説明

位置検出装置

【目的】 相対位置を検出するスケールと基準位置を検出するスケールとを一体に形成し、絶対位置を高精度に計測する。
【構成】 深さM1で形成された弱磁性部をアクチュエータ30の移動方向にピッチPで配設した磁気スケール2と、弱磁性部のうち磁気スケール2の所定の不等間隔で配設された基準点に対応する弱磁性部を深さM2で形成する。磁気スケール2に対応して2相の正弦波を出力する磁気センサ5と、磁気センサ5の出力から相対位置を演算する手段10と、磁気センサ5の出力から基準点を検出する手段20と、現在の基準点と直前の基準点の間隔を算出する手段22と、基準点に対応した絶対位置を格納する手段24と、基準点の間隔に基づいて絶対位置格納手段24の絶対位置信号を制御する手段23と、絶対位置信号制御手段23が読み出す基準点の絶対位置と相対位置から絶対位置を演算する手段21を備える。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、油圧シリンダのロッドなどアクチュエータのストローク位置を高精度で検出する装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】油圧シリンダのピストンロッドなどのストローク位置を検出する装置として、ピストンロッドの表面に軸方向の一定の間隔で弱磁性部を配設した磁気スケールを構成し、シリンダ側に取り付けた磁気センサの検出信号がピストンロッドの変位によって正弦波形で変化することを利用して、変位の増分値から分解能の高い位置検出を行う相対位置検出型のものが知られており、本願出願人も特開平4−136713号公報に高精度の測定が行えるものを提案している。
【0003】これら相対位置検出型の位置検出装置ではストロークの絶対位置を得るためにピストンロッドの最収縮位置などにリミットスイッチを設け、ピストンロッドの先端がこのリミットスイッチを通過した位置をストロークの基準点としてリセットする。このため、油圧シリンダを起動させる毎にリミットスイッチまで変位させる必要があった。
【0004】このリセット動作を短縮する位置検出装置として、実開平4−71114号公報に開示されるように、増分値を検出するためのメインスケールと、基準点を計測するためのサブスケールとをそれぞれ備えて、油圧シリンダの任意のストローク位置から2つの基準点を通過させることにより絶対位置を得るものが知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来の装置では1つのアクチュエータに2つの磁気スケールを配設するために、装置の部品点数が増大してコストを上昇させるとともに、メインスケールとサブスケールの位置関係を保持する必要があるため、ロッドが回転するアクチュエータには適用できないという問題があった。
【0006】そこで本発明は、簡易な構成の磁気スケールにより基準点を容易に検出でき、ロッドが回転するアクチュエータにも使用可能な位置検出装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、図1において、所定の深さM1で形成された弱磁性部をアクチュエータ30の移動方向に所定のピッチで配設した磁気スケール2と、前記弱磁性部のうち磁気スケール2の所定の不等間隔で配設された基準位置に対応する弱磁性部を所定の深さM2で形成した基準点と、前記磁気スケール2のピッチに対応して90度の位相差をもった正弦波を出力する一対の磁気センサ5と、これら磁気センサ5の出力から相対位置を演算する手段10と、前記磁気センサ5の出力から基準点を検出する手段20と、前記基準点と直前に検出した基準点との間隔を算出する手段22と、前記磁気スケール2の基準点に対応した絶対位置を格納する手段24と、前記基準点の間隔に基づいて前記格納手段24の絶対位置信号を制御する手段23と、前記絶対位置信号制御手段23が読み出す基準点の絶対位置と前記算出された相対位置とから絶対位置を演算する手段21とを備える。
【0008】
【作用】したがって、アクチュエータの起動時には、磁気スケールの弱磁性部を通過する際に磁気センサが出力する正弦波の振幅レベルに基づいて基準点を検出し、さらに、磁気センサの出力に基づいて算出された相対位置より直前に検出した基準点と現在の基準点との間隔を演算する。前記基準点の間隔、基準点の間隔の符号に基づくアクチュエータの変位方向をパラメータとして絶対位置を格納する手段のアドレスを演算し、算出されたアドレスの絶対位置を現在の基準点の絶対位置としてセットし、以降この基準点の絶対位置に相対変位量を加算したものを絶対位置として出力する。
【0009】
【実施例】図2〜3に本発明の実施例を示す。
【0010】図2において、1は図示しない油圧シリンダを構成する磁性材料(強磁性部4)で形成されたピストンロッドで、このピストンロッド1の表面には軸方向に所定のピッチPを備えて深さM1、M2の弱磁性部3を形成して磁気スケール2を構成する。
【0011】この弱磁性部3の幅はピッチPの半分であるP/2を備え、磁気スケール2の弱磁性部3と強磁性部4はともにP/2の幅を備えてピッチPで交互に配設される。
【0012】磁気スケール2の弱磁性部3のうち、所定の不等間隔に設定された磁気スケール2の基準点h1〜h7に対応する弱磁性部3は深さM2に形成され、基準点h1、h2、h3、h4、h5、h6、h7の間隔はそれぞれ6P、4P、2P、P、3P、5Pの間隔を備えて同一の間隔が存在しないよう不等間隔に設定される。なお、これら弱磁性部3の深さはM1<M2の関係を満たしている。また、基準点間隔の並び方は、この例に限る必要はなく、同一間隔が存在しなければよい。
【0013】図示しない油圧シリンダの一端にはピストンロッド1の変位に伴って磁気スケール2の1ピッチを1周期とし、互いに90゜の位相差を備えた2相の正弦波を出力する一対の磁気センサ5が備えられる。この磁気センサ5の出力信号は図4に示すように、90度の位相差を備えた出力信号sigA、sigBとして出力される。
【0014】磁気センサ5からの2相の出力信号はsigA、sigBは、図3に示すようにマイクロコンピュータなどで構成されるコントローラ7に入力されて、これに基づいてピストンロッド1のストロークの相対位置が演算される。
【0015】この相対位置の演算は、例えば、特開平4−136713号公報にも開示されるように、磁気センサ5の出力信号sigA、sigBのそれぞれのピーク値に基づいて求めた正規化係数に基づいて1/2P単位の位置(粗位置)と、1/2P間を所定数に分割した位置(精位置)を求め、これらを合算することでストロークの相対位置が求められる。
【0016】磁気センサ5の出力信号sigA、sigBはサンプルホールド回路SHA、SHB、及びアナログ・デジタルコンバータADCを介してコントローラ7の中央演算処理部CPUに入力される。
【0017】コンパレータCA、CBはCPUにおいて演算された磁気センサ5の出力信号sigA、sigBの各ピッチにおける最大値と最小値との中央値である振央レベルを基準値として出力信号sigA、sigBと比較して、振央レベルよりも大きいときにHレベル、小さいときにLレベルの信号を出力する。なお、DACA、DACBはCPUで演算された各振央レベルをアナログ変換するデジタル・アナログコンバータである。
【0018】コンパレータCZは磁気センサ5の出力信号sigAから基準点h1〜h7を判定するもので、デジタル・アナログコンバータDACZから与えられる基準点判定レベルbasZと出力信号sigBとを比較して、出力信号sigBが基準点判定レベルbasZより大きいときにHレベル、小さいときにLレベルの信号を出力する。
【0019】この基準点の判定はコンパレータCAの出力が変化したとき、すなわち出力信号sigAが振央レベルを通過したときに割り込み処理が発生し、後述するソフトウェアにより基準点の判定が行われる。
【0020】メモリRAMには磁気センサ5の出力信号sigA、sigBの各ピッチごとのピーク値が格納されるとともに、各基準点における絶対位置情報が格納される。なお、このメモリRAMはバッテリなどでバックアップされており、装置の電源が遮断されても記憶内容が保持される。
【0021】ここで、図4を参照して基準点の判定方法について説明する。
【0022】ピストンロッド1が変位すると磁気センサ5の出力信号sigA、sigBはそれぞれ90゜の位相差をもつ正弦波として出力される。出力信号sigA、sigBは深さM1の弱磁性部3を通過する際には振幅レベル1を、基準点である深さM2の弱磁性部3を通過する際には振幅レベル2をそれぞれ出力する。したがって、基準点h1〜h7における振幅レベルは2となり、その他の弱磁性部3では振幅レベルは1となる。
【0023】各基準点は出力信号sigAが振央レベルcenAとなる基準点において、出力信号sigBは最小ピーク値である振幅レベル2を発生するが、弱磁性部3の深さM2の誤差などにより変動することがあるため、出力信号sigBが予め設定した基準点判定レベルbasZ以下であることを条件として基準点を判定する一方、基準点以外の弱磁性部3を通過する際の振央レベルcenAを除外する。
【0024】この基準点判定レベルbasZは、出力信号sigBの振央レベルcenBと前記出力信号sigBの振幅レベルから次式のように設定することができる。
【0025】
basZ=cenB−(レベル1+レベル2)/2したがって、出力信号sigAが振央レベルcenAとなったときに出力信号Bが基準点判定レベルbasZ以下であれば基準点であることが容易に判定される。
【0026】次に、コントローラ7における基準点を判定してから絶対位置を設定するまでの処理を図5のフローチャートを参照しながら説明する。なお、図5は装置の電源を再投入してから基準点の絶対位置がセットされるまでの流れを示す。
【0027】まず、S10においてストローク位置をリセットした後に図示しない駆動手段によってピストンロッド1を任意の方向に駆動させ、S11で出力信号sigAが振央レベルcenAかつ出力信号sigBが基準点判定レベルbasZ以下であるかの判定により第1の基準点の判定を行う。
【0028】第1の基準点が検出されると、S12ではそのときのストローク位置、すなわち、弱磁性部3の通過に伴って算出される相対位置をX1に保持する。
【0029】さらにピストンロッド1を駆動させて、S13ではS11と同様にして第2の基準点を判定する。S13で第2の基準点が判定されると、S14ではS12と同様にして、そのときの相対位置をX2に保持し、S15において既に保持された第1及び第2の基準点の相対位置X1、X2から距離Lを演算する。
【0030】S16では算出した距離Lの絶対値と弱磁性部3のピッチPとを比較して、距離LがピッチPより大きければS18の処理へ進む一方、小さければS17の処理を経由して再び第2の基準点の検出を行う。
【0031】距離LがピッチP未満となる場合は、ピストンロッド1の伸縮によって磁気センサ5が第1の基準点を2回通過した状態であり、正確に絶対位置を設定できないため,S17において最新の基準点の相対位置を第1の基準点のデータとしてX1に転送するとともに、S13の処理に戻る。
【0032】一方、S16の判定で距離LがピッチPより大きければ、S18において前記算出した基準点の間隔Lの正負よりストロークの方向を判定して、距離Lが正であればS20へ、負であればS19の処理へそれぞれ進む。
【0033】S19、20ではピストンロッド1の変位方向に応じて所定の変換係数base1〜2がそれぞれ与えられ、現在の基準点(前記第2の基準点)と以前の基準点(前記第1の基準点)の距離Lに所定の変換定数mを乗じたものに変換係数base1〜2を加算したものが、現在の基準点の絶対位置を格納するメモリRAMのアドレスADとして得られる。なお、変換定数mは基準点間の距離LをメモリRAMのアドレスに変換するための定数である。
【0034】ここで、メモリRAMの内容は、図6のメモリマップに示すように、ストロークの方向、変換係数base1〜2、基準点の距離(P〜5P)の順位で基準点h1〜h7の絶対位置が格納されている。
【0035】なお、このメモリマップにおいて同一の基準点の絶対位置が異なるアドレスに重複して格納されるが、各アドレスの重複する基準点の絶対位置は必ずしも等しくなく、これは、ピストンロッド1の変位方向によって基準点の検出位置(出力信号sigAが振央レベルcenAと等しくなる位置)が微妙にずれるためである。したがって、各基準点h1〜h7の絶対位置はピストンロッド1の変位方向ごとにアドレスを変えて正確な絶対位置を格納する。
【0036】S21ではS19〜20で得られたアドレスADに基づいて格納された絶対位置を読み出し、現在の基準点にこの読み出された絶対位置をセットするとともに、以降算出される相対位置を加算することで絶対位置を出力することが可能となり、さらにコントローラ7からは絶対位置セット完了信号が出力され、図示しない油圧シリンダの駆動手段は計測されたピストンロッド1の絶対位置に基づいて駆動を行うことができる。
【0037】したがって、装置の休止中にピストンロッド1が油漏れなどにより変位しても、任意の基準点を2箇所通過すれば自動的に絶対位置を設定することが可能となり、起動時のストローク量を低減して稼働までの時間を短縮することができ、一つの磁気スケール2に弱磁性部3の深さをM1で構成する一方、基準点に対応する弱磁性部3の深さをM2としたため、1組の磁気スケールと磁気センサにより構成することが可能となって、部品点数を増大させることなく絶対値型の高精度な位置検出装置を構成することが可能となり、所定のピッチPで配設した弱磁性部3をピストンロッド1の全周に配設することによってピストンロッド1の回転を許容することができる。
【0038】一方、メモリRAMの所定のアドレスに各基準点h1〜h7の絶対位置を再設定するには、ピストンロッド1を最収縮位置まで変位させ、このときの相対位置をゼロにセットした後に、ピストンロッド1を伸長させて基準点を通過する毎に算出した相対位置をメモリRAMにセットすることにより自動的に絶対位置を設定することができる。
【0039】ピストンロッド1の最収縮位置で相対位置をゼロにセットするため、検出した基準点の相対位置は絶対位置と等価となり、上記処理をピストンロッド1の伸長方向及び収縮方向でそれぞれ行うことにより容易かつ正確に各基準点の絶対位置を設定することができる。
【0040】図7は他の実施例を示し、前記第1の実施例における相対位置の演算を特開平4−136713号公報にも開示される位置検出装置にて構成したものであり、その他の構成は上記第1の実施例と同様である。
【0041】1ピッチ単位(又は1/2ピッチ)単位の粗位置と、1ピッチ(又は1/2ピッチ)を所定数に分割した精位置を合算した値を相対位置として出力するため、ストローク位置の分解能を向上させることができる。
【0042】なお、上記実施例において、弱磁性部3をピストンロッド1の表面の1部に形成した例を開示したが、図示はしないが弱磁性部3を全周に形成することによって、ピストンロッド1の回転を許容することが可能となる。
【0043】また、上記実施例において、任意の2カ所の基準点を検出した時点で、現在のストローク位置をRAMに格納された絶対位置に置き換えたが、この置き換えは複数回行ってもよく、例えば、電源再投入時に現在位置をRAMに格納された絶対位置に置き換えた後、基準点の間隔を常時演算するとともに、各基準点で演算されたストロークの絶対位置とRAMの格納値とを比較して、演算されたストローク量の絶対位置が異なっている場合などにRAMに格納された絶対位置を読み出して置き換えてもよい。
【0044】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、アクチュエータが休止中に変位しても、任意の基準点を2箇所通過すれば自動的に絶対位置を設定することが可能となり、起動時のストローク量を低減して稼働までの時間を短縮することができ、1つの磁気スケールに相対位置を測定する弱磁性部を設ける一方、これら弱磁性部のうち不等間隔で設定した基準点に対応するものを異なる深さで形成したため、1組の磁気スケールと磁気センサにより構成することができ、部品点数の増大を抑制して絶対値型の位置検出装置を構成することが可能となり、所定の間隔で配設した弱磁性部をアクチュエータのロッドなどの全周に配設することによってロッドの回転を許容しながら位置計測を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のクレーム対応図である。
【図2】本発明の実施例を示す磁気スケールの概略図である。
【図3】コントローラのブロック図である。
【図4】各ピッチにおける磁気センサの出力信号の変化を示す図である。
【図5】制御の一例を示すフローチャートである。
【図6】メモリの内容を示す図である。
【図7】他の実施例を示す磁気スケールの説明図である。
【符号の説明】
1 ピストンロッド
2 磁気スケール
3 弱磁性部
4 強磁性部
5 磁気センサ
7 コントローラ
10 相対位置演算手段
20 基準点検出手段
21 位置信号演算手段
22 基準点間隔演算手段
23 絶対位置信号制御手段
24 絶対位置格納手段
30 アクチュエータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所定の深さで形成された弱磁性部をアクチュエータの移動方向に所定のピッチで配設した磁気スケールと、前記弱磁性部のうち磁気スケールの所定の不等間隔で配設された基準位置に対応する弱磁性部を所定の深さで形成した基準点と、前記磁気スケールのピッチに対応して90度の位相差をもった正弦波を出力する一対の磁気センサと、これら磁気センサの出力から相対位置を演算する手段と、前記磁気センサの出力から基準点を検出する手段と、前記基準点と直前に検出した基準点との間隔を算出する手段と、前記磁気スケールの基準点に対応した絶対位置を格納する手段と、前記基準点の間隔に基づいて前記格納手段の絶対位置信号を制御する手段と、前記絶対位置信号制御手段が読み出す基準点の絶対位置と前記算出された相対位置とから絶対位置を演算する手段とを備えたことを特徴とする位置検出装置。

【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図1】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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