交流パルスアーク溶接方法
【課題】電極マイナス電流の通電とピーク電流及びベース電流の通電とを1パルス周期として溶接電流Iwの通電を繰り返す交流パルスアーク溶接にあって、1パルス周期中の電極マイナス電流の時間積分値が溶接電流値の時間積分値に占める比率である電極マイナス電流比率を電極マイナス電流比率設定値によって設定し、消耗電極である溶接ワイヤの送給速度を送給速度設定値によって設定して溶接を行う交流パルスアーク溶接方法において、溶接電流の平均値及び電極マイナス電流比率の条件設定を迅速かつ正確に行えるようにする。
【解決手段】本発明は、溶接電流の平均値を溶接電流設定値Isによって設定し、この溶接電流設定値Is及び上記の電極マイナス電流比率設定値Rsを入力として予め定めた変換関数回路FSCに基づいて送給速度設定値Fscを演算して自動設定する交流パルスアーク溶接方法である。
【解決手段】本発明は、溶接電流の平均値を溶接電流設定値Isによって設定し、この溶接電流設定値Is及び上記の電極マイナス電流比率設定値Rsを入力として予め定めた変換関数回路FSCに基づいて送給速度設定値Fscを演算して自動設定する交流パルスアーク溶接方法である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、送給速度を含む溶接条件を迅速かつ正確に設定するための交流パルスアーク溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、一般的な交流パルスアーク溶接装置の構成図である。送給速度設定回路FSは、溶接ワイヤ1の送給速度を設定するための予め定めた送給速度設定信号Fsを出力する。電極マイナス電流比率設定回路RSは、図8で後述する電極マイナス電流比率Renを設定するための予め定めた電極マイナス電流比率設定信号Rsを出力する。溶接電圧設定回路VSは、溶接ワイヤ1と母材2との間に印加される溶接電圧Vwの平均値Vavを設定するための溶接電圧設定信号Vsを出力する。溶接電源6は、一般的な交流パルスアーク溶接用の溶接電源であり、上記の各設定信号を入力として図8で後述する溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを出力すると共に、ワイヤ送給モータWMを制御するための送給制御信号Fcを出力する。溶接ワイヤ1は、上記のワイヤ送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。
【0003】
図8は、交流パルスアーク溶接における溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの波形図である。時刻t1〜t2の電極マイナス期間Ten中は電極マイナス極性ENで、同図(A)に示すように、小電流値の電極マイナス電流Inが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス電圧Vnが電極・母材間に印加する。時刻t2〜t4の電極プラス期間Tep中は電極プラス極性EPで溶接電流Iwが通電し、下記の2つの期間に分けることができる。すなわち、時刻t2〜t3のピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶滴移行させるための大電流値のピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpが電極・母材間に印加する。時刻t3〜t4のベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を成長させないための小電流値のベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが電極・母材間に印加する。上記の時刻t1〜t4を1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。
【0004】
同図(A)に示すように、溶接電流Iwの絶対値の平均値を溶接電流平均値Iavと定義し、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwの絶対値の平均値を溶接電圧平均値Vavと定義する。また、以下の記載において、電極マイナス電流Inの絶対値を単にInと記載し、同様に電極マイナス電圧Vnの絶対値を単にVnと記載する。さらに、電極マイナス電流比率Ren(%)の定義は下式となる。
Ren=100・Ten・In/(Ten・In+Tp・Ip+Tb・Ib)
すなわち、電極マイナス電流比率Renは、1パルス周期Tf中における電極マイナス電流Inの時間積分値が溶接電流(絶対値)Iwの時間積分値に占める比率である。
【0005】
上記の送給速度設定信号Fsによって溶接ワイヤの送給速度を設定する。直流パルスアーク溶接では、送給速度と溶接電流平均値Iavとが比例関係にあるので、送給速度を設定することは溶接電流平均値Iavを設定することに相当する。他方、交流パルスアーク溶接の場合については図9で後述する。次に、電極マイナス電流比率設定信号Rsによって電極マイナス電流比率Renを設定する。電極マイナス電流比率Renは上式のように定義されるので、電極マイナス期間Tenの時間長さ及び/又は電極マイナス電流Inの値を変化させることによって電極マイナス電流比率Renを変化させるのが一般的である。すなわち、電極マイナス電流比率設定信号Rsによって電極マイナス期間Ten及び/又は電極マイナス電流Inが変化して電極マイナス電流比率Renが設定される。さらに、上記の溶接電圧設定信号Vsによって同図に示すパルス周期Tf、ピーク期間Tp等がフィードバック制御によって変化して溶接電圧平均値Vavが設定される。
【0006】
図9は、交流パルスアーク溶接において送給速度を一定値にしたときの電極マイナス電流比率Renと溶接電流平均値Iavとの関係を示す図である。同図は、送給速度をF1、F2及びF3(F1>F2>F3)に設定して、電極マイナス電流比率Renを変化させたときの溶接電流平均値Iavの変化を測定したものである。同図から明らかなように、交流パルスアーク溶接では、送給速度が一定値であっても電極マイナス電流比率Renが異なれば溶接電流平均値Iavは変化する。一般的に、溶接電流平均値Iavは母材入熱と比例し、送給速度は溶着量と比例する。薄板を直流パルスアーク溶接で溶接する場合、板厚によって適正な溶接電流平均値Iavが決まる。そして必然的に送給速度も決まる。しかし、薄板溶接であるので溶接電流平均値Iavは小さな値となり、送給速度も対応して小さな値となる。この小さな送給速度による溶着量では良好な溶接ビードを形成するために十分ではなく、母材間にギャップ(隙間)が存在する場合には溶着量不足は顕著となる。このような場合に、交流パルスアーク溶接では、溶接電流平均値Iavとはある程度独立して送給速度を設定することができるので、上記の問題は解消される。したがって、交流パルスアーク溶接は、薄板溶接においてその特徴が特に発揮される。また、交流パルスアーク溶接は、アルミニウム材の溶接に使用される場合が多いが、鉄鋼材へも適用される。(上述した従来技術としては、例えば特許文献1参照)
【0007】
【特許文献1】特開平5−92269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、交流パルスアーク溶接では、電極マイナス電流比率Renが変化すると送給速度と溶接電流平均値Iavとの関係が変化する。このことを利用して良好な薄板溶接を行うことができる。薄板溶接における重要な溶接品質項目として溶け込みとギャップ裕度を挙げることができる。適正な溶け込みは母材への適正な入熱によって形成される。ギャップ裕度は、溶着量の調整範囲が広いことが要求される。すなわち、溶接電流平均値Iavを設定して母材入熱を適正化し、かつ、電極マイナス電流比率Renを設定して送給速度を変化させて溶着量を適正化すれば良い。
【0009】
図10は、溶接電流平均値が一定値であるときの電極マイナス電流比率Renと母材入熱との関係を示す図である。同図は、溶接ワイヤに直径1.2mmのアルミニウム合金A5356を使用し、母材に板厚4mmのアルミニウム合金A5052を使用して、30秒間交流パルスアーク溶接を行った場合の母材入熱を測定したものである。同図は、溶接速度を60cm/minとし、溶接電流平均値Iav=100Aで一定値にした場合である。同図に示すように、電極マイナス電流比率Renが変化しても溶接電流平均値Iavが一定値であれば、母材入熱は略一定となる。このために、溶け込みも略一定となる。同図において、電極マイナス電流比率Renを変化させても溶接電流平均値Iavを一定値にするために、送給速度を調整している。
【0010】
図11は、溶接電流平均値が一定値であるときの電極マイナス電流比率Renと母材のギャップ裕度との関係を示す図である。同図は、溶接ワイヤに直径1.2mmのアルミニウム合金A5356を使用し、母材に板厚1.0mmのアルミニウム合金A5052を使用して重ね継手溶接を行った場合である。また、同図は、溶接速度60cm/min、溶接電流平均値Iav=60Aで一定とし、良好な溶接を行うことができる継手部のギャップ長の最大値を求めたものである。同図に示すように、溶接電流平均値Iavが一定値である条件下において、電極マイナス電流比率Renが大きくなるのに伴ってギャップ裕度も大きくなる。これは、電極マイナス電流比率Renが大きくなると送給速度が速くなり、溶着量が増大して広いギャップ部に溶着金属を充填することが可能となるからである。したがって、ギャップが広い場合には、電極マイナス電流比率Renを大きくすれば良い。
【0011】
上述した図10及び図11から以下のことが言える。母材の板厚、継手等から適正な母材入熱が決まリ、母材入熱が決まれば適正な溶接電流平均値Iavが決まる。同時に、継手部のギャップ等によって適正な送給速度が決まり、送給速度が決まれば適正な電極マイナス電流比率Renが決まる。すなわち、母材の板厚、継手、ギャップ等が決まれば、溶接電流平均値Iav及び電極マイナス電流比率Renの適正値が定まる。しかし、図7で上述したように、従来技術では、送給速度及び電極マイナス電流比率Renを設定する。この結果、溶接電流平均値Iavを設定するために送給速度設定信号Fsを調整すると、同時に電極マイナス電流比率Renも変化してしまう。逆に、電極マイナス電流比率設定信号Rsを調整すると電極マイナス電流比率Renだけでなく、同時に溶接電流平均値Iavも変化してしまう。このように、設定したい項目である溶接電流平均値Iav及び電極マイナス電流比率Renと従来技術における実際の設定項目である送給速度及び電極マイナス電流比率Renとが1対1で対応していないために、上記のように設定が複雑になるという問題が生じる。このために、従来技術の交流パルスアーク溶接では、条件設定が複雑で時間がかかるという問題があった。さらには、条件設定に際して上記特性を理解した上で行う必要があり、条件設定に熟練が必要であった。
【0012】
そこで、本発明では、溶接電流平均値及び電極マイナス電流比率を迅速かつ正確に設定することができる交流パルスアーク溶接方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、電極マイナス極性での電極マイナス電流の通電と電極プラス極性でのピーク電流及びベース電流の通電とを1パルス周期として溶接電流の通電を繰り返す交流パルスアーク溶接にあって、前記1パルス周期中の前記電極マイナス電流の時間積分値が前記溶接電流値の時間積分値に占める比率である電極マイナス電流比率を電極マイナス電流比率設定値によって設定し、消耗電極である溶接ワイヤの送給速度を送給速度設定値によって設定して溶接を行う交流パルスアーク溶接方法において、
前記溶接電流の平均値を溶接電流設定値によって設定し、この溶接電流設定値及び前記電極マイナス電流比率設定値を入力として予め定めた変換関数に基づいて前記送給速度設定値を演算して自動設定することを特徴とする交流パルスアーク溶接方法である。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明記載の変換関数は、複数の前記電極マイナス電流比率設定値ごとの前記溶接電流設定値と前記送給速度設定値との関係を予め定義した複数の関数群から成ることを特徴とする交流パルスアーク溶接方法である。
【0015】
また、第3の発明は、溶接ワイヤ・母材間の平均電圧を設定する溶接電圧設定値が、前記溶接電流設定値を入力として予め定めた電圧一元関数に基づいて演算されて自動設定されることを特徴とする第1又は第2の発明記載の交流パルスアーク溶接方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接電流設定値Isによって溶接電流平均値Iavを設定し、電極マイナス電流比率設定値Rsによって電極マイナス電流比率Renを設定し、変換関数によって送給速度設定値Fscを演算して自動設定することによって、溶接電流平均値Iavと電極マイナス電流比率Renとを独立して直接設定することができる。このために、溶け込みを適正化するための母材入熱の設定を溶接電流設定値Isによって容易に行うことができる。さらに、母材間のギャップに応じて溶着量を適正化するために電極マイナス電流比率Renの設定を電極マイナス電流比率設定値Rsによって容易に行うことができる。このように、本発明によれば、溶接条件の設定を迅速かつ正確に行うことができる。さらに、溶接電流平均値Iavと電極マイナス電流比率Renとは独立して設定することができるので、これらの設定に熟練度は必要ない。
【0017】
上記第3の発明によれば、上記の効果に加えて、溶接電圧の平均値Vavの設定を溶接電流設定値Isを入力とする電圧一元関数に基づいて演算によって適正値に自動設定することができる。このために、さらに溶接条件の設定を迅速かつ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。同図において上述した図7と同一の構成物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示す図7とは異なる構成物について説明する。
【0020】
溶接電流設定回路ISは、溶接電流平均値を設定するための予め定めた溶接電流設定信号Isを出力する。送給速度変換関数回路FSCは、上記の溶接電流設定信号Is及び電極マイナス電流比率設定信号Rsを入力として、予め定めた変換関数に基づいて演算して、送給速度設定演算信号Fscを出力する。この変換関数の詳細については後述する。ここで、溶接電源6の入力信号については、送給速度設定信号Fsから送給速度設定演算信号Fscに代わっただけで実質的には同じであるので、溶接電源6は従来のものが使用できる。ただし、溶接電流設定回路IS、電極マイナス電流比率設定回路RS、溶接電圧設定回路VS及び送給速度変換関数回路FSCを電源に内蔵する場合もある。これによって、溶接電流平均値及び電極マイナス電流比率を独立して設定することができるので、条件設定を非常に迅速かつ正確に行うことができる。
【0021】
図2は、上記の変換関数の一例を示す溶接電流設定値Isと送給速度設定演算値Fscとの関係図である。同図は、溶接ワイヤが直径1.2mmのアルミニウム合金A5356の場合である。電極マイナス電流比率設定値Rsが0%、20%及び40%の場合である。各特性は下式で表わすことができる。
Fsc=a・Is+b (1)式
a=f1(Rs) (2)式
b=f2(Rs) (3)式
上記(2)式の関数f1の一例を図3に示す。同図は電極マイナス電流比率設定値Rsと上記(1)式の変数aとの関係を示している。また、上記(3)式の関数f2の一例を図4に示す。同図は電極マイナス電流比率設定値Rsと上記(1)式の変数bとの関係を示している。
【0022】
上記とは別の変換関数の定義方法を以下に示す。上述した図2において、各特性を下式で表わす。
Rs=0%のときはFsc=a0・Is+b0
Rs=1%のときはFsc=a1・Is+b1
……
Rs=40%のときはFsc=a40・Is+b40
a0、a1…a40及びb0、b1…b40は定数である。
上記のように電極マイナス電流比率設定値Rsに応じて複数の変換関数群を予め定義しておく方法である。a0、b0等は予め試験によって算出する。電極マイナス電流比率設定値Rsの範囲は実用上0〜40%の範囲で十分である。上記の例のように1%刻みに変換関数を定義せずに、例えば5%刻みで定義しても良い。この場合には、5%刻みの間のRsが入力されたときは、その前後のRsに対応する変換関数からの演算値によって補間してFscを演算すれば良い。一例を挙げれば、Rs=2%のときはRs=0%のときの変換関数からFsc(0%)をRs=5%のときの変換関数からFsc(5%)を演算する。そして、Fsc(2%)=0.6・Fsc(0%)+0.4・Fsc(5%)の演算によって補間する。
【0023】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。同図において上述した図1と同一の構成物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示す図1とは異なる構成物について説明する。
【0024】
電圧一元関数回路VSCは、溶接電流設定信号Isを入力として、予め定めた電圧一元関数に基づいて演算して、溶接電圧設定演算信号Vscを出力する。この電圧一元関数の詳細については後述する。ここで、溶接電源6の入力信号については、溶接電圧設定信号Vsから溶接電圧設定演算信号Vscに代わっただけで実質的には同じであるので、溶接電源6は従来のものが使用できる。ただし、溶接電流設定回路IS、電極マイナス電流比率設定回路RS、送給速度変換関数回路FSC及び電圧一元関数回路VSCを電源に内蔵する場合もある。一般的に、溶接ワイヤの直径及び材質が選択されれば、溶接電流平均値Iav(溶接電流設定値Is)に対して適正な溶接電圧平均値Vav(溶接電圧設定演算値Vsc)が決まる。このIs−Vscとの関係を定義するのが、上記の電圧一元関数である。
【0025】
図6は、上記の電圧一元関数の一例を示す溶接電流設定値Isと溶接電圧設定演算値Vscとの関係図である。同図は、溶接ワイヤが直径1.2mmのアルミニウム合金A5356の場合である。電圧一元関数を同図に示す直線式として定義すれば良い。
【0026】
実施の形態2によれば、溶接電流設定信号Isが設定されると、適正な溶接電圧設定演算信号Vscが自動設定されるので、条件設定をさらに迅速かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図2】図1における変換関数の一例を示す図である。
【図3】図2における変数aを定義する関数f1の一例を示す図である。
【図4】図2における変数bを定義する関数f2の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図6】図5における電圧一元関数の一例を示す図である。
【図7】従来技術の交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図8】従来技術の交流パルスアーク溶接における電流・電圧波形図である。
【図9】従来技術において電極マイナス電流比率Renと溶接電流平均値Iavとの関係を示す図である。
【図10】課題を説明するための溶接電流平均値Iav一定条件下における電極マイナス電流比率Renと母材入熱との関係を示す図である。
【図11】課題を説明するための溶接電流平均値Iav一定条件下における電極マイナス電流比率Renとギャップ裕度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
6 溶接電源
a、b 変数
EN 電極マイナス極性
EP 電極プラス極性
f1、f2 関数
Fc 送給制御信号
FS 送給速度設定回路
Fs 送給速度設定信号
FSC 送給速度変換関数回路
Fsc 送給速度設定演算(値/信号)
Iav 溶接電流平均値
Ib ベース電流
In 電極マイナス電流
Ip ピーク電流
IS 溶接電流設定回路
Is 溶接電流設定(値/信号)
Iw 溶接電流
Ren 電極マイナス電流比率
RS 電極マイナス電流比率設定回路
Rs 電極マイナス電流比率設定(値/信号)
Tb ベース期間
Ten 電極マイナス期間
Tep 電極プラス期間
Tf パルス周期
Tp ピーク期間
Vav 溶接電圧平均値
Vb ベース電圧
Vn 電極マイナス電圧
Vp ピーク電圧
VS 溶接電圧設定回路
Vs 溶接電圧設定信号
VSC 電圧一元関数回路
Vsc 溶接電圧設定演算(値/信号)
Vw 溶接電圧
WM ワイヤ送給モータ
【技術分野】
【0001】
本発明は、送給速度を含む溶接条件を迅速かつ正確に設定するための交流パルスアーク溶接方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図7は、一般的な交流パルスアーク溶接装置の構成図である。送給速度設定回路FSは、溶接ワイヤ1の送給速度を設定するための予め定めた送給速度設定信号Fsを出力する。電極マイナス電流比率設定回路RSは、図8で後述する電極マイナス電流比率Renを設定するための予め定めた電極マイナス電流比率設定信号Rsを出力する。溶接電圧設定回路VSは、溶接ワイヤ1と母材2との間に印加される溶接電圧Vwの平均値Vavを設定するための溶接電圧設定信号Vsを出力する。溶接電源6は、一般的な交流パルスアーク溶接用の溶接電源であり、上記の各設定信号を入力として図8で後述する溶接電流Iw及び溶接電圧Vwを出力すると共に、ワイヤ送給モータWMを制御するための送給制御信号Fcを出力する。溶接ワイヤ1は、上記のワイヤ送給モータWMに結合された送給ロール5の回転によって溶接トーチ4内を通って送給され、母材2との間にアーク3が発生する。
【0003】
図8は、交流パルスアーク溶接における溶接電流Iw及び溶接電圧Vwの波形図である。時刻t1〜t2の電極マイナス期間Ten中は電極マイナス極性ENで、同図(A)に示すように、小電流値の電極マイナス電流Inが通電し、同図(B)に示すように、電極マイナス電圧Vnが電極・母材間に印加する。時刻t2〜t4の電極プラス期間Tep中は電極プラス極性EPで溶接電流Iwが通電し、下記の2つの期間に分けることができる。すなわち、時刻t2〜t3のピーク期間Tp中は、同図(A)に示すように、溶滴移行させるための大電流値のピーク電流Ipが通電し、同図(B)に示すように、ピーク電圧Vpが電極・母材間に印加する。時刻t3〜t4のベース期間Tb中は、同図(A)に示すように、溶滴を成長させないための小電流値のベース電流Ibが通電し、同図(B)に示すように、ベース電圧Vbが電極・母材間に印加する。上記の時刻t1〜t4を1パルス周期Tfとして繰り返して溶接が行われる。
【0004】
同図(A)に示すように、溶接電流Iwの絶対値の平均値を溶接電流平均値Iavと定義し、同図(B)に示すように、溶接電圧Vwの絶対値の平均値を溶接電圧平均値Vavと定義する。また、以下の記載において、電極マイナス電流Inの絶対値を単にInと記載し、同様に電極マイナス電圧Vnの絶対値を単にVnと記載する。さらに、電極マイナス電流比率Ren(%)の定義は下式となる。
Ren=100・Ten・In/(Ten・In+Tp・Ip+Tb・Ib)
すなわち、電極マイナス電流比率Renは、1パルス周期Tf中における電極マイナス電流Inの時間積分値が溶接電流(絶対値)Iwの時間積分値に占める比率である。
【0005】
上記の送給速度設定信号Fsによって溶接ワイヤの送給速度を設定する。直流パルスアーク溶接では、送給速度と溶接電流平均値Iavとが比例関係にあるので、送給速度を設定することは溶接電流平均値Iavを設定することに相当する。他方、交流パルスアーク溶接の場合については図9で後述する。次に、電極マイナス電流比率設定信号Rsによって電極マイナス電流比率Renを設定する。電極マイナス電流比率Renは上式のように定義されるので、電極マイナス期間Tenの時間長さ及び/又は電極マイナス電流Inの値を変化させることによって電極マイナス電流比率Renを変化させるのが一般的である。すなわち、電極マイナス電流比率設定信号Rsによって電極マイナス期間Ten及び/又は電極マイナス電流Inが変化して電極マイナス電流比率Renが設定される。さらに、上記の溶接電圧設定信号Vsによって同図に示すパルス周期Tf、ピーク期間Tp等がフィードバック制御によって変化して溶接電圧平均値Vavが設定される。
【0006】
図9は、交流パルスアーク溶接において送給速度を一定値にしたときの電極マイナス電流比率Renと溶接電流平均値Iavとの関係を示す図である。同図は、送給速度をF1、F2及びF3(F1>F2>F3)に設定して、電極マイナス電流比率Renを変化させたときの溶接電流平均値Iavの変化を測定したものである。同図から明らかなように、交流パルスアーク溶接では、送給速度が一定値であっても電極マイナス電流比率Renが異なれば溶接電流平均値Iavは変化する。一般的に、溶接電流平均値Iavは母材入熱と比例し、送給速度は溶着量と比例する。薄板を直流パルスアーク溶接で溶接する場合、板厚によって適正な溶接電流平均値Iavが決まる。そして必然的に送給速度も決まる。しかし、薄板溶接であるので溶接電流平均値Iavは小さな値となり、送給速度も対応して小さな値となる。この小さな送給速度による溶着量では良好な溶接ビードを形成するために十分ではなく、母材間にギャップ(隙間)が存在する場合には溶着量不足は顕著となる。このような場合に、交流パルスアーク溶接では、溶接電流平均値Iavとはある程度独立して送給速度を設定することができるので、上記の問題は解消される。したがって、交流パルスアーク溶接は、薄板溶接においてその特徴が特に発揮される。また、交流パルスアーク溶接は、アルミニウム材の溶接に使用される場合が多いが、鉄鋼材へも適用される。(上述した従来技術としては、例えば特許文献1参照)
【0007】
【特許文献1】特開平5−92269号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、交流パルスアーク溶接では、電極マイナス電流比率Renが変化すると送給速度と溶接電流平均値Iavとの関係が変化する。このことを利用して良好な薄板溶接を行うことができる。薄板溶接における重要な溶接品質項目として溶け込みとギャップ裕度を挙げることができる。適正な溶け込みは母材への適正な入熱によって形成される。ギャップ裕度は、溶着量の調整範囲が広いことが要求される。すなわち、溶接電流平均値Iavを設定して母材入熱を適正化し、かつ、電極マイナス電流比率Renを設定して送給速度を変化させて溶着量を適正化すれば良い。
【0009】
図10は、溶接電流平均値が一定値であるときの電極マイナス電流比率Renと母材入熱との関係を示す図である。同図は、溶接ワイヤに直径1.2mmのアルミニウム合金A5356を使用し、母材に板厚4mmのアルミニウム合金A5052を使用して、30秒間交流パルスアーク溶接を行った場合の母材入熱を測定したものである。同図は、溶接速度を60cm/minとし、溶接電流平均値Iav=100Aで一定値にした場合である。同図に示すように、電極マイナス電流比率Renが変化しても溶接電流平均値Iavが一定値であれば、母材入熱は略一定となる。このために、溶け込みも略一定となる。同図において、電極マイナス電流比率Renを変化させても溶接電流平均値Iavを一定値にするために、送給速度を調整している。
【0010】
図11は、溶接電流平均値が一定値であるときの電極マイナス電流比率Renと母材のギャップ裕度との関係を示す図である。同図は、溶接ワイヤに直径1.2mmのアルミニウム合金A5356を使用し、母材に板厚1.0mmのアルミニウム合金A5052を使用して重ね継手溶接を行った場合である。また、同図は、溶接速度60cm/min、溶接電流平均値Iav=60Aで一定とし、良好な溶接を行うことができる継手部のギャップ長の最大値を求めたものである。同図に示すように、溶接電流平均値Iavが一定値である条件下において、電極マイナス電流比率Renが大きくなるのに伴ってギャップ裕度も大きくなる。これは、電極マイナス電流比率Renが大きくなると送給速度が速くなり、溶着量が増大して広いギャップ部に溶着金属を充填することが可能となるからである。したがって、ギャップが広い場合には、電極マイナス電流比率Renを大きくすれば良い。
【0011】
上述した図10及び図11から以下のことが言える。母材の板厚、継手等から適正な母材入熱が決まリ、母材入熱が決まれば適正な溶接電流平均値Iavが決まる。同時に、継手部のギャップ等によって適正な送給速度が決まり、送給速度が決まれば適正な電極マイナス電流比率Renが決まる。すなわち、母材の板厚、継手、ギャップ等が決まれば、溶接電流平均値Iav及び電極マイナス電流比率Renの適正値が定まる。しかし、図7で上述したように、従来技術では、送給速度及び電極マイナス電流比率Renを設定する。この結果、溶接電流平均値Iavを設定するために送給速度設定信号Fsを調整すると、同時に電極マイナス電流比率Renも変化してしまう。逆に、電極マイナス電流比率設定信号Rsを調整すると電極マイナス電流比率Renだけでなく、同時に溶接電流平均値Iavも変化してしまう。このように、設定したい項目である溶接電流平均値Iav及び電極マイナス電流比率Renと従来技術における実際の設定項目である送給速度及び電極マイナス電流比率Renとが1対1で対応していないために、上記のように設定が複雑になるという問題が生じる。このために、従来技術の交流パルスアーク溶接では、条件設定が複雑で時間がかかるという問題があった。さらには、条件設定に際して上記特性を理解した上で行う必要があり、条件設定に熟練が必要であった。
【0012】
そこで、本発明では、溶接電流平均値及び電極マイナス電流比率を迅速かつ正確に設定することができる交流パルスアーク溶接方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した課題を解決するために、第1の発明は、電極マイナス極性での電極マイナス電流の通電と電極プラス極性でのピーク電流及びベース電流の通電とを1パルス周期として溶接電流の通電を繰り返す交流パルスアーク溶接にあって、前記1パルス周期中の前記電極マイナス電流の時間積分値が前記溶接電流値の時間積分値に占める比率である電極マイナス電流比率を電極マイナス電流比率設定値によって設定し、消耗電極である溶接ワイヤの送給速度を送給速度設定値によって設定して溶接を行う交流パルスアーク溶接方法において、
前記溶接電流の平均値を溶接電流設定値によって設定し、この溶接電流設定値及び前記電極マイナス電流比率設定値を入力として予め定めた変換関数に基づいて前記送給速度設定値を演算して自動設定することを特徴とする交流パルスアーク溶接方法である。
【0014】
また、第2の発明は、第1の発明記載の変換関数は、複数の前記電極マイナス電流比率設定値ごとの前記溶接電流設定値と前記送給速度設定値との関係を予め定義した複数の関数群から成ることを特徴とする交流パルスアーク溶接方法である。
【0015】
また、第3の発明は、溶接ワイヤ・母材間の平均電圧を設定する溶接電圧設定値が、前記溶接電流設定値を入力として予め定めた電圧一元関数に基づいて演算されて自動設定されることを特徴とする第1又は第2の発明記載の交流パルスアーク溶接方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、溶接電流設定値Isによって溶接電流平均値Iavを設定し、電極マイナス電流比率設定値Rsによって電極マイナス電流比率Renを設定し、変換関数によって送給速度設定値Fscを演算して自動設定することによって、溶接電流平均値Iavと電極マイナス電流比率Renとを独立して直接設定することができる。このために、溶け込みを適正化するための母材入熱の設定を溶接電流設定値Isによって容易に行うことができる。さらに、母材間のギャップに応じて溶着量を適正化するために電極マイナス電流比率Renの設定を電極マイナス電流比率設定値Rsによって容易に行うことができる。このように、本発明によれば、溶接条件の設定を迅速かつ正確に行うことができる。さらに、溶接電流平均値Iavと電極マイナス電流比率Renとは独立して設定することができるので、これらの設定に熟練度は必要ない。
【0017】
上記第3の発明によれば、上記の効果に加えて、溶接電圧の平均値Vavの設定を溶接電流設定値Isを入力とする電圧一元関数に基づいて演算によって適正値に自動設定することができる。このために、さらに溶接条件の設定を迅速かつ正確に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
【0019】
[実施の形態1]
図1は、本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。同図において上述した図7と同一の構成物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示す図7とは異なる構成物について説明する。
【0020】
溶接電流設定回路ISは、溶接電流平均値を設定するための予め定めた溶接電流設定信号Isを出力する。送給速度変換関数回路FSCは、上記の溶接電流設定信号Is及び電極マイナス電流比率設定信号Rsを入力として、予め定めた変換関数に基づいて演算して、送給速度設定演算信号Fscを出力する。この変換関数の詳細については後述する。ここで、溶接電源6の入力信号については、送給速度設定信号Fsから送給速度設定演算信号Fscに代わっただけで実質的には同じであるので、溶接電源6は従来のものが使用できる。ただし、溶接電流設定回路IS、電極マイナス電流比率設定回路RS、溶接電圧設定回路VS及び送給速度変換関数回路FSCを電源に内蔵する場合もある。これによって、溶接電流平均値及び電極マイナス電流比率を独立して設定することができるので、条件設定を非常に迅速かつ正確に行うことができる。
【0021】
図2は、上記の変換関数の一例を示す溶接電流設定値Isと送給速度設定演算値Fscとの関係図である。同図は、溶接ワイヤが直径1.2mmのアルミニウム合金A5356の場合である。電極マイナス電流比率設定値Rsが0%、20%及び40%の場合である。各特性は下式で表わすことができる。
Fsc=a・Is+b (1)式
a=f1(Rs) (2)式
b=f2(Rs) (3)式
上記(2)式の関数f1の一例を図3に示す。同図は電極マイナス電流比率設定値Rsと上記(1)式の変数aとの関係を示している。また、上記(3)式の関数f2の一例を図4に示す。同図は電極マイナス電流比率設定値Rsと上記(1)式の変数bとの関係を示している。
【0022】
上記とは別の変換関数の定義方法を以下に示す。上述した図2において、各特性を下式で表わす。
Rs=0%のときはFsc=a0・Is+b0
Rs=1%のときはFsc=a1・Is+b1
……
Rs=40%のときはFsc=a40・Is+b40
a0、a1…a40及びb0、b1…b40は定数である。
上記のように電極マイナス電流比率設定値Rsに応じて複数の変換関数群を予め定義しておく方法である。a0、b0等は予め試験によって算出する。電極マイナス電流比率設定値Rsの範囲は実用上0〜40%の範囲で十分である。上記の例のように1%刻みに変換関数を定義せずに、例えば5%刻みで定義しても良い。この場合には、5%刻みの間のRsが入力されたときは、その前後のRsに対応する変換関数からの演算値によって補間してFscを演算すれば良い。一例を挙げれば、Rs=2%のときはRs=0%のときの変換関数からFsc(0%)をRs=5%のときの変換関数からFsc(5%)を演算する。そして、Fsc(2%)=0.6・Fsc(0%)+0.4・Fsc(5%)の演算によって補間する。
【0023】
[実施の形態2]
図5は、本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。同図において上述した図1と同一の構成物には同一符号を付してそれらの説明は省略する。以下、点線で示す図1とは異なる構成物について説明する。
【0024】
電圧一元関数回路VSCは、溶接電流設定信号Isを入力として、予め定めた電圧一元関数に基づいて演算して、溶接電圧設定演算信号Vscを出力する。この電圧一元関数の詳細については後述する。ここで、溶接電源6の入力信号については、溶接電圧設定信号Vsから溶接電圧設定演算信号Vscに代わっただけで実質的には同じであるので、溶接電源6は従来のものが使用できる。ただし、溶接電流設定回路IS、電極マイナス電流比率設定回路RS、送給速度変換関数回路FSC及び電圧一元関数回路VSCを電源に内蔵する場合もある。一般的に、溶接ワイヤの直径及び材質が選択されれば、溶接電流平均値Iav(溶接電流設定値Is)に対して適正な溶接電圧平均値Vav(溶接電圧設定演算値Vsc)が決まる。このIs−Vscとの関係を定義するのが、上記の電圧一元関数である。
【0025】
図6は、上記の電圧一元関数の一例を示す溶接電流設定値Isと溶接電圧設定演算値Vscとの関係図である。同図は、溶接ワイヤが直径1.2mmのアルミニウム合金A5356の場合である。電圧一元関数を同図に示す直線式として定義すれば良い。
【0026】
実施の形態2によれば、溶接電流設定信号Isが設定されると、適正な溶接電圧設定演算信号Vscが自動設定されるので、条件設定をさらに迅速かつ正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図2】図1における変換関数の一例を示す図である。
【図3】図2における変数aを定義する関数f1の一例を示す図である。
【図4】図2における変数bを定義する関数f2の一例を示す図である。
【図5】本発明の実施の形態2に係る交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図6】図5における電圧一元関数の一例を示す図である。
【図7】従来技術の交流パルスアーク溶接装置の構成図である。
【図8】従来技術の交流パルスアーク溶接における電流・電圧波形図である。
【図9】従来技術において電極マイナス電流比率Renと溶接電流平均値Iavとの関係を示す図である。
【図10】課題を説明するための溶接電流平均値Iav一定条件下における電極マイナス電流比率Renと母材入熱との関係を示す図である。
【図11】課題を説明するための溶接電流平均値Iav一定条件下における電極マイナス電流比率Renとギャップ裕度との関係を示す図である。
【符号の説明】
【0028】
1 溶接ワイヤ
2 母材
3 アーク
4 溶接トーチ
5 送給ロール
6 溶接電源
a、b 変数
EN 電極マイナス極性
EP 電極プラス極性
f1、f2 関数
Fc 送給制御信号
FS 送給速度設定回路
Fs 送給速度設定信号
FSC 送給速度変換関数回路
Fsc 送給速度設定演算(値/信号)
Iav 溶接電流平均値
Ib ベース電流
In 電極マイナス電流
Ip ピーク電流
IS 溶接電流設定回路
Is 溶接電流設定(値/信号)
Iw 溶接電流
Ren 電極マイナス電流比率
RS 電極マイナス電流比率設定回路
Rs 電極マイナス電流比率設定(値/信号)
Tb ベース期間
Ten 電極マイナス期間
Tep 電極プラス期間
Tf パルス周期
Tp ピーク期間
Vav 溶接電圧平均値
Vb ベース電圧
Vn 電極マイナス電圧
Vp ピーク電圧
VS 溶接電圧設定回路
Vs 溶接電圧設定信号
VSC 電圧一元関数回路
Vsc 溶接電圧設定演算(値/信号)
Vw 溶接電圧
WM ワイヤ送給モータ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極マイナス極性での電極マイナス電流の通電と電極プラス極性でのピーク電流及びベース電流の通電とを1パルス周期として溶接電流の通電を繰り返す交流パルスアーク溶接にあって、前記1パルス周期中の前記電極マイナス電流の時間積分値が前記溶接電流値の時間積分値に占める比率である電極マイナス電流比率を電極マイナス電流比率設定値によって設定し、消耗電極である溶接ワイヤの送給速度を送給速度設定値によって設定して溶接を行う交流パルスアーク溶接方法において、
前記溶接電流の平均値を溶接電流設定値によって設定し、この溶接電流設定値及び前記電極マイナス電流比率設定値を入力として予め定めた変換関数に基づいて前記送給速度設定値を演算して自動設定することを特徴とする交流パルスアーク溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載の変換関数は、複数の前記電極マイナス電流比率設定値ごとの前記溶接電流設定値と前記送給速度設定値との関係を予め定義した複数の関数群から成ることを特徴とする交流パルスアーク溶接方法。
【請求項3】
溶接ワイヤ・母材間の平均電圧を設定する溶接電圧設定値が、前記溶接電流設定値を入力として予め定めた電圧一元関数に基づいて演算されて自動設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流パルスアーク溶接方法。
【請求項1】
電極マイナス極性での電極マイナス電流の通電と電極プラス極性でのピーク電流及びベース電流の通電とを1パルス周期として溶接電流の通電を繰り返す交流パルスアーク溶接にあって、前記1パルス周期中の前記電極マイナス電流の時間積分値が前記溶接電流値の時間積分値に占める比率である電極マイナス電流比率を電極マイナス電流比率設定値によって設定し、消耗電極である溶接ワイヤの送給速度を送給速度設定値によって設定して溶接を行う交流パルスアーク溶接方法において、
前記溶接電流の平均値を溶接電流設定値によって設定し、この溶接電流設定値及び前記電極マイナス電流比率設定値を入力として予め定めた変換関数に基づいて前記送給速度設定値を演算して自動設定することを特徴とする交流パルスアーク溶接方法。
【請求項2】
請求項1記載の変換関数は、複数の前記電極マイナス電流比率設定値ごとの前記溶接電流設定値と前記送給速度設定値との関係を予め定義した複数の関数群から成ることを特徴とする交流パルスアーク溶接方法。
【請求項3】
溶接ワイヤ・母材間の平均電圧を設定する溶接電圧設定値が、前記溶接電流設定値を入力として予め定めた電圧一元関数に基づいて演算されて自動設定されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の交流パルスアーク溶接方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−7239(P2006−7239A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−184532(P2004−184532)
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月23日(2004.6.23)
【出願人】(000000262)株式会社ダイヘン (990)
【Fターム(参考)】
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