説明

付けまつ毛装着具

【課題】 付けまつ毛装着具で挟んだ付けまつ毛をまぶたに宛がって装着する際に、付けまつ毛装着具を挟み持っている指のわずかな動きで付けまつ毛装着具が揺動してしまうので、使用者が非常に気を遣いながら付けまつ毛の装着作業をしなければならない。
【解決手段】 柄部材2の縁部から挟持部材3の挟持片4,5が突出した状態で、その挟持部材3が柄部材2に対し進退可能となるように挟持部材3は柄部材2に取り付けられており、挟持部材3を柄部材2に対して所定の位置まで後退させたときに両挟持片4,5を閉じた状態に維持する手段を有し、その維持する手段を解除して挟持部材3を柄部材2に対して所定の位置まで前進させるときに両挟持片4,5が自動的に開く。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、付けまつ毛をまぶたに装着するときに使用する付けまつ毛装着具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の付けまつ毛装着具は、対向する一対の挟持片の基部同士を結合してクリップ状に形成されている。従来の付けまつ毛装着具を使って付けまつ毛をまぶたに装着する方法について説明すると、まず、それぞれの挟持片に人差し指と親指を宛がって挟持片の端部で付けまつ毛を挟み、次いで、挟持片を閉じた状態にロックする。そのロックが完了した後、付けまつ毛の基部に接着剤を塗布する。挟持片が閉じた状態にロックされているので、接着剤を塗布するときは装着具をどのように持っても差し支えない。次に、それぞれの挟持片に人差し指と親指を宛がうことにより、装着具を人差し指と親指で挟み持って付けまつ毛の基部をまぶたに宛がう。その際、装着具の挟持片をすぐに開かずに、装着具を付けまつ毛からすぐに離さないようにして、少しそのままの状態におく。すぐに離すと、接着剤が固まっていないので付けまつ毛がまぶたから離れてしまうからである。その後、ロックを外して挟持片を開き装着具を付けまつ毛から離す。
【0003】
このように、付けまつ毛をまぶたに装着するときは、接着剤を塗布した付けまつ毛をまぶたに宛がった状態を少しの間維持する必要がある。付けまつ毛を動かしてしまうとまぶたの所定の位置に付けまつ毛を装着することができないからである。
【0004】
従来の付けまつ毛装着具はクリップ状であって、付けまつ毛をまぶたに装着するときに、装着具の挟持片を親指と人差し指で挟み持って付けまつ毛の基部をまぶたに宛がう。すなわち、装着具を持った際の装着具の保持は親指と人差し指の2点保持である。2点保持は装着具の使用に際し非常に不安定な保持であって、挟み持っている指のわずかな動きで装着具が揺動してしまうので、使用者は非常に気を遣いながら付けまつ毛の装着作業をしなくてはならない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公昭48−6586号公報
【特許文献2】特公昭48−7948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
解決しようとする課題は、付けまつ毛装着具で挟んだ付けまつ毛をまぶたに宛がって装着する際に、付けまつ毛装着具を挟み持っている指のわずかな動きで付けまつ毛装着具が揺動してしまうので、使用者が非常に気を遣いながら付けまつ毛の装着作業をしなければならない点である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の請求項1の付けまつ毛装着具は、柄部材と挟持部材を含み、該挟持部材は対向する一対の挟持片を有し、該一対の挟持片は弾性力により開閉可能であり、各挟持片の端部に挟持部が設けられ、柄部材の縁部から挟持部材の挟持片が突出した状態で、その挟持部材が柄部材に対し進退可能となるように挟持部材は柄部材に取り付けられており、挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで後退させたときに両挟持片を閉じた状態に維持する手段を有し、その維持する手段を解除して挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで前進させるときに両挟持片が自動的に開く構成である。
【0008】
請求項2は、両挟持片を閉じた状態に維持する手段が、両挟持片が閉じられた状態にあるときに柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段であって、該規制手段は柄部材と挟持部材との間に設けられており、且つ挟持部材を移動させるときに前記規制が解除される要素が請求項1に付加された構成である。
【0009】
請求項3は、挟持部材を柄部材に対し進退可能とするために柄部材は挟持片の案内空間を有し、該案内空間を構成する案内面と該案内面に対向する挟持片との間に、柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段が設けられている要素が請求項2に付加された構成である。
【0010】
請求項4は、案内面に対向する挟持片の表面に、挟持部材の進退方向に対し垂直に延びる少なくとも1つの係止溝が設けられ、案内面には前記係止溝と平行に延びる嵌合溝が設けられ、該嵌合溝にピンが嵌合されており、該ピンが前記係止溝に係止することにより柄部材に対する挟持部材の移動が規制される要素が請求項3に付加された構成である。
【0011】
請求項5は、少なくとも一方の挟持片は、挟持部材が前進して挟持片が開いている場合において、その一方の挟持片を他方の挟持片の上側に位置するようにして見たときに、その一方の挟持片は上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有し、その曲げられた部分の頂部から挟持部にかけて前下がりに傾斜しており、挟持片を閉じるために挟持部材をその移動が規制される所定の位置まで後退させたときに、前記頂部は柄部材の縁部よりも前に位置する要素が請求項2乃至請求項4のいずれか一項に付加された構成である。
【0012】
請求項6は、挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている要素が請求項1乃至請求項5のいずれか一項に付加された構成である。
【0013】
請求項7は、双方の挟持片の同じ位置にそれぞれ長孔が設けられ、前記長孔を貫く棒状の移動停止部材が柄部材に固定されることにより、挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている要素が請求項6に付加された構成である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の付けまつ毛装着具は、柄部材と挟持部材を含み、柄部材の縁部から挟持部材の挟持片が突出した状態で、その挟持部材が柄部材に対し進退可能となるように挟持部材は柄部材に取り付けられており、挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで後退させたときに両挟持片を閉じた状態に維持する手段を有し、その維持する手段を解除して挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで前進させるときに両挟持片が自動的に開く。すなわち、本発明は従来のクリップ状に形成された付けまつ毛装着具とは異なり、柄部材に対して進退可能な別体の挟持部材を有している。従来は、付けまつ毛をまぶたに装着するときに、装着具を人差し指と親指による2点保持で挟み持って付けまつ毛の基部をまぶたに宛がっていたので非常に不安定であった。本発明は、柄部材を有しているので、例えば、人差し指と親指で装着具を挟み持つと共に、人差し指と親指以外の指で柄部材を包み持つことができる。したがって、装着具を3点保持の安定した状態で持つことができるから、付けまつ毛をまぶたに接着するときに付けまつ毛をまぶたに宛がった状態を容易に維持することができる。
【0015】
請求項2は、両挟持片を閉じた状態に維持する手段が、両挟持片が閉じられた状態にあるときに柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段であって、該規制手段は柄部材と挟持部材との間に設けられており、且つ挟持部材を移動させるときに前記規制が解除される。本発明の一般的な使用方法は、まず、挟持部材を柄部材に対して前進させて挟持片を開く。次いで、挟持片の挟持部で付けまつ毛の人工毛を挟持してから挟持部材を所定の位置まで後退させる。この作業により、挟持片が閉じた状態に維持される。次に、付けまつ毛装着具を持ち替えてから付けまつ毛の基部に接着剤を塗布する。再度付けまつ毛装着具を持ち替え、指で挟持片を閉じた状態を維持したままで挟持部材を所定の位置まで前進させる。このとき、挟持部を閉じた状態に維持していた規制は解除されるが、挟持片は閉じたままである。次に、挟持している付けまつ毛をまぶたに宛がう。少しの間そのままにしてから、挟持片を閉じていた指先を挟持片から離すと挟持片が自動的に開き装着具を付けまつ毛から離すことができる。挟持片を閉じていた指先は挟持片から離さなくても、挟持している圧力を弱めるだけでも挟持片は自動的に開く。このように、本発明は、付けまつ毛をまぶたに装着するときに、まぶたに接着した付けまつ毛から装着具を離すと、挟持片は自動的に開く構成である。すなわち、挟持片を閉じた状態に維持していた規制は挟持片が開く前にすでに解除されている。したがって、挟持片を開くときに規制を解除するときの衝撃がなく、付けまつ毛に衝撃を与えることがないから、付けまつ毛を正確にまぶたに装着できる。従来の付けまつ毛装着具は、閉じた状態にロックされている挟持片を開く際に同時にそのロックを外す構成であるから、接着剤が半乾きのときにロックを外す衝撃が付けまつ毛に伝わって付けまつ毛を正確に装着できない虞がある。
【0016】
また、本発明では、付けまつ毛の基部に接着剤を塗布した後に、再度付けまつ毛装着具を持ち替えてから、指先で挟持片を閉じた状態を維持したまま挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで前進させることができる。このとき、挟持片を閉じている指以外の指で柄部材を把持しながら挟持片を閉じている指で挟持部材を前進させることが可能であるから、その作業を片手で行うことができる。
【0017】
請求項3は、挟持部材を柄部材に対し進退可能とするために柄部材が挟持片の案内空間を有し、該案内空間を構成する案内面と該案内面に対向する挟持片との間に、柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段が設けられている。すなわち、挟持部材の移動を規制する場所は柄部材の中にある。そして、挟持片を閉じたり開いたり、あるいは移動させたりする操作は挟持片に指先を宛がうことにより行われるから、この操作する場所と、挟持片を閉じた状態に維持し解除する場所とが離れている。従来は、操作する場所と、挟持片を閉じた状態に維持し解除する場所とが同じ場所であったために、使用者の意思に反して挟持片が閉じた状態にロックされたりそのロックが解除されたりする虞があった。本発明では、操作する場所と、挟持片を閉じた状態に維持し解除する場所とが離れているので、従来のような誤操作をする虞がない。
【0018】
請求項4は、案内面に対向する挟持片の表面に、挟持部材の進退方向に対し垂直に延びる少なくとも1つの係止溝が設けられ、案内面には前記係止溝と平行に延びる嵌合溝が設けられ、該嵌合溝にピンが嵌合されており、該ピンが前記係止溝に係止することにより柄部材に対する挟持部材の移動を規制することができる。また、挟持部材を移動させるときに挟持部材とピンとの摩擦力によりピンが回転するから、挟持部材を円滑に移動させることができる。
【0019】
請求項5は、少なくとも一方の挟持片は、挟持部材が前進して挟持片が開いている場合において、その一方の挟持片を他方の挟持片の上側に位置するようにして見たときに、その一方の挟持片は上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有し、その曲げられた部分の頂部から挟持部にかけて前下がりに傾斜しており、挟持片を閉じるために挟持部材をその移動が規制される所定の位置まで後退させたときに、前記頂部は柄部材の縁部よりも前に位置する。この請求項5の構成による効果は以下のとおりである。
【0020】
本発明では、柄部材を手に持って、その手の人差し指と親指で挟持片を挟み持ち、挟持部材を進退させることができる。その際、挟持部材を後退させるときは、弾性力によって開いていた挟持片をその弾性力に抗して閉じるのであるから、挟持部材を前進させるよりも大きな力が必要である。したがって、両挟持片が共に平面状に形成されていると、挟持部材を後退させようとするときに指先が挟持片の表面を滑ってしまうから後退させにくい。請求項5は、少なくとも一方の挟持片は上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有し、その曲げられた部分の頂部から挟持部にかけて前下がりに傾斜しているので、その頂部の前に指先を宛がえば、指先が頂部にひっかかって指先と挟持片の摩擦力を大きくすることができるから挟持部材を後退させやすくすることができる。また、挟持部材を移動が規制される所定の位置まで後退させたときに、頂部は柄部材の縁部よりも前に位置するから、この所定の位置まで指先に対する頂部のひっかかり作用が継続し挟持部材を一杯に後退させることができる。
【0021】
請求項6は、挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている。また、請求項7は、双方の挟持片の同じ位置にそれぞれ長孔が設けられ、前記長孔を貫く棒状の移動停止部材が柄部材に固定されることにより、挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている。したがって、挟持部材を移動させるときに、挟持部材が柄部材から抜け出す虞がない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】挟持部材を柄部材に対して前進させて挟持片を開いた状態の上面図である。
【図2】挟持部材を柄部材に対して前進させて挟持片を開いた状態の側面図である。
【図3】挟持片を開いた状態の挟持部材の側面図である。
【図4】挟持片を開いた状態の挟持部材の下面図である。
【図5】柄部材を構成する上側部材の斜視図である。
【図6】柄部材を構成する下側部材の斜視図である。
【図7】本発明の組立構造を示す断面図である。
【図8】接着剤を塗布し挟持部材を前進させた状態を下側から見た斜視図である。
【図9】挟持部材を柄部材に対して後退させて挟持片を閉じた状態の上面図である。
【図10】挟持部材を柄部材に対して後退させて挟持片を閉じた状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
次に、本発明の実施形態を説明する。付けまつ毛装着具1は、柄部材2に挟持部材3が進退可能に取り付けられている。挟持部材3は、一対の挟持片4,5が対向するようにそれらの基部6,7で結合されている。図1に示すように、上側の挟持片4はY字形に形成されて前部分が二股に分かれ一対のアーム11,11が形成されている。Y字形とせずU字形でもT字形でもよくI字形でもよい。さらに、アーム11,11の先端に挟持部8,8が形成されている。挟持部8,8はアーム11,11よりも幅が広く、アーム11,11の延びる方向に対して傾斜するように形成されている。これは、付けまつ毛を挟む面積を大きくするためと、付けまつ毛が弧状をなしていることに対応するためである。
【0024】
また、図3に示すように、上側の挟持片4は、上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有している。その弧状に曲げられた部分は頂部10を有し、挟持片4はその頂部10から挟持部8にかけて前下がりに傾斜している。挟持片4にはその頂部10よりも後方の部分に長孔12が設けられている。
【0025】
図3に示すように、下側の挟持片5は弧状に曲げられた部分を有していない。但し、本発明において、下側の挟持片5が、上側の挟持片4の頂部10に対応する位置で下側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有してもよいし、上側の挟持片4と同様に上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有してもよい。図4は、挟持部材3を下側から見た図である。下側の挟持片5も上側の挟持片4と同様のアーム13,13と、それらの先端に挟持部9,9が形成されており、長孔14も設けられている。下側の挟持片5の長孔14と基部7との間の下面に、長さ方向に垂直に延びる2つの係止溝15,16が間隔をあけて設けられている。
【0026】
さらに図7に示すように、挟持部材3の移動停止部材として機能するボルト17が上下の挟持片4,5の長孔12,14を貫通し、ボルト17の抜け出しを防止するナット18がボルト17に螺合されている。長孔12,14を貫通するボルト17により、挟持部材3が柄部材2から抜け出すことを防止する。長孔12,14が挟持部材3の最大移動範囲を決定するが、実際上の移動範囲は両係止溝15,16間の距離である。ボルト17の頭部26と上側の挟持片4との間にワッシャ19が装着され、ナット18と下側の挟持片5との間にワッシャ20が装着されている。なお、挟持部材3は金属で形成されているがこれに限定されるものでなく、使用に耐え得る強度を有しているのであればプラスチックなどのその他の材料であっても差し支えない。
【0027】
図5及び図6に示すように、柄部材2は上側部材21と下側部材22とから成り、上側部材21と下側部材22とを溶着することにより形成されている。溶着以外の接合、例えば接着剤を用いた接合などでもよい。柄部材2はプラスチックで成形することが好ましいがこれに限定されるものではない。上側部材21は、その両側及び後側に壁23が形成されている。また、上側部材21の両側下面の前後にそれぞれ一対の嵌合条溝49,49,50,50が形成され、前後の嵌合条溝49,50の間にそれぞれ嵌合丸穴51,51が形成されている。天井面24の前部には六角形状の凹所25が形成されている。この凹所25は、付けまつ毛装着具1の組立時にボルト17の頭部26を嵌入させるためのものである。柄部材2の下側部材22も上側部材21と同様にその両側及び後側に壁27が形成されている。また、下側部材22の両側上面の前後にそれぞれ一対の嵌合突条52,52,53,53が形成され、前後の嵌合突条52,53の間にそれぞれ嵌合突起54,54が形成されている。底面28の前部には六角形状の凹所29が形成されている。この凹所29は、付けまつ毛装着具1の組立時にナット18を嵌入させるためのものである。凹所29よりも後方の底面28に、長さ方向に対し垂直に延びる嵌合溝30が形成されている。この嵌合溝30はピン31を嵌合させるためのものである。上側部材21と下側部材22とを溶着するときは、事前に、上側部材21の嵌合条溝49,49,50,50と嵌合丸穴51,51に下側部材22の嵌合突条52,52,53,53と嵌合突起54,54を嵌合し両者を結合することにより、上側部材21と下側部材22の組み付けが容易に行える。前述したように、柄部材2の上側部材21の両側と後側に壁23が形成され、下側部材22の両側と後側に壁27が形成されているので、付けまつ毛装着具1を組み立てるときに上下部材22,23を溶着すると、壁23,27に囲まれた空間が形成される。この空間が挟持片4,5の案内空間32となる。案内空間32は、挟持片4,5の後部分を前後方向に移動できるように案内することができる形状に形成されている。
【0028】
次に、本実施態様の付けまつ毛装着具を柄部材2の上側部材21と下側部材22が分離している状態から組み立てる方法の一例について説明する。まず、図3及び図4に示すようにボルト17を挟持片4,5の長孔12,14に上から通す。次に、下側に突き出たボルト17の軸にナット18を螺合する。次いで、柄部材2の下側部材22の嵌合溝30にピン31を嵌合する。次に、挟持片4,5の後部分を下側部材22の案内空間32に納める。そのとき、ナット18を凹所29に嵌入する。次いで、柄部材2の上側部材21を下側部材22の上に載せて挟持片4,5の後部分を上側の案内空間32と下側の案内空間32内に納める。そのときに、ボルト17の頭部26を凹所25に嵌入する。次に、上側部材21の壁23と下側部材22の壁27を溶着して結合する。溶着により柄部材2が形成される。長孔12,14に挿通されているボルト17の頭部26が凹所25に嵌入し、ナット18が凹所29に嵌入しているので、ボルト17は柄部材2に対して固定されている。したがって、挟持部材3を進退させたときに、挟持片4,5の長孔12,14の端部にボルト17が当たって挟持部材3の進退の範囲が限定される。すなわち、挟持部材3の移動停止部材であるボルト17によって挟持部材3の進退の範囲が限定される。上側部材21及び下側部材22のそれぞれの前側には壁23と壁27は形成されていないから、上側部材21と下側部材22を溶着したときに、柄部材2の前面に開口33が形成される。挟持片4,5がこの開口33から外部に突き出て挟持部材3が進退可能に移動する。挟持部材3を後退させたときに、開いていた挟持片4,5が開口33の上下の縁部に当たって挟持片4,5が閉じる。挟持片4,5が閉じたときに挟持部8,9が付けまつ毛44の人工毛46を挟持する圧接力は開口33の上下幅によって決定される。この圧接力は挟持した付けまつ毛44が動かない程度の大きさがあればよい。なお、挟持片4,5が開口33の上下の縁部に当たって挟持片4,5が閉じる構成や、付けまつ毛44の人工毛46を挟持する圧接力を開口33の上下幅によって決定する構成に代えて、ボルト17及びナット18が開口33の作用を代行してもよい。
【0029】
組み立てられた付けまつ毛装着具1の柄部材2の側面の形状は、図2に示すように柄部材2の前端部付近から後端にかけてその側面の上下幅が徐々に小さくなるように変化している。そして、上側部材21と下側部材22の接合線34を基準として見れば明らかなように、柄部材2の後半部では上側部材21の上下幅よりも下側部材22の上下幅の方が小さくなっている。また、上側部材21の上面36は全長に亘って緩やかな凸の弧状であるが、下側部材22の底面35はその中間に凹の弧状に形成された部分があり、その部分から後端までの底面35はその部分の柄部材が削ぎ落とされたように接合線34寄りに後退しており、後退面37を形成している。このように形成したのは、後述するように、柄部材2を持って挟持片4,5を進退させるときに操作しやすくするためのものである。
【0030】
次に本発明の使用方法の一例について説明する。まず、付けまつ毛装着具1の右手での持ち方について説明すると、図8に示すように、人差し指38が挟持片4の長さ方向に対しほぼ垂直になるようにして、人差し指38を上側の挟持片4の頂部10よりもやや前側の人差し指宛がい面47に宛がう。また、親指39が下側の挟持片5に対しほぼ同方向となるようにして、親指39を下側の挟持片5の底面に宛がう。小指40は、柄部材2を包み込むようにして、その指先を柄部材2の後退面37に宛がって柄部材2を保持する。下側部材22の下面35の後半部を後退面37としたことでその部分の柄部材2の上下幅が小さく形成されているので、小指40を折り曲げることによってその指先を後退面37に無理なく宛がうことができる。したがって、小指だけでも柄部材2の後部分を包み込んでしっかり柄部材2を保持することができる。薬指41は柄部材2を軽く包み持つように柄部材2に宛がう。中指42は柄部材2の前端部側面43に宛がう。図1に示すように、柄部材2の前端部側面43は弧状に滑らかに形成されているので、中指42を宛がっても痛みを生じさせない。また、中指42は柄部材2を持つときに大きな保持力を発揮する指でないので、中指42は柄部材2の前端部側面43に添えるようして宛がえばよい。柄部材2の前端部付近の上下幅は柄部材2の中で最も大きいので、中指42を側面に宛がいやすのである。付けまつ毛装着具1はこのようにして手で持つと作業しやすい構成となっている。
【0031】
使用者を右利きの女性として付けまつ毛44を装着するときは、まず、付けまつ毛装着具1の挟持部材3を前進させ挟持片4,5を開いた状態にしてから、前述したように付けまつ毛装着具1を右手に持つ。なお、挟持部材3を前進させたときにピン31に係止溝16が係止して挟持部材3の移動が規制される。次に、人差し指38と親指39とで挟持片4,5を閉じることにより、付けまつ毛保管容器(図示せず。)内の付けまつ毛44の人工毛46をその基部45が外側になるようにして挟持部8,9で挟み、付けまつ毛44を挟持する。なお、付けまつ毛保管容器内の付けまつ毛44を挟持するときの付けまつ毛装着具1の右手での持ち方については、前述した方法に代えて、親指を上側の挟持片4の頂部10付近に宛がい、人差し指を下側の挟持片5の底面に宛がい、他の指で柄部材2を保持してもよい。
【0032】
次いで、人差し指38と親指39とで挟持片4,5を閉じたまま、その挟持片4,5を閉じた状態に維持できる位置まで挟持部材3をその弾性力に抗して強制的に後退させる。すなわち、ピン31に係止溝15が係止するまで後退させる。本実施態様では、挟持部材3を一杯に後退させたときにピン31が係止溝15に係止するが、一杯に後退させない状態で係止する構成であってもよい。挟持部材3を後退させるときに挟持部材3の移動に伴いピン31が回転するので後退は円滑に行うことができる。ただし、弾性力により開いている挟持片4,5をその弾性力に抗して閉じるのであるから、挟持部材3を移動させるために一定の力が必要であり、挟持片4とそれに宛がった人差し指38との間の摩擦力がその一定の力よりも小さいと人差し指38が滑る。そこで、前述したように人差し指38を上側の挟持片4の頂部10よりもやや前側の人差し指宛がい面47に宛がうことによって、頂部10が滑り止めの役目を果たし人差し指が滑る虞がない。また、挟持部材3を後退させることによって人差し指38も後退するから、柄部材2の前端部側面43に宛がわれている中指42が窮屈になって操作しにくくなるので、中指42を柄部材2から離すことによって円滑に後退させることができる。中指42を柄部材2から離しても柄部材2を確実に包み持っていることに変わりはない。これは、前述したように、小指40の指先を柄部材2の後退面37に宛がって柄部材2を包み持ったときに、その部分の柄部材2の上下幅が小さく形成されているから、小指を折り曲げることによってその指先を後退面37に無理なく宛がうことができて、小指だけでも柄部材2の後部分をしっかり包み持てるからである。すなわち、本発明の付けまつ毛装着具1は人差し指38と親指39と小指40との3点でしっかり持つことができる。また、図10に示すように、挟持部材3を一杯に後退させたときに、頂部10は柄部材2の前端部よりも前に位置するから、この位置まで指先に対する頂部10のひっかかり作用が継続し挟持部材3を一杯に後退させることができる。
【0033】
挟持片4,5で付けまつ毛44を挟持した状態で挟持部材3を後退させることにより、挟持片4,5は閉じた状態が維持される。そこで、付けまつ毛装着具1を左手に持ち替え、滑らないように指先をリブ48に載せて、右手で接着剤の塗布具を持って接着剤を付けまつ毛44の基部45に塗布する。そして、接着剤の塗布具は手から離し、付けまつ毛装着具1を再度右手に持つ。次に、人差し指38と親指39とで係止状態にある挟持部材3を柄部材2に対して強制的に前進させる。
【0034】
このようにして挟持部材3を前進させた後に、挟持片4,5を閉じた状態を維持しつつ付けまつ毛44の基部45をまぶたに宛がい、少しの間そのままにしてから人差し指38と親指39の力を抜いて挟持片4,5を弾性力によって自然に開かせる。そして、付けまつ毛装着具1をまぶたから離して装着作業が終了する。なお、付けまつ毛44の基部45に接着剤を塗布するときに、付けまつ毛装着具1を手に持たずに、柄部材2の上側部材21を下側にして化粧台の上に置き、柄部材2を手で押さえながら塗布すると付けまつ毛装着具1が安定するので、円滑に塗布できる。その際、下側部材22の表面に設けられているリブ48に指先を宛がって押さえると、付けまつ毛装着具1をいっそう安定させることができる。また、付けまつ毛装着具1を化粧台の上に置いたまま、接着剤が少し乾くまで待つこともできる。
【0035】
次に、本実施態様のサイズについて説明する。挟持部材3を前進させたときの付けまつ毛装着具1の全長は約110mmである。挟持部材3を後退させたときの付けまつ毛装着具1の全長は約95mmである。したがって、柄部材2に対する挟着部材3の移動範囲は約15mmである。柄部材2の最大上下幅は前端部付近の約13mmであり、最小上下幅は後端部付近の約6mmである。柄部材2の最大横幅は約14mmであり、最小横幅は約10mmである。また、挟持部材3の先端の横幅は約28mmである。サイズは以上の通りであるが、本発明がこれらの数値に限定されないことは勿論である。
【0036】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、付けまつ毛装着具1を持ち替えるときのために、滑り止め用のリブ48を柄部材2の上側部材21と下側部材22の表面に設けてもよい。また、挟持部材3を金属で形成したときに、挟持片4,5の人差し指又は親指の指先が当たる部分をショットブラストなどによる滑り止め面としてもよい。また、挟持部8,9の内面にプラスチック板や軟質樹脂の緩衝材を貼り付けることによって、挟持した付けまつ毛の人工毛46に対する当たりを弱くして毛を保護するようにしてもよい。この場合、緩衝材などを貼り付けることによって、挟持部8,9が付けまつ毛44の人工毛46を挟持する適切な圧接力は開口33の上下幅の加減により得ることができる。なお、圧接力を開口33の上下幅の加減によることなく、ボルト17及びナット18で開口33の作用を代行することにより圧接力を適切にすることもできる。また、上側の挟持片4はY字形に形成されて前部分が二股に分かれ一対のアーム11,11が形成されているが、その二股に分かれた部分55から前方に指宛て専用の突片(図示せず。)を一体に突出させてもよい。すなわち、両アーム11,11の間に突片を設ける。そして、その突片は下側に凸の弧状をなすように曲げるとさらに好ましい。この突片に指を宛がうと操作が安定する。
【産業上の利用可能性】
【0037】
柄部材2の縁部から挟持部材3の挟持片4,5が突出した状態でその挟持部材3が柄部材2に対し進退可能に挟持部材3が柄部材2に取り付けられることにより、付けまつ毛をまぶたに装着するときに付けまつ毛装着具1を人差し指と親指と、それ以外の指の3点で保持するので、安定した状態で付けまつ毛をまぶたに装着することができる。
【符号の説明】
【0038】
1 付けまつ毛装着具、 2 柄部材、 3 挟持部材、 4 上側の挟持片、 5 下側の挟持片、 6 基部、 7 基部、 8 挟持部 9 挟持部、 10 頂部、 11 アーム、 12 長孔、 13 アーム、 14 長孔、 15 係止溝、 16 係止溝、 17 ボルト、 18 ナット、 19 ワッシャ、 20 ワッシャ、 21 上側部材、 22 下側部材、 23 壁、 24 天井面、 25 凹所、 26 ボルトの頭部、 27 壁、 28 底面、 29 凹所、 30 嵌合溝、 31 ピン、 32 案内空間、 33 開口、 34 接合線、 35 下面、 36 上面、 37 後退面、 38 人差し指、 39 親指、 40 小指、 41 薬指、 42 中指、 43 前端部側面、 44 付けまつ毛、 45 基部、 46 人工毛、 47 人差し指宛がい面、 48 リブ、 49 嵌合条溝、 50 嵌合条溝、 51 丸穴、 52 嵌合突条、 53 嵌合突条、 54 嵌合突起 55 アームが二股に分かれた部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柄部材と挟持部材を含み、該挟持部材は対向する一対の挟持片を有し、該一対の挟持片は弾性力により開閉可能であり、各挟持片の端部に挟持部が設けられ、柄部材の縁部から挟持部材の挟持片が突出した状態で、その挟持部材が柄部材に対し進退可能となるように挟持部材は柄部材に取り付けられており、挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで後退させたときに両挟持片を閉じた状態に維持する手段を有し、その維持する手段を解除して挟持部材を柄部材に対して所定の位置まで前進させるときに両挟持片が自動的に開くことを特徴とする付けまつ毛装着具。
【請求項2】
両挟持片を閉じた状態に維持する手段は、両挟持片が閉じられた状態にあるときに柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段であって、該規制手段は柄部材と挟持部材との間に設けられており、且つ挟持部材を移動させるときに前記規制が解除される請求項1記載の付けまつ毛装着具。
【請求項3】
挟持部材を柄部材に対し進退可能とするために柄部材は挟持片の案内空間を有し、該案内空間を構成する案内面と該案内面に対向する挟持片との間に、柄部材に対する挟持部材の移動を規制するための規制手段が設けられている請求項2記載の付けまつ毛装着具。
【請求項4】
案内面に対向する挟持片の表面に、挟持部材の進退方向に対し垂直に延びる少なくとも1つの係止溝が設けられ、案内面には前記係止溝と平行に延びる嵌合溝が設けられ、該嵌合溝にピンが嵌合されており、該ピンが前記係止溝に係止することにより柄部材に対する挟持部材の移動が規制される請求項3記載の付けまつ毛装着具。
【請求項5】
少なくとも一方の挟持片は、挟持部材が前進して挟持片が開いている場合において、その一方の挟持片を他方の挟持片の上側に位置するようにして見たときに、その一方の挟持片は上側に凸となるように弧状に曲げられた部分を有し、その曲げられた部分の頂部から挟持部にかけて前下がりに傾斜しており、挟持片を閉じるために挟持部材をその移動が規制される所定の位置まで後退させたときに、前記頂部は柄部材の縁部よりも前に位置する請求項2乃至請求項4のいずれか一項記載の付けまつ毛装着具。
【請求項6】
挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている請求項1乃至請求項5のいずれか一項記載の付けまつ毛装着具。
【請求項7】
双方の挟持片の同じ位置にそれぞれ長孔が設けられ、前記長孔を貫く棒状の移動停止部材が柄部材に固定されることにより、挟持部材が柄部材に対し抜け出し不能に取り付けられている請求項6記載の付けまつ毛装着具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−72510(P2012−72510A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216417(P2010−216417)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(000001454)株式会社貝印刃物開発センター (123)