説明

作業車両

【課題】旋回に連動して切状態となる旋回内側のサイドクラッチの切状態の解除操作機構をコンパクトに構成し、広い取付スペースを必要としない作業車両を提供する。
【解決手段】走行車体に走行装置を設け、走行装置への駆動力を入切する切替伝動装置300を入切操作する操作部材305を設け、走行車体を操向操作する操舵部材を旋回操作すると切替伝動装置300を操作部材305を介して切操作する旋回連動機構Aを設けた作業車両において、旋回連動機構Aと操作部材305の間に旋回連動状態を解除する解除操作部材307を設けると共に、この解除操作部材307を旋回連動状態と連動解除状態に切り替える解除切替部材303を設けて構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行車両に苗植付装置等の作業装置を連結した、乗用型の作業車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の作業車両には、電磁バルブを制御して旋回内側の後輪のサイドクラッチを間欠的に入切し、間欠的に旋回内側の後輪に駆動力を供給して回転させることにより、左右の後輪を駆動させて旋回走行を行なう技術が存在する。(特許文献1)
また、旋回操作中は切状態となる旋回内側のサイドクラッチを、切替操作ペダルを操作してサイドクラッチ機構の前部に設けたスプリングを伸張させ、連係機構を介して入状態とすることにより、左右の後輪を駆動させて旋回走行を行なう技術が存在する。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−263803号公報
【特許文献2】特許第4454141号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された作業車両は、旋回中に所定間隔ごとに電磁バルブが開閉されてサイドクラッチを入切操作する構成であり、圃場端での旋回性能が高く、作業能率の向上を図ることができるものである。しかしながら、電磁バルブ用の送油パイプや電磁バルブ制御用のケーブル等が複雑に配置されるため、機体構成が複雑化し、部品点数が増大する問題がある。
【0005】
また、特許文献2に記載された作業車両は、旋回内側のサイドクラッチを入操作する際、スプリングの伸張を後部の連係機構を介してサイドクラッチ機構に伝える構成としているため、スプリングからサイドクラッチ機構までの前後の長さが長くなり、設置のための広いスペースが必要になる問題がある。
【0006】
本発明は、この問題を解消しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1記載の発明は、走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)への駆動力を入切する切替伝動装置(300)を入切操作する操作部材(305)を設け、該走行車体(2)を操向操作する操舵部材(34)を旋回操作すると切替伝動装置(300)を該操作部材(305)を介して切操作する旋回連動機構(A)を設けた作業車両において、該旋回連動機構(A)と操作部材(305)の間に旋回連動状態を解除する解除操作部材(307)を設けたことを特徴とする作業車両両とした。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記切替伝動装置(300)を入切操作する切替軸(300a)を設け、該切替軸(300a)に前記操作部材(305)を設け、前記操舵部材(34)の操作に連動して回動する前記旋回連動機構(A)を構成する旋回連動部材(306)を設け、該旋回連動部材(306)の上部側に解除操作部材(307)を回動自在に設け、該旋回連動部材(306)に連動して解除操作部材(307)を操作部材(305)に接触する方向に付勢する付勢部材(317)を旋回連動部材(306)と解除操作部材(307)に亘って設けると共に、前記解除操作部材(307)を旋回連動状態及び旋回連動解除状態に操作する解除切替部材(303)を設け、該解除切替部材(303)と解除操作部材(307)を牽引部材(304)で連結し、該解除切替部材(303)を付勢部材(317)の付勢力に抗する力で操作すると解除操作部材(307)が旋回連動状態を解除して前記切替伝動装置(300)を入操作する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両とした。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記解除操作部材(307)の下部側に接触体(308)を設けると共に、前記入切部材(305)に該接触体(308)が接触する接触部(305a)を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両とした。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記走行装置(11)の回転数を検知する回転検知部材(320)を設け、前記操舵部材(34)の旋回操作に連動して旋回連動部材(306)を前後方向に回動させる前後の分割回動操作軸(314a,314b)を設けると共に、該後側の分割回動操作軸(314b)を前後方向に移動させる電磁弁(322)を設け、旋回時に前記回転検知部材(320)が検知する走行装置(11)の回転数が所定値未満になると電磁弁(322)を作動させて前記後側の分割回動操作軸(314b)を後方に移動させ、前記旋回連動部材(306)を後方回動させて解除操作部材(307)を旋回連動解除状態に切り替える構成としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の作業車両とした。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記操舵部材(34)の旋回操作に合わせて回動する操舵ロッド(34a)に接触突起体(327)を設け、該接触突起体(327)よりも下方に回動規制部材(328)を上下摺動自在に設け、該回動規制部材(328)に前記接触突起体(327)に接触して操舵ロッド(34a)の回動を規制する規制切欠部(328b)を形成すると共に、該回動規制部材(328)を上下摺動させる摺動装置(330)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の作業車両とした。
【0012】
請求項6記載の発明は、前記回転検知部材(320)が検知する走行装置(11)の回転数から走行車体(2)の走行速度を検知し、所定値以上の走行速度が検知されると前記摺動装置(330)を作動させて回動規制部材(328)を上方に摺動させ、操舵ロッド(34a)の回動を規制する構成としたことを特徴とする請求項5記載の作業車両とした。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の発明によれば、旋回連動機構(A)と入切部材(305)の間に旋回連動状態を解除操作する解除操作部材(307)を設けたことにより、旋回中に走行装置(11)を駆動させることができるので、旋回走行が短時間で行え、作業能率が向上する。
【0014】
請求項2記載の発明によれば、請求項1記載の発明の効果に加えて、操舵部材(34)の操作に連動して浅海連動機構(A)を構成する旋回連動部材(306)が回動すると、付勢部材(317)が解除操作部材(307)を入切部材(305)に向かって付勢する構成としたことにより、操舵部材(34)を旋回操作すると自動的に走行装置(11)への駆動力が遮断されるので、旋回操作時に解除切替部材(303)を操作して切替伝動装置(300)を切操作する必要が無く、操作性が向上する。
【0015】
そして、解除切替部材(303)を操作すると解除操作部材(307)が牽引部材(304)に引かれて回動して旋回連動解除状態に切り替わることにより、旋回中に走行装置(11)を駆動させることができるので、旋回走行が短時間で行え、作業能率が向上する。
【0016】
また、旋回連動部材(306)に連動して付勢部材(317)が解除操作部材(307)を入切部材(305)側に付勢することにより、解除切替部材(303)の操作が行われなくなると旋回連動状態に自動的に切り替わるので、解除操作部材(307)を旋回連動解除状態から旋回連動状態に切り替える操作が不要となり、操作性が向上する。
【0017】
さらに、旋回連動状態に切り替える操作を忘れることにより、旋回軌跡が乱れることが防止されるので、旋回走行が効率よく行われるため、作業能率が向上する。
上記のとおり、解除切替部材(303)を操作することによって切替伝動装置(300)の入切が切り替わり、走行装置(11)への駆動力の入切操作を切り替える構成としたことにより、油圧系統の配管や電子制御系統の配索が不要となるので、伝動切替装置(300)から走行装置(11)への駆動力の切替機構が簡潔な構成となる。
【0018】
また、旋回連動状態を解除する解除操作部材(307)を旋回連動部材(306)の上部側に設けたことにより、切替伝動装置(300)の切替操作機構の前後幅が短くなるので、広い設置スペースが不要となる。
【0019】
請求項3記載の発明によれば、請求項1または2記載の発明の効果に加えて、解除操作部材(307)の下部側に接触体(308)を設けると共に、入切部材(305)に接触体(308)が接触する接触部(305a)を形成したことにより、解除操作部材(307)が付勢部材(317)に付勢されて連動操作状態となるときに接触する位置が決まっているので、入切装置(305)が確実に入切操作される。
【0020】
請求項4記載の発明の効果は、請求項1から3の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、回転検知部材(320)が検知する走行装置(11)の回転数が所定値未満になると、電磁弁(322)作動して後側の分割回動操作軸(314b)を後方に移動させ、旋回連動部材(306)を回動させて解除操作部材(307)を旋回連動解除状態に切り替えることにより、伝動切替装置(300)を入操作して走行装置(11)に駆動力が供給される状態に切り替えるので、旋回走行中に走行装置(11)の駆動を切った状態では走行できない状態になると自動的に旋回内側の走行装置(300)から走行装置(11)に駆動力を供給することができ、旋回走行が中断されることが防止され、作業能率が向上する。
【0021】
請求項5記載の発明の効果は、請求項1から4の何れか1項に記載の発明の効果に加えて、操舵ロッド(34a)に設けた接触突起体(327)に規制切欠部(328b)が接触する位置に回動規制部材(328)を摺動させて配置することにより、接触抵抗により操舵ロッド(34a)の左右回動を規制ことができるので、誤操作や圃場の抵抗によって操舵ロッド(34a)が回動することが防止され、直進走行が可能となる。
【0022】
また、回動規制部材(328)を上下摺動自在に設け、直進走行が不要なときには下方摺動させて規制切欠部(328b)に接触突起体(327)が接触しない位置に配置することにより、操舵ロッド(34a)が回動自在となるので、操舵部材(34)の操作により進行方向の変更が容易に行える。
【0023】
請求項6記載の発明の効果は、請求項5記載の発明の効果に加えて、走行車体(2)の走行速度が所定値以上になると、摺動装置(330)を作動させて回動規制部材(328)を接触突起体(327)に自動的に近付けることができるので、高速での走行が可能な直進時に自動的に直進走行の補助が行える。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】乗用型田植機の側面図
【図2】乗用型田植機の平面図
【図3】積層形態の予備苗枠の側面図
【図4】展開形態の予備苗枠の側面図
【図5】各制御部材のブロック図
【図6】サイドクラッチ機構の要部側面図
【図7】サイドクラッチ機構の要部背面図
【図8】別構成例のサイドクラッチ機構の要部側面図
【図9】旋回時に走行停止を検知するとサイドクラッチ機構の旋回連動切状態を解除する制御を示すフローチャート
【図10】パワーステアリング装置の油圧制御を切ると、昇降油圧シリンダへの送油量が一時的に増加する制御を示すフローチャート
【図11】(a)ハンドルポストに旋回操作規制機構を設けた要部正面図、(b)旋回操作規制機構がハンドルポストの左右回動を規制する状態を示す要部正面図
【図12】直進走行が続くと旋回操作規制機構が自動的に規制位置に摺動する制御を示すフローチャート
【図13】苗植付部の重量の変化に合わせて昇降油圧シリンダへの作動油の送油速度を変更する制御を示すフローチャート
【図14】ローリング軸の回動を検知するローリングセンサを装着した苗植付部の要部正面図
【図15】所定時間内に過度の苗植付部ローリングを検知すると走行速度を減速する制御を示すフローチャート
【図16】所定時間内に過度の苗植付部の上下動を検知すると、昇降油圧シリンダを伸縮させて上下動を打ち消す制御を示すフローチャート
【図17】油圧式無段変速装置のトラニオン軸の開度に合わせて、走行操作レバーを操作したときのトラニオン軸の操作時間を変更する制御を示すフローチャート
【図18】センターフロートの仰角の角速度に合わせて昇降油圧シリンダへの送油速度を変更する制御を示すフローチャート
【図19】表示ディスプレイの要部平面図
【図20】整地ロータに過負荷が掛かると整地ロータの下げ過ぎという情報を表示ディスプレイに表示する制御を示すフローチャート
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明の実施の形態について、図面に基づき説明する。
本件においては、平面図において、機体の進行方向に対して左側を機体左右一側、機体の進行方向に対して右側を機体左右他側と称する。以下、各部の詳細を具体的に記載する。
【0026】
図1及び図2は、本発明の作業車両の一実施例である乗用型田植機の側面図と平面図である。また、図5は本発明の各制御に関する構成部材のブロック図である。
この乗用型田植機は、走行車体2の後側に昇降リンク装置3を介して苗植付部4を昇降可能に設け、該走行車体2の後部上側に施肥装置5の本体部分を配置している。そして、該走行車体2の前部にミッションケース12を設け、該ミッションケース12の左右側方にそれぞれ前輪ファイナルケース13,13を設けると共に、該左右の前輪ファイナルケース13,13の操向方向を変更可能な各々の前輪支持部から外向きに突出する左右の前輪車軸14に駆動輪である左右一対の前輪10,10を設ける。
【0027】
また、前記ミッションケース12の背面部に機体のメインフレーム15の前端部を固着し、該メインフレーム15の後端部で且つ左右方向中央部に前後水平に設けた後輪ローリング軸(図示省略)を支点として左右の後輪ギアケース18,18をローリング自在に設け、該後輪ギアケース18,18から外側方向に向けて突出させた左右の後輪車軸18a,18aにそれぞれ後輪11,11を軸着する。
【0028】
さらに、前記メインフレーム15の上部で且つ、機体の前後及び左右方向の略中央位置にエンジン20を設け、該エンジン20の駆動力をベルト伝動装置21及びHST(油圧式無段変速装置)23を介して前記ミッションケース12に伝動する構成とする。そして、前記ミッションケース12に伝達された回転動力は、該ミッションケース12に内装するトランスミッション(図示省略)により変速された後、走行動力と外部取出動力に分離して取り出される。
【0029】
これにより、走行駆動力の一部が前記左右の前輪ファイナルケース13,13に伝達されて左右の前輪10,10を回転駆動させると共に、残りの走行駆動力は前記左右の後輪ギアケース18,18に伝達されて左右の後輪11,11を回転駆動させる。
【0030】
また、外部取出動力は、前記走行車体2の後部に設けた植付クラッチケース25に伝達され、該植付クラッチケース25から植付伝動軸26を経由して苗植付部4へ伝動されると共に、施肥伝動機構(図示省略)を経由して前記施肥装置5に伝動される。
【0031】
前記メインフレーム15の上部に、該メインフレーム15を覆う平坦なフロアステップ35をエンジン20を避けて設け、該フロアステップ35上で且つエンジン20の外周に、エンジン20を覆うエンジンカバー30を設ける。該エンジンカバー30は前側下部を回動支点として回動可能に構成すると共に、上部に作業者が着座する作業座席31を装着する。
【0032】
そして、該作業座席31よりも機体前側で且つフロアステップ35上に、本件作業車両の各種作業機構を内装するボンネット32を設け、該ボンネット32の上部に各作業部の設定を変更操作するスイッチ類を配置する操作パネル33と、作業者が前記左右の前輪10,10を操舵するハンドル34を設ける。
【0033】
また、前記フロアステップ35のうち、作業座席31の左右両側は格子状に形成し、フロアステップ35上を移動する作業者の足等に付着した泥土が圃場に落下する構成としている。さらに、図2に示すとおり、フロアステップ35の左右両側に、左右の延長ステップ35a,35aを設け、該左右の延長ステップ35a,35aを格子形状とすることにより、作業座席31に到達する前に泥土を落とし、フロアステップ35上に泥土が残りにくく、作業後の掃除に要する労力が軽減される構成としている。
【0034】
そして、前記フロアステップ35の後部には、前記左右の後輪11,11のフェンダを兼ねるリアステップ36を設ける。該リアステップ36は、機体前側から後側に向かう後上り傾斜姿勢の部分と、この後上り傾斜姿勢の終端部から機体後方に向かう平坦な部分を有しており、作業者は前記苗植付部4に苗を補充する時には、この平坦な部分に立って作業をすることができるので、苗の補充作業の能率が向上する。
【0035】
なお、本件発明においては、前記フロアステップ35とリアステップ36は樹脂材を一体形成したものであり不可分であるが、フロアステップ35とリアステップ36を分離可能に構成しても良い。分離可能に構成すると、メンテナンス作業の際にフロアステップ35及びリアステップ36を取り外す際、フロアステップ35及びリアステップ36の重量が軽く、且つエンジンカバー30等に干渉しにくくなるので、着脱が容易になり、作業能率が向上する。
【0036】
また、前記左右の延長ステップ35a,35aの機体後部も、前記左右のリアステップ36,36と同じ形状に構成すると、植付条数が多く、苗植付部4の左右幅が広い機体であっても、作業者は苗植付部4に近付いて苗の補充作業をすることができるので、作業能率が向上する。
【0037】
また、走行車体2の前部左右両側には、図1から図4で示す、補給用の苗を載置する予備苗枠38,38が、機体よりも側方に張り出す位置と内側に収納した位置とに回動可能に設けられている。該左右の予備苗枠38,38は苗を載置する複数の予備苗載せ台38a,38b,38c,38dを備え、該予備苗載せ台38a,38b,38c,38dが側面視で前後方向に並ぶ展開形態(第1の形態)と、上下方向に並ぶ積層形態(第2の形態)に切替可能な構成とする。
【0038】
本件実施例では、この複数の予備苗載せ台を、展開形態では機体前側から第1、第2、第3、第4の予備苗載せ台と呼称し、積層形態では機体上側から第1、第2、第3、第4の予備苗載せ台と呼称する。但し、この呼称は参考として提示するものであり、予備苗載せ台の数量を限定するものではない。
【0039】
苗の植付作業をするときは前記左右の予備苗枠38,38を機体よりも側方に張り出させることにより、該左右の予備苗枠38,38とボンネット32との間に、機体前側から走行車体2上に作業者が乗り降りするスペースを確保することができるので、作業者は圃場の位置に合わせて乗り降りする位置を選択することができ、作業能率が向上するとともに、乗り降りの際の安全性が向上する。
【0040】
一方、作業を終えて本件作業車両を軽トラック等の輸送車両や、倉庫等の収納場所に収納するときは、前記左右の予備苗枠38,38を回動させて走行車体1の左右幅内に収めることにより、左右幅をコンパクトにすることができるので、余分な収納スペースを取ることがなくなる。
【0041】
前記予備苗枠38の構成について、図3と図4で説明する。
走行車体1の左右両側に支柱381をそれぞれ設け、該支柱381の上部に主支持フレーム381aを設けると共に、該主支持フレーム381aよりも後ろ側に、側面視でL字型の副支持フレーム381bを設ける。そして、該主支持フレーム381aの上端部に主リンクアーム383を回動中心軸384を介して回動自在に装着し、前記副支持フレーム381bの上端部に副回動軸385を介して後側の副リンクアーム386bを回動自在に配置する。
【0042】
また、前記主リンクアーム383及び副リンクアーム386bが積層状態であるときの下端部に第4の予備苗載せ台38dを取り付ける第4取付フレーム387dを設け、前記回動中心軸384及び副回動軸385よりも上方位置に第3の予備苗載せ台38cを取り付ける第3取付フレーム387cを設ける。さらに、前記主リンクアーム383の上端部に第2の予備苗載せ台38bを取り付ける第2取付フレーム387bの後部側を取り付け、該第2取付フレーム387bの前部側に前側の副リンクアーム386aの上端部を取り付けると共に、該前側の副リンクアーム386aの下端部を前記第3取付フレーム387cの前部側に取り付ける。
【0043】
そして、前記回動中心軸384に回動ギア388を軸着し、該回動ギア388に電動モータ390に取り付けた駆動ギア389を噛み合わせ、該回動ギア388と電動モータ390を苗枠伝動ケース391に内装する。
【0044】
さらに、前記第2取付フレーム387bの上部で且つ前後方向の略中央位置に取付支柱393を設け、該取付支柱393の上端部に第1の予備苗載せ台38aを取り付ける第1取付フレーム387aを取り付ける。前記取付支柱393は、積層形態であるときに第1の予備苗載せ台38aと第2の予備苗載せ台38bの上下間隔が、第2の予備苗載せ台38bと第3の予備苗載せ台38c、及び第3の予備苗載せ台38cと第4の予備苗載せ台38dの上下間隔よりも広くなる長さとする。また、前記予備苗枠38を展開形態に切り替えると、第1の予備苗載せ台38aは第2の予備苗載せ台38bと共に前側に移動する構成とする。
【0045】
なお、前記取付支柱393は、第1取付フレーム387aの前後方向にそれぞれ一つずつ設ける構成とすると、支持強度が向上し、耐久性が向上する。
上記により、前記電動モータ390を作動させて駆動ギア390を回転させ、回動ギア388を回転させると、主リンクアーム383、前側及び後側の副リンクアーム386a,386bが積層形態となる方向及び展開形態となる方向に回動させる構成となるので、作業者は予備苗枠38を積層形態または展開形態に切り替える際、手作業で主リンクアーム383等を移動させる必要がなく、作業者の労力が軽減される。
【0046】
また、図2で示すとおり、前記電動モータ390の作動を入切操作する苗枠操作スイッチ392をボンネット32の上部で且つ、操縦座席31に着座した作業者が手を伸ばすと届く位置に配置すると、作業者は操縦座席31から降りることなく予備苗枠38の形態の切替操作を行なうことができるので、作業能率が向上する。
【0047】
そして、予備苗枠38を展開形態に切り替えると、第2、第3、第4の予備苗枠38b,38c,38dが前後方向に直線状に並ぶことによって、第2の予備苗枠38bに積み込んだ苗を押すと後側の第3または第4の予備苗枠38c,38dに移動させることができるので、苗の積み込み作業能率が向上する。
【0048】
さらに、第2の予備苗載せ台38bの上方に第1の予備苗載せ台38aが位置することにより、作業者は第1の予備苗載せ台38aに苗を積み込むことができるので、作業能率が向上するとともに、展開形態にした予備苗枠38が前方に突出し過ぎないため、苗の積み込み作業中に予備苗枠38が撓むことがなく、苗が振り落とされることが防止される。
【0049】
また、第1の予備苗載せ台38aと第2の予備苗載せ台38bの上下間隔を、第2、第3の予備苗載せ台38b,38c、及び第3、第4の予備苗載せ台38c,38dの上下間隔よりも広くしたことより、積層形態または展開形態に予備苗枠38を切り替えるとき、主リンクアーム383の回動軌跡に第1の予備苗載せ台38a及び第1取付フレーム387aが干渉することを防止できる。
【0050】
なお、電動モータ390に温度変化によって屈曲するバイメタル、あるいは許容量以上の負荷がかかると即座に通電を遮断する通電遮断部材を内装し、主リンクアーム383、前側及び後側の副リンクアーム386a,386bが積層形態または展開形態になってそれ以上回動できなくなった際に電動モータ390に負荷がかかると自動的に電動モータ390の通電が停止する構成とすると、予備苗枠38が積載状態または展開状態になると同時に電動モータ390を停止させるためのスイッチ等の停止制御部材が不要となるので、予備苗枠38の切替操作機構が簡易化される。
【0051】
次に、苗植付部4等について説明する。
図1及び図2で示すとおり、前記昇降リンク装置3は、上部リンクアーム40と左右一対の下部リンクアーム41,41で構成する平行リンクとし、該上部リンクアーム40と下部リンクアーム41,41の一側端部を前記メインフレーム15の後部側に立設する背面視門型のリンクベースフレーム42に取り付ける。また、前記上部リンクアーム40と下部リンクアーム41,41の他側端部を苗植付部4側の上下リンクアーム43に取り付ける。該上下リンクアーム43の後部には、苗植付部4を上下回動させるローリング軸44を設けている。
【0052】
そして、前記メインフレーム15に固着した支持部材と上部リンクアーム40に一体形成したスイングアーム(図示省略)の先端部の間に昇降油圧シリンダ46を伸縮自在に設け、該シリンダ46を油圧で伸縮させることにより前記上部リンクアーム40が上下に回動して苗植付部4がほぼ一定姿勢のまま昇降する構成とする。
【0053】
上記により、苗植付部4を略同じ姿勢のままで上下移動させることができるので、圃場端での旋回時等に苗植付部4を上昇させ、旋回終了後に苗植付部4を下降させれば植付姿勢に戻るため、細かい調節操作が不要となり、作業能率が向上する。
【0054】
図1及び図2で示すとおり、本件では、前記苗植付部4は8条植の構成とし、苗を一条分ずつ積載する複数の(本件実施例では8つの)苗載せ台51a…を左右方向に連結することにより、苗タンク51を構成する。そして、該苗タンク51の下方に苗植付部4のフレームを兼ねる苗植付伝動ケース50を設け、該苗植付伝動ケース50の駆動力により苗タンク51を左右方向に往復移動させる構成とする。
【0055】
また、前記苗植付伝動ケース50から駆動力を取り出す苗植え伝動ケース54…を左右方向に等間隔を空けて複数(本件実施例では4つ)装着し、該苗植え伝動ケース54…の左右両側に楕円軌跡を描いて回転駆動しながら苗を取って圃場に植え付ける左右の植付装置52,52をそれぞれ装着する。
【0056】
さらに、前記苗タンク51の下端部に、苗タンク51の左右幅よりも左右方向に長い、苗タンク51に積載された苗を受け止める側面視L字型の苗受け板51cを設け、該苗受け板51cに、前記苗載せ台50に積載した苗を各植付装置52,52…が掻き取る際に通過する苗取出口51d…を複数ヶ所(本件実施例では8ヶ所)切り欠いて形成する。また、前記苗タンク51の上下方向の下部側に、各条に所定間隔ごとに苗を苗受け板51c側(苗植付装置4の下部側)に移動させる左右一対の苗送りベルト51b,51bを設け、該左右の苗送りベルト51b,51bの左右間に、積載された苗の量が所定量未満になったことを検知する苗補充検知体140…を各条に一つずつ設ける。
【0057】
該苗補充検知体140…は、各苗載せ台51a…に投入された苗に上方から重量で押されると苗があると認識するスイッチ式、または苗に上方を覆われると苗があると認識するセンサ式とする。左右の苗送りベルト51b,51b…に苗が送られ、左右の植付装置52,52に苗が圃場に植え付けられて消費されると、苗載せ台51a…に載置された苗は次第に減少していく。そして、苗の残量が苗補充検知体140…の設置位置よりも下方までとなると苗の減少が検知され、ブザー141aや点灯ランプ141b等の報知装置141を作動させて、作業者に苗の補充作業の必要があることを報知する。
【0058】
上記により、苗が無くなったことに作業者が気づかず、苗が植え付けられない区間が発生することを防止できるので、苗の植付作業能率が向上する。
また、作業者が苗の植え付けられなかった場所に、手作業で苗を植え付ける作業が不要となるため、作業者の労力が軽減される。
【0059】
前記苗植付部4の下部には、左右方向の略中央位置にセンターフロート55を設け、該センターフロート55の左右両側にミドルフロート57,57とサイドフロート56,56をそれぞれ設ける。該センターフロート55、サイドフロート56,56及びミドルフロート57,57は、苗植付部4を下降させて苗の植え付け作業を行うとき、圃場の泥面(圃場の表土面)に接地し、機体を進行させると、センターフロート55、サイドフロート56,56及びミドルフロート57,57が泥面を整地しつつ滑走する。この整地跡に前記苗植付装置52…が苗が植え付けるよう、前記苗植え伝動ケース54…の前後長さ及び苗植付装置52…の植付軌跡が設定されている。
【0060】
そして、前記センターフロート55、サイドフロート56,56及びミドルフロート57,57は、圃場の表土面の凹凸に合わせて前端側が上下動するように回動自在に取り付けられている。特に、前記センターフロート55の取付基部には、該センターフロート55の前部の上下動する角度を検知する仰角センサ(ポテンショメータ)331が設けられており、該仰角センサ331の検知した角度に合わせて前記昇降油圧シリンダ46を伸縮制御する比例油圧バルブ161の開度を変更し、苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを一定に維持する構成としている。
【0061】
上記により、苗をセンターフロート55、サイドフロート56,56及びミドルフロート57,57で均した場所に植えることができるので、苗の周りの土の高さに偏りが生じにくくなり、苗の生長が安定し、作物の品質が向上する。
【0062】
そして、仰角センサ235が検出するセンターフロート55の上下角度に合わせて苗植付部4を昇降させることにより、苗の植付深さを安定させることができるので、苗の植付深さが浅くなり過ぎ、圃場に張った水の流れで苗が流されたり、強風で苗が飛ばされたりすることが防止されるため、作物の収穫量が向上する。
【0063】
また、苗の植付深さが深くなり過ぎ、日照不足や水分過多により作物の生育が乱れることを防止できるので、作物の品質が向上すると共に、植付作業後に苗が枯れることを防止できる。
【0064】
前記施肥装置5は、肥料ホッパ60に貯留した粒状の肥料を複数条分(本件では8条分)の繰出部61…から一定量ずつ繰り出し、その肥料を複数条分(本件では8条分)の施肥ホース62…で前記センターフロート55、サイドフロート56,56、ミドルフロート57,57の左右両側に取り付けた施肥ガイド(図示省略)まで案内し、該施肥ガイド…の前側に設けた作溝体(図示省略)…によって苗植付条の側部近傍に形成される施肥溝内に落とし込む構成としている。
【0065】
また、ブロア用電動モータ53で駆動するブロア58で発生させた風が、左右方向に長いエアチャンバ59を経由して前記施肥ホース62…に吹き込まれ、該施肥ホース62…内の肥料を風圧で強制的に搬送する構成としている。
【0066】
上記により、各条の苗の植付位置に作溝体で形成した溝に粒状の肥料を落とすことができるので、肥料が水流や風によって苗から離れた位置に移動することが防止され、苗が肥料不足で生育不良を起こすことがなく、作物の生育が安定する。
【0067】
また、肥料が一ヶ所に集まり、養分過多が原因となる生育不良の発生、一部の作物だけが急速に生長して収穫時期が乱れることを防止できるので、作物の品質が安定する。
前記苗植付部4には、整地装置の一例であるセンターロータ27aと、左右一対のサイドロータ27b,27bが設けられている。また、前記連結した苗載せ台51…は、苗植付部4の全体を支持する左右方向と上下方向に幅一杯の矩形の支持枠体65の支持ローラ65aをレールとして左右方向にスライドする構成としている。
【0068】
該センターロータ27aと左右のサイドロータ27b,27bは、苗載せ台51…の前記支持枠体65の両側辺部材65bに上端を回動自在に支持された梁部材と、該梁部材の両端に固着した支持アームと、該支持アームに回動自在に取り付けられたロータ支持フレームからなる支持構造部に支持されている。該ロータ支持フレームの下端には、センターロータ27aとサイドロータ27b,27bのそれぞれの駆動軸70a,70bが取り付けられている。また、前記ロータ支持フレーム68の下端部近くは、前記苗植付伝動ケース50に回動自在に取り付けられた連結部材71に連結されている。
【0069】
そして、前記センターフロート55の前方にセンターロータ27aを配置し、該センターフロート27aは、前記サイドフロート56,56とミドルフロート57,57の前方に配置するサイドロータ27b,27bよりも前方に配置する。さらに、前記左右一側、本件では機体左側の前記後輪ギアケース18と左側のサイドロータ27bのロータ入力ケース(図示省略)を、ロータ伝動ロッド27cで連結し、センターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bに駆動力が伝動される構成とする。
【0070】
なお、左側の後輪ギアケース18からロータ伝動ロッド27cを経由してロータ入力ケースに入力された駆動軸は、左側のサイドロータ27bの駆動軸70bを回転させ、左右のサイドロータ27b,27bとセンターロータ27aを連結する左右の整地伝動ケース73,73のうち、左側の整地伝動ケース73を経由してセンターロータ27aの駆動軸70aを回転させる。そして、該駆動軸70aから右側の整地伝動ケース73を経由して左側のサイドロータ27bの回転軸70bを回転させる。
【0071】
前記苗植付部4は、走行車体2のメインフレーム15に昇降リンク装置3で昇降自在に装着されているが、昇降させる構成と苗植付部4の構成について説明する。
前記走行車体2に基部側を回動自在に設けた油圧シリンダ46のピストン上端部を昇降リンク装置3に連結し、前記走行車体2に設ける比例油圧バルブ161により油圧シリンダ46に作動油を供給及び排出して、油圧シリンダ46のピストンを伸長及び収縮させて昇降リンク装置3に連結した苗植付部4が上下動する構成としている。
【0072】
図6及び図7で示すとおり、前記ボンネット32の内部に機体後側から前側に向かう前上がり上方傾斜姿勢で左右のクラッチ操作アーム301,301の上端部を回動自在に設け、該左右のクラッチ操作アーム301,301の下端部に作業者が足を当てて操作する左右のペダルプレート302,302をそれぞれボンネット32の外側に取り付けて、前記左右の後輪11,11への駆動力の伝達を切り替える左右のサイドクラッチ300,300を操作する左右のクラッチ操作ペダル303,303を形成する。そして、前記左右のクラッチ操作アーム301,301の上端部側に左右のクラッチ操作ワイヤ304,304の一側端部を取り付ける。
【0073】
また、前記左右のサイドクラッチ300,300の切替操作軸300a,300aに左右のクラッチシフタアーム305,305を角軸305b,305bを介して装着し、該左右のクラッチシフタアーム305,305の側方で且つ左右の切替操作軸300a,300aに前記ハンドル34の旋回操作に連動して回動する左右の下側連係アーム306a,306aを一側部(機体右側)に溶着した左右の回動ボス306c,306cを装着する。そして、該左右の回動ボス306c,306cの他側部(機体左側)に左右の上側連係アーム306b,306bを溶着して左右の連係アーム306,306を構成する。
【0074】
さらに、該左右の上側連係アーム306b,306bの上端部に左右のクラッチシフタアーム305,305を上下回動させて前記左右のサイドクラッチ300,300を入切させる左右の切替作動アーム307,307を回動自在に設ける。該左右の切替作動アーム307,307の回動支点307a,307aは、上下方向の中間位置に設ける。
【0075】
なお、左右の切替操作軸300a,300aは、左右のサイドクラッチ300,300に内装された復帰スプリング(図示省略)の力により、左右のクラッチシフタアーム305,305に負荷が掛からない状態になると、左右のクラッチシフタアーム305,305が僅かに上方回動するものとしている。
【0076】
前記左右のクラッチシフタアーム305,305の後部側で且つ上面には平坦部305aがそれぞれ形成されており、前記左右の切替作動アーム307,307の下端部には該左右の平坦部305a,305aに接触して左右のクラッチシフタアーム305,305を上下方向に回動させる接触ローラ308,308を設けている。また、該左右の切替作動アーム307,307の上端部には、前記左右のクラッチ操作ワイヤ304,304の他側端部を連結する。
【0077】
そして、該左右の接触ローラ308,308の回転軸307b,307bの端部に左右のスプリング317,317の一側端部(後端部)を装着すると共に、該左右のスプリング317,317の他側端部(前端部)を前記左右の上側連係アーム306b,306bの下端部に形成した引掛け突起306d,306dに装着する。
【0078】
なお、該左右のスプリング317,317は、左右の切替作動アーム307,307を機体前側に引っ張る付勢力を有するものとする。
さらに、前記ハンドル34の操作により左右方向に回転するハンドルロッド34aを設け、該ハンドルロッド34aの下端部にハンドル34の操作に必要な力を軽減するパワーステアリング装置309を設け、該パワーステアリング機構309の下方に前記ハンドル34を左旋回方向または右旋回方向の操作に連動して回動する旋回連動機構310を設ける。そして、該旋回連動機構310の左右両側下部に、ハンドル34の操作に連動して前後方向に回動する左右の回動アーム311,311を設け、該左右の回動アーム311,311の後側下部と前記左右の下側連係アーム306a,306aの下端部を左右の連動操作ロッド314,314で連結することにより、左右のサイドクラッチ操作装置316,316が構成される。
【0079】
なお、前記左右の連係アーム306,306と、左右の回動アーム311,311と、左右のスプリング317,317を、旋回連動機構Aとする。
前記左右のサイドクラッチ操作装置316,316は、次のとおり作動し、左右のサイドクラッチ300,300のうち、旋回内側に位置する側を「切」操作する。
【0080】
前記ハンドル34を左または右旋回方向に所定角度以上操作されると、旋回内側の回動アーム311が前方回動して連動操作ロッド314が機体前方に移動し、連係アーム306の下端部側(下側連係アーム306a側)が前方回動すると友に、該連係アーム306の下端部側が前方回動すると上端部側が後方に回動する。すると、スプリング317は自身の付勢力によって切替作動アーム307の下部側を機体前側に引っ張り、切替作動アーム307が回動して下部側に設けた接触ローラ308がクラッチシフタアーム305の後側の上部に形成した平坦部305aに接触する。
【0081】
これにより、該クラッチシフタアーム305は接触ローラ308によって押し下げられ、切替操作軸300aが切操作側に回動し、サイドクラッチ300が切状態となり、旋回内側の後輪11への駆動力が遮断される。左旋回時は左側の各部材が上記動作をして左側のサイドクラッチ300が切操作され、右旋回時は右側の各部材が上記動作をして右側のサイドクラッチ300が切操作される。
【0082】
また、ハンドル34の操作角度が旋回終了(直進走行)角度になると、回動アーム311が後方回動し、連動操作ロッド314を機体後方が移動して連係アーム306の下端部側(下側連係アーム306a側)が後方回動する。該連係アーム306の下端部側が後方回動すると上端部側(上側連係アーム306b側)が前方に回動して、切替作動アーム307及び接触ローラ308が上方に移動してクラッチシフタアーム305から退避するので、クラッチシフタアーム305を下方に押し下げる力が無くなり、切替操作軸300aが復帰スプリング(図示省略)の力によって入操作側に回動し、サイドクラッチ300が入状態となり、旋回内側の後輪11に駆動力が供給される。
【0083】
上記構成としたことにより、旋回時のハンドル34の操作に連動させて、旋回内側のサイドクラッチ300を自動的に入切操作することができるので、旋回方向に対応する側のクラッチ操作ペダル303を操作し続ける必要がなく、操作が簡潔になり、操作性が向上する。
【0084】
また、クラッチ操作ペダル303を操作し間違えて旋回をやり直したり、旋回軌跡が乱れたまま作業を続けたりすることを防止できるので、作業能率が向上するとともに、旋回前後の植付位置が揃えやすくなるため、苗の植付精度が向上する。
【0085】
さらに、旋回軌跡が乱れた際に、既に圃場に植え付けられた苗を踏み潰すことが防止されるので、苗を新たに植え直す必要がなく、苗の量が削減されると共に、作業者が植え直し作業に要する時間と労力が軽減される。
【0086】
上記により、旋回時の操作性及び旋回前後の植付精度を向上させることができる苗移植機が実現できるが、圃場の土の粘性が強い、あるいは表面から耕盤までの深さが深いときは、前輪10,10及び後輪11,11の回転を泥土が妨げ、旋回移動を妨害したり、圃場端に深い旋回跡が形成されることがある。
【0087】
これを解消すべく、ハンドル34を操作すると旋回内側のサイドクラッチ300を間欠的に入切する電子制御機構を導入し、サイドクラッチ300を間欠的に入切して左右の後輪を駆動させて旋回する機能を備えた苗移植機が存在する。しかしながら、電子制御機構を用いると構造が複雑になると共に、コストが上がる問題がある。
【0088】
本件の発明は、図6及び図7で示すとおり、左右のクラッチ操作ペダル303,303を構成する左右のクラッチ操作アーム301,301の上端部側に左右のクラッチ操作ワイヤ304,304の一側端部を取り付け、この左右のクラッチ操作ワイヤ304,304の他側端部を左右の切替作動アーム307,307の上端部に取り付ける構成としている。
【0089】
これにより、旋回中に旋回内側の後輪11の駆動力が必要なときは、旋回内側のクラッチ操作ペダル303を前記スプリング317が切替作動アーム307の下端部側を付勢する力に抗し得る力で踏み操作すると、スプリング317が伸張して切替作動アーム307の上端部側が回動支点307aを中心に前方に回動すると共に接触ローラ308を設けた下端部側が後方に回動することにより、接触ローラ308がクラッチシフタアーム305の平坦部305aから上方に離間して、切替操作軸300aが入操作側に切り替わる。このため、ハンドル34を左または右旋回操作したままで、旋回内側のサイドクラッチ300を入状態とし、旋回内側の後輪11を駆動させることが可能となる。
【0090】
このサイドクラッチ300の入操作はクラッチ操作ペダル303を踏み操作している間のみ継続され、クラッチ操作ペダル303の操作をやめると、スプリング317の付勢力によって切替作動アーム307の下端部側が機体前側に引き戻され、接触ローラ308がクラッチシフタアーム305を押し下げてサイドクラッチ300を切操作する。
【0091】
上記構成により、旋回時に旋回内側のサイドクラッチ300が切操作されていても、クラッチ操作ペダル303をスプリング317の付勢力に抗し得る力で操作すると、切替作動アーム307をクラッチシフタアーム305から退避させることができるので、旋回操作時であっても後輪11を駆動回転させることができ、旋回走行に要する時間が軽減され、作業能率が向上する。
【0092】
また、クラッチ操作ペダル303を操作している間のみ切替作動アーム307が退避してサイドクラッチ300の切操作機構が遮断状態となり、サイドクラッチ300が入操作されることにより、クラッチ操作ペダル303の操作を止めると同時に旋回内側のサイドクラッチ300を切操作することができるので、サイドクラッチ300を切操作し忘れたまま旋回操作を行い、旋回軌跡が乱れて次の植付開始位置を合わせる操作に手間取ることが防止されるため、作業能率が向上すると共に、苗の植付精度が向上する。
【0093】
そして、スプリング317が切替作動アーム307と連係アーム306に亘って設けたことにより、サイドクラッチ操作機構316の前後長さを短く構成することができるので、サイドクラッチ操作機構316の設置スペースが抑えられ、機体の軽量化や部品点数の削減が図られる。
【0094】
さらに、サイドクラッチ操作機構316の作動に直接連動してスプリング317が作用することにより、クラッチ操作ペダル303を操作して旋回内側のサイドクラッチ300が入操作されるまでのタイムラグがほとんど発生しなくなるので、旋回内側の後輪11が必要なときにすぐに駆動回転するため、旋回性や作業能率が向上する。
【0095】
なお、上記構成は複数の部材を組み合わせた連係機構による構成であり、旋回内側のサイドクラッチ300を「入」または「切」操作するタイミングは作業者が判断する必要がある。旋回時、作業者は旋回走行に集中しているため、泥土の抵抗によって走行が完全に止まるまでサイドクラッチ300の「入」操作を忘れてしまうことがある。
【0096】
これを防止すべく、図8及び図9で示すとおり、前記ハンドルロッド34aにハンドル34の操作方向及び操作角度を検知するハンドルポテンショメータ318を設け、前記エンジン20の回転数を検出するエンジン回転センサ319を設けると共に、前記左右の後輪11,11の回転数を検出する後輪回転センサ320,320を設ける。該後輪回転センサ320,320はミッションケース12から左右の後輪ギアケース18,18に駆動力を伝動する左右のドライブシャフト12a,12aの後端部側に配置し、該ドライブシャフト12a,12aの回転数を検出する。
【0097】
なお、旋回内側の後輪11は、機体の旋回走行に伴う駆動反力で僅かに回転するため、旋回内側の後輪回転センサ320は微細な検出値を得ることになる。この検出値は、ボンネット32内に設けるコントローラ321に記録させてもよく、またはコントローラ321において下限値を設定し、下限値未満であれば「0」とみなす制御構成としてもよい。
【0098】
また、前記連動操作ロッド314を前後の分割ロッド314a,314bに分割し、該前後の分割ロッド314a,314bをソレノイド322で連結する。ソレノイド322が「切」状態のときは連動操作ロッド314はハンドル34の左右旋回操作、またはクラッチ操作ペダル303の操作に連動して前後移動し、「入」状態となると後分割ロッド314bを後方に移動させ、前記連係アーム306の下端部側を後方に回動させ、上記の連動構成により、旋回内側のサイドクラッチ300を「入」操作する配置構成とする。
【0099】
旋回時にハンドル34を操作し、ハンドルポテンショメータ318が旋回と判断し得る操作角度を検知すると、エンジン回転センサ319はエンジン20の回転数を計測すると共に、左右の後輪回転センサ320,320は左右のドライブシャフト12a,12aの回転数を計測する。そして、旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2よりも所定値以上大きいときは、ソレノイド322を「切」状態に維持し、旋回走行を継続する。
【0100】
一方、旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2よりも所定値未満しか大きくない、または旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2と略同じであるときは、泥土の抵抗により旋回走行が困難となっているので、自動または作業者のスロットル操作によりエンジン20の回転数を大きくする。このスロットル操作によって旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2よりも所定値以上大きくなると、泥土による抵抗に勝って旋回走行を再開したものとみなして旋回走行を継続する。
【0101】
しかしながら、スロットル操作後にエンジン回転センサ319が検知するエンジン20の回転数が増加しているにもかかわらず、旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2よりも所定値未満しか大きくない、または旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2と略同じであるときは、エンジン回転数を上げても泥土の抵抗に勝つ力が出ない状況にあると判断し、コントローラ321はソレノイド322を「入」操作する信号を発信する。
【0102】
これにより、該ソレノイド322は後分割ロッド314bを後方に移動させ、該後分割ロッド314bにより連係アーム306の下端部側が後方回動する。そして、連係アーム306の上端部側が前方回動して、切替作動アーム307の上端部側が前方回動すると共に、下端部側が後方回動して接触ローラ308がクラッチシフタアーム305の平坦部305aから上方に離間する。
【0103】
これにより、クラッチシフタアーム305が上方に回動して旋回内側のサイドクラッチ300が「入」操作されて後輪11が駆動回転するので、泥土の抵抗に勝ち得る力を生じさせることができ、旋回走行が中断されることがなく、作業能率や苗の植付精度が向上する。
【0104】
なお、ソレノイド322は、左右の後輪回転センサ320,320のうち、旋回外側の回転数S1が旋回内側の回転数S2よりも所定値以上大きくなるとコントローラ321からの信号を受けて「切」操作され、旋回内側のサイドクラッチ300を「切」操作するものとする。
【0105】
また、クラッチ操作ペダル303が操作されると、ソレノイド322が「入」操作される制御構成としてもよい。
図6、図7で示すとおり、前記ハンドルポスト34aの下部には、ハンドル34の操作時に作業者にかかる負荷を軽減するパワーステアリング装置309が設けられている。該パワーステアリング装置309は、比例油圧バルブ161を用いる油圧方式や、電動モータ309aを用いる電動方式が考えられる。
【0106】
図10で示すのは、比例油圧バルブ161を用いる油圧方式において、前記ハンドルポテンショメータ318が所定時間以上に亘って直進走行とみなし得る範囲内の角度を検出し続けると、比例油圧バルブ161がパワーステアリング装置309への作動油の供給を切り、ハンドル34が軽い力では動かない状態とする直進走行アシストの例である。
【0107】
このとき、パワーステアリング装置309に供給されなくなった作動油は余っているので、作業者がハンドル34を操作するか、あるいは所定時間経過後に自動的にパワーステアリング装置309への作動油の供給が再開されるまで、コントローラ321は比例油圧バルブ161から前記昇降油圧シリンダ46への送油量を増やす制御構成とすると、苗植付部4の昇降をより高速で行うことができるので、圃場の凹凸に合わせて自動昇降する際、苗植付部4はすぐに適切な作業高さに移行することができ、苗の植付深さが適切になり、苗の植付精度や生育が良好になる。また、複数の苗を積載して苗植付部4の重量が増加しても、昇降油圧シリンダ46に十分な作動油が供給されることにより、特に上昇時に確実に苗植付部4が上昇できるので、いっそう苗の植付深さが安定する。
【0108】
上記の直進アシスト制御は、前記左右の後輪回転センサ320,320が後進方向に回転、即ち逆回転しているとき、またはHST23のトラニオン軸23aの開度を変更して機体の前後進及び走行速度を操作する走行操作レバー16の基部に設けるレバーポテンショメータ16aが後進操作を検知しているときは条件を満たしても作動しない構成とする。後進時はハンドル34を操作する機会が多いため、パワーステアリング機構309を停止させるとかえって操作がしにくくなり、操作性や作業能率の低下に繋がるが、上記のとおり後進操作を検出すると直進アシスト制御を受け付けなくすることにより、操作性や作業能率の低下が防止される。
【0109】
上記構成はパワーステアリング装置309を用いて直進アシスト制御をおこなっているが、図11(a)(b)、図12で示すとおり、前記ハンドルロッド34aのうち、ハンドル34の下方で且つハンドルロッド34aの上部側に規制ピン327を設けると共に、該ハンドルロッド34aの外周に規制ボス328を上下摺動自在に装着する。該規制ボス328は円筒形であるが、正面視における左右中央部に上下高さが短い最短部328aを形成し、該最短部328aから左右両側に向かうほど上下長さが長くなる形状とし、左右の円周傾斜面328b,328bを形成する。
【0110】
即ち、該規制ボス328のうち、円周の半分は上下長さが同じであり、残り半分は正面視で左右中央部から左右両側に向かうほど上下高さが長くなる構成とする。この上下長さが一番短い部分の上部に、中立位置にハンドル34を合わせた際、前記規制ピン327が位置する構成とする。
【0111】
また、前記規制ボス328の後部、即ち最短部328aの裏側位置に上下方向に亘ってラックギア329aを設け、該ラックギア329aに噛み合い規制ボス328を上下摺動させるピニオンギア329bを回転駆動させる摺動モータ330をハンドルロッド34aの後方に配置する。
【0112】
そして、前記左右の後輪回転センサ320,320の回転回数からコントローラ321が走行車体2の走行速度を検出し、この走行速度が所定速度以上であることが算出されると、コントローラ321は摺動モータ330を作動させ、規制ボス328を上方に摺動させて最短部328aを規制ピン327に接近させる。このとき、規制ピン327は最短部328aに接触はしないものとする。
【0113】
前記規制ボス328の左右両側には、該規制ボス328を所定の範囲内で上下方向に摺動させる左右のガイドレール330b,330bが設けられ、規制ボス328の左右側面には、該左右のガイドレール330b,330bに当接する左右のガイドピン330a,330aを設けている。
【0114】
上記により、作業者がハンドル34を操作する、または左右の前輪10,10が地面との接触抵抗で角度を変えようとしたとき、接触ピン327が規制ボス328に形成した左右の円周傾斜面328b,328bに接触して荷重がかかるので、ハンドル34が多少の力では回動しなくなるので、直進走行が維持される構成となる。
【0115】
これにより、比例油圧バルブ161やパワーステアリング装置309等の制御をすることなく直進アシスト制御をすることができる。また、ハンドルロッド34aや比例油圧バルブ161、昇降油圧シリンダ46等の作動を拘束するのではなく、ハンドルロッド34aの回動に必要な荷重を高めて直進アシストすることにより、各部材に負荷が生じにくく、耐久性が向上する。
【0116】
そして、左右の後輪回転センサ320,320から算出される走行速度が所定速度未満になると、コントローラ321は摺動モータ330を作動させて規制ボス328を下方摺動させ、最短部328a及び左右の円周傾斜面328b,328bを規制ピン327から離間させる。
【0117】
上記構成により、低速走行時はハンドルロッド34aが左右回動する際に荷重をかける部材が存在しないので、作業者がハンドル34を操作すると操作量に対応して左右の前輪10,10が回動して旋回することができ、操作性が向上する。
【0118】
また、走行速度を基準として規制ボス328を左右のガイドレール330b,330bに沿って上下摺動させることにより、走行速度に対応するハンドル操作を行うことができるので、作業適応性が向上し、作業能率が向上する。
【0119】
図2及び図13で示すとおり、前記苗植付部4に重量検知センサ323を設け、該重量検知センサ323が苗植付部4の重量の増加を検知すると、前記比例油圧バルブ161から昇降油圧シリンダ46への作動油の送油速度を遅くする構成としている。
【0120】
苗の植付作業を行う際、前記苗植付部4には条数分の苗が積載され、重量が増加する。また、除草剤等の薬剤を散布する薬剤散布機などのオプションパーツを装着すると、その分重量が増加する。このとき、苗植付部4を通常の速度で上昇させると、前記昇降リンク装置3を構成する上部リンクアーム40と左右一対の下部リンクアーム41,41や昇降油圧シリンダ46等に荷重による負荷が生じ、消耗が激しく耐久性が低下する問題がある。
【0121】
また、重量が増加した状態で苗植付部4を下降させると、下降速度が通常時よりも速くなっており、苗の植付開始が通常よりも速く行われてしまい、苗の植付開始位置及び植付終了位置が揃わず、圃場の外周、即ち枕地の植付作業をする際に苗を前輪10や後輪11で踏み潰す、または既に植え付けられた箇所に再度苗が植え付けられる問題がある。
【0122】
これを防止すべく、上記のとおり重量検知センサ323が苗植付部4の重量の増加を検知すると比例油圧バルブ161から昇降油圧シリンダ46への作動油の送油速度を低下させることにより、苗植付部4の昇降速度を低速にすることができるので、上昇時に昇降リンク装置3や昇降油圧シリンダ46にかかる負荷が軽減され、部材の消耗が抑えられるため、耐久性が向上する。
【0123】
また、苗植付部4の下降速度が低下することにより、苗の植付開始位置が速くなって枕地に植えられることを防止できるので、枕地作業時に苗を踏み潰したり重複する位置に植え付けることが防止され、苗の植付精度が向上すると共に、無駄な苗の消費が抑えられる。
【0124】
なお、苗を消費するなど、重量検知センサ323が検知する苗植付部4の重量が所定重量未満に減少すると、比例油圧バルブ161を再度制御して、昇降油圧シリンダ46への送油速度を速くする制御構成を加えると、積載した苗の量の変化に対応する速度で苗植付部4を昇降させることができるので、作業能率が向上すると共に、苗の押し潰しが防止される。
【0125】
また、図14及び図15で示すのは、前記苗植付部4を構成する前記ローリング軸44に、苗植付部4の左右方向の回動量を検知するローリングセンサ44aを設け、該ローリングセンサ44aが所定時間内に所定回数以上の左右方向の回動を検知すると、前記HST23のトラニオン軸23aをHSTサーボモータ326で操作することにより、該トラニオン軸23aの開度を小さくして走行速度を低下させる制御構成である。
【0126】
苗植付部4がローリング軸44を回動支点として左右方向に回動することにより、走行車体2が圃場の凹凸等により左右方向に傾斜しても、苗植付部4は圃場面に沿った水平姿勢を維持することができるので、苗の植付深さが苗植付部4の左右方向で変わらず、苗の生育が安定する効果がある。しかしながら、圃場に凹凸が多く、植付深さに影響しない凹凸にも反応して左右方向に回動し続けると、植付装置52…の植付深さがかえって安定しなくなる問題がある。特に、高速で走行していると凹凸の影響を受けやすく、苗の植付深さが不安定になりがちである。
【0127】
この問題を解消すべく、本件構成では所定時間内に苗植付部4が所定回数以上左右方向に回動すると、トラニオン軸23aの開度を小さくして走行速度を低下させる構成としたことにより、過度のローリング動作を防止できるので、苗の植付深さが安定し、苗の生育が良好になる。走行速度を低下させると、小さな土の盛り上がりは自重で踏み潰せると共に、小さな窪みに前輪10及び後輪11が入っても走行車体2は僅かにしか傾かないので、苗移植機4の姿勢が保たれる。
【0128】
また、図1及び図16で示すとおり、前記昇降リンク機構3を構成する上部リンクアーム40の基部に苗植付部4の昇降及び上下位置を検知する昇降センサ325を設け、該昇降センサが325が所定時間内に上部リンクアーム40が所定回数以上の回数上下動したことを検知すると、ハンチング状態とみなす。ハンチング状態に陥るのは圃場に凹凸が多く、機体が前後に揺れるときであり、このとき、昇降油圧シリンダ46は微細に伸縮している。ハンチング状態を放置すると、植付装置52…が圃場に苗を植え付ける直前に苗植付部4が上昇し、苗の植付深さが浅くなり過ぎることや、苗が植え付けられず圃場面に落下してしまい、未植付区間が発生する問題がある。
【0129】
ハンチング状態を解消すべく、昇降センサ325の検知結果からコントローラ321がハンチング状態を認識すると、該コントローラ321は比例油圧バルブ161を制御して昇降油圧シリンダ46に間欠的に作動油を送油する。この送油タイミングは、ハンチングにより昇降油圧シリンダ46が収縮したときに送油し、伸張したときには送油しないものとする。
【0130】
即ち、ハンチングとは逆位相の送油を行うことにより、圃場の凹凸による苗植付部4の上下動が打ち消されるので、苗植付部4と圃場面の高さが変わることが防止され、苗の植付深さが安定し、苗の生育が良好となる効果が得られる。
【0131】
図5及び図17で示すとおり、前記HST23のトラニオン軸23aの開度を検知するトラニオンポテンショメータ23bを設けると共に、トラニオン軸23aの開度を変更するトラニオンアーム(図示省略)を回動操作するHSTサーボモータ326を設ける。該HSTサーボモータ326は、前記走行操作レバー16の操作量を検知するレバーポテンショメータ16aの検知結果に対応して作動し、トラニオンアームを回動させてトラニオン軸23aを開閉する構成とする。そして、該レバーポテンショメータ16aが走行操作レバー16の操作を検知したとき、同時にトラニオンポテンショメータ23bによってトラニオン軸23aの開度を検知し、該トラニオン軸23aの開度が所定角度未満であるときは、コントローラ321はHSTサーボモータ326を低速回転させる。一方、トラニオン軸23aの開度が所定角度以上であるときは、コントローラ321はHSTサーボモータ326を高速で回転させる構成とする。
【0132】
上記構成としたことにより、トラニオン軸23aの開度が小さい走行開始時は、トラニオン軸23aの開度をゆっくりと変化させることができるので、走行操作レバー16を大きく操作しても急発進することが防止されるため、急加速に作業者が驚いて操作を誤ることが無く、操作性が向上する。
【0133】
また、植付装置52…が発進時の位置に安定した姿勢で苗を植え付けることができるので、苗の植付姿勢が乱れたり未植付区間が発生することが防止され、苗の植付精度が向上する。
【0134】
一方、走行を開始してトラニオン軸23aの開度が所定角度以上になると、トラニオン軸23aの開度を素早く変化させることができるので、走行操作レバー16を大きく操作したときは急加速し、小さく操作したときはゆっくりと加速するので、走行操作レバー16の操作速度に合致する走行速度の変更が行えるため、操作性が向上する。
【0135】
図5及び図18で示すとおり、前記センターフロート55は圃場の凹凸によって回動する構成としており、仰角センサ331が設けられている。該仰角センサ331の角度変化はコントローラ321に送られ、検知結果に基づいて比例油圧バルブ161を制御し、昇降油圧シリンダ46を細かく伸縮させて苗植付部4を細かく昇降させ、圃場の凹凸に合わせて苗の植付深さを適切な高さに維持する構成としている。
【0136】
なお、接地時の角度を「0」とし、センターフロート55の前端部側が上方に回動してプラスの所定値以上の角度が検知されたときは、平坦部から凸部に移動する、または凹部から平坦部に移動する時であり、植付装置52…と圃場面との距離が接近するので、昇降油圧シリンダ46が収縮して苗植付部4が上昇する構成とし、センターフロート55の前端部側が下方に回動してマイナスの所定値以上の角度が検知されたときは、平坦部から凹部に移動する、または凸部から平坦部に移動する時であり、植付装置52…と圃場面との距離が離間するので、昇降油圧シリンダ46が伸長して苗植付部4が下降する構成とする。上記の昇降を行う角度は、前記操作パネル33に設ける昇降油圧ダイヤル332を操作して変更可能とし、該昇降油圧ダイヤル332を「敏感」側に操作すると昇降を行う基準となる角度を小さくして、細かい凹凸にも反応して苗植付部4を上下動させる。一方、「鈍感」側に操作すると昇降を行う基準となる角度を大きくして、大きな凹凸があるときのみ苗植付部4を上下動させる。
【0137】
これに加えて、前記フロートポテンショメータ331が苗植付部4を昇降させる角度に到達するまでの角速度を検知する角速度センサ333を設け、該角速度センサ333が検知した角速度が速い、即ち接地角度から苗植付部4を昇降させる所定角度に到達するまでの時間が短いと、前記コントローラ321は急激な圃場深さの変化があると判断して比例油圧バルブ161を操作し、昇降油圧シリンダ46を高速で伸縮させる。
【0138】
一方、該角速度センサ333が検知した角速度が遅い、即ち接地角度から苗植付部4を昇降させる所定角度に到達するまでの時間が長いと、前記コントローラ321は緩やかな圃場深さの変化があると判断して比例油圧バルブ161を操作し、昇降油圧シリンダ46を低速で伸縮させる。
【0139】
上記制御構成により、急激な圃場深さの変化があるときは、高速で植付装置52…の植付深さを上昇または下降させることができ、緩やかな圃場深さの変化があるときは、ゆっくりと植付装置52…の植付深さを上昇または下降させることができるので、苗の植付深さが浅くなり過ぎたり深くなり過ぎたりすることが防止され、苗の生育が安定する。
【0140】
また、苗が圃場面まで届かず、苗が植え付けられない未植付区間が発生することを防止できるので、苗の植付を作業者が手作業で行なう必要がなく、作業能率が向上する。
上記制御の基準を、角速度センサ333の検知速度でなく、接地位置から上方または下方に回動し切るまでの変位量とし、変位量が大きければ昇降油圧シリンダ46を高速で伸縮させ、変位量が小さければ昇降油圧シリンダ46を低速で伸縮させる構成としてもよい。
【0141】
角速度センサ333の検知した変位量に合わせて昇降油圧シリンダ46の伸縮速度を変更することにより、植付装置52…の植付深さが適切な深さに揃うため、苗の植付精度が向上し、苗の生育が安定する。
【0142】
図19及び図20で示すとおり、前記センターロータ27aの回転軸70a、または左右のサイドロータ27b,27bの左右回転軸70b,70bに負荷センサ334を1または複数設け、該負荷センサ334が所定値以上の負荷を検知すると、コントローラ321がセンターロータ27aまたは左右のサイドロータ27b,27b、あるいはロータ全体が下がり過ぎていると判断し、操作パネル33に設ける表示ディスプレイ335に「ロータ位置下がり過ぎ」の表示を行う構成とする。
【0143】
上記構成としたことにより、作業者が設定したセンターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bの作業高さが低過ぎ、圃場に強く接地したり圃場内に潜り込んだりしていても、表示ディスプレイ335に下がり過ぎていることが表示されるので、作業者はセンターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bの下げ過ぎに気付きやすく、過負荷によるセンターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bの破損が防止されると共に、圃場に密接した状態、または圃場内に潜り込んだ状態で整地作業を行い、圃場面に大きな窪みを形成したり、土を盛り上げて大きな凸部を形成したりすることが防止され、苗の植付深さが乱れることが防止される。
【0144】
なお、センターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bの上下位置を適切な位置に合わせていても、前記負荷センサ334が所定値以上の負荷を検出するものとすると、センターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bに石や藁屑等の夾雑物が干渉して過負荷がかかった際に表示ディスプレイ335に「ロータ位置下がり過ぎ」の表示が出力されるので、作業者は異常に気付いてすぐに夾雑物を除去することができるので、過負荷によるセンターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bの破損が防止される。
【0145】
図5で示すとおり、前記操作パネル33に枕地一括ボタン336を設け、該枕地一括ボタン336を「入」操作すると、前記センターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bを昇降させる整地昇降モータ337が作動してセンターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bを下降させる。また、現在の前記昇降油圧ダイヤル332の設定を「鈍感」寄りに変更し、前記比例油圧バルブ161の送油量を多くして昇降油圧シリンダ46の伸縮を速くして苗植付部4の昇降速度を速くすると共に、前記パワーステアリング装置309への送油量を少なくしてハンドル34の回動に必要な力を増大させる。さらに、所定の苗植え伝動ケース54…への駆動力を入切する部分条クラッチ54a…が「切」操作されているときは、該当する部分条クラッチ54a…を「入」操作すると共に、苗植付部4の左右両側に設けられ、装甲車体2の旋回に連動して左右が交互に接地して圃場面に直進走行の目安となる線を引く左右の線引きマーカ338,338をマーカ操作モータ339で引き上げて、左右両方が接地しない「切」状態に切り替える構成とする。
【0146】
上記構成により、枕地一括ボタン336を操作すると、圃場の四隅で苗を植え付ける枕地作業の際に必要な作業条件に各作業部が一斉に変更されるので、枕地作業の能率が向上すると共に、苗の植付精度が向上する。
【0147】
圃場の四隅である枕地は、トラクタ等の作業車両に装着して圃場を耕すロータリが圃場端に接近しにくく、他の部分に比べると地面が硬く、且つ荒れていることが多いが、センターロータ27a及び左右のサイドロータ27b,27bを下降させることにより、凹凸を均して苗の植付深さを適切な深さにしやすくなる。
【0148】
また、昇降油圧ダイヤル332の設定よりも「鈍感」寄りに苗植付部4の昇降が行われる基準角度が変更されると共に、比例油圧バルブ161からの送油速度を速めて昇降油圧シリンダ46の伸縮速度を速くしたことにより、センターフロート55の上下回動角度が大きいときのみ苗植付部4を昇降させて植付深さ調節を行うことができ、頻繁に苗植付部4が昇降することがなく、苗の植付深さが安定すると共に、苗植付部4が昇降するときには素早く昇降するので、苗植付部4の昇降中に植付装置52…が苗を植え付けることがなく、いっそう苗の植付精度が向上する。
【0149】
さらに、「切」操作されていた部分条クラッチ54a…が自動的に「入」操作されると共に、マーカ操作モータ339が左右の線引きマーカ338,338を両方とも非使用状態とすることにより、枕地作業の直前に部分条クラッチ54a…を切り、そのまま枕地作業に移行することが防止できるので、苗の未植付区間の発生が防止され、作業者が植え直す労力が軽減されると共に、圃場端に接近する枕地作業時に左右の線引きマーカ338,338が機体側方に突出することが防止できるので、左右の線引きマーカ338,338の破損が防止される。
【符号の説明】
【0150】
2 走行車体
11 後輪(走行装置)
34 ハンドル(操舵部材)
34a ハンドルロッド(操舵ロッド)
300 サイドクラッチ(切替伝動装置)
300a 切替操作軸(切替軸)
303 クラッチ操作ペダル(解除切替部材)
304 クラッチ操作ワイヤ(牽引部材)
305 クラッチシフタアーム(操作部材)
305a 平坦部(接触部)
306 連係アーム(旋回連動部材)
307 切替作動アーム(解除操作部材)
308 接触ローラ(接触体)
317 スプリング(付勢部材)
314b 後分割ロッド(分割回動操作軸)
320 後輪回転センサ(回転検知部材)
322 ソレノイド(電磁弁)
327 規制ピン(接触突起体)
328 規制ボス(回動規制部材)
328b 円周傾斜面(規制切欠部)
330 摺動モータ(摺動装置)
A 旋回連動機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行車体(2)に走行装置(11)を設け、該走行装置(11)への駆動力を入切する切替伝動装置(300)を入切操作する操作部材(305)を設け、該走行車体(2)を操向操作する操舵部材(34)を旋回操作すると切替伝動装置(300)を該操作部材(305)を介して切操作する旋回連動機構(A)を設けた作業車両において、
該旋回連動機構(A)と操作部材(305)の間に旋回連動状態を解除する解除操作部材(307)を設けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
前記切替伝動装置(300)を入切操作する切替軸(300a)を設け、該切替軸(300a)に前記操作部材(305)を設け、前記操舵部材(34)の操作に連動して回動する前記旋回連動機構(A)を構成する旋回連動部材(306)を設け、該旋回連動部材(306)の上部側に解除操作部材(307)を回動自在に設け、該旋回連動部材(306)に連動して解除操作部材(307)を操作部材(305)に接触する方向に付勢する付勢部材(317)を旋回連動部材(306)と解除操作部材(307)に亘って設けると共に、前記解除操作部材(307)を旋回連動状態及び旋回連動解除状態に操作する解除切替部材(303)を設け、該解除切替部材(303)と解除操作部材(307)を牽引部材(304)で連結し、
該解除切替部材(303)を付勢部材(317)の付勢力に抗する力で操作すると解除操作部材(307)が旋回連動状態を解除して前記切替伝動装置(300)を入操作する構成としたことを特徴とする請求項1記載の作業車両。
【請求項3】
前記解除操作部材(307)の下部側に接触体(308)を設けると共に、前記操作部材(305)に該接触体(308)が接触する接触部(305a)を形成したことを特徴とする請求項1または2記載の作業車両。
【請求項4】
前記走行装置(11)の回転数を検知する回転検知部材(320)を設け、前記操舵部材(34)の旋回操作に連動して旋回連動部材(306)を前後方向に回動させる前後の分割回動操作軸(314a,314b)を設けると共に、該後側の分割回動操作軸(314b)を前後方向に移動させる電磁弁(322)を設け、
旋回時に前記回転検知部材(320)が検知する走行装置(11)の回転数が所定値未満になると電磁弁(322)を作動させて前記後側の分割回動操作軸(314b)を後方に移動させ、前記旋回連動部材(306)を後方回動させて解除操作部材(307)を旋回連動解除状態に切り替える構成としたことを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項5】
前記操舵部材(34)の旋回操作に合わせて回動する操舵ロッド(34a)に接触突起体(327)を設け、該接触突起体(327)よりも下方に回動規制部材(328)を上下摺動自在に設け、該回動規制部材(328)に前記接触突起体(327)に接触して操舵ロッド(34a)の回動を規制する規制切欠部(328b)を形成すると共に、該回動規制部材(328)を上下摺動させる摺動装置(330)を設けたことを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載の作業車両。
【請求項6】
前記回転検知部材(320)が検知する走行装置(11)の回転数から走行車体(2)の走行速度を検知し、所定値以上の走行速度が検知されると前記摺動装置(330)を作動させて回動規制部材(328)を上方に摺動させ、操舵ロッド(34a)の回動を規制する構成としたことを特徴とする請求項5記載の作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−112277(P2013−112277A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−262321(P2011−262321)
【出願日】平成23年11月30日(2011.11.30)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】