説明

使用済み紙おむつの分離方法及びそれに用いる使用済み紙おむつ分離装置

【課題】 分離後のビニールを迅速に自動回収できるようにする。
【解決手段】 片面が開放された回転ドラム23の周面にビニールVは通過できないがそれ以外は通過できる排水孔を形成し、その回転ドラム23を密閉可能な外槽22内に横向きの姿勢で且つ一部が水中に浸漬する位置に回転自在に軸支し、外槽22の底部に排出弁22b付きの沈殿室22aを形成し、回転ドラム23の開放位置にビニールVを吸引手段で外部へ吸引するビニール回収ダクト34を配管する。また、回転ドラム23の外周面に圧縮空気を吹き付けるエアーノズル27を設け、外槽22と回転ドラム23の間に水管を配管し、その水管を通じて外槽22内の水Wを回転ドラム23内へ送水して循環させる循環ポンプを設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用済み紙おむつをビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつの分離方法及びそれに用いる使用済み紙おむつ分離装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、使用済み紙おむつをビニールとそれ以外に分離する技術が特許文献1,2に開示されている。特許文献1記載の技術は、使用済み紙おむつを裁断し、これを水及び塩化カルシウムとともに分解槽に投入して攪拌し、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーを塩化カルシウムと反応させて脱水するとともにパルプ・不織布・吸収紙・屎尿を溶解して沈殿させ、分解槽の水面近傍を浮遊するビニールをスクリーンで掬い上げることで分離できるようにした、というものである。
【0003】
また、特許文献2記載の技術は、多孔を有する回転ドラムと、その回転ドラムの下部を収容する外槽と、その外槽に配管した排水管とで構成した使用済み紙おむつ分離装置であり、使用済み紙おむつと水を回転ドラムに投入し、回転ドラムの回転により攪拌して使用済み紙おむつを分離溶解し、その溶解物を回転ドラムの多孔を通過させて外槽に沈殿させ、その沈殿した溶解物を排水管で排出して不溶物であるビニールを回転ドラム内に残留させることで分離できるようにした、というものである。
【0004】
ところで、特許文献1記載の技術では、スクリーンによる掬い上げは動作が遅く、ビニールの回収に時間を要して効率が悪いものであった。また、特許文献2記載の技術では、回転ドラム内に残留したビニールは回転ドラムを停止させて作業者が手作業で取り出す必要があるから、ビニールの回収の自動化や連続処理が困難であり、多量の使用済み紙おむつの処理には向かない技術であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3378204号公報
【特許文献2】特許第3895081号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、従来のこれらの問題点を解消し、分離後のビニールを迅速に自動回収できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かかる課題を解決した本発明の構成は、
1) 使用済み紙おむつをビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつの分離方法であって、裁断又は破砕された使用済み紙おむつに水と脱水剤を加えて混合し、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーを脱水剤と反応させて脱水させる反応工程と、その脱水済みの混合物を回転ドラムに投入して溶解し、ビニール以外の溶解物を沈殿させて回転ドラム外に排出させ、ビニールを回転ドラム内に残留させる分離工程と、その残留したビニールを回転ドラム外に吸引して回収する回収工程とを有することを特徴とする、使用済み紙おむつの分離方法
2) 裁断又は破砕された使用済み紙おむつと水を混合した混合物を溶解してビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつ分離装置であって、片面が開放された回転ドラムの周面にビニールは通過できないがそれ以外は通過できる排水孔を形成し、その回転ドラムを密閉可能な外槽の内部に横向きの姿勢で且つ一部が水中に浸漬する位置に回転自在に軸支し、外槽の底部に排出弁付きの沈殿室を形成し、回転ドラムの開放位置にビニールを吸引手段で外槽の外へ吸引するビニール回収ダクトを配管したことを特徴とする、使用済み紙おむつ分離装置
3) 回転ドラムの外周面に圧縮空気を吹き付けるエアーノズルを設けた、前記2)記載の使用済み紙おむつ分離装置
4) 外槽の下部と回転ドラムの開放位置との間に水管を配管し、その水管を通じて外槽内の水を回転ドラム内へ送水して循環させる循環ポンプを設けた、前記2)又は3)記載の使用済み紙おむつ分離装置
5) 吸引手段が、片面が開放された乾燥ドラムの周面にビニールは通過できないがそれ以外は通過できる通気孔を形成し、その乾燥ドラムを密閉可能な箱体の内部に回転自在に軸支し、箱体の上部に乾燥用ヒーターを取り付け、その乾燥用ヒーターの上方位置に箱体の上面を開閉する開閉ダンパーを取り付け、箱体の下部に排気向きに作動するブロワーを取り付け、ビニール回収ダクトを乾燥ドラムの開放位置に配管した構造である、前記2)〜4)いずれか記載の使用済み紙おむつ分離装置
6) 裁断又は破砕した使用済み紙おむつに水と脱水剤を加えて混合する攪拌装置付きの反応槽を外槽とは別に設け、その反応槽と外槽との間に混合物を回転ドラム内へ投入する開閉弁付きの投入シュートを取り付けた、前記2)〜5)いずれか記載の使用済み紙おむつ分離装置
7) 攪拌装置の回転方向と同一方向の水流が形成される向きに噴水して水を供給するノズルを反応槽に取り付けた、前記6)記載の使用済み紙おむつ分離装置
8) 開閉弁に噴水して洗浄する洗浄ノズルを設けた、前記6)又は7)記載の使用済み紙おむつ分離装置
にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の前記1)記載の構成によれば、裁断又は破砕された使用済み紙おむつに水と脱水剤が加えられて混合され、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーが脱水剤と反応して脱水され、その脱水済みの混合物が回転ドラムに投入されて溶解し、ビニール以外の溶解物が沈殿して回転ドラム外に排出され、ビニールが回転ドラム内に残留し、その分離された回転ドラム内のビニールが吸引されて回転ドラム外に回収される。このように、特許文献1記載の技術のスクリーンによる掬い上げと比較してビニールを短時間で効率的に回収できる。また、特許文献2記載の技術のように作業者の手作業を要しないから、ビニールの回収の自動化や連続処理が容易となる。
【0009】
本発明の前記2)記載の構成によれば、混合物を回転ドラム内に投入して回転させると、その回転で混合物が溶解し、ビニール以外の溶解物が回転ドラムの排水孔を通過して外槽の沈殿室に沈殿し、排出弁を開放すると、水及び沈殿室内の溶解物が排出してビニールのみが回転ドラム内に残る。排出弁を閉塞して外槽を密閉し、回転ドラムを回転させた状態で吸引手段で吸引すると、外槽とビニール回収ダクトの内部が負圧になり、回転ドラム内のビニールがビニール回収ダクトに吸い込まれて回収される。このように、特許文献1記載の技術のスクリーンによる掬い上げと比較してビニールを短時間で効率的に回収できる。また、特許文献2記載の技術のように作業者の手作業を要しないから、ビニールの回収の自動化や連続処理が容易となる。
【0010】
本発明の前記3)記載の構成によれば、エアーノズルの圧縮空気が回転ドラムの排水孔を通気する際、その勢いで回転ドラムの内面に付着しているビニールが剥離し、ビニールを取り残すことなく確実に回収できる。
【0011】
本発明の前記4)記載の構成によれば、循環ポンプで吸引された外槽内の水が回転ドラム内に送水され、その流れでビニールがそれ以外の溶解物と分離し易くなる。したがって、多量の水を投入したり回転ドラムを高回転させることなくビニールの分離効果を高めることができる。
【0012】
本発明の前記5)記載の構成によれば、分離したビニールを回収する際、開閉ダンパーを閉塞してブロワーを作動させると、外槽と箱体とビニール回収ダクトの内部が負圧になり、回転ドラム内のビニールがビニール回収ダクトに吸い込まれて箱体内へ回収される。また、回収したビニールを乾燥する際、開閉ダンパーを開放して乾燥用ヒーターとブロワーを作動させると、ブロワーの吸引で外気が乾燥用ヒーターを通過して加熱され、その熱が箱体内へ導入されてビニールが乾燥される。このように、ビニールの回収と乾燥を1台のブロワーで行うことができ、設備の低コスト化及び省スペース化を図ることができる。
【0013】
本発明の前記6)記載の構成によれば、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーが脱水剤と反応して脱水し、吸水ポリマーの膨潤が抑制されて素材の分離が容易になる。
【0014】
本発明の前記7)記載の構成によれば、攪拌装置を高回転させることなく使用済み紙おむつと水と脱水剤が効率的に攪拌され、混合及び吸水ポリマーの脱水を早めることができる。
【0015】
本発明の前記8)記載の構成によれば、混合物を回転ドラムへ投入する際、混合物が開閉弁に付着して投入シュートの途中が詰まりやすくなることがあるが、洗浄ノズルで開閉弁に噴水することで、付着した混合物を流し落として混合物を円滑に通過させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施例の使用済み紙おむつ処理設備の全体図である。
【図2】実施例の使用済み紙おむつ分離装置の正面図である。
【図3】実施例の使用済み紙おむつ分離装置の側面図である。
【図4】実施例の使用済み紙おむつ分離装置の横断面図である。
【図5】実施例の使用済み紙おむつ分離装置の縦断面図である。
【図6】実施例の使用済み紙おむつ分離装置の縦断面図である。
【図7】実施例のビニール乾燥装置の説明図である。
【図8】実施例の使用済み紙おむつの分離工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明を実施するための形態を実施例と図面に基づいて具体的に説明する。
【実施例】
【0018】
図1〜8に示す実施例は、3体の使用済み紙おむつ分離装置と3体のビニール乾燥装置で多量の使用済み紙おむつを並列に分離処理できるようにした使用済み紙おむつ処理設備の例である。図1は実施例の使用済み紙おむつ処理設備の全体図、図2は実施例の使用済み紙おむつ分離装置の正面図、図3は実施例の使用済み紙おむつ分離装置の側面図、図4は実施例の使用済み紙おむつ分離装置の横断面図、図5,6は実施例の使用済み紙おむつ分離装置の縦断面図、図7は実施例のビニール乾燥装置の説明図、図8は実施例の使用済み紙おむつの分離工程図である。
【0019】
図中、10は裁断装置、11は待機コンベヤ、12は振分けコンベヤ、20は使用済み紙おむつ分離装置、21はフレーム、22は外槽、22aは沈殿室、22bは排出弁、23は回転ドラム、23aは攪拌羽根、23bはモーター、24は反応槽、24aは攪拌装置、24bは水位検知機、24cはノズル、24dは投入路、24eは投入シュート、24fは開閉弁、24gは洗浄ノズル、25は給水管、26は供給管、27はエアーノズル、28は水管、29は循環ポンプ、30はビニール乾燥装置、31はフレーム、32は箱体、32aは扉、32bは傾斜用シリンダー、33は乾燥ドラム、34はビニール回収ダクト、35は乾燥用ヒーター、36は開閉ダンパー、37はブロワー、38は搬送コンベヤ、39はリント回収装置、39aは排気ダクト、Aは使用済み紙おむつ、Bは混合物、Baは溶解物、Cは塩化カルシウム(脱水剤)、Vはビニール、Wは水である。
【0020】
本実施例の使用済み紙おむつ処理設備は、図1に示すように、投入された使用済み紙おむつAを裁断する裁断装置10と、その裁断装置10で裁断した使用済み紙おむつAを振分け時まで貯溜する待機コンベヤ11と、その待機コンベヤ11から投入された使用済み紙おむつAを待機コンベヤ11の下方位置で移動して振り分ける振分けコンベヤ12と、その振分けコンベヤ12の移動位置の下方で振分けコンベヤ12から振り分けられた使用済み紙おむつAを分離する3体の使用済み紙おむつ分離装置20と、その使用済み紙おむつ分離装置20で分離されたビニールVを回収して乾燥する3体のビニール乾燥装置30とで構成している。
【0021】
使用済み紙おむつ分離装置20は、図2〜6に示すように、フレーム21に外槽22を所定高さに取り付け、その外槽22の底部に溶解物Baを沈殿させる沈殿室22aを形成し、その沈殿室22aの底面を開口してエアーシリンダーの上下動で溶解物Baを水Wとともに排出する排出弁22bを取り付けている。
【0022】
外槽22の内部には前面が開放され且つ周面に排水孔が形成されたステンレス製の回転ドラム23を横向きの姿勢に軸支し、その回転ドラム23の内面に攪拌羽根23aを取り付け、回転ドラム23を正逆回転させるモーター23bを外槽22の後面に取り付けている。回転ドラム23は外槽22の軸線よりやや上方に偏心した位置に設け、その外径及び長さは1500mm×1000mmで、排水孔は水W及び溶解物Baが通過でき且つビニールVが通過できない径(孔径5mm、開口率30%)に形成している。
【0023】
フレーム21の上部には攪拌装置24aと水位検知機24bを備えた反応槽24を取り付け、反応槽24の側面に水Wを供給する給水管25と塩化カルシウムCを供給する供給管26を配管している。脱水剤としては、塩化カルシウム(CaCl)の他、多価金属イオンのCa,Na,Mg等が使用できる。給水管25の先端には供給された水Wを攪拌装置24aの回転方向と同じ方向の水流が形成される向きにジェット噴射するノズル24cを取り付け、水位検知機24bが槽内の所定水位を検知すると水Wと塩化カルシウムCの供給が停止するようになっている。
【0024】
反応槽24の内底は前方へ下向きに傾斜させ、その傾斜面の終端位置と外槽22の前面との間に投入路24dと投入シュート24eを取り付けて連通し、その投入路24dにエアーシリンダーの上下動で混合物Bを投入する開閉弁24fを取り付け、その開閉弁24fに噴水して洗浄する洗浄ノズル24gを開閉弁24fの上方位置に取り付けている。
【0025】
外槽22の上部にはコンプレッサー(図示せず)で供給した0.5MPa程度の圧縮空気を回転ドラム23の外周面に吹き付けるエアーノズル27を取り付け、外槽22の下部側面から投入シュート24eの下部に渡って水管28を配管し、その水管28を通じて外槽22内の水Wを回転ドラム23内に送水する循環ポンプ29を取り付けている。
【0026】
ビニール乾燥装置30は、図7に示すように、フレーム31にビニール排出用の扉32aを備えた密閉可能な箱体32を下端部で枢支し、その箱体32を前方へ傾動させる傾斜用シリンダー32bを取り付け、箱体32の内部に片面が開放された横向きの乾燥ドラム33をモーター(図示せず)で回転自在に軸支している。箱体32の前面と使用済み紙おむつ分離装置20の回転ドラム23の開放位置との間にはビニール回収ダクト34を配管している。乾燥ドラム33の外径及び長さは1200mm×1000mmで、ビニールVが通過できない径の通気孔(図示せず)を全面に形成している。
【0027】
箱体32の上面には熱風入口温度100℃、排気出口温度80℃前後となるようにサーモスタットと電磁弁(図示せず)で調整しながら発熱する乾燥用ヒーター35を取り付け、その乾燥用ヒーター35の上面に開閉ダンパー36を取り付け、箱体32の下部に排気向きに作動するブロワー37を取り付けている。吸引時は開閉ダンパー36が閉塞した状態でブロワー37が作動し、乾燥時は開閉ダンパー36が開放した状態でブロワー37が作動するようになっている。
【0028】
箱体32の扉32aの直下位置には排出したビニールVを搬送する搬送コンベヤ38を設置している。ビニール乾燥装置30の隣接位置にはサイクロン式のリント回収装置39を設置し、そのリント回収装置39と箱体32の後部との間に排気ダクト39aを配管している。
【0029】
以下、本実施例の使用済み紙おむつ処理設備を用いた使用済み紙おむつAの分離とビニールVの回収について説明する。
【0030】
<裁断工程>
まず、裁断装置10と待機コンベヤ11が作動する。振分けコンベヤ12は待機コンベヤ11の終端位置で待機している。使用済み紙おむつAを裁断装置10に投入すると裁断されながら右方向へ搬送され、終端口から待機コンベヤ11に排出される。使用済み紙おむつAは単品の他、ゴミ袋にまとめて収容したものが含まれる。
【0031】
<投入工程>
待機コンベヤ11は裁断された使用済み紙おむつAを右方向に搬送し、振分けコンベヤ12に投入する。振分けコンベヤ12に1バッチ分の量が溜まると、振分けコンベヤ12が待機中の使用済み紙おむつ分離装置20の位置に移動し、その反応槽24に投入する。投入後、振分けコンベヤ12は待機コンベヤ11の終端位置に戻り、次の1バッチ分の使用済み紙おむつAが投入されると、他の待機中の使用済み紙おむつ分離装置20に移動して反応槽24に投入し、これを常に繰り返す。
【0032】
<混合・反応工程>
使用済み紙おむつ分離装置20では、反応槽24に水Wと塩化カルシウムCが供給され、攪拌装置24aが作動する。開閉弁24fは閉塞している。水Wはノズル24cから噴射して攪拌装置24aの回転方向と同一方向の水流が形成され、効率的に攪拌される。水位検知機24bが槽内の所定水位を検知すると水Wと塩化カルシウムCの供給が停止し、その後およそ6分間攪拌される。この工程で使用済み紙おむつAに含まれる吸水ポリマーが塩化カルシウムCと反応して脱水し、吸水ポリマーの膨潤が抑制されて素材の分離が容易になる。
【0033】
混合及び吸水ポリマーの脱水が完了すると、攪拌装置24aが停止して開閉弁24fが開放し、反応槽24内の混合物Bが投入路24d及び投入シュート24eを通じて回転ドラム23内に移送される。このとき、開閉弁24fに混合物Bが付着して詰まりやすくなることがあるが、洗浄ノズル24gで開閉弁24fに連続的又は間欠的に噴水することで、付着した混合物Bを流し落として混合物Bの通過を円滑にする。回転ドラム23の1/3ほどが浸漬するの水位(水面がビニール回収ダクト34の直下位置となる水位)に混合物Bが溜まると開閉弁24fが閉塞し、次の1バッチ分の使用済み紙おむつAが投入されると、混合及び脱水して回転ドラム23へ移送し、これを常に繰り返す。
【0034】
<溶解・分離工程>
開閉弁24fが閉塞すると、回転ドラム23が回転するとともに循環ポンプ29が作動する。回転ドラム23はおよそ20rpmほどの回転数で正転・停止・逆転を繰り返して混合物Bを溶解し、その溶解物Baが回転ドラム23の排水孔を通過して沈殿室22aに沈殿し、不溶のビニールV(ゴミ袋のビニールを含む)は排水孔を通過せずに回転ドラム23内に残留する。循環ポンプ29で吸引された外槽22内の水Wは回転ドラム23内に送水され、その流れと攪拌羽根23aでビニールVがそれ以外の溶解物Baと分離し易くなり、多量の水Wを投入したり回転ドラム23を高回転させることなくビニールVの分離効果が高まる。
【0035】
回転ドラム23内の溶解物Baが沈殿室22aに全量沈殿すると、回転ドラム23と循環ポンプ29が停止して排出弁22bが開放し、水W及び溶解物Baが排出されて排水処理設備(図示せず)へ搬送される。溶解物Ba中の純度の高い上質のパルプ成分は紙おむつや紙製品のパルプとして再利用され、吸水ポリマーや不純物を含む低質のパルプ成分はコンポスト(堆肥)等に利用される。屎尿は微生物で分解して濃縮し、脱水固形化して炭化処理される。
【0036】
<回収・乾燥工程>
水W及び溶解物Baが全量排出されると、排出弁22bとビニール乾燥装置30の開閉ダンパー36が閉塞して回転ドラム23とブロワー37が作動する。このブロワー37で外槽22とビニール乾燥装置30の箱体32とビニール回収ダクト34の内部が負圧になり、回転ドラム23内のビニールVがビニール回収ダクト34に勢い良く吸い込まれてビニール乾燥装置30へ回収される。同時にエアーノズル27から圧縮空気が回転ドラム23の外周面に吹き付けられ、その圧縮空気が回転ドラム23の排水孔を通気する際の勢いで回転ドラム23の内面に付着しているビニールVが剥離し、確実に回収される。このように、本実施例によれば、分離後のビニールVを迅速に自動回収できる。ビニールVが全量回収されると回転ドラム23が停止し、次の混合物Bが移送されると回転ドラム23が回転して溶解・分離し、これを常に繰り返す。
【0037】
ビニール乾燥装置30では開閉ダンパー36が開放し、乾燥用ヒーター35とリント回収装置39が作動するとともに乾燥ドラム33が回転する(ブロワー37は作動のまま)。ブロワー37の吸引で外気が乾燥用ヒーター35を通過して加熱され、その熱が箱体32内へ導入される。乾燥ドラム33内のビニールVはその回転により解れて分散し、通気孔を通過した熱風で残水率が20%以下になるまで乾燥される。熱風は排気ダクト39aを通じてリント回収装置39へ排気される。
【0038】
ビニールVの乾燥が完了すると、乾燥ドラム33と乾燥用ヒーター35とブロワー37とリント回収装置39が停止し、傾斜用シリンダー32bが伸張して箱体32が前方へ傾斜する。搬送コンベヤ38は箱体32の扉32aの直下位置に待機している。扉32aを開放すると、乾燥ドラム33内のビニールVが搬送コンベヤ38上に排出され、プレス装置(図示せず)へ搬送されて圧縮され、ビニール製品に再利用したり燃料として利用される。ビニールVが排出されると傾斜用シリンダー32bが収縮して箱体32が元の姿勢に戻り、次の混合物Bが溶解・分離されるとビニールVを回収して乾燥し、これを常に繰り返す。
【0039】
このようにして、各工程が図8に示すように連続且つ並行して繰り返され、多量の使用済み紙おむつAが効率的に分離処理される。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明の技術は、多量の使用済み紙おむつのリサイクルに有用である。
【符号の説明】
【0041】
10 裁断装置
11 待機コンベヤ
12 振分けコンベヤ
20 使用済み紙おむつ分離装置
21 フレーム
22 外槽
22a 沈殿室
22b 排出弁
23 回転ドラム
23a 攪拌羽根
23b モーター
24 反応槽
24a 攪拌装置
24b 水位検知機
24c ノズル
24d 投入路
24e 投入シュート
24f 開閉弁
24g 洗浄ノズル
25 給水管
26 供給管
27 エアーノズル
28 水管
29 循環ポンプ
30 ビニール乾燥装置
31 フレーム
32 箱体
32a 扉
32b 傾斜用シリンダー
33 乾燥ドラム
34 ビニール回収ダクト
35 乾燥用ヒーター
36 開閉ダンパー
37 ブロワー
38 搬送コンベヤ
39 リント回収装置
39a 排気ダクト
A 使用済み紙おむつ
B 混合物
Ba 溶解物
C 塩化カルシウム(脱水剤)
V ビニール
W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用済み紙おむつをビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつの分離方法であって、裁断又は破砕された使用済み紙おむつに水と脱水剤を加えて混合し、使用済み紙おむつに含まれる吸水ポリマーを脱水剤と反応させて脱水させる反応工程と、その脱水済みの混合物を回転ドラムに投入して溶解し、ビニール以外の溶解物を沈殿させて回転ドラム外に排出させ、ビニールを回転ドラム内に残留させる分離工程と、その残留したビニールを回転ドラム外に吸引して回収する回収工程とを有することを特徴とする、使用済み紙おむつの分離方法。
【請求項2】
裁断又は破砕された使用済み紙おむつと水を混合した混合物を溶解してビニールとそれ以外に分離する使用済み紙おむつ分離装置であって、片面が開放された回転ドラムの周面にビニールは通過できないがそれ以外は通過できる排水孔を形成し、その回転ドラムを密閉可能な外槽の内部に横向きの姿勢で且つ一部が水中に浸漬する位置に回転自在に軸支し、外槽の底部に排出弁付きの沈殿室を形成し、回転ドラムの開放位置にビニールを吸引手段で外槽の外へ吸引するビニール回収ダクトを配管したことを特徴とする、使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項3】
回転ドラムの外周面に圧縮空気を吹き付けるエアーノズルを設けた、請求項2記載の使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項4】
外槽の下部と回転ドラムの開放位置との間に水管を配管し、その水管を通じて外槽内の水を回転ドラム内へ送水して循環させる循環ポンプを設けた、請求項2又は3記載の使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項5】
吸引手段が、片面が開放された乾燥ドラムの周面にビニールは通過できないがそれ以外は通過できる通気孔を形成し、その乾燥ドラムを密閉可能な箱体の内部に回転自在に軸支し、箱体の上部に乾燥用ヒーターを取り付け、その乾燥用ヒーターの上方位置に箱体の上面を開閉する開閉ダンパーを取り付け、箱体の下部に排気向きに作動するブロワーを取り付け、ビニール回収ダクトを乾燥ドラムの開放位置に配管した構造である、請求項2〜4いずれか記載の使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項6】
裁断又は破砕した使用済み紙おむつに水と脱水剤を加えて混合する攪拌装置付きの反応槽を外槽とは別に設け、その反応槽と外槽との間に混合物を回転ドラム内へ投入する開閉弁付きの投入シュートを取り付けた、請求項2〜5いずれか記載の使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項7】
攪拌装置の回転方向と同一方向の水流が形成される向きに噴水して水を供給するノズルを反応槽に取り付けた、請求項6記載の使用済み紙おむつ分離装置。
【請求項8】
開閉弁に噴水して洗浄する洗浄ノズルを設けた、請求項6又は7記載の使用済み紙おむつ分離装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−81433(P2012−81433A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230807(P2010−230807)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【特許番号】特許第4685973号(P4685973)
【特許公報発行日】平成23年5月18日(2011.5.18)
【出願人】(300073414)ケア・ルートサービス株式会社 (7)
【Fターム(参考)】