説明

交通信号制御システム

【課題】電源線と制御線を低減した交通信号システムを実現する電源線と制御線を低減した交通信号システムを実現する。
【解決手段】交通信号制御システム10では、信号灯器20への電源を直流として、制御機50(親機)から並列給電する。各信号灯器20の点灯、滅灯に関しては、制御機50からの通信指示で行い、その指示に応じて灯ごと(G灯41、Y灯42、R灯43ごと)に電力供給をオン/オフする。主道路と副道路に対するG−G表示の検出について、各信号灯器20の灯器表示コードを判断して、不正なG−G表示を検出し、給電を停止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、交通信号制御システムに係り、制御機によって交差点内の信号灯器の点灯及び滅灯を制御する交通信号制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
交差点又は横断歩道などには、複数の信号灯器(交通信号灯器)が所定の位置に設置され、各信号灯器の青、黄、赤、青矢印等の点灯又は滅灯などを所定の時間間隔で繰り返すように制御する交通信号制御システムが実用化されている。そして、近年の技術進歩に伴い、交通信号制御システムに関する様々な技術開発が行われている。そのような技術開発の中で要望の高い技術の一つが、低コスト化や設置工事の簡素化に関する技術であり、そのような技術が幾つか提案されている(例えば、特許文献1及び2参照。)
【0003】
特許文献1に開示の技術では、交通信号制御機の小型化、製造コストを低減及び設置工事の一層容易化を図っている。また、特許文献2に開示の技術では、車両検知器を備えた信号制御システムにおいて、電力線の数を削減し、設置工事に要する費用の低減及び工期の短縮を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−40610号公報
【特許文献2】特開2008−97416号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、従来方式の信号制御システムでは、制御機と信号灯器間は実線で接続し、制御機で信号灯器の点灯、滅灯を行っている。また制御機と信号灯器間は、1対N(信号灯器数分)の配線を必要とした。特許文献1に開示の技術では、商用電源の分散及びそれら商用電源への接続工事の自由度の向上を図っている。しかし、配線については、一層の低減が求められていた。また、特許文献2に開示の技術では、車両検知器を備えるシステムにおいては、一定の効果は得られるものの、その効果は部分的であり、一層の改善が求められていた。
【0006】
本発明は、以上のような状況を鑑みなされたものであって、上記課題を解決する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、複数の信号灯器と、前記信号灯器を制御する制御機とを備えた交通信号制御システムであって、前記制御機から、前記信号灯器をシリアルでかつ環状に連結して配索され、前記信号灯器を駆動する制御信号が伝送される制御信号線と、前記制御機と同電位に接続され、途中で分岐して前記複数の信号灯器のそれぞれに対して直流電力を供給する電源線と、を備える。
また、前記制御機は、交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、前記信号灯器に制御信号を出力する通信制御部と、を備え、前記信号灯器は、灯器の駆動を制御するとともに前記制御機と通信を行う通信・灯駆動制御部と、前記灯器の駆動状態を検出する故障検出部と、を有し、前記通信・灯駆動制御部は、前記制御機の前記通信制御部に対して前記故障検出部の検出結果を表示信号として送信してもよい。
また、前記通信制御部は、前記表示信号及び前記表示信号に対応する前記制御信号をもとに、故障が発生したと判断すると、前記電源線への電力供給を停止するように前記電力変換部を制御してもよい。
【発明の効果】
【0008】
以上、本発明によると、電源線と制御線を低減した交通信号制御システムを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態に係る、交差点における交通信号制御システムの配置を示した図である。
【図2】実施の形態に係る、交通信号制御システムの機能ブロック図である。
【図3】実施の形態に係る、信号灯器の機能ブロック図である。
【図4】実施の形態に係る、制御コードと表示コードの送受信例を示したチャートである。
【図5】実施の形態に係る、制御コード及び表示コードの例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。図1は、本実施形態に係る交差点12における交通信号制御システム10の構成の配置を示した図である。また、図2は、本実施形態に係る交通信号制御システム10の構成を示す機能ブロック図である。さらに、図3は、信号灯器20の構成を示す機能ブロック図である。
【0011】
交通信号制御システム10は、信号灯器20と制御機50とを備えている。信号灯器20は、図1において、左右方向に延びる道路に配置されるA信号灯器21及びB信号灯器22、上下方向に延びる道路に配置されるC信号灯器23及びD信号灯器24の計4灯から構成されている。つまり、A信号灯器21及びB信号灯器22は、図示左右方向の交通流を制御し、C信号灯器23及びD信号灯器24は図示上下方向の交通量を制御する。
【0012】
図2に示すように、A信号灯器21〜D信号灯器24は、制御機50と信号配線30で接続されており、制御機50から電力供給を受けるとともに、灯器点灯駆動のための制御信号を取得する。信号配線30は、制御信号送信用の通信回線となる制御線30aと電力供給用の電源線30bとから構成されている。
【0013】
制御線30aは、制御機50から各信号灯器20を経由して、直列に接続される。つまり、制御機50から延出した制御線30aは環状に配置されるものであって、まず、A信号灯器21に接続され、B信号灯器22、C信号灯器23、D信号灯器24と、直列に順次に接続される。そして、最終的に、制御線30aは、D信号灯器24から制御機50に接続される。
【0014】
電源線30bは、制御機50から延出し環状に配置されて、環状の配線から分岐した配線でA信号灯器21、B信号灯器22、C信号灯器23及びD信号灯器24に接続される。つまり、電力は、各信号灯器20に対して制御機50から並列給電される。
【0015】
制御機50は、電源変換部51と、通信制御部52と、制御論理部53と、電源部54とを備えている。電源変換部51は、外部電源90から取得した交流電力を直流電力に変換し、直流電力を電源線30bを介して信号灯器20に供給する。
【0016】
通信制御部52は、信号灯器20(A信号灯器21〜D信号灯器24)の点灯・滅灯の制御を行う制御信号を制御線30aを介して出力する。また、信号灯器20との通信異常や灯器異常を検出した場合には、電源変換部51は信号灯器20に供給する電力を停止する。
【0017】
制御論理部53は、信号灯器20を制御するための灯器制御コードを記録する。つまり、通信制御部52は、駆動する時間帯や交通流の状態に応じて予め定められた制御パターンである灯器制御コードを制御論理部53から取得し、灯器制御コードを信号灯器20に対して送信する。また、通信制御部52は、信号灯器20から送信される灯器表示コードと送信した灯器制御コードとを比較して、故障発生の検出を行う。灯器制御コード及び灯器表示コードの具体的内容については後述する。
【0018】
電源部54は、外部電源90から取得した交流電力を直流電力に変換して、制御機50の各構成要素に対して供給する。
【0019】
つづいて、図3を参照して信号灯器20の構成について説明する。信号灯器20は、LED灯であるG灯41、Y灯42及びR灯43とを備える。なお、ここでは図示しないが、必要に応じて矢印灯が設けられている。さらに、信号灯器20は、G灯41、Y灯42及びR灯43をそれぞれLED駆動する為のG灯スイッチ44、Y灯スイッチ45及びR灯スイッチ46を備える。
【0020】
さらに、信号灯器20は、電源供給部31、通信・灯駆動制御部32及び故障検出部33を備える。電源供給部31は、電源線30bから取得した電力を、LED駆動のために所定の電圧に調整してG灯スイッチ44、Y灯スイッチ45及びR灯スイッチ46に供給する。
【0021】
通信・灯駆動制御部32は、制御線30aを介して取得した灯器制御コードに基づきG灯スイッチ44、Y灯スイッチ45及びR灯スイッチ46に制御信号を出力する。また、通信・灯駆動制御部32は、通信異常を検出した場合や、次に示す故障検出部33において故障が検出された場合に、電源供給部31の電力供給を停止するよう制御する。さらに、通信・灯駆動制御部32は、点灯した内容を示す信号灯器表示コードを送信する。
【0022】
故障検出部33は、G灯スイッチ44、Y灯スイッチ45及びR灯スイッチ46からG灯41、Y灯42及びR灯43へ供給される電圧を検出する電圧検出器33aを備え、故障を検出する。検出結果は通信・灯駆動制御部32に通知される。
【0023】
つづいて、制御機50と信号灯器20との通信方法について説明する。図4は、制御機50から信号灯器20へ送信される灯器制御コード及び信号灯器20から制御機50へ送信される表示制御コードを示している。より具体的には、図示のように、制御機50は、所定間隔でA信号灯器制御コード、B信号灯器制御コード、C信号灯器制御コード、D信号灯器制御コードを制御線30aを介して信号灯器20に送信する。各信号灯器20では、信号灯器表示コードの受信後一定期間経過したら、実際に表示制御された内容を示す信号灯器表示コードを、制御線30aを介して制御機50に送信する。
【0024】
結果的に、制御線30aに重畳されている制御信号(論理コード)は、先頭から順に、A信号灯器制御コード及びA信号灯器表示コード、つづいて、B信号灯器制御コード及びB信号灯器表示コード、C信号灯器制御コード及びC信号灯器表示コード、さらに、D信号灯器制御コード及びD信号灯器表示コードとなる。この送信順の論理コードが制御線30aにサイクリックに重畳される。
【0025】
図5に論理コードの構成例を示す。図5(a)は信号灯器制御コードの例であり、図5(b)は信号灯器表示コードの例である。ここでは、代表例として、A信号灯器制御コード及びA信号灯器表示コードについて例示しており、他の信号灯器制御コード及び信号灯器表示コードについても同様である。
【0026】
信号灯器制御コードは、スタートコード、A信号灯器番号、A信号灯器制御コード、チェックコード、ストップコードから構成されている。さらに、A信号灯器制御コードは、G灯コード、Y灯コード、R灯コード、矢印1コード、矢印2コード、Y灯滅灯コード、R灯滅灯コード、全灯滅灯コード、及びその他情報コードから構成されている。各信号灯器20の灯に対応して、ビット情報が記録されている。具体的には、点灯の場合のビット情報は「1」で、滅灯の場合のビット情報は「0」である。灯器制御コードについても同様に構成されている。
【0027】
なお、信号灯器20には、固有の識別番号(ID)が付与されており、通信・灯駆動制御部32は、灯器制御コード中の灯器番号が自身のIDと一致した信号灯器制御コードを取得した場合、自身用の信号灯器制御コードであると判断する。信号灯器番号が不一致の信号灯器制御コードについては、通信・灯駆動制御部32は、次に接続されている信号灯器20にそのまま伝送する。
【0028】
つづいて、故障検出と制御の関係について説明する。
<1>通信故障検出について
(a)制御機50は、以下の条件の時に通信故障発生と判断する。
・信号灯器制御コードと異なる信号灯器番号(ID)を検出したとき。
・信号灯器制御コードを送信しても一定時間灯器表示コードが帰らないとき。
・信号灯器表示コード内のチェックコードに異常があるとき。
通信故障発生を検出すると、制御機50の通信制御部52は、所定の滅灯制御コードを送信する。次に通信制御部52は、その滅灯制御コードに基づいて制御された結果を示す表示制御コードを取得して、制御内容と同じであった場合は、上記異常について所定の記録領域に記録し、つぎの点灯状態を取得するまで継続制御する。一方で、滅灯制御が受け入れられない場合、つまり、灯器表示コードが正常に帰らない場合は、通信制御部52は、電源変換部51における電力供給を停止し、信号灯器20への給電を停止する。
【0029】
(b)信号灯器20は、以下の場合に通信故障発生と判断する。
・信号灯器制御コード内のチェックコードに異常があるとき。
・一定時間以上、自身用の信号灯器制御コードがこないとき。
上記通信故障発生を検出すると、信号灯器20の通信・灯駆動制御部32は、G灯41、Y灯42及びR灯43を所定の滅灯動作に移行する。
【0030】
<2>機器故障検出について
(a)制御機50は、以下の条件の時に機器故障発生と判断する。
・信号灯器制御コードが作成又は送信されない(灯器制御コードが一定間隔で出力していることの監視)。
・複数の信号灯器20で一定時間以上、G−G表示が発生したとき。なお、G−G表示とは、交差点において同時点灯が許されないG灯41の点灯組み合わせをいう。
上記の場合、通信制御部52は、電源変換部51を停止し、給電を停止する。
(b)信号灯器20は、以下の場合に機器故障発生と判断する。
・灯スイッチの故障で、複数の信号灯器20に出力があるとき(灯制御出力の監視)。
通信・灯駆動制御部32は、電力供給を停止し、G灯41、Y灯42及びR灯43を滅灯に制御する。
【0031】
以上の構成の交通信号制御システム10と従来システムとの主な相違点を纏めると以下の通りである。
(1)従来システムでは、信号灯器の点灯、滅灯制御は、制御機から直接交流電源をオン/オフさせていた。しかし、本実施形態の交通信号制御システム10では、信号灯器20への電源を直流として、制御機50(親機)から並列給電とした。
(2)制御機から灯器までを複数のケーブルで電源を給電していたものを、各信号灯器20の点灯、滅灯に関しては、制御機50からの通信指示で行い、その指示に応じて灯ごと(G灯41、Y灯42、R灯43ごと)に電力供給をオン/オフする構成とした。
(3)主道路と副道路に対するG−G表示の検出を制御機出力でおこなっていたが、各信号灯器20の表示コードを判断して、不正なG−G表示を検出し、給電を停止する構成とした。
【0032】
以上、本実施形態によると、本実施形態では、交差点内の信号制御に関する方式として、以下の特徴を有する。
(1)1対の電源線30bと1対の制御線30aで交差点内の信号灯器20を全て制御することができる。
(2)制御機50の指示を制御線30aで受け、信号灯器20内で、点灯、滅灯制御を行うことができる。
(3)通信故障または灯制御故障の故障検出機能を設けることで、その故障内容に応じて、自信号灯器20内または制御機50内の電源停止を行うことができる。
(4)制御機50からの単独制御のほか、図示しない中央装置(中央管制センター)からの遠隔制御を行うこともできる。
(5)直流電力を供給する構成としているので、電源線30bからの給電を太陽光エネルギやバッテリからの給電に転換することが容易となる。
(6)親灯器の設定によって制御機50の機能を信号灯器20に移管することが可能となる。つまり、制御機50を設けない構成とすることも可能となる。
(7)現場施工の工事量及び配索ケーブルの削減が可能となる。
【0033】
以上、本発明を実施形態をもとに説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素や処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0034】
10 交通信号制御システム
12 交差点
20 信号灯器
21 A信号灯器
22 B信号灯器
23 C信号灯器
24 D信号灯器
30 信号配線
30a 制御線
30b 電源線
31 電源供給部
32 通信・灯駆動制御部
33 故障検出部
33a 電圧検出器
41 G灯
42 Y灯
43 R灯
44 G灯スイッチ
45 Y灯スイッチ
46 R灯スイッチ
50 制御機
51 電源変換部
52 通信制御部
53 制御論理部
54 電源部
90 外部電源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の信号灯器と、前記信号灯器を制御する制御機とを備えた交通信号制御システムであって、
前記制御機から、前記信号灯器をシリアルでかつ環状に連結して配索され、前記信号灯器を駆動する制御信号が伝送される制御信号線と、
前記制御機と同電位に接続され、途中で分岐して前記複数の信号灯器のそれぞれに対して直流電力を供給する電源線と、
を備えることを特徴とする交通信号制御システム。
【請求項2】
前記制御機は、
交流電力を直流電力に変換する電力変換部と、
前記信号灯器に制御信号を出力する通信制御部と、を備え、
前記信号灯器は、
灯器の駆動を制御するとともに前記制御機と通信を行う通信・灯駆動制御部と、
前記灯器の駆動状態を検出する故障検出部と、を有し、
前記通信・灯駆動制御部は、前記制御機の前記通信制御部に対して前記故障検出部の検出結果を表示信号として送信することを特徴とする請求項1に記載の交通信号制御システム。
【請求項3】
前記通信制御部は、前記表示信号及び前記表示信号に対応する前記制御信号をもとに、故障が発生したと判断すると、前記電源線への電力供給を停止するように前記電力変換部を制御することを特徴とする請求項2に記載の交通信号制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54445(P2013−54445A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190732(P2011−190732)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001292)株式会社京三製作所 (324)
【Fターム(参考)】