説明

作業用補助具

【課題】片足の前傾姿勢を安定できる作業用補助具を提供する。
【解決手段】補助具10は、中空の変形台1と空洞を有する擬似長靴体2を備える。変形台1の内部に空気を注入すると、変形台1を軸方向に膨張できる。変形台1の内部から空気を排出すると、変形台1を軸方向に収縮できる。擬似長靴体2は、変形台1の上部に結合され、周囲の一部が開口されている。擬似長靴体2には、足先から脛の一部に至る足の部位が装着できる。擬似長靴体2に片足を置いて、前方に力を加えると、ベローズ11が湾曲して、片足(脛)を前傾することができる。補助具10は、個人差に起因する腰部の負担が軽減でき、片足の前傾姿勢を安定できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業用補助具に関する。特に、キッチンなどで立った姿勢で調理(作業)するときに、腰の負担を軽減する作業用補助具の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キッチンなどで立ち作業を長時間する場合には、片足を置ける高さ15cm位の台(作業用補助具)を用意して、片足をこの台に置くようにすると、腰の負担を軽減できることが開示されている(例えば、非特許文献1参照)。そして、体重を支える片足に疲労を感じたときは、片足を替えることにより、持続的な立位作業に起因する腰痛を予防することができる。
【0003】
長時間の立位を余儀なくされる作業としては、流し台での洗浄作業、又は調理台での調理作業が挙げられる。そして、このようなキッチン関連設備として、腰痛対策が付加された足置き体(作業用補助具)を備える流し台が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1による流し台は、シンクが取り付けられた天板と、この天板が載置固定されたキャビネットと、シンクの横の調理部が配設されている。そして、天板のシンクの前縁部に、前方に緩やかに湾曲して突出する「もたれ部」を形成すると共に、キャビネットの前面側下方であって、シンク及び「もたれ部」の下方に足置き体を出し入れ自在に配設して、腰痛を効果的に防止するように構成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−7029号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】独立行政法人、労働者健康福祉機構、沖縄産業保健推進センター編、「腰痛のモトを断つ」、[平成21年9月1日検索]、インターネット<URL:http://www.sanpo47.jp>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
非特許文献1によれば、片足を置く台は、高さ15cm位が好ましいとしている。しかし、足置き台の高さは、個人差があるので高さを調整できることが好ましい。特許文献1による流し台は、足置き台を出し入れ自在に配設しているので便利ではあるが、足置き台の高さを調整できないという問題がある。
【0008】
又、足置き台に載せた片足(脛)を前傾することにより、腰部の負担や疲労が軽減することは知られている。しかし、特許文献1による流し台には、足置き台に載せた片足(脛)の前傾姿勢を支える補助具を設けていないので、片足(脛)の前傾姿勢が不安定になり、腰部にかかる負担が必ずしも軽減されないという問題がある。
【0009】
足置き台の高さを調整でき、かつ、足置き台に載せた片足(脛)の前傾姿勢を支える作業用補助具が実現できれば、個人差に起因する腰部の負担が軽減でき、片足(脛)の前傾姿勢が安定でき、腰部にかかる負担を軽減することができる。そして、以上のことが本発明の課題といってよい。
【0010】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、個人差に起因する腰部の負担が軽減でき、片足(脛)の前傾姿勢を安定できる作業用補助具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため、軸方向に膨張又は収縮可能な可逆的な変形台とこの変形台に結合した擬似長靴体とで作業用補助具を構成することにより、これらの課題が解決可能なことを見出し、これに基づいて、以下のような新たな作業用補助具を発明するに至った。
【0012】
(1)本発明による作業用補助具は、流体が内部に注入されて軸方向に膨張可能な、又は内部から流体が排出されて軸方向に収縮可能な中空の変形台と、この変形台の上部に結合され、周囲の一部が開口されて、足先から脛の一部に至る足の部位が装着可能な空洞を有する擬似長靴体と、を備える作業用補助具。
【0013】
(2)前記擬似長靴体は、足先から足首に至る足の部位を囲うシェル本体と、このシェル本体と回動可能に連結するシェル胴部であって、足首から脛の一部に至る足の部位を囲うシェル胴部と、を有することが好ましい。
【0014】
(3)前記変形台は可撓性を有し、前記擬似長靴体が前傾可能に湾曲することが好ましい。
【0015】
(4)前記シェル胴部は、前記シェル本体に向かって傾動可能に構成していることが好ましい。
【0016】
(5)前記流体は、圧縮性流体を含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の第1実施形態による作業用補助具は、変形台の内部に流体を注入して、又は変形台の内部から流体を排出して、変形台の高さを調整できる。そして、擬似長靴体に片足を置いて前傾することもできる。本発明による作業用補助具は、個人差に起因する腰部の負担が軽減でき、片足の前傾姿勢を安定できる。
【0018】
又、本発明の第2実施形態による作業用補助具は、変形台の内部に流体を注入して、又は変形台の内部から流体を排出して、変形台の高さを調整できる。そして、擬似長靴体に片足を置いて前傾することもできる。本発明による作業用補助具は、個人差に起因する腰部の負担が軽減でき、片足の前傾姿勢を安定できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態による作業用補助具の構成を示す斜視図である。
【図2】前記第1実施形態による作業用補助具の構成を示す縦断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態による作業用補助具の構成を示す斜視図である。
【図4】前記第2実施形態による作業用補助具の構成を示す縦断面図である。
【図5】前記第2実施形態による作業用補助具の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態を説明する。
【0021】
[第1実施形態]
(第1実施形態の構成)
最初に、本発明の第1実施形態による作業用補助具の構成を説明する。図1は、本発明の第1実施形態による作業用補助具の構成を示す斜視図である。図2は、前記第1実施形態による作業用補助具の構成を示す縦断面図である。
【0022】
図1又は図2を参照すると、本発明の第1実施形態による作業用補助具(以下、補助具と略称する)10は、中空の変形台1と空洞を有する擬似長靴体2を備えている。変形台1は、可撓性を有するベローズ11と略円形の基板12を備えている。
【0023】
擬似長靴体2は、ベローズ11の上部に結合されている。擬似長靴体2は、周囲の一部が開口されている。擬似長靴体2には、作業者の足先から脛の一部に至る足の部位を装着することができる。
【0024】
ベローズ11は、開口された基端部1aが基板12の一方の面に溶接で固定され、密封されている。又、ベローズ11は、先端部1bが閉塞されている。つまり、変形台1は、密封体となっている。
【0025】
ベローズ11の先端部1bには、バルブ13を設けている。バルブ13にポンプ(図示せず)を接続して、変形台1の内部に空気(圧縮性流体)を注入すると、ベローズ11を軸方向に膨張させることができる。そして、バルブ13を閉じて、変形台1の膨張状態を維持できる。
【0026】
一方、バルブ13を開放して、変形台1の内部の圧縮空気を排出すると、ベローズ11を初期の状態に復帰することができる。バルブ13を開放した状態で、ベローズ11に荷重を付与すると、ベローズ11を軸方向に収縮させることができる。そして、バルブ13を閉じて、変形台1の収縮状態を維持できる。
【0027】
基板12の底部には、摩擦係数の大きいゴムシート14を貼り付けている。これにより、補助具10を床面に設置したときに、補助具10に働く略水平方向の力に対して、床面との滑りを防止することができる。
【0028】
擬似長靴体2は、シェル本体21とシェル胴部22が一体に成形されている。シェル本体21は、足先から足首に至る足の部位を囲っている。シェル胴部22は、足首から脛の一部に至る足の部位を囲っている。
【0029】
擬似長靴体2は、剛性を有する比較的硬質の合成樹脂からなることが好ましい。シェル胴部22の上部の内側には、脛を保護するための緩衝部材2aを貼着している。
【0030】
(第1実施形態の作用)
次に、第1実施形態による補助具10の作用及び効果を説明する。
【0031】
第1実施形態による補助具10は、変形台1の内部に空気を注入して、又は変形台1の内部から空気を排出して、擬似長靴体2の底面21aから床面に至る高さHを調整できる(図2参照)。
【0032】
このように、第1実施形態による補助具10は、いわゆる足置き台の高さを予め調整できるので、個人差に起因する腰部の負担を軽減できる。
【0033】
又、第1実施形態による補助具10は、擬似長靴体2に片足を置いて、前方に力を加えると、ベローズ11が湾曲して、片足(脛)を前傾することができる。ここで、ベローズ11には、曲げ応力が作用し、ベローズ11の一方の端面(足先側)が圧縮され、ベローズ11の他方の端面(足首側)が伸長される。第1実施形態による補助具10は、擬似長靴体2の前方に加える力とベローズ11の反力が拮抗して、ベローズ11の湾曲状態を維持しているので、片足(脛)の前傾姿勢が安定する。したがって、腰部にかかる負担を軽減することができる。
【0034】
更に、第1実施形態による補助具10は、擬似長靴体2の周囲の一部が開口されているので、体重を支える片足に疲労を感じたときは、片足を替えることが容易であるというメリットもある。
【0035】
変形台1を軸方に変形させる流体は、空気などの圧縮性流体に限定されない。前記流体は、水などの非圧縮性流体でもよく、圧縮性流体と同様の効果を得ることができる。
【0036】
[第2実施形態]
(第2実施形態の構成)
次に、本発明の第2実施形態による作業用補助具の構成を説明する。図3は、本発明の第2実施形態による作業用補助具の構成を示す斜視図である。図4は、前記第2実施形態による作業用補助具の構成を示す縦断面図である。図5は、前記第2実施形態による作業用補助具の平面図である。
【0037】
図3から図5を参照すると、本発明の第2実施形態による補助具20は、中空の変形台3と空洞を有する擬似長靴体4を備えている。変形台3は、ベローズ31と略円形の基板32を備えている。
【0038】
擬似長靴体4は、ベローズ31の上部に結合されている。擬似長靴体4は、周囲の一部が開口されている。擬似長靴体4には、作業者の足先から脛の一部に至る足の部位を装着することができる。
【0039】
ベローズ31は、開口された基端部3aが基板32の一方の面に溶接で固定され、密封されている。又、ベローズ31は、先端部3bが閉塞されている。つまり、変形台3は、密封体となっている。
【0040】
ベローズ31の先端部3bには、バルブ33を設けている。バルブ33にポンプ(図示せず)を接続して、変形台3の内部に空気(圧縮性流体)を注入すると、ベローズ31を軸方向に膨張させることができる。そして、バルブ33を閉じて、変形台3の膨張状態を維持できる。
【0041】
一方、バルブ33を開放すると、変形台3の内部の圧縮空気を排出すると、ベローズ31を初期の状態に復帰することができる。バルブ33を開放した状態で、ベローズ31に荷重を付与すると、ベローズ31を軸方向に収縮させることができる。そして、バルブ33を閉じて、変形台3の収縮状態を維持できる。
【0042】
基板32の底部には、摩擦係数の大きいゴムシート34を貼り付けている。これにより、補助具20を床面に設置したときに、補助具20に働く略水平方向の力に対して、床面との滑りを防止することができる。
【0043】
擬似長靴体4は、シェル本体41とシェル胴部42とで構成している。シェル本体41は、足先から足首に至る足の部位を囲っている。シェル胴部42は、足首から脛の一部に至る足の部位を囲っている。そして、シェル胴部42は、一対の係止ピン43・43でシェル本体41と回動可能に連結している。
【0044】
シェル本体41及びシェル胴部42は、剛性を有する比較的硬質の合成樹脂から成形されることが好ましい。シェル胴部42の上部の内側には、脛を保護するための緩衝部材4aを貼着している。
【0045】
(第2実施形態の作用)
第2実施形態による補助具20によれば、第1実施形態による補助具10と同様の作用及び効果を有する他に、以下のとおりの作用及び効果を有している。
【0046】
第2実施形態による補助具20は、擬似長靴体4に片足を置いて、片足(脛)を前傾すると、シェル胴部42がシェル本体41に向かって傾動できる。そして、シェル胴部42の下縁がシェル本体41の外壁に当接して、シェル胴部42を停止できる。
【0047】
第2実施形態による補助具20は、片足(脛)の前傾姿勢が安定するように、シェル本体41とシェル胴部42を屈折自在に構成しているので、腰部にかかる負担を軽減することができる。
【0048】
本発明は、高さが調整可能な変形台に片足を置いて前傾することにより、腰部の負担が軽減できる作業用補助具を開示したが、本発明の実施形態による作業用補助具は、単体で使用されることに限定されない。
【0049】
本発明の実施形態による作業用補助具は、一対で用いられてもよく、腹部を作業台に押し当てて、前傾姿勢を伴う作業において、一対の作業用補助具が両足の脛部を支えることにより、腰痛の予防に有効となる。
【符号の説明】
【0050】
1・3 変形台
2・4 擬似長靴体
10・20 補助具(作業用補助具)
11・31 ベローズ
12・32 基板
21・41 シェル本体
22・42 シェル胴部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が内部に注入されて軸方向に膨張可能な、又は内部から流体が排出されて軸方向に収縮可能な中空の変形台と、
この変形台の上部に結合され、周囲の一部が開口されて、足先から脛の一部に至る足の部位が装着可能な空洞を有する擬似長靴体と、を備える作業用補助具。
【請求項2】
前記擬似長靴体は、
足先から足首に至る足の部位を囲うシェル本体と、
このシェル本体と回動可能に連結するシェル胴部であって、足首から脛の一部に至る足の部位を囲うシェル胴部と、を有する請求項1記載の作業用補助具。
【請求項3】
前記変形台は可撓性を有し、前記擬似長靴体が前傾可能に湾曲する請求項1記載の作業用補助具。
【請求項4】
前記シェル胴部は、前記シェル本体に向かって傾動可能に構成している請求項2記載の作業用補助具。
【請求項5】
前記流体は、圧縮性流体を含んでいる請求項1から4のいずれかに記載の作業用補助具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2011−78479(P2011−78479A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−231375(P2009−231375)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】