説明

保護枠及び植生部材

【課題】植生植物を保護するための植生保護空間を形成する保護枠及びその保護枠を用いた植生部材を提供すること。
【解決手段】植生植物Pを保護するための植生保護空間Rを形成するための植生保護部材100は、植物Pの植生を行う植生帯10と、植生帯10上に植生保護空間Rを形成する保護枠20とからなっている。保護枠20は、前記植生帯10上に連結される脚部材21と、この脚部材21上に配置されて、植生保護空間Rを脚部材21間に形成する保護部材22と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植生植物の植生を保護する空間を形成するための保護枠及び植生部材に関する。
【背景技術】
【0002】
自然破壊防止や景観保持のため、法面や平地などの植生領域に植物を植生するには、植物を植生するための植生帯を植生領域に設置するのが一般的である。しかし、植生帯の設置場所が山奥深く入った道路の法面等であって、鹿などの野生植物が出没する地帯では、植生帯に植生された植物が野生動物に食い荒らされるといった食害被害が頻繁に起こっている。つまり、野生動物が植生領域に侵入して、生え揃ってきた植生植物の芽を食い荒らしたり、踏みつけることによって、植生植物が枯れたり、成長不良を起こしたりして、植生領域に十分な植生を行えなくなってしまうという問題があった。
【0003】
従来、このような野生動物による食害を防止するために、野生動物に対して忌避材を使用する方法が提案されていた。例えば、特許文献1では、植生基材又は植生基材を収容した植生袋に忌避機能を有するように構成している。しかし、忌避材が風雨により流亡してしまったり、植生植物自体によって無力化されてしまったりする可能性が非常に高いので、この忌避機能を長期に亘って維持することは困難であると思われる。
【0004】
これに対して、特許文献2には、草食動物による食害防止装置Aが開示されている。本願に添付の図8に示すとおり、食害防止装置Aは、食害防止植生材保護エリア1を網状体2によって覆い、この網状体2は、スペーサ3を介して保護エリア1から浮かせた状態で配置されている。即ち、網状体2で植生植物を覆うことによって、鹿などの野生動物が植物を網状体2の上から食べることを防止している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−20459号公報
【特許文献2】特開2004−73192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、鹿などの野生動物が植生領域に侵入して食害防止装置の網状体の上に乗ると、野生動物の重みによって網状体が撓むことが考えられる。この網状体の撓み部分から外に出た植生植物の一部が野生動物によって食べられてしまう虞があり、従来の食害防止装置では食害防止を十分にできないことが問題であった。さらに、網状体が撓んで、網状体と植生植物とが当接することよって、植物の幹をへし折ったり、芽がちぎれたりして、植生植物に損傷を与えるという問題があった。特に、植生帯に植物が完全に生え揃っていない状態、即ち、若芽の状態の植物は、部分的に食害にあったり、小さな損傷を受けたりしても、完全に枯れてしまう虞があり、このような野生動物による部分的な食害又は間接的な踏み付け行為によって、植生領域に植物を十分に植生させることが困難であった。
【0007】
本発明は、上記欠点を解決するためになされたものであり、その目的は、植生植物を保護するための植生保護空間を形成する保護枠及び植生部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の保護枠は、植生帯上に植生保護空間を形成するための保護枠であって、
前記植生帯上に連結される脚部材と、
この脚部材上に配置されて、前記植生保護空間を前記脚部材間に形成する保護部材と、を備えることを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の保護枠は、請求項1に記載の保護枠において、前記保護部材は、その上に野生動物が乗ってもその動物の重さによって撓まない程度の剛性を有する部材であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の植生部材は、植生を行う植生帯と、請求項1又は2に記載の保護枠とを備えてなることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載の植生部材は、前記保護枠は、前記植生帯上に複数取り付けられており、隣り合う保護枠間で折り返すことにより、当該植生部材が折り畳み可能となっていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に記載の発明によれば、保護枠が脚部材と保護部材とを有することによって、脚部材と保護部材によって区画された、植生帯に植生された植物を保護するための植生保護空間を形成する。即ち、植生保護空間内にある植物又は植物の一部を、野生動物による食害又は踏み付け等による損傷から保護することができる。特に、発芽した植生植物あるいは若芽を保護し、植生保護空間内で植生植物を成長させることができる。そして、植生保護空間より外に出た部分が食害にあったとしても、保護空間内の部分(芽、茎、根など)によって再生し得るので、植生植物が食害によって枯れないように維持することができる。
【0013】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加えて、保護部材が所定の剛性を有していることにより、保護枠に野生動物が乗って保護部材が撓み、撓んだ保護部材からはみ出た植生植物が食害にあうことを防止し、且つ、保護部材と植生植物とが当接することを防止することができる。即ち、植生植物に対する野生動物による食害及び間接的な踏み付け行為の被害を防ぐことができる。
【0014】
請求項3に記載の発明によれば、請求項1又は2の保護枠の効果を植生部材として発揮することができる。従って、植生帯に植生された植生植物を、野生動物による食害又は踏み付け等による損傷から保護することができる。さらに、先行技術(特許文献2)では、植生帯を植生領域に設置した後に食害防止装置を植生帯上に配置しているので、二度手間になり、作業時間及び工事費用がかかるという問題があった。これに対して、本発明では、予め保護枠が植生帯に固定されているので、植生帯及び保護枠を植生領域に同時に設置することができる。即ち、請求項3に係る植生部材は、植生領域への植生の施工を容易にするものである。
【0015】
請求項4に記載の発明によれば、請求項3の植生部材の効果に加えて、植生部材を折り畳み可能であるので、出荷、輸送又は保存などの必要な状況に応じて、植生部材をコンパクトな折り畳み形態に変形させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態の植生部材が植生領域に設置されている状態を示す全体斜視図。
【図2】図1の植生部材の保護枠を示し、(a)はその全体斜視図、(b)はその平面図、(c)はその側面図、(d)はその正面図。
【図3】図1の植生部材の部分拡大正面図であって、(a)は植生植物が若芽の状態を示し、(b)は植生植物が成長した状態を示す。
【図4】図1の植生部材の折り畳み状態の側面図。
【図5】(a)〜(c)は、本発明の一実施例における保護枠の部分平面図。
【図6】本発明の一実施例における保護枠の全体斜視図。
【図7】先行技術の食害防止装置を示し、(a)はその部分斜視図、(b)はその縦断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の説明において参照する各図の形状は、好適な形状寸法を説明する上での概念図又は概略図であり、寸法比率等は実際の寸法比率とは必ずしも一致しない。つまり、本発明は、図面における寸法比率に限定されるものではない。
【0018】
(実施例1)
図1は、本発明の一実施形態の植生部材100が植生領域Qに設置されている状態を示しており、複数の植生部材100(100−1、100−2、100−3)が、例えば道路などの法面Qに略平行に並んで設置されている。植生部材100は、植生植物Pが植生された長手状の植生帯10と、植生帯10上に連結(固定)された複数の保護枠20とを備える。なお、保護枠20の脚部材21底面と植生帯10表面とは、リング、針金、アンカー又は接着剤などの連結手段(図示せず)で固定されている。
【0019】
図1に示すとおり、保護枠20は長辺20aと短辺20bとを有している。そして、各保護枠20は、各保護枠20の長辺20aが植生帯10の長手方向と直交するように、植生帯10の長手方向に沿って所定間隔で整列している。しかしながら、本発明はこの実施形態に限定されない。例えば、保護枠の各辺の長さを等しく構成してもよい。また、例えば、保護枠20の長辺20bが植生帯10の長手方向と直交するように、保護枠20を植生帯10上に固定してもよい。さらに、図1では、複数の保護枠20が、斜面の接線と略直交するように植生領域Qに設置されているが、斜面の接線に沿って植生領域に設置することも可能である。即ち、保護枠を植生帯上に任意に設置するとともに、植生部材を植生領域に任意に設置することが可能である。
【0020】
そして、図1に示すように、野生動物が出没する地帯では、鹿Dのような野生動物が植生帯10に植生された植物Pを食べるために、植生部材100に対して近寄ってくる。なお、植生帯10については一般的なものが採用でき、肥料や植生植物の種子を含んだものであってもよい。また、野生動物は鹿Dに限定されず、猪、猿など草食又は雑食動物が含まれる。
【0021】
図2(a)〜(d)に示すとおり、保護枠20は、平面視及び側面視において矩形状であり、3つの長手状の脚部材21と複数の直線状の線材22a(保護部材22)とを備える。各脚部材21は、長さL及びは幅(高さ)Hを有する平板状に形成されており、それぞれ略平行に配置されている。
【0022】
図2(b)に示すとおり、複数の線材22aが各脚部材21に直交するように脚部材21間に架設されている。ここで、各線材22aは所定間隔dで略平行に並設されて、保護部材22を形成している。この間隔dは、鹿などの野生動物の身体の一部(例えば、口先、頭部、脚部など)が通過して植生植物に当接できないように十分狭く設定されている。
【0023】
図2(d)に示すとおり、保護枠20は正面視略E字形状を有し、その下端側が開放されている。後に図3で説明するように、開放端と脚部材21と保護部材22との間に植生保護空間Rを形成し、脚部材21の高さHが植生保護空間Rの高さHに対応する。高さHは保護すべき植生植物又はその生長点よりも高く設定され、植生植物の種類又は植生すべき高さに応じて、任意に設定することができる。本明細書では、植生植物が枯れずに再生するために必要な部分を生長点として定義している。ただし、宿根草などの植物によっては、生長点は根に該当するので、実施例1のように生長点は茎にあることに限定されない。
【0024】
なお、本実施形態では、保護枠20の脚部材21は、間伐材を加工して平板状に形成されているが、材質及び形状はこれに限定されない。例えば、金属、合成樹脂又はプラスチックなどの他の材料を用いてもよい。また、保護枠20は3つの脚部材21を有しているが、保護部材22を設置するために少なくとも2つの脚部材21を備えていればよく、脚部材の数は、保護枠20の所望の強度に応じて増減可能である。さらに、保護枠20の線材22aは、剛性を有する直線状の鋼材からなるが、材質及び形状はこれに限定されない。例えば、脚部材21間にプラスチック又は合成樹脂などの線材や、ロープ等を設けることも可能である。
【0025】
図3は、保護枠20が植生帯10の植生植物を保護している状態の植生部材100の部分正面図である。
【0026】
図3(a)は植生植物が若芽の状態の植生部材100を示し、この植生部材100では、植生帯10から植生植物P1が生え、該植生帯10上に、野生動物としての鹿Dから植生植物P1を保護するための植生保護空間Rが脚部材21と保護部材22とによって区画形成されている。この植生植物P1は全体が植生保護空間R内にあるので、鹿Dがその口先、頭部、脚部などを保護部材22に通過させることはできない。また、各線材22aは、保護部材22上に乗った鹿Dの重さにより撓み変形しないように、脚部材21間に設けられている。
【0027】
図3(b)は、図3(a)の植生植物P1が成長したものであって、植生植物P2の草丈が脚部材21の高さHを超えるまで成長した状態の植生部材100を示している。植生植物P2は植生帯10から保護部材22を突き抜けて生え茂っている。そして、脚部材21と保護部材22とによって、植生帯10上に植生保護空間Rを形成している。この植生植物P2は草丈の約1/2〜2/3の高さに生長点Gを有している。当該生長点Gに損傷を受けると植物は枯れたり、成長不良が生じたりする虞がある。図3(b)に示すとおり、鹿Dは保護部材22の上に乗って移動可能であり、植生植物P2の先端部を食べたり、踏みつけたりすることができる。しかし、植生植物P2の生長点Gは植生保護空間R内にあり、且つ、保護部材22は鹿Dの重さによって撓み変形していない。
【0028】
この生長点Gの高さに応じて、高さHを設定するのが好ましく、例えば、保護すべき植生植物P2が芝であって、芝の草丈を30mmで管理しようとするときは、生長点Gは、約15mm〜20mmの範囲にあると思われ、高さHは、生長点Gよりも高くなるように20mm以上に設定するのが好ましい。
【0029】
図4は、図1に示した、複数の保護枠20を有する植生部材100が折り畳まれている状態を示している。植生帯10は表面10a及び裏面10bを有しており、複数の保護枠20が植生帯10の表面10aに固定されている。ここで、説明の便宜のために、図4の上端(又は図1の左端)の保護枠20を保護枠20−1とし、上からN番目に配置されている保護枠20を保護枠20−Nとする。
【0030】
図4に示すとおり、互いに隣接している保護枠20−1と保護枠20−2との間で、植生帯10が折り曲げられて、保護枠20−1及び保護枠20−2の位置にそれぞれ対応する植生帯10の裏面10b同士が互いに重なり合っている。次に、互いに隣接している保護枠20−2と保護枠20−3との間で、植生帯10が折り曲げられて、保護枠20−2の保護部材22−2と保護枠20−3の保護部材22−3とが当接している。これらの折曲形態がN>3においても同様に繰り返されて、植生部材100はコンパクトに折り畳まれ、折り畳み形態を形成する。このように折り畳み可能に保護枠を植生帯上に配列するためには、例えば、保護枠20−2と保護枠20−3との間隔のように、保護枠の間隔を1つおきに少なくとも2Hにする必要がある。
【0031】
図4の折り畳み形態から、植生部材100を植生領域Qに設置するには、植生部材100の上端又は下端(保護枠20−1又は20−Nの位置に対応)を植生領域Qにアンカーなどで固定した上で、植生部材100を長手方向の他端側に引っ張っていくと、植生部材100は平面状に展開されて、図1のように植生部材100を植生領域Q上に設置することができる。なお、植生部材100の出荷時では、折り畳み形態とることが多く、植生帯100には未発芽の種Sが埋め込まれている。
【0032】
以下、本発明の一実施形態の(保護枠20を備える)植生部材100の作用効果について説明する。
【0033】
本実施形態の植生部材100は、植生して間もない植生植物P1(図3(a)参照)を、脚部材21と保護部材22とによって形成される植生保護空間Rの高さHまで、鹿Dなどの野生動物から保護しつつ成長させることが可能である。即ち、保護部材22の各線材22aの間隔dが鹿Dの身体の一部が入らないように十分小さく設定されているので、鹿Dは植生保護空間R内の植生植物P1に接触することができず、鹿Dによる食害を防ぐことができる。また、線材22aは保護部材22上に乗った鹿Dの重みで撓まないように脚部材21間に架設されていることによって、植生植物P1が線材22aの撓みによって部分的に保護部材22上に露出されて食べられてしまうことを防ぎ、且つ、撓んだ線材22aが植生植物P1に当接することで生じる植生植物P1の損傷を防ぐことができる。従って、植生植物P1が植生帯10に十分に根付くまで、植生植物P1を鹿Dによる食害等で枯らすことなく少なくとも高さHまで成長させることができる。
【0034】
次に、植生帯10に植生された植物が高さHを超えて成長した場合には(図3(b)参照)、植生植物P2の生長点Gは植生保護空間R内に位置しているので、当該生長点Gを野生植物Dから同様に保護し、植生植物P2が食害等により枯れるのを防止することができる。ただし、保護枠20の各線材22aは、十分小さい間隔dで脚部材21間に弛まないように架設されているので、野生動物としての鹿Dは、保護部材22の上に乗って移動し、各線材22a同士の間から抜け出た植生植物P2の先端側の一部を食べたり、踏みつけたりすることができる。しかし、このことは植生植物P2にとっても有用である。というのは、植生植物の種類によっては、植物の生長点Gは植物の草丈が大きくなるにつれて上方へと移動していき、最終的には保護部材22を超えてしまう虞があるので、生長点Gの位置を植生保護空間R内に維持するには、草丈を高さH程度に管理する必要がある。本実施形態では、人が保護部材22を超えて伸びた植生植物P2の先端部分を刈る代わりに、鹿Dが植生植物P2の高さH以上に伸びた部分を食べることにより、人による植生植物P2の草丈管理の頻度及び労力を軽減することができる。従って、本発明は野生動物と植生植物との共存をも可能にするものである。
【0035】
また、従来技術として、植物を野生動物から保護する手段として網材が用いられていたが、網材の一部に破損があった場合、その破損箇所を修繕しても、その部分の強度が弱まってしまうので、野生動物が網材上に乗ると再度破損する虞がある。即ち、元の強度を維持するには網材全体を交換し、網材を再度張り直さなければならなかった。これに対して、本実施形態の保護枠20では、保護部材22として複数の線材22aが脚部材21間に架設されているので、保護部材22の一部が破損しても、破損した部分の線材22aのみを交換すればよい。即ち、本発明の保護枠20を備える植生部材100は、網材を使用するものと比較して、耐久性及びメンテナンス性に優れている。
【0036】
そして、図1に示したように、本実施形態の植生部材100では、植生帯10に複数の保護枠20が連結されているので、植生帯10及び複数の保護枠20を同時に植生領域Qに設置することができ、施工が容易である。特に植生領域Rが急な斜面を有する法面である場合には、先行技術(特許文献2)のように植生帯を法面に配置した後にアンカー等で食害防止装置を植生帯上に複数固定する作業は、危険性を伴う困難なものであり、且つ、非常に時間及びコストがかかるものである。これに対して、本実施形態の植生部材100では、植生部材100の植生帯10を法面に設置するだけで、植生帯10と同時に複数の保護枠20をも植生領域Rに設置可能であり、このように設置作業が困難な状況においても、施工の容易化及び迅速化を実現する。
【0037】
さらに、図4で説明したとおり、本実施形態の植生部材100は、折り畳み形態から平面状の展開形態に相互に変形可能である。つまり、必要に応じて、植生部材100を輸送及び収納に有利なコンパクトな形態に変形させることができる。この折り畳み形態において、植生部材100は、隣接する保護枠20の保護部材22同士及び植生帯10の裏面10b同士が互いに当接するように折り重なっている。従って、植生植物Pが植生された表面10a同士が当接して植生植物Pを傷めることがないように、植生部材100をコンパクトに折り畳むことができる。そして、図1のように植生領域Qに植生部材100を設置する際には、折り畳み形態から展開形態に簡単且つ迅速に変形可能であり、植生部材100を植生領域Qに容易に設置することができる。特に、急な傾斜を有する法面に植生するときには、折り畳み形態において、植生部材100の一端側を法面の高所に固定して、植生部材100の他端側を低所側へと引っ張るように展開すると、法面の高所から低所にかけて植生部材100で植生領域Qを簡単に覆うことができる。
【0038】
なお、本発明は上述の一実施形態に限定されない。例えば、保護枠は、矩形状でなく、円形状や三角形状などに構成してもよい。また、植生帯も、長手状にする必要はなく、任意の形状とすることも可能である。以下に本発明の実施例1の構成を一部変更した実施例2〜5を示すが、実施例2〜5は、実施例1と共通する構成において、上述の作用効果を奏するものであることは言うまでもない。
【0039】
一実施形態の保護枠20では、線材22aは直線形状であるが、実施例2〜4に対応する図5(a)〜(c)に示すとおり、線材を折曲させて脚部材間に架設することも可能である。
【0040】
(実施例2)
図5(a)の保護枠20Aは、脚部材21Aと、脚部材21A間に架設された複数の波線状の線材22aAからなる保護部材22Aとを備える。隣り合う線材22aAは、最大間隔dで配置されるとともに、線材22aAの波形状が長手方向に半周期ずれて折曲方向が異なる方向を向くように配置されている。実施例1と同様に、隣接する線材22aAの間隔dは野生動物の身体の一部が通過できないように設定されているが、保護枠20Aでは、間隔dよりも小さい空間を部分的に形成しているので、野生動物の身体の一部が保護部材22Aをより通過し難いと考えられる。
【0041】
(実施例3)
図5(b)に示す保護枠20Bのように、隣り合う線材の折曲方向が同じ方向を向くように波線状の線材22aBを脚部材21B間に架設することも可能である。隣接する線材22aBの間隔dは一定であるが、当該保護部材22Bは、直線状の線材からなる保護部材と比べてより複雑な形状を有しているので、野生動物の身体の一部が保護部材22Bをより通過し難いと考えられる。
【0042】
(実施例4)
図5(c)に示す保護枠20Cのように、線材22aC(保護部材22C)を連続する円を形成するコイル状に構成することも可能である。隣り合う線材22aCは間隔dで架設されているが、線材22aCがコイル状に曲がっていることで、実質的に線材22aC間の空間は間隔dよりも小さく、野生動物の身体の一部が保護部材22Cをより通過し難いと考えられる。
【0043】
(実施例5)
本発明の脚部材は実施例1〜4のような平板形状の脚部材に限定されず、図6に示す保護枠20Dのように、折曲された線材からなる脚部材21Dとすることもできる。即ち、保護枠20Dは、3つの線形状の脚部材21Dと、当該脚部材21D間に架設された線材22aDからなる保護部材22Dとを備えてなり、脚部材21Dと保護部材22Dとで植生帯上に植生保護空間を形成可能である。従って、保護枠20Dは上述の実施形態と同様の作用効果を奏し、本発明の課題を解決するものである。なお、この脚部材21Dに仮想線で表した追加の脚部21aDを追加することもできる。即ち、脚部材と保護部材とで植生保護空間を形成可能であれば、脚部材はその材質、形状において限定解釈されることはない。
【0044】
なお、本発明は上述した複数の実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲に属する限りにおいて種々の態様で実施しうるものである。
【符号の説明】
【0045】
10 植生帯
20 保護枠
21 脚部材
22 保護部材
22a 線材
100 植生部材
D 鹿(野生動物)
P 植生植物
Q 植生領域
R 植生保護空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植生帯上に植生保護空間を形成するための保護枠であって、
前記植生帯上に連結される脚部材と、
この脚部材上に配置されて、前記植生保護空間を前記脚部材間に形成する保護部材と、を備えることを特徴とする保護枠。
【請求項2】
前記保護部材は、その上に野生動物が乗ってもその動物の重さによって撓まない程度の剛性を有する部材であることを特徴とする請求項1に記載の保護枠。
【請求項3】
植生を行う植生帯と、請求項1又は2に記載の保護枠とを備えてなることを特徴とする植生部材。
【請求項4】
前記保護枠は、前記植生帯上に複数取り付けられており、隣り合う保護枠間で折り返すことにより、当該植生部材が折り畳み可能となっていることを特徴とする請求項3に記載の植生部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−60958(P2012−60958A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209519(P2010−209519)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000226747)日新産業株式会社 (11)
【Fターム(参考)】