説明

信号発生装置及び信号発生方法

【課題】広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる信号発生装置及び信号発生方法を提供すること。
【解決手段】信号発生装置10は、ベースバンド信号の波形データを記憶する波形データ記憶部11と、ベースバンド信号を変調して変調信号を生成する直交変調器20と、予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振器31と、変調信号と局部発振信号とを乗算して所定の周波数帯域の無線周波数信号を生成する乗算器32と、周波数帯域の信号レベルの周波数特性を無線周波数信号の中心周波数を基準として取得するf特補正値決定部50と、f特補正値決定部50が取得した周波数特性に基づいてベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正するDF12と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば携帯電話やモバイル端末等の移動通信端末に対する特性試験において供給される無線周波数信号の周波数特性を補正する信号発生装置及び信号発生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動通信端末等の特性試験において、試験信号を移動通信端末等に供給するため信号発生装置が用いられる。信号発生装置は、一般に、内部にアナログ回路を備えている。アナログ回路は周波数特性を有し、信号発生装置の出力レベルは周波数とともに変動する。したがって、信号発生装置の出力レベルの周波数特性を補正する必要がある。
【0003】
この種の補正を行う回路としては、例えば、特許文献1に開示された補正回路が知られている。特許文献1記載のものは、信号発生装置の出力信号を減衰する減衰器と、信号発生装置の周波数特性を予め測定し、その補正データをテーブル化して記憶するメモリと、このメモリから補正データを読み出して減衰器の減衰量を設定するCPUとを備え、信号発生装置の出力レベルの周波数特性を補正するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平02−128432号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、移動通信端末等の無線通信において使用される周波数帯域幅の拡大化が図られている。これに伴い、信号発生装置にも広帯域無線周波数信号(例えば帯域幅20MHz)を発生することが求められている。
【0006】
しかしながら、特許文献1記載のものは、比較的狭帯域の信号を対象として周波数特性を補正するものであり、広帯域無線周波数信号の信号レベルに対しては周波数特性を補正することができないという課題があった。
【0007】
本発明は、従来の課題を解決するためになされたものであり、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる信号発生装置及び信号発生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1に係る信号発生装置は、ベースバンド信号を変調して変調信号を生成する変調信号生成手段(20)と、予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段(31)と、前記変調信号と前記局部発振信号とを乗算して所定の周波数帯域の無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成手段(32)と、前記周波数帯域の信号レベルの周波数特性を前記無線周波数信号の中心周波数を基準として取得する周波数特性取得手段(52、53b)と、前記周波数特性取得手段が取得した周波数特性に基づいて前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正する周波数特性補正手段(12、55)と、を備えた構成を有している。
【0009】
この構成により、本発明の請求項1に係る信号発生装置は、周波数特性取得手段が取得した周波数特性に基づいてベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正することにより、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【0010】
本発明の請求項2に係る信号発生装置は、請求項1に記載の周波数特性取得手段を第1の周波数特性取得手段として備え、前記無線周波数信号生成手段が生成した無線周波数信号の出力レベルを調整する出力レベル調整手段(41)と、前記出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を取得する第2の周波数特性取得手段(45、46)と、前記第2の周波数特性取得手段が取得した周波数特性に基づいて前記出力レベル調整手段の調整量を制御する制御電圧を生成し、前記出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を補正する制御電圧生成手段(47)と、をさらに備えた構成を有している。
【0011】
この構成により、本発明の請求項2に係る信号発生装置は、出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を補正することにより、出力レベル調整手段の周波数特性を加味して広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【0012】
本発明の請求項3に係る信号発生装置は、請求項2に記載された出力レベル調整手段を第1の出力レベル調整手段として備え、前記第1の出力レベル調整手段の出力信号の出力レベルを調整する第2の出力レベル調整手段(16)と、前記第2の出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を取得する第3の周波数特性取得手段(51、53a)と、をさらに備え、前記第1の周波数特性補正手段は、前記第3の周波数特性取得手段が取得した周波数特性を加味して前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正するものである構成を有している。
【0013】
この構成により、本発明の請求項3に係る信号発生装置は、第2の出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を補正することにより、第2の出力レベル調整手段の周波数特性を加味して広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【0014】
本発明の請求項4に係る信号発生方法は、ベースバンド信号を変調して変調信号を生成する変調信号生成ステップ(S34)と、予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成ステップ(S35)と、前記変調信号と前記局部発振信号とを乗算して所定の周波数帯域の無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成ステップ(S36)と、前記周波数帯域の信号レベルの周波数特性を前記無線周波数信号の中心周波数を基準として取得する周波数特性取得ステップ(S38)と、前記周波数特性取得ステップにおいて取得した周波数特性に基づいて前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正する周波数特性補正ステップ(S42)と、を含む構成を有している。
【0015】
この構成により、本発明の請求項4に係る信号発生方法は、周波数特性取得ステップにおいて取得した周波数特性に基づいてベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正することにより、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができるという効果を有する信号発生装置及び信号発生方法を提供することができるものである。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるブロック構成図である。
【図2】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における試験信号データ及び校正信号データの一例を示す図である。
【図3】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるATT制御部のブロック構成図である。
【図4】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における基準点f特テーブルをグラフ化した図である。
【図5】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるf特補正値決定部のブロック構成図である。
【図6】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるステップATTf特テーブルをグラフ化した図である。
【図7】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における帯域幅f特テーブルをグラフ化した図である。
【図8】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるDFに設定する周波数特性を示す図である。
【図9】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、基準点f特テーブルを求める手順のフローチャートである。
【図10】本発明に係る信号発生装置の一実施形態において、ステップATTf特テーブルを求める手順のフローチャートである。
【図11】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における動作を示すフローチャートである。
【図12】本発明に係る信号発生装置の一実施形態における基準点レベル及びステップATTの減衰量の設定処理を示すフローチャートである。
【図13】本発明に係る信号発生装置の一実施形態におけるステップATTf特テーブル及び基準点f特テーブルの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を用いて説明する。
【0019】
まず、本発明に係る信号発生装置の一実施形態における構成について説明する。
【0020】
図1に示すように、本実施形態における信号発生装置10は、波形データ記憶部11、デジタルフィルタ(DF)12、デジタルアナログコンバータ(DAC)14及び15、ステップアッテネータ(ATT)16、設定部17、直交変調器20、周波数変換部30、レベル調整器40、周波数特性(f特)補正値決定部50を備えている。
【0021】
波形データ記憶部11は、デジタル値のベースバンドの波形データを記憶するものである。具体的には、被試験装置を試験するための複数の試験信号データ(a、b・・・)と、周波数特性を校正するための複数の校正信号データ(A、B・・・)とを記憶している。試験信号データは、ユーザによって設定されたI相成分(同相成分)及びQ相成分(直交成分)のベースバンドの波形データを含む。校正信号データは、所定周波数のI相成分及びQ相成分のベースバンドのCW(Continuous Wave)波形データを含む。これらの波形データは、例えば、図示しないDSP(Digital Signal Processor)によって生成される。
【0022】
図2は、波形データ記憶部11が記憶している試験信号データ及び校正信号データの一例を示したものである。試験信号データは、例えば、図2(a)に示すように、時間領域信号が周波数領域信号として表された波形データであり、帯域幅が20MHzの信号の場合は、中心周波数が0MHzで±10MHzの帯域幅を有する複素ベースバンド信号の波形データとして表される。校正信号データは、例えば、図2(b)及び(c)に示すデータである。すなわち、校正信号データAは、図2(b)に示すように、中心周波数が0MHzのトーン信号である。また、校正信号データBは、図2(c)に示すように、−10MHzから+10MHzまでを掃引可能な1つのトーン信号である。なお、図2(c)に示した校正信号データBに代えて、−10MHzから+10MHzまでの間に所定の周波数ピッチで複数のトーン信号を設けた構成としてもよい。
【0023】
DF12は、後述するf特補正値決定部50によってフィルタ定数が設定されることにより、波形データ記憶部11が出力するI相及びQ相のベースバンド信号波形データの信号レベルを補正するようになっている。ここで、DF12は、本発明に係る周波数特性補正手段を構成する。なお、図1では、DF12は1つのデジタルフィルタとして記載されているが、I相及びQ相のベースバンド信号波形データそれぞれに対応した2つのデジタルフィルタを設けるようにしてもよい。
【0024】
DAC14及び15は、それぞれ、DF12が出力するデジタル値のベースバンド信号波形データをアナログ値に変換し、アナログ値に変換したベースバンド信号波形データを直交変調器20に出力するようになっている。
【0025】
直交変調器20は、乗算器21及び22、局部発振器23、90度移相器24、加算器25を備えている。この直交変調器20は、本発明に係る変調信号生成手段を構成する。
【0026】
乗算器21は、DAC14からのI相成分と局部発振器23からの局部発振信号とを乗算するようになっている。乗算器22は、DAC15からのQ相成分と、90度移相器24によって90度移相された局部発振信号とを乗算するようになっている。加算器25は、乗算器21及び22の出力信号を加算し、加算して得られた直交変調信号を周波数変換部30に出力するようになっている。
【0027】
周波数変換部30は、局部発振器31、乗算器32を備えている。局部発振器31は、所定の局部発振周波数の局部発振信号を生成し、乗算器32に供給するようになっている。乗算器32は、直交変調器20の出力信号と局部発振信号とを乗算し、乗算して得られた無線周波数(以下「RF」という。)信号をレベル調整器40に出力するようになっている。なお、局部発振器31は、本発明に係る局部発振信号生成手段を構成する。また、乗算器32は、本発明に係る無線周波数信号生成手段を構成する。なお、直交変調器20の局部発振器23の発振周波数をRFにすることにより、周波数変換部30を省略して、直交変調部20で周波数変換を行う構成であってもよい。この場合、直交変調器20は、本発明に係る変調信号生成手段、局部発振信号生成手段、無線周波数信号生成手段を兼ねた構成となる。
【0028】
レベル調整器40は、ATT41、検波器42、アナログデジタル変換器(ADC)43、ATT制御部44を備えている。
【0029】
ATT41は、減衰量を設定するための制御電圧をATT制御部44から入力し、この制御電圧に従って、周波数変換部30の出力信号の電力レベルを減衰するための減衰量が設定されるようになっている。ATT41は、例えば0.1dB単位の微細な減衰量を設定できるものである。ATT41の出力側には、レベル調整器40におけるレベル調整のための基準点が設けられている。この基準点において所定の電力レベルに減衰された信号は、検波器42及びステップATT16に出力される。なお、ATT41は、本発明に係る出力レベル調整手段、第1の出力レベル調整手段を構成する。
【0030】
検波器42は、ATT41の出力信号を検波し、ADC43に出力するようになっている。
【0031】
ADC43は、検波器42が検波したアナログ値の信号をデジタル値の信号に変換してATT制御部44に出力するようになっている。
【0032】
ATT制御部44は、基準点の電力値が所望の電力値(例えば−10dBm)となる制御電圧を生成してATT41に出力するようになっている。ATT制御部44の詳細な構成については後述する。
【0033】
f特補正値決定部50は、波形データ記憶部11が出力する試験信号データの信号レベルの周波数特性をフラットにするための補正値を決定し、この補正値に基づいてDF12のフィルタ定数を設定するようになっている。f特補正値決定部50の詳細な構成については後述する。
【0034】
ステップATT16は、前述のATT41よりも大きいステップ(例えば5dBステップ)で減衰量が設定されるATTである。すなわち、ステップATT16は比較的大きな減衰量が設定され、前述のATT41は微細な減衰量が設定される。ステップATT16の減衰量は、設定部17からの設定信号によって設定されるようになっている。このステップATT16は、本発明に係る第2の出力レベル調整手段を構成する。
【0035】
設定部17は、ユーザがキーボードやダイヤル等の操作部(図示省略)を操作して入力した各種試験条件のデータを各部に設定するようになっている。
【0036】
次に、ATT制御部44及びf特補正値決定部50の詳細な構成について図3〜図5を用いて説明する。
【0037】
ATT制御部44は、図3に示すような構成を有する。すなわち、ATT制御部44は、基準点f特テーブル45、テーブル作成部46、制御電圧生成部47を備える。なお、基準点f特テーブル45及びテーブル作成部46は、本発明に係る第2の周波数特性取得手段を構成する。
【0038】
ここで、基準点f特テーブル45は、レベル調整器40の基準点(図1参照)における電力値(以下、単に「基準点レベル」という。)の周波数特性を表したものである。
【0039】
具体的には、図2(b)に示した校正信号データAを波形データ記憶部11から出力し、周波数変換部30が出力するRF信号中心周波数をf、f、f・・・と変化させながら、基準点レベルが、例えば−10.0dBm、・・・−11.0dBm、・・・−12.0dBm・・・となる場合のATT41の設定値(制御電圧値)を予め求めたものである。図3において、例えばRF信号中心周波数fの信号の基準点レベルが−10.2dBmとなるATT41の設定値はVである。
【0040】
基準点f特テーブル45をグラフ化したものを図4に示す。図4では、RF信号中心周波数が0〜6GHzに対して、基準点レベルが−10dBm、−11dBm、−12dBmとなるATT41の設定値を例示している。
【0041】
テーブル作成部46は、基準点f特テーブル45の作成又は更新の際に用いられるものであり、設定部17からRF信号中心周波数の情報を入力し、ADC43から基準点レベルの情報を入力するようになっている。
【0042】
制御電圧生成部47は、RF信号中心周波数の情報、ATT41の設定減衰量の情報を設定部17から入力するようになっている。また、制御電圧生成部47は、後述するステップATTf特テーブル51のテーブル値をf特補正値決定部50から入力するようになっている。そして、制御電圧生成部47は、基準点f特テーブル45及びステップATTf特テーブル51を参照し、ステップATT16の周波数特性を考慮して、ATT41の減衰量を設定するための制御電圧を生成してATT41に出力するようになっている。なお、制御電圧生成部47は、本発明に係る制御電圧生成手段を構成する。
【0043】
次に、f特補正値決定部50は、図5に示すような構成を有する。すなわち、f特補正値決定部50は、ステップATTf特テーブル51、帯域幅f特テーブル52、テーブル作成部53、補正値決定部54、フィルタ定数設定部55を備えている。
【0044】
ステップATTf特テーブル51は、ステップATT16の周波数特性を表したものである。このステップATTf特テーブル51のテーブル値は、ATT制御部44の制御電圧生成部47によって参照されるようになっている。なお、ステップATTf特テーブル51は、本発明に係る第3の周波数特性取得手段を構成する。
【0045】
具体的には、ステップATT16の出力側にレベル測定器を接続した状態で、図2(b)に示した校正信号データAを波形データ記憶部11から出力し、RF信号中心周波数をf、f、f・・・と変化させながら、ステップATT16の減衰量(ステップATT値)を0dB、5dB、10dB、・・・とした場合の、理想値と測定値との差を予め求めたものである。ここで、前述の基準点レベルは、各RF信号中心周波数に対して校正した状態、すなわち、周波数特性がフラットな状態にしておく。
【0046】
ステップATTf特テーブル51をグラフ化したものを図6に示す。図6では、RF信号中心周波数が0〜6GHzに対して、ステップATT値が0dB、20dB、40dBの場合の、信号レベルの理想値と測定値との差(dB)を例示している。
【0047】
帯域幅f特テーブル52は、未校正状態でレベル調整器40が出力するRF周波数帯域における信号レベルの周波数特性を表したものである。言い換えると、帯域幅f特テーブル52は、DAC14、15の出力からレベル調整器40の出力までのアナログ回路の周波数特性を表したものである。この帯域幅f特テーブル52は、本発明に係る周波数特性取得手段、第1の周波数特性取得手段を構成する。
【0048】
具体的には、図2(c)に示した校正信号データBを波形データ記憶部11から出力し、RF信号中心周波数fを含む周波数帯域の下限f−fから上限f+fまでRF信号周波数を変化させた場合のADC43の出力レベルについて、理想値と測定値との差を予め求めたものである。ここで、前述の基準点レベルは、各RF信号中心周波数に対して校正した状態にしておく。また、帯域幅f特テーブル52は、RF信号中心周波数fを基準として、この値を例えば0dBとして他の周波数での信号レベルを表している。
【0049】
帯域幅f特テーブル52をグラフ化したものを図7に示す。図7では、RF信号中心周波数が2000MHzで、下限のRF信号周波数が1990MHz、上限のRF信号周波数が2010MHzの場合(帯域幅20MHz)における理想値と測定値との差を例示している。
【0050】
テーブル作成部53は、ステップATTf特テーブル51の作成又は更新の際に用いられるステップATTf特テーブル作成部53aと、帯域幅f特テーブル52の作成又は更新の際に用いられる帯域幅f特テーブル作成部53bとを備え、設定部17からRF信号中心周波数及び帯域幅の情報を入力し、ADC43から基準点レベルの情報を入力するようになっている。ここで、ステップATTf特テーブル作成部53aは、本発明に係る第3の周波数特性取得手段を構成する。また、帯域幅f特テーブル作成部53bは、本発明に係る周波数特性取得手段、第1の周波数特性取得手段を構成する。
【0051】
補正値決定部54は、ステップATTf特テーブル51及び帯域幅f特テーブル52を参照し、試験信号データの周波数特性をフラットに補正するための補正値を決定するようになっている。この補正値決定部54は、RF信号中心周波数及び帯域幅の情報を設定部17から入力するようになっている。
【0052】
フィルタ定数設定部55は、補正値決定部54が決定した補正値に基づいて、DF12のフィルタ定数を設定する信号をDF12に出力するようになっている。このフィルタ定数設定部55は、本発明に係る周波数特性補正手段を構成する。なお、フィルタ定数設定部55は、予め求めた周波数以外のフィルタ定数については、補間処理や近似式生成により求めるようになっている。その結果、DF12が出力する信号は、図8に示すように、破線で示した補正前の周波数特性から、実線で示した補正後の周波数特性になる。したがって、信号発生装置10は、フラットな周波数特性を有するRF試験信号を出力することができる。
【0053】
次に、基準点f特テーブル45及びステップATTf特テーブル51を求める手順について説明する。これらのテーブルの取得は、工場出荷時に行われる。
【0054】
まずに、基準点f特テーブル45を求める手順を図9に示す。図9に示すように、設定部17は、校正信号データA(図2(b)参照)を波形データ記憶部11から出力させる(ステップS11)。
【0055】
続いて、設定部17は、基準点レベルが所定値になるATT41の設定値を周波数ごとに求める(ステップS12)。例えば、設定部17は、図4に示したように、RF信号中心周波数が0〜6GHzに対して、基準点レベルが−10dBm、−11dBm、−12dBm・・・となるATT41の設定値を求める。
【0056】
そして、テーブル作成部46は、基準点f特テーブル45を作成し(ステップS13)、ATT制御部44は、そのデータを記憶する。
【0057】
次に、ステップATTf特テーブル51を求める手順を図10に示す。図10に示すように、ステップATT16の出力側にレベル測定器を接続する(ステップS21)。
【0058】
続いて、設定部17は、校正信号データA(図2(b)参照)を波形データ記憶部11から出力させる(ステップS22)。
【0059】
さらに、設定部17は、RF信号中心周波数とステップATT16の減衰量とを変えて、ステップATT16の出力レベルを測定する(ステップS23)。
【0060】
そして、ステップATTf特テーブル作成部53aは、理想値と測定値とのレベル差を求め、ステップATTf特テーブル51を作成する(ステップS24)。このステップATTf特テーブル51のデータは、f特補正値決定部50が記憶する。
【0061】
次に、本実施形態における信号発生装置10の動作について図11を用いて説明する。
【0062】
設定部17は、ユーザが操作部を操作して設定したユーザ設定値であるユーザ所望の試験信号データ、RF信号中心周波数、信号発生装置10の出力レベル等を所定部に対して設定する(ステップS31)。
【0063】
設定部17は、周波数変換部30の局部発振周波数をユーザ設定値にする(ステップS32)。
【0064】
設定部17は、レベル調整器40の基準点レベルがユーザ設定レベルに対応した値になるよう、基準点レベル及びステップATTの減衰量を設定する(ステップS50)。このステップS50の処理について、図12及び図13を用いて説明する。なお、前述のステップS31において、ユーザが、RF信号中心周波数=1GHz、信号発生装置10の出力レベル=−40.2dBmに設定したものとして以下に説明する。
【0065】
設定部17は、ステップATT16の減衰量を30dBに設定する(ステップS51)。
【0066】
設定部17は、制御電圧生成部47に対し、基準点レベルを−10.2dBmに設定するよう通知するとともに、RF中心周波数が1GHzであることを通知する(ステップS52)。
【0067】
制御電圧生成部47は、ステップATTf特テーブル51(図13(a))を参照することにより、ステップATT値=30dB、RF中心周波数=1GHzでのテーブル値=0.1dBを取得する(ステップS53)。
【0068】
制御電圧生成部47は、ステップS52において設定部17から通知された基準点レベルの設定値(=−10.2dBm)と、ステップS53で取得したステップATT16のテーブル値(=0.1dB)とから、実際の基準点レベルを−10.3dBmに決定する(ステップS54)。
【0069】
制御電圧生成部47は、基準点f特テーブル45(図13(b))を参照することにより、RF信号中心周波数=1GHzの信号の基準点レベルが−10.3dBmとなるATT41の制御電圧値はVであることを取得し、制御電圧値=Vの制御電圧を生成してATT41に出力する(ステップS55)。
【0070】
以上の動作により、基準点レベルにおいて−10.3dBmに制御された信号は、ステップATT16に入力されて29.9dB減衰され、信号発生装置10からは出力レベル=−40.2dBmの信号が出力される状態となる。以下、図11に戻り、説明を続ける。
【0071】
設定部17は、校正信号データB(図2(c)参照)を波形データ記憶部11からDF12に出力させる(ステップS33)。ここで、DF12はフィルタを適用しない状態(フィルタスルー)としておく。校正信号データBのデータは、DAC14及び15によって、アナログ信号からデジタル信号に変換され、直交変調器20によって直交変調信号が生成される(ステップS34)。
【0072】
一方、局部発振器31は、ステップS32において設定された局部発振周波数の局部発振信号を生成し(ステップS35)、乗算器32に出力する。
【0073】
乗算器32は、直交変調器20からの直交変調信号と、局部発振器31からの局部発振信号とを乗算して、所定の周波数帯域のRF信号を生成し(ステップS36)、レベル調整器40に出力する。
【0074】
帯域幅f特テーブル作成部53bは、掃引帯域幅内の各周波数における検波器42の出力レベルをADC43を介して測定する(ステップS37)。
【0075】
帯域幅f特テーブル作成部53bは、理想値と測定値とのレベル差を求め、帯域幅f特テーブル52を作成する(ステップS38)。この帯域幅f特テーブル52のデータは、f特補正値決定部50が記憶する。
【0076】
補正値決定部54は、ステップATTf特テーブル51及び帯域幅f特テーブル52を参照してf特補正値を決定し(ステップS39)、決定した補正値をフィルタ定数設定部55に出力する。
【0077】
フィルタ定数設定部55は、補正値決定部54が決定した補正値に基づき、DF12に対し、ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性をフラットにするためのフィルタ定数を設定する(ステップS40)。
【0078】
設定部17は、試験信号データを波形データ記憶部11から出力させる(ステップS41)。出力された試験信号データは、DF12によって周波数特性が補正される(ステップS42)。その結果、出力レベルの周波数特性がフラットに補正されたRF試験信号として信号発生装置10から出力される。
【0079】
以上のように、本実施形態における信号発生装置10は、帯域幅f特テーブル52に基づいてベースバンド信号の信号レベルの周波数特性をDF12によって補正することにより、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【0080】
また、本実施形態における信号発生装置10は、ステップATTf特テーブル51に基づいてベースバンド信号の信号レベルの周波数特性をDF12によって補正することにより、ステップATTの周波数特性を加味して補正することができ、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【0081】
また、本実施形態における信号発生装置10は、基準点f特テーブル45に基づいてレベル調整器40の基準点の周波数特性を加味して補正することができ、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができる。
【産業上の利用可能性】
【0082】
以上のように、本発明に係る信号発生装置及び信号発生方法は、広帯域無線周波数信号の信号レベルの周波数特性を補正することができるという効果を有し、携帯電話やモバイル端末等の移動通信端末に対する特性試験において供給される無線周波数信号の周波数特性を補正する信号発生装置及び信号発生方法として有用である。
【符号の説明】
【0083】
10 信号発生装置
11 波形データ記憶部
12 DF(周波数特性補正手段)
14、15 DAC
16 ステップATT(第2の出力レベル調整手段)
17 設定部
20 直交変調器(変調信号生成手段)
21、22 乗算器
23 局部発振器
24 90度移相器
25 加算器
30 周波数変換部
31 局部発振器(局部発振信号生成手段)
32 乗算器(無線周波数信号生成手段)
40 レベル調整器
41 ATT(出力レベル調整手段、第1の出力レベル調整手段)
42 検波器
43 ADC
44 ATT制御部
45 基準点f特テーブル(第2の周波数特性取得手段)
46 テーブル作成部(第2の周波数特性取得手段)
47 制御電圧生成部(制御電圧生成手段)
50 f特補正値決定部
51 ステップATTf特テーブル(第3の周波数特性取得手段)
52 帯域幅f特テーブル(周波数特性取得手段、第1の周波数特性取得手段)
53 テーブル作成部
53a ステップATTf特テーブル作成部(第3の周波数特性取得手段)
53b 帯域幅f特テーブル作成部(周波数特性取得手段、第1の周波数特性取得手段)
54 補正値決定部
55 フィルタ定数設定部(周波数特性補正手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースバンド信号を変調して変調信号を生成する変調信号生成手段(20)と、
予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成手段(31)と、
前記変調信号と前記局部発振信号とを乗算して所定の周波数帯域の無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成手段(32)と、
前記周波数帯域の信号レベルの周波数特性を前記無線周波数信号の中心周波数を基準として取得する周波数特性取得手段(52、53b)と、
前記周波数特性取得手段が取得した周波数特性に基づいて前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正する周波数特性補正手段(12、55)と、
を備えたことを特徴とする信号発生装置。
【請求項2】
請求項1に記載の周波数特性取得手段を第1の周波数特性取得手段として備え、
前記無線周波数信号生成手段が生成した無線周波数信号の出力レベルを調整する出力レベル調整手段(41)と、
前記出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を取得する第2の周波数特性取得手段(45、46)と、
前記第2の周波数特性取得手段が取得した周波数特性に基づいて前記出力レベル調整手段の調整量を制御する制御電圧を生成し、前記出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を補正する制御電圧生成手段(47)と、
をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の信号発生装置。
【請求項3】
請求項2に記載された出力レベル調整手段を第1の出力レベル調整手段として備え、
前記第1の出力レベル調整手段の出力信号の出力レベルを調整する第2の出力レベル調整手段(16)と、
前記第2の出力レベル調整手段の出力レベルの周波数特性を取得する第3の周波数特性取得手段(51、53a)と、をさらに備え、
前記第1の周波数特性補正手段は、前記第3の周波数特性取得手段が取得した周波数特性を加味して前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正するものであることを特徴とする請求項2に記載の信号発生装置。
【請求項4】
ベースバンド信号を変調して変調信号を生成する変調信号生成ステップ(S34)と、
予め定められた局部発振周波数の局部発振信号を生成する局部発振信号生成ステップ(S35)と、
前記変調信号と前記局部発振信号とを乗算して所定の周波数帯域の無線周波数信号を生成する無線周波数信号生成ステップ(S36)と、
前記周波数帯域の信号レベルの周波数特性を前記無線周波数信号の中心周波数を基準として取得する周波数特性取得ステップ(S38)と、
前記周波数特性取得ステップにおいて取得した周波数特性に基づいて前記ベースバンド信号の信号レベルの周波数特性を補正する周波数特性補正ステップ(S42)と、
を含むことを特徴とする信号発生方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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