説明

作業機

【課題】走行車両によって移動されながら圃場に作業を施す作業機の移動速度に、作業装置を駆動する電動モータの回転速度を自動同調させる場合、作業機の移動速度が低速になると電動モータの同調回転速度も低速となり、作業開始時には、電動モータの立ち上がりが遅くなって、無作業区間が拡大すると共に、電動モータによる作業量が少なくなって、無作業区間の後に供給される肥料や種子等が不足し、無作業区間における肥料や種子等の不足を緩和しにくくなる、という問題があった。
【解決手段】作業開始時に、接地式移動速度検知装置42により、施肥播種機2の移動速度Vを検知するのに必要な速度検知時間の間、自動同調制御中の回転速度よりも大きな一定の予備回転速度Rmにより、繰出モータ52を回転させて予備回転を行う、供給制御機構1を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ等の走行車両によって移動されながら圃場に施肥や播種等の作業を施す作業機において、電動モータにより肥料や種子を繰り出す繰出装置等(以下、「作業装置」とする)の制御構成に関し、特に、作業開始時に、圃場に施肥や播種等の作業が施されていない領域(以下、「無作業区間」とする)が発生するのを確実に抑制可能な、電動モータの回転初期の制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、作業機の移動速度に電動モータの回転速度を自動同調させることにより、作業機の単位移動長当たりに施される作業の量(以下、「作業量」とする)、例えば圃場への肥料の供給量を、移動速度にかかわらず一定にすると共に、作業開始時には、その時に検知した作業機の移動速度に同調して設定される同調回転速度よりも一定速度だけ大きな回転速度で、前記電動モータを駆動する技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
これによると、作業開始時に、電動モータによる作業量を増加させることができ、たとえ、電動モータの立ち上がり遅れ等によって前記無作業区間が発生しても、該無作業区間の近傍領域に多めの肥料や種子等を供給することで、無作業区間内における肥料や種子等の不足を緩和するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−292811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記技術では、精密な施肥や播種を行う必要等から作業機の低速移動が避けられない場合があり、その際は、低速移動に同調する電動モータの同調回転速度も低速となるため、作業開始時には、電動モータの立ち上がりが遅くなって、無作業区間が拡大すると共に、電動モータによる作業量も少なくなって、無作業区間の近傍領域に供給される肥料や種子等が不足し、無作業区間内における肥料や種子等の不足を緩和できない、という問題があった。
更に、前記技術では、作業機の移動速度は、走行車両の車軸近傍に設けた回転速度センサによって迅速に検知できるのに対し、本発明のように、作業機側に接地式移動速度検知装置を設け、該接地式移動速度検知装置の接地輪を圃場に接地して作業機の移動速度を検知する「接地検知式」の作業機の場合、その移動速度は、接地後に接地輪がある程度回転してからでないと検知できず、この移動速度の検知に必要な時間(以下、「速度検知時間」とする)が比較的長くなる。このため、前記技術の如く、作業機の移動速度を検知してから電動モータを駆動するような作業制御機構では、長い速度検知時間のせいで無作業区間が大きいものとなる、という問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
すなわち、請求項1においては、走行車両によって移動されながら圃場に作業を施す作業機の作業装置を作動するための電動モータと、圃場に接地輪を接地させて前記作業機の移動速度を検知するための接地式移動速度検知装置と、該接地式移動速度検知装置からの移動速度信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するためのコントローラとを備え、該コントローラにより、予め設定された基準作業量となるように、前記電動モータの回転速度を作業機の移動速度と自動同調制御可能な作業機において、作業開始時に、前記接地式移動速度検知装置により作業機の移動速度を検知するのに必要な速度検知時間の間、自動同調制御中の回転速度よりも大きな一定の予備回転速度により、前記電動モータを回転させて予備回転を行う、作業制御機構を設けたものである。
請求項2において、前記予備回転は、接地輪の接地時に行うものである。
請求項3において、前記予備回転は、作業制御機構の再始動の時にも行うものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、以上のように構成したので、以下に示す効果を奏する。
すなわち、請求項1により、接地検知式であるために長い速度検知時間を要する場合であっても、移動速度の検知と予備回転とを並行して行い、無作業区間を大幅に縮小することができる。更に、前記予備回転は自動同調制御による回転速度のいずれよりも大きな一定値に設定されるため、作業開始時には、電動モータの立ち上がりが早くなって、無作業区間が更に縮小すると共に、電動モータによる初期の作業量が多くなって、無作業区間における肥料や種子等の不足を十分に緩和することができる。
請求項2により、作業開始時に生じる無作業区間を縮小することができ、主に圃場の縁部における肥料や種子等の不足を緩和できる。
請求項3により、作業再開時に生じる無作業区間を縮小することができ、主に圃場の内側における肥料や種子等の不足を緩和できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係わる施肥播種機をトラクタの後部に装着した状態の斜視図である。
【図2】施肥播種機の全体構成を示す左側面図である。
【図3】接地式移動速度検知装置の左側面図である。
【図4】接地センサの動作状況を示す取付フレーム・接地輪アーム間の接続部周辺の左側面図であって、図4(a)は接地輪が接地状態にある場合の接続部周辺の左側面図、図4(b)は接地輪が離間状態にある場合の接続部周辺の左側面図である。
【図5】本発明に関わる供給制御機構を示すブロック図である。
【図6】繰出モータの回転速度と施肥播種機の移動速度の時間変化を示す説明図である。
【図7】繰出モータの回転速度と施肥播種機の移動速度との関係を示す説明図である。
【図8】供給制御全体の手順を示すフローチャートである。
【図9】初期制御処理の手順を示すフローチャートである。
【図10】自動同調制御処理の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
なお、図1の矢印Fで示す方向を施肥播種機2の前進方向とし、以下で述べる各部材の位置や方向等はこの前進方向を基準とするものである。
【0009】
まず、本発明に関わる供給制御機構1を有する施肥播種機2の全体構成について、図1、図2により説明する。
図示せぬ走行車両であるトラクタの後部に、ロータリ耕耘装置3が昇降自在に装着され、該ロータリ耕耘装置3のデプスフレーム4後部の左右略中央部に、高さ及び角度を調節するヒッチユニット30が取り付けられ、該ヒッチユニット30の後部にツールバー31が横設されている。そして、該ツールバー31に、前記施肥播種機2を構成する複数の施肥播種ユニット5、本実施例では4ユニットが連結して牽引されるようにしている。
【0010】
該施肥播種ユニット5は、種子ホッパ6、種子繰出装置7、肥料ホッパ8、肥料繰出装置9、固定フレーム10、メインフレーム11、作溝部12L・12R、覆土ディスク13L・13R、鎮圧ローラ14等で構成される。なお、播種や施肥の方式は、本実施例に限定されるものではなく、また、施肥播種ユニット5は、播種のみを行うユニットであっても構わない。
【0011】
このうちの種子ホッパ6は、種子を貯溜する容器であり、上面および下面に開口部が設けられ、種子ホッパ6の上面の開口部には蓋6aが設けられ、該蓋6aを開けて種子を種子ホッパ6内に補充するようにしている。
【0012】
前記種子繰出装置7は、種子ホッパ6内の種子を所定量ずつ繰り出すものであり、前記種子ホッパ6の下部に配置される。自重により前記種子ホッパ6の下面の開口部から種子繰出装置7内に流入してきた種子は、該種子繰出装置7内のスライド式の繰出ロール15の外周面に設けられた溝に嵌入し、該繰出ロール15の回転によって種子繰出装置7の下部に搬送されて、種子繰出装置7の下面の開口部から下方に繰り出される。
【0013】
この繰り出された種子は、上部が前記種子繰出装置7の下面に連通連結された上方拡開漏斗状のロート16内に繰り出された後、胴体部が蛇腹状に形成された略円筒形状の防水カバー17から、貫設されたピン93によって前記メインフレーム11の上面後部に固設された上方拡開漏斗状のロートシュート18内に落下し、該ロートシュート18の下部に連通された二股状の分岐シュート19によって分岐される。分岐された種子は、前記分岐シュート19の左右の分岐部に接続された左右の搬送管20L・20Rから、該搬送管20L・20Rにそれぞれ接続された左右の播種ノズル21L・21Rを通って、前記作溝部12L・12Rに搬送される。
【0014】
前記肥料ホッパ8は、肥料を貯溜する容器であり、上面および下面に開口部が設けられ、肥料ホッパ8の上面の開口部には蓋8aが設けられ、該蓋8aを開けて肥料を肥料ホッパ8内に補充するようにしている。
【0015】
前記肥料繰出装置9は、肥料ホッパ8内の肥料を所定量ずつ繰り出すものであり、肥料ホッパ8の下部に配置される。自重により肥料ホッパ8の下面の開口部から肥料繰出装置9内に流入してきた肥料は、該肥料繰出装置9内のスライド式の繰出ロール22の外周面に設けられた溝に嵌入し、該繰出ロール22の回転により肥料繰出装置9の下部に搬送され、肥料繰出装置9の下面の開口部から下方に繰り出される。
【0016】
この繰り出された肥料は、上部が前記肥料繰出装置9の下面に連通連結された上方拡開漏斗状のロート23内に繰り出された後、胴体部が蛇腹状に形成された略円筒形状の防水カバー24から、前記メインフレーム11の上面前部にピン27により固設された上方拡開漏斗状のロートシュート25内へ向かって落下する。落下した肥料は、前記ロートシュート25の下部に接続された搬送管26を通って、前記作溝部12L・12Rの間に搬送される。
【0017】
そして、前記種子ホッパ6は、肥料ホッパ8の後部に係止部材6c・6cによって着脱可能に固設されると共に、種子繰出装置7は肥料繰出装置9の後部に着脱可能に固定されている。更に、種子繰出装置7の繰出ロール15の繰出軸7aに設けられたギヤ28は、肥料繰出装置9の繰出ロール22の繰出軸9aに設けられたギア29に噛合されると共に、該繰出軸9aは、後述する前記供給制御機構1によって回転駆動されるようにしている。これにより、種子繰出装置7の繰出ロール15と肥料繰出装置9の繰出ロール22とは所定の回転数比を保って同時回転可能に構成されている。
【0018】
前記固定フレーム10には、前記肥料繰出装置9の前面がボルトで締結されると共に、固定フレーム10の前上部に回動可能に設けられた係止部材10a・10bによって、各施肥播種ユニット5が前記ツールバー31に固定されている。
【0019】
前記メインフレーム11は、中空の箱形に成形された構造体であって、このメインフレーム11の前部には、平行リンク32・33の後端部が回動可能に枢支され、該平行リンク32・33の前端部は、前記固定フレーム10の下部に回動可能に枢支されている。この平行リンク32のメインフレーム11側の回動枢支点と、平行リンク33の固定フレーム10側の回動枢支点との間には、巻きバネ34が介装されており、該巻きバネ34によってメインフレーム11は下方に回動する方向に付勢されている。
【0020】
前記鎮圧ローラ14は、各施肥播種ユニット5の最後部に配置されると共に、前記メインフレーム11から後方に延設された支持アーム35の後端部に、回転可能に軸支されている。ここで、前記種子繰出装置7から前述のようにして搬送されてきた種子は、前記作溝部12L・12Rに形成された播種溝に投下され、その上を前記覆土ディスク13L・13Rによって覆土され、その後を、この鎮圧ローラ14によって鎮圧される。
【0021】
前記作溝部12Lは、主に作溝ディスク36Lと補助ディスク37Lとから成り、該作溝ディスク36Lと補助ディスク37Lとで挟まれた空間に前記播種ノズル21Lが配置される。同様に、前記作溝部12Rも、作溝ディスク36Rと補助ディスク37Rとから成り、該作溝ディスク36Rと補助ディスク37Rとで挟まれた空間に前記播種ノズル21Rが配置されている。これにより、前記種子繰出装置7から繰り出された種子は、分岐シュート19にて分岐した後、各作溝部12L・12Rに搬送して左右一対の播種用の溝に投下することができる。
【0022】
前記補助ディスク37Lと補助ディスク37Rとで挟まれた空間には、前記搬送管26の下端の開口部が配置されており、前記肥料繰出装置9から繰り出された肥料を一対の補助ディスク37L・37Rの間に投下することができ、該補助ディスク37L・37Rが壁となって肥料が播種溝に落下することを防ぎ、種子の肥料障害を防止するようにしている。
【0023】
なお、これら作溝ディスク36L・36Rと補助ディスク37L・37Rは、支持アーム39の下端部に取り付けられ、該支持アーム39の上端部は、前記メインフレーム11の前端部に設けられた取付部11aに上下摺動可能に貫装されており、係止ボルト38によって、所望の高さでメインフレーム11に固定できるようにしている。これにより、作溝部12L・12Rによって形成される一対の播種溝の深さを、所望の深さに調整することができる。
【0024】
更に、前記支持アーム39の前面の上下中途部からは、左右のスクレーパ40L・40Rがそれぞれ後斜め下方に延出され、該スクレーパ40L・40Rの後端は、それぞれ前記作溝ディスク36L・36Rの外側面後部に付勢された状態で当接されており、このスクレーパ40L・40Rによって、作溝ディスク36L・36Rの外側面に付着した土等を剥離除去するようにしている。
【0025】
次に、このような施肥播種機2の供給制御機構1について、図1乃至図6により説明する。
図1、図2に示すように、該供給制御機構1は、前記肥料繰出装置9における繰出ロール22の繰出軸9aを回転駆動する繰出駆動部41、施肥播種機2の移動速度を検知する接地式移動速度検知装置42、及び該接地式移動速度検知装置42からの移動速度信号等に基づいて前記繰出ロール22の回転速度を施肥播種機2の移動速度に同調させる制御部43等から構成されている。
【0026】
図1に示すように、前記繰出駆動部41においては、最左端の施肥播種ユニット5から左方に延出されたツールバー31上に、駆動プレート44の前後中央下部が直交するようにして嵌合固定されると共に、該駆動プレート44の左側面には、前から順に、駆動軸45、中間軸46、従動軸47が、前後回動可能に左方に突設されている。
【0027】
このうちの駆動軸45上には、小径の駆動スプロケット45aが外嵌固定され、前記中間軸46上には、内側から順に、大径の第一中間スプロケット46aと小径の第二中間スプロケット46bが外嵌固定され、更に、前記従動軸47上には、前記第二中間スプロケット46bと略同径の従動スプロケット47aが外嵌固定されている。そして、このうちの駆動スプロケット45aと第一中間スプロケット46aとの間には第一チェーン50が巻回され、第二中間スプロケット46bと従動スプロケット47aとの間には第二チェーン51が巻回されている。
【0028】
前記駆動軸45には、駆動プレート44の右側面に固設された繰出モータ52の図示せぬモータ軸が挿嵌されると共に、前記従動軸47には、前記肥料繰出装置9を前述のように作動させるための前記繰出軸9aが挿嵌されている。これにより、前記繰出モータ52が駆動すると、モータ動力は、小径の前記駆動スプロケット45aから、第一チェーン50、大径の第一中間スプロケット46aを介して中間軸46に減速伝達された後、同じ中間軸46上の第二中間スプロケット46bから、第二チェーン51、従動スプロケット47aを介して従動軸47に入力され、該従動軸47と一体的に前記繰出軸9aが回転駆動される。すると、前記肥料繰出装置9の繰出ロール22が回転すると共に、前述したように、ギア29・ギア28を介して種子繰出装置7の繰出ロール15も回転し、施肥播種機2の種子繰出装置7と肥料繰出装置9とが、同時に作動される。
【0029】
なお、前記中間軸46には、駆動プレート44の右側面に固設された繰出モータ回転速度センサ53の図示せぬセンサ軸が挿嵌されており、前記繰出モータ52の回転速度を間接的に検知できるようにしている。
【0030】
また、図1、図3、図4に示すように、前記接地式移動速度検知装置42においては、前記繰出駆動部41よりも更に左方のツールバー31に取付フレーム55が連結されている。該取付フレーム55においては、側面断面視コ字状の係止部56が、前記ツールバー31に後方より嵌合されてボルト57によって締結固定され、該係止部56の後面に、側面断面視で後方に開いたコ字状の軸支持部58の前面が固設されている。そして、該軸支持部58には、上下方向に貫通する揺動軸部59が水平揺動自在に連結され、該揺動軸部59の下端に、正面視門型の吊設フレーム部60の上板60bが固設され、該吊設フレーム部60内を左右貫通するようにして、支持ピン61が割りピン62によって抜け止めされている。
【0031】
該支持ピン61には、接地輪アーム63の前端部が上下揺動自在に吊設され、該接地輪アーム63の二股状の後端部の右側面に、支持プレート64が固設され、該支持プレート64に、接地輪軸65が前後回動自在に軸支されている。そして、該接地輪軸65の左半部に、接地輪66がボルト67によって締結固設されると共に、該接地輪軸65の右端には、前記支持プレート64に取り付けられた接地輪回転速度センサ68の検出部が連動連結されており、該接地輪回転速度センサ68によって、前記接地輪66の回転速度を検知するようにしている。
【0032】
更に、前記接地輪アーム63の前端は、前記吊設フレーム部60の前端角部60aよりも前方に延出されており、接地輪アーム63が前記支持ピン61を中心にして後方に回転すると、該接地輪アーム63の前部上面63aが前記吊設フレーム部60の前端角部60aに当接し、接地輪アーム63が図3に示す位置70よりも後方には回転できないようにしている。これにより、接地輪アーム63の後端部に前記支持プレート64・接地輪軸65を介して軸支されている前記接地輪66も、下方への揺動が規制されることとなり、前記前端角部60aを、前記接地輪66の下方揺動限界規制を行う下限ストッパとして機能させている。
【0033】
前記吊設フレーム部60の左右の側板60c・60dのうち、長い方の右側板60dの下辺は前斜め上方に傾斜して形成され、その傾斜辺60eに沿うように接地センサ71が取り付けられている。該接地センサ71は、上辺が前記傾斜辺60eと平行にボルト75・75によって締結固定された矩形の支持板72と、該支持板72の下半部の左側面に固設されたボックス状のセンサ本体73と、該センサ本体73の上面に取り付けられた検知部74より構成される。
【0034】
該検知部74は、前記センサ本体73の上面に形成された段差部73bの段差部上面73cに前端が固設された板バネ74aと、該板バネ74aの後端より立設された支持アーム74bと、該支持アーム74bの上部に前後転動可能に支持された接触コロ74cより構成され、該接触コロ74cが上方に付勢されるように、前記板バネ74aは上方凹状に湾曲形成されている。
【0035】
更に、該板バネ74aの下面に対向して、検知板73aが前記センサ本体73の段差部下面73d上に配設されている。そして、前記接地輪アーム63の前部上面63aが前記吊設フレーム部60の前端角部60aに当接して接地輪66が下限に到達すると、図4(b)に示すように、前記接地輪アーム63によって、板バネ74aが接触コロ74cを介して押し下げられ、該板バネ74aの下面が前記検知板73aと接触するように、該検知板73aは配置されている。
【0036】
これにより、施肥播種機2が接地輪66を圃場の路面に接地させた状態(以下、「接地状態」とする)で移動する間は、該路面から接地輪66は上方に押し上げられるため、図4(a)に示すように、接地輪アーム63が位置69にあり、該接地輪アーム63の下面が接触コロ74cから離間した状態にあるか、あるいは、たとえ接地輪アーム63の下面が接触コロ74cと接触しても、前記板バネ74aが検知板73aと接触するほど接触コロ74cが押し下げられることはない。
【0037】
これに対し、作業開始前、作業再開前、走行車両旋回時等に施肥播種機2全体をリフトアップしたり、圃場の路面状況が悪いために接地輪66がバウンドしたりして、接地輪66が路面から大きく離間した状態(以下、「離間状態」とする)にあると、前述の如く、接地輪アーム63の下面によって、板バネ74aが検知板73aと接触するまで接触コロ74cが押し下げられる。つまり、接地輪66の接地状態と離間状態を、それぞれ、板バネ74a・検知板73a間の非接触状態と接触状態によって判断することができる。
【0038】
なお、前記接地センサ71を構成する支持板72、センサ本体73、及び検知部74は、接地輪アーム63の方に設置してもよく、その設置位置は特には限定されない。更に、接地センサ71の種類についても、本実施例のような接触式ではなく光学スイッチ等による非接触式のものであってもよく、接地輪66の接地の有無を検知可能なものであれば、その種類は特には限定されない。
【0039】
また、図1、図5に示すように、前記制御部43においては、走行車両の運転席等の近傍に、前記繰出駆動部41の繰出モータ52の制御を行う制御ボックス77が配置され、該制御ボックス77には、コントローラ76等が収容されている。
【0040】
該コントローラ76は、制御部43において繰出モータ52に駆動電力を供給するバッテリ78、前記繰出駆動部41における繰出モータ52・繰出モータ回転速度センサ53、及び前記接地式移動速度検知装置42における接地輪回転速度センサ68・接地センサ71に、それぞれリード線80a・80b・80c・80d・80eを介して接続されている。
【0041】
更に、コントローラ76には、メモリ83とタイマ84とが接続されており、このうちのメモリ83には、図7に示すように予め設定された基準供給量を得るための特性曲線100、後述する散布量調整ダイヤル79の各目盛りに対応する回転速度R、図6に示す初期制御域101における繰出モータ52の予備回転速度Rm・予備回転時間101c、及び本発明に関わる制御プログラム等が記憶されている。そして、前記タイマ84により、作業中の経過時間を計測できるようにしている。
【0042】
ここで、前記基準供給量とは、単位面積当たりに散布する種子・肥料の量を基にして算出される、単位移動長当たりの散布量であり、後述する自動同調制御中は、該基準供給量が得られるように、前記特性曲線100に沿って、繰出モータ52の回転速度Rが施肥播種機2の移動速度Vに応じて自動的に制御される。
【0043】
更に、前記制御ボックス77には、上面略中央に前記散布量調整ダイヤル79が配置され、該散布量調整ダイヤル79の左方には、後述するような自動変速モードと手動変速モードを切り替える変速モードスイッチ81が配置され、該変速モードスイッチ81と前記散布量調整ダイヤル79とは、いずれも前記コントローラ76に接続されている。該散布量調整ダイヤル79の右方には、前記バッテリ78からの駆動電力による供給制御機構1の動作の入切を行う電源スイッチ82が配置され、該電源スイッチ82も、前記コントローラ76に接続されている。
【0044】
次に、以上のような構成から成る供給制御機構1において、前記繰出モータ52の供給制御の構成と手順について、図5乃至図10により説明する。
図5乃至図7に示すように、該供給制御は、繰出モータ52の駆動を開始する初期制御域101における制御と、施肥播種機2の移動速度Vに繰出モータ52の回転速度Rを自動的に同調させる自動同調制御域102における制御とにより構成される。
【0045】
このうち初期制御域101は、前記接地輪66が接地してから、メモリ83内の制御プログラムがコントローラ76に読み込まれるまでの読み込み時間101a(時刻T0〜時刻T1)と、該制御プログラムに従い前記繰出モータ52が駆動を開始してから所定の回転速度Rm(以下、「予備回転速度」とする)に加速されるまでのモータ立ち上がり時間101b(時刻T1〜時刻T2)と、該予備回転速度Rmに前記繰出モータ52の回転が設定維持される予備回転時間101c(時刻T2〜時刻T3)とから成る。
【0046】
そして、該予備回転時間101cの間に、前記接地輪回転速度センサ68からの移動速度信号を前記メモリ83に書き込んで初期制御を完了する。このように速度検知時間が予備回転時間101c内に含まれるように設定し、速度検知中に無作業区間が発生するのを抑制できるようにしている。
【0047】
更に、予備回転速度Rmに、前記自動同調制御域102における回転速度Rの最大値を採用することにより、繰出モータ52の立ち上がりが早くなって前記モータ立ち上がり時間101bを短縮すると共に、繰出モータ52による作業初期の施肥播種量を多くできるようにしている。
【0048】
なお、前記接地輪66が所定角度回転すると、接地輪回転速度センサ68が1回カウントし、移動速度信号が送信されるようにしており、この単位時間当たりのカウント数と、回転角度から求めた1カウント当たりの円弧長とを積算することで、移動速度Vが算出できる。
【0049】
前記自動同調制御域102は、前記繰出モータ52の回転速度Rが、前記予備回転速度Rmから、制御目標とする回転速度R1まで減速される減速時間102a(時刻T3〜時刻T4)と、前記特性曲線100に沿って、回転速度Rが施肥播種機2の移動速度Vに応じて自動的に制御される自動同調制御時間102b(時刻T4〜)とから成る。
【0050】
そして、該自動同調制御時間102bの間は、繰出モータ52の回転速度Rが、施肥播種機2の移動速度Vに応じて比例制御される。例えば、繰出モータ52は、移動速度V1では、回転速度R1となるように制御され、移動速度V1より低速の移動速度V2では、回転速度R1よりも低速の回転速度R2に制御され、前記移動速度V1より高速の移動速度V3では、前記回転速度R1よりも高速の回転速度R3となるように制御される。
【0051】
詳しくは、例えば、現在の移動速度がV1で回転速度がR0の場合、該回転速度R0と前記回転速度R1との差分を基にして、必要な回転速度制御値を算出し、該回転速度制御値によって、前記回転速度R0が回転速度R1となるように速度制御されるのである。
【0052】
また、以上のような構成の供給制御において、その制御手順を図5乃至図10により説明する。
図8に示すように、前記散布量調整ダイヤル79を所定の目盛りに調整した後、電源スイッチ82を入れると(ステップS1)、変速モードスイッチ81からの変速モード信号、繰出モータ回転速度センサ53からの繰出モータ回転速度信号、及び接地センサ71からの接地信号が、前記コントローラ76に読み込まれる(ステップS2)。
【0053】
そして、このうちの変速モード信号に基づいて、自動変速モードか否かが判断される(ステップS3)。変速モードスイッチ81が「手動」側に傾倒されて手動変速モードに設定されている場合は(ステップS3:NO)、散布量調整ダイヤル79で選択した目盛り、本実施例では、モータ駆動停止状態の0から最高速の10までの11段より選択した目盛りに対応するダイヤル設定信号が読み込まれ(ステップS11)、該ダイヤル設定信号と、前記メモリ83内に記憶された目盛り・回転速度R間の対応関係とから得られた駆動信号が前記繰出モータ52に送信され、手動で所定の回転速度Rに設定される(ステップS8)。
【0054】
該手動変速モードでは、前記接地輪66が接地状態・離間状態のいずれの状態であっても、前記繰出モータ52を停止または変速させることができ、施肥播種機2を停止した上でメンテナンスする場合や、圃場の路面状況が悪くて接地輪66による移動速度の検知精度が低い場合等に、種子や肥料を適した供給量となるように、繰出モータ52を自在に停止または変速できるようにしている。
【0055】
変速モードスイッチ81が「自動」側に傾倒されて自動変速モードに設定されている場合は(ステップS3:YES)、前記接地信号に基づいて、接地輪66が接地状態にあるか否かが判断される(ステップS4)。接地状態ではなく離間状態の場合は(ステップS4:NO)、繰出モータ52には駆動信号が送信されずに駆動が停止する(ステップS9)。
【0056】
接地状態の場合は(ステップS4:YES)、前記初期制御域101における初期制御処理が行われる(ステップS5)。該初期制御処理では、図9に示すように、前記読み込み時間101aに、前記メモリ83から制御プログラム・予備回転速度Rm・予備回転時間101cが読み込まれた後(ステップS51)、前記モータ立ち上がり時間101bにおいて、制御プログラムに従って繰出モータ52が立ち上がる(ステップS52)。
【0057】
続く前記予備回転時間101cには、繰出モータ52は、一定の予備回転速度Rmにて予備回転する(ステップS53)と共に、前記接地輪回転速度センサ68からの移動速度信号がメモリ83に書き込まれる(ステップS54)。これにより、作業開始時における無作業区間の大幅な縮小を図ることができる。なお、前記予備回転時間101cの管理は、作業中の経過時間を計測する前記タイマ84からの時間信号によって行われる。
【0058】
そして、このような初期制御処理の後には、前記移動速度信号がメモリ83からコントローラ76に読み込まれ、接地輪66が回転しているか否かが判断される(ステップS6)。接地輪66が回転していない場合は(ステップS6:NO)、繰出モータ52には駆動信号が送信されずに駆動が停止する(ステップS9)。
【0059】
接地輪66が回転している場合は(ステップS6:YES)、前記自動同調制御域102における自動同調制御処理が行われる(ステップS7)。該自動同調制御処理では、図10に示すように、既にメモリ83から読み込まれている移動速度信号に基づいて、前述の如く、施肥播種機2の移動速度Vを算出し(ステップS71)、続いて、該移動速度Vと、前記メモリ83から読み込まれた特性曲線100とから、目標とする回転速度Rを求める(ステップS72)。
【0060】
ただし、散布量調整ダイヤル79で選択した目盛りが0%以外の場合、目盛りに対応する補正率の分だけ基準供給量を増減させるようにしている。本実施例では、図5に示すように―30%から+30%までの60%の範囲内で0%を除く補正率に設定することができ、該補正率を前記基準供給量に乗じた補正量を基準供給量に加減して補正供給量を算出し、該補正供給量と前記移動速度Vとから、目標とする回転速度Rを求めるのである。例えば、図7に示すように、補正率+30%・−30%では、それぞれ特性曲線100a・100bに基づき、回転速度Rを求める。
【0061】
この目標とする回転速度Rと、前記繰出モータ回転速度信号とより算出した現在の回転速度Rとの差分、例えば、前述したように、図7に示す前記回転速度R0と回転速度R1との差分より、回転速度制御値を算出し(ステップS73)、該回転速度制御値に基づき、特性曲線100上の回転速度Rに設定される(ステップS8)。
【0062】
以上のような手動変速モード、自動変速モードのいずれにおいても、所定の回転速度Rで供給制御した後、再び、各種信号がコントローラ76に読み込まれて(ステップS2)、ステップS3以下のプロセスが繰り返される。
【0063】
更に、このような供給制御において、圃場内を作業走行中に点検等のために走行を停止させたり、圃場端で旋回中にロータリ耕耘装置3を上昇させると、前述の如く、接地輪66が回転しなかったり(ステップS6:NO)、接地輪66が離間状態となって(ステップS4:NO)、繰出モータ52の駆動が停止する(ステップS9)。そこで、繰出モータ52の簡略な再始動操作(ステップS10:YES)だけで、作業を迅速に再開できるようにしている。
【0064】
該再始動操作としては、例えば、電源スイッチ82の「入→切→入」操作、図示せぬリセットスイッチ等の「入」操作、ロータリ耕耘装置3の「上昇・下降」により接地輪66を「離間状態→接地状態」とし、接地センサ71の「切→入」を行う操作があるが、作業再開のために作業者が迅速かつ容易に操作できるものであれば良く、その操作内容は特に限定されるものではない。
【0065】
このようにして作業を再開した後も、再び、各種信号がコントローラ76に読み込まれて(ステップS2)、ステップS3以下のプロセスが繰り返されるようにしており、これにより、作業再開時にも無作業区間の大幅な縮小を図ることができる。
【0066】
すなわち、走行車両によって移動されながら圃場に作業を施す作業機である施肥播種機2の作業装置である種子繰出装置7と肥料繰出装置9を作動するための電動モータである繰出モータ52と、圃場に接地輪66を接地させて前記施肥播種機2の移動速度を検知するための接地式移動速度検知装置42と、該接地式移動速度検知装置42からの移動速度信号に基づいて前記繰出モータ52に駆動信号を送信するためのコントローラ76とを備え、該コントローラ76により、予め設定された基準作業量である基準供給量となるように、前記繰出モータ52の回転速度Rを施肥播種機2の移動速度Vと自動同調制御可能な施肥播種機2において、作業開始時に、前記接地式移動速度検知装置42により施肥播種機2の移動速度Vを検知するのに必要な速度検知時間の間、自動同調制御中の回転速度よりも大きな一定の予備回転速度Rmにより、前記繰出モータ52を回転させて予備回転を行う、作業制御機構である供給制御機構1を設けたので、接地検知式であるために長い速度検知時間を要する場合であっても、移動速度の検知と予備回転とを並行して行い、無作業区間を大幅に縮小することができる。更に、前記予備回転は自動同調制御による回転速度のいずれよりも大きな一定値に設定されるため、作業開始時には、繰出モータ52の立ち上がりが早くなって、無作業区間が更に縮小すると共に、繰出モータ52による初期の供給量が多くなって、無作業区間における肥料や種子等の不足を十分に緩和することができる。
【0067】
更に、前記予備回転は、接地輪66の接地時に行うので、作業開始時に生じる無作業区間を縮小することができ、主に圃場の縁部における肥料や種子等の不足を緩和できる。
【0068】
加えて、前記予備回転は、作業制御機構である供給制御機構1の再始動の時にも行うので、作業再開時に生じる無作業区間を縮小することができ、主に圃場の内側における肥料や種子等の不足を緩和できる。
【0069】
更に、前記再始動は、前記接地輪66の接地の有無を検知する接地センサ71入切のための接地輪66の昇降操作等の簡易的な操作により行うので、迅速な作業再開が可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、走行車両によって移動されながら圃場に作業を施す作業機の作業装置を作動するための電動モータと、圃場に接地輪を接地させて前記作業機の移動速度を検知するための接地式移動速度検知装置と、該接地式移動速度検知装置からの移動速度信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するためのコントローラとを備え、該コントローラにより、予め設定された基準作業量となるように、前記電動モータの回転速度を作業機の移動速度と自動同調制御可能な、全ての作業機に適用することができる。
【符号の説明】
【0071】
1 供給制御機構(作業制御機構)
2 施肥播種機(作業機)
7 種子繰出装置(作業装置)
9 肥料繰出装置(作業装置)
42 接地式移動速度検知装置
52 繰出モータ(電動モータ)
66 接地輪
76 コントローラ
82 電源スイッチ
R 回転速度
Rm 予備回転速度
V 移動速度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両によって移動されながら圃場に作業を施す作業機の作業装置を作動するための電動モータと、圃場に接地輪を接地させて前記作業機の移動速度を検知するための接地式移動速度検知装置と、該接地式移動速度検知装置からの移動速度信号に基づいて前記電動モータに駆動信号を送信するためのコントローラとを備え、該コントローラにより、予め設定された基準作業量となるように、前記電動モータの回転速度を作業機の移動速度と自動同調制御可能な作業機において、作業開始時に、前記接地式移動速度検知装置により作業機の移動速度を検知するのに必要な速度検知時間の間、自動同調制御中の回転速度よりも大きな一定の予備回転速度により、前記電動モータを回転させて予備回転を行う作業制御機構を設けたことを特徴とする作業機。
【請求項2】
前記予備回転は、接地輪の接地時に行うことを特徴とする請求項1に記載の作業機。
【請求項3】
前記予備回転は、作業制御機構の再始動の時にも行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−7(P2013−7A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131276(P2011−131276)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(597041747)アグリテクノ矢崎株式会社 (56)
【Fターム(参考)】