説明

保安装置

【課題】 一対のロール上へのゴムの投入作業および一対のロール間に形成される投入部に向けてゴムを押し遣る作業を可能にしながら、緊急時に一対のロールの回転を停止する所定の作動性能が得られるようにする。
【解決手段】 回転軸が水平方向に並列する一対のロール1上に上方からゴムGが投入されるゴムロール機に配在される保安装置であって、一対のロール1における頂部1a間に形成される投入部Aを危険領域に設定すると共に、この危険領域における状況を検知する検知手段2が一対のロール1の軸芯線に沿う側方に配在されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、保安装置に関し、特に、並列する一対のロールで柔らかい固まり状のゴムを圧延してゴムシートを形成するゴムロール機への具現化に適する保安装置の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
回転軸が水平方向に並列していわゆる巻き込み方向に回転する一対のロールで柔らかい固まり状のゴムを圧延してゴムシートを形成するゴムロール機にあっては、一対のロール上にゴムを落ち着かせるように、すなわち、一対のロールにおける頂部間とされて断面がほぼ漏斗状になる投入部から柔らかいゴムがいわゆる零れ落ちないようにするために、作業者が手でゴムを投入部へ押し遣るようにすることがある。
【0003】
このとき、作業者の手が一対のロールの間に挟まれる事故の発生を回避するために、一対のロールの回転を緊急に停止させることを可能にする保安装置が、たとえば、特許文献1に開示されている。
【0004】
すなわち、この特許文献1に開示されている保安装置は、一対のロール間に形成される投入部の上方に色差チェック型光電管が設置されてなるとするもので、この色差チェック型光電管が検知したところに基づいて、一対のロールを回転させているモータを停止させるとしている。
【0005】
それゆえ、この提案によれば、作業者がゴムの色彩に対して、たとえば、補色関係になる色彩の手袋をして作業に従事することで、作業者の手が上記の投入部に入り込んだときに、色差チェック型光電管がこれを検知して、一対のロールの回転を停止させることが可能になる。
【特許文献1】特開昭48−46956号公報(特許請求の範囲,明細書第2頁左欄第5行から第12行,第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した提案にあっては、ゴムロール機の構造によっては、これを具現化できないと指摘される可能性がある。
【0007】
すなわち、ゴムロール機にあって、一対のロール上に投入されるゴムが投入部の上方から落下される構造とされている場合には、上記の色差チェック型光電管を一対のロールの上方に、特に、投入部の上方に配置することが困難になる。
【0008】
そして、ゴムを一対のロール上に落下させる装置類との干渉を避けるようにして色差チェック型光電管を配置する場合には、この色差チェック型光電管を正常に作動させる、すなわち、色差チェック型光電管に正確な検知作業を実践させることが困難になり易く、保安装置における所定の作動性能の発揮を期待できなくする危惧がある。
【0009】
この発明は、このような現状を鑑みて創案されたものであって、その目的とするところは、一対のロール上へのゴムの投入作業および一対のロール間に形成される投入部に向けてゴムを押し遣る作業を阻害しないのはもちろんのこと、緊急時に一対のロールの回転を停止する所定の作動性能が得られて、そのゴムロール機への汎用性の向上を期待するのに最適となる保安装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、この発明による保安装置の構成を、回転軸が水平方向に並列する一対のロール上に上方からゴムが投入されるゴムロール機に配在される保安装置であって、一対のロールにおける頂部間に形成される投入部を危険領域に設定すると共に、この危険領域における状況を検知する検知手段が一対のロールの軸芯線に沿う側方に配在されてなるとする。
【発明の効果】
【0011】
それゆえ、この発明にあっては、検知手段が一対のロールの軸芯線に沿う側方に配在されるから、ゴムが一対のロール上からいわゆる零れ落ちないようにするためにゴムを押し遣るようにする作業を妨げないのはもちろんのこと、一対のロール上に上方からゴムを落下させるようにして投入する動作を妨げないことになる。
【0012】
そして、この発明にあっては、検知手段が一対のロール間に形成される投入部たる危険領域における状況を検知するから、上記の投入部におけるゴムの動きに対して作業者の手が重なるようにして動く状況を検知することが可能になる。
【0013】
このとき、検知手段が危険領域における状況を映像化すると共にこの映像化されたところに基づく信号を制御部に出力し、制御部が入力された信号に基づいて一対のロールを回転させる駆動源を制御してなるとすることで、緊急時に一対のロールの回転を自動的に停止することが可能になるのはもちろんのこと、映像化されたところを監視役などが監視することで、一層の保安効果を向上させることが可能になる。
【0014】
その結果、この発明の保安装置によれば、一対のロール上へのゴムの投入作業および一対のロール間に形成される投入部に向けてゴムを押し遣る作業を可能にするのはもちろんのこと、緊急時に一対のロールの回転を停止する所定の作動性能が得られて、そのゴムロール機への汎用性の向上を期待するのに最適となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下に、図示した実施形態に基づいて、この発明を説明するが、この発明による保安装置は、図1および図2に示すように、回転軸(図示せず)が水平方向に並列する一対のロール1上に、すなわち、一対のロール1における頂部1a間とされて断面がほぼ漏斗状になる投入部Aに上方からゴムG(図2参照)が投入されるゴムロール機に具現化されるとしている。
【0016】
このとき、ゴムロール機は、図示しないモータなどの駆動源の駆動で一対のロール1を同期回転させるとしており、この一対のロール1の回転方向は、基本的には、図2中に矢印で示すいわゆる巻き込み方向とされるとし、さらには、要するときの逆方向とされている。
【0017】
また、このゴムロール機にあって、一対のロール1は、両者の間に、図中では誇張して示すが、適宜の隙間Sを有しながら互いに遠近し得る、あるいは、一方のロール1が他方のロール1に対して遠近し得るとしており、この隙間Sの広狭制御によって言わば下方に押し出されるゴムシートの厚さを選択し得るとしている。
【0018】
ちなみに、この種のゴムロール機にあっては、多くの場合に、ロール1の回転の緊急停止を可能にするスイッチが複数箇所に、すなわち、作業者の足元や作業者の頭上付近、さらには、作業者の手が届く左右に設けられているとするが、この発明の保安装置は、上記のスイッチを作業者が押すことができなくなるような事態になることがあっても、ゴムロール機の運転を緊急停止できるようにするために提案されるものである。
【0019】
ところで、この発明による保安装置を具現化するについて、ゴムロール機にあっては、一対のロール1間に形成される前記した投入部Aが危険領域に設定されると共に、この危険領域における状況を検知する、すなわち、投入部Aに作業者が装着する手袋が臨在する状態を検知する検知手段2が一対のロール1の軸芯線に沿う側方に配在されてなるとしている。
【0020】
このとき、危険領域の設定について、図示するところでは、投入部Aたる一対のロール1における頂部1a間としているが、凡そゴムロール機で作業に従事する際の作業者は、図1および図2中で右側となる言わば手前側のロール1に接近するから、危険領域が手前側のロール1における頂部1aから徐々に手が届かなくなる奥側に向けての全てとされるとしても良いことはもちろんである。
【0021】
上記の検知手段2は、一対のロール1の軸芯線に沿う側方に配在されてなるとするから、一対のロール1上にあるゴムGがいわゆる零れ落ちないように作業者がする作業、すなわち、ゴムGを投入部Aに向けて押し遣る作業を妨げないのはもちろんのこと、一対のロール1上に上方からゴムGを落下させるようにして投入する動作を妨げない。
【0022】
また、この検知手段2は、投入部Aに手袋がある状態を検知する限りには、任意の構成とされて良く、この実施形態では、図示しないが、検知手段2が危険領域における状況を映像化すると共にこの映像化されたところに基づく信号を制御部に出力するとしている。
【0023】
そして、制御部は、同じく図示しないが、入力された信号に基づいて一対のロール1を回転させる駆動源を制御するとして、緊急時に一対のロール1の回転を自動的に停止することを可能にするとしている。
【0024】
ちなみに、危険領域における状況を映像化することで、この映像化されたところを監視役などが直接監視し得ることになり、上記した制御部を介しての自動的な制御に加えて、言わば人的操作でロール1の回転を阻止し得るようにして、一層の保安効果を向上させることが可能になる。
【0025】
ところで、危険領域における状況を映像化するについては、たとえば、CCDカラーカメラを利用するのが良く、この場合には、従来のモノクロ型のカメラによる場合に比較して、識別能力に優れることになる。
【0026】
その結果、たとえば、前記した特許文献1に開示されている場合などのゴムGの色彩と補色関係になる色彩あるいは補色に近似する色彩の手袋を選択することが要求される場合に比較して、補色関係にあることが必須とされないなど多岐にわたる識別たる検知が可能になり、その分有利になる。
【0027】
つぎに、上記した検知手段2の配置位置について、原理的には、一対のロール1の軸芯線に沿う側方であれば良いが、より正確には、一対のロール1の軸芯線に沿う側方でありながらロール1の頂部1aより上方に位置決められていて、一対のロール1上に設定される危険領域をいわゆる斜め上方から見渡せるように配在されることである。
【0028】
このとき、図示する検知手段2は、一対のロール1における危険領域をいわゆる左右から同時に検知し得るように、一対のロール1の軸芯線に沿う両側の側方にそれぞれ配在されるとするのが好ましい。
【0029】
ただ、この発明が意図するところは、危険領域を一対のロール1の上方から検知するのではなく、一対のロール1の軸芯線に沿う側方から検知することであるから、検知手段2がいわゆる左右に配在されることが必須とされる訳ではない。
【0030】
以上のように、検知手段2が一対のロール1の軸芯線に沿う側方でありながらロール1の頂部1aより上方に、しかも、両側に置決められることで、危険領域における状況を効果的に検知し得ることになる。
【0031】
このとき、検知手段2による検知をより正確なものにするためには、その検知雰囲気が周囲の雰囲気における光の影響を受けないようにするのが好ましく、たとえば、周囲と画成された専用空間内に所定の検知雰囲気を設けることが最も簡単であろう。
【0032】
しかしながら、周囲と画成された専用空間内に検知雰囲気を設けることは、設備の大型化を招来するであろうから、図示する実施の形態にように、ゴムロール機の周辺照度に勝る照度で一対のロール1上の危険領域を照らす照明手段3が併設されてなるとするのが好ましいと言い得る。
【0033】
なお、この照明手段3を設けることについて、この発明が意図するところは、所定の照度雰囲気を現出することであり、したがって、所定の照度雰囲気を得られる限りには、たとえば、検知手段2と同様にいわゆる左右に配置されるとしても良く、また、左右のいずれか一方にのみ配在されるとしても良いことはもちろんである。
【0034】
以上のように、この発明による保安装置がゴムロール機に具現化される場合には、一対のロール1間に形成される投入部AへのゴムGの投入作業およびこの投入部Aに向けて一対のロール1上でゴムGを押し遣る作業を可能にするのはもちろんだが、投入部Aたる危険領域に作業者が着装する手袋が侵入したことを検知手段2が検知するとき、ロール1の回転を停止することが可能になる。
【0035】
以上からすれば、この発明による保安装置にあっては、検知手段2がゴムロール機における一対のロール1の軸芯線に沿う側方に配在されるとしているから、前述したところであるが、一対のロール1上に上方からゴムGを落下させるようにして投入する構造のゴムロール機への具現化に適することになる。
【0036】
すなわち、ゴムロール機が一対のロール1上に上方からのゴムGを落下させるようにして投入する場合には、ゴムGを落下させるときに、作業者のいわゆる頭上付近にある緊急停止用のスイッチを誤作動させる危惧がある。
【0037】
それゆえ、このゴムGをロール1の上方から落下させるようにする構造のゴムロール機にあっては、作業者の頭上付近に緊急停止用のスイッチを設けないことになるから、その分、この保安装置に頼るところが多くなり、また、頭上付近の緊急停止用のスイッチがなくてもロール1における所望の回転停止作動が実現可能になる。
【0038】
上記したところがこの発明における保安装置の基本的な構成および動作であるが、図示する実施形態では、さらに以下のような配慮をしている。
【0039】
すなわち、まず、ゴムロール機における一対のロール1にあって、前記した投入部Aたる危険領域を外れる領域を作業領域(符示せず)に設定すると共に、検知手段2は、この作業領域における状況をも検知するとしている。
【0040】
と言うのも、仮に、検知手段2が上記した危険領域の状況のみを検知する設定とされる場合には、客観的には、作業者が着装する手袋が危険領域に入って来るまで、その状況が分らないことになる。
【0041】
この点に関して、前記した特許文献1に開示の提案にあっては、色差チェック型光電管を利用して所定の色差チェックが実践されるときにモータの駆動を中止してロールの回転を停止するとしているから、作業者が着装する手袋が危険領域でなく作業領域にあるときにも、色差チェックが実践される限りには、ロールの回転が停止される不具合が危惧される。
【0042】
それに対して、作業領域の状況も検知手段2によって検知できるとの設定の場合には、まず、未だ危険領域に入ってはいないが、そのまま作業者が装着する手袋が移動されれば、危険領域に入ることになる状況を検知し得ることになり、その分、言わば作業者の手が危険領域に入ってくる可能性を予見でき、したがって、保安性を向上し得る点から有利になる。
【0043】
そして、作業領域における状況も検知手段2によって検知する場合には、たとえば、警告音を発するのみで、ロール1の回転を停止させない制御が可能になり、したがって、一対のロール1上でゴムGを投入部Aに向けて手で押し遣る作業にあって、いたずらにロール1の回転停止を招来しないことになる。
【0044】
前記したところは、検知手段2がCCDカラーカメラからなる場合を例にして説明したが、この検知手段2が機能するところは、すなわち、この発明が意図するところは、凡そ一対のロール1上に設定される危険領域に手袋を装着した作業者の手が侵入するような状況になるとき、これを検知して制御部を介してであるがロール1の回転を停止し得るようにすることであるから、側方に配在された複数の光センサが検知するところをもって、ロール1の回転を停止するように構成しても良いことはもちろんである。
【0045】
また、前記したところでは、この発明による保安装置がゴムロール機に具現化されてなるとしたが、凡そ危険領域を有していて、この危険領域に作業者が装着する手袋が侵入することが予測される機械装置類であれば、その具現化が可能になるのはもちろんである。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】この発明による保安装置を具現化したゴムロール機を概念的に示す平面図である。
【図2】図1に対する側面図である。
【符号の説明】
【0047】
1 ロール
1a 頂部
2 検知手段
3 照明手段
A 投入部
G ゴム
S 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸が水平方向に並列する一対のロール上に上方からゴムが投入されるゴムロール機に配在される保安装置であって、一対のロールにおける頂部間に形成される投入部を危険領域に設定すると共に、この危険領域における状況を検知する検知手段が一対のロールの軸芯線に沿う側方に配在されてなることを特徴とする保安装置
【請求項2】
検知手段が危険領域における状況を映像化すると共にこの映像化されたところに基づく信号を制御部に出力し、制御部が入力された信号に基づいて一対のロールを回転させる駆動源を制御してなる請求項1に記載の保安装置
【請求項3】
検知手段に一対のロールにおける危険領域をゴムロール機の周辺照度に勝る照度で照らす照明手段が併設されてなる請求項1または請求項2に記載の保安装置
【請求項4】
一対のロール間に形成される投入部を外れる領域が作業領域に設定されると共に、この作業領域における状況が検知手段で検知されてなる請求項1,請求項2および請求項3のいずれかに記載の保安装置
【請求項5】
検知手段が一対のロールの軸芯線に沿う両方の側方に配在されてなる請求項1,請求項2,請求項3および請求項4のいずれかに記載の保安装置

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−44118(P2006−44118A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−230041(P2004−230041)
【出願日】平成16年8月6日(2004.8.6)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【Fターム(参考)】