説明

偏光性材料

【課題】扁平化金属粒子を分散して含有し,それらの粒子の短軸が一定方向に配向しているものである,ガラスを基材とする偏光性材料,及び,当該材料の製造のための,配向した扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有するガラスの提供。
【解決手段】ガラス基材中の少なくとも表面層に扁平化金属粒子を分散して含有し,該扁平化金属粒子の短軸が一定方向に配向しているものである偏光性材料であって,ガラス転移点がTg500℃を超えず,且つTg+10℃における粘度ηが1.0×1012dPa・sを下回らないこものであることを特徴とする偏光性材料,並びに,これらの特徴を備え,但し粒子が扁平化ハロゲン化金属粒子である,偏光性材料製造用ガラス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,偏光性材料,特に偏光子に関し,より詳しくは,可視光領域での使用に特に適した偏光性材料,特に偏光子に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶プロジェクター,液晶リアプロジェクションディスプレイ等では,主に有機系吸収型偏光子が用いられている。有機系吸収型偏光子には,熱や光(特にエネルギーの高い青色光)により経時劣化が起こってしまうという欠点がある。そのため,耐熱性・耐光性に優れた無機系偏光子が求められている。
【0003】
無機系吸収型の偏光子としては,形状異方性の金属銀粒子を分散して含んだ偏光子の基本的な製造方法が特許文献1〜3に示されている。それらの方法は,Ag及びハロゲン(Cl,Br又はI)を成分として含むガラスを熱処理してハロゲン化銀粒子を析出させた後,そのガラスを押し出し又は延伸して紡錘形(prolate)の形状異方性ハロゲン化銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだガラスとし,次いでこれを還元処理することにより,紡錘形の金属銀粒子を,その長軸を特定方向に配向させた形で分散して含んだ偏光子とするものである。偏光子として機能するためには,紡錘形の金属銀粒子の長軸の配向する方向と偏光子の光入射面(光を入射させる面)とが平行であることが必要である。
【0004】
可視光域のうち緑色領域で高透過率且つ高消光比を示す偏光子の製法として,ハロゲン化銀粒子のサイズを小さくする方法が特許文献4,5に示されている。
【0005】
しかしながら,金属銀粒子を用いてこれまでに得られている偏光子には,可視光領域特に青色〜緑色領域において,高透過率と高消光比を両立させることが困難であるという欠点があった。
【0006】
更に特許文献6には,金属銀粒子及び/又はハロゲン化銀粒子を含有するガラスを,ガラスの流動方向に粒子が引き延ばされて整列するような方法で押出し成形することによって,フォトクロミック又は非フォトクロミックの,偏光性を有するガラスを製造する方法が開示されている。同文献には,押出し成形で得られた粒子が紡錘形の場合,二色比は平均で1.8〜3.0となること,及び,粒子が紡錘形よりも偏球形(oblate)の場合に二色比がより大きく(最大5.0まで)なることが述べられている。しかしながら,この程度の二色比の値が示す偏光性は,偏光子に求められる偏光性(消光比)のレベルよりはるかに低い。また,同文献には,押出し成形の具体的方法に関しては,直径1インチのガラスディスクを直径0.25インチの棒へと,すなわち断面積が1/16に縮小するように押出し成形したことが記載されているのみである(従って,中心軸方向の寸法は16倍に延ばされたと推定される)。しかしながら,この方法では元のガラスディスクが,周囲から中心方向へと圧縮されつつ厚さ(長さ)方向に延びるため,含まれていた粒子は紡錘形へと変形される筈であり,偏球形にはなり得ない。すなわち同文献には,偏球形の粒子を形成させる方法についての記載はない。
【0007】
また,非特許文献1には,塩化銀の微結晶を含んだ円柱状のガラスを加熱下に高さ方向に圧縮してディスク状にし,サンプルを切り出し,含まれる塩化銀の形状について偏球形であったとしている。そして圧縮方向に平行な面で切り出したサンプルに紫外線を照射して着色させた後,圧縮方向と平行な方向に分極した光と,垂直に分極した光をサンプルに入射させてそれぞれ測定した吸光度をグラフで表示している(第98頁図5(a)及び(b))。しかしながら,それらのグラフにおいて,青色〜緑色領域の3つの波長450nm,550nm,及び500nmについて見ると,それら分極方向の異なる2とおりの入射光での吸光度の相違は,それぞれ,約1.6倍,約2.4倍,及び約2.0倍に過ぎず,偏光性が極めて不十分である。
【0008】
特許文献7,8には誘電体の少なくとも表面層に3次元的に長さの異なる金属粒子が分散配向した偏光子が記載されているが,可視光,特に青色領域での性能向上のために要求される粒子形状,金属の種類,誘電体の屈折率については記載されておらず,誘電体を変形させるための熱物性は記載されていない。なお,該文献で誘電体として用いられているガラス材料はそれぞれパイレックス(登録商標),BK−7と記載されており,どちらもガラス転移点は550℃以上である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】米国特許4304584号公報
【特許文献2】米国特許4479819号公報
【特許文献3】特開平4−208844号公報
【特許文献4】特開2008−162810号公報
【特許文献5】特開2008−225483号公報
【特許文献6】米国特許4282022号公報
【特許文献7】特開平07−056018公報
【特許文献8】特開平10−133015号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】Y. Kimura et al., Physics and Chemistry of Glasses, 18(5), p.96-100(1977).
【非特許文献2】A.N.Gent , J.Appl.Phys.,17,p458, (1946).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記の背景において本願の出願人は,本願に先立ち,紡錘形金属粒子ではなく,扁平化金属粒子をガラス等の透明無機固体基材中に分散して含有し,該扁平化金属粒子の短軸が一定方向に配向しているものである,偏光性材料の製造方法を発明し,これにつき特許出願を行った(本願出願時点で未公開の特願2010−198286号)。当該製造方法によれば,可視光領域特に青色領域で高性能を示す偏光子を作製することができる。
【0012】
扁平化金属粒子を分散した偏光ガラスは,これを一軸延伸によって作製しようとすれば複数回にわたって別方向に延伸するなどの方法を取る必要があるが,このような方法は実施が困難であるため,圧縮や押出といった成形方法を取ることが好ましい。しかるに,延伸ではガラスの高温部が装置の部材と接触することがないのに対し,圧縮や押出では高温のガラスと金型とが直接に,しかも高圧で接触し,そのため金型の劣化が速く進むという問題がある。金型の劣化を抑制するには,成形時の温度を低くすることが有効である。成形を行う温度の指標としてガラス転移点Tgもしくは屈伏点Atを用いることができる。しかし,ガラス転移点を下げる成分は高屈折率化に寄与し,多く含有すると青色域における吸収損失を高めてしまうという問題を生じる。
【0013】
本発明の目的は,これらの問題を解決し,扁平化金属粒子を分散して含有し,それらの粒子の短軸が一定方向に配向しているものである,ガラスを基材とする偏光性材料,及びそのような偏光性材料の製造のための,扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有し,それらの粒子の短軸が一定方向に配向しているものであるガラスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は,上記課題の解決のため,成形条件を検討した結果,成形温度(これはガラス転移点以上である。)における粘性が低過ぎないことが好ましいことが判明した。この結果を踏まえて種々のガラス組成を検討した結果,Tg+10℃における粘性ηを指標として,η(Tg+10℃)が1.0×1012dPa・sを下回らないガラス基材が好ましいことが判明した。本発明は,この知見に基づき,更に検討を重ねて,透明無機固体基材として従来より適したガラス基材を見出し,これに基づき本発明を完成させた。すなわち本発明は,以下を提供するものである。
【0015】
(1)ガラス基材中の少なくとも表面層に扁平化金属粒子を分散して含有し,該扁平化金属粒子の短軸が一定方向に配向しているものである偏光性材料であって,ガラス転移点Tgが500℃を超えず,且つTg+10℃における粘度ηが1.0×1012dPa・sを下回らないものであることを特徴とする偏光性材料。
(2)屈伏点Atが550℃を超えないものである,上記1の偏光性材料。
(3)d線に対する屈折率ndが1.50を超えないものである,上記1又は2の偏光性材料。
(4)該扁平化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2である上記1ないし3の何れかの偏光性材料。
(5)該金属が銀又は銀合金である,上記1ないし4の何れかの偏光性材料。
(6)銀が0.05重量%以上含有されているものである,上記5の偏光性材料。
(7)該扁平化金属粒子が短軸とこれに直交し相互にも直交する長さの異なる2本の長軸を有し,該短軸及び該2本の長軸が,それぞれ一定方向に配向しているものである,上記1ないし6の何れかの偏光性材料。
(8)該扁平化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該2本の長軸のうち短い方の長さ(b)の比の平均値が、少なくとも1.2である,上記1ないし7の何れかの偏光性材料。
(9)該偏光性材料が組成として,
SiO+Al:10〜60重量%
:25〜60重量%
NaO+KO:5〜20重量%
Ag:0.05重量%以上
Cl:0.05重量%以上
を含んでなるものであることを特徴とする上記1ないし8の何れかの偏光性材料。
(10)上記1ないし9の何れかの偏光性材料であって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化金属粒子の短軸の配向方向が平行なものである,偏光子。
(11)上記1ないし9の何れかの偏光性材料であって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化金属粒子の短軸及び一方の長軸の配向方向が共に平行なものである,偏光子。
(12)該扁平化金属粒子の短軸の長さに対する該板の表面に垂直な方向に配向した長軸の長さの比の平均値が,少なくとも1.4である,上記11の偏光子。
(13)該扁平化金属粒子の2本の長軸のうち,該板の表面に対して平行に配向した長軸の長さより,該板の表面に対して垂直に配向した長軸の長さの方が長いものである,上記11又は12の偏光子。
(14)430nm〜700nmの何れかの波長の直線偏光について,粒子の短軸の配向方向と該直線偏光の電場ベクトルが平行な場合における透過率が30%以上であり,且つ消光比が10dB以上である,上記11ないし13の何れかの偏光子。
(15)430nm〜450nm,450nm〜500nm,及び500nm〜550nmのうち少なくとも何れかの波長範囲にわたって,直線偏光に対する消光比が15dB以上である,上記11ないし14の何れかの偏光子。
(16)ガラス基材中に扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有し,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸が一定方向に配向しており,ガラス転移点Tgが500℃を超えず,且つTg+10℃における粘度ηが1.0×1012dPa・sを下回らないものであることを特徴とする,偏光性材料製造用ガラス。
(17)屈伏点Atが550℃を超えないものである,上記16の偏光性材料製造用ガラス。
(18)d線に対する屈折率ndが1.50を超えないものである,上記16又は17の偏光性材料製造用ガラス。
(19)該扁平化ハロゲン化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2である上記16ないし18の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
(20)該金属が銀又は銀合金である,上記16ないし19の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
(21)銀が0.05重量%以上含有されているものである,上記20の偏光性材料製造用ガラス。
(22)該扁平化ハロゲン化金属粒子が短軸とこれに直交し相互にも直交する長さの異なる2本の長軸を有し,該短軸及び該2本の長軸が,それぞれ一定方向に配向しているものである,上記16ないし21の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
(23)該扁平化ハロゲン化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該2本の長軸のうち短い方の長さ(b)の比の平均値が、少なくとも1.2である,上記16ないし22の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
(24)該偏光性材料製造用ガラスが組成として,
SiO+Al:10〜60重量%
:25〜60重量%
NaO+KO:5〜20重量%
Ag:0.05重量%以上
Cl:0.05重量%以上
を含んでなるものであることを特徴とする上記1ないし8の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
(25)上記16ないし24の何れかの偏光性材料製造用ガラスであって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸の配向方向が平行なものである,偏光性材料製造用ガラス。
(26)上記16ないし25の何れかの偏光性材料製造用ガラスであって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸及び一方の長軸の配向方向が共に平行なものである,偏光性材料製造用ガラス。
(27)該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸の長さに対する該板の表面に垂直な方向に配向した長軸の長さの比の平均値が,少なくとも1.4である,上記26の偏光性材料製造用ガラス。
(28)該扁平化ハロゲン化金属粒子の2本の長軸のうち,該板の表面に対して平行に配向した長軸の長さより,該板の表面に対して垂直に配向した長軸の長さの方が長いものである,上記26又は27の偏光性材料製造用ガラス。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,可視光領域,とりわけ青色〜緑色領域において従来のものより優れた特性を示す偏光性材料,特に偏光子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】実施例1の熱処理済母材ガラス1mm厚での透過率曲線。
【図2】実施例1でのガラスの変形を表す概念図。
【図3】実施例1で製造した偏光子の透過率曲線。E//aは,電場ベクトルが扁平金属粒子の短軸の配向方向(a)と平行な場合における偏光の透過率を,E//bは,電場ベクトルがこれと垂直な場合における透過率曲線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
実施例の部において述べるように,実験の結果,本発明の偏光子が従来の紡錘形金属粒子を用いた偏光子に比して,可視光領域,特に青色〜緑色領域において優れた特性を示すことが見出された。
【0019】
本発明において,「偏光性材料」というときは,偏光性を有する材料をいい,偏光子を包含する。
【0020】
本発明において,偏光性材料製造用ガラスは,これを(必要な場合,切り出し等の加工の後)還元して,一定方向に配向した扁平化ハロゲン化金属粒子の少なくとも一部を扁平化金属粒子に変換することで,偏光性材料を与える。
【0021】
なお本発明において,扁平化金属粒子について,「少なくとも表面層に含んだ」とは,ガラスの中心部に含まれる扁平化ハロゲン化銀粒子までが全て金属粒子へと変換される必要がないことを示すに過ぎず,「表面層」は,何らかの特定の厚みを有する層でなければならないことを意味しない。
【0022】
本発明の偏光性材料特に偏光子の製造は,例えば,ハロゲン化銀等のハロゲン化金属粒子(球状)を分散して含有する透明無機固体材料(ガラス)を準備し,これを加熱下に一軸圧縮して扁平化し,それにより粒子も同時に扁平化させ,得られた材料をそのまま,短軸の方向に(すなわち圧縮方向に)平行な面で板状に切り出し,ハロゲン化金属粒子を金属粒子へと還元することにより行うことができる。
【0023】
本発明において,球に関して「扁平化」した形状とは,直角座標(デカルト座標)の原点に球の中心を置き,(i) 球の寸法を例えばx軸方向に寸法を縮小して得られる形状(偏球形:oblate)のほか,(ii) x軸方向のそのような縮小と同時に例えばz軸方向に寸法を拡大することにより得られる形状も包含する。現実の球状粒子は体積が実質上一定であることから,x軸方向への圧縮はこれと直交する放射方向に径の拡張をもたらすが,得られる形状は,上記(i)で得られる何れかの偏球と実質上相似である。また,現実の球状粒子をx軸方向に圧縮するのと同時にy軸方向へそれが拡張するのを阻止又は抑制することにより,z軸方向への拡張が余分に起こり,上記(ii)で得られる形状に概略相似である。
【0024】
なお,上記(ii)のタイプの形状も,y軸方向の拡張の抑制の程度小さいほど上記(i)のタイプの形状に近づき,抑制の程度がゼロであれば上記(i)のタイプの形状に完全に一致するから,上記(i)の形状は上記(ii)の形状の特別の場合として,後者に包含される。また,本発明の偏光性材料中の扁平化金属粒子(及び還元前の扁平化したハロゲン化金属粒子)は,数学的な厳密さを以て上記(i)又は(ii)の形状に一致することまでが求められるものでなく,実質上それら(i)又は(ii)のタイプの形状として観念することができるものであれば足りる。すなわち,(i)のタイプの粒子では,1本の短軸を有し,該短軸に垂直な断面において実質的に円形であればよく,(ii)のタイプの粒子では,一本の短軸を有し,該短軸に垂直な断面において実質的に楕円形であればよい。
【0025】
本発明において,扁平化金属粒子について「短軸」とは,該粒子の3軸中,最も短い長さ(a)のものをいう。上記(i)のタイプの偏球形の扁平化金属粒子の場合,2本の長軸の方向は不定であるが,それらの長さ(b,c)は定まり,それらは互いに等しい(すなわち,a<b=c)。また,異なる長さの3軸を有する上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子の場合,短軸(長さa)以外の2本の軸を長軸とし,それらのうち短い方の長さをb,長い方の長さをcで表す(すなわち,a<b<c)。
【0026】
従来の紡錘形金属粒子に基づく偏光子においては,粒子の長軸を偏光子の表面(光入射面)に平行に配向させることで偏光特性を得ているが,本発明の偏光子では,粒子の短軸が偏光子の表面に平行になるように作製される。特に,上記(i)のタイプの扁平化金属粒子では,そもそも長軸の方向は不定である。また長さの異なる3本の軸を有する上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子を用いる偏光子では,偏光子の表面に粒子の短軸が平行である一方,粒子は,表面に垂直な深さ方向に,短軸より長い軸を持っており,これは紡錘形の粒子を用いる偏光子には無い重要な特徴の一つである。この表面に垂直な,深さ方向の軸は,2本の長軸の何れであることもできる。また,長い方の長軸を偏光子の表面に対して垂直に,すなわち深さ方向に配向させた場合,青色〜緑色領域に優れた偏光子を製造する上で,とりわけ有利である。
【0027】
本発明の偏光性材料は,必要に応じ切り出し又は研磨等の加工を施して,偏光子とするのに適している。
【0028】
本発明において,ガラス基材中に懸濁して含有される粒子のある軸について「配向」しているとは,含有されるそれらの粒子の当該軸の方向の分布に,全体として特定の方向の偏りがある(すなわち,等方性でない)ことをいう。この特定方向の偏りは,必ずしも当該軸の全てが実質上正確に当該特定の方向を向いていることまでは要しない。何故なら,偏光特性は,基材中に分散して含まれるそれらの無数の粒子があくまでも集団として入射光と相互作用する結果として観察される特性であるため,粒子の集団が全体として(すなわち,粒子の軸方向の分布の平均値として),特定方向に軸を向けていれば,偏光特性は得られるからである。
【0029】
本発明においてガラス基材は,偏光子として利用しようとする波長帯域において,利用しようとする厚みの場合に80%以上の内部透過率(表面及び裏面での反射損失を除いた,物体の内部を光が横切る際の透過率)を示す無機材料であることが好ましい。
【0030】
本発明において,ガラス基材の屈折率(偏光性材料の屈折率に等しい)(nd:ヘリウムのd線に対する屈折率)は,1.50以下とすることによって従来に比べ優れた性能を発現させることができ,より好ましくは1.49以下とすることがよく,更に好ましくは1.48以下とするとよい。
【0031】
本発明において,ガラス基材のガラス転移点(偏光性材料のガラス転移点に等しい)Tgは500℃を超えないことが好ましく,480℃を超えないことがより好ましく,450℃以下を超えないことが更に好ましい。
【0032】
屈伏点(At)は550℃を超えないことが好ましく,520℃を超えないことがより好ましく,490℃を超えないことが更に好ましい。
なお,屈伏点(At)とは,熱機械分析装置(TMA)で熱膨張測定をしたとき、ガラスの軟化によって,膨張曲線が上昇から下降に転じる極大点をいう。
【0033】
本発明において,扁平化金属粒子について「短軸の長さに対する該粒子の幅の比の平均値」とは,上記(i)のタイプの扁平化金属粒子の場合,についていうときは,偏光性材料中に観察される個々の粒子について「幅(すなわち長軸の長さ)/短軸の長さ」により求められる比の個数平均を意味する。また上記(ii)のタイプの扁平化金属粒子についていうときは,同様に,個々の粒子について「長軸の長さに/短軸の長さ」により求められる比の個数平均を意味し,2本の長軸に関してそれぞれ算出される。
【0034】
本発明において偏光性材料中の扁平化金属粒子の短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(又は,長軸の長さ(b=c))の比の平均値は,1.2以上であることが好ましく,1.4以上であることがより好ましい。この比に特段の上限はないが,通常は100以下でよく,より好ましくは70以下,更に好ましくは40以下,なおも好ましくは15以下,特に好ましくは10以下とすればよい。
【0035】
また,異なる長さの3軸(a,b,c)(それぞれの長さ,a<b<c)を有する上記(ii)のタイプの粒子の場合も,同様に,aに対する,bの比の平均値は,少なくとも1.2であることが好ましく,1.4以上であることがより好ましい。また,bに対するcの比の平均値は,1を超える任意の値に設定することができるが,少なくとも1.2とすることがこのタイプの粒子の更なる利点を生かす上で好ましく,1.4以上とすることがより好ましく,3以上とすることが更に好ましく,5以上とすることが特に好ましい。bに対するcの比に特段の上限はないが,通常は10以下で十分であり,8以下としてもよい。また,aに対するcの比の平均値は,上記のa及びbの比の平均値と,b及びcの比の平均値とに従って定まり,それ以外に特段の制限はない。
【0036】
扁平化金属粒子は,その粒子径(短軸の長さ)の平均値が小さいほど短波長域でも高透過率となりやすく,その粒子径は200nm以下であることが好ましく,150nm以下であることがより好ましく,100nm以下であることが更に好ましい。
【0037】
本発明において,扁平化金属粒子を構成する金属として特に好ましいのは,銀又は銀合金である。「銀合金」としては,銀とカドミウム,インジウムとの合金が挙げられるが,それ以外の金属と銀との合金であってもよい。カドミウム,インジウム以外の金属と銀と合金の場合,合金中の銀の含有量は,50重量%以上であることが好ましい。
【0038】
扁平化金属粒子を構成する金属として銅,カドミウム,インジウム及び/又はそれらの合金,又は銅,カドミウム,インジウムと銀との合金の何れを用いる場合も,銀のみを用いる場合も,同様に,ハロゲン化金属の形で,例えばガラス基材中に配合し,加熱して球状のハロゲン化金属粒子として分散して析出させ,ガラスを圧縮して扁平化し,ガラスの固化後に,大気圧下の水素ガス中での加熱等の適宜な方法で還元することにより,本発明の偏光性材料を与え,そこから偏光子を作製することができる。
【0039】
ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有するガラスは,組成としてハロゲン及び当該金属を含有する適宜の組成になるガラスを製造し,これを熱処理することにより得ることができる。
【0040】
本発明において,ガラス基材中のハロゲン化金属の球状粒子を扁平化し,その短軸を(及び該当する場合は他の軸も)配向させるステップでは,ガラスを軟化する温度まで加熱し,ガラスに一方向から圧力を加えて,ガラスおよびその内部に分散した粒子を変形させ,除荷しても粒子が元の球状へは戻らない温度(通常,ガラス転移温度より50度低い温度まで冷却すればよい)まで冷却させた後,除荷を行う。軟化させる程度は,加える圧力の種類と大きさ,及び加圧時間によって異なるが,概ねη=1011〜1013dPa・sの範囲である。
【0041】
ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有するガラスの一軸圧縮は,例えば,加熱した状態のガラスをプレスして単一の方向に圧力を加えることにより,行うことができる。ガラスにかける圧力の大きさは適宜であるが,ハロゲン化金属粒子を充分に変形させるために,通常は少なくとも100kgf/cmとすることが好ましく,200kgf/cm以上とすることがより好ましく,300kgf/cm以上とすることが更に好ましい。但し,緩やかに圧縮が行われる限り,加熱下におけるガラスの粘度に応じて圧力は適宜設定すればよい。圧縮にかける時間も適宜であってよいが,通常,例えば数分〜数時間とすることができる。勿論,ガラスが圧縮変形の速度に追随する限り,より短時間で圧縮を完了させてもよい。
【0042】
上述の(ii)のタイプの,異なる長さ(それぞれ,a,b,cであり,a<b<c)の3軸を有する扁平化金属粒子を含有する偏光性材料の製造は,種々の方法で行うことができる。例えば実施例に記載されているように,にハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有するガラスを決まったサイズの溝の中に嵌めて,これを上から圧縮すること(一軸拘束一軸圧縮)により行うことができる。この場合,溝の壁に垂直な方向へはガラスは変形せず,溝の長手方向にのみ延びる。圧縮方向の寸法が1/n(n>1)となるようにガラスを圧縮したとすると,圧縮方向寸法:幅方向寸法:長手方向寸法=1/n:1:n=1:n:n2となる。これに応じて,元は球状であったハロゲン化金属粒子は,長さの異なる3軸を有するように変形する。
【0043】
また,別の方法としては,溝の両側を可動の壁で構成し,一軸圧縮の間,それらの壁を両側から所定の力で圧してしておく(緩衝性の材料,ばね,油圧等)ようにすることにより,その両側からの圧力と,一軸方向の加圧によって粘性のガラス内に生じたに横方向の応力(と両者の接触面積との積)とが釣り合う位置まで壁が後退する一方,溝の長手方向にはガラスは自由に延びるため,加圧方向には短縮し,溝の長手方向には自由に拡張し,これに加えて溝と垂直の方向にある程度拡張した形へと,ガラスを変形させることができ,それに応じて,含有されるハロゲン化金属粒子の形状も,短軸及び2本の異なる長さの長軸が生ずるように変形する。
【0044】
更に別の方法として,ハロゲン化金属の球状粒子を分散して含有するガラスを,直交する二軸方向から圧縮してもよい(二軸圧縮)。これは,例えば,上記において,溝の上方からのガラスの圧縮に際し,溝の両側を構成する可動の壁を内側に圧して溝の幅を狭めるようにすることによって行うことができる。二軸圧縮を行う場合,主たる圧縮方向(Da)の圧縮比(ガラスの圧縮前の寸法:圧縮後の寸法)よりも,これに直交する方向(Db)の圧縮比を小さくしておくことが好ましく,Da方向の圧縮比の50%以下とするのがより好ましく,40%以下にするのが好ましく35%以下とするのが特に好ましい。
【0045】
上記により得られる,扁平化ハロゲン化金属粒子を含有するガラスを還元処理に付すことによって,扁平化ハロゲン化金属粒子の少なくとも一部を還元して金属粒子に変換することができる。還元処理は,例えば,同ガラスを水素雰囲気中で加熱することにより行うことができる。加熱は,扁平化しているハロゲン化金属粒子が再球状化するおそれのない温度で行うことが好ましい。ガラス転移点より低い温度の加熱であれば,このおそれは回避できる。
【0046】
本発明の偏光子は,430nm〜700nmの何れかの波長の直線偏光について,粒子の短軸の配向方向と該直線偏光の電場ベクトルが平行な場合における透過率が,好ましくは50%以上,より好ましくは60%以上,更に好ましくは70%以上であり,且つ当該光について消光比が,好ましくは10dB以上,より好ましくは15dB以上,更に好ましくは20dB以上である。
【0047】
本発明において,透明無機固体基材としてのガラスとしては,SiO,B,Al,アルカリ金属酸化物(RO)等を主成分とするガラスにAg,ハロゲンを添加したものを用いることができる。
【0048】
より具体的には,
SiO+Al:10〜60重量%
:25〜60重量%
NaO+KO:5〜20重量%
Ag:0.05重量%以上
Cl:0.05重量%以上
を主成分とするガラスを,本発明において好適に使用することができる。
【0049】
本発明における偏光ガラスの組成についてより詳しく説明する。
SiOは,ガラスのTgを上げ,ガラスのTg付近での粘性を上げる効果がある。これらの兼ね合いから,SiOの含有量は,10〜50重量%とするのが好ましく,20〜47重量%とするのがより好ましく,30〜45重量%とするのが更に好ましい。
【0050】
はガラスのTgを下げることができるが,Tg付近での粘性を低下させる。これらの兼ね合いから,Bの含有量は,25〜60重量%とするのが好ましく,30〜50重量%とするのがより好ましい。
【0051】
Alは,ガラスのTgを上げ,Tg付近での粘性を上げ,耐候性を著しく向上させる効果がある。これらの兼ね合いから,SiO+Al含有量は10〜60重量%とするのが好ましく,20〜55重量%とするのがより好ましく,30〜50重量%とするのが更に好ましい。
【0052】
アルカリ金属酸化物はTgを下げるために必須の成分である。屈折率上昇効果の少ないNaOとKOを選択することが好ましい。NaO+KOの含有量はは5〜20重量%とするのが好ましく,8〜17重量%とするのがより好ましく,10〜15重量%とするのが更に好ましい。
【0053】
扁平化金属粒子として銀を採用する場合,もとのガラス基材に含有させる銀の量は,0.05重量%以上とすることが好ましく,0.10重量%以上とすることがより好ましく,0.15重量%以上とすることが更に好ましい。銀の含有量に明確な上限はないが,失透の懸念を少なくするには1.5重量%以下とするのが好ましく,1.2重量%以下とするのがより好ましい。例えば,0.2〜0.8重量%等とすることができる。
【0054】
ハロゲンとしては,析出したハロゲン化銀が青色領域の光を吸収しないよう,Clを選択することが好ましい。Clの量はAgの化学当量以上とし,0.05重量%以上とすることが好ましく,0.10重量%以上とすることがより好ましい。Clの含有量に明確な上限はないが,失透の懸念を少なくするには1.0重量%以下とするのが好ましく,0.8重量%以下とするのがより好ましい。例えば,0.15〜0.6重量%等とすることができる。
【0055】
また,Fはハロゲン元素であるが,AgFとして析出はせず,ガラス中に残存し,ガラスのTgを下げる効果を生じるため任意成分として添加しても良い。
【0056】
他に,任意成分として,LiO,MgO,CaO,SrO,BaO,ZnO,PbO,TiO,ZrO,Nb,La,CeO,Sb等を諸特性(熱膨張係数,硬度,化学的耐久性等)を調整するために用いることもできるが,高屈折率化成分であるため,含有量は抑えることが好ましい。ここに挙げた成分の合計は,例えば5重量%以下とすることが好ましい。
【0057】
また,CuOはガラスを着色成分であるため含有させないことが好ましい。
【実施例】
【0058】
以下,実施例を参照して本発明を更に詳細に説明するが,本発明が実施例に限定されることは意図しない。
【0059】
〔実施例1〕
<母材ガラスの製造>
重量%でSiO:44.6,B:33.8,Al:2.9,AlF:4.8,KO:13.5,Ag:0.32,Cl:0.15の組成からなる母材ガラスを作製した。すなわち,それぞれの組成を与えるように混合した原料を500ccの白金坩堝にて1450℃で溶解した後,鋳型に流し込み,ガラス転移点以下まで一旦冷却し,母材ガラスブロックを得た。作製したガラスのガラス転移点Tgは410℃,降伏点Atは485℃(TMAで測定),屈折率ndは1.477であった。
【0060】
粘度η(Tg+10℃)は非特許文献2に記載された平行平板法に基づき,10mmφ×10mmHの円柱プリフォームを用いて10kNを負荷して測定,算出した。数式1において,Fは荷重,tは時間,Vはガラス円柱の体積,hは時刻0における円柱の高さ,hは時刻tにおける円柱の高さである。η(Tg+10℃)=3.0×1012dPa・sであった。
【0061】
【数1】

【0062】
この母材ガラスブロックを560℃に保持した電気炉中で4時間熱処理し,熱処理済母材ガラスブロックを作製した。この熱処理済母材ガラスは,ハロゲン化銀結晶の析出によって白色に濁っていた。熱処理済母材ガラスを1mm厚に研磨し,分光光度計を用いて透過率を測定した。透過率曲線を図1に示す。
【0063】
また,熱処理済母材ガラスについて,析出したハロゲン化銀結晶の粒子径の計測を行った。計測の手順は次のとおりである。すなわち,熱処理済母材ガラスを破断して平滑面を得た。得られた平滑面を5重量%HF水溶液で15秒間エッチングした。析出粒子部分が選択的に溶解してできる球形の孔を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察して行った。粒子径は小さく正確に測定できないが50nm以下であった。
【0064】
<一軸準拘束一軸圧縮>
熱処理済母材ガラスを,10mm×10mm×25mmの角柱状に加工し,プリフォームを得た。このプリフォーム表面にh−BN潤滑離型剤を塗布した。図2に示す10mm×40mm×40mmの穴の溝を有する金型を用いた。この金型には,内側の部分型1,1’の外側表面とそれらの周囲を取り囲む円筒状の外枠2との間に隙間が設けられており,そこにはAl粉末が充填されている。部分型1,1’の間に挿入された母材ガラスGが上から部分型4によって圧縮されるとき,部分型1,1’は,水平方向に広がろうとする母材ガラスGによって相互に離れる方向に圧され,この圧力は,部分型1,1’と外枠3との間の充填物3(Al粉末)に伝達される。充填物3は,部分型1,1’同士の間隔が自由に広がるのをほぼ防止するが,それ自身僅かに圧縮変形されて薄くなるため,部分型1,1’の間隔が僅かだけ広がることを許容し,それに応じて母材ガラスGもその方向に完全には拘束されずに僅かだけ広がることができる(準拘束)。なお,挿入される母材ガラスGは,図2においてc方向の拘束は受けない。
【0065】
この金型に,母材ガラスGを,圧縮荷重を受ける面が10mm×10mm面となるように挿入し,440℃まで加熱した状態で圧縮荷重を負荷した。圧縮荷重の負荷開始から2分経過後,圧縮荷重は4000kgfに達し,その後1分間4000kgfを負荷し続けた後,負荷はそのままで降温させ始めた。更に1分経過後,ガラスの温度が420℃になったところで除荷し,その後はガラスをゆっくり室温まで降温させた。圧縮後の形状は約24mm×13.0mm×8.1mmであった。圧縮後の形状から算出した最終段階での圧縮方向の圧力は,約1300kgf/cm2である。
【0066】
<還元処理>
上記で圧縮したガラスを,圧縮方向と準拘束方向の双方に対して平行(従って,図2においてc方向に垂直な)な面で切断した後,0.4mm厚に精密研磨し,水素雰囲気での還元処理を施した。還元処理は,大気圧下で100%水素ガスを流量10ml/分でフローしながら380℃で4時間行った。
【0067】
還元処理したガラスの片面を研磨して0.2mm厚とし,分光光度計で直線偏光の透過率を測定した。得られた透過率曲線を図3に示す。図より,本実施例で得られた偏光子は,430〜700nmの波長において,粒子の短軸の配向方向と電場ベクトルが平行な直線偏光の透過率が30%以上,460nm〜640nmの波長におけるそれは50%以上であり,且つこれらの範囲内で消光比は10dB以上である。同時に,430nm〜450nm,450nm〜500nm,及び500nm〜550nmの各波長範囲にわたって,直線偏光に対する消光比は15dB以上である。これらのことは,本実施例で得られた偏光子が,青色〜緑色領域において高い偏光性能を有することを示している。
【0068】
〔参考例1〜14〕
実施例1と同様にガラスブロックを作製し,Tg,At,η(Tg+10℃),ndを測定した。但し,Tgが高いものについては,金型を劣化させることになるため,粘性測定や成形性評価は行わなかった。
【0069】
実施例及び参考例の組成及び測定結果を以下の表にまとめて示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
【表3】

【0073】
【表4】

【産業上の利用可能性】
【0074】
本発明は,扁平化金属粒子を用いた偏光性材料及び該偏光性材料からなる偏光子を与える。当該偏光子は,従来の紡錘形粒子を用いたものに比べ,可視光領域,特に青色〜緑色領域において高透過率且つ高消光比の偏光子として有用性が高い。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基材中の少なくとも表面層に扁平化金属粒子を分散して含有し,該扁平化金属粒子の短軸が一定方向に配向しているものである偏光性材料であって,ガラス転移点Tgが500℃を超えず,且つTg+10℃における粘度ηが1.0×1012dPa・sを下回らないものであることを特徴とする偏光性材料。
【請求項2】
屈伏点Atが550℃を超えないものである,請求項1の偏光性材料。
【請求項3】
d線に対する屈折率ndが1.50を超えないものである,請求項1又は2の偏光性材料。
【請求項4】
該扁平化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2である請求項1ないし3の何れかの偏光性材料。
【請求項5】
該金属が銀又は銀合金である,請求項1ないし4の何れかの偏光性材料。
【請求項6】
銀が0.05重量%以上含有されているものである,請求項5の偏光性材料。
【請求項7】
該扁平化金属粒子が短軸とこれに直交し相互にも直交する長さの異なる2本の長軸を有し,該短軸及び該2本の長軸が,それぞれ一定方向に配向しているものである,請求項1ないし6の何れかの偏光性材料。
【請求項8】
該扁平化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該2本の長軸のうち短い方の長さ(b)の比の平均値が、少なくとも1.2である,請求項1ないし7の何れかの偏光性材料。
【請求項9】
該偏光性材料が組成として,
SiO+Al:10〜60重量%
:25〜60重量%
NaO+KO:5〜20重量%
Ag:0.05重量%以上
Cl:0.05重量%以上
を含んでなるものであることを特徴とする請求項1ないし8の何れかの偏光性材料。
【請求項10】
請求項1ないし9の何れかの偏光性材料であって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化金属粒子の短軸の配向方向が平行なものである,偏光子。
【請求項11】
請求項1ないし9の何れかの偏光性材料であって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化金属粒子の短軸及び一方の長軸の配向方向が共に平行なものである,偏光子。
【請求項12】
該扁平化金属粒子の短軸の長さに対する該板の表面に垂直な方向に配向した長軸の長さの比の平均値が,少なくとも1.4である,請求項11の偏光子。
【請求項13】
該扁平化金属粒子の2本の長軸のうち,該板の表面に対して平行に配向した長軸の長さより,該板の表面に対して垂直に配向した長軸の長さの方が長いものである,請求項11又は12の偏光子。
【請求項14】
430nm〜700nmの何れかの波長の直線偏光について,粒子の短軸の配向方向と該直線偏光の電場ベクトルが平行な場合における透過率が30%以上であり,且つ消光比が10dB以上である,請求項11ないし13の何れかの偏光子。
【請求項15】
430nm〜450nm,450nm〜500nm,及び500nm〜550nmのうち少なくとも何れかの波長範囲にわたって,直線偏光に対する消光比が15dB以上である,請求項11ないし14の何れかの偏光子。
【請求項16】
ガラス基材中に扁平化ハロゲン化金属粒子を分散して含有し,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸が一定方向に配向しており,ガラス転移点Tgが500℃を超えず,且つTg+10℃における粘度ηが1.0×1012dPa・sを下回らないものであることを特徴とする,偏光性材料製造用ガラス。
【請求項17】
屈伏点Atが550℃を超えないものである,請求項16の偏光性材料製造用ガラス。
【請求項18】
d線に対する屈折率ndが1.50を超えないものである,請求項16又は17の偏光性材料製造用ガラス。
【請求項19】
該扁平化ハロゲン化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該粒子の幅(b)の比の平均値が少なくとも1.2である請求項16ないし18の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
【請求項20】
該金属が銀又は銀合金である,請求項16ないし19の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
【請求項21】
銀が0.05重量%以上含有されているものである,請求項20の偏光性材料製造用ガラス。
【請求項22】
該扁平化ハロゲン化金属粒子が短軸とこれに直交し相互にも直交する長さの異なる2本の長軸を有し,該短軸及び該2本の長軸が,それぞれ一定方向に配向しているものである,請求項16ないし21の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
【請求項23】
該扁平化ハロゲン化金属粒子の該短軸の長さ(a)に対する該2本の長軸のうち短い方の長さ(b)の比の平均値が、少なくとも1.2である,請求項16ないし22の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
【請求項24】
該偏光性材料製造用ガラスが組成として,
SiO+Al:10〜60重量%
:25〜60重量%
NaO+KO:5〜20重量%
Ag:0.05重量%以上
Cl:0.05重量%以上
を含んでなるものであることを特徴とする請求項1ないし8の何れかの偏光性材料製造用ガラス。
【請求項25】
請求項16ないし24の何れかの偏光性材料製造用ガラスであって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸の配向方向が平行なものである,偏光性材料製造用ガラス。
【請求項26】
請求項16ないし25の何れかの偏光性材料製造用ガラスであって,板の形に形成されており,該板の表面に対して,該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸及び一方の長軸の配向方向が共に平行なものである,偏光性材料製造用ガラス。
【請求項27】
該扁平化ハロゲン化金属粒子の短軸の長さに対する該板の表面に垂直な方向に配向した長軸の長さの比の平均値が,少なくとも1.4である,請求項26の偏光性材料製造用ガラス。
【請求項28】
該扁平化ハロゲン化金属粒子の2本の長軸のうち,該板の表面に対して平行に配向した長軸の長さより,該板の表面に対して垂直に配向した長軸の長さの方が長いものである,請求項26又は27の偏光性材料製造用ガラス。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−25266(P2013−25266A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−162650(P2011−162650)
【出願日】平成23年7月25日(2011.7.25)
【出願人】(000178826)日本山村硝子株式会社 (140)
【Fターム(参考)】