説明

位置確認装置

【課題】消火活動のため消防士などの作業員が炎上中の屋内に入った場合、各作業員の位置を常に監視する必要がある。このような位置確認装置は従来より提案されているが、例えば基地ユニットとして無線LAN基地局や専用の基地局を用いるものでは、火災により発生する熱により基地ユニットが破損して火災発生時には使用できない。
【解決手段】作業員の位置確認が必要な広い建物ではスプリンクラーが設置されており、かつ、火災発生時にはスプリンクラーが作動してスプリンクラーヘッドから水が放出される。本発明はその水流によって基地ユニットを冷却することとした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に屋内に居る消防士などの作業員の位置を検知する位置確認装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より屋内における人の位置を検知する位置確認装置が提案されている。例えば、ショッピングセンターなどで迷子の発生を防止するため、ショッピングセンターに入場する際に子供にID番号が格納された無線送信機を持たせ、親はショッピングセンター内の各所に設置された案内端末から子供の位置を知るようにしたものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
なお、このものでは無線送信機のIDを受信するための受信機がショッピングセンター内の各所に配置されている。この受信機は位置確認のために専用に配置されるが、この受信機として既設の無線LANの基地局を利用するものが提案されている(例えば、特許文献2参照)。このものでは既に配置されている無線LANの基地局を利用するため、新たに専用の受信機を配置する必要がなく、そのため導入コストを低く抑えることができる。なお、この無線LANの基地局を用いるものでは、消防活動の現場における消防士の位置確認手段として位置確認装置を用いることが示唆されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−235957号公報(請求項1,図1)
【特許文献2】特開2007−124406号公報(段落0002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献2に示唆されているように、火災時に消火活動を行う消防士等の作業員は、非常に危険な環境で作業をする必要があり、常に無線通話装置等により各作業員の安全を確認する必要がある。また、消火活動のある時点で全員屋外へ避難する必要が生じる場合がある。その避難の際に全員避難が完了したか否かを確認することは非常に重要であり、無線通話装置により各自避難したかを確認している。ところが、無線通話装置により確認する方法では一人一人順番に確認せざるを得ないため、全員の確認に時間を要する。そのため、上記特許文献2に記載されているように、無線通話装置によらずに各作業員の位置を検知する方法であれば、短時間で各作業員の位置を全て確認することができる。
【0006】
ところが、火災が発生すれば屋内は火炎により高温になり、上記受信機や無線LANの基地局は火災発生の初期の段階で熱により破損する可能性が高く、実際に作業員の位置を確認する必要がある状態、すなわち火災が進行した状態では作業員の位置を確認することがでいないという致命的な不具合を備えている。
【0007】
そこで本発明は、上記の問題点に鑑み、火災発生から長時間にわたって作業員の位置を検知し続けることのできる位置確認装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために本発明による位置確認装置は、複数箇所にスプリンクラーヘッドが配置された屋内に、あらかじめ固有のIDが設定された子機を携帯した作業員が入室した際に、屋内に固定配置された複数の基地ユニットが無線で最寄りの子機のIDを識別し、そのIDを別所に設置された本機に無線で送信することにより、本機において作業員の位置を確認する位置確認装置において、上記基地ユニットを、上記複数のスプリンクラーユニットのうちの特定のものの近傍に設置し、スプリンクラーヘッドが作動してスプリンクラーヘッドから水が屋内に放出されている状態で、スプリンクラーヘッドを通過する水流によって固定ユニットを冷却することを特徴とする。
【0009】
火災が発生して屋内の温度が高くなるとスプリンクラーが作動してスプリンクラーヘッドから屋内に水が放出される。そして、その水の放出は少なくとも鎮火するまで継続される。この放水される水流によって固定ユニットを冷却することにより、スプリンクラーヘッドから水が放出されている間は継続して固定ユニットが冷却され続けられ、固定ユニットが熱によって破損する恐れがない。
【0010】
なお、固定ユニットを駆動するための電源を外部からコードなどの有線で供給すると、固定ユニット自体は冷却され熱から守られても、コードなどが熱で断線する恐れがある。そのため、固定ユニットの駆動電源は乾電池で行なうことも考えられるが、乾電池を駆動電源とすると定期的に乾電池を交換する必要が生じる。
【0011】
そこで、上記基地ユニットは上記水流によって発電する発電部を備えており、この発電部が発電する電力によって上記無線による送受信を行うようにすることが望ましい。
【0012】
なお、発電部が作動することを定期的に検査する必要があるので、上記発電部は水流によって回転するロータを有し、このロータが回転することによって発電するものであり、外部からの通電によりこのロータを強制的に回転させて発電部で発電させて基地ユニットの作動状態を検査し得るようにすることが望まれる。
【0013】
なお、このようにロータの回転により発電するもののほか、上記基地ユニットは水を電解液とする水電池を備えており、この水電池は上記スプリンクラーヘッドから放出された水を取り込んで発電を開始し、その発電された電力によって上記無線による送受信を行うように構成してもよい。
【発明の効果】
【0014】
以上の説明から明らかなように、本発明は、作業者が携帯する子機のIDを読み取る固定ユニットを火災発生から鎮火までの間にわたって冷却し続けることができるので、消防士などの作業者の位置を検知し続けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施の形態の構成を示す図
【図2】固定ユニットをスプリンクラーヘッドの上流側に設置した状態を示す図
【図3】既存のスプリンクラーヘッドに設置することできる固定ユニットを示す図
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1を参照して、BLは本発明が適用される建物であり、この建物BL内は複数の部屋Rや廊下Hに区画されている。そして、それら区画された部屋Rや廊下Hには少なくとも1個のスプリンクラーヘッドSH(SH1を含む)が設置されており、各スプリンクラーヘッドSH,SH1には給水管WPによって消火用の水が供給されるように構成されている。そして、建物BL内で火災が発生すると、火災発生により室温が上昇し、所定の温度以上になると少なくとも室温が上昇した場所に設置されているスプリンクラーヘッドSH,SH1から自動的に水が放出される。
【0017】
Pは消防士等の作業員であり、火災が発生している建物BL内に進入する際は図示しない子機を携帯する。この子機には各々固有のIDが登録されており、複数のスプリンクラーヘッドのうちの所定のスプリンクラーヘッドSH1の近傍に設置された基地ユニットが、その基地ユニット近傍の子機のIDを無線で読み取るように構成されている。このIDを読み取った基地ユニットは本機であるパソコンからなる解析装置1にIDを送信することにより、解析装置1はどの基地ユニットの近傍にどのIDを携帯した作業員が居るかを検知することができる。
【0018】
図2を参照して、2は基地ユニットの一例である。本図に示す基地ユニット2はスプリンクラーヘッドSH1の上流に位置し、スプリンクラーヘッドSH1と給水管WPとの間に介設される。この基地ユニット2は筐体21を備えており、この筐体21の上部には給水管WPから水が流れ込む入水部22とスプリンクラーヘッドSH1が接続される出水部23とが設けられている。
【0019】
筐体21の内部には筐体21との間に隙間が形成されるようにユニット本体24が保持されている。このユニット本体24は左右1対の保持翼27で筐体21に連結され保持されているので、スプリンクラーヘッドSH1が作動してスプリンクラーヘッドSH1から水が放出されると、入水部22から出水部23へと流れる水の一部が筐体21とユニット本体24との間の隙間を流れ、ユニット本体24を流水が覆うことにより、外部からの熱がユニット本体24を加熱することを防止する。
【0020】
また、筐体21内には磁化されたロータ25が内蔵されており、入水部22から出水部23へと水が流れると、その水流によってロータ25が回転する。ロータ25の周囲には発電コイル26が設けられており、ロータ25が回転することにより発電コイル26が発電し、その電力はユニット本体24へと供給される。すなわち、このような構成により、スプリンクラーヘッドSH1が作動すると、ユニット本体24が冷却されると共にユニット本体24へ作動用の電力が供給されるとになる。
【0021】
ところで、火災は頻繁に発生するものではなく、基地ユニット2が作動するまでには数年単位の長時間が経過することがある。そのため、定期的に基地ユニット2の作動をテストする必要が生じる。出水部23から別途排水する管路を設けてロータ25を回転させるようにしてもよいが、基地ユニット2毎にそのような配管をすることは煩わしい。
【0022】
そこで、モータ28を設けて、このモータ28でロータ25を強制的に回転できるようにした。モータ28はコード29を介して外部からの電力供給を受けて回転するものであり、電力供給だけでロータ25を強制的に回転させることができるので、別所に設けた制御盤等により各基地ユニット2のロータ25を集中的に遠隔操作して一斉に回転させることが可能性ある。そのため、基地ユニット2の作動テストの他、火災が発生した際にはスプリンクラーヘッドSH1が作動する前であっても全ての基地ユニット2を作動させることができる。なお、火災が激しくなり、コード29が消失しても、上述のように水流によってロータ25が回転するので、基地ユニット2は作動を継続することができる。
【0023】
上記図2に示した構成では、既にスプリンクラーヘッドが設置されている建物に適用する場合には大幅な工事が必要となる。そこで、図3に示すように、既に設置されているスプリンクラーヘッドSH1につり下げて配置することのできる基地ユニット3を用いてもよい。この基地ユニット3には上部にハンガー30が設けられており、このハンガー30でスプリンクラーヘッドSH1につり下げることにより配置する。
【0024】
基地ユニット3の筐体31の内部は電池室32とユニット室33とに区画されており、電池室32に水電池34を収納した。この水電池34は電解液として水を用いるものであり、収納段階では電解液である水を含んでいない。そのため水電池34は発電しない状態にある。スプリンクラーヘッドSH1が作動して水が放出されると、その水の一部は取水口35から電池室34内に流れ込み、その水を電解液として水電池34は発電を開始する。そして、その発電された電力はユニット本体36に供給され、ユニット本体36は作動を開始する。
【0025】
筐体31の外周面にはテスト用の電極37が設けられており、この電極37を介して外部から供給された電力はユニット本体36に供給されるように構成した。このように構成したので、水電池34を発電させなくてもユニット本体36の作動をチェックできる。
【0026】
なお、筐体31の下面はカバー38で覆われているので、火災発生時に基地ユニット3が下から炎にあぶられても、スプリンクラーヘッドSH1が作動開始するまで、このカバー38によって筐体31が加熱されることを防止すると共に、スプリンクラーヘッドSH1が作動した後は放出された水をカバー38が溜めて筐体31が加熱されることを確実に防止するようにした。なお、スプリンクラーヘッドSH1から水が放出されると、筐体31に上方から水が降り注ぐので、その水によっても筐体31が冷却され続ける。
【0027】
なお、本発明は上記した形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々の変更を加えてもかまわない。
【符号の説明】
【0028】
1 解析装置
2 基地ユニット
3 基地ユニット
21 筐体
24 ユニット本体
25 ロータ
26 発電コイル
28 モータ
31 筐体
32 電池室
33 ユニット室
34 水電池
36 ユニット本体
38 カバー
BL 建物
H 廊下
SH,SH1 スプリンクラーヘッド
WP 給水管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数箇所にスプリンクラーヘッドが配置された屋内に、あらかじめ固有のIDが設定された子機を携帯した作業員が入室した際に、屋内に固定配置された複数の基地ユニットが無線で最寄りの子機のIDを識別し、そのIDを別所に設置された本機に無線で送信することにより、本機において作業員の位置を確認する位置確認装置において、上記基地ユニットを、上記複数のスプリンクラーユニットのうちの特定のものの近傍に設置し、スプリンクラーヘッドが作動してスプリンクラーヘッドから水が屋内に放出されている状態で、スプリンクラーヘッドを通過する水流によって固定ユニットを冷却することを特徴とする位置確認装置。
【請求項2】
上記基地ユニットは上記水流によって発電する発電部を備えており、この発電部が発電する電力によって上記無線による送受信を行うことを特徴とする請求項1に記載の位置確認装置。
【請求項3】
上記発電部は水流によって回転するロータを有し、このロータが回転することによって発電するものであり、外部からの通電によりこのロータを強制的に回転させて発電部で発電させて基地ユニットの作動状態を検査し得るようにしたことを特徴とする請求項2に記載の位置確認装置
【請求項4】
上記基地ユニットは水を電解液とする水電池を備えており、この水電池は上記スプリンクラーヘッドから放出された水を取り込んで発電を開始し、その発電された電力によって上記無線による送受信を行うことを特徴とする請求項1に記載の位置確認装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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