説明

使い捨て着用物品

【課題】ウエストパネルによる着用者の肌への刺激を抑制することができる使い捨て着用物品を提供する。
【解決手段】おむつ10は、前後ウエストパネル20,30と、その非肌対向面に取り付けられたクロッチパネル40とを含む。前後ウエストパネル20,30は、第1および第2内面シート21,31と、第1および第2外面シート22,32と、これらシート間に位置する第1および第2防漏シート23,33とを有する。第1および第2防漏シート23,33は、接着剤62によって第1内面シート21および第2内面シート31にそれぞれ接合される。第1内外面シート21,22間および第2内外面シート31,32間には、前後ウエスト弾性体24,34が配設され、これら弾性体24,34のほぼ全周面にホットメルト接着剤61が塗布される。第1および第2外面シート22,32には、クロッチパネル40の前後端縁40A,40Bを覆う第1および第2カバーシート81,82が取り付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使い捨て着用物品に関し、より詳しくは、クロッチパネルと弾性ウエストパネルとを有する使い捨ておむつ、使い捨てのトイレット・トレーニングパンツ、使い捨て失禁パンツ、使い捨ての生理用パンツ、使い捨て吸収パッド等の使い捨て着用物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、クロッチパネルと弾性ウエストパネルとを有する使い捨て着用物品は公知である。例えば、特許文献1には、前後ウエスト域を形成する弾性ウエストパネルと、クロッチ域を中心として前後ウエスト域に延びるクロッチパネルとを備える使い捨て着用物品が開示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−178682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に開示の着用物品によれば、ウエストパネルは2枚の繊維不織布を張り合わせて形成され、これら繊維不織布の間には弾性伸縮部材が取り付けられる。二枚の繊維不織布の間には、ホットメルト接着剤等が塗布されてこれら繊維不織布が互いに接合されるとともに、弾性伸縮部材も少なくともいずれか一方の繊維不織布に接合される。
【0005】
しかし、繊維不織布の全体に接着剤が塗布された場合には、接着剤の塗布量が多くなるからこれら繊維不織布の剛性が高くなり、肌触りが悪くなる。また、剛性が高くなったおむつを着用したときには、着用者の肌に刺激を与え、かぶれ等の原因になりかねない。特に、クロッチパネルが接合された部分等、他の部材やシートが積層され、これらがそのほぼ全面において接着剤等によって互いに接合された場合には、部分的な剛性の増加による肌触りの悪化が顕著になる。
【0006】
そこで、本発明の課題は、従来の着用物品の改良であって、ウエストパネルによる着用者の肌への刺激を抑制することができる使い捨て着用物品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、縦方向およびそれに直交する横方向を有し、肌対向面およびその反対側に位置する非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記前後ウエスト域を画定する弾性ウエストパネルと、前記弾性ウエストパネルに取り付けられ、前記前後ウエスト域の一部および前記クロッチ域を画定し、かつ、吸液構造体を有するクロッチパネルとを含む使い捨て着用物品の改良にかかわる。
【0008】
本発明は、前記着用物品において、前記弾性ウエストパネルは、前記肌対向面に位置する内面シートと、前記非肌対向面に位置する外面シートと、前記内外面シートの間に伸長状態で収縮可能に取り付けられたウエスト弾性体と、前記内外面シートの間に位置するとともに前記ウエスト弾性体と重なる防漏シートとを有し、前記防漏シートは、その全面が前記内外面シートのいずれか一方に接合され、前記内外面シートは、前記ウエスト弾性体の周面の少なくとも一部に塗布された接着剤によって互いに接着され、前記クロッチパネルは、その内面に位置する第1および第2接合部を介して前記弾性ウエストパネルの外面に取り付けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る一つ以上の実施態様における使い捨て着用物品によれば、弾性ウエストパネルは、内外面シートと、これらシートの間に位置するウエスト弾性体とを含み、内外面シートは、ウエスト弾性体の周面の少なくとも一部に位置する接着剤によって互いに接合される。したがって、ウエスト弾性体を取り付けても内外面シートの剛性が顕著に高くなることがなく、着用者に対する肌触りが悪化するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態における使い捨て着用物品の一例として示す、使い捨ておむつの斜視図。
【図2】おむつのサイドシーム部を剥離して前後方向に伸展した状態をその内面から見た一部破断展開平面図。
【図3】おむつの分解斜視図。
【図4】図1のIV−IV線に沿う模式的断面図。
【図5】図4のVで囲った部分の拡大図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1〜4を参照すれば、本発明の使い捨て着用物品の一例として示す使い捨ておむつ10は、縦方向Yおよびそれに直交する横方向Xと、横方向Xの幅寸法を二等分する仮想縦中心線2−2と、縦方向Yの幅寸法を二等分する仮想横中心線3−3とを有する。おむつ10は、仮想縦中心線2−2に関して対称に形成されている。
【0012】
おむつ10は、肌対向面およびそれに対向する非肌対向面と、環状の弾性ウエストパネルを構成する前後ウエストパネル20,30と、前後ウエストパネル20,30の非肌対向面に取り付けられたクロッチパネル40と、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前後ウエスト域11,12間を縦方向Yへ延びるクロッチ域13とを含む。前ウエストパネル20によって前ウエスト域11が画定され、後ウエストパネル30によって後ウエスト域12が画定される。また、クロッチパネル40の一部でクロッチ域13が画定される。
【0013】
前ウエストパネル20は、横方向Xへ延びる上下端縁20A,20Bおよび縦方向Yへ延びる両側縁20Cを有し、同様に、後ウエストパネル30は、横方向Xへ延びる上下端縁30A,30Bおよび縦方向Yへ延びる両側縁30Cを有する。前後ウエストパネル20,30は、ほぼ同形同大であって、それぞれ横長の矩形状にされている。クロッチパネル40は、縦長の略矩形状であって、横方向Xへ延びる前端縁40Aと、前端縁40Aに対向する後端縁40Bとを有し、前端縁40Aが第1接合部71を介して前ウエストパネル20の非肌対向面(外面)に取り付けられ、後端縁40Bが第2接合部72を介して後ウエストパネル30の非肌対向面に取り付けられる。前ウエストパネル20の下端縁20Bから後ウエストパネル30の下端縁30Bまでの間にクロッチ域13が画定される。
【0014】
前後ウエストパネル20,30の両側縁20C,30Cは、互いに重ね合わされて、縦方向Yへ延びる断続的な一連のサイドシーム部14によって連結され、前後ウエストパネル20,30の上端縁20A,30Aによっておむつ1のウエスト開口15が画定され、下端縁20B,30Bによっておむつ1のレッグ開口16の一部が画定される。サイドシーム部14は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種の熱溶着手段によって、縦方向Yへ断続的に溶着されることによって形成される。
【0015】
前後ウエストパネル20,30は、肌対向面側に位置する第1および第2内面シート21,31と、非肌対向面側に位置する第1および第2外面シート22,32と、これらシート21,22および31,32の間に位置する第1および第2防漏シート23,33とを有する。第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32は、例えば、質量約10〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布若しくはスパンボンド繊維不織布、または、プラスチックシートとそれらいずれかの繊維不織布とのラミネートシートとから形成される。第1および第2防漏シート23,33は、例えば、不透液性かつ通気性のプラスチックシートから形成される。
【0016】
第1防漏シート23は、前ウエストパネル20の横方向Xの中央であって、かつ、下端縁20Bに沿って取り付けられる。第2防漏シート33は、後ウエストパネル30の横方向Xの中央であって、かつ、下端縁30Bに沿って取り付けられる。第1および第2防漏シート23,33は、ホットメルト接着剤等の公知の接合手段によって第1および第2外面シート22,32に接合される。接着剤は、第1および第2防漏シート23,33のほぼ全面に、間欠的に塗布される。
【0017】
第1および第2防漏シート23,33は、横方向Xへ延びるとともに縦方向Y外方に位置する上端縁23A,33Aと、上端縁23A,33Aに対向し、前後ウエストパネル20,30の下端縁20B,30Bと一致する下端縁23B,33Bと、縦方向Yへ延びる両側縁23C,33Cとによって画定される。両側縁23C,33Cは、クロッチパネル40の両側縁40Cよりもその横方向Xにおける寸法が小さくされている。第1防漏シート23の上端縁23Aは、縦方向Yにおいてクロッチパネル40の前端縁40Aよりも縦方向Y内方に位置する。第2防漏シート33は、上端縁33Aがクロッチパネル40の後端縁40Bから縦方向Y外方へ延出され、延出部36が形成される。これら第1および第2防漏シート23,33は、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤62によって第1内面シート21および第2内面シート31にそれぞれ接合される(図5参照)。
【0018】
第1内外面シート21,22間および第2内外面シート31,32間には、横方向Xへ延びる複数条のストランド状又はストリング状の前後ウエスト弾性体24,34が配設される。前後ウエストパネル20,30は、前後ウエス弾性体24,34が配設されることによって少なくとも横方向Xへ伸縮可能に弾性化される。前ウエスト弾性体24は、第1防漏シート23が存在する領域においては、第1防漏シート23と第1外面シート22との間に配設される。同様に、後ウエスト弾性体34も、第2防漏シート33が存在する領域においては、第2防漏シート33と第2外面シート32との間に配設される。
【0019】
図5を参照すれば、後ウエスト弾性体34のほぼ全周面には、ホットメルト接着剤61が塗布され、この接着剤61を介して第2内外面シート31,32が互いに接着される。仮に、第2内外面シート31,32のほぼ全域に接着剤を塗布し、これらを互いに接着した場合には、接着剤の塗布量が多くなるから接着剤によって後ウエストパネル30の剛性が高くなり、肌触りが悪くなって、着用者の肌に刺激を与える。しかし、接着剤を後ウエスト弾性体34の周面にのみ塗布するので、接着剤の塗布量を少なくすることができ、第2内外面シート31,32の剛性の増加を抑えることができるから、これが大きな刺激となることがない。したがって、着用者の肌に対する刺激によるかぶれ等を予防することができる。また、第2防漏シート33はそのほぼ全面に塗布された接着剤62によって第2内面シート31に接着されるから、これら接着剤62が塗布された領域では、その剛性が高くなる傾向にあるが、第2内外面シート31,32の剛性が低く抑えられているから、後ウエストパネル30全体における剛性が顕著に高くなるのを防止することができる。したがって、第2防漏シート33が取り付けられたとしても、適度な肌触りを確保することができ、これが着用者の肌への刺激となることがない。
【0020】
図5では、後ウエストパネル30のみ示しているが、前ウエストパネル20でも同様に、前ウエスト弾性体24の周面に接着剤が塗布され、この接着剤を介して第1内外面シート21,22が互いに接合される。なお、接着剤61は、前後ウエスト弾性体24,34の周面の少なくとも一部に塗布され、好ましくはより広い面積、より好ましくはほぼ全周面に塗布される。前後ウエスト弾性体24,34のほぼ全周面に接着剤を塗布する方法として、例えば、V字状の容器に接着剤を入れ、前後ウエスト弾性体24,34の全周面に接着剤が接触するように容器の中をこれら弾性体が移動するようにしたものがある。また、前後ウエスト弾性体24,34の周囲に間欠的に接着剤を塗布する方法として、例えば、これら弾性体24,34の周囲においてらせん状に接着剤を塗布する方法がある。
【0021】
再び図2,3を参照すると、前後ウエストパネル20,30には、前後ウエスト弾性体24,34の縦方向Yにおける離間寸法が他の領域よりも大きくされた第1および第2大離間部25,35が形成される。第1および第2大離間部25,35は、クロッチパネル40の前後端縁40A,40Bよりもそれぞれ縦方向Y外方に位置する。第1および第2大離間部25,35における縦方向Yにおける寸法は、約10〜35mm、好ましくは約20〜30mmとされる。縦方向Yにおける寸法とは、第1および第2大離間部25,35を画定する一方の弾性体の中心から、他方の弾性体の中心までの寸法(ピッチ)をいう。第1および第2大離間部25,35以外の領域において、縦方向Yに互いに隣接する弾性体の縦方向Yにおける寸法は、約5〜15mm、好ましくは約5〜10mmとされる。この実施形態において、太さ約500〜1000dtexの前後ウエスト弾性体24,34を用いることができ、約1.8〜3.0倍の伸長倍率で取り付けることができる。
【0022】
前後ウエストパネル20,30に第1および第2大離間部25,35を形成したので、おむつ10の着用時、または、着用中に、着用者またはその世話人らがこの第1および第2大離間部25,35に指を引っかけて、前ウエスト域11または後ウエスト域12を挟持して引き上げることができる。したがって、おむつ10から指が滑らず、引き上げやすい。また、第1および第2大離間部25,35がクロッチパネル40の縦方向Y外方に位置し、すなわち、クロッチパネル40には重ならないことによって、これら第1および第2大離間部25,35の柔軟性を維持することができるので、より一層指を引っ掛けやすくすることができる。
【0023】
前ウエストパネル20は、上端縁20Aおよび下端縁20Bに沿って、複数の溶着部27,28を有し、同様に、後ウエストパネル30も、上端縁30Aおよび下端縁30Bに沿って複数の溶着部37,38を有する。溶着部27,28および37,38は、横方向Xへ断続的に位置し、第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32を部分的に溶着し、接合する。溶着部27,28および37,38は、公知の接合手段、例えば、熱エンボス加工、ソニック加工等の各種の熱溶着手段によって形成される。第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32は、第1および第2ウエスト弾性体24,34の周面にある接着剤61によってのみ互いに接着しているから、特に上端縁20A,30A、下端縁20B,30Bにおいて、これら内外面シートが互いに剥離し、シートの間に着用者の指等が引っかかる可能性がある。しかし、溶着部27,37によって、溶着されているので、これら剥離を防止し、指等の引っかかりを未然に防止することができる。
【0024】
前後ウエストパネル20,30の第1および第2外面シート22,32には、接合されたクロッチパネル40の前後端縁40A,40Bを覆うようにこれらに重なって、第1および第2カバーシート81,82が取り付けられる。第1および第2カバーシート81,82は、それぞれ横長の矩形状にされ、その両側縁はサイドシーム部14によって、第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32とともに互いに接合される。第1および第2カバーシート81,82の縦方向Yにおける寸法は、第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32のそれよりも小さくされる。第1および第2カバーシート81,82は、例えば、質量約10〜30g/mの不透液性のSMS(スパンボンド・メルトブローン・スパンボンド)繊維不織布またはスパンボンド繊維不織布によって形成することができる。
【0025】
第1および第2カバーシート81,82は、ホットメルト接着剤等の公知の接着剤63によって、第1および第2外面シート22,23に接着される(図5参照)。ホットメルト接着剤63は、第1および第2カバーシート81,82のほぼ全域に間欠的に塗布される。第1および第2カバーシート81,82が重なる位置において、接着剤63によってその剛性が高くなる傾向があったとしても、第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32は、前後ウエスト弾性体24,34の周面の接着剤61によってのみ接合され、前後ウエストパネル20,30全体の剛性が過剰に高くなるのを抑制することができる。
【0026】
第1および第2カバーシート81,82は、第1および第2大離間部25,35に重なって位置する。したがって、第1および第2大離間部25,35に位置する、第1内外面シート21,22および第2内外面シート31,32を補強することができ、第1および第2大離間部25,35に指を引っかけておむつ10を引き上げた場合に、この第1および第2大離間部25,35が破れるのを予防することができる。また、後ウエストパネル30の第2大離間部35には、第2防漏シート33の延出部36が重なる。したがって、延出部36が重なった領域では、より一層第2大離間部35を補強することができ、引き上げ時の破れを予防することができる。
【0027】
再び図2,4を参照すると、クロッチパネル40は、ベースシート43と、ベースシート43の肌対向面(内面)に配置された吸液構造体44と、吸液構造体44を被覆する透液性シートから形成された身体側ライナ45とを有する。
【0028】
ベースシート43は、少なくとも一方が不透液性の繊維不織布シート又はプラスチックフィルムから形成された内外面クロッチシート46,47によって形成される。また、内外面クロッチシート46,47は、両シート46,47のうちのいずれか一方のシートの内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して互いに接合され、それらの両側部は、内方へ折り曲げられて、縦方向Yへ延びるガスケット機能を有する一対の弾性サイドフラップ48が形成される。
【0029】
弾性サイドフラップ48には、縦方向Yへ延びる複数条のストランド状又はストリング状からなる第1レッグ弾性体51と第2レッグ弾性体52とが配設されており、少なくとも縦方向Yにおいて弾性化されている。具体的には、第2レッグ弾性体52と弾性サイドフラップ48の内側縁49との間に第1レッグ弾性体51が配設され、第1レッグ弾性体51は内側縁49に沿って縦方向Yへ直状に延びており、第2レッグ弾性体52は、仮想横中心線3−3近傍において第1レッグ弾性体51に向かって凸に湾曲して、着用者の大腿を囲む方向へ延びる。第1および第2レッグ弾性体51,52は、前記の内外面クロッチシート46,47のうちのいずれか一方の内面に塗布されたホットメルト接着剤(図示せず)を介して両シート46,47間に縦方向Yに伸長された状態で固定される。
【0030】
おむつ10の着用時において、第1レッグ弾性体51の収縮力によって弾性サイドフラップ48の内側縁49近傍が、着用者の鼠蹊部近傍に密着し、レッグ開口16からの排泄物の横漏れを防止することができる。また、第2レッグ弾性体52が、仮想横中心線3−3近傍におけるその中央部で湾曲しているので、局所的にそれら弾性体が密集し、伸長応力が集中する。それにより、着用者の鼠蹊部近傍に対向する弾性サイドフラップ48の中央部近傍が着用者の身体に密着し、レッグ開口16からの排泄物の横漏れをより効果的に防止することができる。
【0031】
身体側ライナ45は、好ましくは親水化処理された、質量約15〜35g/mの透液性を有する繊維不織布シートであって、例えば、スパンボンド繊維不織布、ポイントボンド繊維不織布およびエアスルー不織布等各種公知の繊維不織布から形成することができる。
【0032】
吸液構造体44は、不溶性かつ自己質量の10倍以上の吸水力を有するいわゆる吸収性ポリマー粒子から形成された吸収性コアを、質量約8〜15g/m、好ましくは、質量約10g/mの透水性の繊維不織布から形成された被覆シートで覆って構成される。吸収性ポリマー粒子が体液を吸収した後にその形状が型崩れするのを防止するために、吸収性コアを複数の吸収域に区分することができる。なお、吸収性コアは、吸収性ポリマー粒子のほかに、フラッフパルプ等の公知の吸収性材料を含むものであってもよい。また、吸液構造体44は、図示しない公知の接着手段を介してベースシート43の内面に固定されている。吸液構造体44は、その全域でベースシート43に接合されるようにしてもよいし、その一部、特に前後端縁のみが接合されるようにしてもよい。
【0033】
上記のようなおむつ10には、前後ウエストパネル20,30の下端縁20B,30B近傍と、クロッチパネル40とによって囲まれた排泄物収容スペース54が形成される(図4参照)。クロッチパネル40は、前後ウエストパネル20,30の外面に取り付けられるが、それらを前後ウエストパネル20,30の内面に取り付ける場合に比して、排泄物収容スペース54を大きく形成することができる。なお、排泄物収容スペースが所要の大きさを有する限りにおいて、前後ウエスト域11,12のうちのいずれか一方のみが前後ウエストパネル20,30の外面に取り付けられていればよい。また、吸液構造体44は比較的に薄いものであるから、おむつ10は、この種の他の物品に比して大容量の排泄物収容スペース54を有し、比較的に多量の排泄物を保持することができるとともに、着用者の臀部から離間した状態でクロッチパネル40が吊持されて袋状を呈し、排泄物によって着用者の臀部が汚れるのを抑えることができる。
【0034】
クロッチパネル40を前後ウエストパネル20,30に接合する第1および第2接合部71,72は、クロッチ域13に向かって開口した凹状を有し、それぞれ、弾性サイドフラップ48の肌対向面にホットメルト接着剤を塗布して形成された両側部位73,74と、両側部位間において、横方向Xへ延びる中央部位75,76とを有する。中央部位75,76は、吸液構造体44よりも縦方向Y外方に位置しており、両側部位73,74と中央部位75,76との間には、ホットメルト接着剤が塗布されていない非接合部位77,78が画定される。なお、本実施形態において、第1接合部71の両側部位73は段差状、第2接合部72の両側部位74は矩形状を有しているが、それらの形状に制限されるものではなく、両側部位73,74は、段差状、矩形状、曲状などの各種の形状を有していてもよい。
【0035】
第1および第2接合部71,72に非接合部位77,78が画定されることによって、前後ウエストパネル20,30とクロッチパネル40との間において第1および第2ポケット(空間部)55,56が形成される。第1および第2ポケット55,56が形成されることによってクロッチパネル40内に画定される排泄物収容スペース54をより大きくすることができる。また、第1および第2ポケット55,56は、第1および第2接合部71,72によってクロッチパネル40と前後ウエストパネル20,30とが水密に接合されることによって、これらポケット55,56から排泄物が漏れるのを予防することができる。
【0036】
上記のようなおむつ1において、第2防漏シート33の延出部36に、図形や文字などの表示要素を設けることができる。例えば、おむつ1のサイズを示す「M」の文字や、商品名や、キャラクター図形などを付することができる。表示要素は、延出部36の第2内面シート31対向面、または、第2外面シート32対向面のいずれに設けてもよいが、これら表示要素がおむつ1の非肌対向面から視認可能とする。この実施形態では、延出部36の非身体側には、第2外面シート32および第2カバーシート82が積層されているから、表示要素は、少なくともこれらシートを透過して視認される。表示要素が視認可能であるか否かは、表示要素の色や、表示要素に積層されるシートの光線透過率などによって決定される。また、第2防漏シート33は、接着剤62によってそのほぼ全面が第2内面シート31に接着されているから、第2内外面シート31,32間において浮き上がったり、よれたりすることがなく、非肌対向面から視認し易くすることができる。
【0037】
延出部36は、第2大離間部35に重なって配置される。第2大離間部35では、隣接する他の領域に比べて、弾性体の間隔が広いので、弾性体によって形成される皺も少なくなり、延出部36に形成された表示要素を見えやすくすることができる。なお、延出部36は、後ウエストパネル30にのみ形成されることとしているが、前後ウエストパネル20,30の少なくともいずれか一方に形成することができる。
大離間部は、前後ウエストパネル20,30のいずれにも形成されているが、少なくともいずれか一方に形成されるようにすることができる。ただし、前後パネル20,30に大離間部が形成されることによって、いずれを挟持して引っ張りあげる場合でも、指を引っかけることができるから、より一層引っ張りやすくすることができる。
【0038】
この実施形態において、第1カバーシート81の縦方向Yにおける寸法は、第1および第2内外面シート21,22のそれよりも小さくされ、第1カバーシート81は上端縁20Aよりも縦方向Y内方に位置するが、第1カバーシート81の縦方向Yにおける寸法を大きくすることもできる。また、第1カバーシート81の縦方向Yにおける寸法を大きくして、前ウエストパネル20の上端縁20Aにおいて外面から内面に折返すこともできる。このように折り返した場合には、第1および第2内外面シート21,22の上端縁を覆うことができるので、これらの間に指等が引っかかるのを防止することができる。したがって、別途溶着部27を形成する必要がない。同様に、第2カバーシート82を後ウエストパネル30の上端縁30Aで折り返す構成とすることもできる。
【0039】
おむつ10を構成する各構成部材には、本明細書に記載されている材料のほかに、この種の物品において通常用いられている各種の公知の材料を制限なく用いることができる、また、本発明の明細書および特許請求の範囲において、「第1」および「第2」の用語は、同様の要素、位置などを単に区別するために用いられている。
【0040】
以上の記載した本発明に関する開示は、少なくとも下記事項に要約することができる。
本発明は、以下の使い捨て着用物品10の改良にかかわる。着用物品10は、縦方向Yおよびそれに直交する横方向Xを有し、肌対向面およびその反対側に位置する非肌対向面と、前ウエスト域11と、後ウエスト域12と、前記前後ウエスト域11,12間に位置するクロッチ域13と、前記前後ウエスト域11,12を画定する弾性ウエストパネル20,30と、前記弾性ウエストパネル20,30に取り付けられ、前記前後ウエスト域11,12の一部および前記クロッチ域13を画定し、かつ、吸液構造体44を有するクロッチパネル40とを含む。
【0041】
本発明は、上記使い捨て着用物品1において、以下の点を特徴とする。
前記弾性ウエストパネル20,30は、前記肌対向面に位置する内面シート21,31と、前記非肌対向面に位置する外面シート22,32と、前記内外面シート21,22,31,32の間に伸長状態で収縮可能に取り付けられたウエスト弾性体24,34と、前記内外面シート21,22,31,32の間に位置するとともに前記ウエスト弾性体24,34と重なる防漏シート23,33とを有する。
前記防漏シート23,33は、その全面が前記内外面シート21,22,31,32のいずれか一方に接合される。
前記内外面シート21,22,31,32は、前記ウエスト弾性体24,34の周面の少なくとも一部に塗布された接着剤61によって互いに接着される。
前記クロッチパネル40は、その内面に位置する第1および第2接合部71,72を介して前記弾性ウエストパネル20,30の外面に取り付けられる。
【0042】
上記本発明は、少なくとも下記の実施の形態を含むことができる。
(1)前記ウエスト弾性体24,34は、ストリング状又はストランド状の複数本の弾性材料から形成され、前記縦方向Yへ離間して前記横方向Xへ伸長状態で収縮可能に取り付けられる。
(2)前記防漏シート23,33は、前記内外面シート21,22,31,32のいずれか一方に、間欠的に接合される。
(3)前記弾性ウエストパネル20,30の外面には、前記クロッチパネル40の前後端縁40A,40Bに重なるカバーシート81,82が接合される。
(4)前記内外面シート21,22,31,32は、前記弾性ウエストパネル20,30の前記上下端縁20A,20B,30A,30Bに沿って、加熱・加圧によって互いに接合される溶着部27,28,37,38を有する。
(5)前記溶着部27,28,37,38は、前記横方向Xへ断続的に並ぶ。
(6)前記防漏シート23,33の少なくとも一部は、前記クロッチパネル40の前記前後端縁40A,40Bの少なくともいずれか一方よりも前記縦方向外方へ位置する延出部36を有する。
(7)前記延出部36には、図形や文字などの表示要素が形成され、前記表示要素は、前記弾性ウエストパネル20,30の前記非肌対向面から視認可能にされる。
(8)前記弾性ウエストパネル20,30は、前記ウエスト弾性体24,34の前記縦方向Yにおける離間寸法が、他の領域のそれよりも大きくされた大離間部25,35をさらに有し、前記大離間部25,35は、前記クロッチパネル40の前記前後端縁40A,40Bの前記縦方向Y外方へ位置する。
(9)前記大離間部25,35は、前記防漏シート23,33の前記表示要素に重なる。
(10)前記大離間部25,35は、前記カバーシート81,82に重なる。
【符号の説明】
【0043】
10 使い捨て着用物品(使い捨ておむつ)
11 前ウエスト域
12 後ウエスト域
13 クロッチ域
20 前ウエストパネル(弾性ウエストパネル)
20A 上端縁
20B 下端縁
21 第1内面シート(内面シート)
22 第1外面シート(外面シート)
23 第1防漏シート(防漏シート)
24 前ウエスト弾性体(ウエスト弾性体)
25 第1大離間部(大離間部)
27 溶着部
28 溶着部
30 後ウエストパネル
30A 上端縁
30B 下端縁
31 第2内面シート(内面シート)
32 第2外面シート(外面シート)
33 第2防漏シート(防漏シート)
34 後ウエスト弾性体(ウエスト弾性体)
35 第2大離間部(大離間部)
36 延出部
37 溶着部
38 溶着部
40 クロッチパネル
40A 前端縁
40B 後端縁
61 接着剤
71 第1接合部
72 第2接合部
81 第1カバーシート(カバーシート)
82 第2カバーシート(カバーシート)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦方向およびそれに直交する横方向を有し、肌対向面およびその反対側に位置する非肌対向面と、前ウエスト域と、後ウエスト域と、前記前後ウエスト域間に位置するクロッチ域と、前記前後ウエスト域を画定する弾性ウエストパネルと、前記弾性ウエストパネルに取り付けられ、前記前後ウエスト域の一部および前記クロッチ域を画定し、かつ、吸液構造体を有するクロッチパネルとを含む使い捨て着用物品において、
前記弾性ウエストパネルは、前記肌対向面に位置する内面シートと、前記非肌対向面に位置する外面シートと、前記内外面シートの間に伸長状態で収縮可能に取り付けられたウエスト弾性体と、前記内外面シートの間に位置するとともに前記ウエスト弾性体と重なる防漏シートとを有し、
前記防漏シートは、その全面が前記内外面シートのいずれか一方に接合され、
前記内外面シートは、前記ウエスト弾性体の周面の少なくとも一部に塗布された接着剤によって互いに接着され、
前記クロッチパネルは、その内面に位置する第1および第2接合部を介して前記弾性ウエストパネルの外面に取り付けられることを特徴とする前記使い捨て着用物品。
【請求項2】
前記ウエスト弾性体は、ストリング状又はストランド状の複数本の弾性材料から形成され、前記縦方向へ離間して前記横方向へ伸長状態で収縮可能に取り付けられる請求項1記載の使い捨て着用物品。
【請求項3】
前記防漏シートは、前記内外面シートのいずれか一方に、間欠的に接合される請求項1または2記載の使い捨て着用物品。
【請求項4】
前記弾性ウエストパネルの外面には、前記クロッチパネルの前後端縁に重なるカバーシートが接合される請求項1〜3のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項5】
前記内外面シートは、前記弾性ウエストパネルの前記上下端縁に沿って、加熱・加圧によって互いに接合される溶着部を有する請求項1〜4のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項6】
前記溶着部は、前記横方向へ断続的に並ぶ請求項5記載の使い捨て着用物品。
【請求項7】
前記防漏シートの少なくとも一部は、前記クロッチパネルの前記前後端縁の少なくともいずれか一方よりも前記縦方向外方へ位置する延出部を有する請求項1〜6のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項8】
前記延出部には、図形や文字などの表示要素が形成され、前記表示要素は、前記弾性ウエストパネルの前記非肌対向面から視認可能にされる請求項7記載の使い捨て着用物品。
【請求項9】
前記弾性ウエストパネルは、前記ウエスト弾性体の前記縦方向における離間寸法が、他の領域のそれよりも大きくされた大離間部をさらに有し、前記大離間部は、前記クロッチパネルの前記前後端縁の前記縦方向外方へ位置する請求項1〜8のいずれかに記載の使い捨て着用物品。
【請求項10】
前記大離間部は、前記防漏シートの前記表示要素に重なる請求項9記載の使い捨て着用物品。
【請求項11】
前記大離間部は、前記カバーシートに重なる請求項9または10記載の使い捨て着用物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−94414(P2013−94414A)
【公開日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−239743(P2011−239743)
【出願日】平成23年10月31日(2011.10.31)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】