説明

作業車の排気装置

【課題】排気管をコンパクトに構成するとともに、エジェクタ効果による外気の吸引を効率良く行えて、高温の排気を支障なく排出し易くする。
【解決手段】排気管の下流側端部に、排気導管から排出される排気によるエジェクタ効果で排気導管の外周と外部保護管の内周との間に外気を吸引導入するエジェクタ部25を構成するように、外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させ、排気導管及び外部保護管の下流側端部に、排気方向を変更するように湾曲させた湾曲管部分32b,42bを設け、この湾曲管部分32b,42bにおける排気導管の端部外周と外部保護管の端部内周との間隔を、湾曲管部分32b,42bにおける曲率中心o1,o2側よりも反対側での間隔が大きくなるように構成してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンからの排気が導入される排気導管と、その排気導管との間に外気の通路を形成する外部保護管とで、機体外部へ排気を導く排気管を備えた作業車の排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のような作業車の排気装置としては、従来より下記[1]及び[2]に示す構造のものが知られている。
[1]エンジンからの排気が導入される排気導管の外側に断熱管を外嵌させ、さらにその外側に冷却管を外嵌させて、最内側の排気導管の熱を中間位置の断熱管で断熱し、かつ、断熱管の外側に位置する最外側の通気孔を有した冷却管との間に入り込む外気によって断熱管を冷却して排気熱が冷却管の外側へ伝えられることを防ぐように構成したもの(例えば特許文献1参照)。
[2]エンジンからの排気が導入される排気導管を、排気流動方向での前後に位置する上流側導管と下流側導管とで構成し、かつ上流側導管と下流側導管との間に設けたエジェクタ部で、上流側導管から下流側導管への排気の流入に伴うエジェクタ効果により外気を下流側導管内の排気に混入させるようにしたもの、及び、下流側導管の外側を遮熱用の外部保護管で覆うようにしたもの(例えば特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3799405号公報(段落番号0016,0025、図2,3、及び図13)
【特許文献1】特開平07−71249号公報(段落番号0020,0028、図4,5、及び図6)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記[1]に記載した構造のものでは、エンジンからの排気が導入される排気導管の外側に、断熱管と冷却管とを外嵌させた三層構造によって排気管を構成したものであるから、排気管が径の大きい大型のものとなりやすいという問題があり、排気管の大型化を避けてコンパクトに構成したいという要望がある。
【0005】
また、上記[2]に記載した構造のものでは、エジェクタ効果によって外気を下流側導管内の排気に混入させることによって、下流側導管内での排気温度を下げ、かつ、その下流側導管の外側を遮熱用の外部保護管で覆うことで排気管の外側が熱くなりすぎることを避けられるようにしている。
この構造では、エジェクタ部で吸い込まれた外気が下流側導管の内側に入り込んで排気に混入した状態で流動する。このため、外気の混入で排気温度がある程度低下するとは言え、その排気に接触する下流側導管の温度はかなりの高温であるため、下流側導管の外周から大きく離れた位置に遮熱用の外部保護管を設ける必要があって、十分に排気管の径を縮小することは困難であった。
また、この構造のエジェクタ部では、下流側導管の終端から所定方向へ向けて排気を吹き出させるために、上流側導管の終端部を絞ることにより排気の流速を上げて外気の引き込みを行っているので、この箇所で圧損が生じ、その分、エネルギーロスを招くことにもなる。
【0006】
本発明の目的は、外側が熱くなりすぎることを回避し得る排気管をコンパクトに構成するとともに、エジェクタ効果による外気の吸引を効率良く行えて、高温の排気を支障なく排出し易い構造の作業車の排気装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
〔解決手段1〕
上記課題を解決するために講じた本発明の技術手段は、エンジンからの排気が導入される排気導管と、その排気導管に外嵌して該排気導管との間に外気の通路を形成する外部保護管とで、機体外部へ排気を導く排気管を構成し、
前記排気管の下流側端部に、前記排気導管から排出される排気によるエジェクタ効果で排気導管の外周と外部保護管の内周との間に外気を吸引導入するエジェクタ部を構成するように、前記外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させてあり、
さらに、前記排気導管及び外部保護管の下流側端部に、排気方向を変更するように湾曲させた湾曲管部分を設けるとともに、この湾曲管部分における排気導管の端部外周と外部保護管の端部内周との間隔を、前記湾曲管部分における曲率中心側よりも反対側での間隔が大きくなるように構成してある点に特徴がある。
【0008】
〔解決手段1にかかる発明の作用及び効果〕
この解決手段1によれば、外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させて、排気管の下流側端部にエジェクタ部を備えさせ、排気導管の外周と外部保護管の内周との間に外気を吸引導入するようにしたものであるから、排気導管の外周と外部保護管の内周との間で外気を流動させながら排気導管の下流側端部から排出することができる。
したがって、排気導管の外周と外部保護管の内周との間に単なる空隙があるだけで外気の積極的な移動がない構造に比べて、排気導管の外周と外部保護管の内周との間における外気の移動を積極的に行わせ、排気導管から外部保護管への熱の伝播を効率よく抑制することができる。その結果、排気導管と外部保護管との間における間隔を狭めて排気管全体の径を細くすることも可能となり、コンパクト化を図ることができる。
【0009】
また、エジェクタ部は、排気導管の一部を絞って流速を上げながら外気を引き込むような圧損を生じる構造ではなく、エンジンからの排気としてそのまま排出される排気の流れをエジェクタとして利用できるようにしている。
つまり、外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させることによって、排気導管と外部保護管との間の通路に存在する外気が排気導管の下流側端部から排出される排気の流れに引き込まれ易くなるように構成してあるので、絞りによる圧力損失なく外気を取り込むことができ、圧力損失によるエネルギーロスを避けた効率の良い外気吸引が可能となる。
【0010】
そして、排気導管及び外部保護管の下流側端部は、排気方向を変更するように湾曲させた湾曲管部分を備えているので、排気の排出方向を変更することができるのであるが、上述したように、外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させると、排気導管の下流側端部から排出される高温の排気が、排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置する外部保護管の下流側端部に局部的に接触して、その外部保護管の下流側端部を焼損する虞がある。
そこでこの発明では、湾曲管部分に到達するまでの排気の流動慣性が湾曲管部分の曲率中心側とは反対側へ排気の流動方向を向けるように作用する傾向があることを考慮して、湾曲管部分における排気導管の端部外周と外部保護管の端部内周との間隔を、湾曲管部分における曲率中心側よりも反対側での間隔が大きくなるようにしている。これによって、排気導管の下流側端部から排出される排気が外部保護管の下流側端部に接触する可能性を少なくし得たものである。
【0011】
〔解決手段2〕
解決手段2にかかる発明は、解決手段1で示した作業車の排気装置において、前記排気導管の下流側における終端開口と前記外部保護管の下流側における終端開口とは、それらの終端開口からの排気方向に沿う方向視で、前記排気導管の終端開口の中心点が前記外部保護管の終端開口の中心点よりも前記湾曲管部分における曲率中心側寄りに位置するように設けてある点に特徴がある。
【0012】
〔解決手段2にかかる発明の作用及び効果〕
この解決手段2によれば、湾曲管部分における排気導管の端部外周と外部保護管の端部内周との間隔を、湾曲管部分における曲率中心側よりも反対側での間隔が大きくなるようにするにあたり、排気導管や外部保護管の断面形状を同形状に維持したままで所期通りに間隔設定することができる。
したがって、排気導管や外部保護管の断面形状を変化させて間隔を変更するような製作加工上の煩雑さを回避することができる。
【0013】
〔解決手段3〕
解決手段3にかかる発明は、解決手段2で示した作業車の排気装置において、前記外部保護管の湾曲管部分は、その湾曲管部分よりも上流側の外部保護管とは別部材で構成されている点に特徴がある。
【0014】
〔解決手段3にかかる発明の作用及び効果〕
この解決手段3によれば、高温の排気に曝される湾曲管部分を、その湾曲管部分の上流側に位置する外部保護管よりも耐熱性に優れた別部材で構成して耐久性を向上させたり、湾曲管部分のみを交換可能にして、コスト面での耐久性の向上を図ることができる。
【0015】
〔解決手段4〕
解決手段4にかかる発明は、解決手段1〜3で示した作業車の排気装置において、前記外部保護管の湾曲管部分には耐熱塗装が施されている点に特徴がある。
【0016】
〔解決手段4にかかる発明の作用及び効果〕
すなわち、この解決手段4によれば、高温の排気に曝される湾曲管部分の耐熱性を比較的簡単に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】トラクタの全体正面図である。
【図3】排気装置の斜視図である。
【図4】排気装置の分解斜視図である。
【図5】整流器を示し、(a)は整流器の配設箇所を示す斜視図、(b)は図5におけるVb-Vb線断面図と部分拡大図、(c)は斜視図である。
【図6】図3におけるVI-VI線断面図である。
【図7】下流側排気管を示し、(a)は図3におけるVIIa-VIIa線断面図、(b)は図3におけるVIIb-VIIb線断面図である。
【図8】屈曲部における外気導入部を示す上下方向断面図である。
【図9】排気装置の下流側端部を示し、(a)は前後方向に沿う縦断面図、(b)は図9(a)におけるIXb-IXb線断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔作業車の全体構成〕
図1には、本発明における排気装置を適用した作業車の一例であるキャビン付きトラクタの全体側面が示されている。このトラクタは、車体前部に位置する原動部1と、車体後部に位置する搭乗運転部としての運転キャビン2とを、エンジン搭載フレーム3、クラッチハウジング(図外)、及びミッションケース4を一体的に連結して構成される車体フレーム5に搭載し、この車体フレーム5が左右一対の前輪6及び後輪7で支持されている。
【0019】
前記原動部1では、エンジンボンネット1Aで覆われたエンジンルーム内で、エンジン搭載フレーム3上に、防振材(図外)で防振支持されたディーゼルエンジンを採用したエンジン8が設置されている。このエンジン8からの動力を、フレーム兼用のミッションケース4に内装した走行用の変速装置(図示せず)などからなる走行伝動系を介して前記前輪6及び後輪7に伝達するように構成して、四輪駆動型のトラクタが構成されている。
【0020】
ミッションケース4の後部には、その後上部に内装した油圧式の昇降シリンダ9の作動で上下方向に揺動駆動される左右一対のリフトアーム10や、エンジン動力の外部への取り出しを可能にする動力取出軸11、などが装備されている。前記動力取出軸11には、ミッションケース4に内装した前記走行伝動系とは別系統の作業用の変速装置(図示せず)や作業クラッチ(図示せず)などからなる作業伝動系を介して、エンジン8からの動力が伝達されている。
左右のリフトアーム10には、ミッションケース4の後部に昇降揺動可能に連結装備されるリンク機構(図示せず)が連結され、動力取出軸11には、そのリンク機構に連結されるロータリ耕耘装置などの作業装置(図示せず)に対して動力を伝えるための伝動軸などが接続される。
【0021】
図1及び図2に示すように、前記運転キャビン2は、前後左右の四隅に立設したキャビンフレーム12に屋根材13を支持させ、前側に透明の曲面ガラスなどからなる前面ガラス14を備えるとともに、左右側部に透明ガラスで構成された外開き式の左右一対のドアパネル15を備えて矩形箱状に形成され、内部にステアリングホイール16や運転座席17などを備えている。
【0022】
〔排気装置〕
原動部1におけるエンジンボンネット1A内には、エンジン8の上部側に位置させて、DOC(ディーゼル酸化触媒)やDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を収容したマフラ機能付きの排気浄化処理装置20を設けてあり、エンジン8からの排気を処理して排気管21側へ排出するように構成されている。
【0023】
前記排気浄化処理装置20は、排気中に含まれる微粒状物質をDPFで捕捉し、排気中の未燃燃料をDOCで酸化燃焼させて排気温度を上げることによりDPFに捕捉された微粒状物質を焼却してDPFの再生を行うように構成されているので、排気管21に高温の排気ガスが流れることになる。
排気管21は、エンジン8からの排気が導入される円筒状の排気導管30と、その排気導管30に外嵌して該排気導管30の外周との間に外気の流通を許す通路rを形成する外部保護管40とを備えて構成されている。
本発明の排気装置は、上記の排気浄化処理装置20と排気管21との組み合わせで構成されている。
【0024】
〔排気管〕
図3及び図4に示すように、排気導管30と外部保護管40とを備える排気管21は、中間に屈曲部22を備えて水平方向から上下方向に排気ガスの排出方向を変更するように構成してある。
つまり、排気管21は、屈曲部22の上流側に位置する上流側排気管23と、屈曲部22の下流側に位置する下流側排気管24とを備え、上流側排気管23の上流側端部が排気浄化処理装置20に接続され、排気浄化処理装置20から供給された排気ガスは下流側排気管24の下流側端部に備えた排気部25から排出される。
そして排気管21の通路rに対する外気は、上流側排気管23の下流側端部と下流側排気管24の上流側端部との間に位置する屈曲部22に対応する箇所に設けた外気導入部50で吸引導入され、後述する下流側導管32と下流側保護管42との間の通路rを通って前記排気部25から排気ガスとともに排出されるように構成してある。
【0025】
上流側排気管23が排気導管30のうちの上流側導管31と、外部保護管40のうちの上流側保護体41とを備え、下流側排気管24が排気導管30のうちの下流側導管32と、外部保護管40のうちの下流側保護管42とを備え、屈曲部22は、上流側導管31と下流側導管32との接続箇所を示している。
【0026】
前記上流側排気管23は、上流側を排気浄化処理装置20に接続された上流側導管31と、その上流側導管31の上部側を覆うチャンネル状の上流側保護体41とを備えて構成されている。
上流側導管31は、図4に示すように、屈曲部22と排気浄化処理装置20との間で、屈曲部22に連なるほぼ水平姿勢の筒軸心xを有した円筒状部分31bを備えるとともに、その水平姿勢の円筒状部分よりも上流側で前記排気浄化処理装置20の排出管部分20aに接続される箇所が自由な方向に屈撓可能なフレキシブルチューブ31aを備えて構成されている。
【0027】
前記排気浄化処理装置20の排出管部分20aで、前記上流側導管31に内嵌して、図示しない締め付けバンドで接続される箇所には、図5(a)〜(c)に示すように、頂部がほぼ直角に屈折された二つの山形の板材27の頂部同士を突き合わせ状態に対向させ、かつ、頂部同士の間に少しの間隔cをあけた状態で、排出管部分20aの内周側に山形の板材27の裾部を溶接固定して、管軸線方向視で山形の板材27が十字状となるように取り付けられた整流板26を設けてある。
また、この整流板26の上流側の端辺27aは、図5(c)に示すように、排出管部分20aの半径方向の中心に近づく側ほど上流側に位置するように先細り形状の傾斜辺に形成して、排気ガスとの接触抵抗を低減するように構成してある。
【0028】
この整流板26が取り付けられた排出管部分20aの終端部は、前記上流側導管31の始端部に内嵌した状態で上流側導管31の外側から図示しない締め付けバンドで締め付けられることによって接続される。このとき、締め付けられることによって前記排出管部分20aの終端部が僅かではあるが縮径する傾向がある。しかし、排出管部分20aの終端部が縮径しても、前記整流板26の頂部同士の間には間隔cが存在しているので、その間隔cの幅が少し狭められることによって、排出管部分20aを無理なく縮径させやすい。したがって、排出管部分20aを歪な形状に変形させてしまう虞が少なく、上流側導管31との嵌合箇所で前記排出管部分20aが歪な形状へと変形しながら縮径して上流側導管との間に隙間が生じるというような事態を避け得て排気ガスの漏れが生じるような不具合を回避し易い。
【0029】
上流側排気管23のうち、チャンネル状に形成された上流側保護体41は、図3,4、及び図6に示すように、下側が開放されたチャンネル状の外カバー41aの内側にシート状断熱材41bをリベット止めにより取り付けてある。このシート状断熱材41bは、アルミコルゲート材を成形して、防熱及び防音の機能を有したものである。
この上流側保護体41が、前記屈曲部22に連なるほぼ水平姿勢の円筒状部分31bと、その水平姿勢の円筒状部分31bに連なり前記エンジンボンネット1Aの外側に位置するフレキシブルチューブ31aとを覆う範囲に配設されている。
この上流側保護体41は、上流側導管31の下半側の外周部に、平面視でチャンネル状に形成された接続片31cの開放端側を溶接固定し、この接続片31cの他端側を、上流側導管31の外周から水平方向での外方へ離れる側へ延出して、その接続片31cの他端側を上流側保護体41の内周側に当てつけた状態で固定ボルト41cにより着脱可能に連結固定してある。
【0030】
下流側排気管24は、図3、図4、及び図7に示すように、屈曲部22から下流側端部の排気部25に至る下流側導管32と、その下流側導管32の外周側を覆う下流側保護管42(外部保護管40に相当する)、及び側部カバー45を備えて構成されている。
【0031】
下流側導管32は、上下方向の筒軸心yを有して立設された円筒状の直管部分32aと、その直管部分32aの上端部に位置して所定方向(前方側)に向くように湾曲した湾曲管部分32bとを備えて構成されている。
直管部分32aの下端部が屈曲部22に繋がり、直管部分32aの上端部に前記湾曲管部分32bを設けてあり、湾曲管部分32bの上端が外部に開放されて終端開口32cを構成している。
【0032】
下流側保護管42は、下流側導管32の直管部分32aの外周側に位置するように直管状に形成された直管状カバー部分42aと、その直管状カバー部分42aの上端部に接続された湾曲管部分42bとを備えている。
前記直管状カバー部分42aは、前後一対の半割円筒状部材43,43同士を、互いに割り面側の端辺部分を重ね合わせた状態で、上下方向の筒軸心yに沿って起立する円筒状の直管となるように形成してある。この半割円筒状部材43,43は、図7(a)に示すように、下流側導管32の左右両側の外周部分に設けたチャンネル状の取付ブラケット33,33の外側に位置させて、互いの端辺同士を重ね合わせた状態で連結ボルト34により共締め状態で連結固定してある。
【0033】
これらの半割円筒状部材43,43の夫々の内周面側にも、シート状断熱材44をリベット止めにより取り付けてあるが、このシート状断熱材44は、前記上流側保護体41の外カバー41aの内側に設けられたシート状断熱材41bに比べて、外気の通路rに面する内周面側が比較的平滑な面に形成されたものである。
つまり、上流側保護体41の外カバー41aの内側に設けられたシート状断熱材41bは、外カバー41aの内周側で内面側にも凹凸形状が存在して、断熱、防音の機能を高めた構造のもので構成されているが、半割円筒状部材43,43の内周面側のシート状断熱材44は、アルミコルゲート材を成形したものではあっても、通路rに面する内周面側には凹凸形状の少ない比較的平滑な面が存在するように形成されている。これは、下方の外気導入部50から上方の排気部25へ向かう外気の流れを阻害しないようにするためである。
【0034】
前記直管状カバー部分42aを構成する前後一対の半割円筒状部材43,43は、図4に示すように、上下方向でも二分割されており、下部に位置する半割円筒状部材43,43と上部に位置する半割円筒状部材43,43とは、前記筒軸心y方向で互いにその上端と下端とを突き合わせ状態に対向させた状態に配設されている。
そして、下部に位置する半割円筒状部材43,43と上部に位置する半割円筒状部材43,43との夫々が、前述したように下流側導管32の左右両側の外周部分に設けたチャンネル状の取付ブラケット33,33に対して、互いの端辺同士を重ね合わせた状態で連結ボルト34により共締め状態で連結固定されている。
【0035】
前記直管状カバー部分42aの上端部に接続された湾曲管部分42bは、下端側が直管状カバー部分42aの上端部に外嵌し、上端側に形成した終端開口42cにおける排気方向(図9(a)における中心線p1,p2参照)が車体前方側の斜め上方に向くように湾曲させたエルボ管によって構成してある。
この下流側保護管42の湾曲管部分42bは、下流側導管32の湾曲管部分32bの外周側を囲繞するように位置して、前記直管状カバー部分42aよりも高い耐熱性を有するように内周面側に耐熱塗装を施してあり、図示しないが、前記直管状カバー部分42aの上端部に対して、連結ボルトなどの適宜の連結手段によって着脱可能に装着されている。
【0036】
前記直管状カバー部分42aの横外側に位置する側部カバー45は、図3,4、及び図7(b)に示すように、断面形状で開口側が外広がり形状となる樋状の板材によって構成され、前後一対の半割円筒状部材43,43の割り面側の端辺部分を重ね合わせた箇所の横外側に位置して、その重ね合わせた箇所の端辺部分を覆うように、直管状カバー部分42aの上端から下端にわたる一連の板材で構成してある。
そして、この側部カバー45は、前後の半割円筒状部材43,43が、その端辺同士を重ね合わせた状態で取付ブラケット33,33に連結固定されている箇所とは、上下方向位置が異なる別の箇所で、別の連結ボルト46により直管状カバー部分42aに対して連結固定してある。
【0037】
〔外気導入部〕
前述したように、排気管21は、中間に屈曲部22を備えて水平方向から上下方向に排気ガスの排出方向を変更するように構成されたものであり、この屈曲部22よりも下流側に位置する下流側排気管24における外気の通路rに対して外気を取り込むための外気導入部50が、屈曲部22の近くに配設されている。
【0038】
外気導入部50は、下流側導管32とその下流側導管32の外周との間に間隔を隔てて位置する下流側保護管42との間に形成される通路rに対して外気を導入するものであり、図8に示すように、下流側保護管42の下端側を、排気導管30の屈曲部22が存在する箇所よりも下方側へ延長させてある。そして、上流側導管31の屈曲部22の近く箇所に、後述する遮蔽部材の一部を構成する上部遮蔽部材35を設けてある。
これによって、下流側保護管42の下端側には、下流側保護管42の下端縁42dと、前記上部遮蔽状部材35の下端縁35aとで、下向きに開口する吸気口51が形成され、この吸気口51から外気を取り込むように構成された外気導入部50が設けてある。
【0039】
上部遮蔽部材35は、図4及び図8に示すように、上流側導管31の屈曲部22の近く位置で上流側保護体41の内側に固定されている。
つまり、上部遮蔽部材35の上部には、上流側導管31の下方側から嵌入可能なU字状の開口部を形成してあって、このU字状の開口部が上流側導管31の下部及び前後の横側部に外接するように嵌入した状態で、U字状の開口部の上端が上流側導管31の内面上部に接当し、かつ、上部遮蔽部材35の横側縁が上流側導管31の前後の内面に接した状態に位置する。
この状態で上部遮蔽部材35の横側部に連設された取付片35bと、上流側保護体41の前後の横側部分とを、連結ボルト54を介して着脱可能に連結固定してある。
【0040】
この外気導入部50では、排気導管30の屈曲部22が存在する箇所よりも下方側へ延長されている下流側保護管42、及び上部遮蔽部材35により、排気導管30の屈曲部22と吸気口51との間に、排気導管30やその屈曲部22が存在しない空間sが形成される。その結果、外気導入部50に、排気導管30やその屈曲部22が存在することによって流路を狭められるということのない吸気路が形成されることになり、下流側導管32と下流側保護管42との間に形成される通路rに対して外気の導入がスムースに行われ易くなる。
【0041】
また、前記上流側保護体41の内面側に接する上部遮蔽部材35の下端側には、前記吸気口51よりも大きく下方側に延長された下部遮蔽部材52が連結ボルト53で連結されている。
この下部遮蔽部材52は、上部遮蔽部材35の上下方向に沿う面の延長方向に沿った遮蔽面52aと、吸気口51の前後両側に位置する側方遮蔽面52bとを備え、車体の横外方側を除く3方向が遮蔽された状態として、車体の横外方側及び下方側から外気が入り込み易く、エンジン8が存在する車体内方側から、エンジン8の熱気が前記吸気口51側へ侵入することを制限するようにしてある。
上記の上部遮蔽部材35と下部遮蔽部材52とによって、エンジン8側から前記外気導入部50側への熱気の流動を抑制する遮蔽部材を構成している。
【0042】
上記の下部遮蔽部材52の下方側への延長幅は、チャンネル状に形成された上流側保護体41の存在によって吸気口51の近くまで案内されてきたエンジン8の熱気が、上流側保護体41の開放された下縁側から漏れ出て上昇移動する過程で、一部が車体外方側へ流れても、下部遮蔽部材52の下端を回り込んで吸気口51に達することを避けられる程度の寸法に設定してある。
【0043】
〔排気部〕
排気管21の下流側端部には、下流側導管32の終端開口32cから排出される排気によるエジェクタ効果で下流側導管32の外周と下流側保護管42の内周との間に外気を吸引導入させるためのエジェクタ部を兼ねる排気部25を設けてある。
【0044】
すなわち、この排気部25は、図3,4、及び図9に示すように、上下方向の筒軸心yを有して立設された下流側導管32の直管部分32aの上端部に連なって位置する湾曲管部分32bの外側に、その湾曲管部分32bの外周側を囲繞する状態で、下流側保護管42の直管状カバー部分42aの上端部に外嵌するエルボ管によって構成された下流側保護管42の湾曲管部分42bを設けて、下流側導管32の湾曲管部分32bの外周側と、下流側保護管42の湾曲管部分42bの内周側との間に、外気の通路rが存在するように構成してある。
【0045】
そして、下流側導管32の直管部分32aの上端部に連なって位置する湾曲管部分32bの下流側端部における終端開口32cの位置を、下流側保護管42の湾曲管部分42bの下流側端部に位置させた終端開口42cの位置よりも上流側寄りに位置させてある。これによって、下流側導管32の終端開口32cから吹き出す排気が、下流側導管32の外周側における外気の通路rに存在する外気を吸引導出しながら排出されることになり、下流側導管32の外周側と、下流側保護管42の内周側との間における外気の通路rにエジェクタ効果による外気の流れを生じさせて、下流側導管32を終端開口32cに至るまで冷却することができる。
【0046】
さらに、この排気部25では、下流側導管32の湾曲管部分32bの下流側端部の外周位置と、下流側保護管42の湾曲管部分42bの下流側端部の内周位置との間隔、つまり外気の通路幅を、図9(a)及び(b)に示すように設定してある。
すなわち、下流側導管32の湾曲管部分32bの下流側端部の外周位置と、下流側保護管42の湾曲管部分42bの下流側端部の内周位置との間隔を、夫々の湾曲管部分32b,42bにおける曲率中心o1,o2に近い下方側での通路幅L1よりも、曲率中心o1,o2から遠い上方側での通路幅L2が大きくなるように、下流側導管32の湾曲管部分32bと下流側保護管42の湾曲管部分42bとの位置関係を設定してある。
【0047】
このとき、夫々の終端開口32c,42cから排気方向(図9(a)に示す線分p1,p2参照)に沿う方向視では、図9(b)に示すように、下流側導管32の終端開口32cの中心点p1(図9(a)に示す線分p1上にあるので同じ符号で示す)が、下流側保護管42の終端開口42cの中心点p2(図9(a)に示す線分p2上にあるので同じ符号で示す)よりも、夫々の湾曲管部分32b,42bにおける曲率中心o1,o2に近い下方側に位置するように、断面形状が円形の夫々の湾曲管部分32b,42bの相対位置が設定された状態である。
【0048】
図9(a)に仮想線で示すように、下流側導管32の終端開口32cが、下流側保護管42の終端開口42cの中心点p2が存在する位置と同じ位置に存在していた場合には、同図中に二点鎖線u2,d2で示す範囲の上下方向の排出領域に下流側導管32の終端開口32cから高温の排気ガスが排出されると想定される。この場合には、上方側の二点鎖線u2で示される排出領域の上端側箇所が下流側保護管42の終端開口42cの上側に接触する可能性がある。
これに比べて、同図中に実線で示すように、下流側導管32の終端開口32cの中心点p1が、下流側保護管42の終端開口42cの中心点p2が存在する位置よりも曲率中心o1,o2に近い下方側に位置する場合には、同図中に破線u1,d1で示す範囲の上下方向の排出領域に、下流側導管32の終端開口32cから排出される高温の排気ガスの排出される範囲が想定され、この場合には、上方側の破線u1の一部が下流側保護管42の終端開口42cの上側に接触する可能性を低減することができる。
【0049】
〔別実施形態の1〕
上記の実施形態では、エンジン8として、DOC(ディーゼル酸化触媒)やDPF(ディーゼル・パティキュレート・フィルタ)を収容したマフラ機能付きの排気浄化処理装置20を備えるディーゼルエンジンを採用したものを示したが、これに限らず、ガソリンエンジンを採用した作業車の排気装置に適用してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0050】
〔別実施形態の2〕
上記の実施形態では、外部保護管40の内面側に設けるシート状断熱材41bとして、アルミコルゲート材を成形して、防熱及び防音の機能を有したものを用いたが、これに限らず適宜の断熱材を採用することができる。また、断熱材を用いないで構成することもできる。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0051】
〔別実施形態の3〕
上記の実施形態では、下流側保護管42の湾曲管部分42bを、直管状カバー部分42aとは別部材で構成し、内周側に耐熱塗装を施したものを示したが、これに限るものではなく、例えば次のように構成してもよい。
すなわち、湾曲管部分42bを直管状カバー部分42aと一体に構成して、シート状断熱材44を取り付けていない湾曲管部分42bの内周側に耐熱塗装を施す、または、直管状カバー部分42aとは別部材で構成した湾曲管部分42bを耐熱材料で構成する、あるいは、別部材で構成した耐熱材料製の湾曲管部分42bにさらに耐熱塗装を施すなどの手段を講じてもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0052】
〔別実施形態の4〕
上記の実施形態では、下流側導管32の湾曲管部分32bと、下流側保護管42の湾曲管部分42bとを、ともに断面形状が円形の湾曲管部分32b,42bによって構成し、夫々の終端開口32c,42bの中心点p1,2の位置を上下方向で位置ずれさせることで、夫々の湾曲管部分32b,42b同士の間に形成される外気の通路rの幅L1,L2を、下流側導管32の湾曲管部分32bの上方側と下方側とで異なるようにしていた。
つまり、夫々の湾曲管部分32b,42bにおける曲率中心o1,o2に近い下方側での通路幅L1よりも、曲率中心o1,o2から遠い上方側での通路幅L2が大きくなるように、下流側導管32の湾曲管部分32bと下流側保護管42の湾曲管部分42bとの位置関係を設定していたが、これに限らず、例えば、夫々の湾曲管部分32b,42bの何れか一方、もしくは両方の断面形状を楕円形状にするなどして、夫々の湾曲管部分32b,42b同士の間に形成される外気の通路rの幅L1,L2を、下流側導管32の湾曲管部分32bの上方側と下方側とで異なるように構成してもよい。
【0053】
〔別実施形態の5〕
上記の実施形態では、外気導入部50の下部遮蔽部材52を、上流側導管31の屈曲部22の近くに設けた上部遮蔽部材35に支持させた構造のものを例示したが、下部遮蔽部材52の支持構造としては、これに限らず、例えば、上流側保護体41や下流側保護管42、あるいはその他の適所に支持させればよく、要は、吸気口51からの外気の導入を妨げず、エンジン8側からの熱気の回り込みを抑制し得る構造ものであればよい。また、この下部遮蔽部材52を省略することも可能である。さらに、上部遮蔽部材35の支持も、上流側保護体41に限らず、上流側導管31、あるいはその他の適所に支持させてもよい。
上記の上部遮蔽部材35及び下部遮蔽部材52は、別体で構成されたものに限らず、単一の部材で一体に構成してもよく、また、3個以上の別部材を組み合わせて構成してもよい。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【0054】
〔別実施形態の6〕
上記の実施形態では、排気浄化処理装置20の排出管部分20aに整流板26を装備させたものを示したが、これに限らず、例えば、排出管部分20aの内部に多数の通気孔を備えるメッシュフィルタを装備させるなど、過負荷時のアクセルアップに伴う排気の渦でキャビテーションが生じることを回避し易い構造のものを設けても良い。また、このような整流板26やメッシュフィルタなどのキャビテーションが生じることを回避するための構造は省略しても差し支えない。
その他の構成は、前述した実施形態と同様に構成すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明の作業車の排気装置としては、トラクタに限らず、コンバイン等の移動農機やバックホー等の建設機械や土木作業機、あるいは運搬車などに適用することができる。
【符号の説明】
【0056】
8 エンジン
20 排気浄化処理装置
21 排気管
22 屈曲部
23 上流側排気管
24 下流側排気管
25 エジェクタ部(排気部)
30 排気導管
32 下流側導管
32b 湾曲管部分
32c 終端開口
40 外部保護管
41 上流側保護体
42 下流側保護管
42b 湾曲管部分
42c 終端開口
50 外気導入部
o1,o2 曲率中心
p1,p2 中心点
r 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンからの排気が導入される排気導管と、その排気導管に外嵌して該排気導管との間に外気の通路を形成する外部保護管とで、機体外部へ排気を導く排気管を構成し、
前記排気管の下流側端部に、前記排気導管から排出される排気によるエジェクタ効果で排気導管の外周と外部保護管の内周との間に外気を吸引導入するエジェクタ部を構成するように、前記外部保護管の下流側端部を排気導管の下流側端部よりも排気方向での下流側に位置させてあり、
さらに、前記排気導管及び外部保護管の下流側端部に、排気方向を変更するように湾曲させた湾曲管部分を設けるとともに、この湾曲管部分における排気導管の端部外周と外部保護管の端部内周との間隔を、前記湾曲管部分における曲率中心側よりも反対側での間隔が大きくなるように構成してある作業車の排気装置。
【請求項2】
前記排気導管の下流側における終端開口と前記外部保護管の下流側における終端開口とは、それらの終端開口からの排気方向に沿う方向視で、前記排気導管の終端開口の中心点が前記外部保護管の終端開口の中心点よりも前記湾曲管部分における曲率中心側寄りに位置するように設けてある請求項1記載の作業車の排気装置。
【請求項3】
前記排気導管及び外部保護管の湾曲管部分は、その湾曲管部分よりも上流側の排気導管及び外部保護管とは別部材で構成されている請求項1又は2記載の作業車の排気装置。
【請求項4】
前記排気導管及び外部保護管の湾曲管部分には耐熱塗装が施されている請求項1〜3の何れか一項記載の作業車の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−113269(P2013−113269A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262476(P2011−262476)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】