説明

二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計

【課題】 振動漏洩の軽減に寄与する二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計を提供する。
【解決手段】 第1湾曲管31の出発管部27は、第2湾曲管32の出発管部28、又は第1湾曲管31の戻り管部29と第2湾曲管32の出発管部28との連続部分35に対して略平行な第1平行部分27aと、この第1平行部分27aに連続する第1曲げ部分27bと、第1曲げ部分27bの存在により第2湾曲管32の出発管部28との距離が徐々に広がる第1出発管部本体部分27cとを有する。第2湾曲管部32の戻り管部30は、第1湾曲管31の戻り管部29又は連続部分35に対して略平行な第2平行部分30aと、この第2平行部分30aに連続する第2曲げ部分30bと、第2曲げ部分30bの存在により第1湾曲管31の戻り管部29との距離が徐々に広がる第2戻り管部本体部分30cとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フローチューブに作用するコリオリの力に比例した位相差及び/又は振動周波数を検出して被測定流体の質量流量及び/又は密度を得るコリオリ流量計に関し、詳しくは、フローチューブが二重ループ構造となるコリオリ流量計に関する。
【背景技術】
【0002】
コリオリ流量計は、被計測流体の流通する流管の一端又は両端を支持し、その支持点回りに流管の流れ方向と垂直な方向に振動を加えたときに、流管(以下、振動が加えられるべき流管をフローチューブという)に作用するコリオリの力が質量流量に比例することを利用した質量流量計である。コリオリ流量計は周知のものであり、コリオリ流量計におけるフローチューブの形状は直管式と湾曲管式とに大別されている。
【0003】
直管式のコリオリ流量計は、両端が支持された直管の中央部直管軸に垂直な方向の振動を加えたとき、直管の支持部と中央部との間でコリオリの力による直管の変位差、すなわち位相差信号が得られ、その位相差信号に基づいて質量流量を検知するように構成されている。このような直管式のコリオリ流量計は、シンプル、コンパクトで堅牢な構造を有している。しかしながら、高い検出感度を得ることができないという問題点もあわせ持っている。
【0004】
これに対して、湾曲管式のコリオリ流量計は、コリオリの力を有効に取り出すための形状を選択できる面で、直管式のコリオリ流量計よりも優れており、実際、高感度の質量流量を検出することができている。尚、湾曲管式のコリオリ流量計としては、一本のフローチューブを備えるもの(例えば特許文献1参照)や、並列二本のフローチューブを備えるもの(例えば特許文献2参照)、或いは一本のフローチューブをループさせた状態に備えるもの(例えば特許文献3参照)などが知られている。
【特許文献1】特公平4−55250号公報
【特許文献2】特許第2939242号公報
【特許文献3】特公平5−69453号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
フローチューブを対向振動させる構造のコリオリ流量計として、例えば上記特許文献3のものでは、振動系が完全に相対的にバランスが取れていても、次のような問題点を有している。すなわち、フローチューブを固定部材に対して固定する部分の剛性が低かったり、フローチューブの相対する固定端間の距離が離れていたりすると、フローチューブの天頂から固定端に向けた縦方向において、振動漏洩が生じてしまうという問題点を有している。そして、この振動漏洩によりフローチューブの上流方向と下流方向とでエネルギー散逸の比率が変化すると、ゼロ点シフト発生の恐れがあるという問題点を有している。
【0006】
上記の振動漏洩を軽減するためには、相対する固定端間の距離を狭めればよく、また、これと同時に固定端の剛性を高めればよいということを本願発明者は見出している。
【0007】
ところで、フローチューブに取り付けられる駆動手段や振動検出手段は、振動するフローチューブの管軸の軌跡上に配置することが最も効率がよいことが知られている。従って、駆動手段や振動検出手段を対向するフローチューブ間に配置するためには、これらのサイズを考慮してフローチューブの間隔を広げる必要がある。ここで、本願発明者の見出した上記内容を考慮すると、フローチューブの構造は、固定端から天頂方向に向けてチューブ間距離が相対的に広がる構造となる。
【0008】
固定端から天頂方向に向けてチューブ間距離が相対的に広がるフローチューブの構造に関して、以下図面を参照しながら説明する。
【0009】
図3において、引用符号1は二重ループ構造のフローチューブ、2はフローチューブ1を固定する固定部材を示している。フローチューブ1は、第1湾曲管3と、第2湾曲管4と、第1湾曲管3に連続する流入管5と、第2湾曲管4に連続する流出管6とを有している。このようなフローチューブ1内を流れる被測定流体(図示省略)は、流入管5から第1湾曲管3の出発管部7へ流れ込み、天頂部8及び戻り管部9を通過するようになっている。そして、第1湾曲管3と第2湾曲管4との連続部分10から第2湾曲管4の出発管部11へ流れ込み、さらには天頂部12及び戻り管部13を通過して流出管6へ移動するようになっている。
【0010】
フローチューブ1は、第1湾曲管3の出発管部7と第2湾曲管4の出発管部11との間隔が徐々に広がるように配置されている。また、第1湾曲管3の戻り管部9と第2湾曲管4の戻り管部13も徐々に間隔が広がるように配置されている。
【0011】
図3のフローチューブ1は、流入管5及び流出管6の各曲げ部分14が連続部分10に対して干渉しないようなギリギリの位置に配置されてなっているものであり、固定端間には引用符号tで示される間隔が生じている。この間隔tは、振動漏洩に影響するものであり、干渉が生じない状態で間隔tを狭めるためには、固定部材2の直径を縮径させる対策が挙げられる。しかしながら、この対策をとると、センサ全体の外乱振動に対する剛性が低下して結果的に安定した構造が得られなくなってしまう。また、フローチューブ1の外径が大きくなると固定部材2においてフローチューブ1を挟み込み固定するための溝加工、又は穴加工が困難となる場合があった。
【0012】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、振動漏洩の軽減に寄与する二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計は、センサユニット部分の基本構成図となる図1に示されるように、被計測流体を流す一本のフローチューブ23と、該フローチューブ23を固定する固定部材24とを備え、前記フローチューブ23は、前記固定部材24から出る方向の出発管部27、28及び前記固定部材24へ戻る方向の戻り管部29、30をそれぞれ有して相対向する第1、第2湾曲管31、32と、前記第1湾曲管31に連続する流入管33と、前記第2湾曲管32に連続する流出管34とを備える二重ループ構造のコリオリ流量計21において、前記第1湾曲管31の前記出発管部27は、前記第2湾曲管32の前記出発管部28に対して、又は前記第1湾曲管31の前記戻り管部29と前記第2湾曲管32の前記出発管部28との連続部分35に対して略平行な第1平行部分27aと、該第1平行部分27aに連続する第1曲げ部分27bと、該第1曲げ部分27bの存在により前記第2湾曲管32の前記出発管部28との距離が徐々に広がる第1出発管部本体部分27cとを有し、前記第2湾曲管部32の前記戻り管部30は、前記第1湾曲管31の前記戻り管部29又は前記連続部分35に対して略平行な第2平行部分30aと、該第2平行部分30aに連続する第2曲げ部分30bと、該第2曲げ部分30bの存在により前記第1湾曲管31の前記戻り管部29との距離が徐々に広がる第2戻り管部本体部分30cとを有することを特徴としている。
【0014】
請求項2記載の本発明の二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計は、請求項1に記載の二重ループ構造のフローチューブ23を備えたコリオリ流量計21において、前記第1湾曲管31の前記戻り管部29と前記連続部分35と前記第2湾曲管32の前記出発管部28との管軸を合わせるとともに、前記第1出発管部本体部分27cと前記第2戻り管部本体部分30cとの管軸も合わせることを特徴としている。
【0015】
このような特徴を有する本発明によれば、固定部材24の剛性を維持した状態でフローチューブ23の固定端側の間隔(T)を最小に狭めることが可能になるとともに、固定端側から天頂方向に向けてフローチューブ23のチューブ間距離を相対的に広げることが可能になる。また、このようなフローチューブ23においては、天頂側のチューブ間距離を最適に設定することが可能になる。天頂側のチューブ間距離を最適に設定すれば、駆動手段(25)の構成同士、振動検出手段(26)の構成同士を専用のブラケットを用いることなく近接させることが可能になり、温度変化によるフローチューブ23の変形に伴ったブラケット先端の不確実な移動や、余計な付加質量がないことで耐振性にも配慮することが可能になる。一方、フローチューブ23の各部分の管軸を合わせることで、第1、第2湾曲管31、32を略鏡像の構造にすることが可能になる。これにより、安定した振動系にすることが可能になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計の振動漏洩を従来よりも軽減させることができるという効果を奏する。また、振動系の温度特性や耐振性を従来よりも向上させることができるという効果を奏する。さらに、従来よりも安定した振動系にすることができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照しながら説明する。図1は本発明の一実施の形態を示すコリオリ流量計のセンサユニット部分の基本構成図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図、(d)は側面図、(e)は要部拡大図である。
【0018】
図1において、本発明のコリオリ流量計21は、筐体22と、この筐体22内に収納されるフローチューブ23と、フローチューブ23を固定する固定部材24とを備えて構成されている。また、本発明のコリオリ流量計21は、駆動装置25、一対の振動検出センサ26、26、及び温度センサ(図示省略)を有するセンサ部(図示省略)と、このセンサ部からの信号に基づいて質量流量等の演算処理を行う信号演算処理部(図示省略)と、駆動装置25を励振するための励振回路部(図示省略)とを備えて構成されている。以下、各構成部材について説明する。
【0019】
上記筐体22は、曲げやねじれに強固な構造を有している。筐体22は、フローチューブ23を固定するための固定部材24を取り付けた状態で、このフローチューブ23を収納することができる大きさに形成されている。筐体22は、フローチューブ23等の流量計要部、すなわちセンサユニット部分を保護することができるように形成されている。このような筐体22の内部には、アルゴンガス等の不活性ガスが充填されている。不活性ガスの充填により、フローチューブ23等への結露が防止されるようになっている。
【0020】
固定部材24には、筐体22が適宜手段で取り付けられている。固定部材24は、平面視円形状に形成されている(平面視円形状が好ましいが、この限りではないものとする。十分な剛性が確保できればよいものとする。例えば、平面視四角形状の固定部材や、図2に示される固定部材24′のように形成してもよいものとする)。固定部材24は、本形態において、内部に空間を有する環状の壁となるように形成されている。固定部材24の材質は、ステンレス等のこの技術分野において通常のものが用いられている。
【0021】
上記フローチューブ23は、一本の測定用の流管をループさせてなる二重ループ構造のものであって、固定部材24から出る方向の出発管部27、28及び固定部材24へ戻る方向の戻り管部29、30をそれぞれ有して相対向する第1湾曲管31及び第2湾曲管32と、第1湾曲管31に連続する流入管33と、第2湾曲管32に連続する流出管34とを有している。フローチューブ23の第1湾曲管31と第2湾曲管32は、連続部分35により連結されている。
【0022】
尚、図中における符号なしの矢印は、フローチューブ23の内部を流れる被測定流体(図示省略)の流れ方向を示している。また、矢印Pは上下方向、矢印Qは左右方向を示している。
【0023】
先ず、第1湾曲管31及び第2湾曲管32について説明する。第1湾曲管31及び第2湾曲管32は、共に左右方向に長い略長円形状に形成されている。第1湾曲管31及び第2湾曲管32は、略鏡像となる形状に形成されている。
【0024】
第1湾曲管31及び第2湾曲管32の構成を被測定流体(図示省略)の流れ方向に沿って説明する。第1湾曲管31は、流入管33が連続する出発管部27と、この出発管部27が連続するとともに被測定流体(図示省略)の流れ方向が反転する反転用曲げ管部36と、反転用曲げ管部36が連続する天頂管部37と、天頂管部37が連続する反転用曲げ管部38と、この反転用曲げ管部38が一端に連続するとともに他端に連続部分35が連続する戻り管部29とを有して構成されている。
【0025】
一方、第2湾曲管32は、連続部分35が連続する出発管部28と、この出発管部28が連続する反転用曲げ管部39と、反転用曲げ管部39が連続する天頂管部40と、天頂管部40が連続する反転用曲げ管部41と、この反転用曲げ管部41が一端に連続するとともに他端に流出管34が連続する戻り管部30とを有して構成されている。
【0026】
第1湾曲管31の出発管部27は、例えば第2湾曲管32の出発管部28及び連続部分35の連続する部分(又は出発管部28、連続部分35でも可)に対して略平行な第1平行部分27aと、この第1平行部分27aに連続する第1曲げ部分27bと、第1曲げ部分27bの存在により第2湾曲管32の出発管部28との距離が徐々に広がる第1出発管部本体部分27cとを有している。
【0027】
第1平行部分27aは、真っ直ぐな形状であって、この一端に流入管33が連続するように配置形成されている。第1平行部分27aは、本形態において、固定部材24に対し強固に固定されている。第1平行部分27aは、出発管部28及び連続部分35の上記連続する部分に対して干渉しないようなギリギリの位置に配置形成されている。
【0028】
第1曲げ部分27bは、第1平行部分27aの他端に連続するように配置形成されている。また、第1曲げ部分27bは、本形態において、ちょうど固定部材24の外周面から突出するような位置に配置形成されている。第1曲げ部分27bは、本形態において、これに連続する真っ直ぐな第1出発管部本体部分27cが、第2湾曲管32の出発管部28に対して約8°傾くように形成されている(一例であるものとする。本形態においては振動検出センサ26のサイズに合わせて傾きが設定されている)。
【0029】
第1湾曲管31の出発管部27と、第2湾曲管32の出発管部28は、第1湾曲管31の出発管部27の構造によって、固定端間が最小の寸法T(T<t、tは図3参照)となるように配置されている。出発管部27を構成する第1出発管部本体部分27cと、第2湾曲管32の出発管部28は、ブレースバー42により固定されている。ブレースバー42は、2つの管に跨るような板状の部材であって、固定部材24に近い位置に配置されている。ブレースバー42は、対向振動するフローチューブ23の各振動モードの同相振動と逆相振動の固有振動数を離すことにより、耐振動性を向上させるために用いられている。また、ブレースバー42は、振動の基部における応力を分散し、耐久性を増すような働きを有している。
【0030】
第2湾曲管32の戻り管部30は、例えば第1湾曲管31の戻り管部29及び連続部分35の連続する部分(又は戻り管部29、連続部分35でも可)に対して略平行な第2平行部分30aと、この第2平行部分30aに連続する第2曲げ部分30bと、第2曲げ部分30bの存在により第1湾曲管31の戻り管部29との距離が徐々に広がる第2戻り管部本体部分30cとを有している。
【0031】
第2平行部分30aは、真っ直ぐな形状であって、この一端に流出管34が連続するように配置形成されている。第2平行部分30aは、本形態において、固定部材24に対し強固に固定されている。第2平行部分30aは、戻り管部29及び連続部分35の上記連続する部分に対して干渉しないようなギリギリの位置に配置形成されている。
【0032】
第2曲げ部分30bは、第2平行部分30aの他端に連続するように配置形成されている。また、第2曲げ部分30bは、本形態において、ちょうど固定部材24の外周面から突出するような位置に配置形成されている。第2曲げ部分30bは、本形態において、これに連続する真っ直ぐな第2戻り管部本体部分30cが、第1湾曲管31の戻り管部29に対して約8°傾くように形成されている(一例であるものとする。本形態においては振動検出センサ26のサイズに合わせて傾きが設定されている)。
【0033】
第2湾曲管32の戻り管部30と、第1湾曲管31の戻り管部29は、第2湾曲管32の戻り管部30の構造によって、固定端間が最小の寸法T(T<t、tは図3参照)となるように配置されている。戻り管部30を構成する第2戻り管部本体部分30cと、第1湾曲管31の戻り管部29は、上記のものと同じブレースバー42により同位置で固定されている。
【0034】
第1湾曲管31の戻り管部29、連続部分35、及び第2湾曲管32の出発管部28は、これらの管軸が一致するように形成されている。また、第1湾曲管31の第1出発管部本体部分27c及び第2湾曲管32の第2戻り管部本体部分30cも同様に管軸が一致するように形成されている。第1湾曲管31の戻り管部29及び第2湾曲管32の出発管部28は、本形態において、固定部材24に対し強固に固定されている。
【0035】
第1湾曲管31及び第2湾曲管32の天頂管部37及び40は、本形態において、これらの中間が駆動装置25のサイズに合わせて近接するような図示の形状に形成されている(一例であるものとする。中間を近接させずに真っ直ぐに形成することも当然によいものとする)。天頂管部37及び40の中央位置は、駆動装置25に対する取り付け部分となっている。また、平行に配置される反転用曲げ管部36と39、及び反転用曲げ管部38と41の各中央位置は、振動検出センサ26に対する取り付け部分となっている。
【0036】
流入管33は、第1湾曲管31の第1平行部分27aに連続する曲げ部分43と、この曲げ部分43に連続する真っ直ぐな流入管本体44とを有して構成されている。また、流出管34も同様に、第2湾曲管32の第2平行部分30aに連続する曲げ部分45と、この曲げ部分45に連続する真っ直ぐな流出管本体46とを有して構成されている。流入管33及び流出管34は、同一形状に形成されている。流入管33の流入管本体44と流出管34の流出管本体46は、これらの管軸が一致するように配置されている。流入管33の流入管本体44と流出管34の流出管本体46は、本形態において、固定部材24に対し強固に固定されている。
【0037】
第1湾曲管31の出発管部27及び戻り管部29と、第2湾曲管32の出発管部28及び戻り管部30と、流入管33と、流出管34は、本形態において、同一平面上に固定されている(一例であるものとする)。
【0038】
フローチューブ23は、上記固定端の間隔が極めて狭いことから、振動漏洩が起こり難い構造になっている。また、詳細な説明は省略するが、フローチューブ23は第1湾曲管31及び第2湾曲管32に生じる捻り応力が相殺されるような構造になっている。すなわち、固定部材24にほぼ振動が生じないような構造になっている。一方、フローチューブ23は、天頂管部37及び40の間隔が狭いことから、駆動装置25で生じる相対的な位置関係の温度や振動によるズレが最小になるような構造になっている。また、振動検出センサ26、26においても同様に相対的な位置関係の温度や振動によるズレが最小になるような構造になっている。
【0039】
尚、フローチューブ23の材質は、ステンレス、ハステロイ、チタン合金等のこの技術分野において通常のものが用いられている。
【0040】
上記センサ部を構成する上記駆動装置25は、フローチューブ23の第1湾曲管31及び第2湾曲管32を対向振動させるためのものであって、コイルとマグネットとを備えて構成されている。このような駆動装置25は、フローチューブ23の天頂管部37及び40の中央位置に、且つこれらによって挟まれるような状態で配置されている。言い換えれば、駆動装置25は、フローチューブ23の振動方向に対してオフセットしてない位置に取り付けられている。
【0041】
駆動装置25のコイルは、専用の取付具(取付具は後述のブラケットではないものとする)を用いてフローチューブ23の天頂管部37に取り付けられている。また、コイルからは、特に図示しないが、FPC(フレキシブル・プリント・サーキット)又は電線が引き出されている。駆動装置25のマグネットは、専用の取付具を用いてフローチューブ23の天頂管部40に取り付けられている(コイル及びマグネットの配置は上記の逆であってもよいものとする)。
【0042】
駆動装置25において吸引作用が生じると、マグネットがコイルに対して差し込まれるような状態になり、その結果、フローチューブ23の天頂管部37及び40同士が近接するようになる。これに対し、反発作用が生じると、フローチューブ23の天頂管部37及び40同士が離間するようになる。駆動装置25は、フローチューブ23が上述の如く固定部材24に固定されていることから、このフローチューブ23を、固定部材24を中心にして回転方向に交番駆動させるように構成されている。
【0043】
上記センサ部を構成する上記振動検出センサ26、26は、フローチューブ23の振動を検出するとともに、フローチューブ23に作用するコリオリの力に比例した位相差を検出するためのセンサであって、それぞれコイルとマグネットとを備えて構成されている(これに限らず、加速度センサ、光学的手段、静電容量式、歪み式(ピエゾ式)等の変位、速度、加速度のいずれかを検出する手段であればよいものとする)。
【0044】
このような構成の振動検出センサ26、26は、コリオリの力に比例した位相差を検出することが可能な位置に配置されている。振動検出センサ26、26は、本形態において、平行に配置される反転用曲げ管部36と39、及び反転用曲げ管部38と41の各中央位置に配置されている。
【0045】
振動検出センサ26、26の各コイルは、専用の取付具を用いてフローチューブ23の反転用曲げ管部39と41に取り付けられている。各コイルからは、特に図示しないが、FPC(フレキシブル・プリント・サーキット)又は電線が引き出されている。振動検出センサ26、26の各マグネットは、専用の取付具を用いて反転用曲げ管部36と38に取り付けられている。
【0046】
本発明のコリオリ流量計21の内部には、特に図示しないが、基板等が設けられている。この基板には、筐体22の外部に引き出されるワイヤハーネスが接続されている。また、基板には、駆動装置25や振動検出センサ26、26からのFPC又は電線が接続されている。
【0047】
上記センサ部の一部を構成する温度センサは、コリオリ流量計21の温度補償をするためのものであって、適宜手段でフローチューブ23に取り付けられている。具体的な配置としては、例えば第1湾曲管31の戻り管部29に取り付けられている。尚、温度センサから引き出される図示しないFPC(フレキシブル・プリント・サーキット)又は電線は、上記基板に接続されている。
【0048】
上記信号演算処理部には、一方の振動検出センサ26からの、フローチューブ23の変形に関する検出信号、他方の振動検出センサ26からの、フローチューブ23の変形に関する検出信号、及び温度センサからの、フローチューブ23の温度に関する検出信号がそれぞれ入力されるように配線及び接続がなされている。このような信号演算処理部では、センサ部より入力された各検出信号に基づいて質量流量及び密度の演算がなされるように構成されている。また、信号演算処理部では、演算により得られた質量流量、密度が図示しない表示器に対して出力されるように構成されている。
【0049】
上記励振回路部は、平滑部と比較部と目標設定部と可変増幅部と駆動出力部とを備えて構成されている。平滑部は、一方の振動検出センサ26(又は他方の振動検出センサ26)からの検出信号を取り出すように配線されている。また、平滑部は、入力された検出信号を整流し平滑するとともに、その振幅に比例した直流電圧を出力することができるような機能を有している。比較部は、平滑部からの直流電圧と目標設定部から出力される目標設定電圧とを比較するとともに、可変増幅部の利得を制御して共振振動の振幅を目標設定電圧に制御することができるような機能を有している。
【0050】
上記構成において、フローチューブ23に被測定流体(図示省略)を流すとともに、駆動装置25を駆動させてフローチューブ23の第1湾曲管31及び第2湾曲管32を対向振動させると、振動検出センサ26、26の点でのコリオリの力によって生じる位相の差分により、質量流量が上記信号演算処理部で算出される。また、本形態においては、振動周波数から密度も算出される。
【0051】
次に、図2を参照しながらフローチューブ及び固定部材の変形例を説明する。図2はフローチューブ及び固定部材の変形例を示すセンサユニット部分の基本構成図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図である。
【0052】
図2において、本発明のコリオリ流量計は、筐体(図示省略。図1の引用符号22と同じものとする)と、この筐体内に収納されるフローチューブ23′と、フローチューブ23′を固定する固定部材24′と、駆動装置25、一対の振動検出センサ26、26、及び温度センサ(図示省略)を有するセンサ部(図示省略)と、このセンサ部からの信号に基づいて質量流量等の演算処理を行う信号演算処理部(図示省略)と、駆動装置25を励振するための励振回路部(図示省略)とを備えて構成されている。コリオリ流量計は、上述の形態に対して、フローチューブ23′と固定部材24′とが若干異なっている(センサユニット部分の作用は同じであるものとする)。以下、相違点のみ説明する。
【0053】
フローチューブ23′の第1湾曲管31を構成する出発管部27は、第1平行部分27aと、第1曲げ部分27bと、第1出発管部本体部分27cとを有しており、第1平行部分27aがちょうど固定部材24′の外周面から突出するような位置に配置形成されている。一方、第2湾曲管32を構成する戻り管部30は、第2平行部分30aと、第2曲げ部分30bと、第2戻り管部本体部分30cとを有しており、こちらも第2平行部分30aがちょうど固定部材24′の外周面から突出するような位置に配置形成されている。固定部材24′は、図示のようなブロック状に形成されている。
【0054】
他の相違点としては、特にダッシュの符号を付さないが、平行に配置される反転用曲げ管部36と39、及び反転用曲げ管部38と41の形状が若干異なっている。また、天頂管部37及び40の形状が真っ直ぐになる点が異なっている。
【0055】
以上、本発明によれば、固定部材24(24′)の剛性を従来と同様に維持した状態でフローチューブ23(23′)の固定端側の間隔を従来よりも狭めることができる。従って、従来の問題点となっていた振動漏洩を軽減することができる。また、本発明によれば、フローチューブ23(23′)の固定端側から天頂方向に向けてチューブ間距離を相対的に広げることができる。このようなフローチューブ23(23′)においては、天頂側のチューブ間距離を最適に設定することができる。従って、専用のブラケットを用いることなく駆動装置25及び振動検出センサ26、26を近接させることができる。これにより、温度変化によるフローチューブ23(23′)の変形に伴ったブラケット先端の不確実な移動や、余計な付加質量がないことで耐振性にも配慮することができる。一方、フローチューブ23(23′)の各部分の管軸を合わせることで、第1、第2湾曲管31、32を略鏡像の構造にすることができる。従って、振動系を安定させることができる。
【0056】
その他、本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本発明の一実施の形態を示すコリオリ流量計のセンサユニット部分の基本構成図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図、(d)は側面図、(e)は要部拡大図である。
【図2】フローチューブ及び固定部材の変形例を示すセンサユニット部分の基本構成図であり、(a)は正面図、(b)はA−A線断面図、(c)はB−B線断面図である。
【図3】従来例のコリオリ流量計のセンサユニット部分の構成図であり、(a)は正面図、(b)はC−C線断面図、(c)は要部拡大図である。
【符号の説明】
【0058】
21 コリオリ流量計
22 筐体
23 フローチューブ
24 固定部材
25 駆動装置
26 振動検出センサ
27 出発管部
27a 第1平行部分
27b 第1曲げ部分
27c 第1出発管部本体部分
28 出発管部
29 戻り管部
30 戻り管部
30a 第2平行部分
30b 第2曲げ部分
30c 第2戻り管部本体部分
31 第1湾曲管
32 第2湾曲管
33 流入管
34 流出管
35 連続部分
36、38、39、41 反転用曲げ管部
37、40 天頂管部
42 ブレースバー
43、45 曲げ部分
44 流入管本体
46 流出管本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被計測流体を流す一本のフローチューブと、該フローチューブを固定する固定部材とを備え、前記フローチューブは、前記固定部材から出る方向の出発管部及び前記固定部材へ戻る方向の戻り管部をそれぞれ有して相対向する第1、第2湾曲管と、前記第1湾曲管に連続する流入管と、前記第2湾曲管に連続する流出管とを備える二重ループ構造のコリオリ流量計において、
前記第1湾曲管の前記出発管部は、前記第2湾曲管の前記出発管部に対して、又は前記第1湾曲管の前記戻り管部と前記第2湾曲管の前記出発管部との連続部分に対して略平行な第1平行部分と、該第1平行部分に連続する第1曲げ部分と、該第1曲げ部分の存在により前記第2湾曲管の前記出発管部との距離が徐々に広がる第1出発管部本体部分とを有し、
前記第2湾曲管部の前記戻り管部は、前記第1湾曲管の前記戻り管部又は前記連続部分に対して略平行な第2平行部分と、該第2平行部分に連続する第2曲げ部分と、該第2曲げ部分の存在により前記第1湾曲管の前記戻り管部との距離が徐々に広がる第2戻り管部本体部分とを有する
ことを特徴とする二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計。
【請求項2】
請求項1に記載の二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計において、
前記第1湾曲管の前記戻り管部と前記連続部分と前記第2湾曲管の前記出発管部との管軸を合わせるとともに、前記第1出発管部本体部分と前記第2戻り管部本体部分との管軸も合わせる
ことを特徴とする二重ループ構造のフローチューブを備えたコリオリ流量計。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−24505(P2007−24505A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−202521(P2005−202521)
【出願日】平成17年7月12日(2005.7.12)
【特許番号】特許第3782438号(P3782438)
【特許公報発行日】平成18年6月7日(2006.6.7)
【出願人】(000103574)株式会社オーバル (82)
【Fターム(参考)】