説明

二酸化炭素精製供給方法及びシステム

【課題】油分などの有機物や水分が取り除かれた高純度の二酸化炭素(CO2)を供給できる二酸化炭素精製供給方法及びシステムを提供する。
【解決手段】二酸化炭素精製供給システムは、気体状態のCO2から不純物を吸着除去する相互に直列に接続された吸着塔A1,A2と、吸着塔A2からのCO2を凝縮して液体CO2を生成する凝縮器18と、を少なくとも備える。さらに、吸着塔A1,A2間を流れるCO2をサンプリングして不純物を測定する分析部30を備え、分析部30での分析結果に応じて吸着塔A1,A2への通気を停止し、吸着塔A1内の吸着材に対する再生処理を実行する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二酸化炭素を精製してユースポイントに供給する二酸化炭素精製供給方法及びシステムに関し、特に、半導体デバイス製造をはじめとする電子部品の製造工程などにおいて使用できる超高純度の二酸化炭素を供給できる方法及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化炭素(CO2)は、気体状態で各種の用途に用いられるほか、液体状態あるいは超臨界状態で、例えば、洗浄や乾燥などの工程に使用される。近年では半導体デバイスの製造における洗浄工程においても液体CO2や超臨界CO2の使用が提案されている。半導体デバイス製造などにおいて液体CO2や超臨界CO2を使用する場合には、不純物量を極めて少なくし高純度に精製した液体CO2や超臨界CO2を供給する必要がある。
【0003】
CO2を精製する技術として各種のものが知られている。例えば、特許文献1は、CO2中の硫化カルボニル(COS)、リン含有化合物、ケイ素含有化合物及び非メタン炭化水素などの不純物を混合金属酸化物に吸着させて除去する技術を開示している。特許文献2は、例えば重金属不純物などをCO2から除去するために、吸着、水洗、電気集塵及び濾過の少なくとも1つを行うことなどを開示している。特許文献3は、CO2中から水分、含酸素化合物、芳香族化合物及び含イオウ化合物を除去するために、Yゼオライトと乾燥剤とを吸着材として充填した吸着塔に対してCO2ガスを通すこと、2台の吸着塔を並列に設け、一方の吸着塔で不純物の吸着除去処理を行っているときに他方の吸着塔の再生を行うことを開示している。特許文献4は、イオウ化合物、含酸素化合物及び炭化水素などの不純物をCO2から除去して精製CO2を生成するために、種々の精製ユニットにCO2を通すことと、精製後のCO2について分析を行うことを開示されている。特許文献5は、水分、炭化水素及びイオウ化合物をCO2から除去するために、乾燥剤とYゼオライトと活性炭とを吸着材として単一の容器に充填して構成された吸着塔にCO2を通すことを開示している。
【0004】
吸着材を用いて不純物を吸着除去する方法は、二酸化炭素の精製方法として一般的である。しかしながら吸着材には、これ以上吸着を行うと後段に不純物が漏れてしまうことになる限界があるので、この限界に至る前までにCO2の通気を停止しないと、精製後のCO2に不純物が混入するといった不具合が生じる。そこで、例えば、限界に至らないと想定される一定時間の経過でもって通気を停止するか、あるいは、精製後のCO2に要求される値に対して安全側のしきい値を設定した上で、吸着材を通過した後のCO2の分析を行い、しきい値を超えた場合に、後段に不純物が漏れてしまう限界が近いと判断して、通気を停止する。
【0005】
しかしながら、厳密に要求値を満足させるためには吸着材が限界に至るかなり前にCO2の通気を停止する必要があり、通気の停止後には吸着材の再生処理や交換を行うことから、吸着材の吸着容量を有効に使い切れない、という課題が生じる。また、想定を超えて入口不純物濃度が一時的に上昇した場合には、精製されたCO2に要求される値が満たされなくなるおそれもある。
【0006】
ところで、ユースポイントに対して高純度の液体CO2を安定して供給する装置の一つとして、特許文献6に示すように、循環精製型の二酸化炭素精製供給システムがある。循環精製型の二酸化炭素精製供給システムでは、液体CO2を気化させてCO2ガスとしこのCO2ガスを凝縮させて再び液体CO2にする循環系を使用し、この循環系内でCO2を循環させて気化と凝縮とを繰り返すことによってCO2の純度を高めている。図6は、特許文献6に記載された技術に基づく従来の循環精製型二酸化炭素精製供給システムの構成の一例を示している。
【0007】
図6に示す二酸化炭素精製供給システムでは、高純度の液体CO2を一時的に貯える貯槽11と、貯槽11の出口に設けられて液体CO2を圧送するポンプ12と、ポンプ12の出口に設けられたフィルタ13とが設けられている。フィルタ13から流出した液体CO2の一部が分岐してユースポイント50に供給され、残りは、圧力調整弁14を介して冷却器15に送られる。圧力調整弁14は、ユースポイント50に供給される液体CO2の圧力を規定された圧力にするために設けられている。冷却器15に供給されて冷却された液体CO2は、次に、蒸発器16に供給されて気液分離がなされる。蒸発器16にはヒータが組み込まれて蒸発器16内にCO2の気液界面が形成されるようになっている。蒸発器16に供給された液体状態のCO2は気化し、難揮発性のパーティクル(微粒子)は液相側に残ることとなる。そして、蒸発器16において気化することにより精製されたCO2ガスは、蒸発器16の気相側出口から、パーティクル類をさらに除去するためのフィルタ17を介して凝縮器18に送られ、凝縮器18において冷却されることにより再度液化され、液体CO2として貯槽11に戻される。この構成では、貯槽11、ポンプ12、フィルタ13、圧力調整弁14、冷却器15、蒸発器16、フィルタ17及び凝縮器18によってCO2の循環系10が構成されており、ユースポイント50において使用されなかったCO2が循環処理されている。蒸発器16において液相に移行したパーティクルは、蒸発器16の液相側出口に設けられた弁23を開放することによって系外に排出(ブロー)される。ポンプ12には発塵のおそれがあるので、フィルタ13によりポンプ12で発生したパーティクル類を除去するようにしている。このような循環系10に対してCO2を供給するために、ガスボンベやコールドエバポレーター(CE)などのCO2源21が設けられており、CO2源21からのCO2が凝縮器18に導入されるようになっている。
【0008】
循環精製型の二酸化炭素精製供給システムは、例えば金属粒子などの難揮発性のパーティクルをCO2から取り除くことに威力を発揮し、近年の超微細化された半導体デバイス製造プロセスにおいて必要となる高純度のCO2を連続的に供給することが可能である。しかしながら、CO2源21からのCO2に微量に含まれている水分や油分、揮発性の不純物に関しては、蒸発器における気液分離やフィルタによっては十分には取り除けないので、システムの運転を続けているうちに徐々に循環系内に蓄積し、やがてユースポイントに供給されるCO2中でのそれらの不純物の濃度が要求値を超過するようになるおそれがある。特に水分が循環系内に蓄積しやすいので、水分を確実に除去できるようにする必要がある。水分や油分、揮発性の不純物を確実に取り除くために、吸着材を充填した吸着塔を循環系内に配置することも考えられる。しかしながら吸着塔を循環系内に設置した場合には、上述したような不純物の漏れ出しに関する限界による制約から、吸着材の吸着容量を有効に使い切ることができない。また、吸着材の再生処理や交換のために、二酸化炭素精製供給システムの連続運転が阻害される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特表2006−502957号公報
【特許文献2】特表2009−506968号公報
【特許文献3】特表2009−506967号公報
【特許文献4】特表2009−512612号公報
【特許文献5】特表2009−504383号公報
【特許文献6】特開2006−326429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
半導体デバイス製造プロセス用途への適用を目指した二酸化炭素精製技術についてはこれまでもいくつか提案があり、例えば循環精製型のシステムを用いることによって、製造される高純度二酸化炭素における難揮発性のパーティクル数を極限にまで低下させることができる。水分や油分、あるいは揮発性の不純物を除去するためには吸着材を使用することになるが、吸着材を用いる場合にはその吸着材の吸着可能量を十分に生かしきれない、という問題点が生じ、このため、イニシャルコストや再生頻度の上昇に伴うランニングコストなどの上昇につながっている。
【0011】
本発明の目的は、高純度の二酸化炭素をユースポイントに供給するのに適し、二酸化炭素中のパーティクル、水分、油分及び揮発性の不純物を容易に低減できて、かつ、吸着材の吸着容量を十分に活用できる二酸化炭素精製供給方法及びシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の二酸化炭素精製供給システムは、気相状態の二酸化炭素を凝縮して液体状態の二酸化炭素を生成する凝縮器と、前記気相状態の二酸化炭素を前記凝縮器に送る精製ラインと、前記凝縮器内において液体状態である二酸化炭素を供給先に供給する供給ラインと、を少なくとも備え、二酸化炭素源から供給された二酸化炭素を精製して供給先に供給する二酸化炭素精製供給システムにおいて、精製ラインに設けられ、その精製ラインを流れる気相状態の二酸化炭素から不純物を吸着除去する相互に直列接続された複数の吸着部と、複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして不純物を測定する分析部と、を備えることを特徴とする。
【0013】
本発明の二酸化炭素精製供給システムを循環精製型の構成とするのであれば、例えば、二酸化炭素を気化させる蒸発器と、供給ラインから分岐されて液体状態の二酸化炭素の一部または全部を蒸発器に送る循環ラインと、をさらに設け、蒸発器の出口を精製ラインに接続して蒸発器から気相状態の二酸化炭素を凝縮器に供給することにより、少なくとも供給ラインと循環ラインと蒸発器と精製ラインと凝縮器とによって循環系が構成され、二酸化炭素源から循環系に二酸化炭素が供給されるようにすればよい。
【0014】
本発明の二酸化炭素精製供給方法は、二酸化炭素源から二酸化炭素が供給されて、精製された二酸化炭素を供給先に供給する二酸化炭素精製供給方法であって、気体状態の二酸化炭素を凝縮器により凝縮して液体状態の二酸化炭素とする工程と、気相状態の二酸化炭素を凝縮器に送る精製ライン上の位置で、相互に直列接続された複数の吸着部に気相状態の二酸化炭素を通気することにより、気相状態の二酸化炭素から不純物を吸着除去する不純物除去工程と、複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして不純物を測定する分析工程と、分析工程での測定結果に応じて複数の吸着部への二酸化炭素の通気状態を制御する制御工程と、を有することを特徴とする。
【0015】
本発明の二酸化炭素精製供給方法を循環精製型のものとするのであれば、例えば、凝縮器内において液体状態である二酸化炭素を供給先に供給するための供給ラインから分岐する循環ラインを介して、二酸化炭素を気化させる蒸発器に対して液体状態の二酸化炭素を供給する工程と、蒸発器の出口から流れ出る気体状態の二酸化炭素を精製ラインに送る工程と、をさらに設けて二酸化炭素の循環処理が行われるようにし、循環処理を行う循環系に対して二酸化炭素源から二酸化炭素をすればよい。
【発明の効果】
【0016】
気相状態の二酸化炭素が流れる位置に、相互に直列に接続された複数の吸着部を設け、さらに、複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして不純物を測定できるようにすることにより、サンプリング位置より上流側の吸着部が、これ以上吸着を行わせると後段に不純物が漏れるという限界に到達したことを検出できる。上流側の吸着部がこの限界に達した時点では、サンプリング位置より下流側の吸着部はほとんど不純物を吸着していないので、不純物は確実に下流側の吸着部で吸着除去でき、このため、上流側の吸着部に関しては後段に不純物が漏れる限界まで使用できるようになってその吸着容量を有効に使い切ることができる。また、下流側の吸着部については吸着負荷が小さくてメンテナンス期間を極めて長く設定することができるから、全体としてみて吸着材を有効に使用でき、かつ、後段への不純物汚染を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第1の実施形態の二酸化炭素精製供給システムの構成を示す図である。
【図2】第2の実施形態の二酸化炭素精製供給システムの構成を示す図である。
【図3】第3の実施形態の二酸化炭素精製供給システムの構成を示す図である。
【図4】吸着塔と弁との配置関係を説明する図である。
【図5】第4の実施形態の二酸化炭素精製供給システムの構成を示す図である。
【図6】従来の二酸化炭素精製供給システムの構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に基づく二酸化炭素精製供給システムは、CO2が気相状態で流れる位置に少なくとも2段の吸着部を直列に配置し、直列接続された複数の吸着部の相互間の接続位置においてそこを流れるCO2をサンプリングしてCO2中の不純物濃度を測定する分析部を設け、さらに吸着部を通過したCO2を凝縮する凝縮器を設けたものである。このシステムには複数の吸着部が設けられるが、それぞれに同一種類の吸着材を充填するなどして、各吸着部によって吸着除去される不純物成分が同じであるようにする。除去しようとする不純物成分に応じて吸着部に充填すべき吸着材を選定することになるが、CO2源として何を使用するかによって、そこに含まれる水分や有機物の量、有機物の種類が異なるから、CO2源に応じて吸着材を選択することが好ましい。一般的に公知なものとして、水分除去用の吸着材には、ゼオライト、モレキュラーシーブス、活性アルミナ、シリカゲルなどを用いることができ、イソプロピルアルコールなどの有機物除去用の吸着材には活性炭、モレキュラーシーブス、ハイシリカゼオライトなどを用いることができる。水分除去用、有機物除去用を問わず、これらの吸着材は、その使用前に、十分に低水分管理されたドライガスを通すことによって、それらの吸着材内の水分を予め除去しておくことが好ましい。
【0019】
このような本発明に基づく二酸化炭素精製システムは、例えば図6に示したような循環精製型の二酸化炭素精製供給システムにおいて、蒸発器の出口と凝縮器の入口との間の位置に、複数の吸着部を直列に配置し、分析部を設けることによって構成できる。以下では、循環精製型のシステムとして本発明に基づく二酸化炭素精製供給システムを構成した場合を例として説明するが、本発明に基づく二酸化炭素精製供給システムは、循環精製型でない構成とすることもできる。
【0020】
循環系内でCO2を循環させると、CO2源から持ち込まれた水分や油分、揮発性の不純物は、直列に接続された吸着部のうち、上流側の吸着部すなわち蒸発器側の吸着部でまず吸着除去される。この段階では、分析部での分析結果には、ほとんど不純物成分は現れず、また、下流側の吸着部すなわち凝縮器側の吸着部は、対象とする不純物をまだほどんど吸着していない。そのうちに上流側の吸着部内の吸着材が、それ以上吸着させると後段に不純物が漏れるという限界に達し、その結果、分析部での分析結果に不純物成分が現れるようになる。そうしたら、少なくとも上流側の吸着部に対するCO2の通気を停止し、上流側の吸着部に対して再生処理や吸着材の交換などを行う。このとき、上流側の吸着部から不純物が漏れ出しているが、漏れ出した不純物は、下流側の吸着部によって吸着除去されるので、ユースポイントには到達しない。また、下流側の吸着部に不純物成分が流入するのは、不純物が漏れ出すこととなる限界に上流側の吸着部が達したことを検出してから通気を停止するまでのわずかな間であるから、下流側の吸着部の吸着容量はほとんど消費されない。下流側の吸着部については、限界に対してまだ余裕のあると想定される期間で再生処理あるいは交換を行う必要があるが、そもそも下流側の吸着部には不純物成分がほとんど流入しないので、再生処理あるいは交換を行うまでの期間を極めて長く設定することができる。上流側の吸着部については吸着容量の限界まで使い切って再生あるいは交換を行うことを繰り返し、下流側の吸着部については極めて長い期間にわたってそのままで使用できることから、本発明に基づく二酸化炭素精製供給システムでは、全体として、吸着材を有効に利用でき、かつ、ユースポイント側への不純物汚染を防ぐことができる。金属微粒子などの難揮発性のパーティクルは、図6に示したシステムと同様に、蒸発器とフィルタによってCO2から除去され、ユースポイント側へのこれらの不純物による汚染も防がれる。
【0021】
吸着部としては、例えば、塔状の容器内に吸着材を充填してその容器内を気体が流通するようにした吸着塔を用いることができるが、吸着材を保持し吸着材に対して気体を通気できるようにした構成のものであれば、他の形態のものも使用することができる。以下では、吸着部として吸着塔が用いられるものとして説明を行う。
【0022】
なお、循環系内に設けられる蒸発器としては、液体CO2を単に気化させる機能を有するものであってもよい。あるいは蒸発器は、内部に気液界面が形成されており、液体CO2を気化させるとともに液体CO2中に含まれていた難揮発性のパーティクルを液相側に移行させる機能を有する気液分離器であってよい。気液分離器である蒸発器を使用すれば、適時に液相分をパージ(排出)することによって、パーティクル類を系外に排出することができる。
【0023】
図1は、本発明の第1の実施形態の二酸化炭素精製供給システムの構成を示している。図1に示す二酸化炭素供給精製システムは、図6に示した二酸化炭素供給精製システムと同様にユースポイント50に対して精製されたCO2を供給するものであり、CO2に対して循環精製処理を行う循環系の構成で図6に示すものと異なっている。
【0024】
図1に示す二酸化炭素精製供給システムにおいて循環系は、高純度液体CO2を一時的に貯える貯槽11と、貯槽11の出口に設けられたポンプ12と、ポンプ12の出口に設けられたフィルタ13と、ユースポイント50に供給されるCO2の圧力を調整するための圧力調整弁14と、圧力調整弁14から流れ出たCO2を冷却する冷却器15と、冷却器15から流れ出る液体CO2に対して気液分離を行う蒸発器16と、蒸発器16の出口に接続した吸着塔A1と、吸着塔A1に対して直列に接続された吸着塔A2と、吸着塔A2の出口に接続したフィルタ17と、フィルタから17から流れ出た気体CO2を凝縮する凝縮器18と、を備えており、凝縮器18で液化したCO2が貯槽11に戻されるようになっている。ユースポイント50へは、フィルタ13の出口からの液体CO2が循環系から分岐するように供給され、ユースポイン50で使用されなかった残りの液体CO2が圧力調整弁14に送られるようになっている。貯槽11には、不純物成分として混入している他の低沸点成分(例えば空気)などを外部に強制的に排出(ブロー)するための弁22も設けられている。冷却器15は設けなくてもよいが、蒸発器16において気液分離を精密に行うためには液体CO2における液化を確実なものとすることが好ましく、そのためには、冷却器15を設ける方が好ましい。
【0025】
上流側の吸着塔A1と下流側の吸着塔A2には、同一組成の吸着材が充填されており、同一の不純物成分を除去できるようになっている。ただし、同一の不純物を除去できるのであれば、吸着塔A1とA2は必ずしも同一組成の吸着材を充填する必要はない。吸着塔A1と吸着塔A2との接続点からサンプリングラインが分岐し、このサンプリングラインに対し、CO2中の不純物成分のサンプリング分析を行う分析部30が設けられている。分析部30は、吸着塔での吸着除去の対象となる不純物成分(例えば、水分、油分あるいはイソプロピルアルコール)が何であるかに応じ、その不純物成分を検出して定量できるように構成されている。
【0026】
図1に示した構成では、凝縮器18から貯槽11、ポンプ12及びフィルタ13を経てユースポイント50に至るラインが、CO2のユースポイント50への供給ラインであり、供給ラインから分岐し圧力調整弁14を介して蒸発器16の入口に至るラインがCO2の循環ラインである。CO2源21からのCO2は、蒸発器16に対し、あるいは冷却器15の入口に対して供給される。
【0027】
この循環系において、内部にCO2の気液界面が形成されている蒸発器(すなわち気液分離器)を蒸発器16として使用することができる。圧力調整弁14は、ユースポイント50に供給される液体CO2の圧力を規定された圧力にするために設けられているが、ユースポイント50で必要とする供給圧力や供給速度の範囲などによっては必ずしも設ける必要はない。
【0028】
CO2源21からCO2を循環系に供給し、ポンプ12によって循環系内でのCO2の循環を開始すると、CO2中の難揮発性であったり液体CO2に分散したり溶け込みやすいパーティクルは、蒸発器16において気相側に移行しないので、蒸発器16から流出する気体CO2からは除去されることになる。気液分離機能を有する蒸発器16を用いているのであれば、これらのパーティクルは液相側に残留するので、蒸発器16の液相側排出口に設けられている弁23を開放することにより、循環系の外に排出(パージ)することができる。蒸発器16からの気体CO2は、次に、吸着塔A1に流入し、ここで、吸着塔での除去目的とする不純物(水分、油分及び揮発性の不純物)が除去され、次に吸着塔A2に流入し、さらに、フィルタ17を介して凝縮器18に供給されて液化され、液体CO2として貯槽11に供給される。フィルタ17は、蒸発器16で除去しきれなかったパーティクルや、吸着塔A1,A2で発生したパーティクルを除去する。この結果、貯槽11には、蒸発器16及びフィルタ17によって難揮発性のパーティクルが除去され、吸着塔A1によって除去目的とする不純物(水分、油分あるいは揮発性の不純物)が除去された高純度の液体CO2が貯えられることになる。この高純度の液体CO2は、ポンプ12によりユースポイント50に供給されるとともに、ユースポイント50に供給されなかった分が冷却器15を経て蒸発器16に戻され、循環系内を循環することになる。
【0029】
ユースポイント50に高純度CO2を供給し、この供給分に見合うだけのCO2をCO2源21から循環系に供給し、循環系内でCO2の循環精製処理を行っていると、吸着塔A1に吸着された不純物量が徐々に増加し、やがて、吸着塔A1がこれ以上吸着させると不純物が漏れ出すという限界に達して吸着塔A1がブレークする。分析部30は、サンプリングラインを介し、吸着塔A1と吸着塔A2を流れるCO2をサンプリングして不純物濃度を常時あるいは逐一監視しており、不純物濃度があるしきい値を超えた場合に、吸着塔A1が限界に達したと判定する。吸着塔A1が限界に達したことが検出されたら、循環系内でのCO2の循環を停止することにより吸着塔A1,A2へのCO2の通気を速やかに停止し、次に、図示破線で示すように、再生ガス源41からの再生ガスがヒータ43を介して吸着塔A1を通過し再生排ガス42として排出されるようにラインの切り替えを行う。そして、ヒータ43で加熱された再生ガスを吸着塔A1に通気し、吸着塔A1に吸着されていた不純物を脱離させて系外に排出することによって、吸着塔A1内の吸着材の再生処理を行う。このとき、吸着塔A1内での再生ガスの流れの方向は、本来のCO2の流れの方向とは逆方向になるようにする方が好ましい。再生処理が完了したら、速やかにラインを元に戻し、吸着塔A1,A2にCO2を通気させ、循環精製処理を再開する。吸着塔A1の再生処理を行う代わりに、吸着塔A1自体の交換あるいは吸着塔A1内の吸着材の交換を行ってもよい。また、再生ガス源41からの再生ガスを吸着塔A1と吸着塔A2の間ではなく、吸着塔A2の後段、もしくは、その双方から供給するなどして、吸着塔A2の再生処理も一緒に行ってもよい。
【0030】
分析部30での分析におけるサンプリング時間間隔や分析結果が出るまでに要する時間などのために、不純物が漏れ出すこととなる限界に吸着塔A1が達してからそのことが判明するまでに多少のタイムラグ(時間差)が生じる可能性がある。しかしながら、吸着塔A1の下流側には吸着塔A2が設けられており、そのタイムラグ内に吸着塔A1から流出した不純物成分は吸着塔A2によって確実に吸着され除去されるので、ユースポイント50側に不純物が流出することはない。また、再生処理を行っている期間中は、CO2の循環を停止しているため、この期間中に不純物がユースポイント50側に流出することもない。
【0031】
吸着塔A2の吸着負荷は吸着塔A1に比べてはるかに小さいので、吸着塔A2については、安全を見越してまだ十分な吸着容量を有しているであろうと想定される期間で定期的に再生処理または交換を行えばよい。図1に示す二酸化炭素精製供給システムでは、吸着塔A1に関しては、後段に不純物が漏れる限界に到達してから再生処理あるいは交換を行うことが可能であるので、全体として、吸着材を有効に利用できる。
【0032】
図2は、本発明の第2の実施形態の二酸化炭素精製供給システムを示している。
【0033】
図1に示したシステムでは、吸着塔A1の再生処理を行っている期間中は循環系を停止しなければならないので、高純度CO2の精製も停止することになり、ユースポイント50への連続的なCO2の供給も行えなくなる。そこで図2に示した二酸化炭素精製供給システムでは、直列接続されている吸着塔A1及びA2をバイパスするようにもう1つの吸着塔Bを設け、吸着塔A1に対して再生処理または交換を行っている期間中は、蒸発器16からの気体CO2が吸着塔Bを介してフィルタ17に供給されるようにしている。吸着塔Bには、吸着塔A1,A2に充填されているものと同じ吸着材が充填されているが、同一の不純物を吸着する吸着材であれば、それに限らない。
【0034】
図2に示した二酸化炭素精製供給システムでは、通常の動作時には、蒸発器16からの気体CO2が吸着塔A1,A2を通り、吸着塔Bを通らないようにして、CO2の循環精製処理を実行する。分析部30は吸着塔A1出口でのCO2に含まれる不純物を順次あるいは逐一監視しており、不純物量がしきい値を超えた場合に、不純物が漏れ出す限界に吸着塔A1が達したと判定する。吸着塔A1が限界に達したことが検出されたら、吸着塔A1,A2へのCO2の通気を停止し、その代わりに蒸発器16からのCO2が吸着塔Bを通ってフィルタ17に流れるように速やかにラインを切り替え、さらに、次に、図示破線で示すように、再生ガス源41からの再生ガスがヒータ43を介して吸着塔A1を通過し再生排ガス42として排出されるようにラインの切り替えを行う。そして、吸着塔Bを介したCO2の循環を維持しながら、ヒータ43で加熱された再生ガスを吸着塔A1に通気し、吸着塔A1に吸着されていた不純物を脱離させて系外に排出することによって、吸着塔A1内の吸着材の再生処理を行う。このとき、吸着塔A1内での再生ガスの流れの方向は、本来のCO2の流れの方向とは逆方向になるようにする方が好ましいが、それに限るものではない。再生処理が完了したら、速やかにラインを元に戻して吸着塔Bへの通気を停止し、吸着塔A1,A2にCO2を通気させる。吸着塔A1の再生処理を行う代わりに、吸着塔A1自体の交換あるいは吸着塔A1内の吸着材の交換を行ってもよい。また、再生ガス源41からの再生ガスを吸着塔A1と吸着塔A2の間ではなく、吸着塔A2の後段、もしくは、その双方から供給するなどして、吸着塔A2の再生処理も一緒に行ってもよい。
【0035】
分析部30での分析におけるサンプリング時間間隔や分析結果が出るまでに要する時間などのために、不純物が漏れ出す限界に吸着塔A1が達してからそのことが判明するまでに多少のタイムラグが生じる可能性がある。しかしながら、吸着塔A1の下流側には吸着塔A2が設けられており、そのタイムラグ内に吸着塔A1から流出した不純物成分は吸着塔A2によって確実に吸着され除去されるので、ユースポイント50側に不純物が流出することはない。また、吸着塔A1の再生処理を行っている期間中は、吸着塔BにCO2を通気することによってCO2の循環精製処理は継続して実行されており、全体のプロセスを中断することなく連続的に精製CO2をユースポイント50も供給し続けることができる。
【0036】
吸着塔A2の吸着負荷は吸着塔A1に比べてはるかに小さく、また、吸着塔Bは、吸着塔A1の再生期間中にのみ使用されるので、吸着塔A2,Bについては、安全を見越してまだ十分な吸着容量を有しているであろうと想定される期間で定期的に再生処理または交換を行えばよい。図2に示す二酸化炭素精製供給システムでは、吸着塔A1に関しては不純物が漏れ出す限界に到達してから再生処理あるいは交換を行うことが可能であるので、全体として、吸着材を有効に利用できる。
【0037】
図3は、本発明の第3の実施形態の二酸化炭素精製供給システムを示している。
【0038】
図2に示した二酸化炭素精製供給システムでは、吸着塔A1の再生処理を行っているときには吸着塔BにCO2を通気してCO2の循環精製処理を継続して行っているが、吸着塔A1の再生処理に時間がかかるような場合には、吸着塔Bでの不純物の吸着量が多くなって、想定していたものよりも早く吸着塔Bの限界に到達するおそれがある。そこで図3に示した二酸化炭素精製供給システムでは、吸着塔Bの代わりに、直列接続された吸着塔B1及び吸着塔B2を設け、さらに、吸着塔B1,B2の接続点にもサンプリングラインを接続して、吸着塔B1の出口での不純物濃度を分析部30によって分析できるようにしている。また再生ガス源41から再生ガスは吸着塔B1にも供給できるようにし、吸着塔A1,B1に対して交互に再生処理を行えるようにしている。また、再生ガス源41からの再生ガスを吸着塔A2、B2後段からも供給するなどして、吸着塔A2、B2の再生処理も一緒に行ってもよい。再生ガス源41からの再生ガスを吸着塔A1、B1と吸着塔A2、B2の間ではなく、吸着塔A2、B2の後段、もしくは、その双方から供給するなどして、吸着塔A2、B2の再生処理も一緒に行ってもよい。
【0039】
以下の説明において、吸着塔A1,A2をまとめて吸着ラインAと呼び、吸着塔B1,B2をまとめて吸着ラインBと呼ぶ。
【0040】
初期状態において吸着ラインAにCO2を通気するか吸着ラインBにCO2を通気するかは任意に選択できるが、ここでは、蒸発器16からの気体CO2が吸着ラインAを通るが吸着ラインBを通らないものとする。この状態でCO2の循環精製処理を継続すると、吸着塔A1の出口での不純物濃度が高くなって、やがてしきい値を超える。しきい値を超えたら、不純物が漏れ出す限界に吸着塔A1が達したと判定し、吸着ラインAすなわち吸着塔A1,A2へのCO2の通気を停止し、その代わりに蒸発器16からのCO2が吸着ラインBを通ってフィルタ17に流れるように速やかにラインを切り替える。そして、再生ガス源41からヒータ43を介して再生ガスを吸着塔A1を通気し、吸着塔A1の再生処理を行う。このとき、CO2の循環精製処理は、吸着ラインBを介して行われている。吸着塔A1の再生処理が終了しても、引き続いて吸着ラインBにCO2を通気する。そのうち、吸着塔B1が限界に達して吸着塔B1の出口での不純物濃度が高くなり、そのことが分析部30で検出される。
【0041】
吸着塔B1が限界に達したことが検出されたら、今度は、吸着ラインBへのCO2の通気を停止し、その代わりに蒸発器16からのCO2が吸着ラインAを通ってフィルタ17に流れるように速やかにラインを切り替える。そして、再生ガス源41からヒータ43を介して再生ガスを吸着塔B1を通気し、吸着塔B1の再生処理を行う。このとき、CO2の循環精製処理は、吸着ラインAを介して行われている。吸着塔B1の再生処理が終了しても、引き続いて吸着ラインAにCO2を通気する。これで初期状態に戻ったわけであるから、これ以後は、上記の動作を繰り返し、吸着ラインA,Bに交互にCO2を通気し、通気していないタイミングで吸着塔A1あるいは吸着塔B1に対する再生処理を行う。
【0042】
図4は、図3に示した二酸化炭素精製供給システムにおいて吸着ラインA,B間でのラインの切り替えや吸着塔A1,A2の再生処理のためのラインの切り替えを説明するための図であり、吸着塔A1,A2,B1,B2とこれらに接続する弁AV1〜AV8を示している。蒸発器16からのラインと吸着塔A1,B1の入口との間にそれぞれ弁AV1,AV3が設けられ、吸着塔A2,B2の出口からフィルタ17との間にそれぞれ弁AV2,AV4が設けられている。吸着塔A1,B1の入口には、再生排ガス42を排出するための弁AV7,AV8が設けられている。再生ガス源41から供給されてヒータ43で加熱された再生ガスを出口側から吸着塔A1,B1に供給するために、ヒータ43と吸着塔A1,B1との間にそれぞれ弁AV5,AV6が設けられている。
【0043】
次に、これらの弁AV1〜AV8の開閉制御について説明する。図3に示す二酸化炭素精製供給システムの動作は、以下のステップ1〜4にまとめることができる。ステップ1では、吸着ラインAで通常の吸着運転を行い、吸着ラインBには通気させない。ステップ1において、不純物が漏れ出す限界に吸着塔A1が達したことを検出したら、ステップ2に移行し、ステップ2では、吸着ラインBで通常の吸着運転を行い、同時に吸着塔A1の再生処理を実行する。吸着塔A1の再生処理が完了したらステップ3に移行し、ステップ3では、吸着ラインBで通常の吸着運転を行い、吸着ラインAには通気させない。その後、吸着塔B1が限界に達したことを検出したら、ステップ4に移行し、ステップ4では、吸着ラインAで通常の吸着運転を行い、同時に吸着塔B1の再生処理を実行する。吸着塔B1の再生処理が完了したら最初のステップ1に戻る。表1は、このようなステップ1〜4を実施するための弁の開閉制御を示している。
【0044】
【表1】

【0045】
図3に示したシステムでは、分析部30での分析におけるサンプリング時間間隔や分析結果が出るまでに要する時間などのために、吸着塔A1または吸着塔B1が限界に達してからそのことが判明するまでに多少のタイムラグが生じる可能性がある。しかしながら、吸着塔A1,B1の下流側にはそれぞれ吸着塔A2,B2が設けられており、そのタイムラグ内に吸着塔A1、B1から流出した不純物成分は吸着塔A2,B2によって確実に吸着され除去されるので、ユースポイント50側に不純物が流出することはない。また、吸着ラインAと吸着ラインBとにCO2が交互に通気されるようにすることによってCO2の循環精製処理は継続して実行されており、全体のプロセスを中断することなく連続的に精製CO2をユースポイント50に供給し続けることができる。
【0046】
吸着塔A2,B2の吸着負荷は吸着塔A1,B1に比べてはるかに小さいので、吸着塔A2,B2については、安全を見越してまだ十分な吸着容量を有しているであろうと想定される期間で定期的に再生処理または交換を行えばよい。図3に示す二酸化炭素精製供給システムでは、吸着塔A1,B1に関しては、不純物が漏れ出す限界に到達してから再生処理あるいは交換を行うことが可能であるので、全体として、吸着材を有効に利用できる。
【0047】
図5は、本発明の第4の実施形態の二酸化炭素精製供給システムを示している。図5に示した二酸化炭素精製供給システムは、循環精製型ではない構成のものであって、図1に示した二酸化炭素供給システムから圧力調整弁14、冷却器15及び蒸発器16を取り除いた構成のものである。CO2源からは気体状態の原料CO2が吸着塔A1に直接供給されている。
【0048】
図5に示したものでは、気体状態の原料CO2が、吸着塔A1に流入し、ここで、吸着塔での除去目的とする不純物(水分、油分及び揮発性の不純物)が除去され、次に吸着塔A2に流入し、さらに、フィルタ17を介して凝縮器18に供給されて液化され、液体CO2として貯槽11に供給される。フィルタ17は、蒸発器16で除去しきれなかったパーティクルや、吸着塔A1,A2で発生したパーティクルを除去する。この結果、貯槽11には、蒸発器16及びフィルタ17によって難揮発性のパーティクルが除去され、吸着塔A1によって除去目的とする不純物(水分、油分あるいは揮発性の不純物)が除去された高純度の液体CO2が貯えられることになる。この高純度の液体CO2は、ポンプ12によりユースポイント50に供給される。
【0049】
原料CO2の精製を行っていると、吸着塔A1に吸着された不純物量が徐々に増加し、やがて、吸着塔A1がこれ以上吸着させると不純物が漏れ出すという限界に達して吸着塔A1がブレークする。分析部30は、サンプリングラインを介し、吸着塔A1と吸着塔A2を流れるCO2をサンプリングして不純物濃度を常時あるいは逐一監視しており、不純物濃度があるしきい値を超えた場合に、吸着塔A1が限界に達したと判定する。吸着塔A1が限界に達したことが検出されたら、吸着塔A1,A2へのCO2の通気を速やかに停止し、次に、図示破線で示すように、再生ガス源41からの再生ガスがヒータ43を介して吸着塔A1を通過し再生排ガス42として排出されるようにラインの切り替えを行う。そして、ヒータ43で加熱された再生ガスを吸着塔A1に通気し、吸着塔A1に吸着されていた不純物を脱離させて系外に排出することによって、吸着塔A1内の吸着材の再生処理を行う。このとき、吸着塔A1内での再生ガスの流れの方向は、本来のCO2の流れの方向とは逆方向になるようにする方が好ましい。再生処理が完了したら、速やかにラインを元に戻し、吸着塔A1,A2にCO2を通気させ、精製処理を再開する。吸着塔A1の再生処理を行う代わりに、吸着塔A1自体の交換あるいは吸着塔A1内の吸着材の交換を行ってもよい。また、再生ガス源41からの再生ガスを吸着塔A1と吸着塔A2の間ではなく、吸着塔A2の後段、もしくは、その双方から供給するなどして、吸着塔A2の再生処理も一緒に行ってもよい。
【0050】
分析部30での分析におけるサンプリング時間間隔や分析結果が出るまでに要する時間などのために、不純物が漏れ出すこととなる限界に吸着塔A1が達してからそのことが判明するまでに多少のタイムラグが生じる可能性がある。しかしながら、吸着塔A1の下流側には吸着塔A2が設けられており、そのタイムラグ内に吸着塔A1から流出した不純物成分は吸着塔A2によって確実に吸着され除去されるので、ユースポイント50側に不純物が流出することはない。また、再生処理を行っている期間中は、CO2の通気を停止しているため、この期間中に不純物がユースポイント50側に流出することもない。
【0051】
吸着塔A2の吸着負荷は吸着塔A1に比べてはるかに小さいので、吸着塔A2については、安全を見越してまだ十分な吸着容量を有しているであろうと想定される期間で定期的に再生処理または交換を行えばよい。図5に示す二酸化炭素精製供給システムでも、吸着塔A1に関しては、後段に不純物が漏れる限界に到達してから再生処理あるいは交換を行うことが可能であるので、全体として、吸着材を有効に利用できる。
【0052】
同様に、図2及び図3に示す二酸化炭素精製供給システムにおいても、圧力調整弁14、冷却器15及び蒸発器16を取り除き、気体状態の原料CO2が上流側の吸着塔に直接供給されるような構成とすることによって、循環精製型でない構成のものとすることができる。それらの場合も、分析部30での測定結果に応じてCO2の通気の中止やラインの切り替えを行い、上流側の吸着塔に対する再生処理あるいは交換を行うことによって、全体として、吸着材を有効に利用できるようになる。
【符号の説明】
【0053】
10 循環系
11 貯槽
12 ポンプ
13,17 フィルタ
14 圧力調整弁
15 冷却器
16 蒸発器
18 凝縮器
21 CO2
22,23 弁
30 分析部
41 再生ガス源
42 再生排ガス
43 ヒータ
50 ユースポイント
A1,A2,B,B1,B2 吸着塔
AV1〜AV8 弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気相状態の二酸化炭素を凝縮して液体状態の二酸化炭素を生成する凝縮器と、前記気相状態の二酸化炭素を前記凝縮器に送る精製ラインと、前記凝縮器内において液体状態である二酸化炭素を供給先に供給する供給ラインと、を少なくとも備え、二酸化炭素源から供給された二酸化炭素を精製して前記供給先に供給する二酸化炭素精製供給システムにおいて、
前記精製ラインに設けられ、該精製ラインを流れる気相状態の二酸化炭素から不純物を吸着除去する相互に直列接続された複数の吸着部と、
前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定する分析部と、
を備えることを特徴とする、二酸化炭素精製供給システム。
【請求項2】
二酸化炭素を気化させる蒸発器と、
前記供給ラインから分岐されて前記液体状態の二酸化炭素の一部または全部を前記蒸発器に送る循環ラインと、
をさらに備え、
前記蒸発器の出口が前記精製ラインに接続されて前記蒸発器から前記気相状態の二酸化炭素が前記凝縮器に供給され、
少なくとも前記供給ラインと前記循環ラインと前記蒸発器と前記精製ラインと前記凝縮器とによって循環系が構成され、前記二酸化炭素源から前記循環系に前記二酸化炭素が供給される、請求項1に記載の二酸化炭素精製供給システム。
【請求項3】
前記分析部での測定結果に応じて前記複数の吸着部への二酸化炭素の通気状態が制御される、請求項1または2に記載の二酸化炭素精製供給システム。
【請求項4】
前記直列接続された複数の吸着部に対し、さらに並列に1つ以上の吸着部が設けられている、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給精製システム。
【請求項5】
前記直列接続された複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給する配管と、前記再生ガスを前記精製ラインの外に排出するための配管とを備える、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給精製システム。
【請求項6】
前記直列接続された複数の吸着部を第1の吸着ラインとして、前記第1の吸着ラインに対して並列に前記第1の吸着ラインからは独立した第2の吸着ラインが設けられ、
前記第2の吸着ラインは、二酸化炭素から前記不純物を吸着除去する相互に直列接続された複数の吸着部を有し、
前記分析部は、前記第2の吸着ラインの複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素もサンプリングして前記不純物を測定する、請求項1または2に記載の二酸化炭素精製供給システム。
【請求項7】
前記第1の吸着ラインの前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定した結果と、前記第2の吸着ラインの前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定した結果とに応じて、前記第1及び第2の吸着ラインに対する通気状態が制御される、請求項6に記載の二酸化炭素精製供給システム。
【請求項8】
前記第1の吸着ラインの複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給する配管と、前記第2の吸着ラインの複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給する配管と、前記再生ガスを前記精製ラインの外に排出するための配管とを備える、請求項6または7に記載の二酸化炭素精製供給システム。
【請求項9】
二酸化炭素源から二酸化炭素が供給されて、精製された二酸化炭素を供給先に供給する二酸化炭素精製供給方法であって、
気体状態の二酸化炭素を凝縮器により凝縮して液体状態の二酸化炭素とする工程と、
前記気相状態の二酸化炭素を前記凝縮器に送る精製ライン上の位置で、相互に直列接続された複数の吸着部に気相状態の二酸化炭素を通気することにより、前記気相状態の二酸化炭素から不純物を吸着除去する不純物除去工程と、
前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定する分析工程と、
前記分析工程での測定結果に応じて前記複数の吸着部への二酸化炭素の通気状態を制御する制御工程と、
を有することを特徴とする、二酸化炭素精製供給方法。
【請求項10】
前記凝縮器内において液体状態である二酸化炭素を前記供給先に供給するための供給ラインから分岐する循環ラインを介して、二酸化炭素を気化させる蒸発器に対して前記液体状態の二酸化炭素を供給する工程と、
前記蒸発器の出口から流れ出る気体状態の二酸化炭素を前記精製ラインに送る工程と、
をさらに有して二酸化炭素の循環処理を行い、前記循環処理を行う循環系に対して前記二酸化炭素源から二酸化炭素が供給される、請求項9に記載の二酸化炭素精製供給方法。
【請求項11】
前記制御工程において前記複数の吸着部への二酸化炭素の通気を停止したときに、前記直列接続された複数の吸着部に対して並列にもうけられた吸着部に対して二酸化炭素を通気する、請求項9または10に記載の二酸化炭素供給精製方法。
【請求項12】
前記制御工程において前記複数の吸着部への二酸化炭素の通気を停止したときに、直列接続された複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給して当該吸着部を再生する工程を備える、請求項9乃至11のいずれか1項に記載の二酸化炭素供給精製方法。
【請求項13】
前記直列接続された複数の吸着部を第1の吸着ラインとして、前記不純物除去工程において、第1の吸着ラインと、前記第1の吸着ラインに対して並列に前記第1の吸着ラインから独立して設けられ二酸化炭素から前記不純物を吸着除去する相互に直列接続された複数の吸着部を有する第2の吸着ラインとに交互に二酸化炭素を通気する工程であり、
前記分析工程において、前記第2の吸着ラインの複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素もサンプリングして前記不純物を測定し、
前記制御工程において、前記第1の吸着ラインの前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定した結果と、前記第2の吸着ラインの前記複数の吸着部の相互間の接続位置の少なくとも1つを流れる二酸化炭素をサンプリングして前記不純物を測定した結果とに応じて、前記第1及び第2の吸着ラインに対する通気状態を制御する、請求項9または10に記載の二酸化炭素精製供給方法。
【請求項14】
前記制御工程において前記第1の吸着ラインへの二酸化炭素の通気を停止したときに、前記第1の吸着ラインの複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給して当該吸着部を再生し、前記制御工程において前記第2の吸着ラインへの二酸化炭素の通気を停止したときに、前記第2の吸着ラインの複数の吸着部のうち少なくとも前記二酸化炭素の流れにおける末端に位置する吸着部以外の吸着部に対して再生ガスを供給して当該吸着部を再生する工程を備える、請求項13に記載の二酸化炭素供給精製方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−87016(P2013−87016A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−228954(P2011−228954)
【出願日】平成23年10月18日(2011.10.18)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【出願人】(000187149)昭和電工ガスプロダクツ株式会社 (60)
【Fターム(参考)】