説明

保護帽

【課題】着用者の顔面のほぼ総てを覆うシールド部材を帽体に設けた保護帽において、大型化や質量が増加することを極力抑制することができる保護帽を提供する。
【解決手段】耳を覆う耳部7が設けられていると共に、前側のみを大きく形成した椀状の帽体3と、帽体3の前側の内面に沿った曲面を備えた板状に形成され帽体3の耳部7に形成されたガイド部13に係合する係合部11を備え、この係合部11がガイド部13に係合することにより、係合部11を中心として、帽体3の前側の内部に収納される収納位置P1と帽体3の着用者の顔面のほぼ総てを覆う被覆位置P3との間で回動するシールド板5とを有する保護帽1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護帽に係り、特に、着用者の顔面を覆うシールド板が設けられているものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、住宅の建築作業中に、釘打機で釘が跳ね返り作業者の目に刺さる等の事故対策として、作業者の目(顔の上部)を保護するシールド(シールド板)付き保護帽(ヘルメット)が知られている。シールド板の取り付け方式として、保護帽の帽体の外部に取り付ける方式と、保護帽の帽体の内部に収納自在に取り付ける方式とがあるが、外部取り付け式では、シールド板の設置忘れや作業の邪魔になるので、シールド板の不使用時にシールド板が帽体の内部に収納される内部取り付け式が好まれている。
【0003】
内部取り付け式の保護帽として、たとえば、特許文献1に記載の保護帽を掲げることができる。
【0004】
特許文献1に記載の保護帽は、ヘルメットの帽体の前頭部の表面(外面)に弧状のガイド部を設けて、顔面シールド(シールド板)のほぼ中央部に設けたスライド部材で、シールド部材をガイドして移動するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−082518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、電気機器のメンテナンス等においては、電気機器からごく僅かな確率でスパークが発生することがあり、着用者の顔全体をシールド板で覆って保護する必要がある。上記特許文献1に記載の保護帽を着用すれば、シールド板で、着用者の顔全体をほぼ覆うことができる。
【0007】
しかし、上記特許文献1に記載の保護帽では、シールド板で着用者の顔全体を覆う場合、帽体の外部に長いガイド部を設ける等の構成を採用しなければならず、これにより保護帽が大型化すると共に、保護帽の質量が増加してしまうという問題がある。
【0008】
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、着用者の顔面のほぼ総てを覆うシールド部材を帽体に設けた保護帽において、大型化や質量が増加することを極力抑制することができる保護帽を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に記載の発明は、耳を覆う耳部が設けられていると共に、前側のみを大きく形成した椀状の帽体と、透明体もしくは半透明体に形成され、前記帽体の前側の内面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記帽体の前側の内部に収納される収納位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ総てを覆う被覆位置との間で回動するシールド板と を有する保護帽である。
【0010】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の保護帽において、前記シールド板の回動中心の位置を調整自在に構成してある保護帽である。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載の保護帽において、前記帽体の前側の内部で前記帽体に一体的に設けられた内側部材を備え、前記シールド板は、前記帽体と前記内側部材とで形成された空間内に入り込んで、前記帽体内に収納されるように構成されている保護帽である。
【0012】
請求項4に記載の発明は、耳を覆う耳部が設けられている椀状の帽体と、透明体もしくは半透明体に形成され、前記帽体の前側の外面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記帽体の前側の外部に押し上げられた押し上げ位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ上半分を覆う被覆位置との間で回動する第1のシールド板と、前記帽体の前側の外面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記第1のシールド板の外側に位置して、前記押し上げ位置に位置している第1のシールド部材を覆う押し上げ位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ下半分を覆う被覆位置との間で回動する第2のシールド板とを有する保護帽である。
【0013】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保護帽において、前記シールド部材は、本体部と庇部とを備えて構成されており、前記本体部が、球状に湾曲した板状に形成されており、前記庇部は、前記本体部の下方で本体部とは反対側に曲がって突出している保護帽である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、着用者の顔面のほぼ総てを覆うシールド部材を帽体に設けた保護帽において、大型化や質量が増加することを極力抑制することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る保護帽1の概略構成を示す図である。
【図2】保護帽1の帽体3と汎用の保護帽の帽体200との外形の違いを示す図である。
【図3】保護帽1の断面図である。
【図4】着用者が保護帽1を被った状態を示す図である。
【図5】内側部材21の概略構成を示す斜視図である。
【図6】図1におけるVI−VI断面図である。
【図7】保護帽1の変形例を示す図である。
【図8】図3で示す保護帽3においてシールド板5のみを取り出した図である。
【図9】図8におけるIX−IX断面を示す図である。
【図10】シールド板5の断面を示す図であって図9に対応した図である。
【図11】本発明の第2の実施形態に係る保護帽51の概略構成を示す図である。
【図12】保護帽51の概略構成を示す図である。
【図13】図12のX部の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[第1の実施形態]
図1は、本発明の第1の実施形態に係る保護帽1の概略構成を示す図であり、図2は、保護帽1の帽体3と汎用の保護帽の帽体200との外形の違いを示す図であり、図3は、保護帽1の断面図(保護帽1の中心を通り保護帽1の前後上下方向に展開する平面による断面図)である。
【0017】
図4は、着用者が保護帽1を被った状態を示す図である。図4の(a)(b)は、シールド板5を収納位置P1に位置させた状態を示しており、図4の(c)(d)は、シールド板5を被覆位置P3に位置させた状態を示している。
【0018】
保護帽1は、帽体3とシールド板(シールド部材;面体)5とを備えて構成されている。帽体3、シールド板5は、左右対称形成されている。帽体3には、着用者の耳を覆う耳部7が設けられている。また、帽体3は、汎用の帽体200に対して、帽体3の前側のみが外側に大きくなるように形成した椀状に形成されている。
【0019】
ここで、汎用の帽体200とは、シールド板を備えておらず帽体と内装体とで構成された帽体であり、厚生労働省の規格(保護帽の規格)に適合させるべく、たとえば必要最小限後の大きさに形成された保護帽の帽体である。汎用の帽体として、前後方向の長さが260mm〜280mm程度のMPヘルメット等の帽体200(図2参照)を掲げることができる。
【0020】
帽体3は、半球殻状の形状のものに、板状に形成されている耳部7を付加した椀状に形成されている。耳部7の厚さと帽体3の耳部以外の箇所の厚さとはお互いがほぼ一致している。また、耳部7の厚さ方向は帽体3の左右方向(図1では紙面に直交する方向)になっている。
【0021】
ここで、半球殻とは、所定の半径の第1の球から、この第1の球の半径よりも僅かに小さい半径で前記第1の球と中心が一致する第2の球を取り除いた形状の立体を、前記各球の中心もしくはこの近傍を通る平面で2分割したときに形成される一方の立体である。帽体3は、半球殻状に形成されているのであって、完全な半球殻に形成されているわけではない。すなわち、帽体3は、着用者の頭部の形状に合うようにするために、曲率半径が適宜変化している形状に形成されている。
【0022】
また、帽体3の開口部(淵;下端)9も、完全な円形ではなく、着用者の頭部の形状に合うようにするためや耳部7を設けたことにより、曲率半径等が適宜変化している円形状に形成されている。
【0023】
帽体3が椀状に形成されていることにより、帽体3の外面および内面は、急な曲がり部分が存在しない滑らかな球面状になっている。さらに、帽体3が半球殻状のものに耳部7を設けた椀状に形成されていることにより、直立している着用者が保護帽1を被った場合、帽体3の前後方向の中央部で、帽体3の耳部7が下側に突出しており、この耳部7で着用者の耳の総てもしくは一部が覆われるようになっている。
【0024】
シールド板5は、樹脂等の透明な部材で構成されており、着用者の顔面の総てを覆うことができる大きさに形成されている。また、シールド板5は、帽体3の前側の内面(凹な球面状の曲面)に沿った球面状の曲面を備えた板状(湾曲した板状;1/4程度の球殻状)に形成されており、左右方向の両端部に係合部11が設けられている。帽体3の耳部7にはガイド部13が形成されており、シールド板5の係合部11が、ガイド部13に係合することによって、収納位置P1と被覆位置P3との間で、係合部11の中心軸C1を中心にして、シールド板5が円弧状の軌跡を描いて回動するようになっている。軸C1は、耳部7の中央を通って、保護帽1の左右方向(図1の紙面に直交する方向)に延びている軸である。
【0025】
ここで、収納位置P1は、シールド板5が帽体3の前側内部に収納されたときの位置であり、被覆位置P3は、シールド板5が帽体3の着用者の顔面(頭部の前面)のほぼ総てを覆う位置である。
【0026】
ガイド部13は、たとえば、帽体3の耳部7を貫通する円形の貫通孔15で構成されており、係合部11は、シールド板5の側方(幅方向の両側)の下部でシールド板5の外側に僅かに突出している円柱状の突起(外径が貫通孔よりも僅かに小さい突起)17で構成されている。そして、各突起17が各貫通孔15に嵌合していることにより(図1におけるVI−VI断面を示す図である図6参照)、シールド板5が前記回動をするようになっている。
【0027】
収納位置P1にシールド板5が位置している状態について詳しく説明すると、この状態で、シールド板5が帽体3の内部に完全に収容されているわけではなく、シールド板5の下端部(庇19が設けられている下端部)とこの近傍の部位が、帽体3の前側で帽体3の下端部(帽体3前側の開口部)9から下方に突出している。ただし、この下方に突出している部位が、着用者の邪魔になることはなく、着用者は、シールド板5の存在をその視界で意識することなく保護帽1を被ることができるようになっている。
【0028】
庇(庇部)19は、シールド板5の下端部で反転している。すなわち、庇19は、逆方向(着用者の顔面から離れる方向)に曲がって延出している。これにより、飛来物がシールド板(被覆位置P3にあるシールド板)5にあたっても、飛来物がシールド板5の表面を滑って、着用者の体に接触する事態を回避することができる。
【0029】
また、シールド板5の上端部は、帽体3の頂上部付近に位置している。なお、シールド板5の庇19を削除し、収納位置P1にシールド板5が位置している状態において、シールド板5が帽体3の内部に完全に収容される構成であってもよい。
【0030】
被覆位置P3にシールド板5が位置している状態では、シールド板5の下端部が、着用者の顎よりも下側に位置して、シールド板5が着用者の顔面のほぼ総てを覆っている(図4(c)(d)参照)。すなわち、正面から見た場合、シールド板5によって、着用者の顔面の総てが覆われている。なお、シールド板5の上端部は、帽体3の下端部(帽体3の前側の淵)の近傍で帽体3の内部に位置している。
【0031】
また、保護帽1には、左右対称に形成されている内側部材21が設けられている。内側部材21は、帽体3の前側内部で帽体3に一体的に設けられている。
【0032】
内側部材21は、図3や図5(内側部材21の概略構成を示す斜視図)で示すように、中央部位23と起立部位25と突出部位27とを備えて構成されている。中央部位23は、帽体3の前側内面(凹な球面状に形成された帽体3内側の曲面)に沿った球面状の曲面を備えた板状(湾曲した板状;1/4程度のサイズの球殻状)に形成されている。
【0033】
起立部位25は、板状で「U」字状に形成されており、中央部位23の後端部から、中央部位23の外方向に(凸方向に)所定の高さで起立している。突出部位27は、板状で「U」字状に形成されており、起立部位25から、後方に所定の幅で突き出ている。
【0034】
そして、突出部位27の厚さ方向の一方の面(外側の凸な面)が帽体3の内面(凹な面)に係合(面接触)することにより、内側部材21が、帽体3の前側内部で帽体3に一体的に設けられている。なお、突出部位27が面接触している帽体3内部の面は、この幅が帽体3の前後方向になるようにして、帽体3の前後方向の中央部で、帽体3の左側から始まり帽体3の頂上部を通って帽体の右側まで、「U」字状に延びている。
【0035】
内側部材21を帽体3に設置したときには、保護帽1の前側では、外側に帽体3、内側に内側部材21が位置した二重構造になっており、シールド板5は、帽体3と内側部材21とで形成された空間内(帽体3と中央部位23および起立部位25とで形成された空間内)に入り込んで、収納位置P1に位置し、帽体3内に収納されるようになっている。
【0036】
内側部材21を帽体3に設置したとき、図3で示すように、内側部材21における円弧状の中央部位23の中心と、円弧状のシールド板5の中心と、円弧状の帽体3の中心と、シールド板5の回動中心C1とは、お互いがほぼ一致している。また、帽体3の曲率半径がシールド板5の曲率半径よりも大きくなっており、シールド板5の曲率半径が内側部材21の中央部位23の曲率半径よりも大きくなっている。
【0037】
また、保護帽1には、シールド板5を保持する保持手段29が設けられている。保持手段29は、シールド板5が収納位置P1や被覆位置P3に位置しているときに、シールド板5が帽体3に対して容易に回動しないように、シールド板5を保持する手段である。
【0038】
保持手段29は、たとえば、図3に示すような各突起31,33,35,37を備えて構成されている。突起31は、半球状に形成されており、シールド板5の前後方向では後端部で、シールド板5の幅方向では中央部で、シールド板5の内面(凹な面)に一体的に設けられている。突起33は、半球状に形成されており、内側部材21の前後方向では中央部位23の後端部の近傍で、内側部材21の幅方向では中央部で、内側部材21の外面(凸な面)に一体的に設けられている。突起35は、1/4の球状に形成されており、1つの平面35Aが内側部材21の後方(上方)を向くようにして、内側部材21の前後方向では中央部位23の前端部で、内側部材21の幅方向では中央部で、内側部材21の外面(凸な面)に一体的に設けられている。突起35の高さは、他の突起31,33,37の高さよりも高くなっている。突起37は、半球状に形成されており、内側部材21の前後方向では突起35よりも僅かに後方(上方)で、内側部材21の幅方向では中央部で、内側部材21の外面(凸な面)に一体的に設けられている。
【0039】
そして、図3で示すように、シールド板5が収納位置P1に位置している状態では、シールド板5の突起31が、内側部材21の突起33と内側部材21の起立部位25とで挟まれて、シールド板5が容易には回動しないようになっている。収納位置P1に位置しているシールド板5を被覆位置P3に位置させるべく、シールド板5を図3に示す矢印の方向に回動させると、突起31が突起33を乗り越えてシールド板5が回動し突起37を乗り越えたときにシールド板5が被覆位置P3に位置すると共に、突起31が突起37と突起35とで挟まれて、シールド板5が容易には回動しないようになっている。
【0040】
なお、突起35が平面35Aを備えており、また、突起35高さが高くなっていることにより、被覆位置P3に位置しているシールド板5(突起37と突起35とで挟まれている突起31)は、それ以上、図3に示す矢印の方向には、回動しないようになっている。
【0041】
ところで、保護帽1には、図示しない内装体(たとえばハンモック)が設けられおり、帽体3や内側部材21には、ハンモックを係止するための複数の係止部39が設けられている。各係止部39のうちで後側に位置している各係止部39Aは、帽体3の内面に一体的に設けられており、各係止部39のうちで前側に位置している各係止部39Bは、内側部材21の内面に一体的に設けられている。
【0042】
ここで、シールド板5についてさらに詳しく説明する。
【0043】
図8は、図3で示す保護帽3においてシールド板5のみを取り出した図であり、図9は、図8におけるIX−IX断面を示す図である。
【0044】
シールド板5は、前述したように、着用者の頭部を保護する帽体3に設置されて着用者の顔面のたとえばほぼ総てを覆うものであり、透明体もしくは半透明体で湾曲した板状に形成されている。
【0045】
シールド板5は、厚さ方向の一方の側が凹状で厚さ方向の他方の側が凸状である湾曲した板状に形成されている。そして、中央部から周辺部に向かうにしたがって、厚さが徐々に薄くなっている(図15、図16参照)。なお、シールド板5は、たとえば、アクリルやポリカーボネイト等の樹脂で構成されており、射出成形で成形されている。また、シールド板5は、ANSI規格に応じて、1.6mm〜2.0mm程度の厚さで形成されており、高速衝撃試験を施しても割れないようになっている。
【0046】
シールド板5が湾曲した板状に形成されていることにより、着用者の顔面側であるシールド板5の内側の面(厚さ方向の一方の面)が凹状に形成されており、厚さ方向の他方の面である外側の面が凸状に形成されている。また、シールド板5は、左右方向の曲率半径が上下方向の曲率半径よりも小さく形成されており、左右方向における厚さの変化の割合が、上下方向における厚さの変化の割合よりも大きく形成されている(図8、図9参照)。
【0047】
さらに、シールド板5は、本体部20と庇部19とを備えて構成されており、本体部20が、湾曲した板状に形成されている。シールド板5の本体部20の凸面(凹面)は、球状の3次曲面に定形状に形成されている。
【0048】
着用者が保護帽1を被ってシールド板4で顔を覆ったとき、庇部19は、本体部20の下方で本体部20とは反対側に曲がって突出している。
【0049】
より詳しく説明すると、図4(c)で示すように、直立している着用者が帽体3を被りシールド板5で着用者の顔面を覆ったとき、庇部19は、この上端(本体部20側の端)から下端に向かうにしたがって、着用者の顔面から離れる方向(前方)に突出している。
【0050】
次に、保護帽1を着用してシールド板5を出入りさせる動作について説明する。
【0051】
まず、シールド板5が収納位置P1に位置している状態で、着用者が保護帽1を被る。シールド板5を被覆位置P3に位置させて作業をする必要がある場合には、シールド板5の下端部(たとえば庇19)を下方向に引っ張れば、シールド板5が回動し、シールド板5が被覆位置P3に位置する。
【0052】
一方、被覆位置P3に位置しているシールド板5を、収納位置P1に位置させる場合には、シールド板5を上方に押すと、シールド板5が回動し、シールド板5が収納位置P1に位置する。
【0053】
ところで、保護帽1において、シールド板5の回動中心C1の位置を調整自在に構成してもよい。すなわち、図7に示すように、貫通孔15と同様な複数の貫通孔15a〜15iを耳部7に設け、これらの各貫通孔15a〜15iのうちの1つの貫通孔(実際には、左右方向で2つの貫通孔)を選択し、この選択した貫通孔(たとえば、貫通孔15b)に、シールド板5の突起17を嵌合させるようにしてもよい。なお、各貫通孔15a〜15iは、お互いが僅かに離れており、たとえば、貫通孔15aを中心とした円周をほぼ等分配する位置に、各貫通孔15b〜15iが設けられている。
【0054】
保護帽1によれば、帽体3の前側のみを大きくしてあると共に、シールド板5が軸C1を中心にして円弧状の軌跡を描いて移動するようになっているので、着用者の顔面のほぼ総てを覆えるようにシールド板を大きくしても、シールド板5を帽体3の内部に収納することができると共に、帽体3や保護帽1の全体が大型化し質量が増加することを、極力抑制することができる。また、帽体3が椀状に形成されているので、帽体3の外側(凸側)や内側の面が滑らかに曲がっており、帽体3の剛性が高くなっている。
【0055】
また、保護帽1において、シールド板5の回動中心C1の位置を調整自在に構成すれば、帽体3に対するシールド板5の位置(特に、被覆位置P3におけるシールド板5の位置)を、着用者の頭や顔の形態に応じて調節することができ、着用者がうっとおしさを感じにくくなり、保護帽の使い勝手が向上する。
【0056】
また、保護帽1によれば、シールド板5が、帽体3と中央部位23および起立部位25とで形成される空間内に入り込んで、帽体3内に収納されるように構成されているので、内装体(ハンモック)を係止する係止部39Bを、シールド板5との干渉を避けて、設けることが容易になっている。
【0057】
さらに、保護帽1によれば、シールド板5が、この中央部から周辺部に向かうにしたがって、厚さが徐々に薄くなっている構成であるので、着用者がシールド板5を介して正面を見た場合における光路長(シールド板内における光路長)と、着用者がシールド板5を介して周辺を見た場合とにおける光路長(シールド板内における光路長)との差を小さくすることができ、着用者がシールド板5の周辺部を介してものを見たときであっても、像の歪みを極力少なくすることができる。
【0058】
すなわち、図10(シールド板5の断面を示す図であって図9に対応した図)に示すように、シールド板5における光路長L11と光路長L21との差が小さくなっており、光路長L11と光路長L31との差が小さくなっているので、像の歪みを極力少なくすることができる。
【0059】
ここで、図10に示す参照符号F0は、本実施形態に係るシールド板5の外側の面(凸面)を示しており、参照符号F1は、本実施形態に係るシールド板5の内側の面(凹面)を示している。これにより、本実施形態に係るシールド板5の厚さが、中央部から周辺部に向かうにしたがって、徐々に薄くなっている。一方、参照符号F0は、従来のシールド板の外側の面を示しており、参照符号F2は、従来のシールド板の内側の面を示しており、これにより、従来のシールド板の厚さは一定になっている。
【0060】
参照符号R1は、正面から着用者の目EYに入る光の光路を示しており、参照符号R2、R2aは、側面側(シールド板の周辺部)から着用者の目EYに入る光の光路を示しており、参照符号R3、R3aは、さらなる側面側から着用者の目EYに入る光の光路を示している。
【0061】
正面から着用者の目EYに入る光(光路R1の光)のシールド板5における光路長(本実施形態に係るシールド板5における光路長)L11と光路長(従来のシールド板における光路長)L12とは、お互いの長さが等しくなっている。
【0062】
一方、空気の屈折率に比べてシールド板の屈折率が大きいので、スネルの法則により、側面側から着用者の目EYに入る光(光路R2、R2aの光)のシールド板における光路長(従来のシールド板における光路長)L22に比べて、光路長(本実施形態に係るシールド板5における光路長)L21が短くなっており、光路長L21の長さは、光路長L11の長さとほぼ等しくなっている。同様にして、光路長L32に比べて、光路長L31が短くなっており、光路長L31の長さは、光路長L11の長さとほぼ等しくなっている。これにより、像の歪みを極力少なくすることができるようになっている。
【0063】
また、保護帽1によれば、シールド板5の左右方向における曲率半径が上下方向における曲率半径よりも小さく形成されており、左右方向における厚さの変化の割合が、上下方向における厚さの変化の割合よりも大きく形成されているので、着用者の顔面形態に合わせて、着用者がシールド板5の周辺部を介してものを見るときにおける像の歪みを極力少なくすることができる。
【0064】
すなわち、シールド板5の上下方向の曲率半径が左右方向の曲率半径よりも大きく形成されているので、着用者の顔面の形状に適合して着用者の顔面を覆うことができる。また、シールド板5の上下方向の曲率半径が左右方向の曲率半径よりも大きくなっているので、シールド板5の上下方向における厚さの変化の割合を左右方向における厚さの変化の割合より小さくして、像の歪みを極力少なくしている。
【0065】
[第2の実施形態]
図11、図12は、本発明の第2の実施形態に係る保護帽51の概略構成を示す図であり、図13は、図12のX部の拡大図である。
【0066】
第2の実施形態に係る保護帽51は、シールド板を2つに分けて、帽体53の外側に設置した点が、第1の実施形態に係る保護帽1と異なり、その他の点は、第1の実施形態に係る保護帽1とほぼ同様に構成されている。
【0067】
すなわち、保護帽51は、帽体53と、第1のシールド板55と第2のシールド板57とを備えて構成されている。
【0068】
帽体53は、耳を覆う耳部59が設けられて椀状に形成されている。さらに説明すると、椀状の帽体53は、耳部59を除けば、シールド板を備えていない汎用の帽体(前述した汎用の帽体)と同形状に形成されている。
【0069】
第1のシールド板55は、帽体53の前側の外面(凸な球面状に形成された帽体53の外側の曲面)に沿った曲面(曲率半径が帽体53の前側曲面の曲率半径よりも大きい球面状の曲面)を備えた板状(湾曲した板状;1/8程度の球殻状)に形成されている。第1のシールド板55の幅方向の両側には、たとえば円形状の貫通孔61で構成された係合部63が形成されている。この係合部63が、たとえば帽体53の幅方向の両端で帽体53の外面から突出している円柱状の突起65で構成されたガイド部67に係合している。そして、第1のシールド板55が、係合部63を中心にし押し上げ位置P5と被覆位置P7との間で、円弧状の軌跡を描いて回動するようになっている。
【0070】
なお、押し上げ位置P5は、第1のシールド板55が帽体53の前側の外部に押し上げられたときの位置であり、被覆位置P7は、第1のシールド板55が帽体53の着用者の顔面(頭部の前面)のほぼ上半分を覆う位置である。
【0071】
第2のシールド板57は、帽体53の前側の外面(凸な球面状に形成された帽体53の外側の曲面)に沿った曲面(曲率半径が第1のシールド板55の曲率半径よりも大きい球面状の曲面)を備えた板状(湾曲した板状;1/8程度の球殻状)に形成されている。第2のシールド板57の幅方向の両側にも、第1のシールド板55と同様にして貫通孔61(係合部63)が形成されており、この貫通孔61が突起65(ガイド部67)に係合している。そして、第2のシールド板57が、第1のシールド板55の外側に位置して(特に、被覆位置P11に位置しているときに、押し上げ位置P5に位置している第1のシールド板55の外側で第1のシールド板55を覆って)、係合部63を中心にし押し上げ位置P9と被覆位置P11との間で、円弧状の軌跡を描いて回動するようになっている。
【0072】
なお、押し上げ位置P9は、第2のシールド板57が帽体53(第1のシールド板55)の前側の外部に押し上げられたときの位置であり、被覆位置P11は、第2のシールド板57が帽体53の着用者の顔面(頭部の前面)のほぼ下半分を覆う位置である。
【0073】
また、被覆位置P5に位置している第1のシールド板55は、この上端部の部位が帽体53の庇60に当接して、それ以上、下方に移動しないようになっている。また、被覆位置P11に位置している第2のシールド板57は、この第2のシールド板57に設けられているストッパ69が、第1のシールド板55に設けられているストッパ71に当接して、それ以上、下方に移動しないようになっている。
【0074】
なお、ストッパ69は、第2のシールド板57の上端部で第2のシールド板57の内側に折り曲げられた折り曲げ部で形成されている。ストッパ71は、第1のシールド板55の下端部で第1のシールド板55の外側に折り曲げられた折り曲げ部で形成されている。
【0075】
保護帽51によれば、各シールド板55,57が押し上げ位置P5,P9に位置している状態では、着用者の目の部分を主に覆う第1のシールド板55の外側に第2のシールド板57が位置して第1のシールド板55を覆っているので、第1のシールド板55に傷がつきにくくなっている。すなわち、たとえば、保護帽51の着用者が各シールド板55,57を使用していないときに、不注意で第2のシールド板57を障害物にぶつけたとしても、第1のシールド板55に傷がつくことを防ぐことができる。
【0076】
これにより、保護帽51の着用者が各シールド板55,57を使用するときに、着用者の主に目の部分を覆う第1のシールド板55が傷ついておらず、良好な視界を確保することができる。
【0077】
ところで、上記各実施形態において、シールド板の位置を、内外で逆にしてもよい。すなわち、第1の実施形態において、第2の実施形態のように、帽体を汎用のものとほぼ同じにし、シールド板が帽体の外側に位置するようにしてもよいし、また、第2の実施形態において、第1の実施形態のように、帽体の前側を汎用のものよりも大きくして、シールド板が帽体の外側に設置するようにしてもよい。
【0078】
さらに、シールド板55が、シールド板5と同様にして、この中央部から周辺部に向かうにしたがって、厚さが徐々に薄くなっている構成であってもよい。
【符号の説明】
【0079】
1、51 保護帽
3、53 帽体
5、55、57 シールド板
7、59 耳部
11、63 係合部
13、67 ガイド部
19 庇部
21 内側部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
耳を覆う耳部が設けられていると共に、前側のみを大きく形成した椀状の帽体と;
透明体もしくは半透明体に形成され、前記帽体の前側の内面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記帽体の前側の内部に収納される収納位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ総てを覆う被覆位置との間で回動するシールド板と;
を有することを特徴とする保護帽。
【請求項2】
請求項1に記載の保護帽において、
前記シールド板の回動中心の位置を調整自在に構成してあることを特徴とする保護帽。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の保護帽において、
前記帽体の前側の内部で前記帽体に一体的に設けられた内側部材を備え、
前記シールド板は、前記帽体と前記内側部材とで形成された空間内に入り込んで、前記帽体内に収納されるように構成されていることを特徴とする保護帽。
【請求項4】
耳を覆う耳部が設けられている椀状の帽体と;
透明体もしくは半透明体に形成され、前記帽体の前側の外面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記帽体の前側の外部に押し上げられた押し上げ位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ上半分を覆う被覆位置との間で回動する第1のシールド板と;
前記帽体の前側の外面に沿った曲面を備えた板状に形成され、前記帽体の耳部に形成されたガイド部に係合する係合部を備え、この係合部が前記ガイド部に係合することにより、前記係合部を中心として、前記第1のシールド板の外側に位置して、前記押し上げ位置に位置している第1のシールド部材を覆う押し上げ位置と前記帽体の着用者の顔面のほぼ下半分を覆う被覆位置との間で回動する第2のシールド板と;
を有することを特徴とする保護帽。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の保護帽において、
前記シールド部材は、本体部と庇部とを備えて構成されており、
前記本体部が、球状に湾曲した板状に形成されており、
前記庇部は、前記本体部の下方で本体部とは反対側に曲がって突出していることを特徴とする保護帽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−163726(P2010−163726A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−8943(P2009−8943)
【出願日】平成21年1月19日(2009.1.19)
【出願人】(391009372)ミドリ安全株式会社 (201)
【Fターム(参考)】