説明

信号中継装置

【課題】異常時に入力する移報信号に対応する外部出力機器を柔軟に変更することができる信号中継装置を提供する。
【解決手段】異常が検知されたときに発生する移報信号が入力されると、対応する誘導灯31,32,33へ制御信号を出力する制御部11を備える。第1記憶部12には、入力する移報信号と複数の制御信号との対応関係を示す第1データを記憶する。第2記憶部13は、EPROMから構成され、第1記憶部12に転送すべき第2データと第2データを転送すべきか否かを示すフラグ情報とを記憶する。制御部11は、フラグ情報を参照して、第2データを転送すべきと判断したときに、第2データを第1記憶部12に転送し、これを第1データとして第1記憶部12に記憶させる。そして、第1記憶部12に記憶されている第1データに基づいて複数の制御信号を出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非常時に入力された移報信号を、警報器などへ中継する信号中継装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガス漏れ又は火災などの警報器の分野において、複数の警報器を接続して、ある警報器が警報を出力したときに、他の警報器からも警報を出力するシステムがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1には、警報状態又は故障状態の検出時にその状態を報知する複数の警報器を相互に接続し、ある警報器で検出した警報状態等を他の警報器に報知させることができる無線装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−094719号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の場合、警報状態等を出力する他の警報器は予め決められており、警報状態等を出力する警報器を柔軟に変更することができない。例えば、ビルの建物において各階に設置した警報器を接続している構成の場合、ある階の警報器に警報状態等を出力させるように設定していたものを、その階の直上階又は直下階等、他の階に設置した警報器に出力させるといった変更を容易に行うことができない。
【0005】
そこで、本発明の目的は、異常時に入力する移報信号に対応する外部出力機器を柔軟に変更することができる信号中継装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る信号中継装置は、異常が検知されたときに発生する移報信号が入力される入力部と、前記入力部に入力した移報信号に基づいて複数の外部出力機器を駆動するための複数の出力信号を出力する制御部と、を備え、前記制御部は、前記入力部に入力する移報信号と前記複数の出力信号との対応関係を示す第1データを記憶する不揮発性の第1記憶部と、前記第1記憶部に転送すべき第2データと該第2データを転送すべきか否かを示すフラグ情報とを記憶し、書き換え手段により書き換え可能なEEPROMから構成される第2記憶部と、特定のタイミングに前記フラグ情報を参照して、前記第2データを転送すべきと判断したときに、前記第2データを前記第1記憶部に転送し、これを第1データとして該第1記憶部に記憶させる転送制御部と、前記第1記憶部に記憶されている第1データに基づいて前記複数の出力信号を出力する出力部と、を備える。
【0007】
この構成では、移報信号を入力した場合、第1記憶部に記憶された第1データに基づいて、その移報信号を入力した入力部に対応する出力信号が出力される。出力信号で駆動される外部出力機器は、例えば、誘導灯や警報器である。第1記憶部とは別に書き換え手段により書き換え可能なEEPROMから構成される第2記憶部を備えている。このEEPROMには第2データが記憶され、この第2データが第1記憶部に転送されて第1データとして記憶される。
【0008】
EEPROMは低速であるために、移報信号に対応する出力信号を抽出するのにEEPROMをアクセスすると時間がかかるが、EEPROMに記憶されている第2データを第1記憶部に転送することにより制御部はこの第1記憶部へアクセスすることにより移報信号に対応する出力信号を抽出することが出来る。したがって、高速処理が可能である。
【0009】
また、EEPROMには、上記転送すべきかどうかを示すフラグ情報が記憶されている。フラグがオン、すなわち、フラグ情報がデータ転送すべきであることを示す場合は、EEPROMの第2データを転送するが、そうでない場合はデータ転送を行わない。したがって、フラグを、第2データが変更されたときのみオンさせておけば、第2データの変更時のみに、転送できることになる。したがって、第1記憶部の第1データは変更されたときにのみ更新(転送)されることになり、それ以外のときには時間のかかる転送処理が行われないことになり、効率が良くなる。
【0010】
制御部が第2記憶部にアクセスしてフラグ情報をチェックするタイミングは信号中継装置本体の電源オン時である。
【0011】
電源オン操作は、例えば毎日1回朝に行われることとすれば、朝にフラグ情報がチェックされ、そのときにフラグが立っていれば、すなわち、第2データが書き換えられていれば、第1データも書き換えられる(更新される)。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、異常時に入力する移報信号に対応する外部出力機器を柔軟に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施形態に係る警報用信号装置の構成を模式的に示すブロック図
【図2】第1記憶部に記憶された出力設定データの概念図
【図3】出力設定データの書き換え処理を示すフローチャート
【図4】出力設定データの読み取り処理を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る信号中継装置の好適な実施の形態について図面を参照して説明する。以下の実施形態では、本発明に係る信号中継装置は、警報システムにおいて用いられる警報用信号装置として説明する。警報システムは、ある場所で異常(火災、地震等)を検知した際に、他の場所に報知するシステムであり、以下の実施形態では、ビルに設置されるものとする。
【0015】
図1は実施形態に係る警報用信号装置の構成を模式的に示すブロック図である。警報用信号装置(本体)10は、複数の第1センサ21、第2センサ22及び第3センサ23からの検知結果を有線又は無線で受信する受信機20、及び複数の第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33と接続している。
【0016】
第1センサ21、第2センサ22及び第3センサ23は、煙又は温度を検知する火災センサ又は火災通報装置であり、例えばビル等の建物の各階に設置されている。本実施形態では、第1センサ21はビルの1階、第2センサ22はビルの2階、第3センサ23はビルの3階にそれぞれ設置されているものとする。
【0017】
第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33は、非常時点灯、点滅するキセノンランプ、LED又は誘導音装置等である。第1誘導灯31はビルの1階、第2誘導灯32はビルの2階、第3誘導灯33はビルの3階にそれぞれ設置されているものとする。
【0018】
なお、センサ及び誘導灯はそれぞれ三つとしているが、数は適宜変更可能である。また、センサとしては、例えばガス漏れを検知するセンサを用いてもよい。また、誘導灯に代わり、警報音声を出力するスピーカを用いてもよい。
【0019】
受信機20は、第1センサ21、第2センサ22及び第3センサ23の何れかが煙又は温度等の異常を検知した場合、検知した第1センサ21、第2センサ22及び第3センサ23に応じた移報信号を警報用信号装置10へ出力する。具体的には、警報用信号装置10及び受信機20は、第1センサ21、第2センサ22及び第3センサ23の数と同数の配線により接続されている。そして、例えば第1センサ21が異常を検知すると、それに対応する配線を介して、受信機20から警報用信号装置10へ移報信号が出力される。
【0020】
なお、本実施形態に係る警報システムにおいて、受信機20は警報用信号装置10の外部に設置されている構成としているが、警報用信号装置10が備えていてもよい。
【0021】
警報用信号装置10は、受信機20から移報信号が入力されると、対応する第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33へ制御信号(出力信号)を出力し、第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33を点灯又は点滅させる。例えば、警報用信号装置10は、第1センサ21が異常を検知した場合、第1センサ21が設置された1階及びその直上階それぞれに設置された第1誘導灯31及び第2誘導灯32それぞれが点灯するように、制御信号を第1誘導灯31及び第2誘導灯32へ出力する。移報信号を入力した第1誘導灯31及び第2誘導灯32は、点滅又は点灯する。
【0022】
警報用信号装置10は、制御部11、第1記憶部12及び第2記憶部13を備えている。制御部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)であって、不図示のROM(ReadOnly Memory)等に記憶されたプログラムに従って、接続される各部の動作制御を行い、必要に応じた処理を実行する。
【0023】
第2記憶部13は、例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)等の不揮発性メモリを備える。第2記憶部13には、受信機20から移報信号を入力した場合に、移報信号を第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33の何れへ出力するかを設定したデータ(第2データ。以下、出力設定データ)が記憶されている。第2記憶部13に記憶されている出力設定データは、専用の書き換えツール(書き換え手段)14(例えば、パーソナルコンピュータ)を介して書き換え可能となっている。
【0024】
また、第2記憶部13は、書換フラグ(フラグ情報)を記憶している。書換フラグは、出力設定データが書き換えツール14により書き換えられた場合、オンにされる。制御部11は、この書換フラグがオンであるか否かをみることで、出力設定データが書き換えられたか否かを判定することができる。
【0025】
第1記憶部12は、第2記憶部13に記憶されている第2データを第1データとして記憶する。この第1記憶部12は、例えばRAMなど、CPUバスを介して高速にアクセスできるメモリで構成される。制御部11は、電源オン時など、特定のタイミングに書換フラグを参照して、該フラグオンしているときに、第2データを第1記憶部12に転送し、これを第1データとして該第1記憶部12に記憶させる転送制御手段を備える。制御部11は、転送処理を終了すると、第2記憶部13の書換フラグをオフする(第2データは転送不要情報として設定される)。転送制御手段は実際にはソフトウエアで構成される。
【0026】
制御部11は、移報信号が入力されると、第1記憶部12に記憶されている第1データを参照し、その移報信号に対応する制御信号を抽出し、抽出した制御信号に対応する外部出力機器(第1誘導灯31、第2誘導灯32及び第3誘導灯33等)を駆動する。
【0027】
図2は第1記憶部12に記憶された出力設定データの概念図であり、その一部をマトリックスで示している。カラム(列)とロウ(行)には、それぞれ移報信号S1〜S3と出力信号L1〜L3が対応していて、その交差部にはダイオードが選択的に接続される。図2では、ダイオードD2、D3、D9が切断されている。したがって、例えば、移報信号S1が入力すると、出力信号D1のみが出力される。
【0028】
図3は、第2データ(出力設定データ)の書き換え処理を示すフローチャートである。本実施形態では、書き換えツール14によって第2データの書き換えが行われる。図3は、書き換えツール14において実行される処理である。
【0029】
書き換えツール14は、第2データ(出力設定データ)の書き換えが入力されたか否かを判定する(S1)。入力されていない場合(S1:NO)、本処理を終了する。入力された場合(S1:YES)、警報用信号装置10の第2記憶部12に記憶された第2データ(出力設定データ)を書き換え(S2)、第2記憶部12に書き換えたことを示す書換フラグをオンする(S3)。そして、本処理を終了する。
【0030】
図4は、第2データ(出力設定データ)の読み取り処理を示すフローチャートである。図4に示す処理は、制御部11により電源オン時に実行される。
【0031】
警報用信号装置10の電源がオンにされると、制御部11は、図4に示す処理の実行を開始し、例えば第1記憶部12の記憶内容をクリアするなどの初期動作を行う(S10)。次に、制御部11は、第2記憶部13にアクセスし、書換フラグがオンされているか否かを判定する(S11)。書換フラグがオンされていない場合(S11:NO)、制御部11は、S14の処理へ移る。
【0032】
一方、書換フラグがオンされている場合(S11:YES)、制御部11は第2記憶部13から第2データ(出力設定データ)を読み取り、第1記憶部12に記憶した第2データ(出力設定データ)を更新する(S12)。そして、制御部11は第2記憶部13に記憶されている書換フラグをオフする(S13)。
【0033】
制御部11は、受信機20から移報信号が入力されるまで待機する(S14)。入力されると、制御部11は、異常を検知したセンサに対応する第1データ(出力設定データ)を第1記憶部12から読み取り(S15)、その第1データ(出力設定データ)に基づいて、外部出力機器である誘導灯31,32,33の制御を行う(S16)。
【0034】
このように、第2データ(出力設定データ)を書き換えた場合に書換フラグを第2記憶部13においてオンしておくことで、制御部11は、第2記憶部13の第2データ(出力設定データ)が書き換えられたか否かを瞬時に判定できる。このため、制御部11は、書き換えがあった場合のみ第2データ(出力設定データ)を読み取ればよいため、書き換えの有無に拘らず、常に第2記憶部13から出力設定データを読み取る場合との対比において処理時間を軽減できる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態に係る警報用信号装置10は、第1記憶部12に記憶された第1データに従って、移報信号に対応する制御信号の出力先(誘導灯31,32,33など)の切り替えが可能となっている。第1記憶部12に記憶された第1データは、第2記憶部13から読み取り記憶される。このため、第2記憶部13に記憶された出力設定データを書き換えることで、警報用信号装置10の回路等を変更することなく、点灯又は点滅させる誘導灯を切り替えることができる。
【0036】
なお、警報用信号装置10の具体的構成などは、適宜設計変更可能であり、上述の実施形態に記載された作用及び効果は、本発明から生じる最も好適な作用及び効果を列挙したに過ぎず、本発明による作用及び効果は、上述の実施形態に記載されたものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0037】
10−警報用信号装置
11−制御部(入力部、転送制御部、出力部)
12−第1記憶部
13−第2記憶部(EEPROM)
20−受信機
21,22,23−センサ31,32,33−誘導灯

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異常が検知されたときに発生する移報信号が入力される入力部と、
前記入力部に入力した移報信号に基づいて複数の外部出力機器を駆動するための複数の出力信号を出力する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記入力部に入力する移報信号と前記複数の出力信号との対応関係を示す第1データを記憶する不揮発性の第1記憶部と、
前記第1記憶部に転送すべき第2データと該第2データを転送すべきか否かを示すフラグ情報とを記憶し、書き換え手段により書き換え可能なEEPROMから構成される第2記憶部と、
特定のタイミングに前記フラグ情報を参照して、前記第2データを転送すべきと判断したときに、前記第2データを前記第1記憶部に転送し、これを第1データとして該第1記憶部に記憶させる転送制御部と、
前記第1記憶部に記憶されている第1データに基づいて前記複数の出力信号を出力する出力部と、を備える信号中継装置。
【請求項2】
前記フラグ情報は、前記書き換え手段により第2データが書き換えられたときに転送すべき情報に設定され、前記転送制御部によりこの第2データが前記第1記憶部に第1データとして記憶されたときに転送不要情報に設定される、
請求項1記載の信号中継装置。
【請求項3】
前記特定のタイミングは、信号中継装置本体の電源オン時である請求項1又は2に記載の信号中継装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−221436(P2012−221436A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−89691(P2011−89691)
【出願日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【出願人】(000001074)クロイ電機株式会社 (49)
【Fターム(参考)】