説明

人物適応露出制御装置

【目的】一般の風景撮影における場合と、人物撮影における場合とでは、異なる露出で撮影できるようにした露出制御装置を提供することを目的とする。
【構成】本発明の露出制御装置は、主被写体が人物か否かを判定する人物判定手段と、該人物判定手段により主被写体が人物であると判定されたときと人物以外であると判定されたときで異なる露出設定を行う露出制御手段とから成っている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明はビデオカメラ等の撮影機器における露出制御装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ビデオカメラ等においては、人物を如何に上手に撮影することができるか、その特性が問われている。人物を上手に撮影する要素の1つとして適正な露出で撮影することが挙げられる。この点、従来の露出制御装置は映像信号のレベルを検出して、そのレベルが一定になるようにAGC回路等を制御しているだけであった。従って、主被写体が人物であっても、風景であっても、その露出制御形態は同一であった。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、テレビジョンシステムの研究成果では、人物撮影の場合は、その顔部の露出レベルは映像信号レベルで60〜70IRE程度に調整されればテレビジョン受信機のブラウン管上にて自然で美しい人物表現が可能であるとしている。従来技術では人物顔部がいつも自動的にこの映像信号レベルに調整されることは保障されていない。また主被写体の露出レベルを人物と人物以外とで選択的に自動調整することもできなかった。本発明はこのような点に鑑みなされたものであって、一般の風景撮影における場合と、人物撮影における場合とでは、異なる露出で撮影できるようにした露出制御装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するため本発明の露出制御装置は、主被写体が人物か否かを判定する人物判定手段と、該人物判定手段により主被写体が人物であると判定されたときと人物以外であると判定されたときで異なる露出設定を行う露出制御手段とから成っている。その際、判定手段はビデオ撮影機器の撮影映像信号中の肌色を示す色度情報より得た該色度情報の撮像平面上での形状及び面積と撮影系の撮影倍率を用いて人物の顔部を示すパラメータとの比較を行うことにより人物か否かの判定を行う。また、露出制御手段は、前記人物判定手段により主被写体が人物であると判定されたとき、該人物の顔部の輝度信号レベルが65IRE付近の値に設定されるように露出制御を行う。
【0005】
【作用】このような構成によると、人物撮影のときは、人物撮影に適した露出制御(例えば顔部露出制御)を行うことができる。また、人物以外の撮影のときは、その撮影に適した露出制御(例えば撮影映像の輝度信号レベルに基づく通常の露出制御)を行うことができる。
【0006】また、前記撮影機器はビデオ撮影機器であり、前記判定手段は撮影映像中の肌色を示す色度情報より得た該色度情報の撮像平面上での形状及び面積と撮影系の撮影倍率を用いて人物の顔部を示すパラメータとの比較を行うことにより人物か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の露出制御装置のような場合は、色度信号を作り、その色度信号に基づいて肌色を検出していることにより、色検出精度が高くなるので、より精度のよい露出制御が実現できる。色度信号に代わるものとして色差信号を使うことが考えられるが、色差信号は被写体の色情報が不変でも露出レベルが変化するとその信号レベルは変化するため色検出精度が悪い。これに対し、色度信号では露出レベルに対し不変な色情報を示すため色検出精度は高い。更に、予め人物パラメータを設定し、撮影倍率を用いて撮像した肌色部との比較参照を行うことにより、処理が簡単で精度の高い人物検出ができる。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。図1は本発明を実施したビデオカメラのブロック回路図であり、1は撮像レンズ部、2は絞りである。撮像レンズ部1は、そのズーム情報や測距情報を撮影倍率算出部13へ出力する。3はCCD(charge coupled device)等の撮像素子を含み、撮像映像のR(赤)、G(緑)、B(青)信号成分を出力する撮像部である。4はこの撮像部3で得られた映像信号の平均又はピークのレベルを検出し、そのレベルが一定値となるように絞りを制御する露出制御部である。
【0008】5、6、7は絞り2が開放となる低照度時において動作を開始するように制御処理部12によりゲインコントロールされるAGC回路である。8、9はRチャンネルと、Bチャンネルにそれぞれ挿入されたホワイトバランス用の利得可変増幅器であって、外光式のホワイトバランスセンサ(WBセンサ)部14で得られた被写体照明光の色温度情報に基づいて制御処理部12を介して、その利得が制御され所定のホワイトバランスを実現する。この場合、制御処理部12は予め色温度情報に対応したコントロールデータを用意しており、ホワイトバランスセンサ部14から与えられた色温度情報に対応するコントロールデータを出力して利得可変増幅器8、9へ与える。尚、そのコントロールデータはD/A変換されてから利得可変増幅器8、9へ導かれるものとする。
【0009】次に、10は入力されたR、G、B信号にガンマ補正やマトリックス処理を施して輝度信号Yを形成するとともに、色信号CSを形成して出力する信号処理部である。この場合、輝度信号Yには水平、垂直の同期信号が付加されているものとする。また、色信号CSは色副搬送波(NTSC規格の場合は3.58MHz)をR−Y、B−Y信号で平衡変調して形成され且つカラーバースト信号が付加されているものとする。信号処理部10で出力された輝度信号Yは別途ローパスフィルタ30に与えられ、ここで帯域制限された後、制御処理部12に取り込まれる。
【0010】制御処理部12はその入力された輝度信号のレベルによって低照度状態を検出すると、そのレベルが所望のレベルとなるようにAGC回路5、6、7を制御する。尚、この制御は本明細書でいう通常の露出制御であり、主被写体が人物部であるときの露出制御(後述する)とは区別される。人物自動露出モードにおいては制御処理部12からの制御信号でAGC回路5、6、7は所定の動作を行う。
【0011】11は、ホワイトバランスがなされたR、G、B信号を入力して肌色検出信号B、Cを発生する肌色検出部であり、クロックCLKが与えられるとともに、制御処理部12からは指示信号Aを受ける。肌色検出信号Cは常に出されているが、肌色検出信号Bは前記指示信号が入ってきたときにのみ出力される。これらの肌色検出信号B、Cはいずれも制御処理部12へ与えられる。15は人物データを格納している人物データ部であり、制御処理部12から要求信号Dがあった場合に人物データを制御処理部12へ与える。
【0012】13は撮影倍率βを算出する撮影倍率算出部で、撮像レンズ部1のズーム情報よりその焦点距離f値を得るとともに、測距情報より例えば被写体から撮像レンズ部1の前側主点までの距離Lsを得て、それぞれf、Ls値より撮影倍率βをβ=f/(Ls−f)より算出し、制御処理部12へ出力する。24は人物自動露出モードの設定のための手動スイッチで、制御処理部12へ人物自動露出モードの設定を知らせる。
【0013】肌色検出部11は図2に示すように構成されている。16はR、G、Bの各信号より撮像映像信号の有する色度情報を量子化データとして出力する色度情報抽出部で、その出力は肌色比較部23へ送られる。R、G、B信号はマトリックス部17にそれぞれ出力され次式により混合される。マトリックス部17の混合出力信号をMとすると、M=(R+1.8G+B)/3.8 (0≦M≦1:正規化信号)
で示される。R、M、B信号はA/D(アナログ・デジタル変換)部18、19、20へそれぞれ出力され、水平及び垂直同期信号φH、φVに同期したφHよりも高い周波数を持つクロック信号CLK(例えば、NTSC規格色副搬送波信号)の周期にて量子化される。
【0014】量子化されたR、M、B信号は除算部21、22にそれぞれ与えられR信号を分子、M信号を分母とする除算結果R/M信号と、B信号を分子、M信号を分母とする除算結果B/M信号を得る。A/D部18、19、20はそれぞれサンプリング定理に基づき、折り返しノイズを防ぐための帯域制限手段と適当な量子化ビット数を持つものであるとする。除算部21、22の構成は例えばメモリーによるルック・アップ・テーブル法でもロジック構成の除算器でも良い。
【0015】また、M信号の混合比(R:G:B=1:1.8:1)はUVW表色系において刺激和を示すU+V+W値をNTSC規格受像3原色R、G、B刺激値を用いて表したもので、正確には下式となるが、該除算部21、22を同じ構成とするため近似的に用いる。
M=0.261R+0.469G+0.270B(0≦M≦1:正規化信号)
【0016】よって、R/M、B/M各信号は、NTSC規格に合致している撮像システムを用いた場合に、撮像映像信号の有する色度情報が均等知覚色度図であるCIE1960UCS色度図((u、v)色度図)又はCIE1976UCS色度図((u´、v´)色度図)を(G、R)軸、(G、B)軸に沿って均等に量子化可能とするものである。図3にこの様子を示す(R/M、B/M各信号の量子化ビット数は5ビットとし、(u´、v´)色度図を用いた)。
【0017】この量子化法により、人間の色度知覚に対する量子化ノイズを色度情報の抽出範囲内でおおよそ均一に処理できるため、最小限の量子化ビット数を考えた場合、人物による肌色色度の差や肌色以外の色度との区別が該色度知覚に対応してデータ処理できる利点がある。
【0018】色度情報抽出部16のR/M、B/M各信号は肌色比較部23へ送られる。肌色比較部23は予め用意された肌色色度データ群を持っており、入力色度情報R/M、B/M各信号と比較処理することにより、撮像映像信号に対し肌色の有無を検出できる。該検出結果は、肌色検出信号B及びCとして出力される。肌色が検出できた場合は、直ちに制御処理部12に対して肌色検出信号Cを送る。
【0019】制御処理部12はメモリ部を有しており、例えばフィールドメモリ構成で、肌色比較部23へ指示信号Aを出力した後、クロック信号CLKの周期毎に肌色比較部23より肌色検出信号Bを取り込み、水平及び垂直同期信号φH、φVによって、撮像画面に対応した肌色色度の位置を示すパターン(肌色パターンとする)を1フィールド分得るものである。例えば図4に示すように、(a)が撮像した人物被写体とすれば、(b)が該メモリ部に上述した動作により記憶されている肌色パターンである。ただし、該パターンは、肌色が有りの場合“斜線”、無しの場合“白”の画素として表記した。
【0020】メモリ部が肌色検出信号Bを得る動作は、あるタイミングにて制御処理部12が肌色検出信号Cを調べて、肌色が有りの状態の場合のみ制御処理部12により肌色比較部23に対して指示信号Aを出力する。次に肌色比較部23は、指示信号Aを受けた時点から次のフィールド期間に相当する肌色検出信号Bを制御処理部12に出力し、制御処理部12のメモリ部はこれを1フィールド分記憶する。
【0021】人物データ部15は人物の顔部の特徴を示すパラメータとして、顔部の面積S及びその円形度Kに対応するデータ(人物データHとする)をそれぞれn組予め保有している。制御処理部12は人物データ部15に対して指示信号Dを出力する。人物データ部15は該信号Dに従い、人物データHを順にあるいは指定された人物データを制御処理部12に出力する。
【0022】ここで、円形度Kについて述べる。円形度とはその図形の形の複雑さを表す一つの尺度係数で、ある図形の面積をS、その周囲長をLとしたときに下式より求まる係数Kと本発明にて定義する。
K=L2/S (K≧4π)
例えば、円形の場合は4π(最小値)となり、正方形では16となる。その形状が複雑になる程その値は大きくなるものである。人物の顔部(肌色部)は形状が円状で単純であるので、比較的小さな円形度Kが得られるため、人物以外の肌色色度を有する物体との区別がこの値により弁別可能となる。
【0023】制御処理部12では1フィールド分の肌色検出信号Bより求まる肌色パターン、撮影倍率β、人物データHより、その肌色パターン内の肌色面積部が人物か否かを判定する。人物と判定したなら制御処理部12は、該面積部の輝度信号Yの平均レベルが65IREになるようにAGC回路5、6、7を制御する。人物以外(風景)と判定したなら制御処理部12はAGC回路5、6、7に対し現状通りの制御を続ける、つまり新たには何もしない。
【0024】以下、本実施例における制御処理部12による制御動作を説明する。まず、肌色パターン内の肌色面積部が人物か否かの判定の手順を図5、図6のフローチャートに従って説明する。肌色パターン内に複数個の肌色面積部が存在すると仮定し、その中に顔部に相当する肌色面積部があるか否かを調べるものである。このフローが開始されると、まずステップ#5でスイッチ24がONかOFFかを調べて人物自動露出モードが設定されているかどうかを判定する。スイッチ24がOFFであれば、ステップ#55へ進んで通常の自動露出モードでの露出処理を行うが、ONであればステップ#10以降の人物自動露出モードでの露出処理を行う。
【0025】ステップ#10では、肌色比較部23の肌色検出信号Cを調べて肌色の有無を判定する。肌色が無ければステップ#55へ進んで通常の露出モードを行う。肌色があれば、ステップ#15で撮影倍率算出部13より現在の撮影倍率βを取り込む。次に、ステップ#20に進んで、前に取り込んだ撮影倍率βが所定の値β1及びβ2(β1<β2)の範囲内か否かを調べる。尚、ここでβ1は撮影素子の撮像サイズにおいて人物の顔の大きさがある程度以下であれば、たとえ主被写体が人物であっても風景を撮影していると見なすための閾値定数であり、β2は撮影サイズにおいて人物の顔の大きさが不自然に大きくなりなり始める閾値定数である。
【0026】前記撮影倍率βがβ1〜β2の範囲外であれば、主被写体は風景であるとして、ステップ#55へ進む。βがβ1〜β2の範囲内であればステップ#25へ進んで、肌色比較部23に対して肌色検出信号Bを得るため指示信号Aを与える。しかる後、ステップ#30で肌色比較部23より肌色検出信号Bを制御処理部12内のメモリ(フィールドメモリ)に取り込み、肌色パターンとする。
【0027】次に、ステップ#35で、肌色パターンに対して収縮・膨張画像処理を施す。収縮・膨張画像処理とは、文献「画像処理装置とその使い方」丸谷洋二著 日刊工業新聞社発行に記載の技術で、ここでは肌色パターン内の肌色を示す面積部に存在する突起形状部や鋭角部を比較的なめらかな輪郭部に変換する処理のことをいう。例えば、顔の額部に頭髪がかかっている状態で肌色抽出を行うと、肌色面積部にその頭髪部分に相当する突起形状部が発生するのでこれを除去することにより複雑な形を有する肌色面積部を比較的単純な形状に変換し、顔部の検出精度を向上させる。この処理を適当に繰り返して最適な形状を得る。また、この処理によって肌色面積部に対して非常に小さい他の肌色面積部は消滅するので、後処理で行う人物データHとの比較処理回数が減る効果もある。
【0028】前記ステップ#35での処理が終了した後、ステップ#40に進み、肌色パターン内の複数個の肌色面積部の内、画面中央位置から優先してラベリング画像処理をまだ施していない肌色面積部を1つ選択する。この理由は人物が主被写体の場合、画面中央付近にその顔部が位置する確率が高いからである。次のステップ#45では、前記ステップ#35の処理にて選択できた肌色面積部の有無を判定する。該判定結果が有りであればステップ#50の処理へ進み、無しであれば主被写体は人物以外(風景)と判定し上記ステップ#55の処理へ進む。
【0029】ステップ#50では、ステップ#40で選んだ肌色面積部にラベリング画像処理を施す。ラベリング画像処理とは、連結している画素に同じラベル記号を付け、異なった連結画素群には異なったラベル記号を付けることにより複数の連結画素群を区別することである。また同時に肌色面積部を構成する画素数Nを計数する。画素数Nはその肌色面積部の面積に相当する値である。
【0030】次に、図6のステップ#55へ進み、該ステップ#55でn組の人物データHの内、特定の1つを選ぶ変数をiとして、1番目を選ぶ(Hiと表記する)処理を行う。そして、次のステップ#60で、人物データ部15に変数i=1を含む指示信号Dを出力し、ステップ#65で人物データ部15より変数i=1に対応する人物データHi(Si、Ki)を受け取る。
【0031】しかる後、ステップ#70で、N/(Si・β2)を計算すると共に、このN/(Si・β2)が、所定の比率γ1からγ2内に納まっているか否かを判定する。尚、ここで、Nは画素数であり、Siは人物データである。このステップ#70の判定は、前記肌色面積部の画素数N(肌色部面積に相当)と、現在の撮影倍率βでの面積倍率β2を人物顔部の面積Siにかけて得られる撮像素子(CCD)上での顔部面積Si・β2とを比較することにより、肌色面積部が人物か人物以外(風景)かを見極めるものである。
【0032】この判定でN/(Si・β2)がγ1〜γ2内に存しない場合はステップ#85で人物データ変数iを1だけインクリメントしてステップ#90へ進み、その人物データ変数iが人物データ組数n以内であればステップ#60の処理に戻る。該人物組数nを超えたならステップ#40の処理に戻る。ステップ#70の判定でN/(Si・β2)がγ1〜γ2内であれば、ステップ#75に進んで、上記ステップ#50の処理にてラベリングを施した肌色面積部の周囲長Lを求める。周囲長Lは該肌色面積部の輪郭を構成する画素を数えることによりそれに相当するデータを得る。ただし輪郭画素の並ぶ様子によって画素の意味する長さが異なるのでその様子に従って補正を加える。
【0033】次に、ステップ#80では画素数N、人物データKi、周囲長Lについて、|L2/N−Ki|≦ε1の演算を行い、それが所定の誤差ε1内に納まるか否か判定する。この判定は前記面積部の円形度L2/Nと人物顔部の円形度Kiを比較することにより、前記面積部が人物か人物以外(風景)かを見極めるものである。NO(納まらない)であれば、前記ステップ#85へ進み、YES(納まる)であれば、図7のステップ#100へ進む。尚、ここでYESの場合は主被写体が人物と判定されたことになる。
【0034】以上のような手順で人物検出が行われるが、次に主被写体が人物と判定した後の露出制御法を図7を参照して説明する。まず、ステップ#100で肌色比較部23に対して肌色検出信号Bを得るため指示信号Aを出力し、次のステップ#105へ進む。
【0035】ステップ#105では、肌色比較部23より肌色検出信号Bを得、先の処理にて人物顔部と判定した肌色面積部と論理積をとりその結果の画素数Naを計数する。この処理は先の肌色面積部が人物か否かの判定処理にて幾分時間を要するため、新たに最新の肌色検出信号Bを得て、これと人物と判定した肌色面積部とのAND信号が現在の肌色面積部と見なすためである。ステップ#105の処理が済むと、ステップ#110へ進み、ここで上記ステップ#50での処理の肌色面積部の画素数Nとステップ#105の処理での画素数Naの比Na/Nを求め、ある決められた値γ3との比較を行う。
【0036】Na/Nがγ3より小さい場合は、主被写体や撮影状況に変化があったとしてステップ#5の処理へ戻る。Na/Nがγ3以上であれば、ステップ#115へ進んで、肌色面積部内の輝度信号レベルが65IRE以上の画素を計数してNbを得る。この点を図8を用いて説明すると、制御処理部12へ出力された輝度信号Yはゲート部24にてゲート信号に相当する期間のみ比較部26へ出力される。該ゲート信号はAND回路25において、人物顔部と判定した肌色面積部の信号と肌色検出信号Bとの論理積を行って得られたAND信号である。つまり現在の肌色面積部を意味する信号である。このゲート信号はAND回路28にてクロックCLKとのANDをとることにより、肌色面積部の画素信号パルスPNaとなる。
【0037】一方、比較部26では入力輝度信号Yの信号レベルと基準輝度信号レベルとの比較を行い、Yの信号レベルが基準輝度信号レベル以上の場合に比較出力信号をAND回路27に出力する。AND回路27では該比較部26の出力信号とクロック信号CLKとのANDをとることにより、Yの信号レベルが基準輝度信号レベル以上の画素信号パルスPNbを得る。基準輝度信号レベルについて、テレビジョンシステムの研究成果によると人物肌色の再現輝度レベルはおよそ60〜70IREが最適とされており、ここでは一応65IREとした。
【0038】29はAND回路28、27からの信号パルスPNa、PNbを計数する計数部で、1フィールド分の該信号パルスの計数値Na、Nbをそれぞれ出力する。さて、図7に戻って、上記ステップ#115での処理が終ると、ステップ#120で、上記ステップ#105と#115の処理にて得た肌色面積部画素数Naと輝度信号レベルが65IRE以上の画素数Nbについて、Nb−Na/2の値を求めて0との大小関係を判別する。
【0039】尚、この判別の意味は肌色面積部画素数Naが示す輝度信号レベルが65IREを境にして半分ずつ存在しているかどうかを調べることにより、肌色面積部の平均輝度信号レベルを65IREに設定しようとするものである。そして、上式と0との比較結果によりAGC回路5、6、7の利得を所定の単位レベルだけ上下させる。即ち、上記式(Nb−Na/2)が0より大きい場合はステップ#125へ進んで、AGC回路5、6、7の利得を単位レベル下げ、しかる後ステップ#100の処理へ戻る。上記式が0より小さければ、ステップ#130へ進んでAGC回路5、6、7の利得を単位レベル上げた後、ステップ#100の処理へ戻る。0であれば、フローを終了する。
【0040】次に露出制御法について他の実施例を図9及び図10を参照して説明する。この図9、図10に示す制御法は主被写体が人物であると判定した場合において、撮影画角に占める人物の大きさの相対比により、通常露出制御の程度と人物自動露出制御の程度に対して重み付けを行う。人物のその比率が高くなる程、通常自動露出制御から人物自動露出制御へと連続的に移行するものである。
【0041】まず、ステップ#200で比較部26に初期の基準輝度信号レベルYrefとして例えば65IREを設定する。しかる後、ステップ#205、#210、#215で先の実施例のステップ#100、#105、#110と同じ処理をした後、ステップ#220で肌色面積部内の輝度信号レベルがYref以上の画素を計数してNbを得る。
【0042】次に、ステップ#225で肌色面積部画素数Naと輝度信号レベルがYref以上の画素数Nbについて、(Nb−Na/2)の値を求めて、0との比較を行う。Nb−Na/2>0のときはステップ#230へ進んで、基準輝度信号レベルをYref値より所定の単位レベルだけ上げ、Nb−Na/2<0のときはステップ#235で所定の単位レベルだけ下げ、それぞれステップ#205へ戻る。Nb−Na/2=0のときは、図10のステップ#240へ進む。ここまでのループ処理により、通常自動露出制御による現在の肌色面積部の平均の輝度信号レベルYrefが判明する。
【0043】次からの処理おいて、肌色面積部の輝度信号レベルの目標とする設定値を求める。該設定値は、該Yref値と人物肌色の再現輝度信号レベル65IREに対して撮影倍率β値による重み付けを行った合成値とする。まず、ステップ#240、#245、#250でそれぞれ上記ステップ#100、#105、#110と同じ処理をした後、ステップ#255で撮影倍率算出部13より現在の撮影倍率βを得て重み係数WEを求める。重み係数WEは例えば、dの処理にて使用した撮影倍率βの閾値β1、β2より下式にて決定する。
【0044】
WE=(β−β1)/(β2−β1)
又は、WE={β2−(β1)2}/{(β2)2−(β1)2
である。ただし、β<β1の場合WE=0、β>β2の場合WE=1とする。よって、重み係数WEの値域は0≦WE≦1である。
【0045】続いて次のステップ#260で、前記ステップ#255の処理にて得た重み係数WEを用いて、現在の肌色面積部の平均の輝度レベルYrefと人物肌色の再現輝度信号レベル65IREに対する重み付け合成値、つまり目標基準輝度信号レベルを下式により求める。
(65−Yref)・WE+Yrefそして、上式の値を新しいYref値とする。
【0046】以下、ステップ#265〜#280で、それぞれ上述したステップ#220、#120、#125、#130と同じ処理を行い、ステップ#275、#280へ進んだ場合は、それらの処理をした後、ステップ#240へ戻る。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、人物撮影のときは、人物撮影に適した露出制御を行うことができる。また、人物以外の撮影のときは、その撮影に適した露出制御を行うことができる。また、判定手段が撮影映像中の肌色を示す色度情報より得た該色度情報の撮像平面上での形状及び面積と撮影系の撮影倍率を用いて人物の顔部を示すパラメータとの比較を行うことにより人物か否かの判定を行うようにした場合は、露出レベルに対し不変な色情報を示す色度信号を作り、その色度信号に基づいて肌色を検出することになり、色検出精度が高くなるので、より精度のよい露出制御が実現できる。更に、人物パラメータを設定し、撮影倍率を用いて撮像した肌色部との比較参照を行うことにより、簡単で精度の高い人物検出ができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明を実施したビデオカメラの要部ブロック回路図。
【図2】 その肌色検出部の構成を示すブロック回路図。
【図3】 CIE1976UCS色度図。
【図4】 人物被写体と記憶される肌色パターンを示す図。
【図5】 本実施例の人物検出の動作フローを示すフローチャート。
【図6】 図5に引き続くフローチャート。
【図7】 本実施例の露出制御のフローチャート。
【図8】 その説明図。
【図9】 本発明の他の実施例の露出制御を示すフローチャート。
【図10】 図9に引き続くフローチャート。
【符号の説明】
5、6、7 AGC回路
10 信号処理部
11 肌色検出部
12 制御処理部
13 撮影倍率算出手段
15 人物データ部
16 色度情報抽出部
23 肌色比較部

【特許請求の範囲】
【請求項1】撮影機器における露出制御装置であって、主被写体が人物か否かを判定する人物判定手段と、前記人物判定手段により主被写体が人物であると判定されたときと人物以外であると判定されたときで異なる露出設定を行う露出制御手段とから成る露出制御装置。
【請求項2】前記撮影機器はビデオ撮影機器であり、前記判定手段は撮影映像信号中の肌色を示す色度情報より得た該色度情報の撮像平面上での形状及び面積と撮影系の撮影倍率を用いて人物の顔部を示すパラメータとの比較を行うことにより人物か否かの判定を行うことを特徴とする請求項1に記載の露出制御装置。
【請求項3】前記露出制御手段は、前記人物判定手段により主被写体が人物であると判定されたとき、該人物の顔部の輝度信号レベルが65IRE付近の値に設定されるように露出制御を行うことを特徴とする請求項2に記載の露出制御装置。
【請求項4】人物の顔部の面積が画面内に占める大きさを撮影倍率によって重み付けすることを特徴とする請求項3に記載の露出制御装置。

【図1】
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【図8】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図9】
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【図10】
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