説明

保温器具

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本願発明は、内容物(例えばシチューのような加熱調理食品)を収容した調理鍋ごと保温容器で保温し得るようにした保温器具に関するものである。
【0002】
【従来の技術】この種の保温器具の公知例として例えば実開平4−14024号公報(考案の名称;断熱調理器具)で示されるものがある。この公知例の断熱調理器具は、保温機能を有する保温容器と、該保温容器内に出し入れ自在に収容される調理鍋とで構成されている。保温容器は、断熱構造(真空二重壁構造)を有する容器本体と、該容器本体の開口部を開閉する断熱構造(断熱材入り)の蓋体とを有している。尚、蓋体は、容器本体にヒンジピンで連結されて弧回動開閉される。調理鍋は、鍋本体と、該鍋本体の開口縁部上に載置される鍋蓋とを有している。そして、この公知の断熱調理器具は、内容物(加熱調理食品)を収容した調理鍋ごと保温容器内に収容して、該調理鍋内の食品を保温するために使用される。又、保温容器の容器本体内に鍋蓋つきの調理鍋を収容し、該容器本体の開口部を蓋体で閉蓋した状態では、蓋体の下面と鍋蓋の上面との間に隙間が生じ、しかも鍋蓋は単に鍋本体の開口縁部上に載置されているだけとなる。
【0003】ところで、この種の断熱調理器具(保温器具)は、家庭内でも使用されるが、内容物(加熱調理食品)入りの調理鍋を保温容器内で保温した状態で、屋外に携帯することがある。例えば、ピクニックに出かけるときには、加熱調理食品を保温した状態で、断熱調理器具を自動車に積み込んで運搬する場合がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが、上記公知の断熱調理器具では、調理鍋を保温容器内に収容した状態では、鍋蓋は単に鍋本体の開口縁部上に載置されているだけなので、例えば自動車に積み込んで運搬するときには、自動車の揺れや振動によって鍋本体内の内容物(例えばシチューのような液状食品)が揺動し且つ鍋蓋が鍋本体に対してガタつくことがある。このように、鍋本体内の内容物が揺動し且つ鍋蓋がガタつくと、該内容物(特に液状食品)が鍋本体の開口縁部からこぼれ出ることがあるという問題があった。
【0005】本願発明は、上記した公知の断熱調理器具の問題点に鑑み、内容物入りの調理鍋を保温容器内に収容した状態で、例えば自動車に積み込んで運搬する場合のように揺れや振動があっても、鍋蓋が不用意にガタつかないようにした保温器具を提供することを目的としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】本願発明は、上記課題を解決するための手段として、次の構成を有している。
【0007】本願請求項1の発明本願請求項1の発明は、断熱構造を有する容器本体の開口部を断熱構造を有する蓋体で開閉し得るようにした保温容器と、該保温容器内に出し入れ自在に収容され且つ鍋本体の開口部の縁部に鍋蓋を載置した調理鍋とで構成される保温器具において、前記鍋蓋をガラス製とし且つその中央部にツマミを取り付けるとともに、前記調理鍋を容器本体内に収容し且つ蓋体を閉蓋した状態において前記ツマミを前記蓋体により移動規制するように構成したことを特徴としている。
【0008】本願請求項2の発明本願請求項2の発明は、断熱構造を有する容器本体の開口部を断熱構造を有する蓋体で開閉し得るようにした保温容器と、該保温容器内に出し入れ自在に収容され且つ鍋本体の開口部の縁部に鍋蓋を載置した調理鍋とで構成される保温器具において、前記鍋蓋の中央部にツマミを取り付けるとともに、前記調理鍋を容器本体内に収容し且つ蓋体を閉蓋した状態において前記ツマミを前記蓋体に設けた弾性部材により移動規制するように構成したことを特徴としている。
【0009】本願請求項3の発明本願請求項3の発明は、上記請求項1あるいは請求項2の保温器具において、前記蓋体の下面中央部に、該蓋体の閉蓋時において前記ツマミを臨ませる凹入部を形成したことを特徴としている。
【0010】
【作用】本願請求項1〜3の各発明の保温器具では、内容物(例えば、シチューのような加熱調理済みの液状食品)入りの調理鍋を保温容器内に収容すると、該保温容器の保温機能によって内容物が保温される。又、調理鍋を容器本体内に収容し且つ蓋体を閉蓋した状態では、鍋蓋のツマミが蓋体あるいは蓋体に設けられた弾性部材により移動規制されるようになり、この保温器具を例えば自動車に積み込んで運搬する場合のように、保温器具全体が揺れたり振動しても、鍋蓋が鍋本体に対してガタつかなくなる。
【0011】
【発明の効果】本願請求項1〜3の各発明の保温器具は、調理鍋を容器本体内に収容し且つ蓋体を閉蓋した状態では、鍋蓋のツマミが蓋体あるいは蓋体に設けられた弾性部材により移動規制されているので、この保温器具を例えば自動車に積み込んで運搬する場合のように、保温器具全体が揺れたり振動しても、鍋蓋が鍋本体に対してガタつかなくなる。このように、鍋蓋がガタつかなくなると、鍋本体内で内容物(例えばシチューのような加熱調理済みの液状食品)が揺れても、該内容物が鍋本体内からこぼれ出ることがなくなるという効果がある。
【0012】
【実施例】以下、図1〜図8を参照して本願発明の幾つかの実施例を説明すると、図1〜図3には本願発明の第1実施例にかかる保温器具が示されている。又、図4及び図5にはそれぞれ第1実施例の保温器具を携帯する際の携帯方法が示されている。さらに図6〜図8にはそれぞれ本願発明の第2〜第4実施例の保温器具が示されている。
【0013】図1〜図3に示す第1実施例の保温器具は、断熱構造を有する保温容器Aと、該保温容器A内に出し入れ自在に収容される調理鍋Bとで構成されている。
【0014】保温容器Aは、断熱構造を有する有底円筒状の容器本体1と、該容器本体1の開口部10を開閉し得る断熱構造の蓋体2とを有している。容器本体1は、それぞれステンレス製の外壁11と内壁12を有し且つ該外壁11と内壁12間を真空とした真空二重壁構造を有している。
【0015】蓋体2は、ステンレス製の天板21と、合成樹脂製の底板22と、該天板21と底板22とを外周部において結合する合成樹脂製のリング体23と、天板21と底板22間に介設した断熱材24とを有している。そして、この蓋体2は、天板21と底板22間に断熱材24を介設し、且つリング体23で天板21の外周縁部を押さえた状態で該リング体23と底板22とをビス止めして一体化させている。
【0016】容器本体1の外周上端部には、合成樹脂製で環状の肩部材13が取付けられている。この肩部材13には、図1に示すようにヒンジ受部15が形成されており、該ヒンジ受部15にヒンジピン16で蓋体2の一端部が弧回動開閉自在に枢支されている。又、この肩部材13のヒンジ受部15と対向する位置には、ロック部材17がピン18で枢支されている。このロック部材17は、蓋体2を閉じた状態で上方に弧回動させると、蓋体2側のロック受部28を係止して蓋体2をロックし得るようになっている。尚、蓋体2を閉蓋した状態では、該蓋体2の外周縁部下面が容器本体1の開口縁部上に当接して該容器本体1の開口部10を閉塞し、容器本体1内を保温し得るようになっている。
【0017】容器本体1の肩部材13には、ヒンジ受部15の位置から左右に角度90°づつ変位した各位置に、図2に示すように一対の本体把手14,14が設けられている。又、蓋体2のリング体23にも各本体把手14,14と対応する位置にそれぞれ蓋把手25,25が設けられている。
【0018】調理鍋Bは、金属製の鍋本体3と、該鍋本体3の開口部30を閉塞する鍋蓋4とを有している。鍋蓋4の外周部は、鍋本体3の開口縁部31上に載置されている。鍋本体3の外周上端部には、図2に示すように対向する位置に一対の鍋把手32,32が取付けられている。この各鍋把手32,32の掴み部は、容器本体1の開口縁部の高さよりやや上方まで延出されており、調理鍋Bを容器本体1内に出し入れし易くしている。尚、蓋体2の下面には、鍋把手32,32に対応する位置にそれぞれ鍋把手収容用の空所29,29が形成されている。
【0019】鍋蓋4は、ガラス製の鍋蓋本体41の上面中央部にツマミ42を取付けて形成している。ツマミ42は、上部が大径(大径部42a)で下部が小径の逆円錐台状に形成されている。尚、ツマミ42は、鍋蓋本体41の中央部に形成した穴を通してビス43で固定している。鍋蓋本体41の外周部には、蓋パッキン44が取付けられている。この蓋パッキン44には、鍋蓋4を閉じたときに鍋本体3の開口縁部31内に小深さだけ差し込まれる環状垂下片44aが形成されており、鍋蓋4を閉じた状態で該鍋蓋4が水平方向に位置ずれしないようにしている。又、この実施例では、図1に示すように鍋蓋本体41に圧力弁48が取付けられている。この圧力弁48は、この調理鍋Bで加熱調理するときに調理鍋内で昇圧する圧力を外部に逃がして、鍋蓋4の外周縁部からスプラッシュ(噴きこぼれ)が起きないようにするためのものである。尚、この圧力弁48は、耐熱性材料で形成されており、調理鍋内が所定圧力以上になると、該調理鍋内の圧力で圧力弁48の弁板48aを押上げて開弁させるようになっている。
【0020】蓋体2の底板22には、鍋蓋4のツマミ42が対応する位置に上方に向けて凹入する凹入部26が形成されている。又、この凹入部26には、下向きに突出する突起27が一体形成されている。
【0021】上記凹入部26の突起27には、調理鍋Bを容器本体1内に収容し且つ蓋体2を閉蓋した状態において鍋蓋4を位置保持させるための位置保持手段5が設けられている。この第1実施例では、位置保持手段5として鍋蓋4のツマミ42を下方に付勢する付勢手段51が採用されている。この付勢手段51は、シリコンゴム等の弾性材で袋状に形成されていて、突起27を下方から被せるようにして取付けられている。又、この付勢手段51には、その上部側に環状のバネ部51を設け、且つ下端部にツマミ42の上面を押圧する押圧部53を有している。この押圧部53は、突起27に対して図3に示す符号Hの高さ(例えば2〜4mm程度の高さ)範囲だけ上下に移動し得るようになっている。
【0022】そして、この付勢手段51は、その自由状態(蓋体2の開放状態)では図3に示すようにバネ部52の弾発力によって押圧部53が下動しており、他方、容器本体1内に鍋蓋4つきの調理鍋Bを収容し且つ蓋体2を閉蓋したときには、図1又は図2に示すように該押圧部53の下面がツマミ42の上面に当接して上動するようになっている。このように、蓋体2の閉蓋状態では、押圧部53の下面がツマミ42の上面で上方に押されてバネ部52が圧縮し、そのバネ部52の弾発力で押圧部53を介してツマミ42を下方に付勢するようになる。従って、蓋体2の閉蓋状態では、鍋蓋4の外周部下面(蓋パッキン44)が鍋本体3の開口縁部31に圧接して、該鍋蓋4が位置保持されるようになる。尚、このとき蓋パッキン44の環状垂下片44aが鍋本体3の開口縁部31内に差し込まれているので、鍋蓋4が水平方向に位置ずれすることがなく、該鍋蓋4が安定姿勢で位置保持される。
【0023】この第1実施例の保温器具は、次のようにして使用される。即ち、調理鍋Bに調理材料(例えばシチュー材料)を入れて通常の加熱調理をする。このとき加熱されることによって調理鍋B内の空所の圧力が上昇するが、所定圧力以上になると、鍋蓋本体41に設けている圧力弁48が開いてその圧力を外部に逃がすようになり、鍋本体3の開口縁部31からのスプラッシュ(噴きこぼれ)が起こらない。その調理後、内容物が熱いうちに調理鍋Bごと容器本体1内に収容し、蓋体2を閉じてロック部材17で蓋体2をロックする。この状態では、蓋体2の下面に設けた付勢手段51で鍋蓋4のツマミ42上面を下方に押圧しており、鍋蓋4が安定姿勢で位置保持されている。
【0024】ところで、この実施例の保温器具は、家庭内でも使用されるが、内容物(加熱調理食品)入りの調理鍋Bを保温容器A内で保温した状態で、屋外に携帯することがある。例えば、ピクニックに出かけるときには、内容物を保温した状態で、この保温器具を自動車に積み込んで運搬する場合がある。このように、内容物入りの保温器具を自動車に積み込んで運搬するときには、自動車の揺れや振動によって鍋本体3内の内容物(例えばシチューのような液状食品)が揺動するが、鍋蓋4が付勢手段51で下方に付勢されているので、鍋蓋4が鍋本体3に対してガタつかなくなる。このように、鍋蓋4がガタつかなくなると、鍋蓋4の外周縁部で鍋本体3の開口縁部31を常時密閉するようになり、鍋本体3内で内容物(例えばシチューのような液状食品)が揺れても、該内容物が鍋本体3内からこぼれ出ることがなくなる。又、この第1実施例では、付勢手段51は鍋蓋4の上面中央部に設けたツマミ42を下方に押圧するようになっているので、付勢部分が1箇所であっても鍋蓋4の外周縁部を平均して付勢することができ、1つの付勢手段で鍋蓋4を効率よく密閉できる。
【0025】又、内容物入りの保温器具を携帯する際には、図4又は図5に示すような携帯具C,Dを使用すると便利である。
【0026】図4の携帯具Cは、容器本体1を収容する収容部70と、逆U形の2本の吊り紐72,72と、蓋体2の上面を押える押え部73と、該押え部73の先端側をロックするロック装置74とを有している。収容部70は、図4の実施例では、容器本体1の胴部外周を囲繞する環状ベルト71と各吊り紐72,72とで形成している。即ち、この収容部70は、各吊り紐72,72を、その各下部側を容器本体1の底面において十字状に交差・固定させて該容器本体1を下方から支持し、且つ該吊り紐の各下部側で容器本体1の側周面を等間隔(角度90°間隔)でガードしているとともに、該各吊り紐72,72と環状ベルト71との交点(合計4箇所)をそれぞれ固定して形成している。押え部73は、図4の実施例では2本の押えバンドが採用されている。各押えバンド73,73は、その一端を図4の裏面側において環状ベルト71に固定し、他端側(図4の手前側)にロック装置74の係止片75を取付けている。又、ロック装置74の係止受部76は、図示状態の手前側において環状ベルト71に固定している。この図4に示す携帯具Cは、環状ベルト71及び各吊り紐72,72で囲まれる収容部70内に保温器具の容器本体1部分を収容し、押え部(押えバンド)73で蓋体2を押え、ロック装置74をロツクして使用される。そして、携帯時には、各吊り紐72,72の上端部を握って吊持すれば安定した状態で持ち運びできる。又、ロック装置74の係止片75を外せば押え部(押えバンド)73の押えを解除でき、そのまま蓋体2を開閉操作できる。尚、このように押え部73を有した携帯具C内に保温器具を収容するようにしたものでは、押え部73で蓋体2の上面を押えることができるので、蓋体2が容器本体1上に単に載置された構造のもの(枢着されていない構造のもの)であっても、該蓋体2が安定した状態で携帯できる。
【0027】又、図5に示す携帯具Dは、容器本体1の底面及び側周面を被覆する袋体81(収容部80となる)と、逆U形の2本の吊り紐82,82と、蓋体2の上面を被覆するフード(押え部となる)83と、該フード83の先端部をロックするロック装置84とを有している。各吊り紐82,82は袋体81に固定している。フード83の一端は図5の裏面側において袋体81に固定している。ロック装置84は、フード83の先端部に取付けた係止片85を、袋体81の手前側面に取付けた係止受部86にロックすることによってフード83を被覆状態で固定するものである。この図5の携帯具Dでは、袋体81内に保温器具の容器本体1を収容し、フード83で蓋体2の上面を被覆した状態でロック装置84をロックして使用される。そして、携帯時には、各吊り紐82,82の上端部に設けた各把手部82a,82aを握って吊持すればよい。又、この携帯具Dも、ロック装置84の係止片85を外せばそのまま蓋体2を開閉操作できる。尚、この図5の実施例の携帯具Dも図4の携帯具Cと同様の作用が得られる。
【0028】図6には、本願の第2実施例の保温器具が示されている。この第2実施例では、位置保持手段5となる付勢手段51Aを鍋蓋4のツマミ42側に取付けている。即ち、この第2実施例で使用されている付勢手段51Aは、シリコンゴム等の弾性材で、ツマミ42の上面及び側周面を被覆する袋状に形成されている。又、この付勢手段51Aの下部には、パッキン部55が一体成形されており、該パッキン部55をツマミ42と鍋蓋本体41との間で挟持して、この付勢手段51Aを固定している。さらに、付勢手段51Aの上面には、上下に弾性を有する環状の突起部56が一体成形されている。そして、この第2実施例の保温器具では、調理鍋を保温容器内に収容した状態で蓋体2を閉じると、蓋体2の底板22下面(凹入部26の下面)が付勢手段51Aの突起部56を下方に押圧して、鍋蓋4の外周縁部を鍋本体3の開口縁部31(図1参照)上に圧接させるようになっている。従って、この第2実施例の保温器具でも、第1実施例と同様の作用が得られる。尚、図6に図示する部分以外の省略部分は、図1及び図2と同様に構成されている。
【0029】図7には、本願の第3実施例の保温器具が示されている。この第3実施例では、位置保持手段5として、ツマミ42の外側部に嵌脱自在に嵌合する嵌合手段61が採用されている。この第3実施例で使用されている嵌合手段61は、シリコンゴム等の弾性材で形成されていて、その上部を蓋体底板22の凹入部26部分に形成した穴26aの口縁に無理嵌めによって取付けている。又、嵌合手段61には、その下部側にツマミ42の大径部42aを囲繞する環状の垂下壁62が一体成形されている。この垂下壁62は、内外方向に弾性を有している。又、この垂下壁62の下端内周面には、内向きの環状小突部63が形成されている。この環状小突部63の内径は、ツマミ42の大径部42aの外径より若干小径となっている。そして、この第3実施例の保温器具では、鍋蓋4のツマミ42の大径部42aを嵌合手段61の垂下壁62内に押し込むと、該垂下壁62が外側に広がり、環状小突部63がツマミの大径部42aを乗り越えた後、垂下壁62が内方に弾性復帰して嵌合される。この嵌合状態では、垂下壁62の内面でツマミ大径部42aの外周面を保持するとともに、環状小突部63がツマミ大径部42aの下方に係止されるようになる。従って、ツマミ42を嵌合手段61に嵌合させた状態で両蓋(2,4)を閉じると、鍋蓋4のツマミ42が嵌合手段61に保持されているので、該鍋蓋4が水平方向に位置ずれすることがなく、保温器具全体が揺れたり振動したりしても、鍋蓋4が鍋本体3(図1又は図2参照)に対してガタつくことがない。又、蓋体2を開閉すると、鍋蓋4も一緒に開閉されるので、鍋蓋4を特別に開閉操作する必要がなくなり、しかも開放時に鍋蓋4の置き場所が不要となる。又、鍋蓋4は、ツマミ42を嵌合手段61の垂下壁62部分から外せば蓋体2から分離させることができる。尚、図6に図示する部分以外の省略部分は、図1及び図2と同様に構成されている。
【0030】図8に示す第4実施例の保温器具では、位置保持手段5となる嵌合手段61Aを蓋体底板22の凹入部26の上壁部分に一体成形している。この第4実施例の嵌合手段61Aは、凹入部26の上壁部分に、鍋蓋ツマミ42の側周面に嵌合する複数(例えば角度90°間隔で4つ)の下向き垂下片64,64・・を一体成形している。この各下向き垂下片64,64・・は、それぞれ内外方向に若干の弾性を有している。又、各下向き垂下片64,64・・の下端内面には、それぞれ内方に向けて小突部65が形成されている。この対向する各小突部65,65間の間隔は、ツマミ大径部42aの外径よりやや小間隔となっている。そして、この第4実施例の保温器具では、鍋蓋4のツマミ42の大径部42aを嵌合手段61Aの各下向き垂下片64,64・・内に押し込むと、該各垂下片64が外側に広がり、各小突部65,65・・がツマミの大径部42aを乗り越えた後、各垂下片64,64・・が内方に弾性復帰して嵌合される。この嵌合状態では、各垂下片64,64・・の内面でツマミ大径部42aの外周面を保持するとともに、各小突部65,65・・がツマミ大径部42aの下方に係止されるようになる。従って、この第4実施例の嵌合手段61Aも該3実施例の場合と同様に作用する。又、この第4実施例の嵌合手段61Aでは、蓋体底板22に一体成形しているので、第3実施例のように特別に嵌合部材が不要となって部材点数を少なくできる。尚、図6に図示する部分以外の省略部分は、図1及び図2と同様に構成されている。
【0031】又、本願では、上記各実施例の構造のほかに、次のように実施することもできる。即ち、第1実施例(図1〜図3)又は第2実施例(図6)の変形例として、付勢手段の設置位置を、蓋体下面の中央部あるいは鍋蓋上面の中央部に変えて、それらの中心から外方に変位した位置に設けてもよい。又、この場合は、付勢手段を1本の環状に形成してもよいし、あるいは該付勢手段を水平円周方向に複数個の点状に設置してもよい。又、他の実施例では、図7又は図8の各実施例において、嵌合手段61,61Aで鍋蓋ツマミ42部分を側周部から嵌合する構成に加えて、例えば図3又は図6の付勢手段51,51Aの構成を付加して、鍋蓋4を下方に付勢するようにしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本願発明の第1実施例にかかる保温器具の縦断面図である。
【図2】図1のII−II断面図である。
【図3】図1の保温器具の作用を示す一部拡大断面図である。
【図4】本願実施例の保温器具を携帯具に収容した状態の側面図である。
【図5】本願実施例の保温器具を別の携帯具に収容した状態の側面図である。
【図6】本願発明の第2実施例にかかる保温器具の一部拡大縦断面図である。
【図7】本願発明の第3実施例にかかる保温器具の一部拡大縦断面図である。
【図8】本願発明の第4実施例にかかる保温器具の一部拡大縦断面図である。
【符号の説明】
Aは保温容器、Bは調理鍋、C,Dは携帯具、1は容器本体、2は蓋体、3は鍋本体、4は鍋蓋、5は位置保持手段、10は容器本体の開口部、22は蓋体の底板、26は凹入部、31は鍋本体の開口縁部、41は鍋蓋本体、42はツマミ、42aはツマミの大径部、51,51Aは付勢手段、61,61Aは嵌合手段、70,80は収容部、72,82は吊り紐、73,83は押え部である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 断熱構造を有する容器本体(1)の開口部(10)を断熱構造を有する蓋体(2)で開閉し得るようにした保温容器(A)と、該保温容器(A)内に出し入れ自在に収容され且つ鍋本体(3)の開口部(30)の縁部(31)に鍋蓋(4)を載置した調理鍋(B)とで構成される保温器具であって、前記鍋蓋(4)をガラス製とし且つその中央部にはツマミ(42)を取り付けるとともに、前記調理鍋(B)を容器本体(1)内に収容し且つ蓋体(2)を閉蓋した状態において前記ツマミ(42)を前記蓋体(2)により移動規制するように構成したことを特徴とする保温器具。
【請求項2】 断熱構造を有する容器本体(1)の開口部(10)を断熱構造を有する蓋体(2)で開閉し得るようにした保温容器(A)と、該保温容器(A)内に出し入れ自在に収容され且つ鍋本体(3)の開口部(30)の縁部(31)に鍋蓋(4)を載置した調理鍋(B)とで構成される保温器具であって、前記鍋蓋(4)の中央部にはツマミ(42)を取り付けるとともに、前記調理鍋(B)を容器本体(1)内に収容し且つ蓋体(2)を閉蓋した状態において前記ツマミ(42)を前記蓋体(2)に設けた弾性部材(51)により移動規制するように構成したことを特徴とする保温器具。
【請求項3】 前記蓋体(2)の面中央部には、該蓋体(2)の閉蓋時において前記ツマミ(42)を臨ませる凹入部(26)を形成したことを特徴とする前記請求項1および請求項2のいずれか一項記載の保温器具。

【図1】
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【図3】
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【図6】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図8】
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【特許番号】第2833518号
【登録日】平成10年(1998)10月2日
【発行日】平成10年(1998)12月9日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平7−93991
【出願日】平成7年(1995)4月19日
【公開番号】特開平8−280550
【公開日】平成8年(1996)10月29日
【審査請求日】平成8年(1996)2月22日
【出願人】(000003702)タイガー魔法瓶株式会社 (509)
【参考文献】
【文献】実開 平3−34438(JP,U)
【文献】実開 平6−36535(JP,U)