説明

使い捨てカイロ

【課題】 ゴミとなる剥離紙を不要とした貼るタイプの使い捨てカイロを提供する。
【解決手段】 通気性シート4と非通気性シート5からなる扁平状の袋体2内に発熱材1を封入しカイロ本体となる。袋体2を所望箇所に貼り付けるための貼付テープ3を備える。貼付テープ3は二つ折り状に折り曲げられていて、その一半部分が袋体2に固着された固定面3a、他半部分が展開面3bとなる。固定面3aと展開面3bの相対峙するそれぞれの内面において、展開面側の内面に粘着層11を備え、固定面側の内面を剥離処理12する。貼付テープ3は折畳み状態から展開可能で、展開状態において粘着層11が露呈し貼り付け可能となる。展開面3bは、展開時の手掛かりとなる摘み縁14を備え、少なくとも、該摘み縁における袋体外周の熱圧着代6と重なる部分14aに剥離処理がなされている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨てカイロに関し、詳しくは、発熱材を封入した袋体を、使用者の体や衣類などの所望箇所に貼り付けて使用する、貼るタイプの使い捨てカイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、発熱材を封入した袋体の表面に粘着層を形成し、該粘着層を剥離紙で覆った貼るタイプの使い捨てカイロが知られている(例えば特許文献1〜3など参照)。
【0003】
この種従来の使い捨てカイロによれば、使用時に剥がした剥離紙がゴミになるという問題があり、近年における地球環境保護等の観点から、使い捨てカイロにおいても、可能な限りゴミを低減することが求められている。
【0004】
このような問題を解消するために、本出願人は、発熱材を封入した袋体表面の粘着層を、貼付テープ(所謂「Vテープ」)で形成した使い捨てカイロを先に提案した(例えば特許文献4など参照)。
ここで言う貼付テープは、二つ折り状に折り曲げられ、その一半部分が袋体表面に固定された固定面であり、他半部分が展開面となり、これら固定面と展開面の互いに接離するそれぞれの内面において、展開面側の内面に粘着層を設け、固定面側の内面を剥離処理したもので、通常、使い捨ておむつや生理用ナプキンなどに用いられている(例えば特許文献5など参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平7−265346号公報
【特許文献2】特開2000−80337号公報
【特許文献3】特開2005−58425号公報
【特許文献4】特願2007−28377号
【特許文献5】特開平5−93174号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記した本出願人による先提案の使い捨てカイロは、粘着層を上記Vテープで構成したから、剥離紙が不要となる利点を奏する。しかしながらその技術内容についてより詳細に検討したところ、袋体の表面にVテープを固定しているので、袋体を製造する際に熱圧着による影響が懸念され、この点に改良の余地を残していた。
すなわち、通常、この種使い捨てカイロは、四角形状の通気性シートと非通気性シートの周縁部同士を熱圧着することで袋体を成形しており、予めVテープが固定された通気性シート又は非通気性シートを用いた場合、袋体成形のための熱圧着時にVテープがその熱影響を受ける虞れがある。
袋体の成形後に、接着剤などを用いてVテープを固定することも考えられるが、製造の手間やコストなどを考慮すれば、予めVテープが固定された通気性シート又は非通気性シートを用いて、袋体を成形した方が好ましいことは言うまでもない。
【0007】
本発明は上述したような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、被貼付箇所への貼付け手段として前記Vテープなどを用いることで剥離紙を不要とし、且つ、容易に製造することができる新規な使い捨てカイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の目的を達成する為に本発明は、通気性を有する扁平状の袋体内に発熱材が封入されていると共に、前記袋体を被貼付箇所に貼り付けるためのテープ状又はシート状の貼付部材を備えた使い捨てカイロであって、
前記貼付部材は二つ折り状(V形)に折り曲げられ、その一半部分が前記袋体に固定された固定面であり、他半部分が展開面であり、これら固定面と展開面の相対峙するそれぞれの内面において、展開面側の内面に粘着層を有し、固定面側の内面が剥離処理されており、二つ折り状の折畳み状態から展開可能で、展開状態において前記粘着層が露呈し被貼付箇所への貼り付けが可能となるよう形成され、
且つ、前記貼付部材における展開面は、展開時の手掛かりとなる摘み縁を備え、少なくとも該摘み縁における前記袋体外周の熱圧着代と重なる部分に剥離処理がなされていることを特徴とする。
【0009】
前記袋体は通常、一面が非通気性シート、他面が通気性シートからなり、又は、両面が通気性シートからなり、その周縁同士を熱圧着して形成される。よって、前記貼付部材が、予め前記非通気性シート又は通気性シートに固定されたものである場合、袋体成形時に、袋体外周の熱圧着代と重なる部分において、前記固定面と展開面が相互に熱圧着され、二つ折り状の折畳み状態のまま展開できなくなってしまう虞れがある。
本発明は、貼付部材の展開面に摘み縁を備え、該摘み縁における前記袋体外周の熱圧着代と重なる部分に剥離処理を施すことで、袋体成形時において前記固定面と展開面が熱圧着されることを防止し、二つ折り状の折畳み状態にある貼付部材を容易に展開することができるようになる。
【0010】
前記袋体の具体例として、一面側が非通気性シート、他面側が通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されている袋体をあげることができる。また、一面側と他面側の双方が通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されている袋体をあげることができる。
【0011】
前記非通気性シート及び/又は前記通気性シートが、ポリエチレンフィルムの上に不織布を積層してなり、前記貼付部材の固定面が、前記非通気性シート又は前記通気性シートにおける前記不織布層に固着されていると良い。この場合、前記貼付部材の固定面を、前記不織布層に容易に熱圧着することができる。
【0012】
また、本発明は、前記二つ折り状(V形)の貼付部材に代えて、三つ折り状(Z形)に折り曲げられた貼付部材を用いることもできる。該三つ折り状の貼付部材は、その一端部分が前記固定面となり、他端部分と中間部分がそれぞれ展開面となり、これら展開面同士の相対峙する内面において、他端部分の展開面の内面に粘着層を有し、中間部分の展開面の内面が剥離処理されており、三つ折り状の折畳み状態から展開可能で、展開状態において前記粘着層が露呈し被貼付箇所への貼り付けが可能となるよう形成される。
この三つ折り状貼付部材においても、前記他端部分の展開面が、展開時の手掛かりとなる摘み縁を備え、少なくとも該摘み縁における前記袋体外周の熱圧着代と重なる部分に剥離処理がなされていることは言うまでもない。
【発明の効果】
【0013】
本発明の使い捨てカイロは以上説明したように、二つ折り又は三つ折り状の折畳み状態から展開され、展開状態において粘着層が露呈し貼り付け可能となる貼付部材を備えるから、剥離紙などが不要となってゴミの軽減に寄与することができる。また、折り畳み状の貼付部材が、所定箇所を剥離処理された摘み縁を備えるので、袋体成形の為の熱圧着工程における熱影響を受けず、従来同様の方法、設備等を用いての製造を可能とする。
また、一面側が非通気性シート、他面側が通気性シートからなる袋体とし、該非通気性シートがポリエチレンフィルムの上に不織布(好ましくはナイロン製不織布)を積層したものである場合、この非通気性シートにおける不織布層に対し、貼付部材の固定面を容易に熱圧着することができるなど、多くの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明に係る使い捨てカイロの実施形態の一例を図1及び図2に基づき説明する。
本例の使い捨てカイロaは、扁平状の袋体2内に発熱材1が封入されていると共に、この袋体2に貼付部材3を備えてなる。
【0015】
発熱材1は、例えば鉄粉、水、バーキュライト、活性炭、塩類等を混合した混合粉体であり、空気中の酸素と反応して適度に発熱する。尚、発熱材として、前記混合粉体をシート状に成形したり、シート状物に前記混合粉体を保持させたりしたもの等を用いることもできる。
【0016】
袋体2は、内部の発熱材1に酸素を供給する為に少なくともその一部が通気性を有しており、本例では、ほぼ同じ大きさの四角形状の通気性シート4と非通気性シート5の周縁部同士を熱圧着(ヒートシール)により接合して、周縁部に接合代(熱圧着代)6を備え内部が発熱材封入空間7となる扁平袋状に形成される。
【0017】
袋体2の一面側を形成する非通気性シート5は、ポリエチレンなどからなる非通気性フィルムの表面側に、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどからなる不織布(好ましくはナイロン製不織布)を積層して複層化したシートからなる。
袋体2の他面側を形成する通気性シート4は、ポリエチレンなどからなる多孔質の通気性フィルムの表面側に、ナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレンなどからなる不織布を積層して複層化したシートからなる。
【0018】
すなわち、袋体2は一面側と他面側の双方において不織布が最外層となり、使用者が手に持った際などの感触を良好なものとし得る共に、非通気性シート5においては、貼付部材3を熱圧着等により固着する際の耐熱性が確保されている。
【0019】
本例の貼付部材3は、二つ折り状に折り曲げられた貼付テープ(所謂「Vテープ」)であり、テープ基材3’として、ポリエチレンフィルム層の表面側に不織布層を積層し、さらにその表面を表面処理して、使用者に触れた際の肌触りと耐熱性を備えた積層シートを用いている。
【0020】
貼付テープ3の一半部分は、非通気性シート5の不織布層にホットメルト等の固着剤10で固着されて固定面3aとなり、他半部分は、二つ折り、展開自在な展開面3bとなる。
固定面3aと展開面3bの相対峙するそれぞれの内面において、展開面側の内面には粘着層11が設けられ、固定面側の内面は剥離処理12がなされている。
【0021】
展開面3bの端部には前記粘着層11を設けず、且つその部分に剥離処理13を施して、折畳み状態にある貼付テープ3を展開する際の摘み縁14としている。
また、摘み縁14における、前記袋体外周の熱圧着代6と重なる部分14aにも剥離処理がなされているので、袋体2の成形時において前記固定面3aと展開面3bが熱圧着されてしまう虞れを防止し、二つ折り状の貼付テープ3を、摘み縁14を手掛かりとして、容易に展開することができる。
【0022】
以上のように構成した本例の使い捨てカイロによれば、折畳み状態から展開状態に変形可能な貼付テープ3を用い、この貼付テープ3を展開することで粘着層11が露呈し、被貼付箇所への貼り付けが可能となる。よって、粘着層11用の剥離紙が不要となり、ゴミを低減することができる。
【0023】
また、貼付テープ3は、剥離処理13された摘み縁14を備え、該摘み縁14は、袋体外周の熱圧着代6と重なる部分14aを含むので、熱圧着により袋体2を成形する際に、貼付テープの固定面3aと展開面3bが固着してしまう虞れがない。よって、貼付テープ3が予め固定されている非通気性シート5を用いて、従来同様の方法、設備等により、貼るタイプの使い捨てカイロを製造することができる。
【0024】
さらに、非通気性シート5として、ポリエチレンフィルムの上にナイロン製不織布を積層したものを用いることで、前記不織布に対し、貼付テープの固定面3aを容易に熱圧着することができる。
【0025】
図3には、前述した実施形態例における貼付テープの変更例を示す。
すなわち、この例では、前記二つ折り状の貼付テープ(Vテープ)3に代えて、三つ折り状に折り曲げられたZ形の貼付テープ3を用いている。
この貼付テープ3は、三つ折り状の一端部分が前述の固定面3aとなり、他端部分と中間部分がそれぞれ展開面3b,3cとなり、これら展開面3b,3c同士の相対峙する(互いに接離する)それぞれの内面において、他端部分の展開面3bの内面に粘着層11を設け、中間部分の展開面3cの内面を剥離処理15して、三つ折り状の折畳み状態から展開可能となっており、その展開状態において粘着層11が露呈し、被貼付箇所への貼り付けが可能となる。
【0026】
また、この三つ折り状貼付テープ3においても、他端部分の展開面3bが、展開時の手掛かりとなる摘み縁14を備え、該摘み縁14における、袋体外周の熱圧着代6と重なる部分14aに剥離処理がなされている。
それ以外の構成は前述の実施形態例と同じの為、重複する説明、図示は省略する。
【0027】
なお、前記各図示例では、貼付テープ3を非通気性シート5に固着した場合を示したが、通気性シート4に固着することも可能である。この場合、通気性シート4として、ポリエチレンフィルムの上にナイロン製不織布を積層したものを用いることで、前記不織布に対し、貼付テープの固定面3aを容易に熱圧着することができる。
【0028】
また、袋体は一面側が非通気性シート5、他面側が通気性シート4からなるものに限らず、一面側と他面側の双方が通気性シート4からなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されていても良い。
【0029】
以上、本発明の実施形態例を図面に基づき説明したが、本発明は図示例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明に係る使い捨てカイロの実施形態の一例を示す縦断正面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】本発明に係る使い捨てカイロの実施形態の他例を示す縦断正面図。
【符号の説明】
【0031】
a:使い捨てカイロ
1:発熱材
2:袋体
3:貼付テープ(貼付部材)
3a:固定面
3b,3c:展開面
4:通気性シート
5:非通気性シート
6:熱圧着代(接合代)
10:固着剤
11:粘着層
13:剥離処理
14:摘み縁
14a:摘み縁における袋体外周の熱圧着代と重なる部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する扁平状の袋体内に発熱材が封入されていると共に、前記袋体を被貼付箇所に貼り付けるためのテープ状又はシート状の貼付部材を備えた使い捨てカイロであって、
前記貼付部材は二つ折り状に折り曲げられ、その一半部分が前記袋体に固定された固定面であり、他半部分が展開面であり、これら固定面と展開面の相対峙するそれぞれの内面において、展開面側の内面に粘着層を有し、固定面側の内面が剥離処理されており、二つ折り状の折畳み状態から展開可能で、展開状態において前記粘着層が露呈し貼り付け可能となるよう形成され、
且つ、前記貼付部材における展開面は、展開時の手掛かりとなる摘み縁を備え、少なくとも該摘み縁における前記袋体外周の熱圧着代と重なる部分に剥離処理がなされていることを特徴とする使い捨てカイロ。
【請求項2】
前記袋体は一面側が非通気性シート、他面側が通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されている請求項1記載の使い捨てカイロ。
【請求項3】
前記袋体は一面側と他面側の双方が通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されている請求項1記載の使い捨てカイロ。
【請求項4】
前記非通気性シート及び/又は前記通気性シートが、ポリエチレンフィルムの上に不織布を積層してなり、前記貼付部材の固定面が、前記非通気性シート又は前記通気性シートにおける前記不織布層に固着されていることを特徴とする請求項2または3記載の使い捨てカイロ。
【請求項5】
前記貼付部材の固定面が前記不織布層に熱圧着されていることを特徴とする請求項4記載の使い捨てカイロ。
【請求項6】
前記二つ折り状の貼付部材に代えて、三つ折り状に折り曲げられた貼付部材を備え、その一端部分が前記固定面となり、他端部分と中間部分がそれぞれ展開面となり、これら展開面同士の相対峙するそれぞれの内面において、他端部分の展開面の内面に粘着層を有し、中間部分の展開面の内面が剥離処理されており、三つ折り状の折畳み状態から展開可能で、展開状態において前記粘着層が露呈し貼り付け可能となるよう形成されていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか記載の使い捨てカイロ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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