位置データ算出方法
【課題】眼鏡フレームにレンズを装着させる際に必要とされるレンズ設計情報を算出することができる眼鏡におけるレンズ設計情報の位置データ算出方法を提供すること。
【解決手段】被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのリム21を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像装置1によって撮像する。撮像装置1の撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成されており、被験者の眼に対するリム21の3次元的な位置データを算出することができる。
【解決手段】被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのリム21を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像装置1によって撮像する。撮像装置1の撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成されており、被験者の眼に対するリム21の3次元的な位置データを算出することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡フレームにレンズを装着させる際に眼鏡フレームのレンズ保持部の形状とレンズとの関係において発生する情報に関して必要とされる位置データを算出するための位置データ算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームにレンズを装着させる際に眼鏡フレームのレンズ保持部の形状とレンズとの位置関係において発生する情報(以下、フレーム・レンズ情報)として、例えば、頂点間距離(角膜頂点からレンズ裏面と正面向き視線の交点までの距離)が挙げられる。眼とレンズとの間隔が違えばレンズを同じレンズ度数に設定しても見え方は異なる。例えば、ユーザー(被験者)のレンズ度数を決定するためにトライアルレンズを使用して最適なレンズ度数を得たとしても、トライアルレンズ用の眼鏡フレームとは異なる眼鏡フレームにその最適とされた度数のレンズを適用した場合には頂点間距離が変わってしまい必ずしも最適になるわけではない。そのため、頂点間距離はフレーム・レンズ情報の1つとして重要である。
また、眼鏡フレームにレンズを装着させた際にはレンズがトライアルレンズの眼鏡フレームとは異なりそり角や前傾角が発生する場合がある。そり角や前傾角があればレンズが眼に対して正対しない状態で装着されるわけであるから、例えば乱視のないユーザーであっても乱視状態となってしまうため、本来はそれに応じて乱視を矯正するようなレンズ特性を反映させる必要がある。そり角や前傾角は眼鏡フレームに装着された状態のレンズのアイポイント位置におけるレンズ表面の接線角度が必要となるが、実際にはそのような位置で正確にそり角や前傾角測定することができないため、便宜的にレンズ保持部の角度を持ってそり角や前傾角とすることが多い。
これら頂点間距離やそり角や前傾角はフレーム・レンズ情報の代表的なものとして重要であるが、いずれも、ユーザーの眼の位置に対するレンズ保持部の形状とレンズの3次元的な位置を求める必要がある。
【0003】
例えば、従来から眼鏡フレームに対する眼の位置(アイポイント位置)を決定する方法としては、例えば特許文献1に示す技術が挙げられる。これは、眼鏡フレームのリムの所定の位置に指標をマーキングし、実際にその眼鏡フレームを被験者に装用させて、眼鏡フレームを含む顔面部を撮影し、前もって得られている指標の位置に基づいて最適なアイポイント位置を算出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4536329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、フレームに装着されたダミーレンズに参照点を記録し、フレーム装用者の正面からの顔写真を撮影し、参照点との位置関係からアイポイントを特定する方法について記載されている。この手法において、斜め角度から撮影された2枚の写真上の参照点と瞳孔中心位置から三角測量的に頂間距離を演算することも可能である。しかし、実機を用いて測定試験を実施したところ、演算に使用する測定値が求めたいパラメータと比較して十分に大きくないため、測定精度が低いことを確認した。また、写真撮影時のカメラと被写体のポジショニングが困難である等の問題もあった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、眼鏡フレームにレンズを装着させる際に必要とされるレンズ設計情報を算出することができる眼鏡におけるレンズ設計情報の位置データ算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1の発明の構成に加え、前記撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成され、前記3次元的な位置データは前記撮像光学系の測定箇所に対する移動量と合焦位置によって定義されることをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項1の発明の構成に加え、前記撮像手段によって撮像した撮像情報を画像解析し、被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出することをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、算出の基準となる基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、前記基準測定ポイントの位置データに基づいて前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項4の発明の構成に加え、前記基準測定ポイントは撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置であることをその要旨とする。
また請求項6の発明では請求項5の発明の構成に加え、前記基準測定ポイントは角膜頂点位置であることをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項6の発明の構成に加え、前記角膜頂点位置は瞳孔位置に基づいて換算することをその要旨とする。
また請求項8の発明では請求項6又は7の発明の構成に加え、前記瞳孔位置は測定された角膜屈折力に基づいて換算することをその要旨とする。
また請求項9の発明では請求項6の発明の構成に加え前記角膜頂点位置は角膜曲率測定装置により直接測定されることをその要旨とする。
また請求項10の発明では請求項1〜9のいずれかの発明の構成に加え、前記レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて前記眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角の少なくともいずれか一方を算出することをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成では、被験者に眼鏡フレームを装用させて前方を目視させた状態で眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出する。
算出方法としては、例えば、撮像光学系が被験者の画面を横切る方向(以下、第1の方向)に駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向(以下、第2の方向)に合焦可能に構成されていることで、ある基準位置に対する第1の方向への撮像光学系の移動量と合焦の際のフォーカシングレンズの移動量に基づいて算出することが可能である。レンズ保持部とはレンズ全周を包囲するリムのみならず、レンズの一部を包囲するリムやリムがなくレンズを両端だけで留めるようないわゆる「リムレス」と呼ばれる保持手段も含む概念である。
また、レンズ保持部のエッジや画面の肌のコントラスト等の画像情報を画像解析を行って算出することも可能である。
【0008】
基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、その基準測定ポイントの位置データに基づいてレンズ保持部の3次元的な位置データを算出することが好ましい。基準測定ポイントとしては撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置とすることが好ましい。ここで位置データとして必要なのは被験者の顔面に対するレンズ保持部の配置状態であるため、被験者の顔面のどこかを基準として所定のレンズ設計情報の3次元的な位置データを得るようにすればよいからである。基準測定ポイントとして好ましいのは、撮像においてレンズ保持部の内側であり、より好ましいのは角膜頂点位置である。但し、角膜頂点位置を基準測定ポイントとする場合には撮像光学系を合焦させにくため、第2の方向については虹彩が明瞭に見える瞳孔位置をもって換算することが好ましい。
更に、レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角を算出することが可能となる。眼鏡フレームに前傾角又はそり角がなければこれらの角度の影響を考慮しなくともよいが、前傾角又はそり角がある場合にはそれを考慮する必要がある。レンズ保持部の3次元的な位置データを取得することで正確に前傾角又はそり角を算出することができることとなる。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明では、眼鏡フレームのレンズ保持部にレンズを装着させる際に必要とされるレンズ設計情報を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1において、撮像装置を使用して撮像する一態様を説明する説明図。
【図2】実施の形態1において使用される撮像装置の電気的構成を説明するブロック図。
【図3】実施の形態1において撮像装置のモニターに表示される撮像の一例の説明図。
【図4】実施の形態1においてリム上に設定する座標位置を説明する説明図。
【図5】眼、フレーム及びレンズとの位置関係においてそり角の概念を説明する説明図。
【図6】眼、フレーム及びレンズとの位置関係において前傾角の概念を説明する説明図。
【図7】レンズ表面球面の曲率中心座標の位置を説明するための説明図。
【図8】本発明の実施の形態2において、撮像の階調の違いによって領域を区画することを説明するための眼とまぶた周辺の所定の画素領域を切り取った模式図。
【図9】図8の階調の違いを表す横軸を階調の強度、縦軸を画素の個数としたヒストグラム。
【図10】実施の形態2においてリム上に設定するピント合わせの目標点の設定方法を説明する説明図。
【図11】(a)は所定の画素領域についてピントが合っていない場合の、(b)はピントが合った状態のヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1においては、撮像手段の一例として図1に示すような撮像装置1を使用する。撮像装置1の筐体2内部には図示しない撮像機構及び3軸モータ機構が配設されている。筐体2はコラム3を介してベッド4上に設置されている。ベッド4はベース5上に設置されている。筐体2の前面(被験者側)には対物レンズ筒6が形成されており、背面にはモニター7が形成されている。筐体2は内部に光源を備えた図示しない撮影用光学系を備えている。顔面撮影用光学系は光源によって照らされた対物(ここではフレーム(リム)を含んだ左右いずれかの眼の周囲)を撮影し、撮像素子9によって撮像データを取得する。
筐体2はベッド4に対してコラム3と共に左右方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)に移動可能とされており、コラム3に対して上下方向(Y軸方向)に移動可能とされている。3軸モータ機構には筐体2及びコラム3をX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸方向に対して進退させるために3つのモータが配設されている。X軸方向とY軸方向は被験者の画面を横切る第1の方向とされ、Z軸方向は被験者の顔面部に対して接離する第2の方向とされる。第2の方向への移動によって撮像機構を合焦させることとなる。ベッド4上には筐体2を3軸方向に自在に移動させるための操作手段となるジョイスティック8が配設されている。ジョイスティック8には上下にスライド操作の可能なスライドスイッチ8aが併設されている。ジョイスティック8自体を左右方向に傾動させることでX軸方向に、前後方向に傾動させることでZ軸方向に筐体2を連動させて移動させることができる。また、スライドスイッチ8aを上下方向に移動操作することに連動させてY軸方向に筐体2を連動させて移動させることができる。
ベース5上の筐体2の前位置には撮像の際に被験者の顔を支持するためのスタンド装置10が配設されている。スタンド装置10は被験者のあごを載せるためのスライダ11が上下方向に移動可能に配設されている。スタンド装置10の上部位置には被験者の前頭部を当接させるクッション12が配設されている。
【0012】
次に、このような撮像装置1の電気的構成を説明する。尚、本発明とは直接関係のない構成については省略する。
図2に示すように、撮像装置1のコントローラMCには上記モニター7、上記ジョイスティック8、上記スライドスイッチ8a、撮像素子9、第1〜第3のステップモータ15〜17、第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20がそれぞれ接続されている。
コントローラMCは周知のCPUやROM及びRAM等のメモリ、タイマ等から構成されている。コントローラMCのROM内にはモニター7に撮像素子9の画像を表示させる表示プログラム、第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20からのパルス信号に基づいてモニター7上に示される画像縮尺に応じた移動量を算出し表示させる移動量算出プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。
第1〜第3のステップモータ15〜17は上記3軸モータ機構の一部を構成し、第1のステップモータ15は筐体2をベッド4に対してコラム3と共に左右方向(X軸方向)に移動させる。第2のステップモータ16は同じく上下方向(Y軸方向)に移動させる。第3のステップモータ17は同じく前後方向(Z軸方向)に移動させる。
第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20はそれぞれ第1〜第3のステップモータ15〜17の回転量を測定し、回転量に応じて所定のパルス出力をする。
コントローラMCはジョイスティック8及びスライドスイッチ8aの操作に基づいて第1〜第3のステップモータ15〜17の駆動制御を実行し、その際に得られる第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20からの回転量に応じたパルス出力に基づいて筐体2の3次元的な移動量を算出し、モニター7に画像とともに数値表示させる。図3はモニター7に表示させる表示画面の一例である。被験者に正面を遠望視させた状態で撮像された右目とリム21を含む顔面が表示されている。瞳孔中心はアイポイントとなる。モニター中心にはターゲットとなるマーカー23が表示される。マーカー23は図上においてアイポイント位置を示している。画面左上方にはX,Y,Zの各軸方向の基準位置からの移動量(mm)が示される。基準位置は図示しない設定スイッチによって任意の位置を(X,Y,Z)=(0,0,0)として設定することが可能である。
【0013】
このような撮像装置1の使用においては、眼鏡フレームをかけた状態の被験者の左右いずれかの眼がちょうど対物レンズ筒6の前方に対面するようにスライダ11の上下位置を調整し、左右方向については被験者自身が顔を移動させて調整する。被験者は撮像時に顔が動かないようにしっかりと前頭部クッション12に押し付けるようにする。作業者はジョイスティック8及びスライドスイッチ8aを操作して筐体2をX軸、Y軸及びZ軸の各方向に移動させてモニター7に表示される撮像に対してマーカー23の中心の位置データを取得する。X,Y軸方向についての位置データはある点(基準となる点、どこでもよい。)からの左右・上下方向(第1の方向)の移動量として取得でき、Z軸方向についてはピントのあったある点を基準として現位置について前後方向(第2の方向)に移動させてピントを合わせることで取得できる。
【0014】
次にこのような撮像装置1を使用した具体的な測定方法を説明する。以下における計算は撮像装置1によって得られた数値を人が計算するようにしても、撮像装置1に併設したコンピュータによって計算するようにしてもどちらでもよい。
1)基準測定ポイントの測定
本実施の形態では基準測定ポイントとして角膜頂点座標を使用する。角膜頂点座標はそもそも頂点間距離を取得するために必要な位置データであるため、これを基準とすることは誤差も少なく有利である。また、本実施の形態では角膜頂点座標におけるX,Y座標はアイポイント位置でもある。そのため、計算する場合にはこれを基準測定ポイント位置と設定し、角膜頂点座標(X,Y,Z)=(0,0,0)として計算する。
角膜頂点座標は実際には角膜が無色透明であるため、その場所を特定するのは容易ではない。そのため瞳孔を形成している虹彩を利用して、角膜頂点座標を取得する。
図3に示すように、モニター7に表示されるX,Y座標を0に設定した状態で、マーカーに被験者瞳孔中心位置を一致させる。この状態で角膜頂点座標のX,Y座標が得られることとなる。一方、瞳孔中心座標のZ座標は虹彩面を基準とする。人の平均的な前眼部の光学的なパラメータは表1の通りである。水晶体前面位置≒虹彩面位置と考え、虹彩面のZ軸座標位置に対して角膜頂点までの距離を加算することで角膜頂点のZ軸座標位置を取得する。ここでは、角膜頂点位置から水晶体前面位置までは3.6mmであるためこの値を採用することで、この距離分を虹彩面のZ座標に加算したものを角膜頂点座標のZ座標と考えるわけである。
しかし、ここでモニター7に表示される画像は角膜の屈折による正立虚像を表示しているため、この屈折を考慮した補正、つまりここでは3.6mmが角膜の屈折によってみかけ上どのくらいの距離でピントが合うのかを計算する必要がある。上記のように水晶体前面位置≒虹彩位置とし、見かけの虹彩位置をs´とすると実際の虹彩と見かけの虹彩位置、角膜屈折力の関係は下記数1の式で表される。
この式に表1の各数値を代入することで角膜頂点から虹彩面までの見かけの虹彩位置(Z軸距離)を求めることができる。ここでは、計算の結果4.29mmとなる。以下の計算上この4.29mmを考慮した角膜頂点Z座標を0に設定する。
ここで、表1に示す角膜屈折力(43.05D)は、ヒトの平均的な角膜屈折力を引用しているに過ぎないので、実際に測定された各被験者の角膜屈折力を数1の式に代入することも可能である。
【0015】
【表1】
【0016】
【数1】
【0017】
2)フレームの3次元位置の算出
ここでは図4に示すようにリム21の最上部座標a、最下部座標b、最も鼻側の点の座標c、最も耳側の座標dの4箇所について3次元位置を求める。もちろんこれら以外の位置について求めるようにしてもよい。少なくともこれらの4点はレンズ加工上必要とされるボクシングセンタの計算と、後述する前傾角又はそり角を計算するために必要である。角膜頂点座標(アイポイント位置)に対するa〜dのX,Y,Z座標は表2のように取得することができる。ボクシングセンタのX,Y座標は(X,Y)=((cX+dX)/2、(aY+bY)/2)から求めることができる。表1からもとめたボクシングセンタのX,Y座標は(X,Y)=(−2.45,−0.64)となり、ボクシングセンタを基準とすると角膜頂点座標(アイポイント位置)は図4では鼻側に2.45mm、上側に0.64mmずれた位置となる。
【0018】
3)そり角・前傾角の算出
図5に示すように、そり角はレンズ表面と正面向き視線との交点における、レンズ表面接線の、X-Z平面における傾きである。また、図6に示すように、前傾角はレンズ表面と正面向き視線との交点における、レンズ表面接線のY-Z平面における傾きである。
これらそり角、前傾角を求めるには、まずレンズ表面球面の曲率中心座標をもとめる必要がある。使用するフレームにそり角や前傾角がある場合には、その正確な角度を算出することで、レンズに角度に基づいて発生する収差をキャンセルするような特性を設けるようフィードバックすることが可能となる。
そり角・前傾角はフレーム(リム21)にレンズを装着することで生じる傾きであるため、ここでは、レンズパラメータについて表2に示すようなデータのレンズに適用して計算するものとする。表2のデータは一例であって、被験者によって異なる情報である。
【0019】
【表2】
【0020】
フレーム(リム21)にレンズを装着する際にはリム21に対してレンズの厚み位置をどのように配置するかを決定する必要がある。ここではレンズ表面が最も鼻側の点の座標c、最も耳側の座標dを通るように設定する。表カーブは球面であるため、左右方向に対して上下方向の短い本実施の形態1のようなリム21では図6のように最上部座標a、最下部座標bに対して表面は前方に若干飛び出して配置されることがある。尚、設定位置を変更することは自由である。
さて、レンズ表面球面の曲率中心座標は、
A)上記座標c,dの中点をとおり、2つのベクトルab,cdに対して垂直な直線上にある。この直線の方向ベクトルは、ベクトルabとベクトルcdの外積により求められる。
B)レンズ表面球面の曲率中心座標は、座標c,dの中点からLだけ離れたところにある。このLは、L=sqrt(R2−M2)で示される。ここに、図7に示すように、Rはレンズ表面の曲率半径であり、Mは座標c,dを結ぶ線分を二等分した長さである。
この条件を適用すると、レンズ表面球面の曲率中心座標は(X,Y,Z)=(−4.572,−4.639,−125.307)となる。
【0021】
次いで、レンズ表面球面の曲率中心座標に基づいて前傾角及びそり角を算出する。
3次元空間座標において球面上のZ座標をX座標とY座標の関数として表すと、
Z=fZ(X,Y)
という形で、変数XとYの関数として表現することができる。具体的には球面の中心座標を(X0、Y0、Z0)とし、球面の半径をRとすると、
(X−X0)2+(Y−Y0)2+(Z−Z0)2=R2
より、
Z=sqrt(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)+Z0
となる。すなわち、
fZ(X,Y)=sqrt(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)+Z0
という関数により球面上のZ座標を表わすことができる。
ここで、、球面の式をZについて解く際、sqrtの前につく複合+−のうち、眼鏡レンズのとして使用する側は+を選択する。
【0022】
次に、球面上でX座標が0でY座標が0である点を点Aとする。ここでX=Y=0となる点は球面上には2つあるが、ここでは眼鏡レンズとして使用される側の点とする。それはsqrtの前の複合から+を選択することにより、上式のZの値として、自然に得られる。
そり角は、点AおけるZ座標の値の変位を、Y=0に固定してX軸方向にそって評価した値(X方向の面の傾き)から求めることができる。その値は、点Aにおける関数Zの偏導関数∂fZ/∂X にX=0、Y=0を代入して傾きを求め、X軸に対する角度として表すものとする。
∂fZ/∂X=(1/2)・(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)−1/2・(−2X+2X0)
X=0、Y=0とすると、
X0・(R2−X02−Y02)−1/2
そり角は、−tan−1(X0/sqrt(R2−X02−Y02)) となる。
X0は負の値であり、そり角は定義方法より−をつけて正の値になる。
【0023】
一方、前傾角は、点AにおけるZ座標の値の変位を、X=0に固定してY軸方向にそって評価した値(Y方向の面の傾き)から求めることができる。これは、点Aにおける関数Zの偏導関数∂fZ/∂Y にX=0、Y=0を代入して傾きを求め、Y軸に対する角度として表すものとする。
∂fZ/∂Y=(1/2)・(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)−1/2・(−2Y+2Y0)
X=0、Y=0とすると、
Y0・(R2−X02−Y02)−1/2
前傾角は、tan−1(Y0/sqrt(R2−X02−Y02))
Y0は正の値であり、そのまま前傾角となる。
この条件を適用すると、このレンズではそり角は1.83度、前傾角は9.75度となった。
【0024】
4)頂点間距離の算出
頂点間距離とは、角膜頂点からレンズ裏面と正面向き視線の交点までの距離である。頂点間距離を求めるには、上記そり角・前傾角の算出と同様レンズ裏面の曲率中心座標を求める必要がある。
頂点間距離はフレーム(リム21)にレンズを装着することで定義される距離であるため、ここでは、レンズパラメータについて上記と同様に表2に示すようなデータのレンズに適用して計算するものとする。表2のデータは一例であって、被験者によって異なる情報である。
レンズ裏面の曲率中心座標を求めるには、レンズ表面の曲率中心座標を求めた際のLの値を下記のように変更することで求められる。
L=sqrt(R´2−M2)+CTで示される。
ここに、R´はレンズ裏面の曲率半径であり、Mは座標c,dを結ぶ線分を二等分した長さである。CTはレンズの幾何中心における厚みである。
このようにして求められたレンズ裏面球面は、レンズ表面と同様に、
Z=fZ(X,Y)
という形で、変数XとYの関数として表現することができる。つまり(X,Y)=(0,0)を代入したときのZの値から頂点間距離を求めることができる。
上記レンズ条件と、測定されたa〜d座標より求めた頂点間距離は15.9mmであった。
【0025】
(実施の形態2)
実施の形態2では実施の形態1と同様に被験者の顔が動かないような状態で、眼鏡フレームをかけた状態の被験者の左右いずれかの眼とリムを含むように撮像手段としてのデジタルカメラで撮像するものとする。そして、得られた撮像データを解析用コンピュータのコントローラMC内の画像解析プログラムによって解析するものとする。撮像においては画素群のなるべく中心位置に虹彩が配置されるようにし、なおかつZ軸方向については異なる接近位置でピントを合わせた撮像データをなるべく細かく変化させて取得する。
1)取得した撮像の領域の区画
まず、基本的に取得した画像は白黒画像の256階調を採用するものとする。もちろん、他の階調パターンとしたりカラー画像を解析することも可能である。256階調は強度0が黒を、強度255が白を表すものとする。
例えば、図8に示すような虹彩を囲む200×200=40000画素について、各点の強度分布を図9に示すようにヒストグラムで表現するものとする。このヒストグラムは横軸が0〜255の強度値で、縦軸が「その強度値をもつ画素の個数」を表す。簡単のため、この20mm×20mm領域にはフレームが含まれないものとし、睫毛なども無視する。すると4000個の画素は、a)比較的画素値が小さい虹彩、b)肌色のまぶた、c)白眼、に分かれて分布する。適当な閾値を2つ設定し、3つの強度範囲に属する点の集まりを3つの領域に分けることができる。
閾値の決定方法は、たとえば3つの群の群内分散と群間分散の比を最小にする条件から決定することができる。虹彩の群内分散は、虹彩〜まぶた間の閾値を仮に70.5とし、0〜70の強度一つあたりの平均画素数110個とし、Σ(110−各強度の個数)2を71で割った値として得られる。群間分散は3つの群の平均強度である3つの値の分散である。閾値を適当に変化させて、群の群内分散と群間分散の比を最小にする条件を決定する。
【0026】
このようにして分けた3領域は、かならずしもそれぞれが「ひとかたまり」になっておらず、分かれて分布することもある。たとえば眼のすぐ近くにホクロがあれば、その領域と虹彩は混同されて同一領域として分類されることがあるし、まぶたは上下に分かれる。そのため、3領域のうちどれが「上下方向をカットした円形」に最も近い形状かについて形状特徴評価を実行する。
これは例えば、あらかじめ用意した形状パターンと比較して、もっとも一致度が高いものを選択すれば良い。つまり一種のフィルタリングを行う。あらかじめ用意した形状パターンとは、たとえば中心座標が200×200画素の中心で、半径5mm(50画素ぶん)、上下の瞼で隠される幅2mm(20画素ぶん)というパターンを用意して、このパターンと一致する画素の割合によって求める。虹彩の位置が200×200画素の中心からズレていても、パターンの中心座標を適当に移動させて一致度が最も高い条件によって判定することができる。
次に、虹彩の形状を1)中心位置X、2)中心位置Y、3)半径R、4)上瞼で隠れる幅、5)下瞼で隠れる幅の5変数で表現することを考える。この5変数を適当に変化させて、領域一致度が最大になる条件によって虹彩の中心位置を決定することができる。リムの位置についてもこの領域分けの概念と形状特徴評価によって決定することができる。
【0027】
2)ピント合わせ
本実施の形態2ではピント合わせをする目標点としてリム上の4点と虹彩を使用する。これらは頂点間距離の算出とそり角・前傾角の算出上必要とされる位置である。図10に示すように、リム上の4点を決定するためまず、フレームに外接する長方形を設定する。この長方形の横の辺は水平であり、縦の辺は垂直とする。この長方形の中心がボクシングセンタである。ボクシングセンタから各辺に降ろした垂線とフレームの交点をリム上の4点の目標とする。
目標として定めたフレーム上の4点および虹彩中心に関して、カメラの焦点がどの位置になったときにピントが合ったかを算出する必要がある。そのため、実施の形態2ではカメラの焦点位置を細かく変化させて撮像した複数の画像それぞれにおいて、目標点付近の画素の強度分布を評価することとする。例えば、図11(a)及び(b)のように目標点を囲む30×30=900画素において、各点の強度分布をヒストグラムで表現する。このヒストグラムは横軸が0〜255の強度値で、縦軸が画素の個数を表す。
ピントが合っている状態においては、図11(b)のようにアミガケした領域の面積が広くなる(実際は面積よりも分散によって評価するのがより妥当である)。すなわち0〜255の各強度について、個数の平均値(900÷256)から離れている度合い(画素の個数の差)の2乗を合計した値を「焦点一致度を評価するための数値」とする。この数値は、カメラの焦点位置の変化によって値が変化するが、ピントが合ったときに最大ピーク値となる。上記目標点についての最大ピーク値を求めることで奥行き(Z軸)方向の位置を決定することができる。
このようにしてリム上の4点と虹彩の3次元的な位置が取得できるため、実施の形態1と同様にその値を使用して頂点間距離やそり角・前傾角を算出することができる。
【0028】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態では単焦点レンズについて適用したが、単焦点レンズ以外のレンズ、例えば累進屈折力レンズやバイフォーカルレンズに適用することも可能である。
・上記では実際にレンズ度数の入っているレンズを使用したが、計算上はレンズの表裏の曲率とレンズ厚さがわかればよいため、レンズ度数の入っていないダミーレンズを使用することも可能である。
・実施の形態2の計算ではZ軸について正確な位置を取得するためにピント位置の異なる多数の撮像を取得するようにしていたが、画像処理の能力が向上すればこのような多数の撮像は必ずしも必要ではない。例えば、異なる2方向から顔面を撮像して画像上の視差差を利用して奥行き(Z軸方向)情報を取得するような方法でもよい。
・上記実施の形態では角膜頂点位置を瞳孔位置に基づいて間接的に取得するようにしていたが、角膜曲率測定装置によって直接的に求めるようにしてもよい。角膜曲率測定装置は角膜表面に投影したテストパターンの反射像をもとに、角膜屈折力を測定する装置である。テストパターンを無限遠物体として表示することにより、反射像から直接角膜曲率を求めることが可能となる。この手法によって装置と眼との距離によらず直接角膜屈折力を求めることができ、同時に角膜頂点距離を求めることが可能となる。
・その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0029】
1…撮影手段としての撮像装置、21…レンズ保持部としてのリム。
【技術分野】
【0001】
本発明は眼鏡フレームにレンズを装着させる際に眼鏡フレームのレンズ保持部の形状とレンズとの関係において発生する情報に関して必要とされる位置データを算出するための位置データ算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
眼鏡フレームにレンズを装着させる際に眼鏡フレームのレンズ保持部の形状とレンズとの位置関係において発生する情報(以下、フレーム・レンズ情報)として、例えば、頂点間距離(角膜頂点からレンズ裏面と正面向き視線の交点までの距離)が挙げられる。眼とレンズとの間隔が違えばレンズを同じレンズ度数に設定しても見え方は異なる。例えば、ユーザー(被験者)のレンズ度数を決定するためにトライアルレンズを使用して最適なレンズ度数を得たとしても、トライアルレンズ用の眼鏡フレームとは異なる眼鏡フレームにその最適とされた度数のレンズを適用した場合には頂点間距離が変わってしまい必ずしも最適になるわけではない。そのため、頂点間距離はフレーム・レンズ情報の1つとして重要である。
また、眼鏡フレームにレンズを装着させた際にはレンズがトライアルレンズの眼鏡フレームとは異なりそり角や前傾角が発生する場合がある。そり角や前傾角があればレンズが眼に対して正対しない状態で装着されるわけであるから、例えば乱視のないユーザーであっても乱視状態となってしまうため、本来はそれに応じて乱視を矯正するようなレンズ特性を反映させる必要がある。そり角や前傾角は眼鏡フレームに装着された状態のレンズのアイポイント位置におけるレンズ表面の接線角度が必要となるが、実際にはそのような位置で正確にそり角や前傾角測定することができないため、便宜的にレンズ保持部の角度を持ってそり角や前傾角とすることが多い。
これら頂点間距離やそり角や前傾角はフレーム・レンズ情報の代表的なものとして重要であるが、いずれも、ユーザーの眼の位置に対するレンズ保持部の形状とレンズの3次元的な位置を求める必要がある。
【0003】
例えば、従来から眼鏡フレームに対する眼の位置(アイポイント位置)を決定する方法としては、例えば特許文献1に示す技術が挙げられる。これは、眼鏡フレームのリムの所定の位置に指標をマーキングし、実際にその眼鏡フレームを被験者に装用させて、眼鏡フレームを含む顔面部を撮影し、前もって得られている指標の位置に基づいて最適なアイポイント位置を算出するというものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4536329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1は、フレームに装着されたダミーレンズに参照点を記録し、フレーム装用者の正面からの顔写真を撮影し、参照点との位置関係からアイポイントを特定する方法について記載されている。この手法において、斜め角度から撮影された2枚の写真上の参照点と瞳孔中心位置から三角測量的に頂間距離を演算することも可能である。しかし、実機を用いて測定試験を実施したところ、演算に使用する測定値が求めたいパラメータと比較して十分に大きくないため、測定精度が低いことを確認した。また、写真撮影時のカメラと被写体のポジショニングが困難である等の問題もあった。
本発明は、このような従来の技術に存在する問題点に着目してなされたものである。その目的は、眼鏡フレームにレンズを装着させる際に必要とされるレンズ設計情報を算出することができる眼鏡におけるレンズ設計情報の位置データ算出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1の発明では、被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことをその要旨とする。
また請求項2の発明では請求項1の発明の構成に加え、前記撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成され、前記3次元的な位置データは前記撮像光学系の測定箇所に対する移動量と合焦位置によって定義されることをその要旨とする。
また請求項3の発明では請求項1の発明の構成に加え、前記撮像手段によって撮像した撮像情報を画像解析し、被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出することをその要旨とする。
また請求項4の発明では請求項1又は2の発明の構成に加え、算出の基準となる基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、前記基準測定ポイントの位置データに基づいて前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことをその要旨とする。
また請求項5の発明では請求項4の発明の構成に加え、前記基準測定ポイントは撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置であることをその要旨とする。
また請求項6の発明では請求項5の発明の構成に加え、前記基準測定ポイントは角膜頂点位置であることをその要旨とする。
また請求項7の発明では請求項6の発明の構成に加え、前記角膜頂点位置は瞳孔位置に基づいて換算することをその要旨とする。
また請求項8の発明では請求項6又は7の発明の構成に加え、前記瞳孔位置は測定された角膜屈折力に基づいて換算することをその要旨とする。
また請求項9の発明では請求項6の発明の構成に加え前記角膜頂点位置は角膜曲率測定装置により直接測定されることをその要旨とする。
また請求項10の発明では請求項1〜9のいずれかの発明の構成に加え、前記レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて前記眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角の少なくともいずれか一方を算出することをその要旨とする。
【0007】
上記のような構成では、被験者に眼鏡フレームを装用させて前方を目視させた状態で眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出する。
算出方法としては、例えば、撮像光学系が被験者の画面を横切る方向(以下、第1の方向)に駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向(以下、第2の方向)に合焦可能に構成されていることで、ある基準位置に対する第1の方向への撮像光学系の移動量と合焦の際のフォーカシングレンズの移動量に基づいて算出することが可能である。レンズ保持部とはレンズ全周を包囲するリムのみならず、レンズの一部を包囲するリムやリムがなくレンズを両端だけで留めるようないわゆる「リムレス」と呼ばれる保持手段も含む概念である。
また、レンズ保持部のエッジや画面の肌のコントラスト等の画像情報を画像解析を行って算出することも可能である。
【0008】
基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、その基準測定ポイントの位置データに基づいてレンズ保持部の3次元的な位置データを算出することが好ましい。基準測定ポイントとしては撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置とすることが好ましい。ここで位置データとして必要なのは被験者の顔面に対するレンズ保持部の配置状態であるため、被験者の顔面のどこかを基準として所定のレンズ設計情報の3次元的な位置データを得るようにすればよいからである。基準測定ポイントとして好ましいのは、撮像においてレンズ保持部の内側であり、より好ましいのは角膜頂点位置である。但し、角膜頂点位置を基準測定ポイントとする場合には撮像光学系を合焦させにくため、第2の方向については虹彩が明瞭に見える瞳孔位置をもって換算することが好ましい。
更に、レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角を算出することが可能となる。眼鏡フレームに前傾角又はそり角がなければこれらの角度の影響を考慮しなくともよいが、前傾角又はそり角がある場合にはそれを考慮する必要がある。レンズ保持部の3次元的な位置データを取得することで正確に前傾角又はそり角を算出することができることとなる。
【発明の効果】
【0009】
上記各請求項の発明では、眼鏡フレームのレンズ保持部にレンズを装着させる際に必要とされるレンズ設計情報を算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1において、撮像装置を使用して撮像する一態様を説明する説明図。
【図2】実施の形態1において使用される撮像装置の電気的構成を説明するブロック図。
【図3】実施の形態1において撮像装置のモニターに表示される撮像の一例の説明図。
【図4】実施の形態1においてリム上に設定する座標位置を説明する説明図。
【図5】眼、フレーム及びレンズとの位置関係においてそり角の概念を説明する説明図。
【図6】眼、フレーム及びレンズとの位置関係において前傾角の概念を説明する説明図。
【図7】レンズ表面球面の曲率中心座標の位置を説明するための説明図。
【図8】本発明の実施の形態2において、撮像の階調の違いによって領域を区画することを説明するための眼とまぶた周辺の所定の画素領域を切り取った模式図。
【図9】図8の階調の違いを表す横軸を階調の強度、縦軸を画素の個数としたヒストグラム。
【図10】実施の形態2においてリム上に設定するピント合わせの目標点の設定方法を説明する説明図。
【図11】(a)は所定の画素領域についてピントが合っていない場合の、(b)はピントが合った状態のヒストグラム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の具体的な実施の形態を図面に基づいて説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態1においては、撮像手段の一例として図1に示すような撮像装置1を使用する。撮像装置1の筐体2内部には図示しない撮像機構及び3軸モータ機構が配設されている。筐体2はコラム3を介してベッド4上に設置されている。ベッド4はベース5上に設置されている。筐体2の前面(被験者側)には対物レンズ筒6が形成されており、背面にはモニター7が形成されている。筐体2は内部に光源を備えた図示しない撮影用光学系を備えている。顔面撮影用光学系は光源によって照らされた対物(ここではフレーム(リム)を含んだ左右いずれかの眼の周囲)を撮影し、撮像素子9によって撮像データを取得する。
筐体2はベッド4に対してコラム3と共に左右方向(X軸方向)及び前後方向(Z軸方向)に移動可能とされており、コラム3に対して上下方向(Y軸方向)に移動可能とされている。3軸モータ機構には筐体2及びコラム3をX軸、Y軸及びZ軸の3つの軸方向に対して進退させるために3つのモータが配設されている。X軸方向とY軸方向は被験者の画面を横切る第1の方向とされ、Z軸方向は被験者の顔面部に対して接離する第2の方向とされる。第2の方向への移動によって撮像機構を合焦させることとなる。ベッド4上には筐体2を3軸方向に自在に移動させるための操作手段となるジョイスティック8が配設されている。ジョイスティック8には上下にスライド操作の可能なスライドスイッチ8aが併設されている。ジョイスティック8自体を左右方向に傾動させることでX軸方向に、前後方向に傾動させることでZ軸方向に筐体2を連動させて移動させることができる。また、スライドスイッチ8aを上下方向に移動操作することに連動させてY軸方向に筐体2を連動させて移動させることができる。
ベース5上の筐体2の前位置には撮像の際に被験者の顔を支持するためのスタンド装置10が配設されている。スタンド装置10は被験者のあごを載せるためのスライダ11が上下方向に移動可能に配設されている。スタンド装置10の上部位置には被験者の前頭部を当接させるクッション12が配設されている。
【0012】
次に、このような撮像装置1の電気的構成を説明する。尚、本発明とは直接関係のない構成については省略する。
図2に示すように、撮像装置1のコントローラMCには上記モニター7、上記ジョイスティック8、上記スライドスイッチ8a、撮像素子9、第1〜第3のステップモータ15〜17、第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20がそれぞれ接続されている。
コントローラMCは周知のCPUやROM及びRAM等のメモリ、タイマ等から構成されている。コントローラMCのROM内にはモニター7に撮像素子9の画像を表示させる表示プログラム、第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20からのパルス信号に基づいてモニター7上に示される画像縮尺に応じた移動量を算出し表示させる移動量算出プログラム、OS(Operation System)等の各種プログラムが記憶されている。
第1〜第3のステップモータ15〜17は上記3軸モータ機構の一部を構成し、第1のステップモータ15は筐体2をベッド4に対してコラム3と共に左右方向(X軸方向)に移動させる。第2のステップモータ16は同じく上下方向(Y軸方向)に移動させる。第3のステップモータ17は同じく前後方向(Z軸方向)に移動させる。
第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20はそれぞれ第1〜第3のステップモータ15〜17の回転量を測定し、回転量に応じて所定のパルス出力をする。
コントローラMCはジョイスティック8及びスライドスイッチ8aの操作に基づいて第1〜第3のステップモータ15〜17の駆動制御を実行し、その際に得られる第1〜第3のロータリーエンコーダ18〜20からの回転量に応じたパルス出力に基づいて筐体2の3次元的な移動量を算出し、モニター7に画像とともに数値表示させる。図3はモニター7に表示させる表示画面の一例である。被験者に正面を遠望視させた状態で撮像された右目とリム21を含む顔面が表示されている。瞳孔中心はアイポイントとなる。モニター中心にはターゲットとなるマーカー23が表示される。マーカー23は図上においてアイポイント位置を示している。画面左上方にはX,Y,Zの各軸方向の基準位置からの移動量(mm)が示される。基準位置は図示しない設定スイッチによって任意の位置を(X,Y,Z)=(0,0,0)として設定することが可能である。
【0013】
このような撮像装置1の使用においては、眼鏡フレームをかけた状態の被験者の左右いずれかの眼がちょうど対物レンズ筒6の前方に対面するようにスライダ11の上下位置を調整し、左右方向については被験者自身が顔を移動させて調整する。被験者は撮像時に顔が動かないようにしっかりと前頭部クッション12に押し付けるようにする。作業者はジョイスティック8及びスライドスイッチ8aを操作して筐体2をX軸、Y軸及びZ軸の各方向に移動させてモニター7に表示される撮像に対してマーカー23の中心の位置データを取得する。X,Y軸方向についての位置データはある点(基準となる点、どこでもよい。)からの左右・上下方向(第1の方向)の移動量として取得でき、Z軸方向についてはピントのあったある点を基準として現位置について前後方向(第2の方向)に移動させてピントを合わせることで取得できる。
【0014】
次にこのような撮像装置1を使用した具体的な測定方法を説明する。以下における計算は撮像装置1によって得られた数値を人が計算するようにしても、撮像装置1に併設したコンピュータによって計算するようにしてもどちらでもよい。
1)基準測定ポイントの測定
本実施の形態では基準測定ポイントとして角膜頂点座標を使用する。角膜頂点座標はそもそも頂点間距離を取得するために必要な位置データであるため、これを基準とすることは誤差も少なく有利である。また、本実施の形態では角膜頂点座標におけるX,Y座標はアイポイント位置でもある。そのため、計算する場合にはこれを基準測定ポイント位置と設定し、角膜頂点座標(X,Y,Z)=(0,0,0)として計算する。
角膜頂点座標は実際には角膜が無色透明であるため、その場所を特定するのは容易ではない。そのため瞳孔を形成している虹彩を利用して、角膜頂点座標を取得する。
図3に示すように、モニター7に表示されるX,Y座標を0に設定した状態で、マーカーに被験者瞳孔中心位置を一致させる。この状態で角膜頂点座標のX,Y座標が得られることとなる。一方、瞳孔中心座標のZ座標は虹彩面を基準とする。人の平均的な前眼部の光学的なパラメータは表1の通りである。水晶体前面位置≒虹彩面位置と考え、虹彩面のZ軸座標位置に対して角膜頂点までの距離を加算することで角膜頂点のZ軸座標位置を取得する。ここでは、角膜頂点位置から水晶体前面位置までは3.6mmであるためこの値を採用することで、この距離分を虹彩面のZ座標に加算したものを角膜頂点座標のZ座標と考えるわけである。
しかし、ここでモニター7に表示される画像は角膜の屈折による正立虚像を表示しているため、この屈折を考慮した補正、つまりここでは3.6mmが角膜の屈折によってみかけ上どのくらいの距離でピントが合うのかを計算する必要がある。上記のように水晶体前面位置≒虹彩位置とし、見かけの虹彩位置をs´とすると実際の虹彩と見かけの虹彩位置、角膜屈折力の関係は下記数1の式で表される。
この式に表1の各数値を代入することで角膜頂点から虹彩面までの見かけの虹彩位置(Z軸距離)を求めることができる。ここでは、計算の結果4.29mmとなる。以下の計算上この4.29mmを考慮した角膜頂点Z座標を0に設定する。
ここで、表1に示す角膜屈折力(43.05D)は、ヒトの平均的な角膜屈折力を引用しているに過ぎないので、実際に測定された各被験者の角膜屈折力を数1の式に代入することも可能である。
【0015】
【表1】
【0016】
【数1】
【0017】
2)フレームの3次元位置の算出
ここでは図4に示すようにリム21の最上部座標a、最下部座標b、最も鼻側の点の座標c、最も耳側の座標dの4箇所について3次元位置を求める。もちろんこれら以外の位置について求めるようにしてもよい。少なくともこれらの4点はレンズ加工上必要とされるボクシングセンタの計算と、後述する前傾角又はそり角を計算するために必要である。角膜頂点座標(アイポイント位置)に対するa〜dのX,Y,Z座標は表2のように取得することができる。ボクシングセンタのX,Y座標は(X,Y)=((cX+dX)/2、(aY+bY)/2)から求めることができる。表1からもとめたボクシングセンタのX,Y座標は(X,Y)=(−2.45,−0.64)となり、ボクシングセンタを基準とすると角膜頂点座標(アイポイント位置)は図4では鼻側に2.45mm、上側に0.64mmずれた位置となる。
【0018】
3)そり角・前傾角の算出
図5に示すように、そり角はレンズ表面と正面向き視線との交点における、レンズ表面接線の、X-Z平面における傾きである。また、図6に示すように、前傾角はレンズ表面と正面向き視線との交点における、レンズ表面接線のY-Z平面における傾きである。
これらそり角、前傾角を求めるには、まずレンズ表面球面の曲率中心座標をもとめる必要がある。使用するフレームにそり角や前傾角がある場合には、その正確な角度を算出することで、レンズに角度に基づいて発生する収差をキャンセルするような特性を設けるようフィードバックすることが可能となる。
そり角・前傾角はフレーム(リム21)にレンズを装着することで生じる傾きであるため、ここでは、レンズパラメータについて表2に示すようなデータのレンズに適用して計算するものとする。表2のデータは一例であって、被験者によって異なる情報である。
【0019】
【表2】
【0020】
フレーム(リム21)にレンズを装着する際にはリム21に対してレンズの厚み位置をどのように配置するかを決定する必要がある。ここではレンズ表面が最も鼻側の点の座標c、最も耳側の座標dを通るように設定する。表カーブは球面であるため、左右方向に対して上下方向の短い本実施の形態1のようなリム21では図6のように最上部座標a、最下部座標bに対して表面は前方に若干飛び出して配置されることがある。尚、設定位置を変更することは自由である。
さて、レンズ表面球面の曲率中心座標は、
A)上記座標c,dの中点をとおり、2つのベクトルab,cdに対して垂直な直線上にある。この直線の方向ベクトルは、ベクトルabとベクトルcdの外積により求められる。
B)レンズ表面球面の曲率中心座標は、座標c,dの中点からLだけ離れたところにある。このLは、L=sqrt(R2−M2)で示される。ここに、図7に示すように、Rはレンズ表面の曲率半径であり、Mは座標c,dを結ぶ線分を二等分した長さである。
この条件を適用すると、レンズ表面球面の曲率中心座標は(X,Y,Z)=(−4.572,−4.639,−125.307)となる。
【0021】
次いで、レンズ表面球面の曲率中心座標に基づいて前傾角及びそり角を算出する。
3次元空間座標において球面上のZ座標をX座標とY座標の関数として表すと、
Z=fZ(X,Y)
という形で、変数XとYの関数として表現することができる。具体的には球面の中心座標を(X0、Y0、Z0)とし、球面の半径をRとすると、
(X−X0)2+(Y−Y0)2+(Z−Z0)2=R2
より、
Z=sqrt(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)+Z0
となる。すなわち、
fZ(X,Y)=sqrt(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)+Z0
という関数により球面上のZ座標を表わすことができる。
ここで、、球面の式をZについて解く際、sqrtの前につく複合+−のうち、眼鏡レンズのとして使用する側は+を選択する。
【0022】
次に、球面上でX座標が0でY座標が0である点を点Aとする。ここでX=Y=0となる点は球面上には2つあるが、ここでは眼鏡レンズとして使用される側の点とする。それはsqrtの前の複合から+を選択することにより、上式のZの値として、自然に得られる。
そり角は、点AおけるZ座標の値の変位を、Y=0に固定してX軸方向にそって評価した値(X方向の面の傾き)から求めることができる。その値は、点Aにおける関数Zの偏導関数∂fZ/∂X にX=0、Y=0を代入して傾きを求め、X軸に対する角度として表すものとする。
∂fZ/∂X=(1/2)・(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)−1/2・(−2X+2X0)
X=0、Y=0とすると、
X0・(R2−X02−Y02)−1/2
そり角は、−tan−1(X0/sqrt(R2−X02−Y02)) となる。
X0は負の値であり、そり角は定義方法より−をつけて正の値になる。
【0023】
一方、前傾角は、点AにおけるZ座標の値の変位を、X=0に固定してY軸方向にそって評価した値(Y方向の面の傾き)から求めることができる。これは、点Aにおける関数Zの偏導関数∂fZ/∂Y にX=0、Y=0を代入して傾きを求め、Y軸に対する角度として表すものとする。
∂fZ/∂Y=(1/2)・(R2−(X−X0)2−(Y−Y0)2)−1/2・(−2Y+2Y0)
X=0、Y=0とすると、
Y0・(R2−X02−Y02)−1/2
前傾角は、tan−1(Y0/sqrt(R2−X02−Y02))
Y0は正の値であり、そのまま前傾角となる。
この条件を適用すると、このレンズではそり角は1.83度、前傾角は9.75度となった。
【0024】
4)頂点間距離の算出
頂点間距離とは、角膜頂点からレンズ裏面と正面向き視線の交点までの距離である。頂点間距離を求めるには、上記そり角・前傾角の算出と同様レンズ裏面の曲率中心座標を求める必要がある。
頂点間距離はフレーム(リム21)にレンズを装着することで定義される距離であるため、ここでは、レンズパラメータについて上記と同様に表2に示すようなデータのレンズに適用して計算するものとする。表2のデータは一例であって、被験者によって異なる情報である。
レンズ裏面の曲率中心座標を求めるには、レンズ表面の曲率中心座標を求めた際のLの値を下記のように変更することで求められる。
L=sqrt(R´2−M2)+CTで示される。
ここに、R´はレンズ裏面の曲率半径であり、Mは座標c,dを結ぶ線分を二等分した長さである。CTはレンズの幾何中心における厚みである。
このようにして求められたレンズ裏面球面は、レンズ表面と同様に、
Z=fZ(X,Y)
という形で、変数XとYの関数として表現することができる。つまり(X,Y)=(0,0)を代入したときのZの値から頂点間距離を求めることができる。
上記レンズ条件と、測定されたa〜d座標より求めた頂点間距離は15.9mmであった。
【0025】
(実施の形態2)
実施の形態2では実施の形態1と同様に被験者の顔が動かないような状態で、眼鏡フレームをかけた状態の被験者の左右いずれかの眼とリムを含むように撮像手段としてのデジタルカメラで撮像するものとする。そして、得られた撮像データを解析用コンピュータのコントローラMC内の画像解析プログラムによって解析するものとする。撮像においては画素群のなるべく中心位置に虹彩が配置されるようにし、なおかつZ軸方向については異なる接近位置でピントを合わせた撮像データをなるべく細かく変化させて取得する。
1)取得した撮像の領域の区画
まず、基本的に取得した画像は白黒画像の256階調を採用するものとする。もちろん、他の階調パターンとしたりカラー画像を解析することも可能である。256階調は強度0が黒を、強度255が白を表すものとする。
例えば、図8に示すような虹彩を囲む200×200=40000画素について、各点の強度分布を図9に示すようにヒストグラムで表現するものとする。このヒストグラムは横軸が0〜255の強度値で、縦軸が「その強度値をもつ画素の個数」を表す。簡単のため、この20mm×20mm領域にはフレームが含まれないものとし、睫毛なども無視する。すると4000個の画素は、a)比較的画素値が小さい虹彩、b)肌色のまぶた、c)白眼、に分かれて分布する。適当な閾値を2つ設定し、3つの強度範囲に属する点の集まりを3つの領域に分けることができる。
閾値の決定方法は、たとえば3つの群の群内分散と群間分散の比を最小にする条件から決定することができる。虹彩の群内分散は、虹彩〜まぶた間の閾値を仮に70.5とし、0〜70の強度一つあたりの平均画素数110個とし、Σ(110−各強度の個数)2を71で割った値として得られる。群間分散は3つの群の平均強度である3つの値の分散である。閾値を適当に変化させて、群の群内分散と群間分散の比を最小にする条件を決定する。
【0026】
このようにして分けた3領域は、かならずしもそれぞれが「ひとかたまり」になっておらず、分かれて分布することもある。たとえば眼のすぐ近くにホクロがあれば、その領域と虹彩は混同されて同一領域として分類されることがあるし、まぶたは上下に分かれる。そのため、3領域のうちどれが「上下方向をカットした円形」に最も近い形状かについて形状特徴評価を実行する。
これは例えば、あらかじめ用意した形状パターンと比較して、もっとも一致度が高いものを選択すれば良い。つまり一種のフィルタリングを行う。あらかじめ用意した形状パターンとは、たとえば中心座標が200×200画素の中心で、半径5mm(50画素ぶん)、上下の瞼で隠される幅2mm(20画素ぶん)というパターンを用意して、このパターンと一致する画素の割合によって求める。虹彩の位置が200×200画素の中心からズレていても、パターンの中心座標を適当に移動させて一致度が最も高い条件によって判定することができる。
次に、虹彩の形状を1)中心位置X、2)中心位置Y、3)半径R、4)上瞼で隠れる幅、5)下瞼で隠れる幅の5変数で表現することを考える。この5変数を適当に変化させて、領域一致度が最大になる条件によって虹彩の中心位置を決定することができる。リムの位置についてもこの領域分けの概念と形状特徴評価によって決定することができる。
【0027】
2)ピント合わせ
本実施の形態2ではピント合わせをする目標点としてリム上の4点と虹彩を使用する。これらは頂点間距離の算出とそり角・前傾角の算出上必要とされる位置である。図10に示すように、リム上の4点を決定するためまず、フレームに外接する長方形を設定する。この長方形の横の辺は水平であり、縦の辺は垂直とする。この長方形の中心がボクシングセンタである。ボクシングセンタから各辺に降ろした垂線とフレームの交点をリム上の4点の目標とする。
目標として定めたフレーム上の4点および虹彩中心に関して、カメラの焦点がどの位置になったときにピントが合ったかを算出する必要がある。そのため、実施の形態2ではカメラの焦点位置を細かく変化させて撮像した複数の画像それぞれにおいて、目標点付近の画素の強度分布を評価することとする。例えば、図11(a)及び(b)のように目標点を囲む30×30=900画素において、各点の強度分布をヒストグラムで表現する。このヒストグラムは横軸が0〜255の強度値で、縦軸が画素の個数を表す。
ピントが合っている状態においては、図11(b)のようにアミガケした領域の面積が広くなる(実際は面積よりも分散によって評価するのがより妥当である)。すなわち0〜255の各強度について、個数の平均値(900÷256)から離れている度合い(画素の個数の差)の2乗を合計した値を「焦点一致度を評価するための数値」とする。この数値は、カメラの焦点位置の変化によって値が変化するが、ピントが合ったときに最大ピーク値となる。上記目標点についての最大ピーク値を求めることで奥行き(Z軸)方向の位置を決定することができる。
このようにしてリム上の4点と虹彩の3次元的な位置が取得できるため、実施の形態1と同様にその値を使用して頂点間距離やそり角・前傾角を算出することができる。
【0028】
尚、この発明は、次のように変更して具体化することも可能である。
・上記実施の形態では単焦点レンズについて適用したが、単焦点レンズ以外のレンズ、例えば累進屈折力レンズやバイフォーカルレンズに適用することも可能である。
・上記では実際にレンズ度数の入っているレンズを使用したが、計算上はレンズの表裏の曲率とレンズ厚さがわかればよいため、レンズ度数の入っていないダミーレンズを使用することも可能である。
・実施の形態2の計算ではZ軸について正確な位置を取得するためにピント位置の異なる多数の撮像を取得するようにしていたが、画像処理の能力が向上すればこのような多数の撮像は必ずしも必要ではない。例えば、異なる2方向から顔面を撮像して画像上の視差差を利用して奥行き(Z軸方向)情報を取得するような方法でもよい。
・上記実施の形態では角膜頂点位置を瞳孔位置に基づいて間接的に取得するようにしていたが、角膜曲率測定装置によって直接的に求めるようにしてもよい。角膜曲率測定装置は角膜表面に投影したテストパターンの反射像をもとに、角膜屈折力を測定する装置である。テストパターンを無限遠物体として表示することにより、反射像から直接角膜曲率を求めることが可能となる。この手法によって装置と眼との距離によらず直接角膜屈折力を求めることができ、同時に角膜頂点距離を求めることが可能となる。
・その他本発明の趣旨を逸脱しない態様で実施することは自由である。
【符号の説明】
【0029】
1…撮影手段としての撮像装置、21…レンズ保持部としてのリム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことを特徴とする位置データ算出方法。
【請求項2】
前記撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成され、前記3次元的な位置データは前記撮像光学系の測定箇所に対する移動量と合焦位置によって定義されることを特徴とする請求項1に記載の位置データ算出方法。
【請求項3】
前記撮撮像手段によって撮像した撮像情報を画像解析し、被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出することを特徴とする請求項1に記載の位置データ算出方法。
【請求項4】
算出の基準となる基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、前記基準測定ポイントの位置データに基づいて前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置データ算出方法。
【請求項5】
前記基準測定ポイントは撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置であることを特徴とする請求項4に記載の位置データ算出方法。
【請求項6】
前記基準測定ポイントは角膜頂点位置であることを特徴とする請求項5に記載の位置データ算出方法。
【請求項7】
前記角膜頂点位置は瞳孔位置に基づいて換算することを特徴とする請求項6に記載の位置データ算出方法。
【請求項8】
前記瞳孔位置は測定された角膜屈折力に基づいて換算することを特徴とする請求項6又は7に記載の位置データ算出方法。
【請求項9】
前記角膜頂点位置は角膜曲率測定装置により直接測定されることを特徴とする請求項6に記載の位置データ算出方法。
【請求項10】
前記レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて前記眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角の少なくともいずれか一方を算出することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の位置データ算出方法。
【請求項1】
被験者に眼鏡フレームを装用させ前方を目視させた状態で、前記眼鏡フレームのレンズ保持部を含む顔面部を撮像光学系を備えた撮像手段によって撮像し、その撮像情報に基づいて被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことを特徴とする位置データ算出方法。
【請求項2】
前記撮像光学系は被験者の視線に対して垂直な平面を駆動可能であるとともに、被験者の顔面部に対して接離する方向に合焦可能に構成され、前記3次元的な位置データは前記撮像光学系の測定箇所に対する移動量と合焦位置によって定義されることを特徴とする請求項1に記載の位置データ算出方法。
【請求項3】
前記撮撮像手段によって撮像した撮像情報を画像解析し、被験者の眼に対する前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出することを特徴とする請求項1に記載の位置データ算出方法。
【請求項4】
算出の基準となる基準測定ポイントを測定して3次元的な位置データを算出し、前記基準測定ポイントの位置データに基づいて前記レンズ保持部の3次元的な位置データを算出するようにしたことを特徴とする請求項1又は2に記載の位置データ算出方法。
【請求項5】
前記基準測定ポイントは撮像情報として得られる被験者の顔面上の任意の位置であることを特徴とする請求項4に記載の位置データ算出方法。
【請求項6】
前記基準測定ポイントは角膜頂点位置であることを特徴とする請求項5に記載の位置データ算出方法。
【請求項7】
前記角膜頂点位置は瞳孔位置に基づいて換算することを特徴とする請求項6に記載の位置データ算出方法。
【請求項8】
前記瞳孔位置は測定された角膜屈折力に基づいて換算することを特徴とする請求項6又は7に記載の位置データ算出方法。
【請求項9】
前記角膜頂点位置は角膜曲率測定装置により直接測定されることを特徴とする請求項6に記載の位置データ算出方法。
【請求項10】
前記レンズ保持部の3次元的な位置データに基づいて前記眼鏡フレームに装着されるレンズの前傾角及びそり角の少なくともいずれか一方を算出することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の位置データ算出方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−97014(P2013−97014A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−236754(P2011−236754)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000219738)東海光学株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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