作業車両
【課題】作業車両のミッションケースに直接オイルフィルタを取り付けた構成で、オイルフィルタメンテナンスを行い易くし、保護する。
【解決手段】機体の左右中央に配置するミッションケースのリアケース8Rから後輪3の後輪出力軸68を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース内のオイルを浄化するオイルフィルタ160を後輪3のリム3Rの空間部3RKに入り込む状態でリアケース8Rの側面に取り付けたことを特徴とする作業車両とする。また、オイルフィルタ160をリアケース8Rの左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする作業車両とする。また、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向と平行にリアケース8Rに取り付けたことを特徴とする作業車両とする。
【解決手段】機体の左右中央に配置するミッションケースのリアケース8Rから後輪3の後輪出力軸68を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース内のオイルを浄化するオイルフィルタ160を後輪3のリム3Rの空間部3RKに入り込む状態でリアケース8Rの側面に取り付けたことを特徴とする作業車両とする。また、オイルフィルタ160をリアケース8Rの左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする作業車両とする。また、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向と平行にリアケース8Rに取り付けたことを特徴とする作業車両とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクター等の作業車両に関し、特にミッションケース内のオイルの汚れを取り除くオイルフィルタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルフィルタは、定期的に点検し、内部の濾過材を交換しなければならないので、ミッションケースの側面に着脱可能に取り付けられる。
例えば、特開2011−105134号公報には、後輪の内側でミッションケースの側面にオイルフィルタを着脱可能に取り付け、このオイルフィルタの下部と外側面をフィルタカバーで覆って、オイルフィルタに切り株や石等が直接当たって破損することや泥土が付着することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−105134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の如く、従来のオイルフィルタの取付構造は、オイルフィルタをフィルタカバーで覆っているために、濾過材の交換の際には、フィルタカバーを取り外した後にオイルフィルタを取り外さなければならないので、メンテナンス作業が煩雑になっている。
【0005】
本発明は、作業車両のミッションケースに直接オイルフィルタを取り付けた構成で、メンテナンスを行い易くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、機体の左右中央に配置するミッションケース8のリアケース8Rから後輪3の後輪出力軸68を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース8内のオイルを浄化するオイルフィルタ160を後輪3のリム3Rの空間部3RKに入り込む状態でミッションケース8の側面に取り付けたことを特徴とする作業車両の構成とする。
【0007】
この構成で、オイルフィルタ160が後輪3のリム3Rで覆われた状態になり、切り株や石等が直接当たって破損するのを防ぎ、後輪3を取り外すとオイルフィルタ160が露出されて取り外しが容易に出来る。そして、この構成で、オイルフィルタ160の周囲に循環用のパイプ配管が必要なく、構造が単純化される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、オイルフィルタ160をリアケース8Rの左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とする。
この構成で、リアケース8R内の最も低い位置から底部に溜まるオイルの全量をオイルフィルタ160に循環して浄化できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向と平行にリアケース8Rに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とする。
この構成で、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向に側面から抜き差しすることでリアケース8Rへ着脱出来て作業が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明で、オイルフィルタ160が後輪3のリム3Rで覆われた状態になり、切り株や石等が直接当たって破損するのを防ぎ、後輪3を取り外すとオイルフィルタ160が露出されて取り外しが容易に出来る。
【0011】
また、オイルフィルタ160を覆うカバーを設ける必要が無いので、トラクターの製造コストが低減できる。そして、オイルフィルタ160の周囲に循環用のパイプ配管が必要なく、構造が単純化される。
【0012】
請求項2に記載の発明で、リアケース8R内の最も低い位置から底部に溜まるオイルの全量をオイルフィルタ160に循環して浄化できる。
請求項3に記載の発明で、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向に側面から抜き差しすることでリアケース8Rへ着脱出来て作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両として、トラクターの全体側面図である。
【図2】エンジンから前後輪及びPTO軸への動力伝動線図である。
【図3】ミッションケースの断面展開図である。
【図4】ミッションケースの正断面図である。
【図5】ミッションケースの断面斜視図である。
【図6】自動制御ブロック図である。
【図7】一部の正断面図である。
【図8】ミッションケースの一部左側面図である。
【図9】オイルフィルタを取り外したミッションケースの一部拡大側面図である。
【図10】ミッションケースの一部拡大側面図である。
【図11】ミッションケースの一部拡大右側断面図である。
【図12】ミッションケースの一部拡大正断面図である。
【図13】ミッションケースの一部拡大平断面図である。
【図14】ミッションケースの一部拡大平断面図である。
【図15】ミッションケースの変速操作部の拡大正断面図である。
【図16】ミッションケースの油路を表す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
作業車両の一例としてトラクターにおける実施例を以下に説明する。
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0015】
トラクター1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5のエンジン出力軸20の回転をミッションケース8内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0016】
機体中央でのハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側にシフトすると機体は前進し、後側へシフトすると後進する構成である。
【0017】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル18と、左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0018】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、一速から八速まで変速する主変速レバー14はシート9の左前側部にあり、超低速、低速、中速、高速の四段及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15はその後方にあり、さらにその右側に四段に変速するPTO変速レバー12を設けている。
【0019】
トラクター1の機体後部には、ロータリ作業機17を装着して、ミッションケース8から後方へ突出するPTO出力軸111で駆動するようにしている。
図2は、フロントケース8Fとリアケース8Rを一体に組み付けたミッションケース8内の変速装置の動力伝動機構を示す伝動線図で、エンジン5から前輪2と後輪3及びロータリ作業機17へのPTO出力軸111への変速伝動機構を説明する。
【0020】
エンジン5のエンジン出力軸20の回転がメインクラッチ112を介して入力軸21に伝動され、この入力軸21に固着の第一入力ギヤ22と第二入力ギヤ23がそれぞれ第一高・低クラッチ24の第一低速ギヤ26と第二高・低クラッチ25の第二低速ギヤ27及び第一高・低クラッチ24の第一高速ギヤ30と第二高・低クラッチ25の第二高速ギヤ31に噛み合って回転を伝動している。
【0021】
そして、第一高・低クラッチ24を第一低速ギヤ26側に繋ぐと第一低速ギヤ26から第一クラッチ軸28に伝動され、第一高速ギヤ30側に繋ぐと第一高速ギヤ30から第一クラッチ軸28に伝動され、第二高・低クラッチ25を第二低速ギヤ27側に繋ぐと第二低速ギヤ27から第二クラッチ軸29に伝動され、第二高速ギヤ31側に繋ぐと第二高速ギヤ31から第二クラッチ軸29に伝動される。
【0022】
第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は同一の油圧多板クラッチで、それぞれ入力軸21の回転を同一減速比で高・低の二段に減速して第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29に伝動することになる。
【0023】
また、図4に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、潤滑オイルに浸かり、その第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29が潤滑オイルの液面OLより若干上に位置している。
【0024】
また、図3に示す如く、第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29をミッションケース8に支持する前仕切壁181に形成した肉盛部181aにケースの左右開口部側からドリルで加工した給油孔8bを設けて、この給油孔8bから第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の軸に給油している。図16に示す如く、給油孔8bは軸受け部を避けて上下方向と左右方向の油路として集中して設けてケース内の配管に代えている。オイルフィルタ160もこの給油孔8bの近くに取り付けると配管を簡略化出来る。
【0025】
また、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、ミッションケース8の下り傾斜部8cの下部で、左右に配置している。
図2に戻って、第一クラッチ軸28に固着の第一ギヤ113が低速伝動軸34に固着の第二ギヤ35と噛み合って減速して伝動され、第二クラッチ軸29に固着の第三ギヤ149が高速伝動軸32に固着の第四ギヤ33と噛み合って増速して伝動される。
【0026】
ここまでの変速伝動で、低速伝動軸34が低速で二段に、高速伝動軸32が高速で二段にそれぞれ変速されることで、計四段に変速されることになる。
低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転がそれぞれ第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36に伝動され、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37が第一伝動軸39の第五ギヤ40と噛み合い、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロギヤ大44と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38が第一伝動軸39の第六ギヤ41と噛み合って伝動する。
【0027】
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第一シンクロギヤ大44及び第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37と第二シンクロ大ギヤ38は、全く同一のギヤで、低速伝動軸34が低速回転し高速伝動軸32が高速回転しているので、第一シンクロチェンジ42を切換えると低速でさらに二段に変速され、第二シンクロチェンジ36を切換えると高速でさらに二段に変速される。すなわち、第一入力軸21の回転が第一伝動軸39で低速四段と高速四段に変速されることになる。
【0028】
この第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36はシフタステーとシフタをサブ組付けしてミッションケース8内に収められ、その変速操作部のケース開口部がケースの左右側面に設けられ、ミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも上側に設けられる。
【0029】
ここまでの主変速部150で、操縦者が操作する主変速レバー14の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に高・低油圧多板クラッチ24,25と第一・第二シンクロチェンジ36,42を制御して低速四段と高速四段まで変速される。
【0030】
また、ミッションケース8内で、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25が左右に配置され、その下側に第一シンクロチェンジ42を装着する低速伝動軸34と第二シンクロチェンジ36を装着する高速伝動軸32が左右に配置されることで、ミッションケース8の左右幅が狭く高さの低いコンパクトな構成に出来る。
【0031】
さらに、第一伝動軸39は第二伝動軸45に軸連結で連結されている。この第二伝動軸45には、第七ギヤ46と第八ギヤ47が固着され、油圧多板の正逆クラッチ48の正転クラッチギヤ49と逆転軸52の逆転ギヤ51に噛み合わされ、逆転ギヤ51が正逆クラッチ48の逆転クラッチギヤ50と噛み合っている。
【0032】
従って、正逆クラッチ48を正転クラッチギヤ49に繋ぐと、正転状態で正逆クラッチ48に連結の副変速軸53に伝動され、正逆クラッチ48を逆転クラッチギヤ50に繋ぐと、逆転状態で副変速軸53に伝動される。正転と逆転では減速比が異なり、逆転の方が低速になる。
【0033】
また、正逆クラッチ48の支持軸をミッションケース8に支持する後仕切壁182に形成した肉盛部182aにケースのケース外側からドリルで加工した給油孔182bを設けて、この給油孔182bから正逆クラッチ48の支持軸に給油している。図16に示す如く、給油孔182bは軸受け部を避けて上下方向と左右方向の油路として集中して設けてケース内の配管に代えている。給油孔182bには4WD切換バルブへの給油もしている。
【0034】
なお、前輪増速クラッチ79やPTOメインクラッチ97への給油孔もミッションケース8の内側に設けた肉盛り部に形成している。
次に、副変速部154を説明する。
【0035】
副変速軸53には第九ギヤ54と第十ギヤ55が固着され、それぞれ第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ大ギヤ56と第三シンクロ小ギヤ59に噛み合っている。従って、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側に繋ぐと第九ギヤ54から第三シンクロ大ギヤ56に伝動した回転で第5伝動軸60が増速して高速で駆動され、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐと第十ギヤ55から第三シンクロ小ギヤ59に伝動した回転で第5伝動軸60が減速して中速で駆動される。
【0036】
さらに、第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ小ギヤ59側には第十一ギヤ57を固着して、第四シンクロチェンジ71の第四シンクロ小ギヤ69と噛み合っている。そして、第四シンクロ小ギヤ69側には第十五ギヤ70を固着し、この第十五ギヤ70が第二筒軸114の第十七ギヤ75と噛み合って第二筒軸114に固着の第十八ギヤ76から第四シンクロ大ギヤ72に伝動している。第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73には、第十六ギヤ74を固着している。
【0037】
従って、第三シンクロチェンジ58を中立にすると、第十ギヤ55の回転が第三シンクロ小ギヤ59に伝動され、第三シンクロ小ギヤ59側に固着の第十一ギヤ57から第四シンクロ小ギヤ69に伝動される。
【0038】
この状態で、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ小ギヤ69側に繋ぐと、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十六ギヤ74の回転となって低速となり、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ大ギヤ72側に繋ぐと第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十五ギヤ70から第十七ギヤ75と第十八ギヤ76と第四シンクロ大ギヤ72に伝動されて第十六ギヤ74が極低速となる。
【0039】
なお、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側或いは第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐ場合には、第四シンクロチェンジ71を中立にしておく。
従って、主変速部150変速された副変速軸53の低速四段と高速四段が、副変速部154で四段に変速されることで、低速十六段と高速十六段に変速されることになる。
【0040】
さらに、第十六ギヤ74は前記第5伝動軸60に固着の第十二ギヤ61と噛み合って第5伝動軸60を駆動する。この第5伝動軸60の軸端に固着の第一ベベルギヤ62がリアベベルケース64の第二ベベルギヤ63と噛み合っていて、リアベベルケース64のベベル出力軸65から第十三ギヤ66と第十四ギヤ67を介して後輪出力軸68を回転して後輪3を駆動する。
【0041】
また、第5伝動軸60には第二十一ギヤ117が固着され、副変速軸53に軸支された第二筒軸119に固着の第二十二ギヤ118と第二十二ギヤ148を介して第一前輪駆動軸78の第十九ギヤ77に伝動して、前記第十六ギヤ74の低速十六段と高速十六段の回転が第一前輪駆動軸78に伝動されている。
【0042】
この第一前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ79を介して第二前輪駆動軸84に伝動し、第三前輪駆動軸85と第四前輪駆動軸86と前輪駆動ベベル軸87に引き継いで伝動し、前輪駆動ベベル軸87の軸端に固着の第一前ベベルギヤ88が前ベベルケース89の第二前ベベルギヤ115と噛み合っていて、前ベベルケース89の前ベベル出力軸90から第一前ベベルギヤ組91と前縦軸116と第二前ベベルギヤ組92を介して前輪出力軸93を回転して前輪2を駆動する。
【0043】
なお、前輪増速クラッチ79の第一増速クラッチギヤ82と第二増速クラッチギヤ80はそれぞれ第一増速ギヤ83と第二増速ギヤ81に噛み合って前輪増速クラッチ79の切換によって増速率を変更する。
【0044】
ここまでの副変速部154が副変速レバー15の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71を制御して変速される。
【0045】
また、第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73は、第三シンクロチェンジ58を装着した第5伝動軸60の下側に配置され、ミッションケース8の長さを短く出来る。
【0046】
次に、PTO出力軸111の伝動経路を説明する。
前記第二入力ギヤ23にPTOメインクラッチ97のメインクラッチギヤ96を噛み合わせて、PTOメインクラッチ97で動力の断続を行うようにしている。このPTOメインクラッチ97は、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の下側に位置して、ミッションケース8の内部に溜まる潤滑オイルで冷却・潤滑される。
【0047】
PTOメインクラッチ97を装着した第一PTO軸95には、次の如く、PTO変速部157が設けられている。
第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151の第五シンクロ小ギヤ100と第五シンクロ大ギヤ101を装着し、第二PTO軸104に第二十ギヤ102と第二十三ギヤ152をと第二十一ギヤ103と第二十四ギヤ153を固着し、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を軸支している。
【0048】
第一PTOギヤ98をスライドして第二十ギヤ102に噛み合わせると第三PTO軸107が二速になり、第一PTOギヤ98をスライドして第二PTOギヤ99に係合すると第一PTO軸95の回転が第二PTOギヤ99と第二十三ギヤ152を介して第三PTO軸107に伝わって四速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ小ギヤ100に繋ぐと第五シンクロ小ギヤ100から第二十一ギヤ103に伝動して一速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ大ギヤ101に繋ぐと第五シンクロ大ギヤ101から第二十四ギヤ153に伝動して三速となり、PTO逆転ギヤ105を第一PTOギヤ98と第二十ギヤ102に噛み合わせると第一PTO軸95の回転が第一PTOギヤ98からPTO逆転ギヤ105を経て第二十ギヤ102に伝動されて第三PTO軸107に伝わって逆回転となる。
【0049】
また、図5に示す如く、第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151は、前記第一高・低クラッチ24及び第二高・低クラッチ25と第一シンクロチェンジ42及び第二シンクロチェンジ36の間で、下側に配置している。
【0050】
第三PTO軸107の回転は、第四PTO軸156を介して第五PTO軸108に伝動し、第一PTO出力ギヤ109と第二PTO出力ギヤ110さらに減速してPTO出力軸111を駆動する。
【0051】
図4に示す如く、ミッションケース8の左右中央に入力軸21と第四前輪駆動軸86が位置し、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25、高速伝動軸32と低速伝動軸34及び第四PTO軸156と副変速軸53が左右対称位置に配置している。
【0052】
また、第四PTO軸156と副変速軸53と第四前輪駆動軸86は、ミッションケース8の内部下方位置で正面視略二等辺三角形の配置となっている。
図6は、ミッションケース8内の変速を制御する自動制御の制御ブロック図で、走行系ECU120への制御データの入力は、エンジン回転センサ121からのエンジン出力軸の回転数と、正逆クラッチ出力回転センサ122の出力軸回転数と、油温センサ123のミッションケース8内オイル温度と、調整モードスイッチ124のモード選択信号と、主変速(1−2)位置センサ125の第一シンクロチェンジ42出力軸回転数と、主変速(3−4)位置センサ126の第二シンクロチェンジ36出力軸回転数と、正逆クラッチ48の前進クラッチ圧力スイッチ127と後進クラッチ圧力スイッチ128のオン信号と、第一高・低クラッチ24の第一低クラッチ圧力スイッチ129と第一高クラッチ圧力スイッチ130のオン信号と、第二高・低クラッチ25の第二低クラッチ圧力スイッチ131と第二高クラッチ圧力スイッチ132のオン信号と、クラッチペダルセンサ133のオン信号と、主変速レバー操作位置センサ134の操作位置と、副変速位置センサ135の操作位置と、前後進レバー操作位置センサ136の操作位置である。
【0053】
走行系ECU120からの制御出力は、前進切換ソレノイド137への前進切換信号と、後進切換ソレノイド138への後進切換信号と、前後進昇降ソレノイド139への昇降信号と、一速切換ソレノイド140への切換信号と、二速切換ソレノイド141への切換信号と、三速切換ソレノイド142への切換信号と、四速切換ソレノイド143への切換信号と、第一低クラッチ切換ソレノイド144への切換信号と、第一高クラッチ切換ソレノイド145への切換信号と、第二低クラッチ切換ソレノイド146への切換信号と、第二高クラッチ切換ソレノイド147への切換信号である。
【0054】
図7は、ミッションケース8を構成するリアケース8Rにオイルフィルタ160を取り付けた状態を示している。オイルフィルタ160を後輪出力軸68と平行な側方よりリアケース8Rの加工面に直接取り付けている。このオイルフィルタ160の側方に突出した本体部分は、後輪出力軸68に取り付けた後輪3のリム3Rの空間部3RK内に収まり、泥土や石ころがオイルフィルタ160に当たらないようになっている。このオイルフィルタ160を取り外す場合には、後輪3をリム3Rごと後輪出力軸68から外して行えるので、従来よりもメンテナンスが容易になる。
【0055】
リアケース8Rの加工面にはオイルポンプ161も取り付け、リアケース8Rの最底部に設ける鋳抜き穴162から出たオイルがオイルフィルタ160で浄化されてフィルタ出口163からオイル穴164を通ってポンプ入口165からオイルポンプ161に入るので、ミッションケース8の外側にオイルパイプを配管する必要が無い。オイル穴164は、リアケース8Rの肉部に前方からドリル加工した穴で、出口にオイルキャップ166をC型止め輪で抜け止めするか、図10の如く、軸受けメタル167のボス部167bを差し込んでOリング168でオイルの漏れ止めをする。
【0056】
図11と図12は、リアケース8R内で第一前輪駆動軸78を軸支する内壁157に該内壁157の前後を繋いで鋳抜き連通孔158を設けてオイルの流れを良くして溜まらないようにしている。このミッションケース8は、車輪型トラクターとセミクローラ型トラクターを共用し、セミクローラ型トラクター用ギヤを組み込んでも機械加工が必要ないように底部ケース壁面を低くしている。
【0057】
図13は小馬力トラクターの第5伝動軸60の支持部を表し、図14は大馬力用トラクターの前記第5伝動軸60の支持部を表し、同一の第5伝動軸60を用いていて、一方の第一ベベルギヤ62側のスラストベアリング169は小馬力トラクターと同一とし、他方の大馬力用ベアリング171は小馬力用ベアリング170に対して内径が同一で外形径の大きなものを使用することで、第5伝動軸60の共用化を図っている。
【0058】
図13では、第三シンクロチェンジ58の片側スライドを規制するC型止め輪172をリング溝へ嵌めている。
この第5伝動軸60は小馬力から大馬力及び副変速の二段から四段までのトラクター用ミッションケースに組み込むギヤの厚みを変更することで使用可能である。
【0059】
図15は、第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71の変速操作部を示し、副変速レバー15に連結したシフト軸176の先端に固着したシフトアーム177が第三シンクロチェンジ58の第三シフト軸178と第四シンクロチェンジ71の第四シフト軸179に係合して変速する。
【0060】
シフト軸176の変速位置を検出するシフトセンサ173をリアケース8Rの上部の取付面174に取り付けて変速位置を検出する。このシフトセンサ173の先端にはシフト軸176のシフト溝176aに係合するボール175を設けて、シフト軸176の位置決めを兼ねている。また、シフトアーム177を第四シンクロチェンジ71側に付勢するスプリング180を設けて、ニュートラル時にシフトアーム177が低速側にあるようにして、不測にチェンジが入っても低速走行になるようにしている。
【0061】
なお、第三シンクロチェンジ58の第三シフト軸178と第四シンクロチェンジ71の第四シフト軸179は、同一部品を共用している。
ミッションケース8は、フロントケース8Fとリアケース8Rを一体に連結しているので、その内部に供給するオイルを分離してフロントケース8F内のオイルを油圧シリンダやパワステアリング制御ユニット等の油圧制御用のオイルとしてリアケース8Rのオイルフィルタ160とは別のオイルフィルタを通して循環すると、制御用オイルの汚れを少なく出来る。
【0062】
フロントケース8Fの上面に前記給油孔8bに繋ぐ制御バルブ及び制御バルブ用マニホールドを配置すると配管が簡略化出来る。制御バルブ用マニホールドはトラクターの機種ごとに異なるものを取り付け可能にする。
【0063】
前記の給油孔8bや給油孔182bは、ミッションケース8内に取り付ける配管マニホールドに形成しても良い。
ミッションケース8は、フロントケース8Fとリアケース8Rを連結しているので、両取付面の一方側のパイプ配管取付の隆起部と他方側のパイプ配管取付の隆起部との間に工具先端を差し込む隙間を設けて、フロントケース8Fとリアケース8Rの分離を容易にする。
【符号の説明】
【0064】
3 後輪
3R リム
3RK 空間部
8 ミッションケース
8R リアケース
68 後輪出力軸
160 オイルフィルタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクター等の作業車両に関し、特にミッションケース内のオイルの汚れを取り除くオイルフィルタの取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
オイルフィルタは、定期的に点検し、内部の濾過材を交換しなければならないので、ミッションケースの側面に着脱可能に取り付けられる。
例えば、特開2011−105134号公報には、後輪の内側でミッションケースの側面にオイルフィルタを着脱可能に取り付け、このオイルフィルタの下部と外側面をフィルタカバーで覆って、オイルフィルタに切り株や石等が直接当たって破損することや泥土が付着することを防いでいる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−105134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の如く、従来のオイルフィルタの取付構造は、オイルフィルタをフィルタカバーで覆っているために、濾過材の交換の際には、フィルタカバーを取り外した後にオイルフィルタを取り外さなければならないので、メンテナンス作業が煩雑になっている。
【0005】
本発明は、作業車両のミッションケースに直接オイルフィルタを取り付けた構成で、メンテナンスを行い易くすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記本発明の課題は、次の技術手段により解決される。
請求項1に記載の発明は、機体の左右中央に配置するミッションケース8のリアケース8Rから後輪3の後輪出力軸68を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース8内のオイルを浄化するオイルフィルタ160を後輪3のリム3Rの空間部3RKに入り込む状態でミッションケース8の側面に取り付けたことを特徴とする作業車両の構成とする。
【0007】
この構成で、オイルフィルタ160が後輪3のリム3Rで覆われた状態になり、切り株や石等が直接当たって破損するのを防ぎ、後輪3を取り外すとオイルフィルタ160が露出されて取り外しが容易に出来る。そして、この構成で、オイルフィルタ160の周囲に循環用のパイプ配管が必要なく、構造が単純化される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、オイルフィルタ160をリアケース8Rの左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とする。
この構成で、リアケース8R内の最も低い位置から底部に溜まるオイルの全量をオイルフィルタ160に循環して浄化できる。
【0009】
請求項3に記載の発明は、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向と平行にリアケース8Rに取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両の構成とする。
この構成で、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向に側面から抜き差しすることでリアケース8Rへ着脱出来て作業が容易になる。
【発明の効果】
【0010】
請求項1に記載の発明で、オイルフィルタ160が後輪3のリム3Rで覆われた状態になり、切り株や石等が直接当たって破損するのを防ぎ、後輪3を取り外すとオイルフィルタ160が露出されて取り外しが容易に出来る。
【0011】
また、オイルフィルタ160を覆うカバーを設ける必要が無いので、トラクターの製造コストが低減できる。そして、オイルフィルタ160の周囲に循環用のパイプ配管が必要なく、構造が単純化される。
【0012】
請求項2に記載の発明で、リアケース8R内の最も低い位置から底部に溜まるオイルの全量をオイルフィルタ160に循環して浄化できる。
請求項3に記載の発明で、オイルフィルタ160を後輪出力軸68の軸方向に側面から抜き差しすることでリアケース8Rへ着脱出来て作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の作業車両として、トラクターの全体側面図である。
【図2】エンジンから前後輪及びPTO軸への動力伝動線図である。
【図3】ミッションケースの断面展開図である。
【図4】ミッションケースの正断面図である。
【図5】ミッションケースの断面斜視図である。
【図6】自動制御ブロック図である。
【図7】一部の正断面図である。
【図8】ミッションケースの一部左側面図である。
【図9】オイルフィルタを取り外したミッションケースの一部拡大側面図である。
【図10】ミッションケースの一部拡大側面図である。
【図11】ミッションケースの一部拡大右側断面図である。
【図12】ミッションケースの一部拡大正断面図である。
【図13】ミッションケースの一部拡大平断面図である。
【図14】ミッションケースの一部拡大平断面図である。
【図15】ミッションケースの変速操作部の拡大正断面図である。
【図16】ミッションケースの油路を表す断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
作業車両の一例としてトラクターにおける実施例を以下に説明する。
なお、本明細書において作業車両の前進方向に向かって左右方向をそれぞれ左、右といい、前進方向を前、後進方向を後という。
【0015】
トラクター1は、図1に示す如く、機体の前後部に前輪2,2と後輪3,3を備え、機体の前部に搭載したエンジン5のエンジン出力軸20の回転をミッションケース8内の変速装置によって適宜減速して、これら前輪2,2と後輪3,3に伝えるように構成している。
【0016】
機体中央でのハンドルポスト6にはステアリングハンドル7が設けられ、その後方にはシート9が設けられている。ステアリングハンドル7の下方には、機体の進行方向を前後方向に切り換える前後進レバー10が設けられている。この前後進レバー10を前側にシフトすると機体は前進し、後側へシフトすると後進する構成である。
【0017】
また、ハンドルポスト6を挟んで前後進レバー10の反対側にはエンジン回転数を調節するアクセルレバー11が設けられ、またステップフロア13の右コーナー部には、同様にエンジン回転数を調節するアクセルペダル18と、左右の後輪3,3にブレーキを作動させる左右のブレーキペダル19R,19Lが設けられている。
【0018】
ハンドルポスト6上部のステアリングハンドル7の前側にメータパネル16が設けられて、走行速度等の機体状況が表示される。
また、一速から八速まで変速する主変速レバー14はシート9の左前側部にあり、超低速、低速、中速、高速の四段及び中立のいずれかの位置を選択できる副変速レバー15はその後方にあり、さらにその右側に四段に変速するPTO変速レバー12を設けている。
【0019】
トラクター1の機体後部には、ロータリ作業機17を装着して、ミッションケース8から後方へ突出するPTO出力軸111で駆動するようにしている。
図2は、フロントケース8Fとリアケース8Rを一体に組み付けたミッションケース8内の変速装置の動力伝動機構を示す伝動線図で、エンジン5から前輪2と後輪3及びロータリ作業機17へのPTO出力軸111への変速伝動機構を説明する。
【0020】
エンジン5のエンジン出力軸20の回転がメインクラッチ112を介して入力軸21に伝動され、この入力軸21に固着の第一入力ギヤ22と第二入力ギヤ23がそれぞれ第一高・低クラッチ24の第一低速ギヤ26と第二高・低クラッチ25の第二低速ギヤ27及び第一高・低クラッチ24の第一高速ギヤ30と第二高・低クラッチ25の第二高速ギヤ31に噛み合って回転を伝動している。
【0021】
そして、第一高・低クラッチ24を第一低速ギヤ26側に繋ぐと第一低速ギヤ26から第一クラッチ軸28に伝動され、第一高速ギヤ30側に繋ぐと第一高速ギヤ30から第一クラッチ軸28に伝動され、第二高・低クラッチ25を第二低速ギヤ27側に繋ぐと第二低速ギヤ27から第二クラッチ軸29に伝動され、第二高速ギヤ31側に繋ぐと第二高速ギヤ31から第二クラッチ軸29に伝動される。
【0022】
第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は同一の油圧多板クラッチで、それぞれ入力軸21の回転を同一減速比で高・低の二段に減速して第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29に伝動することになる。
【0023】
また、図4に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、潤滑オイルに浸かり、その第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29が潤滑オイルの液面OLより若干上に位置している。
【0024】
また、図3に示す如く、第一クラッチ軸28と第二クラッチ軸29をミッションケース8に支持する前仕切壁181に形成した肉盛部181aにケースの左右開口部側からドリルで加工した給油孔8bを設けて、この給油孔8bから第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の軸に給油している。図16に示す如く、給油孔8bは軸受け部を避けて上下方向と左右方向の油路として集中して設けてケース内の配管に代えている。オイルフィルタ160もこの給油孔8bの近くに取り付けると配管を簡略化出来る。
【0025】
また、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25は、ミッションケース8の下り傾斜部8cの下部で、左右に配置している。
図2に戻って、第一クラッチ軸28に固着の第一ギヤ113が低速伝動軸34に固着の第二ギヤ35と噛み合って減速して伝動され、第二クラッチ軸29に固着の第三ギヤ149が高速伝動軸32に固着の第四ギヤ33と噛み合って増速して伝動される。
【0026】
ここまでの変速伝動で、低速伝動軸34が低速で二段に、高速伝動軸32が高速で二段にそれぞれ変速されることで、計四段に変速されることになる。
低速伝動軸34と高速伝動軸32の回転がそれぞれ第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36に伝動され、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37が第一伝動軸39の第五ギヤ40と噛み合い、第一シンクロチェンジ42の第一シンクロギヤ大44と第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ大ギヤ38が第一伝動軸39の第六ギヤ41と噛み合って伝動する。
【0027】
第一シンクロチェンジ42の第一シンクロ小ギヤ43と第一シンクロギヤ大44及び第二シンクロチェンジ36の第二シンクロ小ギヤ37と第二シンクロ大ギヤ38は、全く同一のギヤで、低速伝動軸34が低速回転し高速伝動軸32が高速回転しているので、第一シンクロチェンジ42を切換えると低速でさらに二段に変速され、第二シンクロチェンジ36を切換えると高速でさらに二段に変速される。すなわち、第一入力軸21の回転が第一伝動軸39で低速四段と高速四段に変速されることになる。
【0028】
この第一シンクロチェンジ42と第二シンクロチェンジ36はシフタステーとシフタをサブ組付けしてミッションケース8内に収められ、その変速操作部のケース開口部がケースの左右側面に設けられ、ミッションケース8の潤滑オイルの液面OLよりも上側に設けられる。
【0029】
ここまでの主変速部150で、操縦者が操作する主変速レバー14の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に高・低油圧多板クラッチ24,25と第一・第二シンクロチェンジ36,42を制御して低速四段と高速四段まで変速される。
【0030】
また、ミッションケース8内で、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25が左右に配置され、その下側に第一シンクロチェンジ42を装着する低速伝動軸34と第二シンクロチェンジ36を装着する高速伝動軸32が左右に配置されることで、ミッションケース8の左右幅が狭く高さの低いコンパクトな構成に出来る。
【0031】
さらに、第一伝動軸39は第二伝動軸45に軸連結で連結されている。この第二伝動軸45には、第七ギヤ46と第八ギヤ47が固着され、油圧多板の正逆クラッチ48の正転クラッチギヤ49と逆転軸52の逆転ギヤ51に噛み合わされ、逆転ギヤ51が正逆クラッチ48の逆転クラッチギヤ50と噛み合っている。
【0032】
従って、正逆クラッチ48を正転クラッチギヤ49に繋ぐと、正転状態で正逆クラッチ48に連結の副変速軸53に伝動され、正逆クラッチ48を逆転クラッチギヤ50に繋ぐと、逆転状態で副変速軸53に伝動される。正転と逆転では減速比が異なり、逆転の方が低速になる。
【0033】
また、正逆クラッチ48の支持軸をミッションケース8に支持する後仕切壁182に形成した肉盛部182aにケースのケース外側からドリルで加工した給油孔182bを設けて、この給油孔182bから正逆クラッチ48の支持軸に給油している。図16に示す如く、給油孔182bは軸受け部を避けて上下方向と左右方向の油路として集中して設けてケース内の配管に代えている。給油孔182bには4WD切換バルブへの給油もしている。
【0034】
なお、前輪増速クラッチ79やPTOメインクラッチ97への給油孔もミッションケース8の内側に設けた肉盛り部に形成している。
次に、副変速部154を説明する。
【0035】
副変速軸53には第九ギヤ54と第十ギヤ55が固着され、それぞれ第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ大ギヤ56と第三シンクロ小ギヤ59に噛み合っている。従って、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側に繋ぐと第九ギヤ54から第三シンクロ大ギヤ56に伝動した回転で第5伝動軸60が増速して高速で駆動され、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐと第十ギヤ55から第三シンクロ小ギヤ59に伝動した回転で第5伝動軸60が減速して中速で駆動される。
【0036】
さらに、第三シンクロチェンジ58の第三シンクロ小ギヤ59側には第十一ギヤ57を固着して、第四シンクロチェンジ71の第四シンクロ小ギヤ69と噛み合っている。そして、第四シンクロ小ギヤ69側には第十五ギヤ70を固着し、この第十五ギヤ70が第二筒軸114の第十七ギヤ75と噛み合って第二筒軸114に固着の第十八ギヤ76から第四シンクロ大ギヤ72に伝動している。第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73には、第十六ギヤ74を固着している。
【0037】
従って、第三シンクロチェンジ58を中立にすると、第十ギヤ55の回転が第三シンクロ小ギヤ59に伝動され、第三シンクロ小ギヤ59側に固着の第十一ギヤ57から第四シンクロ小ギヤ69に伝動される。
【0038】
この状態で、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ小ギヤ69側に繋ぐと、第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十六ギヤ74の回転となって低速となり、第四シンクロチェンジ71を第四シンクロ大ギヤ72側に繋ぐと第四シンクロ小ギヤ69の回転が第十五ギヤ70から第十七ギヤ75と第十八ギヤ76と第四シンクロ大ギヤ72に伝動されて第十六ギヤ74が極低速となる。
【0039】
なお、第三シンクロチェンジ58を第三シンクロ大ギヤ56側或いは第三シンクロ小ギヤ59側に繋ぐ場合には、第四シンクロチェンジ71を中立にしておく。
従って、主変速部150変速された副変速軸53の低速四段と高速四段が、副変速部154で四段に変速されることで、低速十六段と高速十六段に変速されることになる。
【0040】
さらに、第十六ギヤ74は前記第5伝動軸60に固着の第十二ギヤ61と噛み合って第5伝動軸60を駆動する。この第5伝動軸60の軸端に固着の第一ベベルギヤ62がリアベベルケース64の第二ベベルギヤ63と噛み合っていて、リアベベルケース64のベベル出力軸65から第十三ギヤ66と第十四ギヤ67を介して後輪出力軸68を回転して後輪3を駆動する。
【0041】
また、第5伝動軸60には第二十一ギヤ117が固着され、副変速軸53に軸支された第二筒軸119に固着の第二十二ギヤ118と第二十二ギヤ148を介して第一前輪駆動軸78の第十九ギヤ77に伝動して、前記第十六ギヤ74の低速十六段と高速十六段の回転が第一前輪駆動軸78に伝動されている。
【0042】
この第一前輪駆動軸78から前輪増速クラッチ79を介して第二前輪駆動軸84に伝動し、第三前輪駆動軸85と第四前輪駆動軸86と前輪駆動ベベル軸87に引き継いで伝動し、前輪駆動ベベル軸87の軸端に固着の第一前ベベルギヤ88が前ベベルケース89の第二前ベベルギヤ115と噛み合っていて、前ベベルケース89の前ベベル出力軸90から第一前ベベルギヤ組91と前縦軸116と第二前ベベルギヤ組92を介して前輪出力軸93を回転して前輪2を駆動する。
【0043】
なお、前輪増速クラッチ79の第一増速クラッチギヤ82と第二増速クラッチギヤ80はそれぞれ第一増速ギヤ83と第二増速ギヤ81に噛み合って前輪増速クラッチ79の切換によって増速率を変更する。
【0044】
ここまでの副変速部154が副変速レバー15の変速位置を読み取って、走行系ECU120で自動的に第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71を制御して変速される。
【0045】
また、第四シンクロチェンジ71を装着した第一筒軸73は、第三シンクロチェンジ58を装着した第5伝動軸60の下側に配置され、ミッションケース8の長さを短く出来る。
【0046】
次に、PTO出力軸111の伝動経路を説明する。
前記第二入力ギヤ23にPTOメインクラッチ97のメインクラッチギヤ96を噛み合わせて、PTOメインクラッチ97で動力の断続を行うようにしている。このPTOメインクラッチ97は、図5に示す如く、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25の下側に位置して、ミッションケース8の内部に溜まる潤滑オイルで冷却・潤滑される。
【0047】
PTOメインクラッチ97を装着した第一PTO軸95には、次の如く、PTO変速部157が設けられている。
第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151の第五シンクロ小ギヤ100と第五シンクロ大ギヤ101を装着し、第二PTO軸104に第二十ギヤ102と第二十三ギヤ152をと第二十一ギヤ103と第二十四ギヤ153を固着し、カウンタ軸106にPTO逆転ギヤ105を軸支している。
【0048】
第一PTOギヤ98をスライドして第二十ギヤ102に噛み合わせると第三PTO軸107が二速になり、第一PTOギヤ98をスライドして第二PTOギヤ99に係合すると第一PTO軸95の回転が第二PTOギヤ99と第二十三ギヤ152を介して第三PTO軸107に伝わって四速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ小ギヤ100に繋ぐと第五シンクロ小ギヤ100から第二十一ギヤ103に伝動して一速となり、第五シンクロチェンジ151を第五シンクロ大ギヤ101に繋ぐと第五シンクロ大ギヤ101から第二十四ギヤ153に伝動して三速となり、PTO逆転ギヤ105を第一PTOギヤ98と第二十ギヤ102に噛み合わせると第一PTO軸95の回転が第一PTOギヤ98からPTO逆転ギヤ105を経て第二十ギヤ102に伝動されて第三PTO軸107に伝わって逆回転となる。
【0049】
また、図5に示す如く、第一PTOギヤ98と第二PTOギヤ99と第五シンクロチェンジ151は、前記第一高・低クラッチ24及び第二高・低クラッチ25と第一シンクロチェンジ42及び第二シンクロチェンジ36の間で、下側に配置している。
【0050】
第三PTO軸107の回転は、第四PTO軸156を介して第五PTO軸108に伝動し、第一PTO出力ギヤ109と第二PTO出力ギヤ110さらに減速してPTO出力軸111を駆動する。
【0051】
図4に示す如く、ミッションケース8の左右中央に入力軸21と第四前輪駆動軸86が位置し、第一高・低クラッチ24と第二高・低クラッチ25、高速伝動軸32と低速伝動軸34及び第四PTO軸156と副変速軸53が左右対称位置に配置している。
【0052】
また、第四PTO軸156と副変速軸53と第四前輪駆動軸86は、ミッションケース8の内部下方位置で正面視略二等辺三角形の配置となっている。
図6は、ミッションケース8内の変速を制御する自動制御の制御ブロック図で、走行系ECU120への制御データの入力は、エンジン回転センサ121からのエンジン出力軸の回転数と、正逆クラッチ出力回転センサ122の出力軸回転数と、油温センサ123のミッションケース8内オイル温度と、調整モードスイッチ124のモード選択信号と、主変速(1−2)位置センサ125の第一シンクロチェンジ42出力軸回転数と、主変速(3−4)位置センサ126の第二シンクロチェンジ36出力軸回転数と、正逆クラッチ48の前進クラッチ圧力スイッチ127と後進クラッチ圧力スイッチ128のオン信号と、第一高・低クラッチ24の第一低クラッチ圧力スイッチ129と第一高クラッチ圧力スイッチ130のオン信号と、第二高・低クラッチ25の第二低クラッチ圧力スイッチ131と第二高クラッチ圧力スイッチ132のオン信号と、クラッチペダルセンサ133のオン信号と、主変速レバー操作位置センサ134の操作位置と、副変速位置センサ135の操作位置と、前後進レバー操作位置センサ136の操作位置である。
【0053】
走行系ECU120からの制御出力は、前進切換ソレノイド137への前進切換信号と、後進切換ソレノイド138への後進切換信号と、前後進昇降ソレノイド139への昇降信号と、一速切換ソレノイド140への切換信号と、二速切換ソレノイド141への切換信号と、三速切換ソレノイド142への切換信号と、四速切換ソレノイド143への切換信号と、第一低クラッチ切換ソレノイド144への切換信号と、第一高クラッチ切換ソレノイド145への切換信号と、第二低クラッチ切換ソレノイド146への切換信号と、第二高クラッチ切換ソレノイド147への切換信号である。
【0054】
図7は、ミッションケース8を構成するリアケース8Rにオイルフィルタ160を取り付けた状態を示している。オイルフィルタ160を後輪出力軸68と平行な側方よりリアケース8Rの加工面に直接取り付けている。このオイルフィルタ160の側方に突出した本体部分は、後輪出力軸68に取り付けた後輪3のリム3Rの空間部3RK内に収まり、泥土や石ころがオイルフィルタ160に当たらないようになっている。このオイルフィルタ160を取り外す場合には、後輪3をリム3Rごと後輪出力軸68から外して行えるので、従来よりもメンテナンスが容易になる。
【0055】
リアケース8Rの加工面にはオイルポンプ161も取り付け、リアケース8Rの最底部に設ける鋳抜き穴162から出たオイルがオイルフィルタ160で浄化されてフィルタ出口163からオイル穴164を通ってポンプ入口165からオイルポンプ161に入るので、ミッションケース8の外側にオイルパイプを配管する必要が無い。オイル穴164は、リアケース8Rの肉部に前方からドリル加工した穴で、出口にオイルキャップ166をC型止め輪で抜け止めするか、図10の如く、軸受けメタル167のボス部167bを差し込んでOリング168でオイルの漏れ止めをする。
【0056】
図11と図12は、リアケース8R内で第一前輪駆動軸78を軸支する内壁157に該内壁157の前後を繋いで鋳抜き連通孔158を設けてオイルの流れを良くして溜まらないようにしている。このミッションケース8は、車輪型トラクターとセミクローラ型トラクターを共用し、セミクローラ型トラクター用ギヤを組み込んでも機械加工が必要ないように底部ケース壁面を低くしている。
【0057】
図13は小馬力トラクターの第5伝動軸60の支持部を表し、図14は大馬力用トラクターの前記第5伝動軸60の支持部を表し、同一の第5伝動軸60を用いていて、一方の第一ベベルギヤ62側のスラストベアリング169は小馬力トラクターと同一とし、他方の大馬力用ベアリング171は小馬力用ベアリング170に対して内径が同一で外形径の大きなものを使用することで、第5伝動軸60の共用化を図っている。
【0058】
図13では、第三シンクロチェンジ58の片側スライドを規制するC型止め輪172をリング溝へ嵌めている。
この第5伝動軸60は小馬力から大馬力及び副変速の二段から四段までのトラクター用ミッションケースに組み込むギヤの厚みを変更することで使用可能である。
【0059】
図15は、第三シンクロチェンジ58と第四シンクロチェンジ71の変速操作部を示し、副変速レバー15に連結したシフト軸176の先端に固着したシフトアーム177が第三シンクロチェンジ58の第三シフト軸178と第四シンクロチェンジ71の第四シフト軸179に係合して変速する。
【0060】
シフト軸176の変速位置を検出するシフトセンサ173をリアケース8Rの上部の取付面174に取り付けて変速位置を検出する。このシフトセンサ173の先端にはシフト軸176のシフト溝176aに係合するボール175を設けて、シフト軸176の位置決めを兼ねている。また、シフトアーム177を第四シンクロチェンジ71側に付勢するスプリング180を設けて、ニュートラル時にシフトアーム177が低速側にあるようにして、不測にチェンジが入っても低速走行になるようにしている。
【0061】
なお、第三シンクロチェンジ58の第三シフト軸178と第四シンクロチェンジ71の第四シフト軸179は、同一部品を共用している。
ミッションケース8は、フロントケース8Fとリアケース8Rを一体に連結しているので、その内部に供給するオイルを分離してフロントケース8F内のオイルを油圧シリンダやパワステアリング制御ユニット等の油圧制御用のオイルとしてリアケース8Rのオイルフィルタ160とは別のオイルフィルタを通して循環すると、制御用オイルの汚れを少なく出来る。
【0062】
フロントケース8Fの上面に前記給油孔8bに繋ぐ制御バルブ及び制御バルブ用マニホールドを配置すると配管が簡略化出来る。制御バルブ用マニホールドはトラクターの機種ごとに異なるものを取り付け可能にする。
【0063】
前記の給油孔8bや給油孔182bは、ミッションケース8内に取り付ける配管マニホールドに形成しても良い。
ミッションケース8は、フロントケース8Fとリアケース8Rを連結しているので、両取付面の一方側のパイプ配管取付の隆起部と他方側のパイプ配管取付の隆起部との間に工具先端を差し込む隙間を設けて、フロントケース8Fとリアケース8Rの分離を容易にする。
【符号の説明】
【0064】
3 後輪
3R リム
3RK 空間部
8 ミッションケース
8R リアケース
68 後輪出力軸
160 オイルフィルタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体の左右中央に配置するミッションケース(8)のリアケース(8R)から後輪(3)の後輪出力軸(68)を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース(8)内のオイルを浄化するオイルフィルタ(160)を後輪(3)のリム(3R)の空間部(3RK)に入り込む状態でリアケース(8R)の側面に取り付けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
オイルフィルタ(160)をリアケース(8R)の左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
オイルフィルタ(160)を後輪出力軸(68)の軸方向と平行にリアケース(8R)に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項1】
機体の左右中央に配置するミッションケース(8)のリアケース(8R)から後輪(3)の後輪出力軸(68)を左右側方へ突出した四輪走行の作業車両において、ミッションケース(8)内のオイルを浄化するオイルフィルタ(160)を後輪(3)のリム(3R)の空間部(3RK)に入り込む状態でリアケース(8R)の側面に取り付けたことを特徴とする作業車両。
【請求項2】
オイルフィルタ(160)をリアケース(8R)の左右どちらかの側面最下部に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【請求項3】
オイルフィルタ(160)を後輪出力軸(68)の軸方向と平行にリアケース(8R)に取り付けたことを特徴とする請求項1に記載の作業車両。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2013−95191(P2013−95191A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−237420(P2011−237420)
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年10月28日(2011.10.28)
【出願人】(000000125)井関農機株式会社 (3,813)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]