説明

作業装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、橋梁や船舶などの大型構造物の製造過程において、塗装や溶接等の作業を行うための作業装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の作業装置は、図3に示すように、レール101上に走行自在に走行台102を設け、該走行台102上に所定の高さを有する支柱103を立設し、該支柱103に、前記レール101に直角な水平方向に配置したアーム104を設け、該アーム104をその長さ方向に移動自在に設けるとともに、その先端に作業具105を取り付けて塗装や溶接等の作業を行うように構成している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】上記従来の構成によると、支柱103が所定の高さを有しているため、低い入口からでは溶接や塗装をする作業場内に入り込めなかったり、また、作業具105を揺動操作するときに、作業具105自身が支柱103に当たって邪魔になることがある。
【0004】このため図4に示すように、複数のリンク106aを連結してパンタグラフ式に構成した昇降装置106を用いて作業具105を昇降させるように構成したものがあるが、これは、剛性が不充分であるため作業具105の揺れが生じる。
【0005】また、図5に示すように、レール101に支柱103を昇降自在に設け、該支柱103の上端部103aに作業具105を取り付けたものがあるが、これによると、作業上、支柱103の下部をレール101の下側まで降ろさなければならないことがあり、このためには、レール101を床高に設置するか、別個ににピットを設けなければならないといった課題がある。
【0006】そこで本発明は上記課題を解決し得る作業装置の提供を目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明における課題解決手段は、一方向に配置された第一レールと、該第一レールに対してほぼ直角な方向に配置されるとともに駆動装置の駆動により第一レール上を移動する第二レールとが設けられ、該第二レール上に、作業具を昇降させるための昇降装置が配置され、該昇降装置は、前記第二レールの長さ方向に走行自在な一対の走行装置と、該走行装置の上方に配置された作業具載置台と、前記走行装置と作業具載置台とを連結するリンク機構とから構成され、該リンク機構は、前記一方の走行装置と作業具載置台との間でヒンジ機構を介して連結された平行リンク体と、前記他方の走行装置と平行リンク体の途中との間でヒンジ機構を介して連結されたリンク体とから構成されたものである。
【0008】
【作用】上記構成において、駆動装置を駆動することにより第一レール上を第二レールが前後方向に移動するとともに作業具が前後方向に移動し、一方の走行装置と他方の走行装置を同速度でかつ同方向に移動することにより、作業具が左右方向に移動し、両走行装置を第二レール上で走行して互いに近接離間することにより作業具が昇降するので、例えば入口の低い作業場内に入るために作業具を下降させるには、一方の走行装置のみ駆動して他方の走行装置を停止しておくと、平行リンク体がリンク体にヒンジ機構を介して支持されながら次第に傾倒し、作業具載置台が水平な姿勢を保持したまま下降する。
【0009】
【実施例】以下、本発明作業装置の一実施例を図1の全体側面図、図2の駆動装置部分の拡大図に基いて説明する。
【0010】本実施例における作業装置は、基面1上に互いに前後方向に向けて平行に三個の基台2が配列され、該基台2上に、I型鋼から成る第一レール3が固定され、該第一レール3に対してほほ直角である左右方向に配列されるとともに、駆動装置4の駆動により、第一レール3上を駆動する第二レール5が設けられ、該第二レール5に、塗装や溶接作業を行うための作業具(塗装ガンや溶接機など)6を昇降させるための昇降装置7が配設されている。
【0011】該昇降装置7は、前記第二レール5上に走行自在に設けられてそれぞれ独立した走行用モーター8A,8Bを有する一対の走行装置9と、これら走行装置9の上方に配置された作業具載置台10と、前記両走行装置9と作業具載置台10とを連結するリンク機構11とから構成されている。
【0012】前記駆動装置4は前記第二レール5の端部に配置され、それぞれの駆動装置4は、図2に示すように、前記基台2上に箱型の支持部材12を介して固定されたラック13と、前記第二レール5の端部に上側開放のコ字形ブラケット14を介して下向きに配置されたモーター15と、該モーター15のモーター軸16に外嵌固定されて前記ラック13に噛合するピニオン17と、前記モーター15への電源供給用のケーブルベアー18とから構成されている。
【0013】また、前記第二レール5を第一レール3上で案内するための案内装置19が設けられ、該案内装置19は、前記第二レール5の側部および略中央部の下面20にローラー取付け部材21を介して配置され第一レール3の上面を転動する上側ローラー23と、L字形のローラー取付け部材24を介して第二レール5の下面20に取り付けられ第一レール3の下面に当接して転動する下側ローラー25とから構成されている。
【0014】前記各走行装置9A,9Bは、前記第二レール5上に配置された台車26A,26Bと、該台車26A,26Bの上面に配置された前記走行用モーター8A,8Bと、前記台車26A,26Bの車輪27A,27Bに走行用モーター8A,8Bの駆動を伝達するための図示しない伝達機構とからそれぞれ構成されている。
【0015】前記リンク機構11は、前記一方の台車26Aと作業具載置台10との間で、ピン28(ヒンジ機構)を介して連結されるとともに互いに平行に配置されたリンク29から成る平行リンク体30と、前記他方の台車26Bと平行リンク体30の途中との間でピン28を介して連結されたリンク体32とから構成され、前記平行リンク体30とリンク体32とで全体としてλ字形状に配置されている。なおこのリンク機構11は、前後方向(第二レール5の移動方向)に一対で設けられている。
【0016】上記構成において、作業具6を前後方向に移動させたい場合は、ケーブルベアー18からモーター15に給電してこれを駆動する。そうすると、ピニオン17がラック13に噛合しながら回転し、第二レール5が案内装置19に案内されながら第一レール3上を前後方向に移動する。
【0017】また、作業具6を左右方向に移動させたい場合は、台車26A,26Bを同一方向にかつ同一速度で走行させる。すなわち一方の台車26Aに設けられた走行用モーター8Aと、他方の台車26Bに設けられた走行用モーター8Bをともに駆動する。そうすると、走行用モーター8A,8Bの駆動が伝達機構を介して車輪27A,27Bに伝達され、両方の台車26A,26Bがともに左右方向に移動し、作業具6がその位置を保持したまま台車26A,26Bとともに第二レール5上を左右方向に移動する。
【0018】ところで、作業具6を昇降させるには、両走行用モーター8A,8Bを駆動して台車26A,26Bを互いに反対方向に走行させるか、走行用モーター8A,8Bの内、どちらか一方を駆動して台車26A,26Bのうちどちらか一方を走行する。
【0019】すなわち、入口の低い作業場内に入る場合などに、作業具6を図1の実線で示した位置から例えば仮想線で示す位置まで下降させるためには、一方の台車26Aに設けられた走行用モーター8Aのみ駆動して、他方の走行用モーター8Bの駆動を停止しておき、一方の台車26Aを右方向に移動させる。そうすると、平行リンク体30がリンク体32に支持されながら、平行リンク体30の基部が右方に移動して次第に傾倒し、作業具載置台10が水平な姿勢を保持したまま下降する。そして作業具6を適宜の位置まで下降させた後、走行用モーター8Aの駆動を停止して作業場内に入る。
【0020】上記のように、作業具6を昇降させるには、両走行用モーター8A,8Bを駆動して台車26A,26Bを互いに反対方向に走行させるか、走行用モーター8A,8Bの内、どちらか一方を駆動して台車26A,26Bのうちどちらか一方を走行すればよいので、例えば入口の低い作業場内に容易に作業装置を入れることができ、さらに作業具6に対してリンク機構11が下側に配置されているので、作業具6の動き(例えば水平面内での回動)に対してリンク機構11が邪魔になることもない。
【0021】
【発明の効果】以上の説明から明らかな通り、本発明は、第一レール上を移動する第二レール上に作業具の昇降装置を設け、この昇降装置を、第二レール上に配置した走行装置と、この走行装置の上方に配置した作業具載置台との間でヒンジ機構を介して連結した平行リンク体と、他方の走行装置と平行リンク体の途中との間でヒンジ機構を介して連結されたリンク体とから構成したので、剛性が強く、作業中に作業具の揺れがほとんどなく、走行装置の内、少なくとも一方を走行させることにより作業具が上昇下降して作業具の高さ調節ができるので、例えば入口の低い作業場内にも作業具を下降させることにより作業装置を容易に入れることができ、また従来のように第一レールや第二レールを床高に設置したり、別個にピットを設けることなく作業具を下降させることができ、さらに作業具載置台と走行装置とを作業具載置台の下側に配置されたリンク機構で連結しているので、作業具の動きに対してリンク機構の存在が邪魔になることがない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第一実施例を示す作業装置の全体側面図である。
【図2】同じく駆動装置部分の拡大図である。
【図3】従来の作業装置を示す要部斜視図である。
【図4】他の従来例を示す作業装置の要部側面図である。
【図5】他の従来例を示す作業装置の要部斜視図である。
【符号の説明】
1 基面
2 基台
3 第一レール
4 駆動装置
5 第二レール
6 作業具
7 昇降装置
8A 走行用モーター
8B 走行用モーター
9 走行装置
30 平行リンク体
32 リンク体

【特許請求の範囲】
【請求項1】 一方向に配置された第一レールと、該第一レールに対してほぼ直角な方向に配置されるとともに駆動装置の駆動により第一レール上を移動する第二レールとが設けられ、該第二レール上に、作業具を昇降させるための昇降装置が配置され、該昇降装置は、前記第二レールの長さ方向に走行自在な一対の走行装置と、該走行装置の上方に配置された作業具載置台と、前記走行装置と作業具載置台とを連結するリンク機構とから構成され、該リンク機構は、前記一方の走行装置と作業具載置台との間でヒンジ機構を介して連結された平行リンク体と、前記他方の走行装置と平行リンク体の途中との間でヒンジ機構を介して連結されたリンク体とから構成されたことを特徴とする作業装置。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図1】
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【図2】
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【特許番号】第2758117号
【登録日】平成10年(1998)3月13日
【発行日】平成10年(1998)5月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−14335
【出願日】平成5年(1993)2月1日
【公開番号】特開平6−226682
【公開日】平成6年(1994)8月16日
【審査請求日】平成8年(1996)9月26日
【出願人】(000005119)日立造船株式会社 (764)
【参考文献】
【文献】特開 昭58−160071(JP,A)
【文献】実開 昭61−167272(JP,U)