説明

人工魚礁

【課題】潮流や波の影響を受けやすい海で使用する場合であっても、長期間に渡って魚礁としての機能を発揮し続ける人工魚礁を提供する。
【解決手段】多数の竹枝1を用い、かつ、竹枝1の流失を防止する網部材2を備えている。竹枝1を網部材2に取着すると共に、壁状として水底Bに立設している。また、竹枝1を中空立体構造の枠体に取着し、枠体の周囲を網部材2によって包囲している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人工魚礁に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、魚類の繁殖場所の提供と生活環境を整備する目的で人為的に水中に沈められる人工魚礁が用いられている。人工魚礁の材料としては、スギやヒノキ等の木材を用いたものがみられるが、木材は腐食やフナクイムシ等の食害により、1〜3年で使い物にならなくなる。そこで、木材に替えて竹を用いた人工魚礁が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−46054号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の人工魚礁は、竹の主幹部を縦方向に分割した竹材を用い、ロープで結んで束にした状態で水没させるものであるため、潮流や波の影響を受けやすい海で使用すると、1〜2年で竹材を束ねるロープが外れて束が崩壊し、竹材が流失してしまうという欠点があった。竹材がバラバラになって離散してしまうと、魚類の生息環境を整備するという魚礁としての機能を十分に果たせなくなり、設置後数年毎に人工魚礁を修復又は交換しなければならず、多大な労力を費やすばかりかコストも嵩むという問題を生じていた。
【0005】
そこで、本発明は、潮流や波の影響を受けやすい海で使用する場合であっても、長期間に渡って魚礁としての機能を発揮し続ける人工魚礁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る人工魚礁は、多数の竹枝を用い、かつ、該竹枝の流失を防止する網部材を備えたものである。
【0007】
また、上記竹枝を上記網部材に取着すると共に、壁状として水底に立設したものである。
また、上記竹枝を上記網部材に取着すると共に、カーペット状として水底に設置したものである。
また、上記竹枝を中空立体構造の枠体に取着し、該枠体の周囲を上記網部材によって包囲したものである。
また、上記竹枝を上記網部材に取着し、該網部材を中空立体構造の枠体の周囲に包囲状として被覆したものである。
【0008】
また、所定数の上記竹枝を結束して竹束を作製し、複数の該竹束を井桁状に順次組み上げて井桁構造体を構成し、該井桁構造体の周囲を上記網部材によって包囲したものである。
また、所定数の上記竹枝を上記網部材によって包囲して一体状の浮遊構造体を形成し、該浮遊構造体を水中の中間深さに浮遊させているものである。
また、所定数の上記竹枝を上記網部材によって包囲して一体状の浮遊構造体を形成し、該浮遊構造体を水面下方近傍位置から水面上に渡って浮遊させているものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の人工魚礁によれば、網部材によって竹枝をバラバラに離散させず、確実に保持できるため、耐用期間を延長できる。また、竹枝を用いることで、フナクイムシ等の食害を受けにくく、水中で腐りにくく、3年〜5年の長期間に渡っての使用が可能となる。また、細長い竹枝を寄せ集めて複雑な空間を形成し、構造を密なものとすることができ、魚類及び海藻類にとって好ましい生息環境を提供でき、魚礁としての機能を有効に発揮することができる。さらに、余っている不用な竹枝を活用でき、コストを削減できる。また、廃棄される植物資源を再利用するという面で、自然環境に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示した斜視図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態を示した斜視図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態を示した斜視図である。
【図4】本発明の第4の実施の形態を示した斜視図である。
【図5】本発明の第5の実施の形態を示した斜視図である。
【図6】本発明の第6の実施の形態を示した側面図である。
【図7】本発明の第7の実施の形態を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態を示す図面に基づき本発明を詳説する。
一般的に、人工魚礁は、魚類の繁殖場所として、又は、安全な生活環境を整備するために、或いは、海藻類が着生しやすくするために、水中に設置されている。魚は、外敵から身を守るシェルターとして人工魚礁を利用するため、人工魚礁周辺に魚が集まってくる。人工魚礁は、こういった魚を住み着き易くするために設置されている。
図1〜7に示すように、本発明の人工魚礁は、多数の竹枝1を用い、かつ、竹枝1の流失を防止する網部材2を備えている。
竹枝1は、竹の主幹部(桿)から分かれた細い枝を伐採して得たものであり、葉は有っても無くてもよい。近年利用機会の少なくなった竹が余ることが多くなり、特に、主幹部を資源として利用することは有っても、竹枝1は、不用なものとして最も余っており、廃棄処分されるものが多いため、安価に手に入れることができる材料である。竹枝1は、表皮が固く、フナクイムシの食害を受けにくい。また、竹枝1は、海水や汽水に長期間水没させた場合でも腐りにくい。多数の竹枝1…を寄せ集めることにより、細かい隙間を多く有する複雑な空間を造り出し、構造が密になっている。密集した構造を有する人工魚礁は、比較的小さい種類の魚や稚魚にとって、外敵から身を潜める場所に適しており、産卵場所として利用されやすい。また、海藻類が着生しやすく、さらに、消波効果があり、砂の流出を防止する機能も有している。なお、竹枝1は主幹部(桿)に付けたまま用いるもよい。
網部材2は、天然繊維、化学繊維又はワイヤ等を粗く編んだものであり、水中で使用しても劣化しにくい漁網を使用するのが望ましい。
【0012】
図1は、本発明の第1の実施の形態を示している。
第1の人工魚礁は、竹枝1を網部材2に取着すると共に、(鉛直の)壁状として水底Bに立設している。竹枝1…は、所定数を纏めて結束して竹箒状とされ、帯状の網部材2に複数の竹束10…として並列状に括り付け(縛り付け)られている。網部材2は、幅方向の一方側(下端縁)20に固定用の重りW,Wを取付け、かつ、他方側(上端縁)21に浮きF,Fを取り付けている。網部材2は、重りW,Wによって一方側(下端縁)20を水底Bに固定され、竹枝1が潮流や波で流されてバラバラにならないように保持している。竹束10は、穂先部11に近づくにつれて構造が次第に繁雑となり外径が拡散するように構成されており、網部材2の一方側20に夫々の竹束10の穂先部11を向けて並設されている。従って、第1の人工魚礁は、水底B(網部材2の一方側20)近傍では、隣接する穂先部11,11が相互に重なり合って複雑かつ密集した空間を形成している。
【0013】
図2は、本発明の第2の実施の形態を示している。
第2の人工魚礁は、竹枝1を網部材2に取着すると共に、カーペット状(略水平面状)として水底Bに設置している。竹枝1…が、帯状の網部材2に複数の竹束10…として並列状に括り付け(縛り付け)られている点は、上述の第1の実施形態と共通しているが、網部材2が、幅方向の両側20,21に固定用の重りW,Wを取付けている点で相違している。網部材2は、両側20,21を重りW,Wによって固定され、水底Bに伏せたような状態で、竹枝1が潮流や波で流されてバラバラにならないように保持している。
【0014】
図3は、本発明の第3の実施の形態を示している。
第3の人工魚礁は、竹枝1を中空立体構造の枠体3に取着し、枠体3の周囲を網部材2によって包囲している。
図3に於て、枠体3は、立方体形状の骨組みを有する金属製のフレームを図示しているが、材料をコンクリートや木材等としてもよく、構造をより複雑なものとしてもよい。竹枝1…は、枠体3の内部に収容され、又は、枠体3の骨格に取付けられている。網部材2の4隅に固定用の重りW,W,Wを取付け、枠体3の周囲を覆うように上方から被せた状態で水底Bに固定され、竹枝1の流失を防止している。
【0015】
図4は、本発明の第4の実施の形態を示している。
第4の人工魚礁は、竹枝1を網部材2に取着し、網部材2を中空立体構造の枠体3の周囲に包囲状として被覆している。枠体3を用いる点で上述の第3の実施形態と共通しているが、所定数の竹枝1…を結束して複数の竹束10…として括り付け(縛り付け)た網部材2を、枠体3に被せている点で相違する。網部材2の4隅には、固定用の重りW,W,Wが取付けられ、枠体3の周囲を覆うように上方から被せた状態で水底Bに固定されている。網部材2は、竹枝1が潮流や波で流されてバラバラにならないように保持している。
【0016】
図5は、本発明の第5の実施の形態を示している。
第5の人工魚礁は、所定数の竹枝1を結束して竹束10を作製し、複数の竹束10を井桁状に順次組み上げて井桁構造体4を構成し、井桁構造体4の周囲を網部材2によって包囲している。
井桁構造体4は、複数の竹束10…を組み上げて平面視略井の字状に形成したものである。具体的には、一対の竹束10,10を、穂先部11,11を向かい合わせにして直列状に連結し、丸太状とした一対の竹束10,10を、2組平行に並べて、その上に平行な2組の丸太状竹束10,10を直交するように載置する。さらに、2組の平行な丸太状竹束10,10を交互に直交するように積み上げていくと、平面視略井の字状の井桁構造体4が構成される。4隅に固定用の重りW,W,Wを取付けた網部材2を、井桁構造体4の周囲を覆うように上方から被せた状態で水底Bに固定し、井桁構造体4を保持すると共に竹枝1の流失を防止している。
【0017】
図6は、本発明の第6の実施の形態を示している。
第6の人工魚礁は、所定数の竹枝1を網部材2によって包囲して一体状の浮遊構造体5を形成し、浮遊構造体5を水中の中間深さに浮遊させている。
浮遊構造体5は、複数の竹束10…を寄せ集めて塊状とし、網部材2によって周囲を包囲している。浮遊構造体5は、下方に碇を下ろすように固定用の重りW,W,Wを繋いだロープを垂らしており、かつ、上方の水面A上にて位置の確認ができるようにすると共に必要に応じて浮遊構造体5を支える浮力を有する浮きFをロープで繋いでいる。
【0018】
図7は、本発明の第7の実施の形態を示している。
第7の人工魚礁は、所定数の竹枝1を網部材2によって包囲して一体状の浮遊構造体5を形成し、浮遊構造体5を水面A下方近傍位置から水面A上に渡って浮遊させている。
浮遊構造体5は、複数の竹束10…を寄せ集めて塊状とし、網部材2によって周囲を包囲している。浮遊構造体5は、下方に碇を下ろすように固定用の重りWを繋いだロープを垂らしている。浮遊構造体5は、一部が水面Aの上に浮上し、浮島状となっており水面A上での位置の確認ができるようになっている。
【0019】
上述した本発明の人工魚礁の使用方法(作用)について説明する。
図1〜図7に示すように、人工魚礁の周辺には、魚が集まりやすく、住み着き易い環境が形成される。特に、密集した多数の竹枝1…は、複雑かつ密な構造を有するため、比較的小型の種類の魚や稚魚にとっては、安全が確保され、産卵場所として有効に利用される。また、海藻の着生場所としても有効であり、水産資源の保護を図る上で重要な役割を果たす。
人工魚礁は、海又は汽水域の水中に設置された後、網部材2によって竹枝1が潮流や波で流されてバラバラにならないように保持する。すなわち、魚礁としての役割を、3年〜5年の長期間に渡って発揮し、その間、修復・交換の必要もなく使用が可能となる。
【0020】
以上のように、本発明は、多数の竹枝1を用い、かつ、竹枝1の流失を防止する網部材2を備えたので、網部材2によって竹枝1をバラバラに離散させず、確実に保持できるため、耐用期間を延長できる。また、竹枝1を用いることで、フナクイムシ等の食害を受けにくく、水中で腐りにくく、3年〜5年の長期間に渡っての使用が可能となる。また、細長い竹枝1を寄せ集めて複雑な空間を形成し、構造を密なものとすることができ、魚類及び海藻類にとって好ましい生息環境を提供でき、魚礁としての機能を有効に発揮することができる。さらに、さらに、余っている不用な竹枝1を活用でき、コストを削減できる。また、廃棄される植物資源を再利用するという面で、自然環境に貢献できる。
【0021】
また、竹枝1を網部材2に取着すると共に、壁状として水底Bに立設したので、渦流効果や陰影効果が期待できる。
【0022】
また、竹枝1を網部材2に取着すると共に、カーペット状として水底Bに設置したので、船曳漁法の漁網が絡まりにくい。また、底生性魚類を多く集めることができる。
【0023】
また、竹枝1を中空立体構造の枠体3に取着し、枠体3の周囲を網部材2によって包囲したので、高い集魚効果を発揮し、かつ、魚を長期滞在させることができる。特に、複雑な内部構造がシェルター効果を生み、稚魚の育成に適している。しかも、安定して水底Bに設置できる。
【0024】
また、竹枝1を網部材2に取着し、網部材2を中空立体構造の枠体3の周囲に包囲状として被覆したので、高い集魚効果を発揮し、かつ、魚を長期滞在させることができる。特に、複雑な内部構造がシェルター効果を生み、稚魚の育成に適している。しかも、安定して水底Bに設置できる。
【0025】
また、所定数の竹枝1を結束して竹束10を作製し、複数の竹束10を井桁状に順次組み上げて井桁構造体4を構成し、井桁構造体4の周囲を網部材2によって包囲したので、高い集魚効果を発揮し、かつ、魚を長期滞在させることができる。特に、複雑な内部構造がシェルター効果を生み、稚魚の育成に適している。しかも、安定して水底Bに設置できる。
【0026】
また、所定数の竹枝1を網部材2によって包囲して一体状の浮遊構造体5を形成し、浮遊構造体5を水中の中間深さに浮遊させているので、漂流物に集まる習性を持つ魚を多く集めることができる。
【0027】
また、所定数の竹枝1を網部材2によって包囲して一体状の浮遊構造体5を形成し、浮遊構造体5を水面A下方近傍位置から水面A上に渡って浮遊させているので、漂流物に集まる習性を持つ魚を多く集めることができる。
【符号の説明】
【0028】
1 竹枝
2 網部材
3 枠体
4 井桁構造体
5 浮遊構造体
10 竹束
A 水面
B 水底



【特許請求の範囲】
【請求項1】
多数の竹枝(1)を用い、かつ、該竹枝(1)の流失を防止する網部材(2)を備えたことを特徴とする人工魚礁。
【請求項2】
上記竹枝(1)を上記網部材(2)に取着すると共に、壁状として水底(B)に立設した請求項1記載の人工魚礁。
【請求項3】
上記竹枝(1)を上記網部材(2)に取着すると共に、カーペット状として水底(B)に設置した請求項1記載の人工魚礁。
【請求項4】
上記竹枝(1)を中空立体構造の枠体(3)に取着し、該枠体(3)の周囲を上記網部材(2)によって包囲した請求項1記載の人工魚礁。
【請求項5】
上記竹枝(1)を上記網部材(2)に取着し、該網部材(2)を中空立体構造の枠体(3)の周囲に包囲状として被覆した請求項1記載の人工魚礁。
【請求項6】
所定数の上記竹枝(1)を結束して竹束(10)を作製し、複数の該竹束(10)を井桁状に順次組み上げて井桁構造体(4)を構成し、該井桁構造体(4)の周囲を上記網部材(2)によって包囲した請求項1記載の人工魚礁。
【請求項7】
所定数の上記竹枝(1)を上記網部材(2)によって包囲して一体状の浮遊構造体(5)を形成し、該浮遊構造体(5)を水中の中間深さに浮遊させている請求項1記載の人工魚礁。
【請求項8】
所定数の上記竹枝(1)を上記網部材(2)によって包囲して一体状の浮遊構造体(5)を形成し、該浮遊構造体(5)を水面(A)下方近傍位置から水面(A)上に渡って浮遊させている請求項1記載の人工魚礁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−5356(P2012−5356A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−141477(P2010−141477)
【出願日】平成22年6月22日(2010.6.22)
【出願人】(510157535)
【Fターム(参考)】