説明

作業用手袋

【課題】着脱性を高めつつ作業中のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる作業用手袋を提供する。
【解決手段】作業用手袋1は、指先から手のくるぶし付近までの長さを有し、5本の指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分を除く部位にゴム被膜2を被覆する。更に、手首部18に、そのくるぶし付近の端縁より小指部15側に向かって切り欠いたスリット19を設け、このスリット19を挟んで対向する手首部18の手甲部16側に、面ファスナー3の雄材31を取り付ける一方、手首部18の手掌部17側のスリット19に一端を取り付けたバンド33の裏面に面ファスナー3の雌材32を取り付ける。そして、作業用手袋1を手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部18の手掌部17側に引き付けてスリット19を閉ざすように雄材31に係合させて、手のくるぶし付近での締め付け調節をする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、指先から手のくるぶし付近までの長さを有するゴムや皮革等により成形された作業用手袋に関し、特に、着脱性を高めつつ作業中のズレなどを防止して装着性を高め得る対策に係る。
【背景技術】
【0002】
一般に、ゴムや皮革等よりなる作業用手袋にあっては、指先から手のくるぶし付近までの形状に則して成形されているため、作業するに当たって手に着けたり外したりする着脱時に作業用手袋の内面に対し作用する摩擦により手指等がへばり付いて容易に着脱することができず、着脱性が非常に悪いものとなる。
【0003】
そこで、ゴム材よりなる作業用手袋を、その手の甲に対応する部分を切り欠いて成形することで、作業用手袋の手の甲に対応する部分での摩擦を無くして着脱性を高めるようにしたものが従来より知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−291584号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上記従来のものでは、手の甲に対応する部分が切り欠かれていると、当該部分での摩擦が全く期待できず、作業中に手のくるぶし付近で端縁が周方向に広がるなどして、作業用手袋がズレたり、手から不慮に外れたりするおそれがある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、着脱性を高めつつ作業中のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる作業用手袋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明が講じた解決手段は、指先から手のくるぶし付近までの長さを有し、少なくとも手の平側に対応する部分がゴム材により被覆された作業用手袋を前提とし、上記手のくるぶし付近に対応する部分に、そのくるぶし付近の端縁より指側に向かって切り欠いたスリットを設けている。そして、上記スリットを挟んで対向する一方の対応部位に、互いに係脱自在に係合する面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか一方を取り付ける一方、他方の対応部位に、上記面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか他方を取り付けて、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされていることを特徴としている。
【0008】
この特定事項により、少なくとも手の平側に対応する部分がゴム材により被覆された作業用手袋は、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされるので、作業用手袋の着脱時に面ファスナーの雄材と雌材とを非係合な状態にしておけば、スリットが広げられて、手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分での摩擦が緩和され、作業用手袋の着脱性を高めることが可能となる。
そして、作業用手袋を手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節されると、手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分とが共に手に密接する上、作業中に手のくるぶし付近で端縁が周方向に広がることがなく、手に装着した際の摩擦が増大する。これにより、作業中に作業用手袋がズレたり、手から不慮に外れたりすることがなく、作業中の作業用手袋の装着性を高めることが可能となる。
【0009】
また、上記目的を達成するため、本発明が講じたその他の解決手段は、指先から手のくるぶし付近までの長さを有し、少なくとも手の平側に対応する部分が皮革材により成形された作業用手袋を前提とし、上記手のくるぶし付近に対応する部分に、そのくるぶし付近の端縁より指先側に向かって切り欠いたスリットを設けている。そして、上記スリットを挟んで対向する一方の対応部位に、互いに係脱自在に係合する面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか一方を取り付ける一方、他方の対応部位に、上記面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか他方を取り付けて、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされていることを特徴としている。
【0010】
この特定事項により、少なくとも手の平側に対応する部分が皮革材により成形された作業用手袋は、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされるので、作業用手袋の着脱時に面ファスナーの雄材と雌材とを非係合な状態にしておけば、スリットが広げられて、手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分での摩擦が緩和され、作業用手袋の着脱性を高めることが可能となる。
そして、作業用手袋を手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節されると、手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分とが共に手に密接する上、作業中に手のくるぶし付近で端縁が周方向に広がることがなく、手に装着した際の摩擦が増大する。これにより、作業中に作業用手袋がズレたり、手から不慮に外れたりすることがなく、作業中の作業用手袋の装着性を高めることが可能となる。
【0011】
また、手の甲側に対応する部分が、伸縮性を有する編地により構成されていることが好ましい。
【0012】
この場合には、手の甲側に対応する部分が伸縮性を有する編地により構成されているので、当該部分での摩擦の緩和が犠牲になることがなく、作業用手袋の着脱性を十分に高めることができる。
しかも、手の甲が編地により保護され、作業中の手の甲を円滑に守ることができる。
【発明の効果】
【0013】
以上、要するに、少なくとも手の平側に対応する部分がゴム材又は皮革材よりなる作業用手袋を手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節を行うことで、作業用手袋の着脱時に面ファスナーの雄材と雌材との非係合な状態で広がるスリットによって手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分での摩擦を緩和させている。一方、作業用手袋を手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合状態で手のくるぶし付近での締め付け調節によって手の甲側に対応する部分と手の平側に対応する部分とを共に手に密接させる上、作業中に手のくるぶし付近での端縁の周方向への広がりをなくし、これによって手に装着した際の摩擦を増大させている。この結果、作業用手袋の着脱性を高めることができるとともに、作業中の作業用手袋のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る一部ゴム製の作業用手袋を手のひら側から見た外観図である。
【図2】図1の作業用手袋を手の甲側から見た面ファスナーの非係合状態での外観図である。
【図3】図2の面ファスナーの係合状態での作業用手袋の外観図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態に係る一部皮革製の作業用手袋を手のひら側から見た外観図である。
【図5】図4の作業用手袋を手の甲側から見た面ファスナーの非係合状態での外観図である。
【図6】図5の面ファスナーの係合状態での作業用手袋の外観図である。
【図7】本発明の第3の実施の形態に係る全て皮革製の作業用手袋を手のひら側から見た外観図である。
【図8】図7の作業用手袋を手の甲側から見た面ファスナーの非係合状態での外観図である。
【図9】図8の面ファスナーの係合状態での作業用手袋の外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明し、本発明の理解に供する。尚、以下の実施の形態は、本発明を具体化した一例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
まず、図1〜図3を用いて、本発明の実施の形態に係る作業用手袋1について説明する。
【0016】
図1〜図3に示すように、上記作業用手袋1は、右手用のものであって、その全長として各指の指先から手のくるぶし付近までの長さとしている。実際には、全長約20cm〜24cm程度としている。なお、図1〜図3では右手用の作業用手袋1についてのみ示すが、左手用の作業用手袋(図示せず)も同じ構成となるので、その説明は省略する。
【0017】
上記作業用手袋1は、繊維性の原手10と、この原手10に被覆されるゴム材としてのゴム被膜2とからなる。また、上記作業用手袋1は、5本の指部11〜15と、手の甲に対応する手甲部16と、手の平に対応する手掌部17と、手首部18とを備え、人間の手に近い形に形成されている。
【0018】
上記原手10は、綿糸を地編糸にして13〜15ゲージのファインゲージにより、手首部18はゴム編みとし、手首部18以外は平編みに編成される。なお、地編糸としては、綿糸に限定されるものではなく、麻糸、毛糸、絹糸、レーヨン糸、ウーリーナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタン糸、これらの混紡糸(例えばTC混紡糸等)などが適当される。また、ファインゲージは13〜15ゲージとしたが、それ以上であってもよいのはもちろんである。
【0019】
上記ゴム被膜2は、原手10の手掌部17側において被覆されている。つまり、作業用手袋1は、5本の指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分を除く部位にゴム被膜2が被覆されている。この場合、手首部18は、その全周に亘ってゴム被膜2が被覆されていない。
【0020】
ここで、原手10にゴム被膜2を被覆する手法について簡単に説明する。
まず、半加硫を行うための手型(図示せず)に原手10を被せ、浸透防止剤(例えばメタノール溶液)中に全体を浸漬した後に引き上げ、ゴムラテックス配合物の原料液中に原手10をその5本の指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分が沈まないようにして5秒間浸漬し、上記原料液の被膜ができるだけ薄くなるようにして引き上げ、原手10に上記原料液を背抜き状態で付着させる。この場合、原手10に軽くメタノールを付着させることで、微弱な凝固作用によって原料液が原手10になじみ、境界線をきれいにまた均一に付着させる作用をさせている。
【0021】
その後、原手10に付着した上記原料液を約70°Cの温度で20分程度加熱して一次加硫を行う。次いで、約90〜100°Cの温度で50〜60分程度本加硫を行う。この本加硫により、原手10に付着するゴム被膜2の架橋による編目構造(図1〜図3に一部分のみ示す)が十分に形成され、原手10は手型の形に沿って強制的に整形される。この本加硫を終えることで、5本の指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分を除く部位がゴム被膜2で被覆された作業用手袋1を得る。
【0022】
そして、上記作業用手袋1の手のくるぶし付近に対応する部分、つまり手首部18には、そのくるぶし付近の端縁より小指部15側に向かって切り欠いたスリット19が設けられている。また、上記スリット19を挟んで対向する手首部18の手甲部16側および手掌部17側のうちの一方の対応部位となる手首部18の手甲部16側には、互いに係脱自在に係合する面ファスナー3の雄材31及び雌材32のうちの雄材31が取り付けられている。この雄材31は、カギ状またはキノコ状のフック部からなり、スリット19から一定の幅(例えば3cm程度)を有して手首部18の手甲部16側の端縁に沿って周方向に設けられている。
【0023】
一方、上記スリット19を挟んで対向する手首部18の手甲部16側および手掌部17側のうちの他方の対応部位となる手首部18の手掌部17側には、面ファスナー3の雌材32が取り付けられている。この雌材32は、ループ状またはアーチ状の係合素子からなり、手首部18の手掌部17側のスリット19に一端が取り付けられた一定の幅(例えば3cm程度)のバンド33の裏面に設けられている。そして、上記作業用手袋1を手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部18の手掌部17側に引き付けてスリット19を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされる。
【0024】
また、上記作業用手袋1の手甲部16は、ゴム被膜2で被覆されていないために伸縮性を有する原手10の編地により構成されてなる。この手甲部16には、手の中手指節関節を保護するためのナックルガード21が設けられている。ナックルガード21は、手甲部16の中手指節関節に対応する部位でゴム材を非連続状態で点在させてなるものである。
【0025】
したがって、本実施の形態では、5本の指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分を除く部位がゴム被膜2により被覆された作業用手袋1は、手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部18の手掌部17側に引き付けてスリット19を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされるので、作業用手袋1の着脱時に面ファスナー3の雄材31と雌材32とを非係合な状態にしておけば、スリット19が広げられて、手甲部16側および手掌部17側での摩擦が緩和され、作業用手袋1の着脱性が高められる。
そして、作業用手袋1を手に装着した際に面ファスナー3の雄材31と雌材32との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節されると、手甲部16と手掌部17とが共に手に密接する上、作業中に手のくるぶし付近で端縁がスリット19により周方向に広がることがなく、手に装着した際の摩擦が増大する。これにより、作業中に作業用手袋1がズレたり、手から不慮に外れたりすることがなく、作業中の作業用手袋1の装着性が高められる。
この結果、作業用手袋1の着脱性を高めることができるとともに、作業中の作業用手袋1のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる。
【0026】
しかも、作業用手袋1の手甲部16が、伸縮性を有する原手10の編地により構成されているので、作業用手袋1の着脱時に手甲部16での摩擦の緩和が犠牲になることがなく、作業用手袋1の着脱性を十分に高めることができる。
更に、手の甲が原手10の編地により保護され、作業中の手の甲を円滑に守ることができる。
【0027】
次に、本発明の第2の実施の形態を図4〜図6に基づいて説明する。
この実施の形態では、作業用手袋を皮革材と編地とで構成している。なお、皮革材および編地を除くその他の構成は、上記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0028】
すなわち、本実施の形態では、図4〜図6に示すように、4は作業用手袋であって、この作業用手袋4は、右手用のものであり、その全長として各指の指先から手のくるぶし付近までの長さとしている。実際には、全長約18cm〜22cm程度としている。なお、図4〜図6では右手用の作業用手袋4についてのみ示すが、左手用の作業用手袋(図示せず)も同じ構成となるので、その説明は省略する。
【0029】
上記作業用手袋4は、5本の指部41〜45と、手の甲に対応する手甲部46と、手の平に対応する手掌部47と、手首部48とを備え、人間の手に近い形に形成されている。
【0030】
そして、上記作業用手袋4は、手掌部47側が皮革材5により成形されている。つまり、作業用手袋4は、5本の指部41〜45の近位指節間関節の背側から手甲部46を経て手首部48に至る部分を除く部位が皮革材5によって成形されている。
【0031】
上記作業用手袋4の各指部41〜45の近位指節間関節の背側から手甲部46を経て手首部48に至る部分は、綿糸を地編糸にして13〜15ゲージのファインゲージにより、手首部48はゴム編みとし、手首部48以外は平編みに編成された編地6により構成されている。この場合、上記作業用手袋4の手甲部46全域も、手首部48と同様に伸縮性を有している。また、皮革材5と編地6とは、その境界部分において縫製により接合されている。なお、地編糸としては、綿糸に限定されるものではなく、麻糸、毛糸、絹糸、レーヨン糸、ウーリーナイロン糸、ポリエステル糸、ポリウレタン糸、これらの混紡糸(例えばTC混紡糸等)などが適当される。また、ファインゲージは13〜15ゲージとしたが、それ以上であってもよいのはもちろんである。
【0032】
そして、上記作業用手袋4の手のくるぶし付近に対応する部分、つまり手首部48には、そのくるぶし付近の端縁より小指部45側に向かって切り欠いたスリット49が設けられている。また、上記スリット49を挟んで対向する手首部48の手甲部46側および手掌部47側のうちの一方の対応部位となる手首部48の手甲部46側には、面ファスナー3の雄材31が取り付けられている。
【0033】
一方、上記スリット49を挟んで対向する手首部48の手甲部46側および手掌部47側のうちの他方の対応部位となる手首部48の手掌部47側には、面ファスナー3の雌材32が取り付けられている。この雌材32は、手首部48の手掌部47側のスリット49に一端が取り付けられたバンド33の裏面に設けられている。そして、上記作業用手袋4を手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部48の手掌部47側に引き付けてスリット49を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされる。
【0034】
したがって、本実施の形態では、5本の指部41〜45の近位指節間関節の背側から手甲部46を経て手首部48に至る部分を除く部位が皮革材5により成形された作業用手袋4は、手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部48の手掌部47側に引き付けてスリット49を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされるので、作業用手袋4の着脱時に面ファスナー3の雄材31と雌材32とを非係合な状態にしておけば、スリット49が広げられて、手甲部46側および手掌部47側での摩擦が緩和され、作業用手袋4の着脱性が高められる。
そして、作業用手袋4を手に装着した際に面ファスナー3の雄材31と雌材32との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節されると、手甲部46と手掌部47とが共に手に密接する上、作業中に手のくるぶし付近で端縁がスリット49により周方向に広がることがなく、手に装着した際の摩擦が増大する。これにより、作業中に作業用手袋4がズレたり、手から不慮に外れたりすることがなく、作業中の作業用手袋4の装着性が高められる。
この結果、作業用手袋4の着脱性を高めることができるとともに、作業中の作業用手袋4のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる。
【0035】
しかも、作業用手袋4の手甲部46が、伸縮性を有する編地6により構成されているので、作業用手袋4の着脱時に手甲部46での摩擦の緩和が犠牲になることがなく、作業用手袋4の着脱性を十分に高めることができる。
更に、手の甲が編地6により保護され、作業中の手の甲を円滑に守ることができる。
【0036】
次に、本発明の第3の実施の形態を図7〜図9に基づいて説明する。
この実施の形態では、作業用手袋を皮革材のみで構成している。なお、皮革材を除くその他の構成は、上記第1の実施の形態と同じであり、同一部分については同じ符号を付してその詳細な説明は省略する。
【0037】
すなわち、本実施の形態では、図7〜図9に示すように、7は作業用手袋であって、この作業用手袋7は、右手用のものであり、その全長として各指の指先から手のくるぶし付近までの長さとしている。実際には、全長約20cm〜24cm程度としている。なお、図7〜図9では右手用の作業用手袋7についてのみ示すが、左手用の作業用手袋(図示せず)も同じ構成となるので、その説明は省略する。
【0038】
上記作業用手袋7は、5本の指部71〜75と、手の甲に対応する手甲部76と、手の平に対応する手掌部77と、手首部78とを備え、人間の手に近い形に形成されている。この作業用手袋7は、5本の指部71〜75、手甲部76、手掌部77、および手首部78の全てが皮革材8により成形されている。
【0039】
そして、上記作業用手袋7の手のくるぶし付近に対応する部分、つまり手首部78には、そのくるぶし付近の端縁より小指部75側に向かって切り欠いたスリット79が設けられている。また、上記スリット79を挟んで対向する手首部78の手甲部76側および手掌部77側のうちの一方の対応部位となる手首部78の手甲部76側には、面ファスナー3の雄材31が取り付けられている。
【0040】
一方、上記スリット79を挟んで対向する手首部78の手甲部76側および手掌部77側のうちの他方の対応部位となる手首部78の手掌部77側には、面ファスナー3の雌材32が取り付けられている。この雌材32は、手首部78の手掌部77側のスリット79に一端が取り付けられたバンド33の裏面に設けられている。そして、上記作業用手袋7を手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部78の手掌部77側に引き付けてスリット79を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされる。
【0041】
したがって、本実施の形態では、5本の指部71〜75、手甲部76、手掌部77、および手首部78の全てが皮革材8により成形された作業用手袋7は、手に装着した際にバンド33の裏面の雌材32を手首部78の手掌部77側に引き付けてスリット79を閉ざすように雄材31に係合させることによって、手のくるぶし付近での締め付け調節がなされるので、作業用手袋7の着脱時に面ファスナー3の雄材31と雌材32とを非係合な状態にしておけば、スリット79が広げられて、手甲部76側および手掌部77側での摩擦が緩和され、作業用手袋7の着脱性が高められる。
そして、作業用手袋7を手に装着した際に面ファスナー3の雄材31と雌材32との係合により手のくるぶし付近で締め付け調節されると、手甲部76と手掌部77とが共に手に密接する上、作業中に手のくるぶし付近で端縁がスリット79により周方向に広がることがなく、手に装着した際の摩擦が増大する。これにより、作業中に作業用手袋7がズレたり、手から不慮に外れたりすることがなく、作業中の作業用手袋7の装着性が高められる。
この結果、作業用手袋7の着脱性を高めることができるとともに、作業中の作業用手袋7のズレや不慮の外れなどを防止して装着性を高めることができる。
【0042】
本発明は、上記各実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、上記各実施の形態では、スリット19,49,79を挟んで対向する手首部18,48,78の手甲部16,46,76側に面ファスナー3の雄材31を取り付ける一方、手首部18,48,78の手掌部17,47,77側のスリット19,49,79に一端を取り付けたバンド33の裏面に面ファスナー3の雌材32を取り付けたが、スリットを挟んで対向する手首部の手甲部側および手掌部側のうちの一方の対応部位となる手首部の手掌部側に面ファスナーの雄材が取り付けられる一方、スリットを挟んで対向する手首部の手甲部側および手掌部側のうちの他方の対応部位となる手首部の手甲部側のスリットに一端を取り付けたバンドの裏面に面ファスナーの雌材が取り付けられていてもよい。この場合、手首部の手掌部側のスリットに一端が取り付けられたバンドは有ってもなくてもよく、スリットを挟んで対向する手首部の手甲部側に面ファスナーの雌材が取り付けられていてもよい。
【0043】
また、上記各実施の形態では、くるぶし付近の端縁より小指部15,45,75側に向かって切り欠いたスリット19,49,79を手首部18,48,78に設けたが、スリットは手首部の手掌部側および手甲部側のいずれの部位に設けられていてもよい。
【0044】
また、上記第1の実施の形態では、作業用手袋1の各指部11〜15の近位指節間関節の背側から手甲部16を経て手首部18に至る部分を除く部位にゴム被膜2を被覆したが、原手の全域、つまり5本の指部、手甲部、手掌部、および手首部の全てがゴム被膜により被覆されていてもよい。
【符号の説明】
【0045】
1 作業用手袋
16 手甲部(手の甲側に対応する部分)
17 手掌部(手の平側に対応する部分)
18 手首部(手のくるぶし付近に対応する部分)
19 スリット
2 ゴム被膜(ゴム材)
3 面ファスナー
31 雄材
32 雌材
4 作業用手袋
46 手甲部(手の甲側に対応する部分)
47 手掌部(手の平側に対応する部分)
48 手首部(手のくるぶし付近に対応する部分)
49 スリット
5 皮革材
6 編地
7 作業用手袋
76 手甲部(手の甲側に対応する部分)
77 手掌部(手の平側に対応する部分)
78 手首部(手のくるぶし付近に対応する部分)
79 スリット
8 皮革材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
指先から手のくるぶし付近までの長さを有し、少なくとも手の平側に対応する部分がゴム材により被覆された作業用手袋であって、
上記手のくるぶし付近に対応する部分には、そのくるぶし付近の端縁より指先側に向かって切り欠いたスリットが設けられ、
上記スリットを挟んで対向する一方の対応部位には、互いに係脱自在に係合する面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか一方が取り付けられている一方、他方の対応部位には、上記面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか他方が取り付けられていて、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされていることを特徴とする作業用手袋。
【請求項2】
指先から手のくるぶし付近までの長さを有し、少なくとも手の甲に対応する部分を除く部位が皮革材により成形された作業用手袋であって、
上記手のくるぶし付近に対応する部分には、そのくるぶし付近の端縁より指先側に向かって切り欠いたスリットが設けられ、
上記スリットを挟んで対向する一方の対応部位には、互いに係脱自在に係合する面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか一方が取り付けられている一方、他方の対応部位には、上記面ファスナーの雄材及び雌材のいずれか他方が取り付けられていて、手に装着した際に面ファスナーの雄材と雌材との係合により手のくるぶし付近での締め付け調節がなされていることを特徴とする作業用手袋。
【請求項3】
手の甲側に対応する部分が、伸縮性を有する編地により構成されている請求項1又は請求項2に記載の作業用手袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−52261(P2012−52261A)
【公開日】平成24年3月15日(2012.3.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−195579(P2010−195579)
【出願日】平成22年9月1日(2010.9.1)
【出願人】(505280691)ミタニコーポレーション株式会社 (3)
【Fターム(参考)】