説明

便座装置

【課題】手動で便座を昇降させるよう構成された便座装置を提供する。
【解決手段】洋風便器10の後部上面に固定ベースプレート12がボルト14及びナット16によって固定されている。固定ベースプレート12の側面12aに対しリンクアーム20,22によって可動ベースプレート24が昇降可能に連結されている。ケーシング50内にギヤ42,44,46の列が配置されている。各ギヤ42,44,46は支軸42a,44a,46aを介してケーシング50に枢支されている。ギヤ46の支軸46aに対し手摺52の後端部が固着されている。手摺52を略水平とするとリンクアーム20,22は後方へ回動し、可動ベースプレート24が固定ベースプレート12上に重なり、便座28が洋風便器10上に重なる。用便後に立ち上がるときには、手摺52の前部側に手を掛けて手摺52を押し下げつつ腰を浮かそうとする。そうすると、手摺52の前部側が押し下げられリンクアーム22が上方に回動し、可動ベースプレート24が上昇する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トイレの洋風便器に設置される便座装置に係り、特に便座が昇降する昇降式便座装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
洋風便器上の便座に座ったり、立ったりしたときの動作を楽に行うことができるようにするために、便座を昇降式としたり、手摺を設けたりすることが行われている(特開平9−94185号公報、特開平9−108143号公報)。
【特許文献1】特開平9−94185号公報
【特許文献2】特開平9−108143号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の昇降式の便座装置は、モータによって便座を昇降させるよう構成されている。このような昇降機構は大掛りでコスト高である。
【0004】
本発明は、手動で便座を昇降させるよう構成された便座装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明(請求項1)の便座装置は、昇降機構によって昇降される便座と、該便座に座った着座者の側方に配置される手摺とを有する便座装置において、該昇降機構は、該手摺を押し下げる力を駆動力として該便座を上昇させる手動式の昇降機構であることを特徴とするものである。
【0006】
請求項2の便座装置は、請求項1において、該手摺は、該着座者の側部を前後方向に延在しており、該手摺の後部側が軸によって支持され、前端側が上下方向回動可能とされており、前記昇降機構は、該手摺の前端側が押し下げられる力によって前記便座を上昇させるように構成されていることを特徴とするものである。
【0007】
請求項3の便座装置は、請求項2において、前記軸は前記手摺に固着されており、前記昇降機構は、前記手摺の押し下げによる該軸の回転を便座側方のリフト装置に伝達し、該リフト装置によって便座を押し上げるよう構成されていることを特徴とするものである。
【0008】
請求項4の便座装置は、請求項3において、該昇降機構は、該軸の回転をギヤ又はベルトを介して該リフト装置に伝達するよう構成されていることを特徴とするものである。
【0009】
請求項5の便座装置は、請求項3又は4において、前記リフト装置は、前記軸から伝達される回転力によって回動するアームを備えており、該アームの回動によって便座が押し上げられることを特徴とするものである。
【0010】
請求項6の便座装置は、請求項1ないし5のいずれか1項において、前記便座はベースプレートに取り付けられており、該ベースプレートが前記昇降機構によって昇降するよう構成されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明の便座装置にあっては、昇降式の便座と手摺とが連動しており、手摺を押し下げると便座が上昇する。従って、便座に座っていた着座者が立ち上がろうとして手で手摺を押し下げつつ腰を浮かせようとすると、便座が腰を押し上げるようになり、起立動作が補助され、楽に立ち上がることができる。
【0012】
この便座装置は、モータ等の電動装置が不要であり、構成が簡易で低コストである。また、トイレルームにコンセント等の電源設備が無くても使用することができる。
【0013】
請求項2の便座装置にあっては、手摺の前端側を押し下げることにより手摺が軸回りに回転する。この手摺の長さをある程度長く設定することにより、十分な回転力(トルク)を得ることができる。
【0014】
請求項3の便座装置にあっては、手摺を押し下げるとリフト装置が動作し、便座が押し上げられる。
【0015】
請求項4の便座装置によると、この軸の回転力(トルク)がギヤ又はベルトを介して確実にリフト装置に伝達される。
【0016】
請求項5の通り、リフト装置としては、軸から伝達される回転力によって回動するアームを備えており、該アームの回動によって便座を押し上げるよう構成したものが簡便で好適である。
【0017】
請求項6の便座装置にあっては、便座が取り付けられたベースプレートを昇降させるようにしており、便座それ自体には昇降のための部品を設けることは不要である。このため、便座として例えば市販の各種タイプのものを採用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明についてさらに詳細に説明する。
【0019】
第1図は実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器設備の斜視図、第2図はこの便座装置の分解斜視図、第3図は可動ベースプレート及び固定ベースプレートの斜視図、第4図は第3図のIV−IV線断面図、第5図は便座を下降させた状態の洋風便器設備の側面図、第6図は便座を上昇させた状態の洋風便器設備の側面図である。第7図は別の実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器設備の斜視図である。
【0020】
洋風便器10の後部上面に固定ベースプレート12がボルト14及びナット16によって固定されている。このボルト14は、固定ベースプレート12のボルト挿通孔12c及び洋風便器10のボルト挿通孔18に挿通されている。
【0021】
固定ベースプレート12は、洋風便器10に重なる主板面12bの左右両側縁から側面12aが垂設されたコ字形状のものである。
【0022】
この固定ベースプレート12の側面12aに対しリンクアーム20,22によって可動ベースプレート24が昇降可能に連結されている。
【0023】
この可動ベースプレート24は、該固定ベースプレート12の主板面12bに上側から重なり得る主板面24bと、該主板面24bの左右両側縁から垂設された側面24aとを有したコ字形状のものである。
【0024】
該主板面24bの後部側に開口24cが設けられている。該開口24cに挿通されたボルト(図示略)によって1対のヒンジ部材26が該可動ベースプレート24に固定されている。
【0025】
このヒンジ部材26に対し便座28が起倒方向回動自在に取り付けられている。前記リンクアーム20,22は、それぞれ洋風便器10の左右両側に1対ずつ設けられている。洋風便器10の前方側のリンクアーム20は後方側のリンクアーム22よりも長さが短くなっており、従って、リンクアーム20,22が上方に回動した際には、可動ベースプレート24は第6図の通り前傾姿勢をとる。
【0026】
前方側のリンクアーム20は軸ピン30,32によってベースプレート12,24の側面12a,24aに回動自在に連結されている。なお、軸ピン32は該側面24aに前後方向に延設された長孔34に挿通されている。可動ベースプレート24が昇降する際には、軸ピン32は該長孔34内を前後方向にスライドする。
【0027】
リンクアーム22はベースプレート12,24の側面12a,24aに対しそれぞれ軸ピン36,38によって回動自在に連結されている。
【0028】
第3,4図の通り、リンクアーム20,22は側面24aの内側かつ側面12aの外側に配置されている。可動ベースプレート24が固定ベースプレート12上に重なるときには、側面24aが側面12aの外側に対峙し、両者の間にリンクアーム20,22が入り込む。
【0029】
第4図の通り、軸ピン36は側面12aの外面から所定長さ突出しており、この突出方向先端側にギヤ40が固着されている。ギヤ40とリンクアーム22との間には、可動ベースプレート24の側面24aが入り込み得る間隔があいている。
【0030】
固定ベースプレート12に対しケーシング50が固定されている。このケーシング50は、側面12aの外面側を覆うと共に、洋風便器10の後部から上方に起立している。
【0031】
このケーシング50内にギヤ42,44,46の列が配置されている。各ギヤ42,44,46は支軸42a,44a,46aを介してケーシング50に枢支されている。なお、支軸42aはケーシング50の外側面にのみ支持されており、第5図の如くギヤ42と側面12aとの間にリンクアーム22が入り込み得るようになっている。
【0032】
ギヤ40に対しギヤ42が噛合し、ギヤ42に対しギヤ44が噛合し、ギヤ44に対しギヤ46が噛合している。
【0033】
最上段のギヤ46の支軸46aはケーシング50から側外方に突出し、この支軸46aに対し手摺52の後端部が固着されている。手摺52は前方へ延在しており、その前部側の上面には軟質パッド52aが設けられている。
【0034】
このように構成された便座装置を有する洋風便器設備にあっては、第5図の通り手摺52を略水平とするとリンクアーム20,22は後方へ回動し、可動ベースプレート24が固定ベースプレート12上に重なり、便座28が洋風便器10上に重なる。この状態で便座28に座って用便を行う。
【0035】
この際、手摺52が洋風便器10の左右両側に配置されているので、着座時に手摺52に手を掛けることにより身体を安定させることができる。
【0036】
用便後に立ち上がるときには、手摺52の前部側に手を掛けて手摺52を押し下げつつ腰を浮かそうとする。そうすると、手摺52の前部側が押し下げられ(第1図矢印D)、第6図の通り、ギヤ46,44,42,40が回動し、リンクアーム22が上方に回動し、可動ベースプレート24が上昇する(第1図矢印U)。これにより、着座者の腰部が便座28によって押し上げられるため、楽に起立することができる。この実施の形態では、便座28は前傾しつつ上昇するので、着座者は極めて楽に立ち上がることができる。
【0037】
なお、便座28に着座するときにも、手摺52を押し下げて第6図の通り便座28を上昇させておくと、脚力の弱い人でも便座28に楽に座ることができる。ただし、手摺52を第5図の如く、略水平としておいて便座28に着座してもよい。
【0038】
上記実施の形態ではギヤ40,42,44,46を介して手摺52の回転力をリンクアーム22に伝達しているが、第7図のようにワイヤ60によって伝達するようにしてもよい。
【0039】
第7図では、支軸46aにプーリ56が固着されており、軸ピン36にプーリ58が固着されている。これらのプーリ56,58にベルト60が掛け渡されている。符号62はガイドプーリを示す。第7図の実施の形態のその他の構成は上記実施の形態と同一である。
【0040】
なお、プーリ56,58及びベルト60は、滑りが生じないように歯付きプーリ及び歯付きベルトとされている。
【0041】
第7図の状態から手摺52を押し下げると、プーリ56,58がそれぞれ反時計方向に回動し、可動ベースプレート24が押し上げられる。
【0042】
上記実施の形態はいずれも本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態をもとりうる。
【0043】
本発明では、手摺52が第6図の状態よりも下方へ回動することを阻止するためのストッパを設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器設備の斜視図である。
【図2】図1の便座装置の分解斜視図である。
【図3】可動ベースプレート及び固定ベースプレートの斜視図である。
【図4】図3のIV−IV線断面図である。
【図5】便座を下降させた状態の洋風便器設備の側面図である。
【図6】便座を上昇させた状態の洋風便器設備の側面図である。
【図7】別の実施の形態に係る便座装置を備えた洋風便器設備の斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10 洋風便器
12 固定ベースプレート
14 可動ベースプレート
20,22 リンクアーム
40,42,44,46 ギヤ
50 ケーシング
52 手摺
56,58 プーリ
60 ベルト
62 ガイドプーリ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
昇降機構によって昇降される便座と、該便座に座った着座者の側方に配置される手摺とを有する便座装置において、
該昇降機構は、該手摺を押し下げる力を駆動力として該便座を上昇させる手動式の昇降機構であることを特徴とする便座装置。
【請求項2】
請求項1において、該手摺は、該着座者の側部を前後方向に延在しており、
該手摺の後部側が軸によって支持され、前端側が上下方向回動可能とされており、
前記昇降機構は、該手摺の前端側が押し下げられる力によって前記便座を上昇させるように構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項3】
請求項2において、前記軸は前記手摺に固着されており、
前記昇降機構は、前記手摺の押し下げによる該軸の回転を便座側方のリフト装置に伝達し、該リフト装置によって便座を押し上げるよう構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項4】
請求項3において、該昇降機構は、該軸の回転をギヤ又はベルトを介して該リフト装置に伝達するよう構成されていることを特徴とする便座装置。
【請求項5】
請求項3又は4において、前記リフト装置は、前記軸から伝達される回転力によって回動するアームを備えており、該アームの回動によって便座が押し上げられることを特徴とする便座装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか1項において、前記便座はベースプレートに取り付けられており、該ベースプレートが前記昇降機構によって昇降するよう構成されていることを特徴とする便座装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate