説明

人体検知装置

【課題】センサ部および撮像/画像処理部による各々の検知条件を設置環境に適応できるように切り換えられる人体検知装置を提供する。
【解決手段】互いに異なる検知エリアAa,Abを持つ複数のセンサユニット1A,1Bを有するセンサ部1と、監視エリアVを撮影して移動物体を検知する撮像/画像処理部2とを備える。撮像/画像処理部2は、撮影した移動物体の大きさを判別するサイズ判別手段12と、移動物体が縦長か否かを判定する縦長判定手段13とを有する。少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応するセンサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力し、かつサイズ判別手段12と縦長判定手段13の両方を作動させる第1モードと、少なくとも一つの検知エリアに対応するセンサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力し、かつサイズ判別手段12を作動させる第2モードとに切り換えるモード切換手段19を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動物体の存在を検知するセンサ部と監視エリアを撮影して移動物体を検知する撮像/画像処理部とを用いて、人体をより確実に検知できる人体検知装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センサ部と撮像/画像処理部とを備えた人体検知装置として、センサ部が検知エリア内に存在する人体を検知したとき出力されるセンサ部検知信号と、撮像/画像処理部が検知エリアを含む監視エリアを撮影した画像信号に基づき人体を検知したとき出力される撮像/画像処理部検知信号との両方を信号処理して、その演算結果が人体の検知であると判定したときに人体検知信号を出力するものが知られている(特許文献1参照)。また、センサ部からセンサ検知信号が出力されたときに撮像/画像処理部を起動して、その撮像/画像処理部が撮影した画像信号を監視センターなどのモニタ画面に表示するようにしたものも存在する。
【0003】
【特許文献1】特開2006−178515号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のセンサ部と撮像/画像処理部とを備えた人体検知装置では、センサ部として一対のセンサ素子を上下方向に並べて二対配置し、これら二対のセンサ素子からセンサ部検知信号が同時または所定時間内に出力されたときに縦長の移動物体である人体の検知であると判定し、一方、撮像/画像処理部からの画像信号を信号処理して縦長の移動物体であると判別したときに人体の検知であると判定し、センサ部と撮像/画像処理部との人体の検知の判定が同時または一定時間内に行われることを検知条件として人体検知信号を出力している。
【0005】
しかしながら、設置環境が駐車場のような障害物の多い場所では、駐車している自動車の向こう側に人体が立っていると、人体の下半身が自動車に隠されてしまうため、上述のようにセンサ部および撮像/画像処理部の双方において縦長の移動物体を検知する検知条件を設定した場合には、身体の一部が自動車などの障害物に隠された人体を検知することができず、人体検知の失報が発生する。そのため、障害物の多い設置箇所には、人体の一部の検知により人体であると判別でき、かつ小動物などを誤検知しない検知条件を設定した専用の人体検知装置が望まれる。
【0006】
本発明は、センサ部および撮像/画像処理部による各々の検知条件を種々の設置環境に適応できるように同時に切り換えるようにして、種々の設置環境に設置した場合にも人体を高精度に検知できる汎用性を備えた人体検知装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る人体検知装置は、互いに異なる検知エリアを持つ複数のセンサユニットを有し、前記検知エリアからの検知線を受けて移動物体を検知するセンサ部と、前記検知エリアを含む監視エリアを撮影して移動物体を検知する撮像/画像処理部と、前記センサ部および撮像部からの検知信号を処理して人体検知信号を出力する信号処理部とを備え、前記撮像/画像処理部は、撮影した移動物体の大きさを判別するサイズ判別手段と、前記移動物体が縦長か否かを判定する縦長判定手段とを有し、さらに、少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段および縦長判定手段の両方を作動させる第1モードと、少なくとも一つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段を作動させる第2モードとに切り換えるモード切換手段を備えている。
【0008】
この構成によれば、モード切換手段により、障害物の少ない場所に適した第1モードに切り換えると、センサ部では、少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応した前記センサユニットが同時または所定時間内に移動物体を検知したときに移動物体である人体を検知したと信号処理部で判別することができ、一方、撮像/画像処理部では、撮影して画像処理した移動物体のサイズが一定以上の大きさであるとサイズ判別手段が判別し、かつ、その判別した移動物体が縦長であると縦長判定手段が判定したときに人体の検知であると判別するので、人体以外を移動物体として検知する誤報を効果的に防止することができる。また、駐車場のような障害物の多い場所に設置する場合には、モード切換手段で第2モードに切り換えれば、少なくとも一つの検知エリアに対応するセンサユニットが移動物体を検知し、かつ、撮像/画像処理部のサイズ判別手段が撮影した移動物体のサイズが一定以上の大きさであると判別したときに、人体の検知であると判別できるので、人体の検知漏れである失報の発生を効果的に防止することができる。したがって、この人体検知装置は、モード切換手段により検知条件を適宜切り換えることにより、種々の設置環境に適応して人体を高精度に検知できる汎用性を有している。
【0009】
本発明において、前記撮像/画像処理部の縦長判定手段は移動物体の縦横比により判定することが好ましい。これにより、縦長の移動物体である人体を、小動物など、縦長でない他の移動物体と区別して高精度に判別できる。
【0010】
本発明において、前記縦長判定手段は縦横比(=幅/高さ)が0.7以下の移動物体を縦長と判定することが好ましい。人体の縦長比は一般に0.2程度であるが、撮像部の画像信号の画像処理では撮影した人体の画像から首や足などが切れることがあるので、縦長比を0.7以下に設定すれば、人体の検知洩れを防止できる。
【0011】
本発明において、前記サイズ判別手段は、第2モード時の大きさ判別の下限値が第1モード時の2/3以下であることが好ましい。これにより、例えば、駐車場の自動車の向こう側に立っている人体は、通常、身体の下半身が自動車で隠れてしまって、設定したサイズの移動物体として画像に現れないので、第1モード時の立っている人体の大きさ判別値の2/3以下を大きさ判別の下限値に設定すれば、人体検知の誤報および失報を共に効果的に防止することができる。
【0012】
本発明において、複数のセンサユニットのセンサ素子を上下に2段または3段並べて、全てのセンサユニットから移動物体検知信号が出力することを人体の検知条件に設定すれば、小動物などの誤検知を排除して、縦長の移動物体である人体のみを効果的に検知することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の人体検知装置によれば、少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段および縦長判定手段の両方を作動させる第1モードと、少なくとも一つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段を作動させる第2モードとに切り換えるモード切換手段を備えているので、第1モードに切り換えると、縦長の移動物体である人体を、誤報を少なくして効果的に検知することができ、一方、第2モードに切り換えると、身体の一部が障害物に隠れている人体をも検知することができるので、切換部によって検知条件を適宜切り換えることによって種々の設置環境に適応できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しながら説明する。図1は本発明の第1実施形態に係る人体検知装置の光学系を示し、(a)はセンサ部1の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。検知現場には、移動物体を検知するセンサ部1と、監視エリアV1を撮影する撮像/画像処理部2とが設置されている。センサ部1には、(a)に示すように、横方向に並んだ二つの第1センサ素子4a,4aからなるセンサ対と、このセンサ対4a,4aの下方で横方向に並んだ二つの第2センサ素子4b,4bからなるセンサ対とが上下に配置されている。この実施形態では、センサ素子4a、4bとして、赤外線焦電素子が用いられおり、したがって、センサ部1は赤外線受動型(PIR)のものである。なお、センサ部1としては、赤外線受動型のものに限らず、赤外線反射型のような能動型センサを用いてもよい。
【0015】
図1(b),(c)に示すように、前記上下のセンサ素子4a,4bには、一つのフレネルレンズのような集光光学系3によって所定の検知エリアAa,Abが、水平方向および上下方向にそれぞれ複数割り当てられ、これらの各検知エリアAa,Abからそれぞれ放射される赤外線エネルギが、集光光学系3により集光されて対応する各センサ素子4a,4bに入射される。一方、撮像/画像処理部2は、後述するカメラにより、全ての検知エリアAa,Abを含む監視エリアV内を撮影する。
【0016】
図2は前記人体検知装置の電気系構成を示すブロック図である。センサ部1は上下に配置された二つのセンサユニット1A,1Bを有し、この両センサユニット1A,1Bは同一の回路構成になっている。センサユニット1A,1Bの赤外線検知部4は、横方向に配置されて互いに逆極性に直列接続された2個一対のセンサ素子4a,4aおよび4b,4bにそれぞれ入射した赤外線光束により発生する電荷が、高抵抗の入力抵抗R1を介して放電されるとともに、2個の抵抗R2,R3を介して直流電源+Bに接続された電解効果トランジスタFによりインピーダンス変換されるソースフォロワ構成になっている。そして、各一対のセンサ素子4a,4bに発生した電荷は互いに逆極性の信号となって取り出される。つまり、各一対のセンサ素子4a,4bは、いわゆるデュアルタイプとされている。ただし、各センサユニット1A,1Bの赤外線検知部4がセンサ素子を一つだけ有するシングルタイプを使用することもできる。
【0017】
前記各赤外線検知部4の出力信号は、アンプ5で増幅されたのち、比較回路からなるレベル検出回路7に入力される。レベル検出回路7は、入力信号の信号強度、すなわちセンサ素子4a,4bに入射した赤外線光束の変動率に対応した信号レベルを、しきい値設定部8に設定されたしきい値の検出レベルと常時比較しており、入力信号レベルが検出レベルを超えたときに、移動物体検知信号PDを出力する。
【0018】
一方、撮像/画像処理部2は、CCD撮像素子を用いたカメラ9を備えており、このカメラ9は、その視野を監視エリアV(図1)に向けた配置で設置され、動画を取得する。この撮像/画像処理部2は、さらに、カメラ9が撮影した動画を画像信号に変換する画像処理回路10、画像信号を2値化して移動物体を抽出する画像2値化回路11、その抽出した移動物体の大きさを判別するサイズ判別手段12および移動物体が縦長か否かを判定する縦長判定手段13を有している。
【0019】
前記画像処理回路10は、カメラ9から入力した動画信号に増幅や同期信号の付加などの所定の信号処理を施して、モニタに表示可能な画像信号に変換するとともに、フレーム毎の静止画を画像2値化回路11に対し出力する。画像2値化回路11は、高速処理を行うCPUからなり、フレーム間差分の処理、つまり1フレーム分の画像データを所定数に分割したブロックがそれぞれ有する画素数(例えば数十個)の画素群の輝度値の平均値が一定時間内に一定幅以上変化したブロックの数がしきい値を超えたときに、そのブロックを黒で塗り潰す画像処理を行うことにより、入力した画像信号を2値化して移動物体を抽出し、この2値化画像信号をサイズ判別手段12に対し出力する。
【0020】
前記サイズ判別回路12は、低速処理を行うCPUからなり、入力した2値化画像信号における黒に塗り潰されたブロックのうちの互いに隣接するブロックを1塊とする領域クラスタリング処理を行ったのち、その複数の領域クラスタの1塊の高さと幅から移動物体の面積を演算してサイズを算出し、算出したサイズが判別サイズ設定部14に設定されている判別サイズの範囲内であるか否かを判別する。判別サイズ設定部14は、後述する制御部18により、第1モードの設定時に判別大サイズに、かつ第2モードの設定時に判別小サイズにそれぞれ設定を切り換えられる。ここで、判別大サイズおよび判別小サイズは、大きさ判別の下限値のサイズを指し、大きさ判別の上限値は判別大サイズおよび判別小サイズ共に最も大きな人体の2〜10倍に相当する同一サイズであり、判別大サイズの下限値は最も小さな大人の人体と同一のサイズであり、判別小サイズの下限値は判別大サイズの下限値の1/3〜2/3の範囲内のサイズである。第1モードおよび第2モードのモード切り換えについては後述する。
【0021】
サイズ判別手段12は、第1モードの設定時に、算出したサイズが判別大サイズの範囲内であると判別したときに、領域クラスタリング処理を行った2値化画像信号VLを画像信号出力端子O1から出力し、後述するように縦長判定手段13を経て第1画像検知信号VLLが出力される。一方、サイズ判別手段12は、第2モードの設定時に、算出したサイズが判別小サイズの範囲内であると判別したときに、人体の検知であると判断して第2画像検知信号VSを検知信号出力端子O2から出力する。但し、判別サイズ設定部14には、撮像/画像処理部2が検知動作を開始する前の状態において、判別小サイズが判別開始条件として設定されており、サイズ判別回路12は、算出したサイズが設定された判別小サイズの範囲内であると判別したときに、検知信号出力端子O2から画像判別開始信号SVを出力する。
【0022】
前記縦長判定手段13は、サイズ判別回路12から入力する領域クラスタリング処理済みの画像信号から算出した移動物体の高さと幅に基づき移動物体の縦横比(幅/高さ)が予め設定された範囲内であるか否か、つまり2値化画像信号VLから抽出した移動物体が縦長の熱源である人体に対応した範囲内の縦横比を有しているか否かを判定して、その判定結果が範囲内の縦横比であると判定したときに、人体の検知であると判定して第1画像検知信号VLLを出力する。人体の全身の縦横比は0.2程度であるが、画像処理により抽出される人体は首や足の一部が切れた画像信号として抽出されることが多いので、判定される縦横比は、0.1以上で0.8以下となる。この実施形態では、誤報を少なくするために、縦横比0.7以下としているが、これに、0.1以上とする条件を付加して、0.1〜0.7としてもよい。より好ましい縦横比は0.5以下であり、さらに0.1〜0.5とするのが好ましい。
【0023】
センサ部1のセンサユニット1A,1Bから出力される移動物体検知信号PD、および撮像/画像処理部2の縦長判定手段13並びにサイズ判定手段12の検知信号出力端子O2からそれぞれ出力される第1および第2画像検知信号VLL,VSはそれぞれ信号処理部17に入力される。この信号処理部17は、装置のシステム全体を制御するマイクロコンピュータからなる制御部18を有しており、センサ部1および撮像/画像処理部2から入力する信号を処理して人体検知信号DEを出力する。また、制御部18は、切換スイッチからなるモード切換手段19の操作により入力されるモード切換信号が第1モードに切り換え設定するものである場合に、切換部20の三つのスイッチSW1〜SW3を同時に第1モード接点aに切り換え、一方、モード切換信号が第2モードに切り換え設定するものである場合に、切換部20の各スイッチSW1〜SW3を同時に第2モード接点bに切り換える制御を行う。
【0024】
第1モードは、障害物の少ない平坦な検知場所に設置する場合の通常モードであり、後述するように、少なくとも隣接する二つの検知エリアAa,Abに対応するセンサユニット1A,1Bの検知作動によりセンサ部検知信号D1を出力させるとともに撮像/画像処理部2のサイズ判別手段12および縦長判定手段13の両方を作動させる。他方、第2モードは駐車場などの障害物の多い場所に設置する場合の障害物モードであり、少なくとも一つの検知エリアAa,またはAbに対応する前記センサユニット1A,または1Bの検知作動によりセンサ部検知信号D2を出力させるとともに撮像/画像処理部2のサイズ判別手段12を作動させる。両モードの切り換えを行う前記スイッチSW1〜SW3はトランジスタのようなスイッチング素子を用いた電子回路により構成されたものであり、制御部18からの切換信号により切り換えられる。
【0025】
この人体検知装置では、検知動作を開始していないときに、撮像/画像処理部2およびセンサ部1が常に判別開始条件、すなわち、撮像/画像処理部2の判別サイズ設定部14に判別小レベルが、かつセンサ部1の検出レベル設定部に低い検出レベルがそれぞれ設定された状態に保持されている。これにより、撮像/画像処理部2および信号処理部17は人体以外の移動物体、例えば、人体よりも小さい移動物体をも検知することができ、検知したときに画像判別開始信号SVまたはセンサ部判別開始信号SDがそれぞれ出力される。具体的には、撮像/画像処理部2のサイズ判別手段12において、算出したサイズが判別開始条件である判別小サイズの範囲内であると判別したときに、検知信号出力端子O2から画像判別開始信号SVを制御部28の判別開始信号入力端子ISに対し出力する。一方、センサ部1では、二つのセンサユニット1A,1Bのうちの一方が検知作動して移動物体検知信号PDを出力したときに、信号処理部17の論理和回路16からセンサ部判別開始信号SDが制御部18の判別開始信号入力端子ITに対し出力される。これにより、制御部18は、撮像/画像処理部2およびセンサ部1をそれぞれ制御して、検知した移動物体が人体であるか否かの判別動作を開始する。
【0026】
モード切換手段19の操作により第1モードが設定されたときには、制御部18が、判別サイズ設定部14に判別大サイズを、かつしきい値設定部8に低い検出レベルをそれぞれ設定する。撮像/画像処理部12では、サイズ判別手段12が算出したサイズが判別大サイズの範囲内であると判別したときに2値化画像信号VLを画像信号出力端子O1から出力し、この2値化画像信号VLが切換部20のスイッチSW1を介して縦長判定手段13に入力され、縦長判定手段13が画像から抽出した移動物体の縦横比が設定範囲内であると判定して出力した第1画像検知信号VLLが制御部18の第1検知信号入力端子IVに入力される。センサ部1では、両センサユニット1A,1Bが検知作動して、移動物体検知信号PDが同時または短い所定時間内に出力されて論理積回路22に入力したときに、つまり、縦長の移動物体を検知したときに、論理積回路22からセンサ部検知信号D1が制御部18の第2検知信号入力端子IDに対し出力される。制御部18は、撮像/画像処理部検知信号VLLおよびセンサ部検知信号D1が共に同時または一定時間内に入力したときに、人体検知信号DEを出力する。
【0027】
一方、モード切換手段19の操作により第2モードが設定されたときには、制御部18が、判別サイズ設定部14に判別小レベルを、かつ、しきい値設定部8に高い検出レベルをそれぞれ設定する。撮像/画像処理部12では、サイズ判別手段12が算出したサイズが判別小サイズの範囲内であると判別して第2画像検知信号VSを出力すると、この第2画像検知信号VSがスイッチSW1を介して制御部18の第1検知信号入力端子IVにそのまま入力される。センサ部1では、両センサユニット1A,1Bのうちの少なくとも一方の検知動作により、移動物体検知信号PDが出力されて論理和回路21に入力したときに、つまり、縦長または縦長でない移動物体を検知したときに、論理和回路21からセンサ部検知信号D2が制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力される。制御部18は、第2画像検知信号VSおよびセンサ部検知信号D2が共に同時または一定時間内に入力したときに、人体検知信号DEを出力する。
【0028】
図3は図2の撮像/画像処部2および制御部18を含む画像センシング系の信号制御処理を示すフローチャートであり、図4は図2のセンサ部1および信号処理部17の信号制御処理を示すフローチャートである。先ず、図3を参照しながら、図2の手動のモード切換手段19により第1モードが設定されたときの制御処理について説明する。通常時には、撮像/画像処理部2の判別サイズ設定部14に判別小サイズに設定されて、撮像/画像処理部2が人体以外の移動物体であってもこれを容易に検知できる判別開始条件が設定されている(図3のステップS1)。したがって、サイズ判別手段12は、人体よりも小さな移動物体であっても、判定小サイズ以上であると判別したときに、画像判別開始信号SVを制御部18の判別開始信号入力端子ISに対し出力する。判別動作の開始前において、制御部18は、画像判別開始信号SVが入力したか否かの判別(ステップS2)を常時行っている。
【0029】
いま、制御部18において、画像判別開始信号SVが入力したと判別する(ステップS2)と、続いて、モード切換手段19のモード切換信号が第1モードを設定するものであるか否かを判別する(ステップS3)。ここで、障害物の殆ど存在しない平坦な場所を監視する目的で人体検知装置を設置した場合には、予めモード切換手段19の手動操作により第1モードに設定される。この第1モードの設定であると判別した制御部18は、切換部20に切換指令信号を出力して第1モード接点aに切り換える(ステップS4)とともに、判別サイズ設定手段14に設定指令信号を出力して人体に対応した判別大サイズ、つまり設定範囲のうちの下限値を大きな値に切り換え設定する(ステップS5)。
【0030】
撮像/画像処理部2のサイズ判別手段12は、領域クラスタリング処理を行って抽出した移動物体の画像を演算して算出したサイズが判別大サイズの設定範囲内であるか否かの判別を行い(ステップS6)、設定範囲内である場合に、人体の検知であると判定して、領域クラスタリング処理済みの2値化画像信号VLを画像信号出力端子O1から切換部20のスイッチSW1を介して縦長判定手段13に対し出力する。縦長判定手段13では、入力した2値化画像信号VLから抽出した移動物体の高さと幅に基づき演算して算出した移動物体の縦横比が予め設定された範囲内、つまり0.7以下の範囲内であるか否かの判定を行い(ステップS7)、縦横比が上記範囲内であると判定したときに、第1画像検知信号VLLを制御部18の検知信号入力端子IVに対し出力する(ステップS8)。
【0031】
なお、サイズ判別手段12が算出したサイズが判別大サイズの設定範囲内でないと判別した場合には、判別処理をキャンセルして、ステップS1にリターンする。例えば、小動物のような小さなサイズの移動物体を検知した場合には、算出したサイズが判別大レベルの範囲以下であり、急に照った太陽光や点灯した照明光を検知した場合には、算出したサイズが判別大レベルの範囲以上であり、いずれの場合にもサイズ判別手段12から縦長判定手段13に対して2値化画像信号VLが送出されない。これにより、誤検知を防止できる。
【0032】
つぎに、図4において、センサ部1においても、通常時には、しきい値設定部8に低い検出レベルが設定されて、センサ部1が人体以外の移動物体であってもこれを高い感度で容易に検知できる判別開始条件が設定されている(ステップS21)。制御部18は、センサ部判別開始信号SDの入力であると判別した(ステップS22)ときに、続いて、第1モードが設定されているか否かの判別を行う(ステップS23)。第1モードの設定であると判別したときは、切換部20が第1モードに切り換えられる(ステップS24)。このとき、センサ部判別開始信号SDよりも先に画像判別開始信号SVが制御部18に入力されている場合には、図3のステップS4で既に切換部20が第1モードに切り換えられているので、このステップS24では単に切り換えを確認するだけとする。続いて、信号処理部17の論理積回路22は、センサ部1の二つのセンサユニット1A,1Bから移動物体検知信号PDが同時または所定時間内に入力するのを待ち(ステップS25)、二つの移動物体検知信号PDが同時または所定時間内に入力したときに、センサ部検知信号D1を制御部18に対し出力する(ステップS26)。
【0033】
図4の「1」は図3の「1」の出力である。制御部18は、図3で説明した第1画像検知信号VLLと図4のセンサ部検知信号D1とが共に入力したか否かの判別を行い(ステップS27)、いずれか一方の検知信号VLL,D1が未入力であると判別したときに、自身に内蔵のタイマ回路18aを起動して所定時間(例えば、1秒)の計時を開始したのち、一定時間が経過したと判別する(ステップS28)まで、両検知信号VLL,D1が共に入力するのを待つ(ステップS27)。制御部18は、一定時間が経過する前に両方の検知信号VLL,D1が共に入力したと判別した(ステップS27)ときに、人体検知信号DEを出力する(ステップS29)。また、制御部18は、両方の検知信号VLL,D1が共に入力することなく一定時間が経過したと判別した(ステップS28)ときに、判別処理をキャンセルして、撮像/画像処理部2に判別開始条件の設定を行う(ステップS34)、つまり図3のステップS1にリターンし、さらに図4のステップS21にリターンして、撮像/画像処理部2およびセンサ部1に判別開始条件を設定する。
【0034】
したがって、障害物の殆どない場所に設置する場合には、モード切換手段19を操作して第1モードに設定すれば、撮像/画像処理部2において、サイズ判別手段12で画像信号の移動物体のサイズの画像が人体に対応したものであるか否かを判別して、対応するサイズであると判別した場合に限り、2値化画像信号VLを縦長判定手段13に対し送出し、縦長判定手段13で移動物体の画像の縦横比を判定するようにしているので、人体のみを高精度に検知することができる。すなわち、小動物などのように面積が小さく、かつ、縦長でない画像の移動物体を人体と誤検知するおそれがなく、また、太陽が急に照るか雲に隠れたり、設置場所の照明灯の点灯または消灯などにより赤外線エネルギが変動しても、そのサイズが所定範囲を大きく超えることから、サイズ判別手段12が2値化画像信号VLを縦長判定手段13に送出しないので、第1画像検知信号VLLが出力されることがない。
【0035】
一方、センサ部1では、縦長の人体を検知するために二つの赤外線検知部4の各一対のセンサ素子4a,4bを上下方向に配置して上下に並んだ検知エリアAa,Ab(図1)を設定し、両方のセンサユニット1A,1Bからの移動物体検知信号PDの論理積が成立したときのみセンサ部検知信号D1が出力されるから、これによっても縦長の移動物体である人体を正確に検知することができる。しかも、第1画像検知信号VLLとセンサ部検知信号D1とが同時あるいは一定時間内に出力されたときのみ人体検知信号DEを出力するようにしているので、誤報や失報の発生を一層効果的に防止できる。
【0036】
また、この人体検知装置は、駐車場などのように障害物の多い場所に設置する場合に、モード切換手段19を操作して第2モードを設定する。これにより、図3に示すように、制御部18は、第2モードが設定されていると判別した(ステップS3)ときに、切換部20を第2モード接点bに切り換える(ステップS9)。この第2モードでは、判別サイズ設定部14に設定すべき判別サイズが判別開始条件と同様の判別小サイズであるので、判別サイズ設定部14の判別レベルの切り換えを行わない。続いて、サイズ判別手段12は、算出したサイズが判別小サイズの範囲内であるか否かの判別を行う(ステップS10)が、このときの判別条件は画像判別開始信号SVを出力したときと同様であるので、検知信号出力端子O2から出力されている画像判別開始信号SVが第2画像検知信号VSとして切換部20のスイッチSW1を介し制御部18の検知信号入力端子IVに対し出力される(ステップS11)。すなわち、サイズ判別手段12は、人体に対応する判別大サイズに対し1/3〜2/3の下限値を有する判別小サイズの範囲内のサイズの画像を人体であると判別する。これにより、例えば、自動車の向かう側に存在する人体であっても、その人体の上半身の画像によって検知できることになる。
【0037】
一方、センサユニット1Aまたはセンサユニット1Bが移動物体を検知してレベル検出回路7から移動物体検知信号PDが論理和回路16に入力されると、論理和回路16からセンサ部判別開始信号SDが出力される。これにより、図4において、制御部18が、センサ部判別開始信号SDの入力であると判別し(ステップS22)、さらに、第1モードが設定されているか否かの判別を行い(ステップS23)、画像判別開始信号SVよりも先にセンサ部判別開始信号SDが入力した場合に、切換部20を第2モード接点bに切り換え(ステップS30)、画像判別開始信号SVの入力によって切換部20が既に第2モード接点bに切り換えられている場合はそれを確認する。続いて、制御部18は、センサ部1の各しきい値設定部8の検出レベルを高いレベルに切り換え設定して、センサ部1の検出感度を下げる(ステップS31)。信号処理部17の論理和回路21は、二つのセンサユニット1A,1Bのうちのいずれか一方から移動物体検知信号PDが入力されたときに(ステップS32)、センサ部検知信号D2を制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力する(ステップS33)。その他の作用は、第1モードの設定時と同様であり、制御部18は、第2画像検知信号VSとセンサ部検知信号D2の両方が、一定時間が経過するまでに入力したと判別した(ステップS27,S28)ときに、人体検知信号DEを出力する(ステップS29)。
【0038】
この第2モードの設定時には、図1(c)に示すように、例えば駐車場に駐車中の自動車AMの向こう側に人体H1が立っているような場合に、撮像/画像処理部2の撮像によって得られた人体H1の画像が、装置から見たときに自動車AMで隠されていない上半身部分だけの小さなサイズとなるが、この人体H1の上半身の画像サイズは、図2の判別サイズ設定部14に設定された判別小サイズの範囲内となり、第1画像検知信号VLLを出力することができる。また、人体の衣服の色が背景色と同じである場合や夜間の照明が不均一であって低照明の場所に人体が立っているような場合には、人体の全体の画像サイズを得られ難いが、このような場合であっても、第2モードに設定しておくことにより、人体の画像サイズが判別小サイズの範囲内であれば第2画像検知信号VSを出力することができる。
【0039】
一方、図1(c)のセンサ部1では、上下方向で隣接する二つの検知エリアAa,Abのうちの上方の検知エリアAa内に人体H1の肩から頭にかけての箇所が入っているので、上方のセンサ素子4a,4aを含むセンサユニット1Aのみで検知することができる。したがって、この人体検知装置は、モード切換手段19の操作により切換部20を切り換えて検知条件を適宜変更することにより、種々の設置環境に適切に対応することができる。
【0040】
また、撮像/画像処理部2のカメラ9は、人体の顔を確実に撮影することを目的として、センサ部1の検知エリアAa,Abよりも遠くの場所まで監視エリアVが延びるように視野を設定して設置される。そのため、カメラ9は、図1(c)に示すように装置の設置箇所よりも遠く離れた場所に立っている人体H2をも撮影することができ、この人体H2の画像は、遠く離れていることから、小さなサイズとなる。ところが、この人体H2の画像においても、近い人体H1の上半身の画像サイズと同様に、判別小サイズの範囲内のサイズであり、また、第2モードでは縦横比の判定を行わないので、撮像/画像処理部2で検知して第2画像検知信号VSを出力することができる。一方、センサ部1では、上下方向で隣接する二つの検知エリアAa,Abのうちの上方の検知リアAa内に人体H2の腹から腰にかけての箇所が入っているので、上方のセンサユニット1Aのみ、または人体H2の位置によっては下方のセンサユニット1Bのみで検知することができる。すなわち、第2モードに設定した場合には、装置の設置箇所から遠く離れた人体H2をも検知できる利点がある。
【0041】
図5は本発明の第2実施形態に係る人体検知装置の電気的構成を示すブロック図、図6は同人体検知装置の光学的構成を模式的に示す側面図であり、それぞれ、図2および図1(c)と同一若しくは相当するものには同一の符号を付して、重複する説明を省略する。撮像/画像処理部2は、第1実施形態の図2のものとは異なり、図5に示す単一のスイッチからなる切換部20Aを使用しており、この切換部20Aの切り換え動作により、サイズ判別手段12の画像信号出力端子O1および検知信号出力端子O2からそれぞれ出力する2値化画像信号VLと第2画像検知信号VSとが、縦長判定手段13と制御部18の検知信号入力端子IVとにそれぞれ切り換えて入力される。
【0042】
センサ部1は、2個一対のセンサ素子4cを備えて図2の赤外線検知部4と同一回路に構成されたセンサユニット1Cをさらに一つ追加して、これら三つのセンサユニット1A,1B,1Cの各々の2個一対のセンサ素子4a,4b,cが、上下方向に三段に配置されている。モード切換手段19は、設置場所から近距離の場所に存在する人体を主に検知するための近距離モードと、設置場所から近距離よりも離れた場所に存在する人体を主に検知するための中距離モードと、第1実施形態の第2モードと同様に障害物の多い場所に設置する場合の障害物モードの三つのモードに択一的に切り換えできるようになっている。つまり、近、中距離モードが第1モードであり、障害物モードが第2モードである。これに対応して、近距離モード用切換部20B、中距離モード用切換部20Cおよび障害物モード用切換部20Dを備えている。
【0043】
モード切換手段19により近距離モードが設定されたときには、近距離モード用切換部20Bが制御部18により破線で示す接続状態に切換制御され、三つのセンサユニット1A,1B,1Cからそれぞれ出力される移動物体検知信号PDを、接続状態の切換部20Bを介して信号処理部17Aの論理積回路23に導くように回路構成されている。したがって、近距離モードでは、三つのセンサユニット1A,1B,1Cからの各移動物体検知信号PDが論理積回路23に同時または所定時間内に入力したときに、論理積回路23からセンサ部検知信号D3が制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力される。
【0044】
モード切換手段19により中距離モードが設定されたときには、中距離モード用切換部20Cが制御部18により破線で示す接続状態に切換制御され、三つのセンサユニット1A,1B,1Cからそれぞれ出力する三つの移動物体検知信号PDのうちの各二つを、接続状態の切換部20Cを介して信号処理部17Aの三つの論理積回路24,25,27にそれぞれ導くとともに、各論理積回路24,25,27の各出力を論理和回路28に導くように回路構成されている。したがって、中距離モードでは、少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応するセンサユニット1A〜1Cが検知作動したとき、つまり三つのセンサユニット1A,1B,1Cのうちの二つまたは三つ(全部)から移動物体検知信号PDが論理積回路24,25,27にそれぞれ同時または所定時間内に入力したときに、論理和回路28からセンサ部検知信号D4が制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力される。センサ素子4aとセンサ素子4cは隣接していないが、図6に示すように、集光光学系3により複数個ずつ設定される検知エリアAa,Acは前後方向に隣接する。
【0045】
モード切換手段19により第2モードである障害物モードが設定されたときには、障害物モード用切換部20Dが制御部18により実線で示す接続状態に切換制御され、三つのセンサユニット1A,1B,1Cからそれぞれ出力する移動物体検知信号PDを、接続状態の切換部20Dを介して信号処理部17Aの論理和回路29に導くように回路構成されている。したがって、障害物モードでは、少なくとも一つの検知エリアAb〜Acに対応するセンサユニット1A〜1Cの検知作動、つまり三つのセンサユニット1A,1B,1Cのうちのいずれか一つ以上から移動物体検知信号PDが論理和回路29に入力したときに、論理和回路29からセンサ部検知信号D5が制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力される。
【0046】
なお、制御部18は、モード切換手段19により障害物モードが設定入力されたときに、第1実施形態での第2モードの設定時と同様に、撮像/画像処理部2の判別サイズ設定部14の判別サイズを判別小サイズに切り換えるとともに、センサ部1Aの各しきい値設定部8に高い検出レベルを切り換え設定するように制御し、近距離モードおよび中距離モードが設定されたときに、判別サイズ設定部14の判別サイズおよび各しきい値設定部8の検出レベルを第1実施形態での第1モードの設定時と同様に切換制御する。また、制御部18は、人体を検知していない時に、障害物モードの設定時と同様の判別開始条件、つまり判別サイズ設定部14の判別サイズを判別小サイズに設定し、各しきい値設定部8を高い検出レベルに設定する。
【0047】
図7は図5の撮像/画像処理部2および制御部18を含む画像センシング系の信号制御処理を示すフローチャートであり、図8は図5のセンサ部1および信号処理部17の信号制御処理を示すフローチャートである。これらの図において、図3および図4と同一の制御処理を行うにステップについては同一のステップ番号を付して、重複する説明を省略する。図7の撮像/画像処理部2の制御処理は、第1実施形態の図3とほぼ同様の信号制御処理が行い、相違するのは、画像判別開始信号SVの入力であると判別した(ステップS2)のち、モード切換ステップS19により障害物モードが設定されているか否かを判別し(ステップS3)、障害物モードである場合に第1実施形態の第1モードと同様の信号制御処理を行い、障害物モードでない、つまり近距離モードまたは中距離モードのいずれかの設定であると判別した(ステップS3)ときに、第1実施形態の第2モードと同様の信号制御処理を行うことだけである。
【0048】
センサ部1の制御処理を示す図8において、制御部18は、論理和回路16からセンサ部判別開始信号SDが入力したか否かを常時監視し(ステップS22)して、センサ部判別開始信号SDが入力したと判別したときに、モード切換手段19から障害物モードが設定入力しているか否かを判別し(ステップS35)、障害物モードの設定であると判別したときに、障害物モード用切換部20Dを接続状態に切り換える(ステップS36)。ここでは、判別開始条件の設定時に障害物モード用切換部20Dが既に接続状態に切り換えられているので、それを確認する。続いて、センサ部1の各しきい値設定部8の検出レベルを高いレベルに切り換え設定して、各センサユニット1A,1B,1Cの検出感度を下げる(ステップS37)。信号処理部17Aの論理和回路29は、三つの赤外線検知器4A〜4Cのうちのいずれか一つから移動物体検知信号PDが入力するのを監視し(ステップS38)、入力したときにセンサ部検知信号D5を制御部18の第2検知信号入力端子IDに対し出力する(ステップS39)。この信号制御処理は第1実施形態における第2モードの設定時と同様である。
【0049】
一方、制御部18は、障害物モードの設定でないと判別した(ステップS35)ときに、続いて、近距離モードが設定されているか否かを判別し(ステップS40)、近距離モードの設定であると判別したときに、近距離モード用切換部20Bを接続状態に切り換えて近距離モードを設定する(ステップS41)。これにより、信号処理部17Aの論理積回路23は、各センサユニット1A,1B,1Cから同時または所定時間内に移動物体検知信号PDが入力するのを監視し(ステップS42)、その入力があったときに、センサ部検知信号D3を制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力する(ステップS43)。
【0050】
また、制御部18は、ステップS40で近距離モードの設定でないと判別したときに、中距離モードの設定であると判断して、中距離モード用切換部20Cを接続状態に切り換えて中距離モードを設定する(ステップS44)。これにより、信号処理部17Aの三つの論理積回路24,25,27は、それぞれ三つのセンサユニット1A,1B,1Cのうちの少なくとも隣接する二つ、つまり各二つまたは三つ全部から同時もしくは所定時間内に移動物体検知信号PDが入力するのを監視し(ステップS45)、その入力があった論理積回路24,25,27から論理和回路28を介してセンサ部検知信号D4が制御部18の検知信号入力端子IDに対し出力される(ステップS46)。なお、図8の「2」は図7の「2」の出力であり、制御部18は図4と同一のステップS27〜S29を実行して、人体検知信号DEを出力する。
【0051】
この第2実施形態の人体検知装置では、モード切換手段19の操作によりモードを切り換えることにより、駐車場などの障害物の多い場所での人体の検知や、来訪者に対して合成音声により案内を行うために近距離まで進入した人体の検知または不法侵入者の検知などの設置環境に対応して検知条件を的確に切り換えて、人体を効果的に検知することができるので、1台で多くの設置環境に適応できる汎用性を有している。また、人体の衣服の色が背景色と同じである場合や夜間の照明が不均一であって低照明の場所に人体が立っているような場合には、人体の全体の画像サイズを得られ難いが、このような場合であっても、第2モードである障害物モードに設定しておくことにより、人体の画像サイズが判別小サイズの範囲内であれば第2画像検知信号VSを出力することができる。
【0052】
なお、センサ部1は四つ以上のセンサユニットを備えたものとしてもよい。
【0053】
図9は本発明の第3実施形態に係る人体検知装置の光学系を示し、(a)はセンサ部1の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。図9(a)において、センサ部1は、1対の第1センサ対4a,4aを有する第1センサユニット1Aと1対の第2センサ対4b,4bを有する第2センサユニット1Bとを有し、第1センサ素子4aと第2センサ素子4bとを交互に配して横方向(水平方向)に一列配置に設けている。両センサ対は図2のブロック図と同様の電気回路に接続されて図2のセンサユニット1A,1Bに構成されている。また、この第3実施形態の人体検知装置は、図2のブロック図と同様の電気回路を有して、図3および図4のフローチャートと同様の制御処理が行われる。
【0054】
この人体検知装置のセンサ部1は、第1センサ素子4aと第2センサ素子4bとを交互に配して横方向に一列配置に設けているので、各センサ素子4a,4bを小さな間隔で配列して、各センサ素子4a,4bによる検知エリアAa,Abを一定の領域内に密に設定することができる。つまり、デュアルタイプのセンサユニットにおいては、一つのセンサユニット、例えばセンサユニット1Aの二つのセンサ素子4a,4aの検知エリアAa,Aaを近接させると、図2で説明したとおり、センサ素子4a,4aが逆極性であるために人体検知時に赤外線検知部4から出力される信号が打ち消されるおそれがあるので、検知エリアAa,Aaの間隔をある程度大きくする必要がある。
【0055】
これに対し、この実施形態では、第1および第2のセンサユニット1A,1Bのセンサ素子4a,4bを交互に配しているから、二つの検知エリアAa,Abを小さな間隔で配列しても、信号打ち消しの可能性が低い。したがって、この人体検知装置は、各検知エリアAa,Abの間隔を小さくして狭い領域に多くの検知エリアAa,Abを設定したい場合に好適なものとなる。
【0056】
また、センサ部1は、二つのセンサ対4a,4bを横方向に配置しているので、第1実施形態のセンサ対を上下に並べる場合のように人体の高さに対応した間隔でセンサ対を配置しなければならない制限がなくなり、図9(c)に示すように、集光光学系3によって上下方向に複数割り当てる検知エリアAa,Abは、図1(c)の場合よりも上下方向の幅を大きく設定することができる。そのため、各センサ素子4a,4bには、人体H1,H2のほぼ全体からの赤外線エネルギが集光光学系3で集光されて入射するので、検出感度が高くなる。
【0057】
さらに、二つの赤外線検知器4の検知エリアAa,Abを横方向に配置しているので、障害物の存在によって二つのセンサユニット1A,1B(図2)のうちの一方から移動物体検知信号PDが出力されない場合があるが、第1実施形態と同様に、駐車場などの障害物の多い場所に設置する場合には第2モードに設定することにより、移動する人体が障害物から離れたタイミングで、二つのセンサユニット1A,1Bのうちの少なくとも一方から移動物体検知信号PDが出力されることになり、人体の検知であると判別するので、支障がない。特に、人体の衣服の色が背景色と同じである場合や夜間の照明が不均一であって低照明の場所に人体が立っているような場合には、人体の全体の画像サイズを得られ難いが、このような場合であっても、第2モードに設定しておくことにより、人体の画像サイズが判別小サイズの範囲内であれば第2画像検知信号VSを出力することができる。
【0058】
第1モードでは、隣接する二つの検知エリアAa,Abを持つ二つのセンサユニット1A,1Bが移動する人体H2を検知したときに始めて、移動物体検知信号PDが出力されるから、誤報が少なくなる。
【0059】
図10は本発明の第4実施形態に係る人体検知装置の光学系を示し、(a)はセンサ部1の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。図10が図9と相違するのは、センサ部1において、二つの第1センサ素子4a,4aからなるセンサ対の横に、第2センサ素子4b,4bからなるセンサ対が配置された構成のみであり、両センサ対は図2のブロック図と同様の電気回路に接続されている。この第4実施形態の人体検知装置は、第3実施形態のセンサ部1と比較して、それぞれ一対のセンサ素子4a,4aの検知エリアAa,Aaを大きな間隔を設けて配置する必要があるが、第3実施形態のセンサ部1と同様に、二つのセンサ対を人体の高さに対応した間隔で配置しなければならない制限がなくなる。その結果、図10(c)に示すように、集光光学系3によって上下方向に複数割り当てる検知エリアAa,Abの上下方向の幅を大きく設定することができるから、各センサ素子4a,4bには、人体H1,H2のほぼ全体からの赤外線エネルギが集光光学系3で集光されて入射するので、検出感度が高くなる。
【0060】
また、第1モードに設定することにより二つのセンサユニット1A,1B(図2)が移動する人体H2を検知したときに始めて、移動物体検知信号PDが出力されるから、誤報が少なくなり、第2モードに設定することにより、障害物の多い場所でも移動する人体を検知できる。
【0061】
なお、前記第3および第4実施形態のように2対のセンサ素子を横方向に並べる場合にも、センサ部に三つ以上のセンサユニットを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の第1実施形態に係る人体検知装置を示し、(a)はセンサ部の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。
【図2】同上の人体検知装置の電気系構成を示すブロック図である。
【図3】図2の撮像/画像処理部および制御部を含む画像センシング系の信号制御処理を示すフローチャートである。
【図4】図2のセンサ部および信号処理部の信号制御処理を示すフローチャートである。
【図5】本発明の第2実施形態に係る人体検知装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図6】同上の人体検知装置の光学的構成を模式的に示す側面図である。
【図7】図5の撮像/画像処理部および制御部を含む画像センシング系の信号制御処理を示すフローチャートである。
【図8】図5のセンサ部および信号処理部の信号制御処理を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第3実施形態に係る人体検知装置を示し、(a)はセンサ部の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る人体検知装置を示し、(a)はセンサ部の概略正面図、(b),(c)は光学的構成を模式的に示す平面図および側面図である。
【符号の説明】
【0063】
1 センサ部
1A,1B,1C センサユニット
2 撮像/画像処理部
4a,4b,4c センサ素子
12 サイズ判別手段
13 縦長判定手段
17,17A 信号処理部
19 モード切換手段
20,20A〜20D 切換部
Aa、Ab 検知エリア
V 監視エリア
D1〜D5 センサ部検知信号
DE 人体検知信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる検知エリアを持つ複数のセンサユニットを有し、前記検知エリアからの検知線を受けて移動物体を検知するセンサ部と、
前記検知エリアを含む監視エリアを撮影して移動物体を検知する撮像/画像処理部と、
前記センサ部および撮像部からの検知信号を処理して人体検知信号を出力する信号処理部とを備え、
前記撮像/画像処理部は、撮影した移動物体の大きさを判別するサイズ判別手段と、前記移動物体が縦長か否かを判定する縦長判定手段とを有し、
さらに、少なくとも隣接する二つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段および縦長判定手段の両方を作動させる第1モードと、少なくとも一つの検知エリアに対応する前記センサユニットの検知作動によりセンサ部検知信号を出力させるとともに前記撮像/画像処理部のサイズ判別手段を作動させる第2モードとに切り換えるモード切換手段を備えた人体検知装置。
【請求項2】
請求項1において、前記撮像/画像処理部の縦長判定手段は移動物体の縦横比により判定する人体検知装置。
【請求項3】
請求項2において、前記縦長判定手段は縦横比が0.7以下の移動物体を縦長と判定する人体検知装置。
【請求項4】
請求項1,2または3において、前記サイズ判別手段は、第2モード時の大きさ判別の下限値が第1モード時の2/3以下である人体検知装置。
【請求項5】
請求項1または2において、前記複数のセンサユニットのセンサ素子は、上下に2段または3段並べられている人体検知装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−43136(P2009−43136A)
【公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−209096(P2007−209096)
【出願日】平成19年8月10日(2007.8.10)
【出願人】(000103736)オプテックス株式会社 (116)
【Fターム(参考)】