスに含まれる水蒸気及び潜熱は減少し、熱エネルギーのロスが減少する。低い温度で吸収液の再生を進行させるには、吸収液の二酸化炭素含有量が高いことが重要であるが、第1吸収部12aにおいて二酸化炭素濃度が高いガスと接触する第1吸収液は、相対的に二酸化炭素含有量が高くなり易いので、第2再生部22bにおいて回収熱を利用した再生を行う上で好適である。
【0036】
このようにして、第1及び第2吸収液A1,A2は、互いに独立して、吸収塔10と再生塔20との間で循環し、第1再生部22aより低い温度で再生を行う第2再生部22bを用いて、2段階の再生工程を行うことによって、再生塔におけるエネルギー効率が向上する。第1及び第2吸収液A1,A2は、第1吸収液A1を補助吸収液として、第2吸収液A2を主吸収液として捉えることもできる。この場合、第1吸収液A1の役割には、再生塔における熱エネルギーの回収再利用と共に、二酸化炭素濃度が高いガスが第2吸収液A2に与える吸収負荷の低減が含まれる。つまり、図1の装置構成は、回収装置の処理適応性を高める上でも有効である。
【0037】
二酸化炭素の回収に要する再生エネルギーを計算するための模擬試験において、吸収液として30%MEA水溶液を用いて二酸化炭素含有ガスを二酸化炭素回収率90%で処理することを前提として、従来の吸収塔及び再生塔を有する回収装置における熱交換器の熱交換率による影響を評価すると、熱交換器における熱交換性能(還流路の熱交換入口温度と供給路の熱交換出口温度との差として表示)を10℃から3℃へ向上させた時、再生塔のリッチ液導入温度は7℃上昇して(118℃と想定)、再生エネルギーは、温度上昇に要する顕熱分の減少によって、4.1GJ/t-CO程度から3.9GJ/t-CO程度に低下する。本発明の構成を評価するために、回収装置を図1の装置構造に変更するに当たって追加する吸収部及び再生部を第1吸収部及び第2再生部として、第1吸収部と第2再生部との間で同質の吸収液を循環させるように構成すると、第2再生部への吸収液の導入温度が、第1再生部への吸収液導入温度より12℃低い106℃である場合、再生エネルギーは、蒸発潜熱の減少分の寄与によって3.4GJ/t-CO程度に削減可能である。更に、再生塔内を3つの再生部に区分して後述の図2の回収装置2の構造に変更すると、第3再生部への吸収液導入温度が98℃程度である場合、再生エネルギーは3.1GJ/t-CO程度に減少可能である。
【0038】
図2は、本発明の二酸化炭素の回収方法を実施する回収装置の他の実施形態を示す。回収装置2において、吸収塔10は、図1と同様に2つの吸収部を有するが、再生塔20’は3つの再生部22a,22b,22cを有し、充填材21’は、3つの再生部の各々に装填される。第2再生部22bと第3再生部22cとの間には、前述の区画部材13,23と同様の構造を有する区画部材23’が介在する。吸収塔10の第1吸収部12aにおいて二酸化炭素を吸収した第1吸収液A1’は、再生塔20’の第2再生部22b及び第3再生部22cの各々に分配供給され、第1再生部22aから放出されるガスは、第2再生部22bを通過した後に区画部材23’を経て、更に第3再生部22cの充填材21c上においても第1吸収液A1’と気液接触するので、放出ガスの温度は、図1の構成より更に低下する。吸収塔10底部から再生塔へ供給される第1吸収液A1’の一部を第3再生部22cへ分配供給するために、第1供給路15から分岐して第3再生部22cに接続される第3供給路15’が設けられ、区画部材23’の液溜まりに貯留する第1吸収液A1cを第3再生部22cから第1吸収部12aへ還流させるために、第3再生部22cから第1供給路15へ合流する第3還流路27’が設けられる。更に、第3供給路15’と第3還流路27’との間で熱交換を行う第3熱交換器33’が設けられ、第3供給路15’を通る第1吸収液A1’は、第3熱交換器33’での熱交換によって加熱された後に第3再生部22cへ供給され、第3再生部22cにおける気液接触によって二酸化炭素を放出した後に、区画部材23’の液溜まりに貯留する。液溜まりの吸収液A1cは、第3還流路27’を通り、第3熱交換器33’において第3供給路15’の第1吸収液A1’との熱交換によって冷却された後、第1還流路27の第1吸収液A1と合流して、冷却器35による冷却を経て吸収塔10の第1吸収部12a上部に還流される。
【0039】
再生塔20’において、第1及び第2再生部22a,22bから放出されるガスによって第3再生部22cで加熱された第1吸収液A1cの温度をT5とし、第3熱交換器33’から第3再生部22c上部に導入される第1吸収液A1’の温度をT6、第3再生部22cから放出されるガスの温度をt3とすると、t2>T5>T6、t2>t3となる。従って、図2の回収装置2における温度T1〜T4及びt1,t2が、図1の回収装置1において対応する温度T1〜T4,t1,t2と同じであると、再生部から放出されるガスの温度はt2からt3へ低下して顕熱の外部放出が更に抑制される。この時、水蒸気の凝縮も起こり、第3再生部22cから放出されるガスに含まれる水蒸気量が更に減少して潜熱の外部放出も抑制される。つまり、第3再生部22cにおいて回収される熱によって再生が行われ、熱量の回収利用が更に進行する。
【0040】
図2の回収装置2において、上述において説明した点以外については図1の回収装置1と同様であるので、その説明は省略する。
【0041】
図2の回収装置2において、第3再生部22cの第1吸収液A1cの温度T5は、第2再生部22bの第1吸収液A1の温度T3より低く、それにより再生度も低くなるので、図2の回収装置2において第1吸収部12aに還流される第1吸収液(A1+A1c)の再生度は平均化されて、図1の回収装置1における第1吸収液A1の再生度より低下する。この点に関して改善する一形態として、吸収塔10についても3つの吸収部に区画して第1及び第2吸収部の上側に第3吸収部を配置し、3つの循環経路によって3種の吸収液を各々個別に往復させる形態が挙げられる。具体的には、第1吸収液は第1吸収部−第3再生部間を、第2吸収液は第2吸収部−第2再生部間を、第3吸収液は第3吸収部−第1再生部間を各々循環させ、二酸化炭素を含有するガスGは、第1吸収部から第2吸収部を経て、第3吸収部から外部へ排出される。外部から供給される熱により第1再生部において放出される二酸化炭素を含むガスは、第2再生部を経て第3再生部から外部へ排出される。第1及び第2吸収液の選択においては再生性を重視し、第3吸収剤では吸収性を重視して各吸収液を選定し、最も再生性の良い吸収液を第1吸収液として、最も吸収性の良い吸収液を第3吸収液として使用するとよい。同様にして、吸収塔及び再生塔内を、各々、4部以上の吸収部及び再生部に区画して複数種の吸収液を循環させるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、火力発電所や製鉄所、ボイラーなどの設備から排出される二酸化炭素含有ガスの処理等に利用して、その二酸化炭素放出量や、環境に与える影響などの軽減に有用である。二酸化炭素の回収処理に要する費用が削減され、省エネルギー及び環境保護に貢献可能な二酸化炭素の回収装置を提供できる。
【符号の説明】
【0043】
1,2:回収装置、 10:吸収塔、 20,20’:再生塔、
11,11a,11b,21,21a,21b,21c:充填材、
12a:第1吸収部、12b:第2吸収部、
13,23,23’:区画部材、
14,16,26,28,32,41:ポンプ、
15:第1供給路、 17:第2供給路、 15’:第3供給路、
18:冷却凝縮部、
22a:第1再生部、 22b:第2再生部、
24:スチームヒーター、 25:循環路、
27:第1還流路、 29:第2還流路、 27’:第3還流路、
33:第1熱交換器、 34:第2熱交換器、 33’:第3熱交換器、
35,36,31,39:冷却器、 37:凝縮部、 38:排気管、
40:気液分離器、 42:流路、
G、G’:ガス、 C:回収ガス、
A1,A1’,A1c:第1吸収液、 A2,A2’:第2吸収液。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスを吸収液に接触させてガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収塔であって、第1吸収部及び第2吸収部を有し、前記ガスは前記第1吸収部を経て前記第2吸収部に供給されるように配設される前記吸収塔と、
前記吸収塔で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱し、二酸化炭素を放出させて再生する再生塔であって、第1再生部及び第2再生部を有し、前記第1再生部は外部加熱手段を有し、前記第2再生部は前記第1再生部から放出されるガスの熱によって加熱されるように配設される前記再生塔と、
前記第1吸収部と前記第2再生部との間で吸収液を循環させる第1循環路と、前記第2吸収部と前記第1再生部との間で吸収液を循環させる第2循環路とを有する循環システムと
を有する二酸化炭素の回収装置。
【請求項2】
前記第1循環路と前記第2循環路とは、互いに独立して個別に吸収液を循環させ、前記第2再生部は外部加熱手段を有しない請求項1に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項3】
前記循環システムは、第1熱交換器及び第2熱交換器を有し、前記第1熱交換器は、前記第1循環路において、前記第2吸収部から前記第1再生部へ供給される吸収液と、前記第1再生部から前記第2吸収部へ還流される吸収液との間で熱交換を行い、前記第2熱交換器は、前記第2循環路において、前記第1吸収部から前記第2再生部へ供給される吸収液と、前記第2再生部から前記第1吸収部へ還流される吸収液との間で熱交換を行うように各々付設される請求項1又は2に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項4】
前記第1循環路を循環する吸収液が前記第2再生部へ供給される温度は、前記第2循環路を循環する吸収液が前記第1再生部へ供給される温度より低い請求項1〜3の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項5】
前記第1循環路及び前記第2循環路は、互いに組成が異なる第1吸収液及び第2吸収液を各々循環させる請求項1〜4の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項6】
前記第1循環路を循環する第1吸収液の吸収剤濃度は、前記第2循環路を循環する第2吸収液より高い請求項5に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項7】
前記第1循環路を循環する第1吸収液は、前記第2循環路を循環する第2吸収液より再生性が高い吸収剤を含有し、前記第2吸収液は、第1吸収液より二酸化炭素の吸収能が高い吸収剤を含有する請求項5又は6に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項8】
前記再生塔は、更に、前記第2再生部から放出されるガスの熱によって加熱される第3の再生部を有し、前記循環システムは、前記第1吸収部と前記第3再生部との間で吸収液を循環させるための第3循環路を有する請求項1〜7の何れかに記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項9】
前記第3循環路は、前記第1循環路から分岐して設けられる請求項8に記載の二酸化炭素の回収装置。
【請求項10】
ガスを吸収液に接触させてガスに含まれる二酸化炭素を吸収液に吸収させる吸収処理であって、第1吸収工程及び第2吸収工程を有し、ガスは前記第1吸収工程を経て前記第2吸収工程に供給される前記吸収処理と、
前記吸収処理で二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱し、二酸化炭素を放出させて再生する再生処理であって、第1再生工程及び第2再生工程を有し、前記第1再生工程では外部加熱手段を利用して加熱し、前記第2再生工程では前記第1再生工程において放出されるガスの熱によって加熱される前記再生処理と、
前記第1吸収工程と前記第2再生工程との間で吸収液を循環させる第1循環工程と、前記第2吸収工程と前記第1再生工程との間で吸収液を循環させる第2循環工程と
を有する二酸化炭素の回収方法。
【請求項11】
前記第1循環工程及び前記第2循環工程は、互いに独立して個別に吸収液を循環させる請求項10に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項12】
前記第1循環工程は、前記第2吸収工程から前記第1再生工程へ供給される吸収液と前記第1再生工程から前記第2吸収工程へ還流される吸収液との間で熱交換を行う第1熱交換工程を有し、前記第2循環工程は、前記第1吸収工程から前記第2再生工程へ供給される吸収液と前記第2再生工程から前記第1吸収工程へ還流される吸収液との間で熱交換を行う第2熱交換工程を有する請求項10又は11に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項13】
前記第1循環工程において循環する吸収液が前記第2再生工程へ供給される温度は、前記第2循環工程において循環する吸収液が前記第1再生工程へ供給される温度より低い請求項10〜12の何れかに記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項14】
前記第1循環工程及び前記第2循環工程において、互いに組成が異なる第1吸収液及び第2吸収液を各々循環させる請求項10〜13の何れかに記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項15】
前記第1循環工程で循環させる第1吸収液の吸収剤濃度は、前記第2循環工程で循環させる第2吸収液より高い請求項14に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項16】
前記第1循環工程で循環させる第1吸収液は、前記第2循環工程で循環させる第2吸収液より再生性が高い吸収剤を含有し、前記第2吸収液は第1吸収液より二酸化炭素の吸収能が高い吸収剤を含有する請求項14又は15に記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項17】
前記再生処理は、更に、前記第2再生工程から放出されるガスの熱によって加熱される第3の再生工程を有し、前記第1吸収工程と前記第3再生工程との間で吸収液を循環させるための第3循環工程を更に有する請求項10〜16の何れかに記載の二酸化炭素の回収方法。
【請求項18】
前記第3循環工程は、前記第1循環を循環する吸収液の一部を分岐して循環させる請求項17に記載の二酸化炭素の回収方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−94687(P2013−94687A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236829(P2011−236829)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】