説明

保護膜用組成物および洗浄方法

【課題】ウエーハ加工において、アルカリ性の加工処理剤を用いてウエーハを研磨や面取りなどの加工をする際に、該加工処理剤に対する耐性、および、加工後、不要になった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷が軽減された状態でアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できる洗浄性に優れたウエーハ保護膜が得られる保護膜用組成物および不要となったウエーハ保護膜を洗浄除去する洗浄方法を提供する。
【解決手段】少なくとも一般式(1)で表わされるホモポリマー(a)を主成分とする被膜形成材料(X)を含有しており、水素指数(pH)11以下のアルカリ水溶液に不溶であり、かつ、水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液に可溶であることを特徴とする保護膜用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウエーハを加工処理する際に、加工される面以外のウエーハ面を一時的に保護するためのウエーハ保護膜を形成するウエーハ保護膜用組成物(以下、単に「保護膜用組成物」という場合がある)に関する。さらに詳しくは、アルカリ性の加工処理剤を用いてウエーハを研磨や面取りなどの加工をする際に、該加工処理剤に対する耐性、および、加工後、不要になった上記保護膜を、ウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷も軽減された状態でアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できる洗浄性が優れたウエーハ保護膜が得られる保護膜用組成物および洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、液晶用基板、半導体基板などの薄板状基板(以下、単にウエーハという場合がある)を研磨、あるいは面取り加工処理する際に、加工される以外のウエーハ面がアルカリ性の加工処理剤によってエッチング、あるいは汚染され、また、傷が付くのを防ぐためにウエーハ保護膜が被覆される。
【0003】
上記研磨加工は、例えば、ウエーハが動かないように、研磨面とは反対側の面であるウエーハ保持面を、吸引などによりウエーハホルダーに保持し、研磨面を研磨機の回転定盤上に圧力をかけながら押しつけ、アルカリ性の研磨剤を滴下しながら研磨面を研磨する。また、上記面取り加工は、例えば、品質向上のためにウエーハの切断面をアルカリ溶液を含浸させた布などで研磨することによって滑らかにし、また切断面に付着した切りクズを洗浄して除去する。
【0004】
上記ウエーハ加工の際に使用されているウエーハ用保護膜は、研磨加工あるいは面取り加工が終了し保護膜としての役割が終了すると、不要になった保護膜は、有機溶剤、アンモニア・過酸化水素混合液などの酸化性洗浄剤、温水などの洗浄剤に浸漬するなどして洗浄除去されていた。
【0005】
しかしながら、有機溶剤系の洗浄剤は、環境負荷やウエーハ面を疎水性にするなどの問題があり、また、酸化性洗浄剤は、ウエーハを侵食してウエーハにダメージを与えやすく、また、洗浄ライフが短いなどの問題があった。また、温水などの水洗浄剤は、環境負荷が伴わず好ましいが、これら水洗浄剤で洗浄除去されるウエーハ保護膜はアルカリ水溶液からなる研磨剤に対する耐性が劣る。
【0006】
前記のウエーハ保護膜を形成する組成物として、ある種のウエーハ保護膜組成物(特許文献1および2)が開示されている。特許文献1に開示のシリコンウエーハ保護膜用樹脂組成物は、被膜形成材料としてケン化度90モル%以上のポリビニルアルコールを溶媒に溶解して調製したものであり、さらに、耐アルカリ性を向上させるために、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、またはエポキシ化合物などの二重結合を有する化合物を配合している。
【0007】
一般に、ポリビニルアルコールは、ポリ酢酸ビニルをケン化することにより得られる高分子化合物なので酢酸基を残存するものが含まれ、ケン化度90モル%未満のものは耐アルカリ性が劣る。従って、上述のケン化度90モル%以上のポリビニルアルコールを使用しても、ケン化度90モル%未満のものの混入を完全に排除することは難しく、アルカリ性研磨剤に対する完全な耐アルカリ性が得られない。また、ケン化度が高くなると、75℃以上の温水には溶解するが水に不溶となり、ウエーハ加工後、不要となったウエーハ保護膜を洗浄除去する温度設定などの条件設定が複雑となる。
【0008】
また、特許文献2に開示の保護膜用塗布組成物は、被膜形成材料がポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、および水溶性セルロース誘導体などの水溶性樹脂であるために、ウエーハ加工用のアルカリ性研磨剤水溶液には充分な耐性が得られない。
【0009】
上述のことから、アルカリ性の加工処理剤を用いてウエーハを研磨や面取りなどの加工をする際に、該加工処理剤に対する耐性、および、加工後、不要になった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷が軽減された状態で容易に洗浄除去できるウエーハ保護膜が得られる保護膜用組成物が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開平10−120965号公報
【特許文献2】特開平9−106981号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
従って、本発明の目的は、ウエーハ加工において、アルカリ性の加工処理剤を用いてウエーハを研磨や面取りなどの加工をする際に、該加工処理剤に対する耐性、および、加工後、不要になった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷が軽減された状態でアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できる洗浄性に優れたウエーハ保護膜が得られる保護膜用組成物および不要となったウエーハ保護膜を洗浄除去する洗浄方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者は、前記の課題を解決すべく鋭意検討した結果、下記のホモポリマー(a)を主成分とする被膜形成材料を含有する保護膜用組成物が、ウエーハ面を一時的に保護するためのウエーハ保護膜を形成し、該保護膜が被覆された以外のウエーハ面を、アルカリ性の加工処理剤を用いて研磨や面取りなどの加工をした場合に、上記ウエーハ保護膜が、該加工処理剤に対する耐性に優れており、加工後、不要になった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷も軽減された状態でアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できることを見出した。
【0013】
上記の目的は、以下の本発明により達成される。すなわち、本発明は、少なくとも下記一般式(1)で表わされるホモポリマー(a)を主成分とする被膜形成材料(X)を含有しており、水素指数(pH)11以下のアルカリ水溶液に不溶であり、かつ、水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液に可溶であることを特徴とする保護膜用組成物を提供する。

(上記式中のnは、整数である)
【0014】
また、本発明の好ましい実施形態では、前記ホモポリマー(a)の重量平均分子量が、1,500〜12,000であり、前記被膜形成材料(X)の融点が、100℃〜200℃であり、さらに、シランカップリング剤を含有しており、前記のホモポリマー(a)とシランカップリング剤(b)との配合割合が、b/a=1/100〜10/100(質量比)であり、および、前記被膜形成材料(X)の固形分濃度が、10〜40質量%であることが好ましい。
【0015】
また、本発明は、前記の保護膜用組成物を、ウエーハ基材に塗布して形成されたウエーハ保護膜を水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液で洗浄除去することを特徴とする洗浄方法を提供する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、本発明の保護膜用組成物は、ウエーハを加工処理する際に使用される研磨剤などのアルカリ性加工剤に対する優れた耐性と、加工後、ウエーハにダメージを与えることなく、環境負荷も軽減された状態でアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できるウエーハ保護膜を得るのに有効である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に、本発明を実施するための好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳しく説明する。本発明の保護膜用組成物は、被膜形成材料として、下記のホモポリマー(a)を主成分として含有することにより、アルカリ性加工剤に対する優れた耐性と、加工後、不要となった保護膜をアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できるウエーハ用保護膜が得られる。
【0018】
本発明を主に特徴づけるホモポリマー(a)は、下記の一般式(1)で表わされるホモポリマーである。上記ホモポリマー(a)は、被膜形成材料(X)の構成成分として、ウエーハを研磨加工、あるいは面取り加工する際に、得られるウエーハ保護膜に対して、使用されるアルカリ性研磨剤に対する耐性および耐摩擦性などの耐研磨性を向上し、加工後、不要となった上記保護膜をpH13以上のアルカリ水溶液で容易に洗浄除去できる洗浄性を付与する。

(上記式中のnは、整数である)
【0019】
上記ホモポリマー(a)の重量平均分子量は、1,400〜25,000、好ましくは1,500〜12,000である。上記分子量範囲内のものが、得られるウエーハ保護膜に対して前記性能を付与するのに有効である。上記ホモポリマー(a)は、単独でも、あるいは2種以上を混合して使用することができる。
【0020】
上記ホモポリマー(a)の内で、重量平均分子量が1,600〜2,400のもの(a1)、重量平均分子量が4,000〜6,000のもの(a2)、および重量平均分子量が9,000〜11,000のもの(a3)から選ばれる少なくとも1種がよく、好ましくは上記(a2)または(a3)、もしくは(a2)と(a3)との混合物がよい。なお、本発明における重量平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法によるポリスチレン換算の値である。
【0021】
上記ホモポリマー(a)は、ビニルフェノールモノマーを公知の方法で重合させたもので、前記重量平均分子量を有する(a1)、(a2)、および(a3)が主として用いられる。
【0022】
前記被膜形成材料(X)は、得られるウエーハ保護膜を構成する成分として、上記ホモポリマー(a)を単独、または、本発明の目的を妨げない範囲においてホモポリマー(a)を被膜形成材料(X)総量中において80質量%以上占める量を主成分として含有し、その他樹脂類を併用できる。好ましくはホモポリマー(a)単独がよい。
【0023】
上記その他樹脂類としては、例えば、セラック、酢酸ビニル樹脂、ロジン、フェノール樹脂、ノボラック樹脂、メタクリル樹脂、アクリル共重合体、エポキシ系樹脂、ロジンエステル樹脂、ポリp−ビニルフェノール誘導体など、好ましくは酸価が20mgKOH/g未満のロジンエステル樹脂、アクリル共重合体、エポキシ系樹脂などの樹脂類が挙げられる。上記樹脂類の配合量が多過ぎると、得られるウエーハ保護膜の研磨剤に対する耐性、加工後の不要となった上記保護膜をpH13以上のアルカリ水溶液により洗浄除去する洗浄性が低下する。また、上記酸価の値が高過ぎると、アルカリ性研磨剤に対する耐性が低下する。なお、上記の酸価は、JISK5902に準じて測定した値である。
【0024】
前記被膜形成材料(X)の融点は、好ましくは100℃〜200℃である。上記融点範囲が、ウエーハを研磨する際における耐熱性として有効であり、融点が低過ぎると、ウエーハを研磨する際における耐熱性が劣る。
【0025】
前記被膜形成材料(X)は、ウエーハと得られるウエーハ保護膜との密着性を向上させるために、好ましくは、さらにシランカップリング剤を含有させるのがよい。
【0026】
上記シランカップリング剤としては、例えば、γ−ウレイドプロピルトリエトキシシラン、γ−ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ−ウレイドプロピルジメトキシシランなどのウレイド系シランカップリング剤;γ−グリシドキシトリメチルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランなどのエポキシ系シランカップリング剤;その他、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。上記シランカップリング剤は、単独でも、もしくは2種以上を混合しても使用することができる。
【0027】
前記ホモポリマー(a)と上記シランカップリング剤(b)との配合割合が、好ましくはb/a=1/100〜10/100である。上記シランカップリング剤の配合割合が上記上限を超えても、得られるウエーハ保護膜のウエーハに対してのそれ以上の密着効果が得られず、逆に接着阻害を起こす。一方、その配合割合が上記下限未満であると、接着向上効果が得られない。
【0028】
前記被膜形成材料(X)の固形分濃度は、保護膜用組成物中において、好ましくは10〜40質量%がよい。上記固形分濃度が、上記上限を超えると、ウエーハに対する塗布性が低下する。一方、上記固形分濃度が、上記下限未満の場合であると、得られるウエーハ保護膜のアルカリ性研磨剤に対する耐研磨性が低下する。
【0029】
本発明の保護膜用組成物は、前記被膜形成材料(X)と、シランカップリング剤と、その他得られるウエーハ保護膜に可燒性を付与する展延剤などの添加剤とを、適宜に有機溶媒中に公知の方法で溶解分散させ調製する。
【0030】
上記展延剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、フタル酸ジブチル、フタル酸ジメチル、フタル酸ジエチル、マレイン酸ジブチルなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0031】
また、上記有機溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、ジアセトンアルコール、アリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、メチルセロソルブ、エチルセロソルブ、メチルセロソルブアセテート、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミルなど、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0032】
本発明の保護膜用組成物を使用する事例としては、例えば、半導体基板のシリコンウエーハ基板の片面にスピンコート塗工機により、本発明の保護膜用組成物を膜厚2μm〜3μm程度(乾燥厚み)になるように塗布し、80℃〜120℃で乾燥し、上記ウエーハ表面にウエーハ保護膜を形成する。上記ウエーハ保護膜が形成されたウエーハ面を、例えば、市販の研磨機((株)岡本工作機械製作所製、研磨機PNX−332B)のウエーハホルダーにセットし、反対面の加工ウエーハ面をpH10.5に調整されたコロイダルシリカからなるアルカリ性の研磨剤を用いて滴下しながら研磨荷重15kPa、常磐回転数30rpm、研磨時間4min、研磨剤供給速度500ml/minの条件で研磨加工する。また、必要に応じて、さらに仕上げ研磨用研磨剤を用いて仕上げ研磨する。研磨加工終了後、ウエーハホルダーより、ウエーハ保護膜が形成されているウエーハを取り出し、不要となったウエーハ保護膜を下記の洗浄方法により洗浄除去する。
【0033】
上記アルカリ性の研磨剤としては、例えば、アルカリ化合物と、水溶性高分子化合物と、コロイダルシリカとを水に適宜に溶解・分散し調製されたものが挙げられる。上記アルカリ化合物としては、例えば、アンモニア、水酸化テトラメチルアンモニウム、水酸化テトラエチルアンモニウム、水酸化テトラブチルアンモニウムなどの塩基性有機化合物、あるいは水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの塩基性無機化合物などが挙げられる。また、上記水溶性高分子化合物としては、例えば、セルロース類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドンなどが挙げられる。
【0034】
前記洗浄方法としては、加工終了後、前記保護膜用組成物をウエーハ基板に塗布して形成されたウエーハ保護膜を水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液で洗浄除去する。上記洗浄除去は、不要となったウエーハ保護膜を、上記アルカリ水溶液に浸漬するか、または上記アルカリ水溶液をウエーハ保護膜面にスプレーしてウエーハ面から洗浄除去する。
【0035】
上記洗浄除去に使用されるアルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウムなどのアルカリ金属水酸化物、ピロリン酸カリウム、ピロリン酸ナトリウム、トリポリリン酸カリウムなどのアルカリ金属リン酸塩、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウムなどのアルカリ金属ケイ酸塩、炭酸ナトリウム、炭酸カリウムなどのアルカリ金属炭酸塩などの無機アルカリ化合物、アルカノールアミン、アミノアルコール、水溶性アミン、水酸化テトラメチルアンモニウムなどの有機アルカリ化合物などのアルカリ化合物を適宜水に溶解し調製したもの、その他アンモニア・過酸化水素水などのpH13以上に調整されたアルカリ水溶液が挙げられる。上記アルカリ水溶液は、必要に応じて界面活性剤を配合することができる。
【0036】
前記ウエーハ基板としては、例えば、シリコン、ガリウム砒素、ガリウム燐、セラミック、サファイヤ、水晶ガラスなどのウエーハ基板、好ましくはシリコンウエーハ基板が挙げられる。
【実施例】
【0037】
次に実施例および比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。文中「部」または「%」とあるのは特に断りのない限り質量基準である。なお、本発明は、下記の実施例に限定されるものではない。
【0038】
[実施例1〜5](保護膜用組成物R1〜R5)
被膜形成材料(X)と、シランカップリング剤と、展延剤と、有機溶媒とを表1のように配合し均一に混合して本発明の保護膜用組成物R1〜R5を調製した。なお、上記被膜形成材料(X)、シランカップリング剤、および展延剤は下記の通りである。
【0039】
・被膜形成材料(X)
前記一般式(1)のホモポリマー(a)
ホモポリマー(a1):重量平均分子量1,600〜2,400のポリp−ビニルフェノール
ホモポリマー(a2):重量平均分子量4,000〜6,000のポリp−ビニルフェノール
ホモポリマー(a3):重量平均分子量9,000〜11,000のポリp−ビニルフェノール
ロジンエステル樹脂:酸価10mgKOH/gのロジンエステル樹脂(荒川化学工業製、スーパーエステルA−115)
・シランカップリング剤
γ−(メタクリロイルオキシプロピル)トリメトキシシラン
・展延剤
マレイン酸ジブチル
【0040】
[比較例1〜2](保護膜用組成物S1〜S2)
実施例における被膜形成材料(X)をポリビニルアルコールに代え、表1のように水と配合して保護膜用組成物S1〜S2を調製した。なお、上記ポリビニルアルコールは、下記の通りである。
・ポリビニルアルコール
a1:ケン化度86%のポリビニルアルコール
a2:ケン化度99%のポリビニルアルコール
【0041】

表中の数値は配合部数を表す。
【0042】
前記で得られた各々の保護膜用組成物を用いて、6inのシリコンウエーハ表面にスピンコーターを使用して3μm(乾燥厚み)になるように塗布し、100℃に加熱されたホットプレート上で30秒間乾燥させウエーハ保護膜を作成した。上記ウエーハ保護膜の、耐研磨剤性、およびアルカリ洗浄性に関し下記の方法により測定し評価した。評価結果を表2に示す。
【0043】
[耐研磨剤性]
水素指数(pH)11に調整されたNaOH水溶液(水温40℃)に上記ウエーハ保護膜が形成された試料を30分間浸漬し、ウエーハ保護膜表面の状態を下記の基準により評価した。
○:ウエーハ保護膜の膨潤、または侵食が、全く認められない。
△:ウエーハ保護膜の膨潤、または侵食が、わずかに認められる。
×:ウエーハ保護膜の膨潤、または侵食が、かなり認められる。
上記の評価は、アルカリ性のウエーハ研磨剤に対する耐性を示す。
【0044】
[アルカリ洗浄性]
(洗浄除去性)
水素指数(pH)13以上に調整されたNaOH水溶液(洗浄剤)に上記ウエーハ保護膜が形成された試料を浸漬し、ウエーハ保護膜の上記洗浄剤に対する洗浄除去性を下記基準により評価した。
○:ウエーハ保護膜が、完全に洗浄除去される。
△:ウエーハ保護膜が、残渣が認められ完全に洗浄除去されない。
×:ウエーハ保護膜が、洗浄除去されない。
【0045】
(耐ウエーハ侵食性)
上記洗浄除去性に使用した試料のウエーハ保護膜が形成されていないウエーハ面の上記洗浄剤による侵食状況を下記基準により評価した。
○:ウエーハ面が、洗浄剤により侵食されていない。
△:ウエーハ面が、洗浄剤によりわずかに侵食されている。
×:ウエーハ面が、洗浄剤により侵食されている。
【0046】

【0047】
上記の評価結果より、本発明の保護膜用組成物は、得られるウエーハ保護膜が、研磨加工において優れた耐研磨剤性と、加工後、不要となった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなくアルカリ水溶液により容易に洗浄除去されることが実証された。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の保護膜用組成物は、耐研磨剤性およびアルカリ洗浄性が優れたウエーハ保護膜が得られることから、半導体基板、液晶基板などに使用されるシリコンなどのウエーハを研磨あるいは面取り加工する際に、加工される面以外のウエーハ面を一時的に保護するウエーハ保護膜を得るのに有効に使用することができる。また、加工後、不要となった上記保護膜をウエーハにダメージを与えることなく容易に洗浄除去できる洗浄方法が提供されることから、高品質の加工されたウエーハが得られる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも下記一般式(1)で表わされるホモポリマー(a)を主成分とする被膜形成材料(X)を含有しており、水素指数(pH)11以下のアルカリ水溶液に不溶であり、かつ、水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液に可溶であることを特徴とする保護膜用組成物。

(上記式中のnは、整数である)
【請求項2】
前記ホモポリマー(a)の重量平均分子量が、1,500〜12,000である請求項1に記載の保護膜用組成物。
【請求項3】
前記被膜形成材料(X)の融点が、100℃〜200℃である請求項1または2に記載の保護膜用組成物。
【請求項4】
さらに、シランカップリング剤を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の保護膜用組成物。
【請求項5】
前記のホモポリマー(a)とシランカップリング剤(b)との配合割合が、b/a=1/100〜10/100(質量比)である請求項1〜4のいずれか1項に記載の保護膜用組成物。
【請求項6】
前記被膜形成材料(X)の固形分濃度が、10〜40質量%である請求項1に記載の保護膜用組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の保護膜用組成物を、ウエーハ基材に塗布して形成されたウエーハ保護膜を水素指数(pH)13以上のアルカリ水溶液で洗浄除去することを特徴とする洗浄方法。

【公開番号】特開2011−236272(P2011−236272A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106481(P2010−106481)
【出願日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【出願人】(000183923)株式会社DNPファインケミカル (268)
【Fターム(参考)】