説明

伝送制御装置、伝送制御プログラム及び終端装置

【課題】グラント周期を変えずに、下りデータの送信効率を改善することができるようにする。
【解決手段】本発明は、接続する複数の対向装置を検出し、各対向装置との間の往復伝送時間を求めるディスカバリ処理手段と、各対向装置との間の往復伝送時間に基づいて、各対向装置との間の距離に応じた順位付け情報を決定し、各対向装置との間の往復伝送時間及び順位付け情報に基づいて、各対向装置の制御信号の送信待機時間を求め、各対向装置に通知する。また、各対向装置との間で通信を開始する際に、各対向装置に送信待機時間の計時開始を示す計時開始信号を、全ての対向装置に送信させる伝送制御装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝送制御装置、伝送制御プログラム及び終端装置に関するものである。例えば、本発明は、光アクセスネットワークを構成する終端装置に適用し得るものである。
【背景技術】
【0002】
光アクセスネットワークを低コストに構築するシステムとして、EPON(Ethernet PON)システムが広く利用されている。EPONシステムの1つとして、国内ではGE−PON(Gigabit Ethernet PON)システムが広く普及している。現在、例えば集合住宅や住宅密集地等において、GE−PONのネットワークサービスを適用する際、運用コストを抑えるため、多分岐に対応したGE−PONが必要とされる。
【0003】
図2は、従来のGE−PONの全体構成を示す全体構成図である。図2に示すように、GE−PONでは、各ONU92−1〜92−3からOLT91への上り方向の帯域を、接続しているONU92−1〜92−3が分け合っている。
【0004】
帯域割当方法の1つとして、動的帯域割当(DBA:Dynamic Bandwidth Allocation)がある。
【0005】
図3は、動的帯域割当(DBA)による帯域割当方法を説明する説明図である。DBAによる帯域割当方法は、各ONUで発生しているトラフィック量をOLTが把握し、各トラフィック量に応じた通信帯域を割り当てる。これにより、無駄なく効率的な帯域割当を実現している。
【0006】
ONU92−1及び92−2からOLT91へのトラフィック量の通知にはレポートフレームが使用され、OLT91からONU92−1及び92−2への割当帯域の通知にはゲートフレームが使用される。
【0007】
レポートフレーム及びゲートフレームはそれぞれ、例えばIEEE 802.3av/ah.stdで標準化されているものが使用される。図4は、レポートフレーム及びゲートフレームの構成を説明する説明図である。
【0008】
図3において、ONU92−1及び92−2は、発生している上リトラフィック量をレポート(図3では「R」と表記する)によってOLT91に通知する。
【0009】
また、OLT91は、レポートを受信する時間帯を設けて、接続している全ONU分のレポートを受け取る。その後、OLT91は、各ONU92−1及び92−2に割り当てる帯域を決定する。この帯域割当は、グラント周期と呼ばれる所定時間毎に行われる。ここで決定される帯域は、次グラントにおける割当帯域となる。決定された帯域情報は、ゲート(図3では「G」と表記する)によって各ONU92−1及び92−2に通知する。
【0010】
各ONU92−1及び92−2は、ゲートに基づいて、次グラントにおける自身のレポート及び上りデータの送信時間を読み取り、その送信時間になるとレポート及び上りデータの送信を開始する。
【0011】
このような動作によって、上り通信が実現される。図3のRTT(Round Trip Time)は、OLT91が全ONUにゲートを送信する開始時から、ONUから最初にレポートが返信されてきた時までの時間を示す。
【0012】
このように、ONU92−1〜92−2からのレポートによりデータ蓄積量を収集して、DBA計算を行なう方法をSR−DBA(Status Reporting DBA)と呼ぶ。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】榊正彦,川口和穂,「光アクセスGE−PONシステム MileStar」,沖テクニカルレビュー第197号,Vol.71,No.1,2004年1月
【非特許文献2】Kazutaka Hara,etc,「Flexible load balancing technique using dynamic wavelength bandwidth allocation(DWBA) Toward 100Gbit/s−class−WDM/TDM−PON」,ECOC2010,Tu.3.B2, September,2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
上述した従来のDBA方式では、OLTが、全ONU分のレポートをOLTで収集する必要がある。そのため、OLTから全ONUに対してゲートが送信される必要がある。
【0015】
図5は、従来方式の下りフレームの送信方法を説明する説明図である。グラント周期は、ゲート送信時間(Gate送信)とデータ送信時間(Data送信)に分けられる。図5(A)に示すように、データ送信時間において、OLTは、各信号間に、ある一定の時間間隔(lPG:lnter Packet Gap)を設けて送信する。
【0016】
図4に示すように、ゲートによる上り送信の指示は、「Grant#1」でレポートの送信指示、「Grant#2」で上りデータの送信指示を行っている。このとき、送信を開始する時間(Start Time)と送信時間(Length)を指示する。
【0017】
「Start Time」は、各ONUの送信フレームが衝突せず、時間分割多重するように指示される。「Length」の値は、レポート送信時にはレポートサイズになり、上リデータ送信時には割当帯域に対応した時間幅になる。ここで、レポートサイズは、同図のレポートフレームフォーマットで決められているように固定サイズとなる。
【0018】
レポートの送信指示は、OLTが、接続している全ONUに対して実施される。一方、上リデータの送信指示は、上リトラフィックが発生しているONUだけが実施する。
【0019】
接続ONU数が少ないときは、ゲート送信数も少ないため、グラント周期のほとんどを下リデータ送信時間に利用できる。
【0020】
しかし、光アクセスネットワークが多分岐し、接続ONU数が多くなると、ゲート送信数は比例して多くなり、それに伴いゲート送信時間を拡大しなくてはならない。これにより、下リデータ送信時間が圧迫されるため、下リデータの送信効率悪化が発生する(図5(B)参照)。
【0021】
この課題の解決策として、グラント周期を長くする方法が考えられる。しかし、グランド周期とデータ送信の遅延時間は比例関係であるため、この解決策によると遅延時間が増大することになる。
【0022】
そのため、グラント周期を変えずに、下りデータの送信効率を改善することができる伝送制御装置、伝送制御プログラム及び終端装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0023】
かかる課題を解決するために、第1の本発明は、複数の対向装置との間で授受される制御信号に基づいて、時分割通信帯域を割り当て各対向装置の伝送制御を行なう伝送制御装置において、(1)接続する複数の対向装置を検出し、検出された各対向装置との間の往復伝送時間を求めるディスカバリ処理手段と、(2)各対向装置との間の往復伝送時間に基づいて、各対向装置との間の距離に応じた順位付け情報を決定する順位付け情報決定手段と、(3)各対向装置との間の往復伝送時間及び順位付け情報に基づいて、各対向装置の制御信号の送信待機時間を求める送信待機時間算出手段と、(4)各対向装置の送信待機時間を、各対向装置に通知する送信待機時間通知手段と、(5)各対向装置との間で通信を開始する際に、各対向装置に送信待機時間の計時開始を示す計時開始信号を、全ての対向装置に送信させる計時開始信号送信手段とを備えることを特徴とする伝送制御装置である。
【0024】
第2の本発明は、複数の対向装置との間で授受される制御信号に基づいて、時分割通信帯域を割り当て各対向装置の伝送制御を行なう伝送制御プログラムにおいて、コンピュータを、(1)接続する複数の対向装置を検出し、検出された各対向装置との間の往復伝送時間を求めるディスカバリ処理手段、(2)各対向装置との間の往復伝送時間に基づいて、各対向装置との間の距離に応じた順位付け情報を決定する順位付け情報決定手段、(3)各対向装置との間の往復伝送時間及び順位付け情報に基づいて、各対向装置の制御信号の送信待機時間を求める送信待機時間算出手段、(4)各対向装置の送信待機時間を、各対向装置に通知する送信待機時間通知手段、(5)各対向装置との間で通信を開始する際に、各対向装置に送信待機時間の計時開始を示す計時開始信号を、全ての対向装置に送信させる計時開始信号送信手段として機能させることを特徴とする伝送制御プログラムである。
【0025】
第3の本発明は、第1の本発明の伝送制御装置を備えることを特徴とする終端装置である。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、グラント周期を変えずに、下りデータの送信効率を改善することができる。
【0027】
本発明は、通信事業者の中央局側に設置される局側終端装置(OLT:Optical Line Terminal)と複数の加入者側にそれぞれ設置される端末装置(ONU:Optical Network Unit)との間を、受動光ネットワーク(PON:Passive Optical Network)を介して接続して構成される光アクセスシステムの端末装置における帯利用効率改善に関する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のOLTと各ONUとの間のゲート−レポートの送信方法を説明する説明図である。
【図2】従来のGE−PONの全体構成を示す全体構成図である。
【図3】動的帯域割当(DBA)による帯域割当方法を説明する説明図である。
【図4】レポートフレーム及びゲートフレームの構成を説明する説明図である。
【図5】従来方式の下りフレームの送信方法を説明する説明図である。
【図6】従来方式の下りフレームの送信時間と本発明の下りフレームの送信時間とを比較する図である。
【図7】第1の実施形態のGE−PONを採用した光アクセスシステムの全体構成と、OLT及びONUの内部構成とを示す構成図である。
【図8】第1の実施形態におけるMPCP処理部の詳細な機能部を示す機能ブロック図である。
【図9】第1の実施形態のOLTの伝送制御方法の処理動作を示すフローチャートである。
【図10】第1の実施形態のOLTがゲートフレームを送信する方法を説明する説明図である。
【図11】第1の実施形態における下りフレームモデルの送信方法を説明する説明図である。
【図12】第1の実施形態の検証で使用したパラメータ値である。
【図13】第1の実施形態において、図12に示すパラメータ値を用いたときの下りデータ送信効率である。
【図14】第2の実施形態のWDM/TDM−PONを採用した光アクセスネットワークの全体構成と、OLT及びONUの内部構成とを示す構成図である。
【図15】第2の実施形態のOLTによるONUの集約収容方法を説明する説明図である。
【図16】第2の実施形態の集約収容状態の下り送信フレームの送信処理を説明する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
(A)本発明の基本的概念
まず、本発明の基本的概念について図面を参照しながら説明する。本発明に係る伝送制御方式は、レポート送信時間を予めONUに通知しておくことでゲート送信数を減らすというものである。これにより、光アクセスネットワークが多分岐し、ゲート送信数が増大する場合でも、下リデータ送信効率の改善を図ることができる。
【0030】
図1は、OLTと各ONUとの間のゲート−レポートの送信方法を説明する説明図である。図1において、横軸は時間経過を示し、縦方向は距離を示している。つまり、ONU2−2は、ONU2−2よりも、OLT1から遠方に位置している。なお、以下では、ONU全体を示す場合には、「ONU2」のように示して説明する。
【0031】
図1において、OLT1は、全ONU2の送信タイミングを、1つのゲート送信により一括で指示する。
【0032】
各ONU2−1及び2−2は、このゲートを受信してから、予め指示されていたwait time(レポート送信時間に対応)分待機し、wait time時間経過後にレポートを送信する。
【0033】
すなわち、各ONU2−1及び2−2において、ゲートは、wait time分の待機時間をカウントアップ開始するトリガーとして機能する。
【0034】
ここで、ONU2に対して予め指示するwait timeの算出はOLT1が行なう。wait timeの算出方法は、OLT1とONU2との間の往復伝送時間に応じて求める。すなわち、OLT1−ONU2間の往復伝送時間が大きくなるほど、wait timeが大きくなるように、OLT1はwait timeを求める。
【0035】
wait timeの算出方法は、種々の方法を広く適用することができるが、その一例として、式(1)のように定義することができる。
【0036】
Wait Time=(RTT_max)−(RTT)+(Report size×order)…(1)
「RTT_max」は、通信システムの最大伝送距離における往復伝送時間を示す。例えば、5ns/mとすると、最大伝送距離20kmの場合、200usとなる。
【0037】
「RTT」は、ONU設置位置におけるOLT1−ONU2間の往復伝送時間を示す。例えば、図1において、OLT1とONU2−1との間の、往路伝送時間と復路伝送時間を足し合わせた時間が該当する。例えば、ONU2−1がOLT1から10kmの位置にある場合、5ns/mで計算すると、100usとなる。
【0038】
「Report size」は、図4に示したフレームフォーマットにより規定されるレポートサイズの時間幅である。
【0039】
「order」は、OLT−ONU間の距離により決定される順位である。例えば、接続ONU数が1000台の場合、一番近いONUを「0番目」とし、一番遠いONUを「999番目」と設定する。また、逆に、遠い順に設定するようにしてもよい。
【0040】
OLT1−ONU2間の往復伝送時間は、OLT1−ONU2間の距離に左右され得る。そこで、式(1)は、OLT1−ONU2間の距離を予め考慮することで、各ONU2のwait timeを算出するものである。
【0041】
式(1)に従って、wait timeを決定し、各ONU2が、それぞれのwait time経過後にレポートを送信することで、各ONU2から送信されたレポートは衝突することなく、時間分割多重接続(Time division multiple access:TDMA)することができる。
【0042】
また、本発明は、OLT1が送信するゲート送信数は「1回」だけである。すなわち、図6(A)に示す従来方式の場合、OLT1は、全ONU2に対してそれぞれレポート送信指示のためのゲートを送信している。しかし、図6(B)に示すように、本発明は、OLT1が1台分のゲート送信数に減らすことができるため、その分時間短縮が図れる。この短縮した時間分が下りデータ送信効率の改善となる。
【0043】
また、OLT1は、上りトラフィックの指示を、レポート送信トリガーの送信後に、ゲートを送信して実施する。このとき、ゲートにはGrant#2の情報(「Start time」,「length」)が搭載されている。送信対象となるONU2は、帯域割当されたONU2となる。したがって、全ONU2が帯域を割り当てされている場合、本発明は従来と同じ数だけゲートを送信することになり、下りデータの送信効率も従来と同等になる。本発明は、2台以上帯域割り当てが発生していないONU2がいる場合にも改善効果が期待できる。
【0044】
(B)第1の実施形態
以下では、本発明の伝送装置、伝送プログラム及び終端装置の第1の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0045】
第1の実施形態は、例えば、GE−PONを採用した光アクセスシステムに本発明を適用する場合を例示して説明する。
【0046】
(B−1)第1の実施形態の構成
(B−1−1)全体構成
図7は、第1の実施形態のGE−PONを採用した光アクセスシステムの全体構成と、OLT及びONUの内部構成とを示す構成図である。
【0047】
図7において、第1の実施形態の光アクセスシステム10は、光ファイバ接続により、OLT1と、複数台のONU2−1〜2−n(nは正の整数)と、光スプリッタ5とを有する。なお、以下では、ONU全体を説明するときには「ONU2」と表記して説明する。
【0048】
光アクセスシステム10は、光スプリッタ5を介して、OLT1と各ONU2とが光ファイバにより1対n接続を実現するネットワークである。光アクセスシステム10は、例えば、IEEE802.3ah等に規格化されている標準化技術を採用することができる。
【0049】
OLT1は、局側の回線終端装置である。OLT1は、光スプリッタ5を介して複数のONU2と接続し、又上位ネットワーク3と接続するものである。すなわち、OLT1は、ONU2からのデータを上位ネットワーク3に送信したり、又上位ネットワーク3からのデータをONU2に送信したりする。これにより、ONU2に接続するユーザ端末4の上位ネットワークへのアクセスを実現させることができる。なお、OLT1とONU2との間は、GEPON方式の場合、MACフレームを用いて通信する。そのため、同じくMACフレーム単位で通信するEthernetと親和力の高い通信方式になっている。
【0050】
ONU2は、例えば加入者宅等に設けられるユーザ側の回線終端装置である。ONU2は、光スプリッタ5を介してOLT1と接続し、又ユーザ端末4と接続するものである。なお、図7では、ユーザ端末4が1台の場合を例示しているが、1台のONU2に複数台のユーザ端末4が接続してもよい。
【0051】
光スプリッタ5は、OLT1からの光信号を複数に分岐して複数のONU2に送信し、複数のONU2からの光信号を結合した光信号をOLT1に送信するものである。光スプリッタ3は、光信号の分岐、結合を行なうものであれば、様々な素子を適用することができる。
【0052】
(B−1−2)OLT1の内部構成
図7において、OLT1は、制御部11、制御部11の制御によりフレームを送信する送信部12、WDMフィルタ部14から受信信号からフレームを受信する受信部13、波長分割多重信号を送受信するものであるWDMフィルタ部14、上位ネットワーク3との間で信号を送受信するネットワーク側インタフェース(IF)部15を有する。
【0053】
制御部11は、OLT1全体の機能を制御するものである。制御部11は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM等、入力インタフェース、出力インタフェース等の装置からなり、OLT1の機能は、ソフトウェア処理を実行することでなされる。すなわち、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを読み出し、必要なデータを用いて処理プログラムを実行することにより、OLT1の機能が実現される。
【0054】
制御部11は、その主な機能として、MPCP(Multi-point Control Protocol)処理部111、帯域割当処理部112を有する。
【0055】
MPCP処理部111は、接続しているONU2との間の制御処理を行なうものである。MPCP処理部111は、OLT1とONU1との間の通信路を確立し、通信路の確立後に、各ONU2へのゲートフレームの作成や、各ONU2からのレポートフレームの読み取りを行なうものである。
【0056】
図8は、MPCP処理部111の詳細な機能部を示す機能ブロック図である。図8において、MPCP処理部111は、ディスカバリ処理部61、LLID付与管理部62、RTT測定部63、レポート・ゲートフレーム生成/読み取り部64、order決定部65、wait time算出部66、wait time通知部67を有する。
【0057】
図8において、ディスカバリ処理部61、LLID付与管理部62、RTT測定部63及びレポート・ゲートフレーム生成/読み取り部64は、IEEE802.3av/ah.stdの標準規格に規定される処理を適用することができる。
【0058】
一方、order決定部65、wait time算出部66及びwait time通知部67は、本発明に係る処理機能部である。order決定部65、wait time算出部66及びwait time通知部67の詳細な処理については、動作の項で詳細に説明する。
【0059】
帯域割当処理部112は、各ONU2に対して帯域と送信開始タイミングを割り当て、当該帯域及び送信開始タイミングを含む送信許可信号を、対応するONU2に通知するものである。これにより、ONU2からの送信信号の輻輳を回避することができる。例えば、帯域割当処理部112は、IEEE802.3等で規格されているDBA(Dynamic Bandwidth Allocation)制御において実現されるものである。
【0060】
(B−1−3)ONU2の内部構成
図7において、ONU2は、制御部21、制御部21の制御によりフレームを送信する送信部22、WDMフィルタ部24の受信信号からフレームを受信する受信部23、波長分割多重信号を送受信するWDMフィルタ部24、ユーザ端末4との間で信号の送受信を行なう端末側インタフェース(IF)部25、送信フレームのデータ量を蓄積するバッファ部26を有する。
【0061】
制御部21は、ONU2全体の機能を制御するものである。制御部21は、例えば、CPU、ROM、RAM、EEPROM等、入力インタフェース、出力インタフェース等の装置からなり、ONU2の機能は、ソフトウェア処理を実行することでなされる。すなわち、CPUが、ROMに格納される処理プログラムを読み出し、必要なデータを用いて処理プログラムを実行することにより、ONU2の機能が実現される。
【0062】
制御部21は、その主な機能として、OLT1との間の伝送制御を行なうMPCP処理部211を有する。MPCP処理部211は、バッファ部26に蓄積されている送信フレームのデータ量をレポートフレームに記載してOLT1に送信するものである。また、MPCP処理部211は、OLT1から受信したゲートフレームに含まれている帯域に基づいて送信フレームの送信処理を行なうものである。
【0063】
(B−2)第1の実施形態の動作
次に、第1の実施形態のOLT1による伝送制御処理の方法の動作を、図面を参照しながら説明する。
【0064】
図9は、第1の実施形態のOLT1の伝送制御方法の処理動作を示すフローチャートである。
【0065】
図9において、OLT1に電源が投入されると(S101)、ディスカバリ処理部61がディスカバリ処理を行ない、各ONU2を検出する(S102)。
【0066】
ここで、ディスカバリ処理部61によるディスカバリ処理の方法例としては、例えば、OLT1が、接続しているONU2との間で、ディスカバリ用の制御フレームを送受信する方法を適用することができる。また、ONU2が検出されると、LLID付与管理部62が、検出されたONU2に対して個別に識別情報(例えばLLID)を付与する。この際、上りデータのTDMA制御を実現するために、RTT測定部63が、検出された全ONU2についてのOLT1−ONU2間距離(=RTT)を測定する。これらの処理は、IEEE802.3av/ah.stdで標準化されている。
【0067】
次に、order決定部65が、ディスカバリ処理で測定された各ONU2のRTT値に基づいて、各ONU2のorder値を決定する(S103)。
【0068】
ここで、order決定部65は、RTT値が小さい順となるように並び替え、小さい順に並び替えた各ONU2に対して、「0」から「N−1」の値をorder値として割り当てる。なお、「N」は、全ての接続ONU数である。
【0069】
なお、RTT値が同じONU2が複数台ある場合、LLIDの番号の若番に従って決定する。例えば、「RTT値:100us」のONU2が2台存在(LLID=1,10)する場合、LLID=1のONU2が先の順番となるとなるようにorder値を決定する。
【0070】
次に、wait time算出部66が、各ONU2のwait timeを算出する(S104)。ここで、wait time算出部66は、例えば式(1)に従って、各ONU2のwait timeを算出する。
【0071】
wait timeを算出する際、wait time算出部66は、ディスカバリ処理で取得した各ONU2のRTT値と、order決定部65が決定した各ONU2のorder値を用いて、wait timeを算出する。
【0072】
なお、式(1)に定義した他のパラメータ(すなわち、RTT_max、report size)は、GE−PONシステムの運用パラメータであって、基本的には一度設定したら変更されない半固定値であり、OLT1の電源投入時には決定している。従って、wait time算出部66は、これら他のパラメータを用いて、各ONU2のwait timeを計算する。
【0073】
次に、wait time通知部67は、各ONU2に対して、wait timeを通知する(S105)。
【0074】
wait time通知部67は、各ONU2を識別する識別情報(LLID)と、各ONU2のwait timeを、ゲートフレームに含め、そのゲートフレームを各ONU2に送信する。このとき、ゲートフレームには、wait timeが設定された信号であることを示す情報を、「Opcode値」に設定する。
【0075】
これにより、OLT1とONU2との間の通信が開始する前に、OLT1が、各ONU2に対してwait timeを通知することができる。また、各ONU2は、取得したwait timeを記憶しておく。
【0076】
次に、OLT1−ONU2間の通信が開始する(S106)。この通信は、帯域割当処理部112がDBA方式による動的帯域割当処理を行い実施される。すなわち、帯域割当処理部112が、各ONU2から受信したレポートフレームに含まれているトラフィック量に応じて、各ONU2に割り当てる帯域を求める。そして、MPCP処理部112が、各ONU2の帯域をゲートフレームに通知する。
【0077】
図10は、OLT1がゲートフレームを送信する方法を説明する説明図である。
【0078】
図10において、MPCP処理部111は、まず先にレポート送信トリガー用のゲートフレームを送信する。MPCP処理部111は、このゲートフレームを有する信号を、全てのONU2に対してブロードキャストにより送信する。すなわち、ブロードキャスト用のLLIDを予め設定し、このブロードキャスト用LLIDを用いて、MPCP処理部111は送信するようにする。
【0079】
また、このフレームはゲートフレームを利用することができ、トリガー信号であることを示すため、MPCP処理部111は、トリガー信号であることを示す情報を「Opcode値」に設定して送信する。
【0080】
その後、MPCP処理部111は、各ONU2の上り帯域割当計算結果をゲートフレームに含め、そのゲートフレームを各ONU2に送信する。ここでの送信はユニキャスト送信とする。
【0081】
各ONU2は、レポート送信トリガー用のゲートフレームを受信すると、その受信時から自身のwait time経過後に、自身のバッファ部26に蓄積されているバッファ量を含むレポートフレームを、OLT1に送信する。
【0082】
通信中も、RTT測定部63は各ONU2のRTT値を定期的に測定する。ここで、RTT値が変化したときには、RTT値の更新を行なう(S107)。
【0083】
RTT値の更新が発生した場合、更新後のRTT値も含めた各ONU2のRTT値を用いて、order決定部65が再度order値の決定を行う(S111)。次に、wait time算出部66が、各ONU2のwait timeの再計算を実施する(S112)。このとき、制御部11は、一旦通信を停止し(S113)、その後、処理をS105に移行し、新たに計算した各ONU2のwait timeを各ONU2に通知して(S105)、再度通信を再開する(S106)。
【0084】
RTT値の更新が発生しない場合には、OLT1とONU2との間の通信は引き続き行われる。このとき、ディスカバリ処理部61は、新規参加ユーザを自動的に認識するために、所定のディスカバリ処理時間が経過すると、定期的にディスカバリ処理を行なう(S108、S109)。
【0085】
そして、新規ユーザが追加された場合、すなわちディスカバリ処理部61が新規のONU2を検出した場合(S110)、制御部11は処理をS111に移行する。そして、order決定部65が、新規ONU2のRTT値を含めた全ONU2のRTT値を用いてorder値の再計算を行ない(S111)、wait time算出部66が各ONU2のwait timeの再計算を行なう(S112)。そして、一旦通信を停止した後、S105に移行して、wait time通知部67が各ONU2に対してwait timeを通知して、通信を再開する。
【0086】
第1の実施形態において、通信停止については、RTT値の更新、及び新規ユーザ追加が発生したときだけに行い、それ以外の場合、通信状態を保持するようにする。これにより、OLT1−ONU2の接続状態が頻繁に変更されない限り、本発明の独自処理であるorder決定処理、wait time算出処理、Wait time通知処理によるOLT1の演算負荷を小さくすることができる。
【0087】
(B−3)実施例
次に、第1の実施形態の伝送制御処理の実施例を、図面を参照しながら説明する。ここでは、第1の実施形態における下りデータ送信効率の改善効果を数値計算によって検討する。
【0088】
計算は、図9で示したフローチャートのS106まで完了し通信が行われている状態とする。
【0089】
ここでは、図11に示したフレームモデルで下り通信を実施する。フレームモデルでは、OLT1がレポート送信トリガーを1回だけ送信し、IPG後、OLT1は、上りトラフィック指示のゲートフレームを、上り帯域割当が発生しているONU数分送信している。
【0090】
その後、下リデータの送信を実施する。下りデータの送信効率は、グラント周期に占める下リデータ送信時間と定義すると、以下の関係となる。
【0091】
下リデータ送信効率[%]=(下りデータ送信時間*100)/グラント周期
…(2)
図11から、下りデータ送信時間は、式(3)により求まる。
【0092】
下リデータ送信時間=グラント周期−ゲート送信時間 …(3)
式(2)及び式(3)より、ゲート送信時間を短くすれば、下リデータ送信効率は高くなることが分かる。
【0093】
図12は、第1の実施形態の検証で使用したパラメータ値である。すなわち、データレートは10[GHz]であり、グラント周期は1000[us]であり、ゲートフレームサイズは51.2[ns]であり、IPGは9.6[ns]であるとする。
【0094】
図13は、図12に示すパラメータ値を用いたときの下りデータ送信効率である。図13において、横軸は接続する最大のONU数を示しており、縦軸は下りデータ送信効率[%]を示す。
【0095】
図13において、実線は同じ条件での従来方式の下り送信効率の結果である。ここでは、上リ帯域が割り当てられるONU2の台数を変えている。
【0096】
図13において、最大の接続ONU台数「1024」で比較してみると、従来方式では、下リデータ送信効率が93%程度まで低下している。
【0097】
一方、提案方式では、例えば、1024台のうち32台のONU2に上り帯域を割り当てた場合で、99.77%程度までしか低下していない。また、1024台のうち、半分である512台のONUに上り帯域を割り当てた場合でも、96.5%程度までの低下で抑えることができる。また、全ての接続ONU2に対して上り帯域を割り当てた場合(すなわち、1024台のONUに割り当てた場合)は、従来方式と同じ送信効率となる。ここで、データレートの条件を10Gbpsとしているので、下りデータ送信効率1%は100Mbpsに該当する。
【0098】
この結果から、提案方式は、多分岐時の下りデータ送信効率の改善策として有効である。数値計算では、10GE−PONを想定してデータレート10Gbpsとしたが、本提案は、データレートが1Gbpsでも効果があるため、GE−PONでも同様に帯域利用率改善の効果が期待できる。
【0099】
(B−4)第1の実施形態の効果
以上のように、第1の実施形態によれば、OLTが各ONUのwait timeを事前に通知し、OLTが、レポート送信トリガーのフレームを送信した後、上り帯域を割り当てたONUにのみにゲートフレームを送信するようにすることで、下りデータ送信効率を改善させることができる。
【0100】
(C)第2の実施形態
次に、本発明の伝送制御装置、伝送制御プログラム及び終端装置の第2の実施形態を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0101】
第2の実施形態は、次世代の光アクセス通信方式の1つであるWDM/TDM−PONを採用した光アクセスネットワークに本発明を適用した場合を例示する。
【0102】
(C−1)第2の実施形態の構成
図14は、第2の実施形態のWDM/TDM−PONを採用した光アクセスネットワークの全体構成と、OLT及びONUの内部構成とを示す構成図である。
【0103】
図14に示す第2の実施形態の構成要素のうち、第1の実施形態の構成要素と対応する構成要素には同一の符号を付している。第1の実施形態と対応する構成要素については既に詳細に説明しているので、以下では、第2の実施形態の特有の構成を中心に詳細に説明する。
【0104】
図14において、第2の実施形態の光アクセスシステム70は、光ファイバ接続により、OLT7と、複数台のONU2と、複数の光スプリッタ5−1〜5−nとを有する。
【0105】
OLT7は、複数の波長を用いて、波長毎にTDMA通信を行うWDM/TDMA方式により、複数のONU2との間で光通信を行なうものである。これにより、それぞれ異なる波長を利用する複数のブランチに収容されるONU2を、1台のOLTが集約することができるので、数多くのONU2を効率的に収容することができる。
【0106】
図14に示すように、OLT7は、制御部71、送受信部72−1〜72−n、波長変換部及びスイッチ部74、ネットワーク側IF部15を有する。
【0107】
制御部71は、OLT7の機能を制御するものである。制御部71は、MPCP処理部711、帯域割当処理部712を有する。
【0108】
MPCP処理部71は、第1の実施形態で説明した各ONU2のwave timeを、ブランチ毎(波長毎)に計算するものである。すなわち、MPCP処理部71は、各ブランチに収容される各ONU2のwave timeを計算する。なお、ブランチの識別方法としては、ブランチに割り当てられている波長に基づいてブランチを識別する方法、または、各ONU2に割り当てられている個別ID(LLID)を識別する方法で実現することができる。
【0109】
そして、MPCP処理部71は、各波長(各ブランチ)の各ONU2のwave timeを含むゲートフレームをブランチ毎に通知するものである。これにより、それぞれのブランチに収容されるONU2に対してwave timeを指示することができる。
【0110】
また、MPCP処理部71は、各ブランチのレポート送信用トリガーを含むフレームを、ブランチ毎に送信するものである。第1の実施形態と同様に、各ブランチのレポート送信用トリガーを含むフレームとしてゲートフレームを利用することができる。
【0111】
MPCP処理部71により実現される機能は第1の実施形態と同様であり、MPCP処理部71は、図8に示す機能部を有する。
【0112】
図8において、order決定部65は、ブランチ毎に、各ブランチに収容される各ONU2のRTT値に基づいて、order値を決定するものである。
【0113】
wait time算出部66は、各ブランチの各ONU2のwave timeを、ブランチ毎に算出するものである。
【0114】
wave time通知部67は、各ブランチの収容される各ONU2に対して算出されたwave timeを搭載したゲートフレーム(レポート送信用トリガーのフレーム)を、ブランチ毎に通知するものである。
【0115】
帯域割当処理部712は、帯域割当計算処理に波長の項目を追加して、波長毎(ブランチ毎)に収容される各ONU2に対して動的帯域割当を行なうものである。
【0116】
ここで、帯域割当処理部712による帯域割当処理方法は、波長毎に区別して、各波長を用いる各ONU2に対して帯域を割り当てることができれば種々の方法を広く適用することができる。例えば、非特許文献2に記載されているDWBA(Dynamic Wavelength and Bandwidth Allocation)機能を適用することができる。
【0117】
送受信部72−1〜72−nは、各ブランチに接続される各ONU2との間でフレームの送受信を行なうものである。例えば、図14において、送受信部72−1は、ブランチ1(波長λ1)に収容されるONU2との間の送受信部であり、送受信部72−2は、ブランチ2(波長λ2)に収容されるONU2との間の送受信部である。
【0118】
波長変換部及びスイッチ部74は、制御部71の制御により、受信された信号光又は送信する信号光の波長を変換する波長変換機能と、各ブランチに収容されるONU2と送受信部72−1〜72−nとの間のスイッチング処理機能とを有するものである。
【0119】
(C−2)第2の実施形態の動作
次に、第2の実施形態のOLT7による伝送制御処理の方法の動作を、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0120】
以下では、まず、WDM/TDM−PONを採用するOLT7による集約収容方法について説明する。
【0121】
WDM/TDM−PONシステムを採用するOLT7は、複数の波長を用いて、複数のブランチのONU2を収容する。
【0122】
ここで、帯域割当処理部712は、DWBA機能を採用して、1台の送受信部を用いて高効率にONU2を収容する。これは、例えば、各ブランチにおいて通信状態のONU2の数が少ない場合に、全ブランチの通信中のONU2の帯域を足し合わせても、1ブランチの最大通信帯域に満たない場合があるからである。すなわち、このような場合、全ての送受信部を動作させるより、1台の送受信部が、全てのONU2を収容した方が帯域利用効率を向上させることができ、また消費電力の削減にもなる。
【0123】
図15は、OLT7によるONU2の集約収容方法を説明する説明図である。なお、図15では、全てのブランチに収容されるONU2−1−1、2−2−1及び2−n−1との送受信を送受信部72−1が行うようにする場合を例示する。
【0124】
図15では、説明便宜上、ブランチ1には波長λ1、ブランチ2には波長λ2、ブランチnには波長nが割り当てられているものとする。また、OLT7において、送受信部72−1は波長λ1の信号を送受信し、送受信部72−2は波長λ2の信号を送受信し、送受信部72−nは波長λnの信号を送受信するものとする。
【0125】
上り方向通信は、各ONU2からの信号が波長変換部741により波長変換される。例えば、ブランチ2のONU2−2−1は、波長λ2を使用して信号を送信する。波長変換部741は、ONU2−2−1の信号の波長を波長λ2から波長λ1に変換する。
【0126】
ここで、変換波長の指示は、例えば制御部71が波長変換部741に対して指示することで実現することができる。例えば、ONU2を集約収容する場合に、集約収容する送受信部72−1を予め定めておき、その集約収容する送受信部72−1に割り当てられた波長に切り替えることを制御部71が波長変換部741に指示する方法を適用できる。
【0127】
なお、ブランチ1のONU2−1−1からの信号の波長は波長λ1であるから、この信号光を受信した場合、波長変換部741は波長変換を行なわない。
【0128】
波長変換部741により波長λ1に変換された信号は、スイッチ部742に与えられる。スイッチ部742は、入力された全ての信号を送受信部72−1に与えるように切り替える。
【0129】
ここで、スイッチ部742の切り替え方法は、例えば、制御部71の制御により、スイッチ部742が送受信部72−1への出力ポートに切り替えることで実現できる。
【0130】
このようにして、上り方向の信号は、波長が波長λ1に変換され、送受信部72−1に与えられる。
【0131】
次に、下り方向通信は、送受信部72−1からの信号がスイッチ部742によりスイッチングされて、波長変換部741が各ブランチの波長に変換して、各ブランチのONU2に送信される。
【0132】
このとき、変換波長の指示、変換タイミング及びスイッチ部742の切り替えは、制御部71がスイッチ部742及び波長変換部741に対して行なう。
【0133】
例えば、制御部71は、各ブランチの上り通信と下り通信の通信タイミングを制御している。従って、制御部71は、各ブランチの下り通信の通信タイミングに従って、波長変換部741及びスイッチ部742に対して各信号の波長変換の指示を行なう。
【0134】
このようにして、下り方向通信が行なわれることで、他の送受信部72−2及び72−nを動作させることなく、ブランチ2及びnのONU2を1台の送受信部72−1に収容させることができる。
【0135】
次に、上記のような集約収容した状態での下り送信フレームを送信する処理を、図16を参照しながら説明する。
【0136】
図16は、集約収容状態の下り送信フレームの送信処理を説明する説明図である。
【0137】
まず、制御部71において、MPCP処理部71は、ブランチ毎にMPCP制御処理を行うものであり、各ブランチのMPCP制御処理の方法は、図9に示した動作フローチャートを適用することができる。
【0138】
すなわち、MPCP処理部71は、OLT7の電源投入後(S101)、各ブランチに収容されるONU2のディスカバリ処理をブランチ毎に行う(S102)。そして、ディスカバリ処理により各ONU2のRTT値を測定し、order決定部65が各ONU2のorder値を決定し(S103)、第1の実施形態と同様の方法により、wait time算出部66が各ONU2のwait timeを算出する(S104)。このとき、wait time算出部66は、各ONU2のwait timeをブランチ毎に算出する。
【0139】
wait time通知部67は、各ONU2のwait timeを含むゲートフレームをブランチ毎に送信する(S106)。
【0140】
次に、OLT7と各ブランチのONU2との間で通信が開始(S106)、帯域割当処理部712は、DWBA方式により各ONU2に対して帯域を割り当てる。
【0141】
図16(A)は、従来のWDM/TDM−PONシステムで集約収容した場合のゲートフレームの送信態様を示す。図16(A)に示すように、従来の場合、グラント周期において、各ONU2へのゲートフレームはブランチ毎に送信される。従って、例えば、ブランチ1の各ONU2に対して順番にゲートフレームを送信していきブランチ1の全ONU2に送信終了すると、次に、ブランチ2の各ONU2に対して順番にゲートフレームを送信等のようになされている。
【0142】
従来の方法の場合、下りデータ送信時間は圧迫されるので、下りデータの送信効率は悪化するおそれがある。
【0143】
これに対して、第2の実施形態のOLT7は、図16(B)に示すように、レポート送信用トリガーとするフレームをブランチ毎にブロードキャスト送信を行なう。すなわち、レポート送信用トリガーのフレームは、各ブランチに対して1回送信される。
【0144】
また、OLT7は、ブランチに対してレポート送信用トリガーのフレームを送信した後、そのブランチにおいて通信中のONU2に対してゲートフレームを送信する。この点は、第1の実施形態と同様である。
【0145】
このように、OLT7は、各ブランチのレポート送信用トリガーをブランチ毎に1回送信し、その送信後、通信中のONU2にのみ、ゲートフレームを送信することで、下リデータ送信効率の改善を図ることができる。
【0146】
(C−3)第2の実施形態の効果
以上のように、第2の実施形態によれば、WDM/TDM−PONを採用する光アクセスネットワークにおいて、OLTが収容するONUが多数である場合も、第1の実施形態と同様に、下りデータ送信効率を改善することができる。
【0147】
(D)他の実施形態
上述した第1及び第2の実施形態は、光アクセスシステムの終端装置における伝送制御装置について説明したが、光アクセスシステムに限定されるものではなく、電気信号の伝送制御にも適用することができる。
【0148】
上述した第1の実施形態は、例えば、GEPON、10GEPON等に代表される光アクセスシステムに適用することができる。
【0149】
上述した第2の実施形態で示した図14のWDM/TDM−PONの構成は、これだけに限定されない。例えば、特許文献(特開2011−135280)に記載されている波長可変レーザー、AWG(Array Waveguide Grantings)を使用したWDM/TDM−PON構成にも適用することができる。
【符号の説明】
【0150】
10及び70…光アクセスネットワーク、1及び7…OLT、2…ONU、
11及び71…制御部、
111及び711…MPCP処理部、112及び712…帯域割当処理部、
12…送信部、13…受信部、14…WDMフィルタ部、
15…ネットワーク側IF部、72−1〜72−n…送受信部、
74…波長変換部及びスイッチ部、
741…波長変換部、742…スイッチ部、
61…ディスカバリ処理部、62…LLID付与管理部、
63…RTT測定部、64…レポート・ゲートフレーム生成/読み取り部、
65…order決定部、66…wait time算出部、
67…wait time通知部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の対向装置との間で授受される制御信号に基づいて、時分割通信帯域を割り当て上記各対向装置の伝送制御を行なう伝送制御装置において、
接続する複数の対向装置を検出し、検出された上記各対向装置との間の往復伝送時間を求めるディスカバリ処理手段と、
上記各対向装置との間の往復伝送時間に基づいて、上記各対向装置との間の距離に応じた順位付け情報を決定する順位付け情報決定手段と、
上記各対向装置との間の往復伝送時間及び上記順位付け情報に基づいて、上記各対向装置の制御信号の送信待機時間を求める送信待機時間算出手段と、
上記各対向装置の上記送信待機時間を、上記各対向装置に通知する送信待機時間通知手段と、
上記各対向装置との間で通信を開始する際に、上記各対向装置に上記送信待機時間の計時開始を示す計時開始信号を、全ての上記対向装置に送信させる計時開始信号送信手段と
を備えることを特徴とする伝送制御装置。
【請求項2】
上記各対向装置からの上記制御信号に含まれる送信待機データ量に応じて、上記各対向装置に対して通信帯域を割り当てる帯域割当手段と、
上記計時開始信号の送信後、上記帯域割当手段が上記各対向装置に割り当てた通信帯域を含む制御信号を、通信中の上記対向装置に送信させる制御信号送受信手段と
を備えることを特徴とする請求項1に記載の伝送制御装置。
【請求項3】
上記ディスカバリ処理手段が、通信中の上記各対向装置の往復伝送時間の更新又は新規の対向装置を検出すると、
上記順位付け情報決定手段が、更新後の上記各対向装置の往復伝送時間又は上記新規の対向装置の往復伝送時間に基づいて、再度上記順位付け情報を決定し、
上記送信待機時間算出手段が、更新後の上記各対向装置の往復伝送時間及び再結締された上記順位付け情報に基づいて、上記各対向装置の上記送信待機時間を再度求め、
上記送信待機時間通知手段が、現在行っている通信を一旦停止した後、新たに求めた上記各対向装置の上記送信待機時間を上記各対向装置に通知する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の伝送制御装置。
【請求項4】
GE−PON方式を採用する光アクセスシステムを構成する終端装置が備える請求項1〜3のいずれかに記載の伝送制御装置。
【請求項5】
WDM/TDM−PON方式を採用する光アクセスシステムであって、
複数の対向装置をグループに分け、各グループに属する複数の対向装置との間で送受信を行なうグループ毎の複数の送受信手段を備え、
上記複数の送受信手段のうち、複数のグループに属する対向装置と送受信する送受信手段を1台の送受信手段に集約制御手段を更に備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の伝送制御装置。
【請求項6】
上記制御信号はレポート信号であり、上記計時開始信号はゲート信号であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の伝送制御装置。
【請求項7】
複数の対向装置との間で授受される制御信号に基づいて、時分割通信帯域を割り当て上記各対向装置の伝送制御を行なう伝送制御プログラムにおいて、
コンピュータを、
接続する複数の対向装置を検出し、検出された上記各対向装置との間の往復伝送時間を求めるディスカバリ処理手段、
上記各対向装置との間の往復伝送時間に基づいて、上記各対向装置との間の距離に応じた順位付け情報を決定する順位付け情報決定手段、
上記各対向装置との間の往復伝送時間及び上記順位付け情報に基づいて、上記各対向装置の制御信号の送信待機時間を求める送信待機時間算出手段、
上記各対向装置の上記送信待機時間を、上記各対向装置に通知する送信待機時間通知手段、
上記各対向装置との間で通信を開始する際に、上記各対向装置に上記送信待機時間の計時開始を示す計時開始信号を、全ての上記対向装置に送信させる計時開始信号送信手段
として機能させることを特徴とする伝送制御プログラム。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれかに記載の伝送制御装置を備えることを特徴とする終端装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−85037(P2013−85037A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222219(P2011−222219)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.ETHERNET
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【出願人】(503262509)株式会社オー・エフ・ネットワークス (62)
【Fターム(参考)】