説明

人員拘束装置用ガス発生器

【課題】異常燃焼による過剰圧からハウジングの破壊を防止するガス発生器の提供。
【解決手段】ハウジング16内には、底面44と天井面32に固定された内筒の内外に点火手段室18と燃焼室20が形成されている。内筒の周壁部23には、点火手段室18と燃焼室20を連通するための4〜10個の伝火孔52があり、伝火孔52と天井面32までの間に過剰圧で破壊され、内容積を増大させる脆弱部を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載するエアバッグ装置等の人員拘束装置用ガス発生器に関する。
【背景技術】
【0002】
車両に搭載するエアバッグ装置で使用するガス発生器のうち、パイロ型ガス発生器では、外殻容器となるハウジング内にガス発生源となるガス発生剤が収容されている。
作動時においてガス発生剤が燃焼して高温ガスが発生したとき、ガスはハウジングに形成されたガス排出口から噴出され、エアバッグを膨張展開させる。この過程において、ハウジングが内圧の上昇に十分に耐える程度の強度を有している。
【0003】
しかしながら、何らかの理由でガス発生器が異常燃焼し、ハウジングに対して設計強度を超えるような過剰圧が加えられてハウジングが破壊されたようなときであっても、その破壊により乗員がけがをするような異常事態になることは避けなければならない。
特許文献1には、このような異常事態が生じた場合に対応する技術が開示されている。
【0004】
図1のガス発生器は、ハウジング12内に配置されたイグナイターサポートチューブ30内にイグナイター18が収容されている。
前記チューブ30は、ハウジング12の両端面(底面と天井面)に固定されており、壁34側には複数の孔(伝火孔)40が形成されている。図1に示されている孔40は13個であるから、チューブ30全周には少なくも26個の孔が形成されているものと認められる。
【0005】
図2は、図1のガス発生器の作動後の状態(異常燃焼による過剰圧が加えられた状態)を示している。ハウジング12は壁34側に突き出されるように膨張変形しており、チューブ30は孔40が形成された部分で切断されている。
このようにチューブ30の孔40が形成された部分が脆弱部となることによって、ハウジング12内に過剰圧が加わったときにチューブ30が切断され、内容積を増大させて内圧を低下させることができ、それによりハウジング12の破壊が防止されるようになっている。
壁34を内側に凹んだ形状にすることで強度が高くなるよう、またチューブ30のフレア部31との接合面積を広くしている。
【0006】
特許文献1では、孔40が形成された周方向への帯状部分が脆弱部となっているため、上記したように多数の孔40を形成する必要がある。
この場合には、多数の孔40を狭い間隔で形成しなければならないことから、穿孔作業が困難になり、孔40が形成された帯状部分の強度を維持するためにチューブ30自体を肉厚にする必要もあり、ガス発生器の質量増加につながる。
また孔40は、イグナイター18を作動させて発生させた火炎等を噴出させてプロペラント14を着火燃焼させるものであるから、プロペラント14全体への着火性を考えると、その高さ位置が余り壁34側に近くない方が望ましいことになる。特に特許文献1では、孔40とガス排出口24がともに壁34側にあり、孔40が壁34側にあまり近いと、燃焼室の反対側にあるプロペラント14への着火性が低下する。
しかし、作動(図2)の状態で壁34に固着した状態で残るチューブ30の長さをできるだけ短くするためには、孔40が形成される部分を壁34により近い位置にする必要があり、プロペラント14は一端側から着火され、他端側に燃焼が進行していくことになるため、着火性の点で問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】WO94/25315
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、正常な作動時における燃焼室内のガス発生剤の高い着火性を維持したまま、万一の異常燃焼にも対応することができる人員拘束装置用のガス発生器を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、課題の解決手段として、
ガス排出口を有するディフューザシェルとクロージャシェルからなるハウジングを有しており、
ハウジング内には、点火手段が収容された点火手段室とガス発生剤が収容された燃焼室が形成されており、
点火手段室がハウジング内に配置された内筒の内側に形成され、燃焼室が内筒の外側に形成されており、
内筒が、
両端開口部がハウジング底面と天井面に固定されたものであり、
周壁部において、点火手段室と燃焼室を連通する伝火孔を有しており、
伝火孔とハウジング天井面までの間の周壁部に脆弱部を有しているものである、人員拘束装置用ガス発生器を提供する。
【0010】
ガス発生器をエアバッグ装置に組み込むとき、ガス排出口を有するディフューザシェル側にエアバッグが配置され、ガス排出口から噴出されたガスにより膨張するようにされる。
よって、本発明のガス発生器では、ガス排出口を有するディフューザシェル側が天井面となり、天井面と正対するクロージャシェル側が底面となる。そして、天井面側が乗員側になる。
【0011】
本発明のガス発生器は、点火手段室を形成する内筒の伝火孔とハウジング天井面までの間の周壁部において脆弱部が形成されているものである。
異常燃焼時には前記脆弱部において内筒が切断されて内部容積を増加させることで、ハウジングが破損することを防止する。
また、内筒が切断されるときでも、ハウジング天井面に近い位置において切断されるため、ハウジング天井面に固着した状態で残存する内筒はごく一部となる。ハウジング天井面に残る内筒の残部が大きいと、ハウジング天井面が変形したとき、内筒の残部により天井面にさらに荷重が加えられ、天井面が破壊されることが考えられる。しかし、本発明であればハウジング天井面が破壊されることが防止される。
脆弱部は、ガス発生器が正常に作動するときの圧力には十分に耐えることができるが、異常燃焼したときの過剰圧によって、破壊(切断や開裂等)する部分である。
なお、異常燃焼は、燃焼室内のガス発生剤や点火手段室の点火薬が異常燃焼することであるから、脆弱部は過剰圧で破壊されることになる。
【0012】
点火手段室と燃焼室を連通するための伝火孔は、4〜10個と数が少ないため、穿孔作業も容易になり、伝火孔が形成された内筒周壁部の強度も維持することができる。
さらに伝火孔は脆弱部よりも高さ方向中央よりに形成できるため、燃焼室内のガス発生剤の着火性も損なわれることがない。
【0013】
本発明のガス発生器では、脆弱部の形成位置は、伝火孔とハウジング天井面までの間の周壁部であればよいが、ハウジング底面から天井面までの高さの80%超える高さの天井面側の周壁部であることが好ましい。
【0014】
本発明のガス発生器では、伝火孔は、ハウジング底面から天井面までの高さの50%を超える高さの天井面側の周壁部において、点火手段室と燃焼室を連通するため、周方向に1列当たり4〜8個が形成され(1列又は異なる高さ位置に2例以上形成することができる)、脆弱部は、ハウジング底面から天井面までの高さの80%超える高さの天井面側の周壁部に形成されているものにすることができる。
【0015】
脆弱部は、異常燃焼による過剰圧が加えられたときに優先的に破壊される部分であり、次のいずれかにすることができる。
(I)脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の燃焼室側のみが薄くなっているもの。
(II)脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の点火手段室側のみが薄くなっているもの。
(III)脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の燃焼室側と点火手段室側の両方が薄くなっているもの。
(IV)(I)〜(III)のいずれかの薄肉部にすることで、前記薄肉部とハウジング天井面とを溶接するときの接触面積が小さくなり、溶接強度が低下された溶接部。
なお、周壁部の肉厚を薄くする方法としては、例えば切削加工を適用することができる。
【0016】
本発明のガス発生器は、内筒の形状とハウジング天井面との構造を組み合わせることで脆弱部を形成することもできる。
その1つとして、
内筒が、一端開口部側の端縁部において、軸方向に形成され、かつ周方向に交互に配列された複数の凹凸を有しているものであり、
ハウジング天井面が内側に突き出された円柱状凸部を有しており、
ハウジング天井面の円柱状凸部に内筒の凹凸を有する開口部が嵌め込まれ、内筒の凹部が円柱状凸部の外周面で閉塞されているものにすることができる。
この構造のガス発生器では、内筒の凸部はハウジング天井面に溶接固定されているが、内筒の凹部はハウジング天井面とは接触していないため、接触面積が小さいことから脆弱部となる。
【0017】
この構造のガス発生器では、正常な作動時においては、点火手段室で発生させた火炎等が伝火孔のみから放出される。
そして、異常作動時においては、内筒の凹凸の凸部がハウジング天井面から外れて、凹部と円柱状凸部との間に隙間が生じることで内部容積が増加される。
【0018】
また、他の1つとして、
内筒が、一端開口部側の端縁部において、軸方向に形成され、かつ周方向に交互に配列された複数の凹凸を有しているものであり、
ハウジング天井面が外側に突き出された円柱状凸部を有しており、
ハウジング天井面の円柱状凸部に内筒の凹凸を有する開口部が嵌め込まれ、内筒の凹部が円柱状凸部の内周面で閉塞されているものにすることができる。
この構造のガス発生器では、内筒の凸部はハウジング天井面に溶接固定されているが、内筒の凹部はハウジング天井面とは接触していないため、接触面積が小さいことから脆弱部となる。
【0019】
この構造のガス発生器では、正常な作動時においては、点火手段室で発生させた火炎等が伝火孔のみから放出される。
そして、異常作動時においては、内筒の凹凸の凸部がハウジング天井面から外れて、凹部と円柱状凸部との間に隙間が生じることで内部容積が増加される。
【発明の効果】
【0020】
本発明のガス発生器は、ハウジング内部に異常燃焼が生じて過剰圧が発生したときのハウジングの破壊を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】(a)は、本発明のガス発生器の軸方向断面図(半分側のみ)の作動前の状態を示し、(b)は、(a)のガス発生器が異常燃焼して過剰圧が発生したときの状態を示している。
【図2】(a)は、本発明の別実施形態であるガス発生器の軸方向断面図(半分側のみ)の作動前の状態を示し、(b)は、(a)のガス発生器が異常燃焼して過剰圧が発生したときの状態を示している。
【図3】(a)は、本発明の別実施形態であるガス発生器の軸方向断面図(半分側のみ)の作動前の状態を示し、(b)は、(a)のガス発生器が異常燃焼して過剰圧が発生したときの状態を示している。
【図4】(a)は、本発明の別実施形態であるガス発生器の軸方向断面図(半分側のみ)の作動前の状態を示し、(b)は、(a)のガス発生器が異常燃焼して過剰圧が発生したときの状態を示している。
【図5】(a)は、本発明の別実施形態であるガス発生器で使用する内筒の斜視図、(b)、(c)は、(a)の内筒を使用した別実施形態の軸方向部分断面図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<図1のガス発生器>
図1(a)に示すガス発生器10は、ディフューザシェル12とクロージャシェル14からハウジング16が形成されている。
ハウジング16の外径と軸方向の高さは、外径/高さ=0.8〜3の範囲であるものが本発明の効果を得るためには適している。
【0023】
ハウジング16内には、点火手段室18と燃焼室20を分ける内筒22が配置されている。
点火手段室18内には、点火器24及び伝火薬26が配置されている。燃焼室20には、ガス発生剤28と筒状フィルタ30が配置されている。伝火薬26は、公知の黒色火薬等のほか、ガス発生剤を使用することができる。
【0024】
ディフューザシェル12は、ステンレスや鉄の板がプレス成形されたもので、円形の天板32と、この天板32の外縁に形成される周壁34、周壁34の下端部に半径方向外側に延在するフランジ36を有している。天板32の内側面が天井面32aとなる。
周壁34にはガス排出口38が形成され、ハウジング16の内側からシールテープ40で閉塞されている。
【0025】
クロージャシェル14は、ステンレスや鉄の板がプレス成形されたもので、中央部に孔が形成された円形の底板44と、底板44の外縁に形成される周壁46と、周壁46の上端部に半径方向外側に延在するフランジ48を有している。底板44の内側面が底面44aとなる。
底板44の中央部の孔は、ハウジング16の内側に折れ曲げられて曲折部50が形成されている。
フランジ48は、ディフューザシェル12のフランジ36と重ねあわされて溶接されている。
【0026】
内筒22は、ハウジング16の中心軸Xと同心に配置されている。
内筒22の周壁部23の一端部(上端)は外側に拡張したフランジ22aとなっており、このフランジ22aがディフューザシェル12の天板32の内側に溶接にて取り付けられている。なお、この実施形態では、フランジ22aは天板32に溶接固定されているものであるため、周壁部23には含まれないものとする。
内筒22の周壁部23の反対端部(下端)はクロージャシェル14の孔に対して嵌めこまれ、曲折部50の内周面との当接部が溶接で固定されている。
内筒22の周壁部23には、燃焼室20と点火手段室18を連通する複数の伝火孔52が形成されており、図示していないシールテープで外側(燃焼室20側)から閉塞されている。
【0027】
伝火孔52は、1列が4〜10個の範囲で形成されており、好ましくは1列が4〜8個の範囲で周方向に均等間隔で形成されている。伝火孔52の数を前記範囲にすることで、伝火孔52が形成された内筒22の周壁部23の強度を高いレベルで維持することができる。
図1では、伝火孔52は1列のみ形成されているが、異なる高さ位置に2例以上形成することもできる。
伝火孔52の内径(開口径)は、1〜4mmが好ましく、1.5〜3mmがより好ましい。
伝火孔52は、底面44aから天井面32aまでの高さの50%を超える高さの天板32側の周壁部23に形成されており、好ましくは前記範囲の60%〜80%未満の高さ範囲であり、より好ましくは60〜70%の範囲である。
【0028】
脆弱部56は、伝火孔52と天板部(天井面)32までの間の周壁部23に形成されており、図1では、周壁部23とフランジ22aの境界部分に形成されている。
好ましくは底面44aから天井面32aまでの高さの80%を超える高さ、より好ましくは85〜95%の高さ範囲の天井面32a側の周壁部23に形成されている。
脆弱部56は、燃焼室20側の周壁部23の肉厚が薄くなった溝から形成されている。脆弱部56は、周方向に連続した1本の溝からなるものであるが、不連続の溝であってもよいし、複数本の溝からなるものでもよい。
脆弱部56は、燃焼室20内のガス発生剤28の正常燃焼では開裂等せず、異常燃焼による過剰圧によってのみ開裂等するものである。異常燃焼時の過剰圧とは、例えば、ハウジング16の内部圧力が設計圧力の1.6倍以上になった場合である。
【0029】
内筒22の反対端部22bは肉厚が薄くなっており、この部分がかしめられて点火器24が固定されている。薄肉のかしめ部分はかしめ作業を容易にするためのものであり、脆弱部56の作用するものではない。
【0030】
次に、図1(a)で示すガス発生器の動作を説明する。
衝突衝撃をセンサ(図示せず)で感知したとき、点火器24が作動する。そして、伝火薬26が着火して高温の火炎を生成する。この火炎は伝火孔52より噴出し、燃焼室20のガス発生剤28を点火する。
ガス発生剤28が燃焼して高温・高圧のガスを生成し、この燃焼ガスは、フィルタ30を通過し、冷却濾過された状態でシールテープ40を破ってガス排出口38から排出され、エアバッグ(図示せず)を膨張させる。
【0031】
このように正常モードでガス発生器10が作動する場合は、ハウジング16および内筒22は、発生する圧力に十分耐えうるように設計されており、また各溶接部(フランジ36とフランジ48の接合部、天板32と内筒22のフランジ22aとの接合部、曲折部50と内筒22の反対端部との接合部)も発生した圧力に耐えるように溶接されている。
脆弱部56も通常モードで発生するハウジング16の内圧に耐えるように形成されている。
よって、このような正常な作動であれば、ハウジング16が過度に変形したり、脆弱部56が開裂したりすることがない。
【0032】
万が一何らかの理由でハウジング16内部の圧力が異常に上昇したとき、ハウジング16が圧力に耐えかねて破壊することが考えられる。
図1(b)は、図1(a)のガス発生器の内部圧力が設計以上に上昇し、内筒22が脆弱部56から開裂した場合を図示している。
過剰圧を受けて天板32および底板44は大きく膨張変形する。このとき、内筒22のフランジ22aと天板32との接合面積は大きく、内筒22の反対端部は曲折部50との接合面積が大きくなっているため、内筒22は脆弱部56から千切れて第1付着片60が天板32に付着して残る。
一方、底板44には、脆弱部56から下側(底板44側)の内筒22が第2付着片62として残った状態となっている。
天板32および底板44が変形したとき、天板32側に大きな量の付着片が残っていた場合には、慣性力によって天板32の変形量が大きくなり、付着片が残った部分から破壊されることが考えられる。
しかし、内筒22が脆弱部56で千切れることで、天板32側には小さな量の第1付着片60が残るため、天板32が破壊されることはない。
【0033】
過剰圧によりハウジング16が破壊されると、ガス発生器10の構成部品がどのような破片になるかが予測困難であるため、乗員への影響を回避することが困難となる。
本発明のガス発生器では、過剰圧が発生した場合でも、ハウジング16が破壊されることが防止できるので、万が一にもガス発生器10が異常な燃焼モードに陥っても、乗員側への影響を回避することができる。
【0034】
(2)図2のガス発生器
図2は、本発明の別の実施態様を含むガス発生器100の断面図(半分)を示している。図1と同じ構成は同じ番号を示し、異なっている部分のみ説明を加える。
【0035】
図2(a)のガス発生器100は、図1(a)とは内筒に形成された脆弱部が異なっている。
図2(a)で示す内筒122は、天板32側の周壁部123の端面(周壁部端面)123aは、燃焼室20側の肉厚が周方向に連続して薄くなっている。図2(a)では、薄肉部の肉厚は周方向に均一になるように形成されているが、天板32側が最も薄くなるように徐々に傾斜を付けることもできる。
【0036】
内筒122は、薄肉の周壁部端面123aが天板32(天井面32a)に対して抵抗溶接で固定されている。
図2(a)のガス発生器100では、肉厚の薄い周壁部端面123aのみを脆弱部とすることもできるし、周壁部端面123aと溶接部156の両方を脆弱部とすることもできる。
【0037】
図2(b)は、図2(a)のガス発生器100が作動して異常燃焼した結果、内圧が異常に高くなった場合の状態を示している。
過剰圧力を受けて天板32および底板44が膨張変形すると、内筒122の溶接部156が天板32から離れたり、周壁部端面123aの一部が切断されたりすることで、内筒122が天板32から離れてハウジング16の内部容積を増大させる。
このため、周壁部端面123aは天板32には殆ど残留せず、一方、内筒122の大部分は底面44に固定されたままの状態となり、天板32は変形するだけにとどまり、ハウジング16の破壊や切断が発生することがない。
【0038】
(3)図3のガス発生器
図3は、本発明のさらに別の実施態様を含むガス発生器200の断面図(半分)を示している。図1と同じ構成は同じ番号を示し、異なっている部分のみ説明を加える。
【0039】
内筒222は、周壁部223の一端部(上端)が外側に拡張したフランジ部222aとなっており、このフランジ部222aにおいてディフューザシェル12の天板32の天井面32aに溶接固定されている。
周壁部223のフランジ部222aの内側(点火手段室18側)は、周方向に連続して削られて薄肉にされており、この薄肉部が脆弱部256となっている。
【0040】
図3(b)は、図3(a)のガス発生器200が作動して異常燃焼して内圧が異常に高くなった場合の状態を示している。
過剰圧力を受けて天板32および底板44が変形すると、内筒222は脆弱部256から千切れて、ハウジング16の内部容積が増加される。
千切れたフランジ部222aは、小さなが第1付着片260として残る。一方、内筒222の大部分(第2付着片262)は底板44に固定されたままの状態となる。このため、天板32は変形するだけにとどまり、破壊や切断が発生することがない。
【0041】
(4)図4のガス発生器
図4は、本発明のさらに別の実施態様を含むガス発生器300の断面図(半分)を示している。図1と同じ構成は同じ番号を示し、異なっている部分のみ説明を加える。
【0042】
図4のガス発生器では、内筒322とディフューザシェル12は鍛造などの公知の方法によって一体に形成されている。
内筒322と天板32の境界部分の外周面が、周方向に連続して削られており、この薄肉部が脆弱部356となっている。
【0043】
図4(b)は、図4(a)のガス発生器300が作動して異常燃焼した結果、内圧が異常に高くなった場合の状態を示している。
ハウジング16内部で過剰圧力が発生した場合、その圧力を受けて天板32および底板44が変形し、内筒322は、脆弱部356から千切れて、ハウジング16の内部容積が増加される。
千切れたフランジ部222aは、小さなが第1付着片360として残る。一方、内筒322の大部分は底板44に固定されたままの状態(第2付着片362)となる。このため、天板32は変形するだけにとどまり、破壊や切断が発生することがない。
【0044】
(5)図5のガス発生器
図5(a)は、本発明のガス発生器で使用できる別実施形態の内筒422の斜視図である。
内筒422は、ガス発生器の天板側に配置される一端開口部側の端縁部において、周方向に複数の凹凸が形成されている。凹凸の形状は台形等の他の形状であってもよい。
複数の凹凸は、周壁部423の一端開口部周縁から軸方向に突き出された凸部430と凹部431の組み合わせからなるものであり、凸部430と凹部431が周方向に交互に配列されている。
【0045】
図5(b)は、図5(a)で示す内筒422をガス発生器内に配置した実施形態であり、内筒422に対応させてディフューザシェルの天板32の形状が改変されている。
天板32の中央部には、ハウジング内側に突き出された円柱状凸部33が形成されている。円柱状凸部33は、周壁33aと底面33bからなるものである。
内筒422は、凸部430と凹部431が形成された部分が円柱状凸部の周壁33aの外側面に当接されるようにして配置されている。このため、凹部431は、周壁33aの外側面で閉塞されている。
内筒422の凸部430と天板32の当接部分が溶接されている。
【0046】
図5(c)は、図5(a)で示す内筒422をガス発生器内に配置した実施形態であり、内筒422に対応させてディフューザシェルの天板32の形状が改変されている。
天板32の中央部には、ハウジング外側に突き出された円柱状凸部35が形成されている。円柱状凸部35は、周壁35aと底面35bからなるものである。
内筒422は、凸部430と凹部431が形成された部分が円柱状凸部の周壁35aの内周面に当接されるようにして配置されている。このため、凹部431は、周壁35aの内周面で閉塞されている。
内筒422の凸部430と天板32の当接部分が溶接されている。
【0047】
図5(b)、(c)で示す構造を含むガス発生器が作動したとき、異常燃焼により内部に過剰圧が加えられたときには、天板32が膨張し、内筒422の凸部430において千切れることで内容積を増大させる。
【符号の説明】
【0048】
10 ガス発生器
12 ディフューザシェル
14 クロージャシェル
16 ハウジング
20 燃焼室
22 内筒
23 周壁部
24 点火器
26 伝火薬
30 フィルタ
32 天板
32a 天井面
38 ガス排出口
44 底板
44a 底面
52 伝火孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス排出口を有するディフューザシェルとクロージャシェルからなるハウジングを有しており、
ハウジング内には、点火手段が収容された点火手段室とガス発生剤が収容された燃焼室が形成されており、
点火手段室がハウジング内に配置された内筒の内側に形成され、燃焼室が内筒の外側に形成されており、
内筒が、
両端開口部がハウジング底面と天井面に固定されたものであり、
周壁部において、点火手段室と燃焼室を連通する伝火孔を有しており、
伝火孔とハウジング天井面までの間の周壁部に脆弱部を有しているものである、人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項2】
内筒が、ハウジング底面から天井面までの高さの80%超える高さの天井面側の周壁部に脆弱部を有しているものである、請求項1記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項3】
内筒が、
ハウジング底面から天井面までの高さの50%を超える高さの天井面側の周壁部において、点火手段室と燃焼室を連通するための伝火孔を周方向に1列あたり4〜8個で、1列又は異なる高さ位置に2列以上有しており、
ハウジング底面から天井面までの高さの80%超える高さの天井面側の周壁部に脆弱部を有しているものである、請求項1記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項4】
内筒の周壁部に形成された脆弱部が、脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の燃焼室側のみが薄くなっている部分である、請求項1〜3のいずれか1項記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項5】
内筒の周壁部に形成された脆弱部が、脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の点火手段室側のみが薄くなっている部分である、請求項1〜3のいずれか1項記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項6】
内筒の周壁部に形成された脆弱部が、脆弱部が形成されていない周壁部よりも肉厚の薄い部分であり、内筒の周壁部の燃焼室側と点火手段室側の両方が薄くなっている部分である、請求項1〜3のいずれか1項記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項7】
内筒が、一端開口部側の端縁部において、軸方向に形成され、かつ周方向に交互に配列された複数の凹凸を有しているものであり、
ハウジング天井面が内側に突き出された円柱状凸部を有しており、
ハウジング天井面の円柱状凸部に内筒の凹凸を有する開口部が嵌め込まれ、内筒の凹部が円柱状凸部の外周面で閉塞されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の人員拘束装置用ガス発生器。
【請求項8】
内筒が、一端開口部側の端縁部において、軸方向に形成され、かつ周方向に交互に配列された複数の凹凸を有しているものであり、
ハウジング天井面が外側に突き出された円柱状凸部を有しており、
ハウジング天井面の円柱状凸部に内筒の凹凸を有する開口部が嵌め込まれ、内筒の凹部が円柱状凸部の内周面で閉塞されている、請求項1〜3のいずれか1項記載の人員拘束装置用ガス発生器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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