説明

作業車両

【課題】
ラジエータの防塵ネットの塵埃をタイミングよく除去できるようにする。
【解決手段】
走行車両(1)にラジエータ(7)を設け、ラジエータ(7)の防塵ネット(28)の表面に縦長のブラシ(31)を当接させながら電動モータ(34)でブラシ(31)を往復してスライド可能にした清掃装置(30)を設け、清掃装置(30)は、エンジンの始動から設定時間駆動したら停止することで、運転をするときには防塵ネット(28)の塵埃詰りを防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタや建機等の作業車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ラジエータの防塵ネットをブラシで清掃する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4643511号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1においては、防塵ネットを清掃するためには、作業者がメンテナンス時に手動で開閉カバーを開ける必要があったため、清掃する機会が少なくなってしまう。本発明は、これら塵埃をタイミング良く除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はかかる技術的課題を解決するために次のような技術的手段を講じる。
請求項1記載の発明は、走行車両(1)にラジエータ(7)を設け、ラジエータ(7)の防塵ネット(28)の表面に当接しながらスライド可能に構成した防塵ネット(28)の清掃装置(30)を設け、走行車両(1)のエンジン(6)を駆動すると、清掃装置(30)が駆動することを特徴とする作業車両とする。
【0006】
すなわち、走行車両(1)のエンジン(6)が駆動すると、清掃装置(30)が駆動して防塵ネット(28)の表面に付着する塵埃を除去する。
請求項2記載の発明は、清掃装置(30)は、駆動を開始してから設定時間経過すると停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両とする。
【0007】
すなわち、オペレータが特に清掃装置(30)の停止操作をしなくても自動的に停止する。
請求項3記載の発明は、清掃装置(30)は、縦長のブラシ(31a,31b)等の弾性体(31)と、該弾性体(31)を往復移動させる電動モータ(34)とを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両とする。
【0008】
請求項4記載の発明は、弾性体(31)の往復移動の速度を設定可能にする制御部(16)を備えたことを特徴とする請求項3記載の作業車両とする。
すなわち、走行場所の塵埃の多寡の状況に応じて弾性体(31)の移動速度を可変して清掃能力を変更することができる。
【0009】
請求項5記載の発明は、薬液を散布するブーム(3)を備え、該ブーム(3)を散布姿勢にすると清掃装置(30)を駆動することを特徴とする請求項1から請求項4いずれか記載の作業車両とする。
【0010】
実際の圃場での作業時に清掃を行うことで効果的に防塵ネット(28)の塵埃を除去することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、防塵ネットの塵埃をタイミング良く除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】乗用管理機の側面図
【図2】乗用管理機の平面図
【図3】正面から見た乗用管理機の散布姿勢を示す図
【図4】伝動経路及び薬液の供給経路を示す図
【図5】正面側から見たラジエータ及び清掃装置を説明する図
【図6】側面から見たラジエータ及び清掃装置を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態の作業車両について、薬液を散布する乗用管理機に基づいて以下説明する。本実施の形態では走行車両の進行方向側を前側と呼ぶ。
本実施の形態の乗用管理機は、走行車両1に薬液を貯留する薬液タンク2と、薬液を散布するときに走行車両1の左右両側に延びるブーム3を搭載している。
【0014】
走行車両1は前輪4と後輪5とを備え、前部にはエンジン6やラジエータ7を備え、その周囲をボンネット8で覆っている。ボンネット8の後方にはステップ9及びステアリングハンドル10及び運転座席11を設け、運転座席11の後方の機体フレーム12には薬液タンク2を搭載している。
【0015】
ブーム3は薬液を散布する多数のノズル13を備え、図1及び図2に示すブーム受け14で支持する後ろ傾斜姿勢の収納状態と、図3に示す左右水平姿勢の散布状態に伸縮シリンダ41で姿勢変更可能に構成している。ブーム3が散布状態の姿勢か否かの検出はブーム姿勢検出センサ42の検出結果による。
【0016】
運転座席11の左右一側には薬液の散布やブーム3の姿勢を変更する各種操作スイッチを設ける操作盤15を設け、操作盤15の内部には、各種制御する制御部16を内蔵している。運転座席11の前側にはメータパネル17を設け、エンジン6を始動させるキースイッチ18を設けている。
【0017】
薬液を散布する経路及びエンジン6の伝動経路について図4に基づき説明する。
薬液タンク2とブーム3の間には、薬液をブーム3まで流すホース19を設け、ホース19の途中には薬液を送り出す防除ポンプ20や、薬液の供給又は停止を選択するコック21や、流量を調節する流量制御弁22等を備えている。
【0018】
エンジン6の駆動は入力軸23から走行車両1のミッションケース24に伝達し、走行系の駆動軸25や防除ポンプ20に伝動している。エンジン6の前側には冷却ファン26を設け、冷却ファン26の前側にはラジエータ7を設け、ラジエータ7の前側には後述する清掃装置30を設けている。
【0019】
乗用管理機の散布作業に付いて説明する。
オペレータは運転座席11に着座し、キースイッチ18を操作すると、エンジン6が始動する。そして、適宜アクセルや前後進レバー(図示せず)等を操作して走行し、圃場に到着すると、ブーム3を収納姿勢から薬液散布姿勢に変更し、図3に示すように圃場の作物間を走行しながら薬液を散布する。
【0020】
清掃装置30の構成について、図5及び図6に基づいて説明する。
ラジエータ7の正面側に、ラジエータ7の防塵ネット28を設け、メッシュ状に形成する防塵ネット28の表面に沿って左右方向スライドする清掃装置30を設けている。清掃装置30は縦長のブラシ31と、ブラシ31を取付けるベースプレート32を設け、ベースプレート32の上方にはリードカム33を設け、リードカム33の左右一側にはリードカム33を回転駆動する電動モータ34を設けている。電動モータ34はラジエータ7と正面視でラップする位置に設け、リードカム33の左右一端に備える伝動ケース38を介してリードカム33を回転駆動させる構成である。
【0021】
本実施の形態のブラシ31は左右方向に一対に並列する第一ブラシ31aと第二ブラシ31bとを設け、第一ブラシ31aと第二ブラシ31bは、ベースプレート32の左右両端部にそれぞれ取付け、第一ブラシ31aと第二ブラシ31bとの間には冷却ファン26の吸引風が通風可能な空間部32aを形成している。ベースプレート32は、リードカム33に取り付ける第一ボス35とベースプレート32を支持するための支持軸36に取り付ける第二ボス37を連結している。図5では第一ブラシ31aと第二ブラシ31が分かりやすいようにハッチングを付している。また、防塵ネット28はラジエータ7の前面を覆うものであるが、図5では一部だけ模様を図示している。
【0022】
次に清掃装置30の作用について説明する。
オペレータは、運転座席11に着座し、キースイッチ18を操作することでエンジン6を始動する。すると、制御部16により電動モータ34が駆動し、リードカム33が回転駆動し、第一ボス35がリードカム33に沿って移動すると共に、第二ボス37が支持軸36に沿って摺動することで、ベースプレート32が左右方向に往復移動する。すると、ブラシ31が防塵ネット28の表面に当接することで、防塵ネット28の表面に付着する塵埃を掻き取る。本実施の形態のブラシ31によると、第一ブラシ31aが作用して塵埃を掻き取った直後に、第二ブラシ31bが作用することで塵埃の掻き取り効果を大きくすることができる。また、ベースプレート32は往復移動するため、反対方向に移動するときには第二ブラシ31bが作用して塵埃を掻き取った直後に、第一ブラシ31aが作用することで塵埃の掻き取り効果を大きくすることができる。また、第一ブラシ31a及び第二ブラシ31bはそれぞれ防塵ネット28の左右端部までいずれかが到達する構成にすることで、防塵ネット28を隅々まで清掃できる。
【0023】
清掃装置30はキースイッチ18を操作してエンジンが始動してから設定時間(例えば30秒)駆動した後停止する。そのため、運転の開始毎に防塵ネット28を清掃することができるため、防塵ネット28が埃で詰ることによるラジエータ7の機能の低下を防止することができる。
【0024】
また、オペレータは、特にメンテナンスでボンネット8を開けることなく通常の運転操作で防塵ネット28を清掃することができるため、メンテナンスを忘れていても清掃が可能となる。
【0025】
清掃装置30を駆動するタイミングであるが、エンジン6始動時以外に、例えば、操作盤15に清掃スイッチ(図示せず)を設け、オペレータが清掃スイッチ(図示せず)を適宜操作すると清掃装置30が駆動する構成にしても良い。この構成によると、オペレータはボンネット8を開けなくてもラジエータ7の防塵ネット28を清掃することができるため、安全である。さらに、走行中でも清掃可能なため、運転中にラジエータ7の状態が気になった時に清掃することができる。または、エンジン6を始動し、走行を開始したことを検出(走行車輪の回転又は前後進レバーの操作)してから清掃装置30を駆動しても良い。
【0026】
または、ブーム3を散布姿勢にすると、清掃装置30を設定時間駆動する構成にしても良い。ブーム3の散布姿勢の検出とはブーム姿勢検出センサ42がブーム3の水平を検出するか、操作盤15のブーム操作レバー(図示せず)を操作したことを検出した場合である。この構成によると、特に塵埃が付着しやすい圃場において、散布時に清掃することができるため、効果的に防塵ネット28の清掃が行える。
【0027】
また、清掃装置30の往復速度や駆動時間を可変に設定することを可能にしても良い。すなわち、圃場の塵埃の発生量や作物に付着する害虫等の状況に応じて、清掃動作を変更可能に構成することで、圃場に適した清掃を行うことが可能となる。設定の変更はオペレータが任意に制御部16を操作することで設定変更が可能である。また、電動モータ34を可変速のモータに設けておくと良い。
【0028】
本実施の形態では、清掃装置30は独立の電動モータ34で駆動する構成としているが、ミッションケースから動力を取り出す構成とし、クラッチ(図示せず)で入り切りする構成でも良い。
【0029】
次に、ベースプレート32の着脱について説明する。
ベースプレート32に取り付けているブラシ31は使用と共に磨耗するため、定期的にブラシ31を交換する必要がある。ベースプレート32と第二ボス37とをボルト40で着脱可能に固定する。ボンネット8を外してボルト40を外すとベースプレート32が外れて取り出し、ブラシ31を交換することができる。簡単な構成及び操作でブラシ31を交換することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本実施の形態のラジエータの防塵ネットの清掃装置は、ラジエータ等の熱交換器を搭載した走行車両全般に適用できる。中でも、塵埃等が多く発生する中を走行する建設機械やトラクタやコンバイン等の農業機械用の作業車両に適している。
【符号の説明】
【0031】
1 走行車両
3 ブーム
6 エンジン
7 ラジエータ
16 制御部(コントローラ)
28 防塵ネット
30 清掃装置
31 弾性体(ブラシ)
34 電動モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車両にラジエータを設け、ラジエータの防塵ネットの表面に当接しながらスライド可能に構成した防塵ネットの清掃装置を設け、
走行車両のエンジンを駆動すると、防塵ネットの清掃装置が駆動することを特徴とする作業車両。
【請求項2】
清掃装置は、駆動を開始してから設定時間経過すると停止する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
清掃装置は、縦長のブラシ等の弾性体と、該弾性体を往復移動させる電動モータとを備えたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載の作業車両。
【請求項4】
弾性体の往復移動の速度を設定可能にする制御部を備えたことを特徴とする請求項3記載の作業車両。
【請求項5】
薬液を散布するブームを備え、該ブームを散布姿勢にすると清掃装置を駆動することを特徴とする請求項1から請求項4いずれか記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−111044(P2013−111044A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−261765(P2011−261765)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】