説明

住宅用エネルギー消費量予測装置

【課題】住宅におけるエネルギー消費量を精度よく予測する住宅用エネルギー消費量予測装置の提供。
【解決手段】住宅および居住者に関する条件の入力を受け付ける入力部と、住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データを保持する基準データDBと、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データを保持する補正用データDBと、基準データを、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する消費量予測部と、予測値を出力する出力部と、を有する住宅用エネルギー消費量予測装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、住宅において居住者が生活活動を行うときに消費されるエネルギー量を予測する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅購入予定者に対し、購入後の生活活動で生じる光熱費等を試算して提示するサービスが行われている。このようなサービスでは、所定の条件を入力することによりエネルギー消費量を予測するコンピュータ・システムが用いられることが多い。
【0003】
特許文献1(特開2004−110429号公報)は、諸条件に応じた住宅の光熱費を予測するための住宅販売関連事業支援システムを開示する。特許文献1のシステムは、住宅関連データ格納手段と、契約種別データ格納手段と、光熱費予測演算手段と、を備える。ここで光熱費予測演算手段は、ユーザにより入力された諸条件に合致する住宅関連データを住宅関連データ格納手段より読み出し、読み出した住宅関連データに適用可能な契約種別データを契約種別データ格納手段から抽出し、読み出した住宅関連データおよび抽出した契約種別データから光熱費を予測する。
【0004】
同システムにおいては、エネルギー負荷を求めるために、各地の環境データ(平均気温や日照時間等の気象データ)と、入力が想定される諸条件の様々な組みあわせ(立地、仕様、設備等の住宅に関する条件、および、家族構成、生活仕様(生活スタイル)等の居住者に関する条件の様々な組み合わせ)のそれぞれと対応付けされるエネルギー収支データと、がデータベースに保持される。
【0005】
同システムでは、予め多くのデータを収集して複数の検索キー項目の値と関連付けてデータベースを構築し、各検索キー項目について入力された複数の入力値に基づいてデータベースに対して複合検索を行うことで所望のデータを抽出し、予測結果を導出している。
【0006】
なお、特許文献1には、住宅に関する条件から導出される電力負荷等を、居住者に関する条件に応じて補正することが記述されるが、その具体的方法については明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2004−110429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
一般に、データベースに対する複合検索を伴うシステムにおいては、ユーザが入力できる検索キー項目を追加したり、各項目について入力可能な値を増やしたりする場合、データベースへ新たなデータを追加したり、検索キーとの関連付けを修正したりといった作業が必要になる。
【0009】
してみれば、そのようなシステムでは、様々な入力条件に対応して精度よく予測を行うためには、大規模なデータベースを構築して維持する必要があるうえ、その拡張や変更も、容易とは言い難い。
【0010】
また、特許文献1に記載のシステムは、住宅内での空調・給湯設備のエネルギー消費量の総量をデータベース化しておき、入力条件に合致するエネルギー消費量の総量を抽出する、という構成のため、空調・給湯設備以外の家電機器等のエネルギー消費量について、機器ごとに個別的に予測することはできない。
【0011】
本実施形態は、上記従来技術における問題点を鑑み、構築、仕様変更等が容易であり、かつ住宅におけるエネルギー消費量を精度よく予測することができる住宅用エネルギー消費量予測装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
第1の態様は、住宅および居住者に関する条件の入力を受け付ける入力部と、住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データを保持する基準データDBと、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データを保持する補正用データDBと、基準データを、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する消費量予測部と、予測値を出力する出力部と、を有する住宅用エネルギー消費量予測装置である。
【0013】
第2の態様は、コンピュータを用いて住宅のエネルギー消費量を予測する方法であって、入力部において住宅および居住者に関する条件の入力を受け付ける入力ステップと、制御部が、住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データをデータ記憶部から読み出す基準データ読出ステップと、制御部が、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データをデータ記憶部から読み出す補正用データ読出ステップと、制御部が、基準データを、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する予測ステップと、予測値を出力部へ出力する出力ステップと、を有する方法である。
【0014】
第3の態様は、コンピュータに、入力部において入力された住宅および居住者に関する条件の情報を取得する取得ステップと、制御部が、住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データをデータ記憶部から読み出す基準データ読出ステップと、制御部が、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データをデータ記憶部から読み出す補正用データ読出ステップと、制御部が、基準データを、住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する予測ステップと、予測値を出力部へ出力する出力ステップと、を実行させる住宅用エネルギー消費量予測プログラムである。
【発明の効果】
【0015】
本住宅用エネルギー消費量予測装置は、エネルギー消費にかかる基準データおよび条件に応じて基準データを補正するための補正用データを機器単位で備え、機器ごとのエネルギー消費量を予測することにより住宅のエネルギー消費量を予測するため、精度よく住宅におけるエネルギー消費量を予測することができるとともに、その構築、仕様変更等が容易である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施形態による住宅用エネルギー消費量予測装置のブロック図
【図2】実施形態によるエネルギー消費量予測にかかる処理のフローチャート
【図3】住宅用エネルギー消費量予測装置の諸条件入力画面の例図
【図4】住宅用エネルギー消費量予測装置のシミュレーション結果表示画面の例図
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、実施形態について、詳細に説明する。
【0018】
1.概要
本実施形態では、ユーザ入力可能な諸条件により規定される住宅において、入力された諸条件により規定される家族構成・人数の居住者が生活活動を行う場合に消費されるエネルギー量を予測する住宅用エネルギー消費量予測装置(以下、「予測装置」と略称する。)を説明する。
【0019】
本予測装置は、発明者による実験住宅における居住試験(後述)から実験的に求めた、空調機器、給湯機器、照明機器、その他の様々な家電機器、ガス機器、発電用機器等(以下、「機器」と総称する。)ごとの基準使用スケジュール(使用される時間帯や、時間等)および基準エネルギー消費量(生産量)(消費電力、消費電力量、エネルギー消費効率、発電量、ガス使用量等を含む。)のデータ(以下、場合により「基準データ」と総称する。)と、ユーザ入力可能な諸条件に応じ基準データを補正するための補正用データ(「補正係数」および「補正アルゴリズム」)を保持し、基準データおよび補正用データを用いて各機器のエネルギー消費量、生産量、光熱費、CO2収支等を予測し、各機器にかかる予測結果を総和することにより、住宅におけるエネルギー消費量等を予測する。
【0020】
本予測装置は、ユーザにより入力された諸条件の情報を取得すると、当該諸条件にもとづいて、各機器の補正用データ(補正係数および補正アルゴリズム)を決定し、これら補正係数および補正アルゴリズムを用いて各機器の基準データ(基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量(生産量))を補正することにより各機器の当該諸条件下での使用スケジュールおよびエネルギー消費量(生産量)(「補正使用スケジュール」および「補正エネルギー消費量(生産量)」)を求め、これら補正使用スケジュールおよび補正エネルギー消費量(生産量)から当該諸条件下での各機器のエネルギー消費量予測値を導出し、それらの総和を求めることにより、住宅全館のエネルギー消費量予測値を導出する。
【0021】
なお、本予測装置は、居住者が住宅において生活活動を行う際に、住宅に設置された発電設備等が生産するエネルギー量を予測することも可能である。また、本予測装置は、導出したエネルギー消費量/生産量の予測値に基づいて、光熱費、CO2収支等を予測することも可能である。
【0022】
2.住宅用エネルギー消費量予測装置の構成
図1は、本実施形態による住宅用エネルギー消費量予測装置100の構成を示すブロック図である。予測装置100は、ユーザによる諸条件の入力を受け付ける入力装置(入力部)1と、入力された諸条件の情報にもとづいて住宅全館のエネルギー消費量および生産量の予測値を導出して出力するとともに、当該予測値に基づいて、光熱費およびCO2収支の予測値を出力する情報処理装置2と、情報処理装置2が出力した各種予測値を表示する表示装置(表示部)3と、を有する。
【0023】
入力装置(入力部)1は、例えば、キーボード、タッチパネル、マウス等の入力装置でよい。ユーザが入力装置1を用いて入力する諸条件の詳細については後述する。
【0024】
表示装置(表示部)3は、例えば、ディスプレイ装置、タッチパネル、プリンタ等の出力装置(出力部)でよい。表示装置3に表示される予測値(シミュレーション結果)の詳細については後述する。
【0025】
情報処理装置2は、専用の装置、または、汎用のパーソナル・コンピュータ(PC)等でよい。情報処理装置2は、制御部4と、データ記憶部5とを含んで構成される。
【0026】
制御部4は、例えば、中央処理装置(CPU)である。制御部4は、コンピュータ・プログラムを実行することにより、ユーザ入力にかかる諸条件に基づいてエネルギー消費量の予測値を導出する消費量予測部6、ユーザ入力にかかる諸条件に基づいてエネルギー生産量の予測値を導出する生産量予測部7、および、エネルギー消費量および生産量の予測値に基づいて光熱費、CO2収支の予測値を算出する換算部8として機能する。なお、コンピュータ・プログラムは、データ記憶部5に保持されればよい。または、コンピュータ・プログラムは、図示しないネットワーク・インタフェースを介して外部より配信されてもよい。あるいは、コンピュータ・プログラムは、磁気ディスク、光ディスク、不揮発性半導体メモリ等に格納され流通され、図示しないデータ読取装置から制御部4へロードされてもよい。
【0027】
データ記憶部5は、半導体メモリ、ハードディスク・ドライブ等から構成できる。データ記憶部5は、空調機器、給湯設備、照明機器、様々な家電製品、ガス設備、発電設備等(「機器」)ごとの基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量/生産量のデータ(「基準データ」)を保持する基準データDB(データベース)9と、諸条件に基づいて各機器の基準データを補正するための補正係数および補正アルゴリズム(「補正用データ」)を保持する補正用データDB(データベース)10と、日本各地の、様々な電力料金プランにおける買電料金および売電料金、ならびに、ガス料金、水道料金等を保持する光熱費換算用データDB(データベース)11と、エネルギー消費量/生産量、水道利用量等をCO2収支に換算するためのCO2収支換算用データ(例えば、日本各地におけるCO2排出係数)を保持するCO2収支換算用データDB(データベース)12と、含んでいる。
【0028】
基準データDB9は、基準データとして、実験住宅における居住試験において実験的に求めた各機器の使用スケジュール(基準使用スケジュール)や、同じく実験的に求めた各機器の単位時間あたりのエネルギー消費量/生産量(基準エネルギー消費量)を含む。より具体的には、基準使用スケジュールは、社団法人空気調和・衛生工学会により作成された標準スケジュール(以下では、「標準スケジュール」と略記する。)を上記居住試験より得た知見に基づいて修正したデータを含んでいる。
【0029】
また、基準エネルギー消費量/生産量は、地域ごとや、季節や時間帯ごとに変動してもよいし、一定値であってもよい。上述のように基準エネルギー消費量/生産量は、空調機器や給湯機器について実験的に求めたエネルギー消費効率(COP)や、消費電力、消費電力量、消費ガス使用量、発電量等を含んでもよい。さらに、基準データは、住宅用熱負荷シミュレーションソフトによる熱負荷計算の結果を含んでよい。熱負荷計算結果には、所定の延床面積、LDK面積等を有した様々な住宅仕様(断熱性能)のモデル住宅について、日本各地での、全館の、および、室単位の熱負荷計算の結果を含んでよい。ここでのシミュレーションソフトには、住宅用熱負荷計算プログラム(SMASH、Simplified Analysis System for Housing Air Conditioning Energy、財団法人建築環境・省エネルギー機構)が含まれる。
【0030】
補正用データDB10は、補正用データとして、ユーザ入力にかかる諸条件に基づいて各機器の基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量を補正して各機器の補正使用スケジュールや補正エネルギー消費量を決定するための、補正係数や計算式(補正アルゴリズム)を含む。また、補正用データDB10は、補正用データとして、所定の断熱仕様の住宅について、その延べ床面積、LDK面積、階段タイプ(後述)等に応じて当該住宅全館の総熱負荷を導出するための補正係数および補正計算式を保持する。各機器の基準データ、ならびに、その補正に用いる補正係数および補正アルゴリズムについては、後で幾つかの機器について具体的な説明を加える。
【0031】
消費量予測部6、および、生産量予測部7は、各機器について、基準データおよび補正用データに基づいて、エネルギー消費量、または、生産量の予測値を導出する。なお、機器の種類により、基準データおよび補正用データの構成は、異なる。各機器の基準データおよび補正用データの構成は、発明者が行った実験住宅における居住試験の結果にもとづいて、最適化されている。
【0032】
光熱費換算用データDB11は、住宅の建築地や住宅設備等の条件と関連付けて、各地の電力会社(関西電力、四国電力等)と各社の契約種別の料金プランのデータを保持する。また、光熱費換算用データDB11は、電力に関する料金データと同様にして、ガス料金や水道料金のデータを保持する。
【0033】
CO2収支換算用データDB12も、光熱費換算用データDB11と同様、住宅の建築地と関連付けて、各地の電力会社(関西電力、四国電力等)やガス会社のCO2排出係数のデータを保持する。
【0034】
3.住宅用エネルギー消費量予測装置の動作
図2は、本予測装置100が実行する処理のフローチャートを示す図である。以下、図2〜図4を参照して、本予測装置100におけるエネルギー消費量および生産量予測ならびに光熱費およびCO2予測動作について説明する。
【0035】
予測装置100(制御部4)は、ユーザが入力装置1を用いて入力した諸条件の情報を取得する(S1)。
【0036】
ここで、ユーザ入力可能な諸条件について説明する。図3は、ステップS1において表示装置3に入力される入力画面の例である。本例図を参照して、ユーザが入力する諸条件について説明する。
【0037】
ユーザは、住宅の地域条件22として、建築地31および詳細地域32等を入力することができる。入力は、選択肢をプルダウンメニューとして表示装置3に表示させて、ユーザに選択肢を入力装置1で選択させることで行われてもよい。建築地31は、例えば、住宅が建築される都道府県でよい。詳細地域32は、各都道府県をより細分化した地域であればよい。例えば、建築地31が大阪府であれば、詳細地域32は、熊取、堺、生駒山、豊中、枚方、能勢、大阪(市域)、等となる。他の都道府県についても同様である。
【0038】
ユーザは、住宅仕様条件23として、試算対象商品33、断熱仕様(断熱地域)34、延床面積35、LDK面積36、階段タイプ37、建物方位38、屋根形状39、屋根勾配40等を入力することができる。ここでも、入力は、ユーザにプルダウンメニュー中の選択肢を選択させることで行われてよい。試算対象商品33とは、住宅のタイプである。住宅のタイプとは、例えば、工業化住宅の商品名でよい。断熱仕様(断熱地域)34は、住宅を建築する地域の断熱地域区分であり、例えば、次世代省エネI地域、同II地域、同III地域、同IV・V地域といった区分である。延床面積35は、住宅の延床面積である。LDK面積36は、住宅のLDKの床面積である。階段タイプ37の欄は、階段がLDK内に設置されるか否か(リビング階段か、リビング階段以外か)を選択するための入力欄である。建物方位38は、住宅の主たる開口部が向く方位である。屋根形状39は、住宅の屋根のタイプである。屋根のタイプは、例えば、寄棟、切妻、片流れフラット、フラット、寄切複合、といったタイプを含んでよい。屋根勾配40は、住宅の屋根の勾配である。住宅の屋根の勾配は、例えば、5度、14度、22度、27度、31度、といった勾配を含んでよい。
【0039】
ユーザは、設備仕様条件24として、エアコンタイプ41、エコキュートタイプ42、テレビタイプ43、LDK、居室(寝室、子供部屋等)、非居室(洗面、トイレ等)の照明器具タイプ44、(HEMS機器としての)エネルギーモニタの有無45、ソーラパネルタイプ46、ソーラパネルの搭載枚数47、キッチン、シャワー、洗面、トイレの水栓のタイプ48等を入力することができる。ここでも、入力は、ユーザにプルダウンメニュー中の選択肢を選択させることで行われてよい。エアコンタイプ41は、住宅に設置するエアコンの選択に用いられる入力欄である。本欄では、エアコンのタイプとして、普及タイプ(APF5.9程度)、高効率タイプ(APF6.6程度)といった、エアコンの通年エネルギー消費効率(APF)の入力が可能である。エコキュートタイプ42は、住宅に設置するエコキュート設備の選択に用いられる入力欄である。本欄では、エコキュート設備のタイプとして、普及タイプ(APF3.4)、高効率タイプ(APF3.6)といった、エコキュート設備の通年エネルギー消費効率(APF)の入力が可能である。テレビタイプ43は、テレビの種別およびサイズの入力欄である。本欄では、テレビのタイプとして、プラズマ(50型以上)、プラズマ(50型未満)、液晶(40型以上)、液晶(30〜40型)、液晶(30型未満)といった入力が可能である。LDK、居室(寝室、子供部屋等)、非居室(洗面、トイレ等)の照明器具タイプ44は、それぞれ、LDK、居室、非居室の照明器具のタイプの選択のための入力欄である。照明器具のタイプとしては、例えば、蛍光灯、LEDといった選択が可能である。エネルギーモニタの有無45の入力欄は、(HEMS機器としての)エネルギーモニタを住宅に設置するか否かを選択する欄である。また、本欄では、エネルギーモニタの種類が選択可能であってもよい。ソーラパネルタイプ46は、住宅に設置するソーラパネルのタイプの選択のための欄である。ソーラパネルのタイプとしては、ソーラパネルのメーカおよび製品名等の入力が可能であればよい。ソーラパネルの搭載枚数47は、屋根の各方位に設置するソーラパネルの枚数の入力欄である。キッチン、シャワー、洗面、トイレの水栓のタイプ48は、水栓のタイプ(シングルレバー、タッチレス水栓)等、節水性能の異なるタイプの水栓を選択するための欄である。
【0040】
ユーザは、家族構成条件25として、大人人数49、大人(親世帯)人数50、子供人数51を入力することができる。
【0041】
以上が、ユーザ入力可能な諸条件の詳細である。なお、図3の入力画面は一例であり、図3に表されていない条件項目(調理機器のタイプ等)についても、適宜入力可能としてよい。
【0042】
なお、本実施形態の予測装置100では、居住者の生活仕様条件(生活スタイルの設定)をユーザに入力させない。その理由は、個人情報保護の観点から、ユーザ(住宅購入予定者)が、生活仕様条件の入力を快く思わないことがあるためである。また、生活スタイルは、ユーザ(住宅購入予定者)が、住宅購入後に、必要に応じて任意的に選択し適宜変化させるべき事柄であるため、シミュレーション環境を規定する条件パラメータの1つとして、ユーザの生活スタイルを含めることで、かえってシミュレーション誤差を拡大させる要因の1つともなり得るためである。本実施形態では、上述のようにして標準スケジュールから求めた基準使用スケジュールを用いることで、ユーザによる生活仕様条件の入力の必要性を排除している。
【0043】
また、ユーザは、これら諸条件の全てについて、入力する必要はない。ユーザが入力しなかった条件については、予測装置100は、適当なデフォルト値を設定してよい。
【0044】
図2に戻り、制御部4は、その消費量予測部6および生産量予測部7において、ステップS1で取得したユーザ入力にかかる諸条件の情報にもとづき、基準データDB9の各機器の基準データを補正するための補正係数および補正アルゴリズムを機器ごとに補正用データDB10から決定する(S2)。
【0045】
次に、制御部4の消費量予測部6は、ステップS2で決定した各機器の補正係数および補正アルゴリズムを用いて、各機器の基準データ(基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量)を補正して各機器の補正された使用スケジュールおよび補正されたエネルギー消費量を求め、当該補正使用スケジュールおよび補正エネルギー消費量からユーザ入力にかかる諸条件下での各機器のエネルギー消費量予測値を求め、換算部8へ出力する(S3)。
【0046】
同様に、制御部4の生産量予測部7は、ステップS2で決定した各発電機器の補正係数および補正アルゴリズムを用いて、各発電機器の基準データ(基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量)を補正して各発電機器の補正された使用スケジュールおよび補正されたエネルギー消費量を求め、当該補正使用スケジュールおよび補正エネルギー消費量からユーザ入力にかかる諸条件下での各発電機器のエネルギー生産量予測値を求め、換算部8へ出力する(S4)。
【0047】
各機器についてのエネルギー消費量(生産量)予測値を受けた換算部8は、光熱費換算用データDB11が保持するデータを参照してユーザ入力にかかる諸条件下における買電料金、売電料金、ガス料金、水道料金等、を求め、エネルギー消費量(生産量)予測値に基づいて光熱費予測値を算出する(S5)。例えば、換算部8は、住宅の建築地域の電力会社の料金プランのデータ(該当する契約種別の基本料金、従量料金(昼間、夜間、朝晩料金等)、燃料調整費、オール電化割引率、売電料金等)を参照し、電気料金予測値を算出し、また、住宅の建築地域のガス会社の料金プランのデータ(該当する契約種別の基本料金、従量料金(春夏秋期、冬期料金等)、ガスコンロ割引率等)を参照し、ガス料金予測値を算出する。
【0048】
同様にして、換算部8は、CO2収支換算用データDB12が保持するデータを参照してユーザ入力にかかる諸条件下におけるCO2排出係数を求め、エネルギー消費量(生産量)予測値に基づいてCO2収支予測値を算出する(S6)。例えば、換算部8は、住宅の建築地域の電力会社やガス会社等のCO2排出係数やCO2削減係数を参照し、CO2収支予測値を算出する。
【0049】
制御部4は、エネルギー消費量予測値、エネルギー生産量予測値、光熱費予測値、および、CO2収支予測値等を、表示装置3に表示させる(S7)。
【0050】
図4は、ステップS7において表示装置3に表示される予測値(シミュレーション結果)の表示例である。同図に見られるように、予測装置100は、諸条件下におけるエネルギー消費量62および生産量63、光熱費64、CO2収支(排出量)65の予測値を表示するとともに、住宅の断熱性能による消費エネルギー従来比削減量66や、機器毎の消費エネルギー従来比削減量67の予測値を表示することができる。加えて、発電機器(ソーラパネルやエネファーム機器)による発電量68の予測値を表示したり、節水器具利用による省エネ従来比効果69の予測値を表示したりすることもできる。
【0051】
このようにして、予測装置100は、ユーザ入力可能な諸条件にもとづき、基準データ、および、補正用データより、各機器のエネルギー消費量、生産量、光熱費、CO2収支の各予測値を導出し、ユーザに提示することができる。
【0052】
4.基準および補正用データならびに消費量予測について
以上、本実施形態による予測装置100の構成および動作について説明した。以下では、基準データDB9で管理される基準データおよび補正用データDB10で管理される補正用データ、ならびに、機器毎の消費量予測動作の具体例について例示的に説明する。
【0053】
基準データは、上述のようにして標準スケジュールから求めた各機器の基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量(生産量)を含んでおり、また以下に例示するものに限定されない。同様に、補正用データは、実験住宅における居住試験により実験的に導出された補正係数および補正アルゴリズムを含んでおり、また以下に例示するものに限定されない。
【0054】
発明者らは、所定の仕様の実験住宅を日本国内に建設し、様々な家族構成を有する居住者に実際に生活してもらい(居住試験)、実際の生活活動における、各電化機器の消費電力量(具体的には、配電網の末端回路ごとの消費電力量)や、ガス使用機器におけるガス消費量、発電設備における発電量、水道使用量等を測定した。当該測定においては、必要に応じ、測定時刻、測定時の気温、水道水の水温等を合わせて記録した。
【0055】
なお、実験住宅の断熱仕様、延床面積、LDK面積、居室構成(主寝室、子供部屋)、非居室構成、傾斜角、方位角、各部の熱容量、開口部方位等は居住試験時において既知である。居住試験には、複数組の居住者に参加してもらい、居住試験は、様々な居住者構成人数で、異なる期間、異なる季節において複数回行った。
【0056】
以下、居住試験より導出した基準、および、補正用データ、ならびに、消費量予測について例示する。
【0057】
4−1.空調機器の基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、APF(通年エネルギー消費効率、Annual Performance Factor)6.6(カタログ値)のエアコン(標本エアコン)を用いて、使用時間帯(使用スケジュール)の記録、および、毎時の消費電力量と各時刻の外気温の測定を行った。
【0058】
そして、実験住宅に設置したエアコンでの毎時の風量、吹き込み口と吹き出し口のエンタルピーに基づいて、APF6.6の標本エアコンの毎時のCOP(エネルギー消費効率、Coefficient Of Performance)を求め、外気温とCOPとの関係性を求めた。これに基づき、日本各地における、APF6.6の標本エアコンの毎時のCOPを、各地の月毎平均外気温度(気象庁公表データ)と、居住試験結果とに基づいて決定した。
【0059】
以下の表は、居住試験により求めた標本エアコンの毎時のCOPの基準データのデータ構成例である。
【表1】

anおよびbn(n:0、1、・・・、23)は、それぞれ、時刻nにおける暖房時および冷房時COPを示す正の実数である。標本エアコンの毎時のCOPの基準データは、日本各地について月単位または季節単位といった単位で作成され、エアコン地域別毎時COP基準データとして基準データDB9に保持される。
【0060】
また、エアコンについても、上述のようにして標準スケジュールから求めた基準使用スケジュールが基準データDB9に保持される。
【0061】
次に空調機器についての補正用データおよび消費量予測について説明する。
【0062】
制御部4は、空調機器のための補正用データとして、地域条件22および(試算対象商品33の)断熱仕様34の組み合わせの全てについて、複数のパラメータ値の組で構成される住宅熱負荷計算係数を、補正用データとして補正用データDB10に保持している。
【0063】
住宅熱負荷計算係数は、熱負荷計算において、地域条件22、(試算対象商品33の)断熱仕様34、住宅の延床面積、LDK面積、階段形態(リビング階段の有無)等を考慮するための複数のパラメータの組である。
住宅熱負荷計算係数の各パラメータの値は、上述のシミュレーションソフト(SMASH)による熱負荷計算結果にもとづいて予め求めておいてよい。住宅熱負荷計算係数の各パラメータ値を所定の計算式に代入することにより、ユーザ入力にかかる諸条件下における暖房負荷および冷房負荷を導出することができる。
【0064】
次に、空調機器の消費量予測について説明する。
【0065】
制御部4は、住宅熱負荷計算係数を所定の計算式に代入することでユーザ入力にかかる諸条件下における暖房負荷および冷房負荷を求める。
【0066】
なお、暖房負荷および冷房負荷の算出において、ユーザ入力にかかる建物方位38を考慮することもできる。その場合、建物方位を考慮するための係数を上記のようにして求めた暖房負荷および冷房負荷に積算すればよい。以下に建物方位を考慮するための係数の構成例を示す。
【表2】

上例の係数CおよびDは、それぞれ、暖房負荷または冷房負荷の計算のための建物方位係数であり、建物方位が南である場合の暖房負荷および冷房負荷を基準とした場合の比(無次元数)の形で与えられる。
【0067】
制御部4は、上記のようにして算出した暖房(冷房)負荷を、基準使用スケジュール、および、下記負担比率に基づいて、一定期間(例えば、1日〜1季節区分)における住宅全館の熱負荷総量を求める。制御部4(または、データ記憶部5)は、基準負担比率として、上述のシミュレーションソフト(SMASH)によるシミュレーション結果から定めた標準的な家庭(居住者合計人数4名)における各居室のエアコンの負担比率を保持している。下表は、各居室エアコン負担比率に関するデータの構成例である。
【表3】

上例の係数EおよびFは、それぞれ、0以上100以下の実数として与えられている。これにより、各居室について、毎時の熱負荷が導出される。
【0068】
次に、制御部4は、ユーザ入力にかかるエアコンタイプ41の毎時のCOPを、標本エアコンの毎時のCOPの基準データに基づいて算出する。具体的には、
補正毎時COP = 標本エアコンの毎時のCOP基準データ
×エアコンタイプ(41)のAPF値
/6.6(標本エアコンのAPF値) ・・・ (式1)、
により求める。
【0069】
次に、制御部4は、各居室について、ユーザ入力にかかる諸条件下における毎時の補正エネルギー消費量を各居室について導出する。具体的には、
補正エネルギー消費量 = 毎時熱負荷/補正毎時COP ・・・ (式2)、
により求める。
【0070】
最後に、制御部4は、住宅全館についてのエアコンのエネルギー消費量予測値を、各居室についての補正エネルギー消費量を総和することにより導出する。このとき、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の子供人数51を考慮して、子供部屋についての補正エネルギー消費量を増減させてもよい。例えば、子供人数51が0人の場合は、子供部屋についてのエネルギー消費量をゼロとし、子供人数が3人以上の場合は、子供部屋についての補正エネルギー消費量を(式2)の計算結果をさらに2倍するなどしてもよい。
【0071】
また、(式2)で得られた補正エネルギー消費量を、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45に基づいて変化させてもよい。具体的には、所定のエネルギーモニタ導入によるエアコンのエネルギー消費量削減効果率(%)を(式2)の結果について、適用してもよい。
【0072】
制御部4は、エアコンについての消費量予測と同様に、床暖機器の基準データおよび補正用データ(上述の住宅負荷計算係数)に基づいて、床暖機器の消費量予測を行うことが可能である。
【0073】
また、床暖機器についても、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45に基づいて変化させてもよい。具体的には、所定のエネルギーモニタ導入による床暖機器のエネルギー消費量削減効果率(%)を消費量予測結果に適用してもよい。
【0074】
4−2.給湯機器についての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、APF3.6(カタログ値)を有するエコキュート設備(標本給湯機器)を用いて、外気温、および、毎時のエネルギー消費効率(COP)、霜取運転消費電力、タンク効率の測定を行った。
【0075】
測定結果に基づき、標本給湯機器の月毎のエネルギー消費効率(COP)を求め、外気温とCOPとの関係性を求めた。これに基づき、日本各地における、APF3.6の標本給湯機器の月毎のCOPを、各地の月毎平均外気温度(気象庁公表データ)と、居住試験結果とに基づいて決定した。
【0076】
以下の表は、標本給湯機器の月毎のCOPの基準データのデータ構成例である。
【表4】

上例におけるgm(m:1、2、・・・、12)は、それぞれ、m月におけるCOPを示す正の実数である。標本給湯機器の月毎のCOPの基準データは、日本各地について作成され、エコキュート(標本給湯機器)地域別毎月COP基準データとして基準データDB9に保持される。
【0077】
また、給湯機器(エコキュート)の使用スケジュールに関しては、季節毎の所定値(例えば、「19時から20時まで、および、3時から6時まで」等)がエコキュート使用スケジュールとして、基準データDB9に保持される。
【0078】
給湯機器(エコキュート)は、冬期に外気温が所定値以下(例えば、摂氏5度以下)になると自動的に霜取運転を実施する。霜取運転は単位時間あたり一定の電力を消費するため、冬期のエネルギー消費量予測においては、霜取運転によるエネルギー消費を考慮することが望ましい。本実施形態では、日本各地における、冬期(120日間)のエコキュート霜取運転頻度を各地の月毎平均外気温度(気象庁公表データ)と、居住試験結果とに基づいて決定した。
【0079】
以下の表は、エコキュート機器の冬期霜取運転頻度基準データのデータ構成例である。
【表5】

上例の係数hn(n:19、20、3、・・・、6)には、それぞれ、n時台における霜取運転頻度を表す0以上100以下の実数が与えられている。
【0080】
次に給湯機器についての補正用データおよび消費量予測について説明する。
【0081】
制御部4は、給湯機器のための補正用データとして、日本各地における、給湯負荷係数を、補正用データとして補正用データDB10に保持している。
【0082】
以下の表は、毎月給湯負荷係数のデータ構成例である。
【表6】

上例におけるjm(m:1、2、・・・、12)は、それぞれ、m月における給湯負荷係数を示す正の実数である。ここでの給湯負荷係数は、各地における月毎平均外気温度(気象庁公表データ)と、上水道温度(水道局公表データ)とに基づいて導出された係数であり、上水道水を所定の設定湯温まで加熱するために必要なエネルギー量に比例している。
【0083】
次に、給湯機器の消費量予測について説明する。
【0084】
制御部4は、上に例示した毎月の給湯負荷係数より、ユーザ入力にかかる諸条件(地域条件22)における毎月の給湯負荷を、
n月の給湯負荷 = jn(n月給湯負荷係数)
×標準給湯負荷定数 ・・・ (式3)、
により月毎に求める。ここで、nは、1〜12の整数であり、標準給湯負荷定数は、所定の定数値であって、その単位は熱量である。これにより、毎月の給湯負荷が導出される。
【0085】
次に、制御部4は、ユーザ入力にかかるエコキュートタイプ42の毎月のCOPを、標本給湯機器の毎時のCOPの基準データに基づいて算出する。具体的には、
補正毎月COP = 標本給湯機器の毎月のCOP基準データ
×エコキュートタイプ(42)のAPF値
/3.6(標本給湯機器のAPF値) ・・・ (式4)、
により求める。
【0086】
次に、制御部4は、ユーザ入力にかかる諸条件下における毎月の補正エネルギー消費量を導出する。具体的には、
補正エネルギー消費量 = 毎月給湯負荷/補正毎月COP ・・・ (式5)、
により求める。また、制御部4は、冬期霜取運転頻度に基づき、冬期の霜取運転にかかるエネルギー消費量を算出する。
【0087】
最後に、制御部4は、毎月のエネルギー消費量の1年間の総和と、冬期の霜取運転に要するエネルギー消費量の和を求めることにより、通年の給湯機器のエネルギー消費量を導出する。なお、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の人数49〜51の合計人数を考慮して、給湯機器の毎月のエネルギー消費量を増減させてもよい。
【0088】
4−3.照明機器についての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、居室(LDK、主寝室、子供部屋)や非居室に設置された照明機器のそれぞれについて、使用時間帯および消費電力の測定を行った。測定の記録の際には、実験住宅建設地における日の出・日の入り時刻についてもあわせて記録した。特に、LDK設置の照明機器(以下、「LDK照明」)には、照明の明るさや照明態様(実験では、シーン1、シーン2、シーン3、シーン4の4種類)を居住者の任意により選択可能なタイプの照明機器が用いられた。そこで、LDK照明の消費電力は、照明態様により変化することを用いて、消費電力量から、LDK照明の明るさや照明態様を求め、時間帯と、日の出・日の入り時刻と、LDK照明の照明照度および照明態様との関係性についても求めた。
【0089】
以上の観察に基づき、LDK照明については、試験地の日の出・日の入り時刻および日本各地の日の出・日の入り時刻(国立天文台公表データ)ならびに居住試験の結果にもとづき、日本各地における、夏期、冬期、中間期のLDK照明基準使用スケジュールを、毎時の使用分数として導出した。
【0090】
以下の表は、LDK照明の毎時の基準使用スケジュールのデータ構成例である。
【表7】

上例のpn、qn、rn(n:0、1、・・・、22、23)は、それぞれ、中間期(春・秋)、夏期、冬期におけるn時台のLDK照明基準使用スケジュール(単位:分)を表し、0〜60の実数で与えられる。LDK照明の毎時の基準使用スケジュールは、LDK照明基準使用スケジュールとして、基準データDB9に保持される。また、上記例には明示していないが、LDK照明については、使用された照明態様(実験では、シーン1、シーン2、シーン3、シーン4の4種類)に関するデータを時間帯毎に関連付けて保持する。
【0091】
LDK以外の照明機器(主寝室、子供部屋、非居室等)については、それぞれ、上述のようにして標準スケジュールから求めた基準使用スケジュールが基準データDB9に保持される。
【0092】
次に、照明機器についての補正用データおよび消費量予測について説明する。
【0093】
制御部4は、照明機器のための補正用データとして、照明機器のタイプ毎の消費電力のデータを補正用データDB10に保持する。特に、LDK照明については、照明照度および照明態様毎の消費電力のデータを保持することが望ましい。
【0094】
次に、照明機器の消費量予測について説明する。
【0095】
LDK照明の消費量予測においては、制御部4は、ユーザ入力にかかる地域条件22のLDK照明基準使用スケジュールを、基準データDB9より読み出し、ユーザ入力にかかるLDKの照明器具タイプ44の消費電力のデータを補正用データDB10から読み出す。
【0096】
制御部4は、LDK照明基準使用スケジュールおよびLDKの照明器具タイプ44の消費電力に基づいて、毎時の消費電力量(LDK照明補正毎時消費量)を算出し、それらの総和を求めることにより、所望の期間(例えば、1年間)におけるLDK照明の補正エネルギー消費量を導出する。
【0097】
LDK照明以外の照明機器の消費量予測においては、制御部4は、主寝室、子供部屋、非居室等それぞれの基準使用スケジュールを、基準データDB9より読み出し、ユーザ入力にかかる居室(主寝室および子供部屋)、非居室の照明器具タイプ44の消費電力のデータを補正用データDB10から読み出す。
【0098】
制御部4は、各室の基準使用スケジュールおよび各室の照明器具タイプ44の消費電力に基づいて、毎時の消費電力量(各室の補正毎時消費量)を算出し、それらの総和を求めることにより、所望の期間(例えば、1年間)における各室の補正エネルギー消費量を導出する。
【0099】
最後に、制御部4は、所望の期間の住宅全館についての照明機器のエネルギー消費量予測値を、各室の補正エネルギー消費量を総和することにより導出する。このとき、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の子供人数51を考慮して、子供部屋についての補正エネルギー消費量を増減させてもよい。例えば、子供人数51が0人の場合は、子供部屋についての補正エネルギー消費量をゼロとし、子供人数が3人以上の場合は、子供部屋についての補正エネルギー消費量をさらに増加させるなどしてもよい。また、非居室の補正エネルギー消費量を、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の人数49〜51の合計人数を考慮して、増減させてもよい。
【0100】
また、各室の補正エネルギー消費量を、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45に基づいて変化させてもよい。具体的には、所定のエネルギーモニタ導入による照明機器のエネルギー消費量削減効果率(%)を各室の補正エネルギー消費量に適用してもよい。
【0101】
4−4.調理機器についての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、既知の効率のIH調理器(標本調理機器)を用いて、様々なメニューの調理に要した消費電力量の測定を行った。測定された消費電力量は、調理したメニュー、標本調理機器の使用時間等と関係づけて記録した。また、ガスコンロについても、IH調理器と同様に、消費したガス量を調理したメニュー、使用時間等と関係づけて記録した。
【0102】
そして、居住試験の調理メニュー出現頻度観察結果、各調理メニュー所要時間、および、消費電力量測定結果に基づき、所定期間(例えば、1週間)ぶんの基準献立モデルおよび調理所要時間(基準使用スケジュール)を決定し、基準献立モデルを調理するのに要する消費電力量(測定値)を、基準献立モデルを調理所要時間で除して、標本調理機器の基準消費電力を(1週間の平均消費電力として)求めた。この標本調理機器の基準消費電力は、調理機器の基準消費電力データとして基準データDB9に保持される。
【0103】
また、居住者に大人(親世帯)が2名以上含まれる場合における親世帯の調理機器消費電力を上記と同様にして求めている。ただし、基準献立モデルとしては、2名分の低カロリーメニューを想定した。求めた使用時間および消費電力は、親世帯の調理機器の基準使用スケジュールおよび基準消費電力のデータとして基準データDB9に保持される。
【0104】
次に調理機器についての補正用データおよび消費量予測について説明する。
【0105】
制御部4は、調理機器のための補正用データとして、調理機器のタイプ毎の効率のデータを調理機器タイプ別補正係数として補正用データDB10に保持する。調理機器タイプ別補正係数は、たとえば、各調理機器の効率と標本調理機器の効率との比(無次元数)である。以上のように、制御部4は、標本調理機器についての基準使用スケジュールおよび基準消費電力、ならびに、親世帯のための基準使用スケジュールおよび基準消費電力を、基準データDB9に保持し、調理機器の効率の違いを補正するための補正係数を補正用データDB10に保持する。
【0106】
次に、調理機器の消費量予測について説明する。
【0107】
調理機器の消費量予測においては、制御部4は、ユーザ入力にかかる家族構成条件25に基づいて、基準使用スケジュールおよび基準消費電力(、ならびに、必要に応じ親世帯用の基準使用スケジュールおよび基準消費電力)を、基準データDB9より読み出し、設備仕様条件24の調理機器のタイプ(図3では不図示)に基づいて、調理機器タイプ別補正係数を、補正用データDB10より読み出す。制御部4は、基準消費電力と基準使用スケジュールから調理機器が所定期間(例えば、1週間)で消費するエネルギー量を求め、当該エネルギー量に調理機器タイプ別補正係数を積算することにより、調理機器のエネルギー消費量予測値を導出する。
【0108】
4−5.テレビについての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、LDKに37型液晶テレビ(標本テレビ)を設置し、使用時間帯および毎時の消費電力量の測定を行った。
【0109】
居住試験に基づき、テレビの使用スケジュールを求めるとともに、日中時間帯における毎時消費電力量を求めた。使用スケジュールは、毎時の視聴分数の形式で、テレビの基準使用スケジュールとして、日中時間帯における毎時消費電力量については、標本テレビの基準毎時消費電力量として基準データDB9に保持される。ただし、テレビの基準使用スケジュールには、LDK照明照度(オフ(日中)、最高、高、低、最低)もあわせて記録されている。LDK照明照度については、上記の4−3.のLDK照明基準使用スケジュールに関する説明を参照されたい。
【0110】
また、補正用データとして、テレビの型およびサイズによる毎時消費電力量の違いを補正するためのデータ(テレビタイプ補正係数)と、LDK照明態様の違いによるテレビの毎時消費電力量の違いを補正するためのデータ(環境照度補正係数)とが補正用データDB10に保持される。
【0111】
テレビタイプ補正係数は、例えば、各テレビタイプ(プラズマ(50型以上)、プラズマ(50型未満)、液晶(40型以上)、液晶(30〜40型)、液晶(30型未満)等)の日中時間帯における毎時消費電力量と、標本テレビの基準毎時消費電力量との比(無次元数)である。
【0112】
環境照度補正係数は、4種類のLDK照明態様での環境照度における各テレビタイプの毎時消費電力量と、同タイプのテレビの日中時間帯における毎時消費電力量との比として表されてよい。以下にテレビタイプ「液晶(30〜40型)」の環境照度補正係数の例を示す。例示しないが、他のテレビタイプについても同様の環境照度補正係数が補正用データDB10に保持される。
【表8】

【0113】
次に、テレビの消費量予測について説明する。
【0114】
制御部4は、基準データDB9より、テレビの基準使用スケジュールと、基準毎時消費電力量とを読み出す。また、予測装置は、補正用データDB10より、ユーザ入力にかかるテレビタイプ43のテレビタイプ補正係数と環境照度補正係数とを読み出す。
【0115】
そして、制御部4は、基準使用スケジュールおよび基準毎時消費電力量、ならびに、テレビタイプ補正係数および環境照度補正係数を用いて、ユーザ入力にかかるテレビタイプ43のエネルギー消費量予測値を導出する。
【0116】
また、テレビのエネルギー消費量予測値を、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45に基づいて変化させてもよい。具体的には、所定のエネルギーモニタ導入によるテレビのエネルギー消費量削減効果率(%)をテレビのエネルギー消費量予測値に適用してもよい。
【0117】
4−6.冷蔵庫についての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、冷蔵庫(標本冷蔵庫)の一日の開放時間と消費電力量の測定を行った。当該測定より、冷蔵庫の消費電力量は、開放時間が増加するにつれ、増加することが確かめられた。冷蔵庫の消費電力量と開放時間との相関関係は、一次式でよく近似できることも確認できた。また、居住者構成人数を様々に変化させて冷蔵庫の一日の開放時間を観察したところ、居住者構成人数が増えるにつれて、冷蔵庫の一日の開放時間も増加することが確かめられた。観察結果によれば、開放時間と居住者構成人数との相関関係もまた、一次式でよく近似される。
【0118】
以上の知見に基づき、制御部4は、開放時間ゼロの場合の冷蔵庫の消費電力量(冷蔵庫の消費電力量と開放時間との相関関係を表す一次式のy切片)を冷蔵庫の基準消費電力量として基準データDB9に保持するとともに、冷蔵庫の消費電力量と開放時間との相関関係を表す一次式および開放時間と居住者構成人数との相関関係を表す一次式を補正アルゴリズムとして補正用データDB10に保持する。
【0119】
観察結果によれば、冷蔵庫の消費電力量(y)と開放時間(t)との関係は、
y=S1×t+S0 ・・・ (式6)、
でよく近似される。ここで、S0およびS1は、居住試験より実験的に求めた定数である。また、y切片S0は、上述した基準消費電力量にあたる。
【0120】
また、観察結果によれば、冷蔵庫の開放時間(t)と居住者構成人数(n)との関係は、
t=S2×n+S3 ・・・ (式7)、
でよく近似される。ここで、S2およびS3は、居住試験より実験的に求めた定数である。
【0121】
よって、居住者構成人数(n)による冷蔵庫の消費電力量の基準消費電力量からの増分(Δy)は、
Δy=S1×(S2×n+S3)
=S1×S2×n+S1×S3 ・・ (式8)、
で求められる。
【0122】
冷蔵庫のエネルギー消費量予測においては、制御部4は、基準データDB9より冷蔵庫の基準消費電力量を読み出し、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の人数49〜51の合計人数および式8に基づいて、基準消費電力量を補正し、冷蔵庫の消費電力量予測値を導出する。
【0123】
また、制御部4は、カタログ値に基づき、様々な冷蔵庫の電動機定格消費電力と、標本冷蔵庫の電動機定格消費電力との比を冷蔵庫タイプ補正係数として補正用データDB10に保持してもよい。そうすることで、様々な定格消費電力の冷蔵庫について、エネルギ消費量の予測をすることが可能となる。
【0124】
また、冷蔵庫のエネルギー消費量予測値を、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45に基づいて変化させてもよい。具体的には、所定のエネルギーモニタ導入による冷蔵庫のエネルギー消費量削減効果率(%)を冷蔵庫のエネルギー消費量予測値に適用してもよい。
【0125】
4−7.アイロンについての基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、定格1200(W)(カタログ値)のアイロン(標本アイロン)を用いて、生活活動におけるアイロンの使用時間および消費電力量の測定を行った。測定結果より、実際の生活活動においては、定格1200Wが使用時間にわたり持続されることはなく、定格1200(W)の標本アイロン場合、実生活における平均消費電力は定格値1200(W)よりもかなり低い(以下では、X(W)とする。)ことが確認された。また、1日あたりのアイロン使用時間は、居住する大人の人数に比例することが確認された。
【0126】
以上の知見に基づき、制御部4は、消費電力X(W)をアイロンの基準消費電力として基準データDB9に保持するとともに、居住する大人の人数nに応じてアイロンの使用時間Tを求めるための計算式
T(分)=Xp×n ・・・ (式9)
を補正アルゴリズムとして補正用データDB10に保持する。ここで、Xpは、居住試験より実験的に求めた定数である。
【0127】
アイロンのエネルギー消費量予測においては、制御部4は、基準データDB9よりアイロンの基準消費電力を読み出し、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の大人の人数49および式9に基づいて、一日あたりのアイロン使用時間を補正し、アイロンの消費電力量予測値を導出する。
【0128】
なお、居住試験結果によれば、エネルギーモニタの導入によるアイロンのエネルギー消費量の削減効果は乏しいことが判明した。よって、アイロンについては、エネルギーモニタの有無による予測値の再補正は行わない。
【0129】
4−8.食器洗浄乾燥機の基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、所定の定格消費電力の食器洗浄乾燥機について、使用時間帯、洗浄時消費電力量、洗浄使用時間、乾燥時消費電力量、乾燥使用時間等の測定を行った。測定結果より得た知見にもとづき、食器洗浄乾燥機の基準使用スケジュールを、12時および23時の1日2回とし、各回の使用時間を居住者構成人数の合計に依らずに45分とした。
【0130】
また、居住試験に基づき、食器洗浄乾燥機の基準消費電力を、居住者構成人数3〜5人の場合を基準として設定した。居住者構成人数の違いによる1回あたりの使用時間の相違については、食器洗浄乾燥機の消費電力を居住者構成人数に応じて補正することでエネルギー消費量予測に組み入れることとした。
【0131】
これらより、制御部4には、食器洗浄乾燥機の基準使用スケジュールおよび基準消費電力を基準データDB9に保持させるとともに、
居住者構成人数合計に対応付けた基準消費電力補正値を補正用データDB10に保持させることとした。
【0132】
食器洗浄乾燥機の消費量予測においては、制御部4は、基準データDB9より食器洗浄乾燥機の基準使用スケジュールを読み出すとともに、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の人数49〜51の合計人数を考慮して、食器洗浄乾燥機の消費電力を補正する。制御部4は、居住者の人数を考慮して補正した食器洗浄乾燥機の消費電力および基準使用スケジュールを用いて、エネルギー消費量予測値を導出する。
【0133】
4−9.洗濯機の基準および補正用データならびに消費量予測について
居住試験においては、所定の定格消費電力(カタログ値)の洗濯機(標本洗濯機)について、使用時間帯、消費電力量等の測定を行った。測定においては、洗濯物重量の計測をあわせて行った。本実施形態においては、測定結果より得た知見にもとづいて、洗濯機の一日あたりの基準使用スケジュールを、午前8時からの1回とし、各回の使用時間を、標本洗濯機について45分とした。また、洗濯物重量は、居住試験の結果に基づき、居住者一人あたり0.6(kg)に設定する。つまり、居住者構成人数が、n(人)のとき、1回の洗濯における洗濯物重量は、0.6×n(kg)とする。標本洗濯機の基準消費電力については、使用時間(45分)、洗濯物重量0.6×n(kg)、居住試験における消費電力量より、
標本洗濯機基準消費電力 = U1×n+U0(W) ・・・ (式10)、
とする。ここで、U0およびU1は、居住試験より実験的に求めた定数である。制御部4は、基準使用スケジュールを、午前8時から45分間の使用として保持するとともに、人数考慮補正消費電力導出アルゴリズム(式10)を保持する。
【0134】
洗濯機の消費量予測においては、制御部4は、基準データDB9より、基準使用スケジュールを読み出し、補正用データDB10より、人数考慮消費電力導出アルゴリズム(式10)を読み出すとともに、ユーザ入力にかかる家族構成条件25の人数49〜51の合計人数を考慮して、洗濯機の消費電力を補正する。そして、基準使用スケジュールと、補正消費電力とから、エネルギー消費量予測値を導出する。
【0135】
なお、定格消費電力(カタログ値)が標本洗濯機のそれとは異なる洗濯機をシミュレートする場合には、(式10)における傾きおよび切片(定数項)を変化させればよい。あるいは、使用スケジュールの使用時間45分を、洗濯機の定格消費電力に応じて変化させればよい。
【0136】
4−10.その他の家電の基準および補正用データならびに消費量予測について
その他の家電機器については、以下のタイプ1〜タイプ4までの4つに分類し、それぞれの消費エネルギー予測を行った。以下の4分類は、基準データ(基準使用スケジュール、基準消費電力(量、効率))を、補正する条件項目により、分類したものである。
【0137】
(その他家電タイプ1)
その他家電タイプ1は、ユーザ入力による居住者の家族構成人数、および、エネルギーモニタの有無45により、基準データを補正して、エネルギー消費量予測値を導出する家電機器である。タイプ1には、例えば、オーディオ・コンポ、パソコン、等が含まれる。
【0138】
(その他家電タイプ2)
その他家電タイプ2は、ユーザ入力による居住者の家族構成人数により、基準データを補正して、エネルギー消費量予測値を導出する家電機器である。タイプ2には、例えば、洗浄便座等が含まれる。
【0139】
(その他家電タイプ3)
その他家電タイプ3は、ユーザ入力によるエネルギーモニタの有無45により、基準データを補正して、エネルギー消費量予測値を導出する家電機器である。タイプ3には、例えば、ドライヤー、DVDレコーダ等が含まれる。
【0140】
(その他家電タイプ4)
その他家電タイプ4は、ユーザ入力による諸条件の影響を考慮せず、基準データよりエネルギー消費量予測値を導出する家電機器である。タイプ4には、例えば、FAX電話、換気用機器、情報通信機器、エネルギーモニタ、ドアホン等が含まれる。
【0141】
4−11.創エネ(発電)機器の基準および補正用データならびに生産量予測について
例えば、ソーラパネルのエネルギー生産量予測においては、各地域における毎月の単位搭載量あたり発電量のデータ(太陽光パネルメーカ公表データ)、ならびに、ユーザ入力にかかる地域条件22、建物方位38、屋根勾配40等、および、ソーラパネルタイプ46、搭載パネル枚数47に基づいて、エネルギー生産量予測を行えばよい。
【0142】
4−12.水栓設備について
本実施形態においては、居住者構成人数に応じて水道使用量の基準値を求め、水栓設備のタイプに応じて、メーカ公表値に基づいて水道使用量基準値を補正することにより、水道使用量予測値を導出する。
【0143】
5.まとめ
以上のように、本実施形態による予測装置100は、実験住宅における居住試験により実験的に求めた、各機器の基準使用スケジュールおよび基準エネルギー消費量(生産量)ならびに補正用データ(補正係数および補正アルゴリズム)に基づいて、ユーザ入力にかかる諸条件下でのエネルギー消費量予測値等を導出する。
【0144】
そのため、従来のシステムに較べ、データベースに保持すべきデータの総量を少なくすることが可能であり、かつ、諸条件の様々な組み合わせに対応した光熱費データを保持するタイプの従来例に較べ、制御部4およびデータ記憶部5の仕様変更や拡張が容易になっている。例えば、将来において各機器の進歩により効率や消費電力に変化が生じた場合であっても、本実施形態の装置100であれば、変化した機器について実験的に基準データや補正用データを求め、これらを基準データDB9や補正用データDB10に追加・置換することで、データ記憶部5のデータを最新の状態にアップデートすることが可能である。
【0145】
また、カタログ値に基づいて実際の生活活動における機器のエネルギー消費量を精度よく導出するためには、各機器の実際の使用態様(使用時間、使用時間帯、使用頻度、使用方法等)を詳細に入力する必要があるが、本実施形態による予測装置100では、使用スケジュールに関するデータおよび補正用データを予めデータ記憶部5に保持している。これにより、本予測装置100では、少数のユーザ入力による条件に応じて、各機器について実験的に求めた基準データならびに補正係数および補正アルゴリズムから導出した補正使用スケジュールおよび補正エネルギー消費量に基づいて消費量(生産量)予測を機器単位で行うことが可能であり、同時に、カタログ値(定格値や想定値等)のみに基づいてエネルギー消費量(生産量)予測を行う場合に較べて、生活活動の実態により近い予測が可能となっており、予測の精度が格段に向上している。具体的には、住宅全館のエネルギー収支予測において、カタログ値に基づく予測値に較べ、本実施形態による予測装置100による予測値は、マイナス3.4%低くなった。また、機器別では、パソコンにおいて16%の精度向上が見られ、冷蔵庫において158%の精度向上が見られた。
【0146】
本実施形態による予測装置100は、一戸建ての住宅のみならず、マンション、アパート等集合住宅における各住戸のエネルギー消費量を予測することも可能である。
【0147】
また、本実施形態による予測装置100は、複数の諸条件組み合わせについて、予測を行い、各諸条件組み合わせについての予測結果を表示装置3に一覧表示し、ユーザによる予測結果の比較に供してもよい。
【0148】
なお、入力条件については、図3にない条件についても入力可能としてもよい。例えば、設備仕様条件24において、食器洗浄乾燥機の有無や、洗濯機等の種類(定格消費電力の違い)等を入力可能としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、簡便に、住宅におけるエネルギー消費量を精度よく予測する装置として有用である。
【符号の説明】
【0150】
1 ・・・ 入力装置(入力部)
2 ・・・ 情報処理装置
3 ・・・ 表示装置(表示部)
4 ・・・ 制御部
5 ・・・ データ記憶部
6 ・・・ 消費量予測部
7 ・・・ 生産量予測部
8 ・・・ 換算部
9 ・・・ 基準データDB
10 ・・・ 補正用データDB
11 ・・・ 光熱費換算用データDB
12 ・・・ CO2収支換算用データDB
100 ・・・ 予測装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
住宅および居住者に関する条件の入力を受け付ける入力部と、
前記住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データを保持する基準データDBと、
前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて前記使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データを保持する補正用データDBと、
前記基準データを、前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、前記機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して前記住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する消費量予測部と、
前記予測値を出力する出力部と、を有する住宅用エネルギー消費量予測装置。
【請求項2】
前記住宅に関する条件は、前記住宅が建築される地域に関する地域条件と、前記住宅の仕様に関する住宅仕様条件と、前記住宅の機器に関する住宅設備条件と、を含む、請求項1に記載の住宅用エネルギー消費量予測装置。
【請求項3】
前記居住者に関する条件は、居住者の人数に関する条件を含む、請求項2に記載の住宅用エネルギー消費量予測装置。
【請求項4】
さらに、前記住宅が備える発電機器のそれぞれの発電量の予測値を導出する生産量予測部と、
前記エネルギー消費量および生産量の予測値を光熱費に換算するための光熱費換算用データを保持する光熱費換算用データDBと、
前記光熱費換算用データに基づいて、前記エネルギー消費量および生産量の予測値から光熱費を算出する換算部と、を有する、請求項3に記載の住宅用エネルギー消費量予測装置。
【請求項5】
さらに、前記住宅が備える発電機器のそれぞれの発電量の予測値を導出する生産量予測部と、
前記エネルギー消費量および生産量の予測値をCO2収支に換算するためのCO2収支換算用データを保持するCO2収支換算用データDBと、
前記CO2収支換算用データに基づいて、前記エネルギー消費量および生産量の予測値からCO2収支を算出する換算部と、を有する、請求項3に記載の住宅用エネルギー消費量予測装置。
【請求項6】
コンピュータを用いて住宅のエネルギー消費量を予測する方法であって、
入力部において住宅および居住者に関する条件の入力を受け付ける入力ステップと、
制御部が、前記住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データをデータ記憶部から読み出す基準データ読出ステップと、
前記制御部が、前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて前記使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データを前記データ記憶部から読み出す補正用データ読出ステップと、
前記制御部が、前記基準データを、前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、前記機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して前記住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する予測ステップと、
前記予測値を出力部へ出力する出力ステップと、を有する方法。
【請求項7】
コンピュータに、
入力部において入力された住宅および居住者に関する条件の情報を取得する取得ステップと、
制御部が、前記住宅が備える機器のそれぞれについて、使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を含んだ基準データをデータ記憶部から読み出す基準データ読出ステップと、
前記制御部が、前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じて前記使用スケジュールの基準値および消費エネルギーの基準値の少なくともいずれか一方を補正するための補正用データを前記データ記憶部から読み出す補正用データ読出ステップと、
前記制御部が、前記基準データを、前記住宅および居住者に関する条件の少なくともいずれか一方に応じた補正用データで補正することにより、前記機器のそれぞれのエネルギー消費量の予測値を導出して前記住宅のエネルギー消費量の予測値を導出する予測ステップと、
前記予測値を出力部へ出力する出力ステップと、を実行させる住宅用エネルギー消費量予測プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−33401(P2013−33401A)
【公開日】平成25年2月14日(2013.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−169429(P2011−169429)
【出願日】平成23年8月2日(2011.8.2)
【出願人】(000004673)パナホーム株式会社 (319)