説明

作業車両

【課題】作業車両において、左右フェンダを連結するフェンダフレームにバッテリ載置空間を構成し、機体の前後長さを短くした小型作業車両を提供する。
【解決手段】機体の前側部に左右前輪4,4を、後側部に左右後輪5,5を配設し、該左右後輪5,5被覆用の左右フェンダ7,7をフェンダフレーム20により接続して合成樹脂材で一体構成する。フェンダフレーム20には側面視でフェンダフレーム20の前後方向長さ内に収まり、且つ、正面視でフェンダフレーム20の左右方向幅内に収まり、左右後輪5,5の中央寄りに位置するようにバッテリ載置空間23を構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両に関し、作業車両に搭載するバッテリ配置構成に関する。
【背景技術】
【0002】
ラジエータと、エアクリーナと、バッテリと、燃料クーラを備えたトラクタにおいて、エンジンの前方にラジエータを、ラジエータの前方にエアクリーナ及びバッテリを配設したものは、公知である(特許文献1)。
【0003】
機体の前側部にエンジンを備え、エンジンの後側に備えたフレーム構造体の上部にステアリングハンドルを備えたトラクタにおいて、フレーム構造体のステアリングハンドルの下方にバッテリを配設したものは、公知である(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−174854号公報
【特許文献2】特開2009−73487号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記特許文献1のトラクタは、エンジンの前方にラジエータを設け、ラジエータの前方にバッテリを配設しているので、トラクタの機体長さが長くなり、機体を小型化できないという問題点がある。
【0006】
そこで、本発明は、前輪及び後輪を備えた作業車両において、左右後輪被覆用の左右フェンダをフェンダフレームで連結し、フェンダフレームには前後長さ及び左右幅内に収まるようにバッテリ載置空間を構成し、機体の前後長さを短くした小型作業車両を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1の発明は、機体の前側部に左右前輪(4,4)を、後側部に左右後輪(5,5)を配設した作業車両において、該左右後輪(5,5)被覆用の左右フェンダ(7,7)をフェンダフレーム(20)により接続して合成樹脂材で一体構成し、該フェンダフレーム(20)には側面視でフェンダフレーム(20)の前後長さ内に収まり、且つ、正面視でフェンダフレーム(20)の左右幅内に収まり、前記左右後輪(5,5)の中央寄りに位置するようにバッテリ載置空間(23)を構成したことを特徴とする。
【0008】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記フェンダフレーム(20)には左右方向に沿った前側フェンダフレーム(20a)と、左右方向に沿った後側フェンダフレーム(20b)と、前側フェンダフレーム(20a)と後側フェンダフレーム(20b)との間に開口構成されている前後方向及び左右方向に広がる空間部(20c)を備え、機体に載置するように取り付けているシートフレーム(22)の上方に前記フェンダフレーム(20)を配設し、シートフレーム(22)のシート支持部22aをフェンダフレーム(20)の前記空間部(20c)を通して上方に延出し、該シート支持部(22a)にシート(6)を取り付け、フェンダフレーム(20)の前記バッテリ載置空間(23)は上側部及び前側部を開放した開口部(20g)としそれ以外の部位を板状体で閉鎖状に構成し、前記バッテリ載置空間(23)の前記開口部(20g)を着脱自在のバッテリカバー(24)により閉鎖するようにしたことを特徴とする。
【0009】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、前記バッテリカバー(24)を側面視でL型に屈折した所定左右幅の板状体で構成し、該バッテリカバー(24)の前側部あるいは後側部の何れか一方を前記フェンダフレーム(20)の凹状支持部(26)に係止し、何れか他方をフェンダフレーム(20)にボルト・ナットで固着するように構成したことを特徴とする。
【0010】
請求項4の発明は、請求項2及び請求項3の発明において、前記フェンダフレーム(20)のバッテリ載置空間(23)にバッテリ(21)を収納配置するにあたり、バッテリ(21)のバッテリ載置空間(23)への収納配設状態において、バッテリ(21)の前側端部がバッテリ載置空間(23)の前側面より前方に突出しないで、且つ、上側端部よりも上方へ突出しないようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
請求項1の発明によると、左右後輪(5,5)被覆用の左右フェンダ(7,7)をフェンダフレーム(20)により接続して合成樹脂材で一体構成し、フェンダフレーム(20)には側面視でフェンダフレーム(20)の前後長さ内に収まり、且つ、正面視でフェンダフレーム(20)の左右幅内に収まり、左右後輪(5,5)の中央寄りに位置するようにバッテリ載置空間(23)を構成したので、機体の前後長さを短くしながら強固でコンパクトに構成したバッテリ載置空間(23)にバッテリ(21)を収納することができる。また、エンジンやラジエータの周辺部にバッテリ(21)を配設する必要がなく、ラジエータの冷却効果を高め、エンジン周辺部へのフロントPTO軸を配設するにあたり設計の自由度を高めることができる。
【0012】
請求項2の発明によると、請求項1の発明の前記効果に加えて、フェンダフレーム(20)には左右方向に沿った前側フェンダフレーム(20a)と、左右方向に沿った後側フェンダフレーム(20b)と、前側フェンダフレーム(20a)と後側フェンダフレーム(20b)との間に開口構成されている前後方向及び左右方向に広がる空間部(20c)を備え、機体に載置するように取り付けているシートフレーム(22)の上方にフェンダフレーム(20)を配設し、シートフレーム(22)のシート支持部22aをフェンダフレーム(20)の空間部(20c)を通して上方に延出し、該シート支持部(22a)にシート(6)を取り付け、フェンダフレーム(20)のバッテリ載置空間(23)は上側部及び前側部を開放した開口部(20g)としそれ以外の部位を板状体で閉鎖状に構成し、バッテリ載置空間(23)の開口部(20g)を着脱自在のバッテリカバー(24)により閉鎖するようにしたので、上側部及び前側部に形成した開口部(20g)からバッテリカバー(24)を取り外すと、バッテリ(21)を容易に出し入れすることができ、バッテリ(21)のメンテナンスを迅速円滑に行なうことができる。
【0013】
請求項3の発明によると、請求項2の発明の前記効果に加えて、バッテリカバー(24)を側面視でL型に屈折した所定左右幅の板状体で構成し、バッテリカバー(24)の前側部あるいは後側部の何れか一方を前記フェンダフレーム(20)の凹状支持部(26)に係止し、何れか他方をフェンダフレーム(20)にボルト・ナットで固着するので、バッテリカバー(24)の着脱が容易になり、バッテリ(21)のメンテナンスをより迅速円滑に行なうことができる。
【0014】
請求項4の発明によると、請求項2及び請求項3の発明の前記効果に加えて、フェンダフレーム(20)のバッテリ載置空間(23)にバッテリ(21)を収納配置するにあたり、バッテリ(21)のバッテリ載置空間(23)への収納配設状態において、バッテリ(21)の前側端部がバッテリ載置空間(23)の前側面より前方に突出しないで、且つ、上側端部よりも上方へ突出しないようにしたので、バッテリカバー(24)で閉鎖したバッテリ載置空間(23)にバッテリ(21)を収納することができ、泥水などの侵入を防止しバッテリ(21)の耐久性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】トラクタの全体側面図である。
【図2】トラクタの全体平面図である。
【図3】トラクタの正面図である。
【図4】トラクタの背面図である。
【図5】左右フェンダ及びフェンダフレームの平面図である。
【図6】左右フェンダ及びフェンダフレームの切断背面図である。
【図7】フェンダ及びフェンダフレームの切断側面図である。
【図8】フェンダ及びフェンダフレームの切断側面図、切断平面図である。
【図9】フェンダ及びフェンダフレームの切断側面図である。
【図10】フェンダ及びフェンダフレームの切断正面図である。
【図11】トラクタの側面図である。
【図12】トラクタの平面図である。
【図13】トラクタの左右ステップ部の切断背面図である。
【図14】トラクタ後部の切断側面図である。
【図15】トラクタ後部の切断側面図である。
【図16】トラクタ後部の切断側面図である。
【図17】トラクタの側面図、ダッシュボードの背面図及び平面図である。
【図18】トラクタ後部の側面図である。
【図19】トラクタの側面図である。
【図20】トラクタのミッションケースの側面図、ダッシュボードの側面図である。
【図21】トラクタのミッションケースの側面図、ダッシュボードの側面図である。
【図22】前後進変速レバーの背面図、斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面に基づいてこの発明を農用トラクタに施した実施例について説明する。
まず、図1乃至図4に基づき本発明を実施するトラクタの全体構成について説明する。
トラクタTは走行車体1の前側部にエンジンを搭載し、エンジンをボンネット2で被覆し、エンジンの回転動力をミッションケース3内の主変速装置及び副変速装置で変速し、左右前輪4,4及び左右後輪5,5へ伝達している。
【0017】
また、ミッションケース3の後側上部にはシート6を設け、その左右両側に左右フェンダ7,7を設けている。また、走行車体1の後部には油圧シリンダケース8を設け、油圧シリンダケース8の後側部にリフトアーム9,9を上下回動自在に設け、3点リンク機構10を介して機体後部に連結したロータリ耕耘装置(図示省略)を昇降するように構成している。
【0018】
また、エンジンの後方には、ハンドルフレーム15を立設し、その上部にステアリングハンドル16を設けている。ミッションケース3の後部に後側安全フレーム17を立設している。
【0019】
次に、図5及び図6に基づきフェンダ7部分へのバッテリ21の配置構成について説明する。
ミッションケース3の後側部には左右後車軸5a,5aを支架し、左右後車軸5a,5aの左右両側部に左右後輪5,5を取り付けている。前記左右後輪5,5を被覆する左右フェンダ7,7をフェンダフレーム20により接続し合成樹脂材で一体成型している。左右フェンダ7,7をフェンダフレーム20で一体構成するにあたり、左右方向に沿った前側フェンダフレーム20a及び後側フェンダフレーム20bで接続構成し、前側フェンダフレーム20aと後側フェンダフレーム20bとの間に前後方向及び左右方向に広がる空間部20cを構成している。
【0020】
また、ミッションケース3の後側上部に正面視逆U字型のシートフレーム22を取り付け、シートフレーム22に前側フェンダフレーム20aをボルト・ナットで固着し、ミッションケース3の後側部に取り付けた後側安全フレーム17に後側フェンダフレーム20bをボルト・ナットで固着している。そして、前側フェンダフレーム20aと後側フェンダフレーム20bとの間の空間部20cからシートフレーム22のシート支持部22aを上方に突出させ、シート支持部22aにシート6を取り付けている。
【0021】
また、フェンダフレーム20の前側フェンダフレーム20aの例えば右側部にバッテリ載置空間23を構成している。このバッテリ載置空間23の右側面は右側フェンダ7の上下方向に沿った内側面7aで構成し、右側フェンダ7の内側面7a下部から左右方向中央寄りに延出されている前後方向に所定長さの下側面20dと、下側面20dの中央寄り端部から上方へ延出されている前後方向に所定長さの内側面20eと、バッテリ載置空間23の後側端部を仕切る後側面20fとで構成し、バッテリ載置空間23の上側部及び前側部を開放し、バッテリ21の出し入れ用の開口部20gとしている。
【0022】
前記構成によると、左右フェンダ7,7を接続するフェンダフレーム20に構成しているバッテリ載置空間23の前側部及び上側部に形成した広い開口部20gからバッテリ21を出し入れできて、バッテリ21の出し入れが容易となり、バッテリ21のメンテナンス性を向上させることができる。
【0023】
また、エンジンの前側部にラジエータを配設し、ラジエータの前方にバッテリを配置する構成であると、機体の前後長さが長くなり機体を小型化できないという不具合があるが、前記構成によるとこのような不具合を解消することができる。
【0024】
また、図7に示すように、フェンダフレーム20のバッテリ載置空間23には側面視でL型に屈折し所定左右幅のバッテリカバー24をボルト・ナットで取り付け、バッテリ載置空間23の上側部及び前側部を閉鎖するようにしている。
【0025】
しかして、バッテリカバー24の構成を簡単化しコストの低減を図りながら、バッテリカバー24を取り外すと、バッテリ21の上側部及び前側部を広く開放することができ、バッテリ21の出し入れが容易となりメンテナンスを向上することができる。
【0026】
また、図8に示すように、バッテリカバー24を側面視でL型に屈折し所定の左右幅のある合成樹脂材で構成し、バッテリカバー24の前側下端部をフェンダフレーム20の凹状支持部26に係止し、バッテリカバー24の上部後側部をボルト・ナットで取り付けるようにしてもよい。
【0027】
また、図9に示すように、バッテリカバー24を側面視でL型に屈折し所定左右幅の合成樹脂材で構成し、バッテリカバー24の前側裏面及び上側裏面にスポンジ等の弾性材27,27を接着し、閉鎖時に弾性材27,27によりバッテリ21の前側面及び上側面を押圧し、バッテリ21を固定するようにしてもよい。
【0028】
また、図8(B)に示すように、フェンダフレーム20にバッテリ載置空間23を構成するにあたり、側面視でフェンダフレーム20の前後方向長さ内に収まり、且つ、正面視で左右方向の幅内に収まり、正面視でフェンダフレーム20のミッションケース3の右側面と右側後輪5の内側面との間に配置するようにしている。
【0029】
そして、バッテリ載置空間23に配設するバッテリ21を選択するにあたり、バッテリ21をバッテリ載置空間23に収納配設した状態で、バッテリ21の前側端部がバッテリ載置空間23の前側面より前方に突出しないようにし、且つ、上側端部よりも上方へ突出しないようにしている。
【0030】
しかして、バッテリ載置空間23にバッテリ21を配設した状態で、側面視でフェンダフレーム20の前後方向長さ内で、且つ、正面視でフェンダフレーム20の左右方向幅内に納めることができ、フェンダフレーム20の強度アップを図りながら機体の前後長さを短くすることができる。従って、エンジンのラジエータ近傍にバッテリ21を配設する必要がなくなり、ラジエータの冷却効果を高めることができる。また、エンジンにフロントPTO軸を配設しフロント作業機へ動力を取り出すにあたり、設計の自由度を高めることができる。
【0031】
次に、図10乃至図13に基づきバッテリ21とエンジンの始動装置とのケーブルの配索構成について説明する。
前記バッテリ載置空間23の内側面20eの上部にはケーブル孔31を開口し、バッテリ21に接続されているプラスケーブル32、マイナスケーブル33をケーブル孔31から前側に延出している。このプラスケーブル32、マイナスケーブル33をミッションケース3の左右両側面に沿わせ、且つ、左右ステップ35,35の上面を通して前側に延出し、エンジンEの始動装置34とアクスルブラケット37に接続し、左右ステップ35,35の上面に左右マット36,36を載置被覆しケーブル32,33の保護を図っていている。
【0032】
前記構成によると、バッテリ載置空間23に水や塵埃類の異物の侵入を効率的に防止し、プラスケーブル32及びマイナスケーブル33を曲げずに最短距離で前側に配索することができコストの低減を図ることができる。
【0033】
次に、図14乃至図16に基づきフェンダフレーム20の機体への取付構成について説明する。
ミッションケース3の後部に後側安全フレーム17を立設している。この後側安全フレーム17を下部安全フレーム17aと上部安全フレーム17bに分割構成し、下部安全フレーム17aの下部をミッションケース3の左右両側部にボルト・ナットで固着し、下部左右フレーム17aの上部の左右方向に沿った下部横フレーム部17aaと上部安全フレーム17bの下側部の左右方向に沿った上部横フレーム部17baとをボルト・ナットで固着している。
【0034】
そして、図14に示すように、下部安全フレーム17aの下部横フレーム部17aaの上側面と上部安全フレーム17bの上部横フレーム部17baの下側面との間にフェンダフレーム20の後側フェンダフレーム20bを挟み、ボルト・ナットで共締めして取り付けている。しかして、左右フェンダ7,7の前側フェンダフレーム20aをシートフレーム22にボルト・ナットで固着し、取り付けの簡素化を図っている。
【0035】
また、図15に示すように、下部接続フレーム17aの下部横フレーム部17aaの上側面に弾性板38を介装し、上部接続フレーム17bの上部横フレーム部17baの下側面に弾性板38を介装し、フェンダフレーム20の後側フェンダフレーム20bを上下から挟み、ボルト・ナットで共締めすると、騒音防止効果及び振動防止効果を高め、フェンダフレーム20の耐久性を高めることができる。
【0036】
また、図16に示すように、ハンドキャッチャ40の下端部にステー41をボルト・ナットで取り付けて後方へ延出し、下部安全フレーム17aの下横フレーム部17aaの上側面と上部安全フレーム17bの上部横フレーム部17baの下側面との間にステー41の後側部を挟み、ボルト・ナットで共締めすると、取り付け構成を簡単化しながら左右フェンダ7,7の浮き上がりを防止することができる。なお、ハンドキャッチャ40の上部を左右フェンダ7,7に形成している前後方向の溝から上方へ突出させている。
【0037】
次に、図17に基づきフロントローダ45の上昇規制構成について説明する。
機体の前側部にはフロントローダ45を昇降手段を介して昇降自在に設けたトラクタにおいて、フロントローダアーム45aの前側端にはバケット45bを左右方向の軸回り上下回動自在に取り付け泥土収納状態あるいは落下排出状態に構成し、例えばステアリングハンドル16近傍のダッシュボードカバー46にフロントローダ45上昇規制用の上昇稼働スイッチ47を設け、フロントローダ45の昇降制御コントローラに上昇制御手段を設けている。
【0038】
そして、上昇稼働スイッチ47をON状態にすると、フロントローダ45を所定の高さ(例えば、フロントローダアーム45aの下降状態においてフロントローダアーム45a前端のバケット45b前側部を上昇回動すると、バケット45bの下側部が地面から上昇し泥土収納保持状態となる。また、バケット45bの前側部を下降回動するとバケット45bの下側部が地面に接地し泥土落下排出状態になる位置)から上昇可能となる。しかし、上昇稼働スイッチ47をOFF状態にすると、フロントローダ45のフロントローダアーム45aを前記所定高さから上昇不能に構成している。
【0039】
前記構成によると、上昇稼働スイッチ47をOFF状態にすると、フロントローダ45のフロントローダアーム45aを前記所定高さから上昇不能であるので、バケット45bに泥などを収納し運搬する際に、傾斜地でのトラクタの転倒を防止し、フロントローダ45作業の安全を図ることができる。
【0040】
また、トラクタが路上走行時において、フロントローダ45に荷物を積んだ状態で高速変速状態で走行すると、左右に緩い傾斜状態でもトラクタが転倒する恐れがあり危険である。しかし、上昇稼働スイッチ47をOFFにすることにより、このような危険を回避することができる。
【0041】
また、図18に示すように構成してもフロントローダ作業の安全を確保することができる。
機体の前側部にフロントローダ45を昇降自在に設け、エンジンからの走行動力を変速する主変速装置及び副変速装置を備え、フロントローダアーム45aの前側端に左右方向の軸回りバケット45bを上下回動自在に取り付け、フロントローダ45上昇規制用の上昇稼働スイッチ47を設け、フロントローダ45の昇降制御コントローラには上昇制御手段を設け、前記副変速装置変速用の副変速レバー48の変速状態を検する副変速検出センサ49を備えたトラクタにおいて、上昇稼働スイッチ47のON状態で、且つ、副変速検出センサ49が低速検出状態でないと、フロントローダアーム45a昇降用の昇降制御弁が上昇制御手段により制御され、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも高く上昇しないようにする。
【0042】
また、上昇稼働スイッチ47のON状態で、且つ、副変速検出センサ49が低速以外の変速検出時には、フロントローダアーム45a昇降用の昇降制御弁が上昇制御手段に制御され、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも上昇しないようにし、バケット45bだけを上下回動可能に構成する。
【0043】
また、上昇稼働スイッチ47のOFF状態で、且つ、副変速検出センサ49が低速、中速、高速の検出状態では、フロントローダアーム45a昇降用の昇降制御弁が上昇制御手段に制御され、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも上昇しないようにし、バケット45bだけを昇降回動可能にしている。
【0044】
前記構成によると、上昇稼働スイッチ47がON状態でも、トラクタが低速走行状態でないと、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも高く上昇しないので、傾斜地でのトラクタの転倒を防止し、フロントローダ45作業の安全を図ることができる。
【0045】
また、図19に示すように構成してもよい。
機体の前側部にフロントローダ45を昇降自在に設け、フロントローダ45の昇降制御コントローラには上昇制御手段を備え、フロントローダアーム45aの前側端にはバケット45bを左右方向の軸回り上下回動自在に取り付け、フロントローダ45上昇規制用の上昇稼働スイッチ47を設け、エンジンからの走行動力を変速する主変速装置及び副変速装置を設け、フロントローダ45の昇降制御コントローラには上昇規制制御手段を設け、副変速装置の副変速レバー48の変速状態を検する副変速検出センサ49を備えたトラクタにおいて、フロントローダアーム45aには昇降荷重検出用の昇降荷重検出センサ50を設ける。
【0046】
そして、上昇稼働スイッチ47のON状態で、昇降荷重検出センサ50が所定重量以上の荷重を検出すると、フロントローダアーム45a昇降用昇降制御弁の上昇制御手段により上昇規制制御され、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも上昇しないようにし、バケット45bだけを昇降回動可能に構成する。
【0047】
また、上昇稼働スイッチ47のON状態で、且つ、副変速検出センサ49が低速以外の検出状態で、且つ昇降荷重検出センサ50が所定重量以上の荷重を検出すると、フロントローダアーム45a昇降用の昇降制御手段が上昇規制制御され、フロントローダアーム45aを前記所定高さよりも上昇しないようにし、バケット45bだけを昇降回動可能にする。
【0048】
前記構成によると、傾斜地でのトラクタの転倒を防止しフロントローダ45作業の安全を図ることができる。
次に、図20に基づきトラクタのパーキングブレーキ構成について説明する。
【0049】
ステアリングハンドル16近傍のダッシュボードカバー46には油圧無段変速型主変速装置の前後進を切換変速する前後進変速レバー53を設け、該リニアレバー53を上下方向の軸回りに前後方向に回動操作すると、主変速装置を前後進に切り換え無段変速するように構成している。
【0050】
そして、前後進変速レバー53を更に左右方向の軸回りに上下方向に回動自在に構成し、前後進変速レバー53のアーム部に駐車ブレーキワイヤ54の一端を接続し、駐車ブレーキワイヤ54の他端をブレーキペダル55のアーム部に接続する。しかして、前後進変速レバー53を例えば左右方向の軸回りに下側に回動し係止すると、ブレーキペダル55を制動位置に回動し左右後輪5,5をブレーキ作動状態とするように構成している。
【0051】
前記構成によると、主変速装置の前後進切換変速用の前後進変速レバー53に駐車ブレーキレバーの機能をもたせることができ、構成の簡素化を図ることができる。
また、前記前後進変速レバー53により駐車ブレーキレバーの機能をもたせた構成において、図21に示すように、前後進変速レバー53の駐車ブレーキ作動状態の有無を検出する駐車ブレーキ検出センサ56を設け、駐車ブレーキ検出センサ56が駐車ブレーキ操作状態を検出すると、駐車ブレーキソレノイド57を作動し、ブレーキペダル55をブレーキ作動状態にするように構成してもよい。
【0052】
また、図22に示すように構成してもよい。前後進変速レバー53を上下方向軸回りに前後方向に回動すると、主変速装置を前後進に切り換え無段変速するように構成し、前後進変速レバー53を基部レバー53aと先端レバー53bとに分割構成する。そして、基部レバー53aに対して先端レバー53bを長手方向に沿って所定長さ摺動自在に取り付け、先端レバー53bの基部寄りに駐車ブレーキワイヤ54の一端を接続し、駐車ブレーキワイヤ54の他端をブレーキペダル55のアーム部に接続する。しかして、基部レバー53aに対して先端レバー53bを伸長方向(図22で左方向)に移動させると、ブレーキペダル55を制動回動し、左右後輪5,5がブレーキ作動状態となる。
【符号の説明】
【0053】
4 前輪
5 後輪
6 シート
7 フェンダ
20 フェンダフレーム
20a 前側フェンダフレーム
20b 後側フェンダフレーム
20c 空間部
20g 開口部
21 バッテリ
22 シートフレーム
22a シート支持部
23 バッテリ載置空間
24 バッテリカバー
26 凹状支持部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の前側部に左右前輪(4,4)を、後側部に左右後輪(5,5)を配設した作業車両において、該左右後輪(5,5)被覆用の左右フェンダ(7,7)をフェンダフレーム(20)により接続して合成樹脂材で一体構成し、該フェンダフレーム(20)には側面視でフェンダフレーム(20)の前後長さ内に収まり、且つ、正面視でフェンダフレーム(20)の左右幅内に収まり、前記左右後輪(5,5)の中央寄りに位置するようにバッテリ載置空間(23)を構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
請求項1の発明において、前記フェンダフレーム(20)には左右方向に沿った前側フェンダフレーム(20a)と、左右方向に沿った後側フェンダフレーム(20b)と、前側フェンダフレーム(20a)と後側フェンダフレーム(20b)との間に開口構成されている前後方向及び左右方向に広がる空間部(20c)を備え、機体に載置するように取り付けているシートフレーム(22)の上方に前記フェンダフレーム(20)を配設し、シートフレーム(22)のシート支持部22aをフェンダフレーム(20)の前記空間部(20c)を通して上方に延出し、該シート支持部(22a)にシート(6)を取り付け、フェンダフレーム(20)の前記バッテリ載置空間(23)は上側部及び前側部を開放した開口部(20g)としそれ以外の部位を板状体で閉鎖状に構成し、前記バッテリ載置空間(23)の前記開口部(20g)を着脱自在のバッテリカバー(24)により閉鎖するようにしたことを特徴とする作業車両。
【請求項3】
請求項2の発明において、前記バッテリカバー(24)を側面視でL型に屈折した所定左右幅の板状体で構成し、該バッテリカバー(24)の前側部あるいは後側部の何れか一方を前記フェンダフレーム(20)の凹状支持部(26)に係止し、何れか他方をフェンダフレーム(20)にボルト・ナットで固着するように構成したことを特徴とする作業車両。
【請求項4】
請求項2及び請求項3の発明において、前記フェンダフレーム(20)のバッテリ載置空間(23)にバッテリ(21)を収納配置するにあたり、バッテリ(21)のバッテリ載置空間(23)への収納配設状態において、バッテリ(21)の前側端部がバッテリ載置空間(23)の前側面より前方に突出しないで、且つ、上側端部よりも上方へ突出しないようにしたことを特徴とする作業車両。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2013−95190(P2013−95190A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237419(P2011−237419)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)