説明

二重管構造の地中熱交換器の製造方法

【課題】二重管構造の地中熱交換器において、外管の管端部を蓋部材に融着接合しながら、内管の管端部を外管の内方から蓋部材の貫通孔に差し込んで融着接合可能にする製造方法を提供する。
【解決手段】地盤に埋設される熱可塑性樹脂製の外管30と、外管の一方の管端部を封止する熱可塑性樹脂製の蓋部材と、外管内に挿入されつつ、蓋部材に穿孔形成された貫通孔に外管の内方から管端部が差し込まれた状態で前記蓋部材に融着接合される内管41と、を有し、外管内及び内管内に熱媒体が流れる二重管構造の地中熱交換器を製造する方法である。蓋部材の貫通孔に内管の管端部を外管の内方から差し込んだ状態で、管端部を蓋部材に融着接合する内管融着接合工程と、内管の管端部が融着接合された蓋部材を、内管が外管に挿入された状態で、外管の一方の管端部に融着接合することにより、一方の管端部を水密に封止する蓋部材融着接合工程と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地盤に埋設される外管内に内管が挿入されてなる二重管構造の地中熱交換器の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通年の温度変動の小さい地中熱を利用して建物の冷暖房等を行う地中熱利用システムが注目されている。この地中熱利用システムでは、地盤との間で採・放熱を行うべく地中に地中熱交換器が設置される。そして、地中熱交換器は、例えば、夏場には地盤に放熱し、冬場には地盤から採熱する。
【0003】
その一例として、特許文献1には二重管構造の地中熱交換器が示されている。すなわち、図1Aの概略縦断面図に示すように、この地中熱交換器121は、地盤Gに鉛直に埋設される鋼製の外管131と、外管131内に配置された内管141と、を有している。そして、外管131の上端部に設けられた吐出口131aから外管131内に吐出された熱媒体26を、内管141の下端部の排出口141aから取り出すことにより、地盤Gとの間で熱交換後の熱媒体26をヒートポンプ等へ送出するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−13828号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、図1Bの概略縦断面図に示すように、施工性向上の観点から外管30に樹脂管を用いることが考えられ、そうすれば、その軽量且つ可撓性から現場搬入や掘削孔23への建て込みを行い易くなる。
【0006】
一方、かかる外管30の上下の管端部30eu,31edの開口を封止する封止構造の一例としては、外管30の各管端部31eu,31edに、EVA(エチレン−酢酸ビニル共重合)樹脂等のホットメルト系樹脂を密実に充填封止して、これを封止栓133u,133dとすることが挙げられる。ここで、上側の封止栓133uには、一対の貫通孔H133u1,H133u2が設けられ、これら一対の貫通孔H133u1,H133u2のうちの一方の貫通孔H133u2は、熱媒体26の外管30内への吐出口131aとして用いられ(右上の拡大図を参照)、他方の貫通孔H133u1には内管141が通されて、これにより、当該内管141の下端の管端が排出口141aとして使用される(左上の拡大図を参照)。
【0007】
ここで、かかる地中熱交換器の運転中には、熱交換後の熱媒体26をヒートポンプへ圧送等する関係上、外管30内の熱媒体26の圧力は、例えば0.3〜0.7MPaの高圧になる。そのため、運転中の外管30には、この圧力が作用して、管径方向に膨張などの弾性拡径変形をする。
【0008】
しかしながら、この弾性拡径変形に、硬化した上記EVA樹脂製の封止栓133u,133dが追随できずに、外管30の内周面30nと封止栓133u,133dの外周面133ug,133dgとの間で互いの密着が外れて隙間Sa,Sbを生じ、そこから熱媒体26が漏出する危険があった(図1B中の右の拡大図を参照)。また、内管141と封止栓133uとは別体であるので、内管141と貫通孔H133u1の内周面との間からも熱媒体26が漏出する虞があった(図1B中の左上の拡大図を参照)。
【0009】
この点につき、外管30の上端部に係る漏出防止策の参考例としては、例えば図3に示すように外管30の管端部30uに蓋部材70を融着接合して一体化するとともに、蓋部材70に穿孔形成された貫通孔H71に外管30の内方から内管41の管端部41uを差し込んで水密に融着接合することが考えられる。
【0010】
しかしながら、最初に、外管30の管端部30uに蓋部材70を融着接合して封止してしまうと、外管30によって内管41の管端部41uが覆われてしまうため、その後に、外管30の内方から内管40を蓋部材70の貫通孔71Hに差し込んで融着接合する際に、当該融着接合作業を行い難くなってしまい、その結果、確実な融着接合を行えずに、後に、蓋部材から内管が脱落してしまう虞があった。
【0011】
本発明は、上記のような従来の問題に鑑みなされたものであって、その主な目的は、外管の管端部を蓋部材に融着接合して確実に封止しながらも、内管の管端部を、外管の内方から蓋部材の貫通孔に差し込んで容易且つ確実に融着接合可能にすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
かかる目的を達成するために請求項1に示す発明は、
地盤に埋設される熱可塑性樹脂製の外管と、前記外管の一方の管端部を封止する熱可塑性樹脂製の蓋部材と、前記外管内に挿入されつつ、前記蓋部材に穿孔形成された貫通孔に前記外管の内方から管端部が差し込まれた状態で前記蓋部材に融着接合される内管と、を有し、前記外管内及び前記内管内に熱媒体が流れる二重管構造の地中熱交換器を製造する方法であって、
前記蓋部材の前記貫通孔に前記内管の前記管端部を前記外管の内方から差し込んだ状態で、前記管端部を前記蓋部材に融着接合する内管融着接合工程と、
前記内管の前記管端部が融着接合された前記蓋部材を、前記内管が前記外管に挿入された状態で、前記外管の前記一方の管端部に融着接合することにより、前記一方の管端部を水密に封止する蓋部材融着接合工程と、を有することを特徴とする。
【0013】
上記請求項1に示す発明によれば、外管の管端部に蓋部材を融着接合して封止する前に、内管の管端部を、外管の内方から蓋部材の貫通孔に差し込んで融着接合する。よって、内管の管端部が外管に完全に覆われる前に、外管の内方から蓋部材の貫通孔に内管の管端部を差し込んで融着接合することができて、これにより、当該融着接合を容易且つ確実に行うことができる。その結果、外管の管端部を蓋部材に融着接合して確実に封止しながらも、内管の管端部を、外管の内方から蓋部材の貫通孔に差し込んで容易に融着接合可能となる。
【0014】
請求項2に示す発明は、請求項1に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管は、その本体としてのコルゲート管と、前記一方の管端部として、前記コルゲート管に同軸且つ水密に融着接合された熱可塑性樹脂製の管状頭部と、を有し、
前記内管融着接合工程よりも前に、
前記コルゲート管内に前記内管を挿入する内管挿入工程と、
前記内管が挿入状態の前記コルゲート管をコイル状に巻き取るコルゲート管巻き取り工程との両方の工程を行うことを特徴とする。
【0015】
上記請求項2に示す発明によれば、コルゲート管を巻き取る前にコルゲート管内に内管を挿入するので、内管を挿入し易くなる。また、内管が挿入されたコルゲート管を巻き取った状態で、内管融着接合工程を行うことができるので、当該内管融着接合工程を行う際のコルゲート管の置き場を小さくすることができて、取り扱い易くなる。
【0016】
請求項3に示す発明は、請求項2に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記内管融着接合工程では、前記コイル状に巻き取られた前記コルゲート管から少なくとも前記一方の管端部に対応する管端部を繰り出すとともに、繰り出されない残りの前記コルゲート管の部分をコイル状の巻き取り状態に維持したまま、前記内管の管端部を前記蓋部材に融着接合することを特徴とする。
【0017】
上記請求項3に示す発明によれば、コルゲート管の大半を巻き取った状態で、内管の管端部の蓋部材への融着接合を行うので、コルゲート管の置き場を小スペースで対応可能となり、取り扱い易い性に優れる。
【0018】
請求項4に示す発明は、請求項2又は3に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記管状頭部が前記コルゲート管の上方に位置するように、前記外管は前記地盤の掘削孔内に鉛直に建て込まれ、
前記管状頭部は、前記地盤の表層部に位置しており、
前記管状頭部の管壁の厚さは、前記コルゲート管の管壁の厚さよりも厚く、
前記コルゲート巻き取り工程と前記内管融着接合工程との間に、前記コルゲート管の管端部に前記管状頭部を同軸且つ水密に融着接合する管状頭部融着接合工程を有することを特徴とする。
【0019】
上記請求項4に示す発明によれば、地中熱交換器の運転中には熱媒体の圧力によって外管は拡径変形されるが、地盤の深部では土圧が高いために、当該土圧により拡径変形は効果的に抑制され、その結果、深部での外管の破損は未然に防止される。
【0020】
一方、土圧が低い表層部には、外管の管状頭部が位置しているが、管状頭部の管壁の厚さは、深部に位置する外管の部分たるコルゲート管の管壁よりも厚くされており、つまり、管状頭部は補強されている。よって、土圧が低くても、自身の耐力に基づいて拡径変形は抑えられ、その結果、外管の全長に亘って当該外管の拡径破損は防止される。
【0021】
請求項5に示す発明は、請求項1乃至4の何れかに記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管の他方の管端部に熱可塑性樹脂製のキャップ部材を融着接合することにより、前記他方の管端部を水密に封止するキャップ部材融着接合工程と、
前記蓋部材の前記貫通孔に対して前記外管の外方から熱可塑性樹脂製の第1管部材の管端部を差し込んだ状態で、前記蓋部材と前記第1管部材の前記管端部とを水密に融着接合する第1管部材融着接合工程と、
前記蓋部材の第2貫通孔に熱可塑性樹脂製の第2管部材の管端部を差し込んだ状態で、前記蓋部材と前記第2管部材の前記管端部とを水密に融着接合する第2管部材融着接合工程と、有し、
現場搬入よりも前に、前記キャップ部材融着接合工程、前記第1管部材融着接合工程、前記第2管部材融着接合工程、前記内管融着接合工程、及び前記蓋部材融着接合工程が行われることを特徴とする。
【0022】
上記請求項5に示す発明によれば、現場搬入よりも前に地中熱交換器は完成状態にあるので、施工現場では一切の融着接合作業を行わずに済む。そして、他の施工条件が許せば、現場搬入後に直ちに掘削孔へ建て込むこともできて、工期短縮を図れる。また、融着接合装置が配備された工場等において、効率良く且つ正確に融着接合処置を行うこともできるので、高品質且つ安価な地中熱交換器を提供可能となる。更には、外管、キャップ部材、蓋部材、内管、第1管部材、及び第2管部材の全ての接合を融着接合で行っているので、熱媒体の防漏性に長けた地中熱交換器を製造可能となる。
【0023】
請求項6に示す発明は、請求項1乃至5の何れかに記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管、前記キャップ部材、前記蓋部材、前記内管、前記第1管部材、及び前記第2管部材の何れも高密度ポリエチレン製であることを特徴とする。
【0024】
上記請求項6に示す発明によれば、外管、キャップ部材、蓋部材、内管、第1管部材、及び第2管部材の何れも高密度ポリエチレン製で同素材であることから、互いに接合されるべき部分同士が融着接合されてなる融着接合部は、母材と完全に同じ成分系となり、これにより、母材並の高い強度を有する。よって、防漏性に優れた地中熱交換器を製造可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、外管の管端部を蓋部材に融着接合して確実に封止しながらも、内管の管端部を、外管の内方から蓋部材の貫通孔に差し込んで容易且つ確実に融着接合可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1A】従来の二重管構造の地中熱交換器121の概略縦断面図である。
【図1B】参考例の地中熱交換器の概略縦断面図である。
【図2】本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。
【図3】一部を破断して示す本実施形態に係る地中熱交換器21の概略側面図である。
【図4】図4A及び図4Bは、それぞれ、冬場及び夏場での運転例を示す地中熱交換器21の概略図である。
【図5】蓋部材70の拡大縦断面図である。
【図6】図6Aは、内パイプ挿入工程を説明するための概略平面図であり、図6Bは、コルゲート管巻き取り工程を説明するための概略斜視図である。
【図7】地中熱交換器21の製造方法に係る各処理を説明するための地中熱交換器21の一部破断概略側面図である。
【図8】図8A乃至図8Dは、キャップ部材融着接合処理を説明するための概略中心縦断面図である。
【図9】図9A乃至図9Eは、直管部融着接合処理を説明するための概略斜視図である。
【図10】図10A乃至図10Dは、外パイプ融着接合処理を説明するための概略斜視図である。
【図11】図11A乃至図11Dは、内パイプ融着接合処理を説明するための概略斜視図である。
【図12】図12A乃至図12Eは、蓋部材融着接合処理を説明するための概略斜視図である。
【図13】その他の実施形態を説明するための一部破断概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
===本実施形態===
<<<地中熱交換器21について>>>
図2は、本実施形態に係る地中熱交換器21を用いた地中熱利用システム11の説明図である。図3は、一部を破断して示す地中熱交換器21の概略側面図である。また、図4A及び図4Bは、それぞれ、冬場及び夏場での運転例を示す地中熱交換器21の模式図である。
【0028】
図2に示すように、この地中熱利用システム11は、地盤Gとの間で熱交換を行う地中熱交換器21と、地中熱交換器21の熱媒体26からの熱を利用して建物1の暖房のための温水や冷房のための冷水を生成するヒートポンプ15と、を有する。なお、ヒートポンプ15の構成は周知なので、その説明については省略する。
【0029】
図3に示すように、この地中熱交換器21は、ボアホール方式の二重管型である。すなわち、(1)地盤Gに鉛直に形成された掘削孔としての竪孔23内に鉛直方向に沿って挿入された外管30と、(2)外管30内に配された内管41としての内パイプ41を有し熱媒体26の流路を形成する第1流路形成部材40と、(3)外管30の外に設けられて当該外管30内に連通した熱媒体26の流路を形成する第2流路形成部材50と、を有している。なお、竪孔23と外管30との間の空間SP23には、川砂や山砂、珪砂等の充填材27が充填されている。
【0030】
そして、例えば、冬場には、図4Aに示すように、ヒートポンプ15から第1流路形成部材40を経由して、水又は不凍液等の液状の熱媒体26が送られて、当該熱媒体26は、外管30内の下端部30aに位置する同第1流路形成部材40の管端開口40edから、外管30内に吐出される。すると、当該熱媒体26は、外管30内を上方へと移動する間に、地盤Gの地中熱により暖められて、しかる後に、外管30内の上端部30b近傍に位置する第2流路形成部材50の管端開口50edから、該第2流路形成部材50内へと吸い込まれ、地上循環ポンプ17(図2)の圧力により、ヒートポンプ15へ向けて送出される。そして、ヒートポンプ15にて温水生成に供される。
【0031】
他方、夏場の熱媒体26の流れ方向は、上述の逆となる。すなわち、図4Bに示すように、ヒートポンプ15から第2流路形成部材50を経由して送られてきた熱媒体26は、外管30内の上端部30b近傍に位置する同第2流路形成部材50の管端開口50edから外管30内に吐出される。すると、当該熱媒体26は、同外管30内を下方へと移動する間に、地盤Gの地中熱により冷やされて、しかる後に、外管30内の下端部30aに位置する第1流路形成部材40の管端開口40edから、第1流路形成部材40内へと吸い込まれ、地上循環ポンプ17の圧力により、ヒートポンプ15へ向けて送出される。そして、ヒートポンプ15にて冷水生成に供される。
【0032】
以下、地中熱交換器21に係る各構成要素23,30,40,50等について詳細に説明する。
(1)竪孔23
図3に示すように、竪孔23は、ボーリングマシンやオーガ等の掘削機により地面にほぼ垂直に掘削された孔であり、その直径は100〜200mm、深さは30〜150mである。
【0033】
(2)外管30
外管30は、その全長が竪孔23と略同長の管部材である。そして、外管30は、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製のコルゲート管31(corrugated pipe:波形管)を本体とする。コルゲート管31は、その管壁が図3に示すような波形形状の管部材である。そして、この波形形状は、コルゲート管31の管軸C31を中心軸とする螺旋形であり、また、管壁の厚みは全長に亘りほぼ一定厚みである。よって、コルゲート管31の外周面及び内周面のどちらの面も、山部と谷部とを有する略同形の螺旋波形形状になっている。そして、このような螺旋波形形状により、管壁の外周面及び内周面の表面積は拡大されているので、地盤Gとコルゲート管31内の熱媒体26との間の熱交換効率は格段に高められている。
【0034】
コルゲート管31の下端部31a(「外管の他方の管端部」に相当)には、この下端部31aの管端開口を水密に封止するキャップ部材60が、融着接合部J60を介して一体に固定されている。これにより、コルゲート管31内の熱媒体26の下端部31aの管端開口から地盤Gへの漏出が防止される。
【0035】
詳しくは、キャップ部材60は、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製の一体成型部材であり、例えば、円筒部61と、円筒部61から同軸且つ一体に管軸方向C60の下方に延出した円柱部62と、その更に下方に一体に延出した円錐台部63とを有した閉鎖形状部材である。そして、円筒部61の上端縁部61euが、コルゲート管31の下端部31aにおける縁部31edに、互いの管軸C31,C60を略同軸に揃えつつ突き合わされて、上述の融着接合部J60を介して接合されている。
【0036】
この融着接合部J60は、コルゲート管31の下端部31aの縁部31edと、キャップ部材60の上端縁部61euとの両者が、互いに溶融状態で突き合わされて全周に亘り接合されたものである。すなわち、当該融着接合部J60は、コルゲート管31の母材たる高密度ポリエチレンと、キャップ部材60の母材たる高密度ポリエチレンとが互いに溶け合って固化したものであり、母材とほぼ同種の成分系で一体不可分な状態になっている。よって、かかる融着接合部J60は、コルゲート管31の母材部分たる定常部やキャップ部材60の母材部分たる定常部とほぼ同等の強度を有する。
【0037】
また、当該融着接合部J60は、コルゲート管31の定常部やキャップ部材60の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管31内の熱媒体26の圧力の作用によってコルゲート管31が膨張などの拡径変形をしても、当該融着接合部J60を通じて上記膨張に係る力が、その近傍のキャップ部材60の部分に伝達されて、当該部分も追随して速やかに変形する。よって、コルゲート管31とキャップ部材60との変形差は抑えられて、融着接合部J60に作用し得る変形差起因の応力の軽減を図れ、当該融着接合部J60での破断は有効に防止される。その結果、コルゲート管31の下端部31aからの熱媒体26の漏出は確実に防止される。
【0038】
一方、コルゲート管31の上端部31bには、融着接合部J35を介して長さ約1mの円筒状の直管部35(管状頭部に相当)が同軸に接合されており、更に、直管部35の上端の管端部35eu(「外管の一方の管端部」に相当)には、融着接合部J70を介して円柱状の蓋部材70が接合されており、これにより外管30の上端部30euの管端開口は水密に封止されている。そして、蓋部材70には、上下方向に沿って二つの貫通孔H71,H72が形成されており、各貫通孔H71,H72には、それぞれ前述の第1流路形成部材40及び第2流路形成部材50のどちらかが対応付けられて固定されている。これについては後述する。
【0039】
直管部35の管壁の厚さは、コルゲート管31の管壁の厚さよりも厚くなっており、例えば、10mm〜20mmに設定されている。このように外管30の上部30uとして厚肉の直管部35を設けている理由については後述する。
【0040】
上述の各融着接合部J35,J70も、前述したキャップ部材60の融着接合部J60と同種のものである。すなわち、融着接合部J35は、コルゲート管31の上端部31bの縁部31euと直管部の35の下端縁部35edとの両者が互いに溶融状態で全周に亘り突き合わされて形成されており、また、その上方の融着接合部J70は、直管部35の上端縁部35euと蓋部材70の下面の周縁部70edとの両者が互いに溶融状態で全周に亘り突き合わされて形成されている。そして、この例では、直管部35及び蓋部材70のどちらも、コルゲート管31と同素材の高密度ポリエチレン製である。よって、各融着接合部J35,J70は、それぞれ、母材とほぼ同種の成分系で一体不可分な状態になっており、そしてコルゲート管31の母材部分とほぼ同等の強度を有する。その結果、これら融着接合部J35,J70も、地中熱交換器21の運転時に作用し得る熱媒体26の圧力に破断無く耐えることができる。
【0041】
また、融着接合部J35にあっては、上述のように母材並の強度を有しつつ、コルゲート管31の定常部や直管部35の定常部との両者に対して一体に連続しているので、コルゲート管31内の熱媒体26の圧力の作用によってコルゲート管31が膨張などの拡径変形をしても、当該融着接合部J35を通じて上記膨張に係る力が、その近傍の直管部35の部分に伝達されて、当該部分も追随して変形する。よって、コルゲート管31と直管部35との変形差は抑えられて、結果、融着接合部J35に作用し得る変形差起因の応力の軽減を図れ、当該融着接合部J35での破断は有効に防止される。
【0042】
(3)第1流路形成部材40及び第2流路形成部材50
図3に示すように、第1流路形成部材40及び第2流路形成部材50のどちらも、熱可塑性樹脂の一例としての高密度ポリエチレン製のパイプ41,43,50である。そして、前述したように、ヒートポンプ15と外管30との間の熱媒体26の移動に供される。
【0043】
第1流路形成部材40は、外管30内に配置される内管41としての内パイプ41と、外管30外に配置される外パイプ43(第1管部材に相当)と、を有する。そして、内パイプ41の上端部41uは、蓋部材70の貫通孔H71に外管30の内方から差し込まれて蓋部材70に融着接合され、同下端部41dは、外管30内の下端部30aに位置している。一方、外パイプ43の下端部43dは、外管30の外方から蓋部材70の貫通孔H71に差し込まれて蓋部材70に融着接合されており、これにより、外パイプ43と内パイプ41とは互いの流路が連通状態となっている。
【0044】
図5に蓋部材70の拡大縦断面図を示す。この蓋部材70の貫通孔H71は、上下方向の中央部に、その両側部分の孔径よりも小さい小径孔部H71Sを有しており、そして、その両側の各大径孔部H71L,H71Lに内パイプ41と外パイプ43とが差し込まれている。よって、この差し込まれた状態においては、内パイプ41の上端面41eua及び外パイプ43の下端面43edaは、それぞれ、大径孔部H71L,H71Lと小径孔部H71Sとの間の段差面A71,A71に突き合わされており、これにより、各パイプ41,43は、それぞれ外周面だけでなく、端面41eua,43edaでも蓋部材70に融着接合されることになる。その結果、接合強度の向上を図れるとともに、貫通孔H71の内周面と内パイプ41との間での熱媒体26の漏出、及び貫通孔H71の内周面と外パイプ43との間での熱媒体26の漏出を確実に防ぐことができる。
【0045】
なお、かかる蓋部材70と内パイプ41との間に介在する融着接合部J41、及び蓋部材70と外パイプ43との間に介在する融着接合部J43が、それぞれ母材並みの強度を有することは、前述と同様であるので、その説明については省略する。
【0046】
一方、第2流路形成部材50は、外管30の外に配置される外パイプ50(第2管部材に相当)を有する。そして、この外パイプ50の下端部50dが、蓋部材70に別途形成された貫通孔H72(第2貫通孔に相当)に、外管30の外方から差し込まれて融着接合されている。ここで、この貫通孔H72は、上部に大径孔部H72Lを有し下部に小径孔部H72Sを有し、そして、外パイプ50の下端部50dは大径孔部H72Lに差し込まれている。よって、この差し込まれた状態においては、大径孔部H72Lと小径孔部H72Sとの間の段差面A72に外パイプ50の下端面50edaが突き合わされるので、外パイプ50の外周面だけでなく端面50edaにおいても蓋部材70と融着接合されることとなり、その結果、接合強度の向上を図れるとともに、貫通孔H72と外パイプ50との間での熱媒体26の漏出を確実に防止することができる。
なお、この外パイプ50にあっても蓋部材70と同素材のため、外パイプ50と蓋部材70との間に介在する融着接合部J50が、それぞれ母材並みの強度を有することは言うまでもなく、よって、その説明については省略する。
【0047】
ところで、本実施形態では、図3に示すように、外管30の上部30uとして厚肉の直管部35を設けていたが、ここでこの理由について説明する。外管30は、内部の熱媒体26の圧力によって拡径変形し、場合によっては拡径破損の虞がある。この点につき、地盤Gの深部では、側方から外管30に作用する土圧が高いため、この土圧が拡径変形を抑制して、これにより拡径破損の虞は無い。ところが、表層部では土圧が低いので、当該土圧に対して、外管30の拡径変形の抑制作用を期待することはできない。そのため、表層部に配置される外管30の上部30uに対しては厚肉の直管部35を設け、これにより、自身の耐力によって拡径変形を抑制するようにしている。
【0048】
<<<地中熱交換器21の製造方法について>>>
このような地中熱交換器21は、適宜な工場で製造される。そして、同工場において上述のような全構成要素30(31,35),40(41,43),50,60,70を具備した略完成状態にまで仕上げられ(図7)、コイル状に巻き取られた状態で工場から設置予定地へと送られる。そして、このような略完成状態で設置予定地へと送られるので、当該設置予定地では、適宜なリール装置を用いて地中熱交換器21を繰り出しながら、同予定地の掘削孔23に順次地中熱交換器21を建て込み、建て込んだ後には、地中熱交換器21の周囲の隙間SP23に充填材27を充填して埋めれば、地中熱交換器21の設置工事が完了する。よって、現場作業は大幅に軽減され、施工現場での工期を大幅に短縮可能となる。
【0049】
以下、地中熱交換器21の製造手順について説明する。
先ず、図6Aの概略平面図に示すように、外管30の本体としてのコルゲート管31内に、内管41としての内パイプ41を、コルゲート管31の略全長に亘って挿入する(内管挿入工程に相当)。詳しくは、コルゲート管31の上端部31bに相当する管端部31bから同コルゲート管31内に内パイプ41を挿入し、この挿入を、同内パイプ41の一端部41dが、コルゲート管31の下端部31aに相当する管端部31aに到達するまで続ける。そして、これにより、最終的に、内パイプ41の一端部41dが、コルゲート管31の一方の管端部31aに達し、且つ、同内パイプ41の他端部41uが、コルゲート管31の他方の管端部31bから外に突出した状態にされる。なお、この挿入作業については、コルゲート管31の曲率半径を大きくして行えば、短時間で終えることができる。
【0050】
次に、内側に内パイプ41が挿入された状態のままコルゲート管31を適宜なリール装置等を用いて図6Bのようにコイル状に巻き取り(コルゲート管巻き取り工程に相当)、そのコイル状のコルゲート管31を、融着接合装置80が配備された工場へ搬送する。
【0051】
すると、この工場では、コルゲート管31のほぼ全長をコイル状の巻き取り状態に維持しつつ、両方の管端部31a,31bのみを繰り出した状態にし、そして、当該管端部31a,31bのみ繰り出し状態のコルゲート管31に対して、キャップ部材60や蓋部材70等の各種構成要素を順次融着接合して組み付けていき、これにより、最終的に、図7の一部破断概略側面図の如き略完成状態にする。ちなみに、このとき、コイル状に巻き取り状態のコルゲート管31はコンパクトなサイズのため、融着接合を行う際のコルゲート管31の置き場も小スペースで対処可能であり、扱い易い。
【0052】
なお、図7中の丸印の番号は、それぞれ融着接合を行う順番を示している。また、図8A乃至図12Eは、それぞれ個別の融着接合処理の説明図である。
【0053】
(1)キャップ部材融着接合処理
最初に、図7に示すようにコルゲート管31の下端部31aに相当する管端部31aにキャップ部材60を融着接合する(キャップ部材融着接合工程に相当)。この融着接合は、工場が備える融着接合装置80によって行われる。図8Aに示すように、融着接合装置80は、コルゲート管31の管端部31aを把持等して保持する第1保持部81と、キャップ部材60を把持等して保持する第2保持部83と、を有する。そして、第1保持部81と第2保持部83とは、コルゲート管31及びキャップ部材60のうちの各々対応する部材31,60を保持した状態において、コルゲート管31の管軸C31とキャップ部材60の管軸C60とが互いに同軸に揃うような位置関係で配置されており、更には、第1保持部81及び第2保持部83のどちらも、適宜なガイドレール85によって管軸方向C31,C60に往復移動可能に案内されている。
【0054】
また、図8Aに示すような準備状態、つまりコルゲート管31の融着接合対象部たる管端面(縁部)31edと、キャップ部材60の融着接合対象部たる管端面(上端縁部)61euとの両者が、互いの間に間隔Dをもって対向した準備状態において、当該間隔Dの内側に挿抜可能な位置に、加熱板87が設置されている。そして、この加熱板87の両側の板面87a,87aが加熱面であるが、これら加熱面87a,87aの法線方向が上記管軸方向C31,C60を向くように当該加熱板87は配されている。
【0055】
よって、かかる構成の融着接合装置80によれば、次のようにしてコルゲート管31とキャップ部材60との両者を、互いの管端面31ed,61eu同士を突き合わされた状態で融着接合することができる。
【0056】
先ず、図8Aに二点鎖線で示すように、上述の間隔Dに加熱板87を挿入する。そして、図8Bに示すように、加熱板87の対応する加熱面87a,87aへ向けて、コルゲート管31及びキャップ部材60の両者をそれぞれ管軸方向C31,C60に沿って移動し、加熱対象の管端面31ed,61euを加熱板87の各加熱面87a,87aに面接触状態で当接させて加熱する。
【0057】
ここで、加熱面87aの設定温度は、加熱対象のコルゲート管31の融点及びキャップ部材60の融点うちで高い方の融点よりも高い温度に設定されている。これにより、コルゲート管31及びキャップ部材60の両者を確実に融解(溶融)させることができる。この例では、コルゲート管31及びキャップ部材60の両者とも、高密度ポリエチレンを素材としているので、加熱面87aの設定温度は、高密度ポリエチレンの融点たる131℃よりも高い温度の例えば280℃に設定されている。
【0058】
そして、所定時間経過後に、コルゲート管31及びキャップ部材60の管端面31ed,61euが融解したら、図8Cに示すように、第1保持部81及び第2保持部83を管軸方向C31,C60に沿って加熱板87から後退させ、これにより、当該加熱板87の加熱面87a,87aからコルゲート管31及びキャップ部材60を離す。そして、加熱板87を上記間隔Dから抜く。
【0059】
そうしたら、図8Dに示すように、各保持部81,83の移動によって、コルゲート管31及びキャップ部材60の融解状態の管端面31ed,61eu同士を突き合わせて当接させ、そして、管軸方向C31,C60に所定の押圧力で互いの管端面31ed,61eu同士を押圧する。そして、この押圧状態のまま一定時間冷却する。すると、コルゲート管31とキャップ部材60との間には融着接合部J60が形成されて、つまり、コルゲート管31とキャップ部材60とは融着接合される。
【0060】
(2)直管部融着接合処理
次に、図7に示すようにコルゲート管31の上端部31bに相当する管端部31bに直管部35を融着接合する(管状頭部融着接合工程に相当)。この場合も、上述の融着接合装置80を用いる。すなわち、図9Aに示すように、第1保持部81にコルゲート管31の管端部31bを保持させ、第2保持部83に直管部35を保持させる。そして、第2保持部83を第1保持部81の方に移動して、コルゲート管31の融着接合対象部たる管端面(縁部)31euと、直管部35の融着接合対象部たる管端面(縁部)35edとの両者が、互いの間に間隔Dをもって対向した状態にする。但し、この移動の前には、コルゲート管31の管端部31bからは内パイプ41が飛び出している。そのため、この移動の際には、この内パイプ41を直管部35の内周側に挿通しながら、第2保持部83を第1保持部81の方へ移動する。そして、これにより、図9Aに示す状態となる。
【0061】
そうしたら、上述の加熱板87に代えて、内パイプ41を通すための円孔H91を中央部に有した半割構造の加熱板91を間隔Dに挿入する(図9B)。すなわち、この加熱板91は、図9Aに示すように、二分割されてなる一対の半円環形状の半割部91a,91aがヒンジ部92により連結されてなり、当該ヒンジ部92を支点に一対の半割部91a,91aが開閉可能に構成されている。そして、全開状態では、一対の半割部91a,91a同士の間に、内パイプ41の外径よりも大きい隙間Kが形成される一方、全閉状態では、一対の半割部91a,91a同士が当接して図9Bのような円環形状の加熱板91となる。よって、図9Aのような一対の半割部91a,91aが全開状態で、隙間Kに内パイプ41を通しながら、上述の間隔Dに一対の半割部91a,91aを挿入していき、一対の半割部91a,91aの円孔H91の内方に内パイプ41が位置したら、挿入動作を停止する。そして、一対の半割部91a,91aを閉じることにより図9Bのような隙間Kが閉じた全閉状態にし、これにより、円環形状の加熱板91の中央部の円孔H91に内パイプ41が通った状態となる。
【0062】
そうしたら、図9Cに示すように、加熱板91の対応する加熱面91as,91asへ向けて、コルゲート管31及び直管部35の両者をそれぞれ管軸方向C31,C35に沿って移動し、加熱対象の管端面31eu,35edを加熱板91の各加熱面91as,91asに面接触状態で当接させて設定温度の280℃まで加熱する。そして、所定時間経過後に、コルゲート管31及び直管部35の管端面31eu,35edが融解したら、図9Dに示すように第1保持部81及び第2保持部83を移動して、加熱板91の加熱面91as,91asからコルゲート管31及び直管部35を離す。そして、加熱板91を再度全開状態にして一対の半割部91a,91a同士の間に隙間Kを形成し、しかる後に、当該隙間Kに内パイプ41を通しながら、コルゲート管31と直管部35との間の間隔Dから一対の半割部91a,91aを引き出す。
【0063】
そうしたら、図9Eに示すように、各保持部81,83の移動により、コルゲート管31及び直管部35の融解状態の各管端面31eu,35ed同士を突き合わせて所定の押圧力で押圧する。そして、この押圧状態のまま一定時間冷却する。これにより、コルゲート管31と直管部35との間には融着接合部J35が形成されて、つまり、コルゲート管31と直管部35とは融着接合される。
【0064】
(3)外パイプ融着接合処理
次に、図7に示すように蓋部材70の各貫通孔H71,H72の大径孔部H71L,H72Lに各外パイプ43,50を融着接合する(第1管部材融着接合工程及び第2管部材融着接合工程に相当)。この融着接合には、図10Aに示すソケット型加熱板95を用いる。すなわち、この加熱板95は、蓋部材70の大径孔部H71Lの内周側に嵌合可能な外径寸法の円柱部95aと、外パイプ43の端部43dを内周側に嵌合可能な内径寸法の円筒部95bとを互いに同軸に有している。そして、蓋部材70の大径孔部H71Lの内方にソケット型加熱板95の円柱部95aを押し込んで嵌合し、且つ同加熱板95の円筒部95bの内方に外パイプ43の端部43dを押し込んで嵌合した状態にする(図10B)。なお、このとき、図10Bの縦断面図に示すように、蓋部材70の大径孔部H71Lの段差面A71に加熱板95の円柱部95aが当接するまで円柱部95aを押し込み、また、同加熱板95の円筒部95bの底面95bsに、外パイプ43の端面43edaが当接するまで外パイプ43を押し込む。そして、加熱板95の温度を設定温度の280℃まで上昇し、これにより、蓋部材70の大径孔部H71Lの内周面及び段差面A71を融解(溶融)するのと同時に、外パイプ43の外周面及び端面43edaを融解(溶融)する。そして、融解したら、図10Cに示すように加熱板95から蓋部材70及び外パイプ43を外し、しかる後に、図10Dに示すように、外パイプ43の融解状態の端部43dを貫通孔H71の大径孔部H71Lに差し込んで押圧し、この押圧状態のまま一定時間冷却する。これにより、図10Dの縦断面図に示すように蓋部材70の大径孔部H71Lの内周面と外パイプ43の外周面との間には融着接合部J43が形成されて、つまり、これら内周面と外周面とは融着接合され、また、大径孔部H71Lの段差面A71と外パイプ43の端面43edaとの間にも融着接合部J43が形成されて、つまり、段差面A71と端面43edaとは融着接合される。
【0065】
そして、これと同じ処理を、もう一方の貫通孔H72の大径孔部H72L及び外パイプ50に対しても行えば、図7に示すような二つの外パイプ43,50が融着接合された蓋部材70が形成される。
【0066】
(4)内パイプ融着接合処理
そうしたら、同様の手順で、図7に示すように、蓋部材70の貫通孔H72の大径孔部H71Lに対して、外管30の内方に相当する方向から内パイプ41を融着接合する(内管融着接合工程に相当)。すなわち、図11A及び図11Bに示すように蓋部材70の大径孔部H71Lの内方にソケット型加熱板95の円柱部95aを押し込んで嵌合し、且つ同加熱板95の円筒部95bの内方に内パイプ41の端部41uを押し込んで嵌合した状態にする。なお、このとき、図11Bの縦断面図に示すように、蓋部材70の大径孔部H71Lの段差面A71に加熱板95の円柱部95aが当接するまで円柱部95aを押し込み、また、加熱板95の円筒部95bの底面95bsに、内パイプ41の端面41euaが当接するまで内パイプ41を押し込む。そして、加熱板95の温度を設定温度の280℃まで上昇し、これにより、蓋部材70の大径孔部H71Lの内周面及び段差面A71を融解(溶融)すると同時に、内パイプ41の外周面及び端面41euaを融解(溶融)する。そして、融解したら、図11Cに示すように加熱板95から蓋部材70及び内パイプ41を外し、しかる後に、図11Dに示すように内パイプ41の融解状態の端部41uを貫通孔H71の大径孔部H71Lに差し込んで押圧し、この押圧状態のまま一定時間冷却する。これにより、図11Dの縦断面図に示すように蓋部材70の大径孔部H71Lの内周面と内パイプ41の外周面との間には融着接合部J41が形成されて、つまり、これら内周面と外周面とは融着接合され、また、大径孔部H71Lの段差面A71と外パイプ41の端面41euaとの間にも融着接合部J41が形成されて、つまり、段差面A71と端面41euaとは融着接合される。これにより蓋部材70に内パイプ41が融着接合される。
【0067】
ちなみに、当該内パイプ融着接合処理の際には、蓋部材70には、未だ外管30の一部としての直管部35が接合されておらず、もって、内パイプ41の端部41uや、同端部41uを融着接合すべき蓋部材70の大径孔部H71Lのどちらも、図11A乃至図11Dに示すように何にも覆われていない。よって、当該融着接合作業を容易且つ確実に行うことができる。
【0068】
(5)蓋部材融着接合処理
最後に、図7に示すように、直管部35と蓋部材70とを融着接合する(蓋部材融着接合工程に相当)。この場合も、前述の融着接合装置80を用いる。すなわち、図12Aに示すように第1保持部81に直管部35を保持させ、第2保持部83に蓋部材70を保持させる。そして、第2保持部83を第1保持部81の方に移動して、蓋部材70の融着接合対象部たる下面の周縁部70edと、直管部35の融着接合対象部たる管端面(縁部)35euとの両者が、互いの間に間隔Dをもって対向した状態にする。
【0069】
そうしたら、図12Bに示すように、前述の半割構造の加熱板91を間隔Dに挿入する。すなわち、図12Aに示すように一対の半割部91a,91aを全開状態にすることにより、一対の半割部91a,91a同士の間に隙間Kを形成し、そして、当該隙間Kに内パイプ41を通しながら、当該一対の半割部91a,91aを上述の間隔Dへと挿入していく。そして、一対の半割部91a,91aの円孔H91の内方に内パイプ41が位置したら、挿入動作を停止する。そして、一対の半割部91a,91aを閉じることにより図12Bのような隙間Kが閉じた全閉状態にし、これにより、円環形状の加熱板91の円孔H91に内パイプ41が通った状態となる。
【0070】
そうしたら、図12Cに示すように加熱板91の対応する加熱面91as,91asへ向けて、蓋部材70及び直管部35の両者をそれぞれ蓋部材70の円柱軸方向C70及び管軸方向C35に沿って移動し、加熱対象の周縁部70ed及び管端面35euを加熱板91の各加熱面91as,91asに面接触状態で当接させて設定温度の280℃まで加熱する。そして、所定時間経過後に、蓋部材70の周縁部70ed及び直管部35の管端面35euが融解したら、図12Dに示すように第1保持部81及び第2保持部83を移動して、加熱板91の加熱面91as,91asから蓋部材70及び直管部35を離す。そして、加熱板91を再度全開状態にして一対の半割部91a,91a同士の間に隙間Kを形成し、しかる後に、当該隙間Kに内パイプ41を通しながら、直管部35と蓋部材70との間の間隔Dから一対の半割部91a,91aを引き出す。
【0071】
そうしたら、図12Eに示すように、各保持部81,83の移動により、蓋部材70の融解状態の周縁部70edと直管部35の融解状態の管端面35euとを突き合わせて所定の押圧力で押圧する。そして、この押圧状態のまま一定時間冷却する。これにより、蓋部材70と直管部35との間には融着接合部J70が形成されて、つまり、蓋部材70と直管部35とは融着接合される。
【0072】
そして、以上をもって、図7に示すような全構成要素30(31,35),40(41,43),50,60,70を具備した地中熱交換器21が完成する。
【0073】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0074】
上述の実施形態では、コルゲート管31、直管部35、キャップ部材60、蓋部材70、内パイプ41、外パイプ43、及び外パイプ50の全構成の素材として高密度ポリエチレン(例えば、密度が938kg/m以上のポリエチレン、より狭義には、密度が942kg/m以上のポリエチレン)を例示した。そして、これにより、地中熱交換器21を構成する全構成要素31,35,60,70,41,43,50を同素材に揃えていたが、何等これに限るものではない。すなわち、加熱により軟化・溶融し冷却により固化等して融着接合可能な熱可塑性樹脂であれば、互いに同素材でなくても良い。但し、何れも同素材に揃っている方が、融着接合部J35,J60,J70,J41,J43,J50の成分系が母材とほぼ同一になって、その強度も母材並となるので、同素材に揃える方が望ましい。
【0075】
上述の実施形態では、図3に示すように、外管30の本体としてのコルゲート管31の上方に直管部35を備えていたが、何等これに限るものではなく、直管部35は無くても良い。その場合には、図13に示すように、コルゲート管31の上端部31bに直接蓋部材70が融着接合されることに伴って直管部融着接合処置(管状頭部融着接合工程)が省略されて、製造工程の簡素化を図れる。但し、地盤Gの表層部に埋設されるべき外管30の上部30uが、直管部35と比較して薄肉のコルゲート管31に変わることから、当該外管30の上部30u(31b)の拡径変形を抑制する処置が別途必要になる。この処置の一例としては、同図13に示すような処置が挙げられる。すなわち、地面の掘削孔23に地中熱交換器21を建て込み後に、外管30と掘削孔23との間の空間SP23に川砂等の充填材を充填する際に、外管30の上部30uに対応する空間SP23uにだけ上述の充填材27に代えて、ソイルセメントやコンクリート等のセメント系材料29(拘束部材に相当)を打設する。そして、当該セメント系材料29で外管30の上部30uを外周面から覆って固めることにより、外管30の上部30uを拡径変形不能に拘束すれば良い。
【0076】
上述の実施形態では、蓋部材70と二本の外パイプ43,50とを互いに別体として成型し、蓋部材70にこれら外パイプ43,50を融着接合して一体化していたが、何等これに限るものではない。すなわち、原料たる熱可塑性樹脂のチップを溶融して蓋部材70を成型する際に、蓋部材70と一体に外パイプ43,50も成型できるのであれば、そのようにしても良い。なお、その場合には、当然ながら、前述した地中熱交換器21の製造工程では、外パイプ43,50を蓋部材70に融着接合する外パイプ融着接合処理(第1管部材融着接合工程及び第2管部材融着接合工程)が無くなることになるが、内パイプを41蓋部材70に融着接合する内パイプ融着接合処理(内管融着接合工程)は無くならない。
【0077】
上述の実施形態では、キャップ部材60の一例として、円筒部61と円柱部62と円錐台部63とを一体に有した部材を示したが、閉鎖形状の部材であれば何等これに限るものではなく、単なる円筒部材であっても良い。
【0078】
上述の実施形態では、コルゲート管31内の熱媒体26の流れ方向を鉛直方向にした垂直方式の地中熱交換器21を例示したが、何等これに限るものではなく、水平方式でも良い。すなわち、水平方向に広い掘削孔内に、コルゲート管31の管軸方向C31を水平にしながら収容し、これにより、コルゲート管31内の熱媒体26の流れ方向を水平方向にしても良い。なお、掘削孔に収容後は、充填材27により埋め戻されるのは言うまでもない。
【0079】
上述の実施形態では、地中熱交換器21の製造方法の一例として、内パイプ挿入工程、コルゲート管巻き取り工程、キャップ部材融着接合処理、直管部融着接合処理、外パイプ融着接合処理、内パイプ融着接合処理、及び蓋部材融着接合処理を有し、且つ、この順番で各工程及び各処理を行っていたが、順番は何等これに限るものではない。
例えば、外パイプ融着接合処理は、蓋部材融着接合処理と同タイミングにしなければ、任意のタイミングで行うことができる。すなわち、直管部融着接合処理以前に行っても良いし、内パイプ融着接合処理と蓋部材融着接合処理との間や、蓋部材融着接合処理よりも後に行っても良い。また、キャップ部材融着接合処理も、何等上述のタイミングで行う必要はなく、任意のタイミングで行うことができる。更に、直管部融着接合処理は、蓋部材融着接合処理の後に行っても良い。
【0080】
上述の実施形態では、外管30の本体としてコルゲート管31を例示したが、外管30はコルゲート管31に限るものではない。例えば、管壁形状が凸凹の無い平滑形状の所謂ストレート管でも良い。
【符号の説明】
【0081】
1 建物、11 地中熱利用システム、15 ヒートポンプ、
17 地上循環ポンプ、21 地中熱交換器、
23 竪孔(掘削孔)、26 熱媒体、27 充填材、
29 セメント系材料(拘束部材)、
30 外管、30a 外管内の下端部、30b 外管内の上端部、
30eu 上端部、30u 上部、
31 コルゲート管、31a 下端部(管端部)、31b 上端部(管端部)、
31ed 縁部(管端面)、31eu 縁部(管端面)、
35 直管部(管状頭部)、35ed 下端縁部(管端面)、
35eu 上端縁部(管端面、管端部)、
40 第1流路形成部材、40ed 管端開口、
41 内パイプ(内管)、41d 下端部、41eua 上端面、1u 上端部、
43 外パイプ(第1管部材)、43d 下端部、43eda 下端面、
50 第2流路形成部材(第2管部材、外パイプ)、50d 下端部、
50ed 管端開口、50eda 下端面、
60 キャップ部材、61 円筒部、61eu 上端縁部、
62 円柱部、63 円錐台部、
70 蓋部材、70ed 周縁部、
80 融着接合装置、81第1保持部、83 第2保持部、
85 ガイドレール、
87 加熱板、87a 加熱面(板面)、
91 加熱板、91a 半割部、91as 加熱面、92 ヒンジ部、
95 ソケット型加熱板、95a 円柱部、95b 円筒部、95bs 底面、
A71 段差面、A72 段差面、
H71 貫通孔、H71L 大径孔部、H71S 小径孔部、
H72 貫通孔(第2貫通孔)、H72L 大径孔部、H72S 小径孔部、
H91 円孔、
J35 融着接合部、J41 融着接合部、J43 融着接合部、
J50 融着接合部、J60 融着接合部、J70 融着接合部、
SP23 空間、SP23u 空間、G 地盤、

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地盤に埋設される熱可塑性樹脂製の外管と、前記外管の一方の管端部を封止する熱可塑性樹脂製の蓋部材と、前記外管内に挿入されつつ、前記蓋部材に穿孔形成された貫通孔に前記外管の内方から管端部が差し込まれた状態で前記蓋部材に融着接合される内管と、を有し、前記外管内及び前記内管内に熱媒体が流れる二重管構造の地中熱交換器を製造する方法であって、
前記蓋部材の前記貫通孔に前記内管の前記管端部を前記外管の内方から差し込んだ状態で、前記管端部を前記蓋部材に融着接合する内管融着接合工程と、
前記内管の前記管端部が融着接合された前記蓋部材を、前記内管が前記外管に挿入された状態で、前記外管の前記一方の管端部に融着接合することにより、前記一方の管端部を水密に封止する蓋部材融着接合工程と、を有することを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管は、その本体としてのコルゲート管と、前記一方の管端部として、前記コルゲート管に同軸且つ水密に融着接合された熱可塑性樹脂製の管状頭部と、を有し、
前記内管融着接合工程よりも前に、
前記コルゲート管内に前記内管を挿入する内管挿入工程と、
前記内管が挿入状態の前記コルゲート管をコイル状に巻き取るコルゲート管巻き取り工程との両方の工程を行うことを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記内管融着接合工程では、前記コイル状に巻き取られた前記コルゲート管から少なくとも前記一方の管端部に対応する管端部を繰り出すとともに、繰り出されない残りの前記コルゲート管の部分をコイル状の巻き取り状態に維持したまま、前記内管の管端部を前記蓋部材に融着接合することを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記管状頭部が前記コルゲート管の上方に位置するように、前記外管は前記地盤の掘削孔内に鉛直に建て込まれ、
前記管状頭部は、前記地盤の表層部に位置しており、
前記管状頭部の管壁の厚さは、前記コルゲート管の管壁の厚さよりも厚く、
前記コルゲート巻き取り工程と前記内管融着接合工程との間に、前記コルゲート管の管端部に前記管状頭部を同軸且つ水密に融着接合する管状頭部融着接合工程を有することを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れかに記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管の他方の管端部に熱可塑性樹脂製のキャップ部材を融着接合することにより、前記他方の管端部を水密に封止するキャップ部材融着接合工程と、
前記蓋部材の前記貫通孔に対して前記外管の外方から熱可塑性樹脂製の第1管部材の管端部を差し込んだ状態で、前記蓋部材と前記第1管部材の前記管端部とを水密に融着接合する第1管部材融着接合工程と、
前記蓋部材の第2貫通孔に熱可塑性樹脂製の第2管部材の管端部を差し込んだ状態で、前記蓋部材と前記第2管部材の前記管端部とを水密に融着接合する第2管部材融着接合工程と、有し、
現場搬入よりも前に、前記キャップ部材融着接合工程、前記第1管部材融着接合工程、前記第2管部材融着接合工程、前記内管融着接合工程、及び前記蓋部材融着接合工程が行われることを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れかに記載の二重管構造の地中熱交換器の製造方法であって、
前記外管、前記キャップ部材、前記蓋部材、前記内管、前記第1管部材、及び前記第2管部材の何れも高密度ポリエチレン製であることを特徴とする二重管構造の地中熱交換器の製造方法。

【図1A】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図1B】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図11】
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【図13】
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【公開番号】特開2013−108656(P2013−108656A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−253098(P2011−253098)
【出願日】平成23年11月18日(2011.11.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)