説明

使い捨てカイロ

【課題】使用に際し潤い感を与えることができる新規な使い捨てカイロを提供する。
【解決手段】通気性シート4と非通気性シート5からなる扁平状の袋体内に発熱材1が封入されている。袋体は外装袋内に密閉状に収容されている。通気性シート4、非通気性シート5は、熱可塑性合成樹脂フィルム4a、5aの表面に不織布4b、5bを積層した複層フィルムからなり、その不織布層4b、5bに保湿成分が含有されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は使い捨てカイロに関し、詳しくは、使用者の手肌などに潤いをもたせることができる新規な使い捨てカイロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、扁平状の袋体内に発熱材を封入し、これを外装袋に封入した使い捨てカイロが知られている。前記袋体は、一面側に通気性シートを、他面側に非通気性シートをそれぞれ用い、又は、一面側と他面側の双方に通気性シートを用い、これら一面側と他面側のシートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に成形される。通気性シート、非通気性シートは、通常、不織布、若しくは不織布と熱可塑性合成樹脂フィルムの積層フィルムからなる。
また、この種使い捨てカイロとして、手指を温めるために衣服のポケットに入れたり、手で持ったりして使用される「貼らないタイプ」や、一面側に粘着層を備え、衣服や肌などに貼り付けて使用する「貼るタイプ」のものが知られている(例えば特許文献1〜3など参照)。
【0003】
【特許文献1】実開平6−75436号公報
【特許文献2】特開平7−265346号公報
【特許文献3】特開2005−58425号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
処で、この種使い捨てカイロは一般的に、乾燥状態にある寒冷期、寒冷地等で使用されるので、手で握ったり、衣服などに貼り付けた際、皮膚が乾燥して使用感が悪化してしまう虞れがある。
【0005】
本発明は上述したような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、使用に際し潤い感を与えることができる新規な使い捨てカイロを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上の目的を達成する為に、本発明に係る使い捨てカイロは、発熱体が封入される袋体を構成する通気性シート及び/又は非通気性シートに、保湿成分(潤い成分)を含浸せしめたことを特徴とする。
【0007】
保湿成分(潤い成分)は、化粧品などに通常用いられるもので、水溶性有機酸、水溶性有機酸塩、多価アルコールのうちのいずれか一種を単独で、又はこれらのうちの二種以上を混合して用いることができる。
【0008】
水溶性有機酸(成分A)としては、例えば、L−グルタミン、L−グルタミン酸、クエン酸、コハク酸、酒石酸、セリン、タンニン酸、L−チロシン、乳酸、尿酸、パラアミノ安息香酸、L−バリン、ヒアルロン酸、ヒドロキシエタンジホスホン酸、DL−ピロリドンカルボン酸、フィチン酸、L−メチオニン、リンゴ酸、L−ロイシン、アジピン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、N−アセチル−L−グルタミン酸、ε−アミノカプロン酸、2−アミノ−2−ヒドロキシ−1,3−プロパンジオール、γ−アミノ酪酸、アラニン、L−アルギニン、エデト酸、塩化リジン、L−オキシプロリン、カプリル酸、カプロン酸、クエン酸、グルタミン酸、グルコン酸、グルタチオンなどをあげることができ、これらのなかの一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0009】
水溶性有機酸塩(成分B)としては、例えば、マロン酸、アスパラギン酸ナトリウム、アラントインクロルヒドロキシアルミニウム、アラントインヒドロキシアルミニウム、L−グルタミン酸塩、エデト酸カリウム、エデト酸トリエタノールアミン、エデト酸二ナトリウム、エデト酸二ナトリウムカリウム、エデト酸三ナトリウム、エデト酸四ナトリウム、エリソルビン酸ナトリウム、オレイン酸グリセリルリン酸エステルナトリウム、5−グアニル酸二ナトリウム、クエン酸ナトリウム、クエン酸二ナトリウム、グリシンアルミニウム、グルコン酸カルシウム、L−グルタミン酸ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、コンドロイチン硫酸ナトリウム、サッカリンナトリウム、シュウ酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウム、パラオキシ安息香酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウム、L−ヒスチジン塩酸塩、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸L−アスコルビン酸マグネシウム、リン酸−水素ナトリウム、リン酸三ナトリウム、リン酸二水素カリウム、リン酸二水素ナトリウム、アルギニンコハク酸塩、グアニジン誘導体の有機酸塩などをあげることができ、これらのなかの一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
【0010】
前記した水溶性有機酸及び/又は水溶性有機酸塩の保湿成分における配合割合は、保湿効果の安定性等の点から、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましい。すなわち、これら物質の割合が多すぎると、粘度が高くなって不織布層へ含浸しにくくなる、ベタツキが生じるなどの問題が生じるので、同配合割合は20重量%以下、好ましくは10重量%以下である。
但し、溶解性の低い物質(例えば、分子量100万〜140万のヒアルロン酸ナトリウム)を水のみで溶かした場合、その配合割合が0.005重量%を超えると粘度が高くなって不織布層へ含浸しにくくなる。一方、当該ヒアルロン酸ナトリウムを用いた場合、0.005重量%程度の含浸で本発明の課題を充分に達成することができる。同割合が0.005重量%未満になると、所期の目的の達成が困難になるため好ましくない。
一方、溶解性の高い物質を用いた場合や、界面活性剤を用いて溶解し易く調整することで、0.005重量%以上の割合でも本発明の課題を充分に達成することができる。
よって、保湿成分が水溶性有機酸及び/又は水溶性有機酸塩を含有する場合の好ましい配合割合は、用いる物質の特性や他の混合物質等により最適な範囲を選択するが、総括すると、0.005〜20重量%、より好ましくは0.005〜10重量%である。
【0011】
多価アルコール(成分C)としては、化粧品等に通常使用されるものであれば特に制限されないが、一価低級アルコールは皮膚刺激や臭いがあるため、分子内に2個以上の水酸基を有する多値アルコールが好ましい。具体的には、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、ジプロプロピレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、テトラグリセリン、グルコース、マルチトール、ショ糖、フルクトース、キシリトース、ソルビトール、マルトトリオース、スレイトール、エリスリトール、ポリオキシエチレンメチルグルコシド、澱粉分解糖還元アルコールなどをあげることができ、これらのなかの一種を単独で又は二種以上を混合して用いることができる。
また、十分な保湿効果が得られ、且つべたつき感を抑えるなどの点から、保湿成分中における多価アルコールの配合割合は40重量%以下であることが好ましく、使い捨てカイロとしての使用感などを考慮すると、25重量%以下であることがより好ましい。但し、多価アルコールの割合が0.1重量%未満になると、所期の目的を得ることが困難になるため好ましくない。
よって、保湿成分が多価アルコールを含有する場合の好ましい配合割合は、0.1〜40重量%、より好ましくは0.1〜25重量%である。
【0012】
前記した水溶性有機酸、水溶性有機酸塩、多価アルコールの溶媒(成分D)として、精製水、アルカリ単純温泉水、深層水、のうちのいずれか一種又は二種以上を用いると良い。
【0013】
なお、前記した水溶性有機酸、水溶性有機酸塩、多価アルコールのほかに、保湿成分中に通常含有される成分、例えば、水溶性高分子、酸、塩基、塩類、香料、色素、酸化防止剤、紫外線吸収剤、美白剤、血行促進剤、ビタミン、金属キレート剤、皮脂抑制剤、粉体、収斂剤(皮膚または粘膜のたんぱく質と結合して被膜を形成し、細胞膜の透過性を低下させる薬剤。酸化亜鉛、硫酸アルミニウム、タンニン酸など)、皮膚柔軟剤、界面活性剤などを、本発明の効果を損なわない範囲で適宜選択して用いることができる。
【0014】
前述した保湿成分の中でも、ヒアルロン酸ナトリウムが、少量の含有で保湿効果があり、且つ、しっとりとした質感とさらっとした質感の両方の質感を得ることができるため、好ましく用いられる。
また、ブチレングリコールは、保湿効果に加え、粘度調整作用、抗菌作用を兼ね備えるので、単体で、若しくは他の保湿成分と混合して使用すると良い。
【0015】
また、前述したように、使い捨てカイロの袋体は通常、不織布、又は不織布と熱可塑性合成樹脂フィルムとの複層フィルムからなり、不織布層が使用者の手肌等に直接接するので、不織布への含浸に適した水溶性の保湿成分を用いると、袋体の製造上などの面から好ましい。
【0016】
これら水溶性の保湿成分を、効率よく且つ均一に前記不織布層に含浸させるために、吸水性を備えた不織布を用いると良く、親水性を備えた不織布を用いるとより好ましい。
具体的には、レーヨン、リヨセル(商品名:テンセル)、キュップラなどのセルロース系繊維や綿などを主成分とし、これらの一種以上、又は、これらと他の繊維(例えば、ナイロン、ポリエステルなど)とを混合してなる不織布を用いることができる。
また、セルロース系繊維や綿は、袋体を成形する際の高温環境に耐えることができ、且つ、生分解性があり環境に優しいなどの利点もあるので、これら以外の繊維は用いない方が好ましく、特に、レーヨンは耐熱性が高いので好ましい。
さらに、前記繊維として、引張強度が高いこと、抜き加工性に優れるなどの理由から、長繊維(フィラメント)のものよりも、短繊維(ステーブル)のものを用いると良い。
【0017】
また、前記発熱体が封入された扁平状の袋体は、酸素バリア性、水蒸気バリア性などを備えた外装袋に密封された状態で出荷され、使用時にこの外装袋から取り出すことで袋体内に酸素が供給されて発熱が生じるが、従来の使い捨てカイロは、外装袋を開封した時の不織布の水分率が6%未満(通常、5%程度)である。
【0018】
これに対し、本発明においては、前記不織布層をセルロース系短繊維で構成すると共に、前述の成分A、成分B、成分Cのいずれか一種以上と、成分Dとの組成である保湿成分を用い、袋体における一面側または他面側における不織布層に対し、前記保湿成分を所定量、好ましくは、0.2〜0.4g/123cm程度(ここで、123cmは、市販されている使い捨てカイロにおける袋体片面の一般的(所謂「レギュラーサイズ」)な大きさ)の割合含浸させることで、外装袋を開封した時の不織布の水分率が5〜11%の範囲となり、使用者の手肌等にしっとりとした質感(潤い感)を与えることができる。
また本発明は前記構成により、外装袋の開封時から4分間経過前までの不織布層の水分率が5%を超え、10分間経過以降の同水分率が5%以下となってさらっとした質感になり、べたつき感を抑えて、カイロとしての使用感を損なうことなく前記した潤い感を与えることができる。
さらに、本発明は前記構成により、セルロース系繊維が湿潤して袋体に柔軟性が加味され、10分間経過以降においても不織布層がさらっとした質感を維持すると共に風合いも良く、使用感が向上する。
なお、前記水分率は、外装袋の外側における温度5℃、湿度50%の条件で測定した場合の数値である。当該条件は、この種使い捨てカイロが使用される平均的条件に基づき設定した。
【0019】
外装袋を開封した時の不織布の水分率が11%を超えると、袋体を手で握った際に水っぽく冷たい感触を受けると共に、発熱温度の立ち上がりが遅くなり使用感が低下する。さらに、水分が衣服などへ水分が移行する虞れがあるので好ましくない。
また、外装袋を開封した時の不織布の水分率が5%未満であると、使用者の手肌等に潤いを与えることが困難である。
さらに、外装袋の開封時から10分間経過後も同水分率が5%以上であると、使用者にベタツキ感を与えると共に発熱温度の立ち上がりが遅くなり、使用感が低下するので好ましくない。
【0020】
本発明では前述の特性を有することにより、しっとりとした質感とさらっとした質感の双方を両立し、衣類等に触れても問題ない使い捨てカイロを提供することができた。
【0021】
また、前述したしっとり感とさらっと感の双方の質感を両立させるために、保湿成分を含有する前の前記通気性シート及び/又は非通気性シートが、ハートループ法(JIS L 1096 8.19.4 D法に準拠)で示される剛軟度(L)が50mm以上であることが好ましい。
前記剛軟度(L)が50mm以上のシートとした場合、柔らかくて肌触りが良く、風合いの良い袋体となり、前述したしっとり感とさらっと感の双方をより効果的に実現することができる。
【0022】
このような比較的柔らかい使い捨てカイロ用の通気性シート、非通気性シートとして、本発明では、熱可塑性合成樹脂フィルムの表面に不織布を積層した複層フィルムを採用した。
【0023】
より具体的な態様として、下記5層構造の複層フィルムを用いると好ましい。
最外層(表面側)はレーヨン製不織布層とし、例えば、日清紡社製のoikos(目付量43g/m)を用いると良い。
その内側層はエステル系接着剤層とし、フィルムの柔らかさと相関強度確保のため、グラビア版を用いて、格子状に約2.5±0.5g/mを程度の目付量となるよう塗布し、下記フィラー入りポリエチレン1軸延伸白色フィルムと前記不織布をラミネートすると良い。
その内側層は、フィラー入りポリエチレン1軸延伸フィルム(30g/m程度)を用いると良い。フィラー入りポリエチレンを1軸延伸することで白色化し、フィルムの腰も柔らかく外観もきれいなものに仕上がる。
その内側層は、厚さ15μm程度のポリエチレンフィルムを用い、さらにその内側(最内層:発熱材封入側)は、厚さ17μm程度の変性LLDPEフィルムを用いると良い。一般的に、同じ素材のフィルムにおける腰の強さは、そのフィルム厚の3乗に比例するといわれており、柔らかさを求めるには極力薄い方がよいが、使い捨てカイロ用袋体を成形するための十分なヒートシール強度と生産性の為、ホットタック性と低温シール性を考慮し、シーラント層は2層とした。最内層は高速シール性を考慮してホットタック性に優れた変性LLDPEを用い、ヒートシール強度を確保するためにシーラント層の厚さを約30μm程度にすると良い。
【0024】
前記効果を得るために、保湿成分含有前の前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートの5%伸長応力が5(N/20mm)以下であるとさらに好ましい。
ここで、前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートにおける5%伸長応力は、袋体製造時における幅方向での伸長応力であると良い。
より好ましくは、前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートを構成する不織布の緯(よこ)方向繊維が、当該通気性シート及び/又は非通気性シートの幅方向になっており、当該シートの幅方向の5%伸長応力が5(N/20mm)以下であると良い。
前記不織布の経(たて)方向繊維も同程度の柔らかさであっても良いが、この場合、袋体製造時において、前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートの流れ方向における伸びが大きくなり、袋体製造が困難になるため好ましくない。
【0025】
なお、本発明において袋体は、一面側が通気性シート、他面側が非通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平状に形成される場合と、両面が通気性シートからなり、これら両シートの周縁同士を熱圧着して扁平状に形成される場合との双方を含むことは言うまでもない。
【発明の効果】
【0026】
本発明の使い捨てカイロは以上説明したように、袋体を構成する通気性シート及び/又は非通気性シートに保湿成分を含浸させたので、使用者の手肌などに潤い感を与えることができるなど、多くの効果を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明に係る使い捨てカイロの実施形態の一例を図面に基づき説明する。
本例の使い捨てカイロaは、扁平状の袋体2内に発熱材1が封入されていると共に、この袋体2を外装袋3内に封入してなる。
【0028】
発熱材1は、例えば鉄粉、水、バーキュライト、活性炭、塩類等を混合した混合粉体であり、空気中の酸素と反応して適度に発熱する。尚、発熱材として、前記混合粉体をシート状に成形したり、シート状物に前記混合粉体を保持させたりしたもの等を用いることもできる。
【0029】
袋体2は、内部の発熱材1に酸素を供給する為に少なくともその一部が通気性を有しており、本例では、ほぼ同じ大きさの四角形状の通気性シート4と非通気性シート5の周縁部同士を熱圧着(ヒートシール)により接合して、周縁部が接合代(熱圧着代)6となり、内部が発熱材封入空間となる扁平袋状に形成される。
【0030】
袋体2の一面側を形成する通気性シート4は、ポリエチレンからなる多孔質の通気フィルム4aの表面側に、レーヨンの短繊維からなる不織布4bを積層して複層化したシートからなる。
また、袋体2の他面側を形成する非通気性シート5は、ポリエチレンなどからなる非通気フィルム5aの表面側に、レーヨンの短繊維からなる不織布5bを積層して複層化したシートからなる。
これら複層化したシート4,5は、後述する保湿成分含有前において、JIS L 1096 8.19.4 D法に準拠したハートループ法における剛軟度(L)が50mmであると共に、不織布4b,5bの緯(よこ)方向繊維が、当該シート4,5の幅方向になっており、該幅方向の5%伸長応力が5(N/20mm)となるよう形成されている。
【0031】
前記通気性シート4と非通気性シート5には、不織布層4b,5bに,保湿成分としてのヒアルロン酸ナトリウムが含有されている。
また、前記保湿成分は、温度5℃、湿度50%の条件下において、外装袋3を開封した際の不織布層4b,5bにおける水分率が5〜11%の範囲内となり、且つ、外装袋3の開封時から少なくとも4分間経過前までにおける不織布層の水分率が5%を超え、10分間経過以後の同水分率が5%以下になるよう、不織布層4b,5bに対し、保湿成分が、0.2g/123m(袋体片面当り)含浸されている。
【0032】
以上のように構成した本例の使い捨てカイロによれば、袋体2の一面側と他面側の双方において不織布層4b,5bが最外層となり、この不織布層4b,5bにヒアルロン酸ナトリウムが含有されているので、使用者の手肌に潤い感を与えることができる。
また、外装袋3を開封した際の不織布層4b,5bにおける水分率が5〜11%の範囲内で、4分経過時までにおける不織布層の水分率が5%以上、10分経過後の同水分率が5%未満となるので、使用開始当初はしっとりとした感触を与え、所定時間経過後はさらっとした感触となり、使い捨てカイロとしての本来の機能や使用感を損なうことなく、前述の効果を得ることができる。
さらに、袋体2を構成するシート4,5が所定の剛軟度(L)と伸長応力を持つものである為、柔らかくて肌触りが良く、風合いの良い袋体となり、前述した潤い感、しっとり感、さらっと感をより効果的に実現することができる。
【0033】
また、不織布層4b、5bが親水性をもつセルロース系繊維から成り、この不織布層4b、5bに水溶性保湿成分を含有させる構成としたので、保湿成分を滴下するだけの簡単な方法で不織布層4b、5bに対し保湿成分を均一に行き渡らせることができる。
また、不織布層4b、5bをセルロース系短繊維で形成したので、引張強度が高く抜き加工性に優れたシートとなり、袋体2の製造に極めて有利であるなど、多くの効果を有する。
【0034】
なお、袋体2は、一面側と他面側の双方を通気性シートで構成しても良く、また、保湿成分の含有は一面側と他面側の一方又は双方のいずれであっても良い。また、本例では「貼らないタイプ」の使い捨てカイロを示したが、非通気性シート5の表面に粘着層(不図示)を部分的に形成するなどして「貼るタイプ」の使い捨てカイロとすることもできる。
【0035】
以下、より具体的な試験例に基づき本発明について詳述する。
外装袋の開封時から所定時間経過するまでの不織布層における水分率の変化と官能試験を行った。試料としては、図1に示した前述の構成の使い捨てカイロを実施例1,2とした。
【0036】
(実施例1;表1)
水溶性保湿成分として、水:100部に対し、ヒアルロン酸ナトリウム(分子量100万〜140万):0.01〜0.06部、1,3−ブチレングリコール:12〜40部の組成のものを用い、この水溶性保湿成分を、不織布層としてのレーヨン短繊維からなる不織布(目付量:43g/m)に対し、0.2g/123m(片面当り)の割合で含浸させた。
【0037】
(実施例2;表2)
水溶性保湿成分を0.4g/123m(片面当り)の割合で含浸させたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0038】
(比較例1;表3)
水溶性保湿成分を0.6g/123m(片面当り)の割合で含浸させたこと以外は、実施例1と同様とした。
【0039】
(比較例2;表4)
市販されている従来の使い捨てカイロ(貼らないタイプ)を用いた。
【0040】
そして、使い捨てカイロが使用される平均的環境下(温度5℃、湿度50%)において、外装袋から袋体を取り出し、所定時間経過ごとに、袋体表面の水分率を、ケット科学研究所社製のユニバーサル水分計HB−300を用いて測定した。同様の試験を3回行い、その平均値を、袋体の表面温度、しっとり感の有無と共に、表1〜表4に示す。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
【表3】

【0044】
【表4】

【0045】
以上の結果から、本発明に係る使い捨てカイロ(実施例1,2)は、外装袋開封時における袋体表面(不織布層)の水分率が5〜11%の範囲であり、外装袋開封時から少なくとも4分間経過前までにおける同水分率が5%以上であり、10分間経過以後の同水分率が5%未満であることが確認できた。
これに対し、比較例1の使い捨てカイロは、外装袋開封時から2分間経過時まで袋体表面の水分率が11%を超えており、手で握った際に水っぽく冷たい感触を受けると共に、水分が衣服などへ水分が移行するなどの問題があった。
また、比較例2の使い捨てカイロは、外装袋開封時における袋体表面(不織布層)の水分率は5%を超えているものの、1分間経過時点において5%未満に低下し、3分間経過後は同水分率が3%未満まで低下することが確認できた。
【0046】
また、官能試験(外装袋外側における温度5℃、湿度50%の条件下)において、前記水分率が5%以上の場合にしっとり感が得られ、5%未満になるとしっとり感がなくなることが確認できた。
【0047】
また、上記試験を温度0℃、湿度0%の環境下で行ったところ、同様の結果が得られた。
【0048】
以上、本発明の実施形態例を図面および試験例に基づき説明したが、本発明は前記図示例、試験例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇において各種変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明に係る使い捨てカイロの実施形態の一例を示す縦断正面図。
【図2】図1の要部拡大図。
【符号の説明】
【0050】
a:使い捨てカイロ
1:発熱材
2:袋体
3:外装袋
4:通気性シート
4a:ポリエチレン製通気フィルム
4b:短繊維レーヨン製不織布
5:非通気性シート
5a:ポリエチレン製非通気フィルム
5b:短繊維レーヨン製不織布

【特許請求の範囲】
【請求項1】
通気性を有する扁平状の袋体内に発熱材が封入された使い捨てカイロであって、
前記袋体は、一面側に通気性シートを、他面側に非通気性シートをそれぞれ用い、又は、一面側と他面側の双方に通気性シートを用い、これら一面側と他面側のシートの周縁同士を熱圧着して扁平袋状に形成されており、
前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートが保湿成分(潤い成分)を含有していることを特徴とする使い捨てカイロ。
【請求項2】
前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートが、熱可塑性合成樹脂フィルムの表面に不織布を積層した複層フィルムからなり、前記不織布層に前記保湿成分を含有していることを特徴とする請求項1記載の使い捨てカイロ。
【請求項3】
前記不織布が吸水性を有し、前記保湿成分が水溶性保湿成分であることを特徴とする請求項2記載の使い捨てカイロ。
【請求項4】
前記不織布が親水性のある不織布であることを特徴とする請求項3記載の使い捨てカイロ。
【請求項5】
前記不織布がセルロース系繊維または綿を主成分とすることを特徴とする請求項4記載の使い捨てカイロ。
【請求項6】
前記保湿成分が、水溶性有機酸、水溶性有機酸塩、多価アルコール、の中から選ばれた一種又は二種以上を含有することを特徴とする請求項3〜5のいずれか記載の使い捨てカイロ。
【請求項7】
前記保湿成分が、精製水、アルカリ単純温泉水、深層水、の中から選ばれた一種又は二種以上を溶媒とすることを特徴とする請求項6記載の使い捨てカイロ。
【請求項8】
前記保湿成分における水溶性有機酸及び/又は水溶性有機酸塩の割合が0.005〜20重量%であることを特徴とする請求項6または7記載の使い捨てカイロ。
【請求項9】
前記保湿成分における多価アルコールの割合が0.1〜40重量%であることを特徴とする請求項6または7記載の使い捨てカイロ。
【請求項10】
少なくとも酸素バリア性と透湿度バリア性を有する外装袋に封入された使い捨てカイロであって、前記不織布層がセルロース系短繊維からなり、前記外装袋の開封時における前記不織布層の水分率が5〜11%であり、前記外装袋の開封時から少なくとも4分間経過前までにおける前記不織布層の水分率が5.0%を超えており、10分間経過以降の同水分率が5.0%以下になる(外装袋外側における温度:5℃、湿度:50%の条件下)ことを特徴とする請求項8または9記載の使い捨てカイロ。
【請求項11】
前記保湿成分含有前の前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートの、ハートループ法(JIS L 1096 8.19.4 D法に準拠)における剛軟度(L)が50mm以上であることを特徴とする請求項1〜10のいずれか記載の使い捨てカイロ。
【請求項12】
前記保湿成分含有前の前記通気性シート及び/又は前記非通気性シートの5%伸長応力が5(N/20mm)以下であることを特徴とする請求項1〜11のいずれか記載の使い捨てカイロ。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−5958(P2009−5958A)
【公開日】平成21年1月15日(2009.1.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−170958(P2007−170958)
【出願日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【出願人】(000000550)オカモト株式会社 (118)
【Fターム(参考)】