説明

偏波モード分散生成装置、偏波モード分散補償装置、及び偏波モード分散エミュレーター、並びに偏波モード分散生成方法、偏波モード分散補償方法、及び偏波モード分散エミュレート方法

【目的】2次PMDの発生が抑圧された状態で連続的に可変的な1次PMDを発生させることが可能であって、しかも適用波長帯域が可変に設定可能である。
【解決手段】偏波面コントローラ903、第1DGD発生部929と第1モードミキサ908と第2DGD発生部930とを備える単位機能ブロック931、第2モードミキサ913、反射鏡914、光路長を変化させるための駆動ステージ915を備えるPMD生成装置である。入力信号光11-1は偏波面コントローラで偏光変換され第1DGD発生部に入力され、順次単位機能ブロック、第2モードミキサ、反射鏡に至る光路を往復する。適用波長帯域に応じて第1DGD発生部と第2DGD発生部で発生するDGD量を、駆動ステージによって変化させて設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、偏波モード分散(PMD: Polarization Mode Dispersion)を発生させるPMD生成装置、PMDを補償するPMD補償装置、及び擬似的PMDを発生させるPMDエミュレーター、並びにPMD生成方法、PMD補償方法、及びPMDエミュレート方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高速光通信において通信性能を制限する要因の一つは、光信号を構成する光パルスが光ファイバ伝送路を伝播することによってその時間波形が歪むことにある。光パルスの時間波形が歪む要因の一つが、光ファイバ伝送路が有する複屈折構造に基づいて発生するPMDである。すなわち、光パルスが光ファイバを伝播すると、この複屈折性に起因して、光パルスの光搬送波の直交する偏波成分の間に伝播時間差、すなわち微分群遅延(DGD:Differential Group Delay)が生じる。この現象がPMDである。
【0003】
光ファイバ伝送路で発現するPMDの大きさの程度はPMD係数(単位:ps/km1/2)で与えられる。国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU-T: International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)の勧告によれば、標準の単一モードファイバ(Single Mode Fiber)のPMD係数は、0.2 ps/km1/2以下であることが望ましいとされている。
【0004】
敷設された光ファイバで生じるDGDの平均値の大きさはPMD係数に伝送距離を掛け算することによって求められる。すなわち、(平均のDGDの大きさ(ps))=(PMD係数(ps/km1/2))×(伝送距離の平方根(km1/2))である。例えば、PMD係数が0.2 ps/km1/2である単一モードファイバによる光ファイバ伝送路では、100 kmで、(0.2 ps/km1/2)×(1001/2km1/2)=(0.2×10)psとなるから、平均2 psのDGDが発生する。
【0005】
一般に、敷設年代の古い光ファイバ伝送路ほどそのPMD係数が大きく、1980年代に敷設された光ファイバ伝送路のPMD係数は5 ps/km1/2に及ぶものもあることが報告されている。因みに、現在は0.02 ps/km1/2以下の光ファイバが開発さている。
【0006】
光ファイバ伝送路網を拡張させていくに当たり、構築コストには経済上の制約があること等を勘案すると、古い時代に敷設された光ファイバ伝送路を活かし、これに新たな光ファイバ伝送路を追加していくという方針がとられる。従って、このように拡張された光ファイバ伝送路網を利用する光通信においては、光信号がPMD係数の大きな光ファイバ伝送路によって伝送されることを前提にしてPMDの影響を低減する技術が必須となる。
【0007】
また、PMD係数から見積もられるDGD値は時間的な平均値であり、時間に対して刻々と変動する性質を備えている。また、光ファイバ伝送路を構成している光ファイバのPMD(後述するPMDベクトル)は、その大きさや方向が光ファイバの伝送軸方向に一定ではなく距離と共にランダムに変化する。そこで、このような光ファイバは短い光ファイバが多数個縦接続されたものと見なし、それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルがランダムに変化しているものと見なすことが可能である。
【0008】
すなわち、分割されたそれぞれの区間に対応する長さの短い光ファイバが光導波方向に沿って複数個配列されて接続されたものと見なし、それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルがランダムに異なっていると見なすことができる。ここで、PMDベクトルとは、その大きさがDGDの大きさを示し、その方向が主偏光状態の単位ストークスベクトルに平行な方向として定義されるベクトルである。
【0009】
光ファイバ伝送路のDGDの値の逆数が光パルス信号のスペクトル帯域幅より大きくなると、高次PMDの影響を無視することができなくなる。高次PMDは、光パルス信号の周波数(波長)に対する主偏波状態(PSP: Principal State of Polarization)の変化に加え、進相軸(fast axis)に平行な光電場成分と遅相軸(slow axis)に平行な光電場成分との伝播速度の差が光搬送波の周波数(波長)に依存して変化する現象として知られている。この現象は、波長依存偏波モード分散(PCD: Polarization dependent Chromatic Dispersion)とも呼ばれている。ここで、PSPの変化はPMDベクトルの終端のポアンカレ球上での回転として表される。
【0010】
上述のPMDベクトルの方向及び大きさは一般に光搬送波の波長に依存するが、光搬送波の波長の波長スペクトル帯域幅を無視できる場合は、波長依存性のないPMD成分である1次PMDに対して対処するだけで足りる。しかしながら、光搬送波の波長の波長スペクトル帯域幅を無視できない場合は、波長依存性を具えるPMD成分である高次PMDについても対処することが必要となる。
【0011】
高次PMDに対し、光搬送波の波長の波長スペクトル帯域幅を無視できる場合とは、光ファイバ伝送路のPMD係数そのものが小さい場合あるいは伝送路で発生し得るDGD値の逆数が光信号帯域に対して十分に小さい場合である。
【0012】
高次PMDについては以下のように、説明することもできる。光ファイバ伝送路を光パルスが伝播する場合、光パルスの波長スペクトル成分のうち短波長成分と長波長成分とでは、その進相軸及び遅相軸の向きも異なっている。すなわち、光ファイバ伝送路の導波方向をz軸にとった場合、光ファイバに進相軸及び遅相軸の向きのz軸依存性が存在することで、伝送路全体としての進相軸及び遅相軸の向きが波長成分ごとに異なる。またDGDの値も波長成分ごとに異なることにより、光パルスの時間波形が複雑に変形する。このように、進相軸及び遅相軸の向きの変化及びDGDの値の波長に依存した変化に起因して発生するPMDが高次PMDである。
【0013】
PMDの波長依存性を考慮しない捉え方が1次PMDであり、2次PMDはこれらの波長依存性が一定の割合で変化する現象である。また、より高次のPMDは波長依存性が一定の割合でなく、より複雑な割合で変化する現象である。
【0014】
伝送速度を高くするためには光パルスの時間幅を狭くする必要があり、光パルスの時間幅が狭くなるとこの光パルスの波長スペクトルの帯域幅は広くなる。そのため、高い伝送速度の光通信システムの光ファイバ伝送路のPMDの影響について検討するに当たっては、1次PMDのみならず高次PMDを考慮することが重要となる。
【0015】
以上説明した様に、考慮すべきPMDは、PMD係数で与えられる光ファイバ伝送路の状態、及び光信号のビット周期の大きさによってその上限が決定される。従って、光ファイバ伝送路のPMDの影響を緩和する技術が必要となる。また、光通信システムを構築及び運用するに当っては、光ファイバ伝送路で生じるPMDに対する耐力をテストする技術が必要となるが、光ファイバ伝送路のPMDは外部環境などの不確定要因によりランダムに発生するため再現することが難しい。そこで、光ファイバ伝送路のPMDを模倣発生させる検査装置(以後、PMDエミュレーターということもある)が必要となる。
【0016】
光ファイバ伝送路のPMDの影響を緩和するためのPMD補償方法としては、ビットレートを保ったまま、信号のシンボルレートを小さくできる多値変調方法が広く検討されている。多値変調方法としてはDQPSK(Differential Quadrature Phase Shift Keying)、QAM(Quadrature Amplitude Modulation)、あるいはOFDM(Orthogonal Frequency division Multiplexing)等がある。
【0017】
また、受信側における光学段補償方法や、電気段補償方法が知られている。光学段補償方法は、光ファイバ伝送路のPMDと逆特性のPMD(等化PMDということもある)を、光学素子を組み合わせて構成される光学回路によって実現し、光ファイバ伝送路のPMDを補償する方法である。一方、電気段補償方法は、受信光信号を光電変換し、アナログ電子回路であるトランスバーサルフィルタによって波形等化を行う方法である。また、電気段補償方法の他の方法としてシンボルレートの2倍のA/D(Analog-to-Digital)変換を行ないFIR(Finite-Impulse-Response)フィルタによってデジタル信号処理をして波形等化を行う方法も知られている。
【0018】
電気段補償方法は、PMDの変動に対する適応等化速度に優れるが、信号のシンボルレートによって動作限界が存在する。また、デジタル信号処理に基づく方法では、高速のA/D変換器と高速の論理回路が必要となることから、低消費電力化に課題が残る。
【0019】
一方、光学段補償方法は、装置の大きさが電気段補償方法で利用される電気回路と比較して大きくなるという課題がある。また、光学段補償方法は、補償動作速度が遅く、装置の価格が高額であるという問題も有している。しかしながら、処理する信号のビットレートや信号の変調フォーマットに低依存で動作し、かつ電力を必要とする機能部分は光素子を動的に駆動するための駆動部分だけであり、低消費電力化を図りやすいという利点を有している。その上、光学段補償方法に使われるPMD補償装置は、上述した光ファイバ伝送路のPMD補償を行うための装置として利用可能であると共に、光ファイバ伝送路で発生するPMDをエミュレートするためのPMDエミュレーターとしても利用可能であるという利点も併せ持っている。
【0020】
光学段補償方法を実現するためのPMD生成装置は、主に偏波面コントローラとDGD発生器とを組み合わせて構成される。光ファイバ伝送路のDGDを信号のビットレート周期の10%以下に抑圧することを想定すると、高速信号においては、DGD発生器においてDGDを可変的に変化させてPMDを補償することが望ましい。また、同様の理由から、PMD生成装置をPMDエミュレーターとして機能させる場合においても、高速信号を処理することを想定して、DGD発生器においてDGDを可変的に変化させてPMDを補償することが望ましい。
【0021】
DGDを可変的に変化させることができる可変DGD発生器は、直交偏波モード間の光路長差を発生させるための機械的に駆動される可動鏡が利用されて構成されるタイプ、あるいは、複屈折媒体と偏波面回転機構とを組み合わせて構成されるタイプが知られている。
【0022】
例えば、入射光に対して所定の群遅延時間を2回与え、かつ先の群遅延時間を付与してから後の群遅延時間を付与するまでの間に偏光状態を可変に回転させる構成とされた可変DGD発生器が開示されている(例えば、特許文献1参照)。この種の可変DGD発生器は、光サーキュレータ、ファラデー回転子、偏波保持光ファイバ(PMF: Polarization Maintaining Fiber)、あるいは複屈折媒体、及び反射ミラーを備えて構成される。
【0023】
また、DGD値が2のべき乗の関係にある複数の複屈折媒体を、これら複屈折媒体の2つの固有軸を選択するように動作する磁気光学(MO: Magnet Optic)スイッチを介して接続し、固有軸間の偏光状態をバイナリー変化させてDGDを可変とする構成の可変DGD発生器が開示されている(例えば、非特許文献1参照)。
【0024】
また、可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、DGD発生器自身の高次PMDの発生を抑圧しつつDGDを可変に発生させる方法も開示されている。この方法を実現する装置としては、4つの複屈折媒体と3つの偏光回転機構とから構成された可変DGD発生器が使われている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0025】
【特許文献1】特開2003−228026号公報
【非特許文献】
【0026】
【非特許文献1】Lianshan Yan, et al., "Programmable Group-Delay Module Using Binary Polarization Switching", Journal of Lightwave Technology Vol. 21, No. 7, pp.1676-1684, July 2003
【非特許文献2】P. B. Phua, et al., "Variable Differential-Group-Delay Module Without Second-Order PMD", Journal of Lightwave Technology Vol. 20, No. 9, pp.1788-1794, September 2002
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
PMD補償装置及びPMDエミュレーターに対して要請される特性は、高速で動作すること、小型であること、高精度なPMDを発生させること、長時間安定した動作をすること、高次PMDの発生が小さいこと、消費電力が小さいこと、外部環境の影響を受けにくいこと、実装が容易でありかつ制御が容易であること、広い適用波長範囲を有すること等である。特に、PMD補償装置及びPMDエミュレーターに共通して利用されるPMD生成装置には、2次PMDの発生が抑圧された状態で1次PMDを発生させることが可能であって、高速で動作すること、及び実装が容易でありかつ制御が容易であるという特長を有することが求められている。
【0028】
また、近年盛んに研究が進められている偏波多重信号に対するPMD耐力テストとして用いるPMDエミュレーターとしては、敷設光ファイバにおいて発生するPMDと同じような、PMDベクトルを変化させた際に出力される出力光の偏波状態(SOP: State of Polarization)を連続に変化させる能力が求められる。
【0029】
光ファイバ伝送路のPMDはミリ秒の速さで変動するという観測例があり、PMD補償装置及びPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置は、この速さに対応可能な動作速度が要請される。機械式の可動鏡によるDGDの調整速度は数十ミリ秒が限度である。さらに、可動鏡の可動部の長期使用による磨耗や振動による動作不良もあり、機械式の可動鏡によるDGD発生器を使用して構成されるPMD生成装置には、高速動作性、長時間の安定動作の保証という面から課題がある。
【0030】
上述の非特許文献1に開示された、複屈折媒体の2つの固有軸を選択するように動作するMOスイッチを介して接続し、固有軸間の偏光状態をバイナリー変化させてDGDを可変とする構成の可変DGD発生器は、発生可能なDGDの値が複屈折媒体の組み合わせによって離散的な値に限定されるため、高精度でのPMDを発生させるためにはDGDの値を細かく変化させなければならない。そのために複屈折媒体とMOスイッチを多数用意する必要がある。また、DGD可変動作に伴って直交固有軸間の遅延差をピコ秒単位で切り換えるため、DGD発生器からの出力SOPが急激に変化する。さらに、発生させるDGD量を切り換える際に、切り換え開始から切り換え完了までの間は、複数の複屈折媒体の固有軸が直交状態にないために瞬間的に高次のPMDが発生するという問題がある。
【0031】
上述の特許文献1に開示されている、複数の複屈折媒体間のSOPを連続的に回転させ複屈折媒体間のモード結合状態を変化させる方法は、特定波長で観測されるDGDの値を連続的に変化させることが可能であるが、2次PMDが発生するという問題がある。
【0032】
2つの複屈折媒体のDGDの大きさをそれぞれτ1及びτ2とし、その間の偏波面回転量をθとすると、このDGD発生器で発生するDGDの値τと、2次PMDの値の大きさ(絶対値)|τω|とは、それぞれ次式(1)及び(2)で与えられる。
τ=(τ12+τ22+2τ1τ2cos2θ)1/2 (1)
|τω|=τ1τ2sin2θ (2)
上述した非特許文献2に開示された方法によれば、連続的にDGDの大きさを変化させ、かつ高次PMDの発生を抑えることが可能である。それぞれの単位機能ブロックでは、可変偏光回転子によって偏光状態を回転させ、上述の式(1)に従ってDGDの値を変化させる。この動作に伴って上述の式(2)で与えられる2次PMDが発生するが、1次PMDベクトルと2次PMDベクトルとはストークス空間で直交する性質を利用して、1次PMD成分のみを残し2次PMD成分を相殺することが可能である。
【0033】
この方法では、等しいPMDベクトルを有する2つの単位機能ブロックの対称構造を利用して2次PMD成分を相殺して1次PMDを発生させるため、各単位機能ブロックは等しい光学特性を有していることが要請される。したがって、合計4つの複屈折媒体と2つの偏波面回転子の光学特性を等しくする必要がある。
【0034】
各複屈折媒体によるDGDの値の均一性、偏波面回転子の偏波面の回転量の均一性を確保することが不可欠であり、この条件を満たす複屈折媒体及び偏波面回転子を選定して実装すること、及び2つの偏波面回転素子をその光学特性を等しく制御することは、現実には非常に難しい。
【0035】
また、上述した非特許文献2に開示された方法を実現する可変DGD発生器が備えている2つのモードミキサを完全に等しく動作するように制御する必要があり、温度調節や、デバイス間の相対位相関係の維持が必要とされる等、制御上及び実装上多くの困難が存在していた。また、光搬送波波長での2次PMDを相殺することが可能であるものの、複屈折媒体で発生するDGDに依存して、その自由周波数領域(FSR: Free Spectral Range)が決定され、適用帯域が制限される。非特許文献2によれば、1つの複屈折媒体により生じるPMDベクトルの絶対値(DGDの大きさ)をτとすれば、FSRは1/(2τ)で与えられる。
【0036】
近年、OFDM、QPSK、QAM、等の変調フォーマットが検討されるなど、同じ伝送速度を有するものの、占有周波数帯域が異なる方式がある。このため、補償波長帯域・エミュレート帯域が可変型のPMD生成装置が提供されることが望まれている。
【0037】
機械動作によるPMDの発生は、極めて平坦なPMDの波長特性が実現可能であるものの、その応答速度が十分でないことが課題である。
【0038】
このように従来技術では、ミリ秒以下で動作し、PMD値を連続的に変化させることが可能であり、適用波長帯域が決定可能であるPMD生成装置を実現させることは困難であった。
【課題を解決するための手段】
【0039】
この出願の発明者は、単位機能ブロックとモードミキサと反射鏡とをこの順に配置して、モードミキサからの出力光をこの反射鏡で反射させて再び単位機能ブロックに戻す構成とし、入力信号光に対して同一光路を往復させる構造とすることで、上述の課題が解決することに思い至った。
【0040】
すなわち、反射型としてPMD生成装置を構成して入力信号光を単一の単位機能ブロックを往復させることで、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を行わせることが可能となる。したがって、各単位機能ブロックに対して等しい光学特性を有していることを要請し、合計4つの複屈折媒体と2つの偏波面回転素子の光学的特性を等しく制御しなければならないという課題が解決されるという認識に至った。
【0041】
また、適用波長帯域は、システム運用時に決定されるため、PMD生成ほど高速な応答能力は要請されない。そこで、複屈折媒体により発生されるDGD量により決定される適用波長帯域は、波長依存性をもたない可変DGD機構を併用することで決定可能であり、上述の課題が解決するとの認識に至った。
【0042】
そこで、この発明の目的は、2次PMDの発生が抑圧された状態で連続的に可変的な1次PMDを発生させることが可能であって、しかも適用波長帯域も可変に決定可能であるPMD生成装置、及びこのPMD生成装置によって実施されるPMD生成方法を提供することにある。
【0043】
また、この発明の更なる目的は、このPMD生成装置を利用して構成されるPMD補償装置及びPMDエミュレーター、並びにこのPMD補償装置及びPMDエミュレーターによって実現されるPMD補償方法及びPMDエミュレート方法を提供することにある。
【0044】
上述の理念に基づくこの発明の第1の要旨によれば、以下のPMD生成装置及びこのPMD生成装置によって実現されるPMD生成方法が提供される。
【0045】
この発明の第1の要旨によるPMD生成装置は、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡を具え、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて形成される。また、第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、この第1DGD発生部及び第2DGD発生部で発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えている。
【0046】
そして、入力信号光が第1DGD発生部から入力されて、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの光路を往復して、1次PMDが入力信号光に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号が生成されて出力される構成とされている。
【0047】
第1DGD発生部の前段に、第1DGD発生部へ入力される入力信号光のSOPを任意に調整する偏波面コントローラを更に配置するのが好適である。
【0048】
第1モードミキサは、第1DGD発生部の側から第2DGD発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサは、第2移相子を配置して構成するのが好適である。
【0049】
第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0050】
DGD調整機構は、第1DGD発生部で発生するDGD量を調整する第1DGD調整機構と、第2DGD発生部で発生するDGD量を調整する第2DGD調整機構とが一体化されてこのDGD量を調整することが可能な構成とするのが好適である。
【0051】
第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成するのが好適である。
【0052】
第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成するのが好適である。
【0053】
第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、それぞれ発生するDGDの量が相異なる複数の複屈折結晶を直列に配置し、これらの複屈折媒体の間にはこれら複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子を配置して形成するのが好適である。
【0054】
この発明の第1の要旨によるPMD生成装置によれば、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、この光路を往復させることによって、PMDを発生させこのPMDを入力信号光に付加してPMD付加光信号を生成するPMD生成方法が実現される。
【0055】
このPMD生成方法は、上述の光路に入力信号光が入力されてから出力されるまでの間に、入力信号光の直交する偏波成分の間の伝播時間差であるDGDを生じさせ1次PMDを発生させる1次PMD発生ステップと、1次PMDの発生に伴って発生する2次PMDを相殺させる2次PMD相殺ステップと、1次PMD発生ステップ及び2次PMD相殺ステップにおいて、DGD量を入力信号光の波長帯域により定まるFSRに対応するように設定するFSR設定ステップを含んで構成される。
【0056】
このPMD生成方法は、更に、入力信号光のSOPを任意に調整する偏波調整ステップを含むのが好適である。
【0057】
また、上述の理念に基づくこの発明の第2の要旨によれば、以下のPMD補償装置及びこのPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法が提供される。
【0058】
この発明の第2の要旨によるPMD補償装置は、PMD生成装置、偏波解析器、演算器、及びドライバを具え、入力信号光を入力させて、この入力信号光のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを入力信号光に付加してPMD補償光信号を生成して出力するPMD補償装置である。
【0059】
PMD生成装置は、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されている。第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、この第1DGD発生部及びこの第2DGD発生部で発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えている。
【0060】
そして、入力信号光を第1DGD発生部から入力して、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの光路を往復させて、暫定等化PMDを入力信号光に付加して暫定PMD補償光信号を生成する。
【0061】
偏波解析器は、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさをPMD補償パラメータとして数値化して出力する。
【0062】
演算器は、PMD補償パラメータに基づいて、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号を算出して出力する。
【0063】
ドライバは、PMD補償指示信号に基づいて、入力光信号に等化PMDを付加してPMD補償光信号を生成するようにPMD生成装置を制御する。
【0064】
PMD生成装置において、第1DGD発生部の前段に、第1DGD発生部の結晶軸へ入力される入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラを更に配置するのが好適である。
【0065】
第1モードミキサは、第1DGD発生部の側から第2DGD発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサは、第2移相子を配置して構成するのが好適である。
【0066】
第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0067】
DGD調整機構は、第1DGD発生部で発生するDGD量を調整する第1DGD調整機構と、第2DGD発生部で発生するDGD量を調整する第2DGD調整機構とが一体化されてDGD量を調整することが可能な構成とするのが好適である。
【0068】
第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成するのがよい。
【0069】
また、第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成するのがよい。
【0070】
第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、それぞれ発生するDGDの量が相異なる複数の複屈折結晶を直列に配置し、これらの複屈折媒体の間にはこれら複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子を配置して形成するのが好適である。
【0071】
この発明の第2の要旨によるPMD補償装置によれば、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、この光路を往復させることによって、PMDを等化する等化PMDを発生させこの等化PMDを入力信号光に付加してPMD補償光信号を生成するPMD補償方法が実現される。
【0072】
このPMD補償方法は、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、等化PMD制御ステップとを含み、PMD生成ステップにおいてFSR設定ステップを含んでいる。
【0073】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力信号光に付加して暫定PMD補償光信号を生成するステップである。
【0074】
偏波解析ステップは、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさをPMD補償パラメータとして数値化して出力するステップである。
【0075】
演算ステップは、PMD補償パラメータに基づいて、暫定PMD補償光信号のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号を算出して出力するステップである。
【0076】
等化PMD制御ステップは、PMD補償指示信号に基づいて、PMD補償光信号のPMDの値を制御して、PMD補償光信号を出力するステップである。
【0077】
FSR設定ステップは、PMD生成ステップにおいて、入力信号光の直交固有偏波モード間のDGDの量をこの入力信号光の波長帯域により定まるFSRに対応するように設定するステップである。
【0078】
また、このPMD補償方法は、伝送路の進相軸を通過した偏光成分が、PMD生成装置の遅相軸へ入力されるように入力信号光のSOPを任意に調整する偏波調整ステップを更に含めて構成するのが好適である。
【0079】
また、上述の理念に基づくこの発明の第3の要旨によれば、以下のPMDエミュレーター及びこのPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法が提供される。
【0080】
この発明の第3の要旨によるPMDエミュレーターは、PMD生成装置、偏波解析器、演算器、ドライバ、及びPSP制御部を具え、PMDを含まない入力信号光を入力させて、予め設定された大きさのPMDを付加したエミュレートPMD含有光信号を生成し、このエミュレートPMD含有光信号のPSPを、予め設定されたPSPに調整して出力するPMDエミュレーターである。
【0081】
PMD生成装置は、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されている。また、第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、この第1DGD発生部及びこの第2DGD発生部で発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えている。
【0082】
そして、入力信号光を、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの光路を往復させることによって、暫定等化PMDを入力信号光に付加して暫定PMD含有光信号を生成する。
【0083】
偏波解析器は、暫定PMD含有光信号のPMDの大きさをPMDパラメータとして数値化して出力する。
【0084】
演算器は、PMDパラメータに基づいて暫定PMD含有光信号のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向にPMD付加指示信号を出力する。
【0085】
ドライバは、PMD付加指示信号に基づいてエミュレートPMD含有光信号を生成するようにPMD生成装置及びPSP制御部を制御する。
【0086】
PSP制御部は、暫定PMD含有光信号のPSPを予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0087】
PMD生成装置において、第1DGD発生部の前段に、第1DGD発生部へ入力される入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラを更に配置するのが好適である。
【0088】
第1モードミキサは、第1DGD発生部の側から第2DGD発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサは、第2移相子を配置して構成するのが好適である。
【0089】
第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子とするのが好適である。
【0090】
DGD調整機構は、第1DGD発生部で発生するDGD量を調整する第1DGD調整機構と、第2DGD発生部で発生するDGD量を調整する第2DGD調整機構とが一体化されてDGD量を調整することが可能な構成とするのが好適である。
【0091】
第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成するのが好適である。
【0092】
第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成するのが好適である。
【0093】
第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、それぞれ発生するDGDの量が相異なる複数の複屈折結晶を直列に配置し、この複屈折媒体の間にはこれら複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子を配置して形成するのが好適である。
【0094】
この発明の第3の要旨によるPMDエミュレーターによれば、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、この光路を往復させることによって、予め設定された大きさのPMDが付加され、かつ予め設定されたPSPのエミュレートPMD含有光信号を生成するPMDエミュレート方法が実現される。
【0095】
このPMDエミュレート方法は、PMD生成ステップと、偏波解析ステップと、演算ステップと、エミュレートPMD制御ステップと、PSP制御ステップとを含んで構成される。PMD生成ステップにおいてFSR設定ステップを含んでいる。
【0096】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ、この暫定PMDが付加されたPMD含有光信号を生成するステップである。FSR設定ステップは、PMD生成ステップにおいて、入力信号光の直交固有偏波モード間のDGDの量をこの入力信号光の波長帯域により定まるFSRに対応するように設定するステップである。
【0097】
偏波解析ステップは、PMD含有光信号のPMDの大きさをPMDパラメータとして数値化して出力するステップである。演算ステップは、PMDパラメータに基づいて、PMD含有光信号のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向にPMD付加指示信号を出力するステップである。エミュレートPMD制御ステップは、PMD付加指示信号に基づいて、PMD含有光信号のPMDの値を制御してエミュレートPMD含有光信号を生成するステップである。PSP制御ステップは、エミュレートPMD含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定されたPSPのエミュレートPMD含有光信号を出力するステップである。
【0098】
また、このPMDエミュレート方法は、伝送路の進相軸を通過した偏光成分が、PMD生成装置の遅相軸へ入力されるように入力信号光のSOPを任意に調整する偏波調整ステップを更に含めて構成するのが好適である。
【発明の効果】
【0099】
この発明の第1の要旨のPMD生成装置によれば、入力信号光が第1DGD発生部から入力されて、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡に至るまでの光路を往復して出力される。
【0100】
このような構成とすることによって、第1DGD発生部、第1モードミキサ及び第2DGD発生部を具えて構成される単位機能ブロックを入力信号光が往復することとなり、2つの合同の形態の単位機能ブロックをモードミキサに関して対称な形態に配置して形成されるPMD生成装置と同様の機能を有するPMD生成装置として機能する。
【0101】
すなわち、反射型としてPMD生成装置を構成して入力信号光を単一の単位機能ブロックを往復させることで、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を行わせることが可能となっている。従って、1つの単位機能ブロックが入力信号光の往路と復路として共通に利用される構成となっており、この1つの単位機能ブロックの偏波面回転量等の光学的特性を制御するだけでよいこととなり、2つの同一の構成の単位機能ブロックを配置しこの2つの単位機能ブロックの光学的特性を等しく制御しなければならないという従来技術が有していた困難が解決される。
【0102】
また、単位機能ブロックを1つ構成するだけですむことから、PMD生成装置の構成が容易となり、かつ制御も容易となる。
【0103】
更に、第1DGD発生部及び第2DGD発生部は、この第1DGD発生部及びこの第2DGD発生部で発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えていることから、適用波長帯域に対応するように、この第1DGD発生部及び第2DGD発生部で発生させるDGDの値を調整して設定することが可能となる。すなわち、適用波長帯域を可変に選択して設定可能であるPMD生成装置が実現される。
【0104】
この発明の第1の要旨のPMD生成装置において、第1DGD発生部の前段に偏波面コントローラを設ける構成とすれば、偏波調整ステップを実現することが可能である。偏波調整ステップは、PMD補償の場合、伝送路の進相軸を通過した偏波成分のSOPをPMD生成装置の遅相軸へ一致させるステップであり、エミュレーターの場合は、PMD生成装置の進相軸と遅相軸へのパワー分岐比を調整するステップである。
【0105】
第1モードミキサを、第1DGD発生部の側から第2DGD発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサを、第2移相子を配置して構成することによって、2次PMDの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0106】
2次PMDの発生を効果的に抑制するには、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと復路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆であることが必要である。すなわち、往路でのSOPの回転方向と復路でのSOPの回転方向とが等しくなる状態を実現することが必要である。そこで、第1モードミキサを第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板を配置して構成することによって偏波軸変換を往路と復路とで対称にすることが可能となり、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと復路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆となる状況を実現できる。
【0107】
第1移相子を、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とすることによって、高速動作が実現される。
【0108】
1次PMD発生ステップと、1次PMDの発生に伴って発生する2次PMDを相殺させる2次PMD相殺ステップとは、入力信号光が第1DGD発生部から入力されて、第1DGD発生部、第1モードミキサ、第2DGD発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡にいたるまでの光路を往復することによって実現される。
【0109】
この発明の第2の要旨のPMD補償装置によれば、上述のこの発明の第1の要旨のPMD生成装置と、偏波解析器、演算器、及びドライバを具えて構成されている。そのため、この発明の第1の要旨のPMD生成装置によって得られる効果はそのまま、この発明の第2の要旨のPMD補償装置によっても得られる。
【0110】
この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによれば、上述のこの発明の第1の要旨のPMD生成装置と、偏波解析器、演算器、ドライバ、及びPSP制御部を具えて構成されている。そのため、この発明の第1の要旨のPMD生成装置によって得られる効果はそのまま、この発明の第3の要旨のPMDエミュレーターによっても得られる。
【0111】
PMDの周波数依存性は、第1DGD発生部及び第2DGD発生部において生じる直交固有軸間の位相差の周波数依存性によって生じる。詳細は後述するが、第1DGD発生部及び第2DGD発生部で生じるDGDの値によってFSRが決定され、FSRの中心波長は第2DGD発生部で発生させる偏光回転量によって任意にシフトさせることができる。この中心波長をWDM (Wavelength Division Multiplexing)通信のグリッドの中心波長に一致させれば、WDM信号を一括して評価可能なエミュレーターとして利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】光パルスが複屈折性を有する光ファイバを伝播することによって受ける時間波形の変化の様子の説明に供する図である。(A)は、光通信システムの概略的基本構成を示すブロック構成図であり、(B)は送信器から出力される光信号の時間波形を示す図であり、(C)は受信器で受信される光信号の時間波形を示す図であり、(D)は光ファイバ伝送路を伝播中の光信号の時間波形を直交2偏波成分に分けてそれぞれの偏波成分の時間波形およびそれらの時間軸上での位置関係を模式的に示す図である。
【図2】光ファイバのPMDベクトルの分布についての説明に供する図である。(A)は光ファイバを短い光ファイバが多数個縦続接続されたものと見なした場合の短い光ファイバ部分ごとの複屈折の進相軸あるいは遅相軸の方向を模式的に示す図であり、(B)は複屈折性が分布した光ファイバ伝送路において、各複屈折結晶間の偏光状態が時間に関してランダムに変化した場合の光ファイバ伝送路全体がとるDGD値の分布を示す図である。
【図3】複屈折媒体とモードミキサと反射ミラーとを具えたPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図4】可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、DGD発生器自身の高次PMDの発生を抑圧しつつDGDを可変に発生させるPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図5】この発明の実施形態の第1のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図6】この発明の実施形態の第1のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【図7】この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【図8】この発明の実施形態の第2のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図9】この発明の実施形態の第2のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【図10】この発明の実施形態の第2のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【図11】この発明の実施形態の第3のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【図12】この発明の実施形態の第3のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【図13】この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【図14】PMDベクトルの変化の様子を示す図であり、(A)は1次PMDスペクトルを示す図であり、(B)は2次PMDスペクトルを示す図である。
【図15】WDMグリッドと、1次及び2次PMDスペクトルとの関連についての説明に供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0113】
以下、図を参照して、この発明の実施の形態につき説明する。なお、図5〜図13はこの発明に係る一構成例を図示するものであり、この発明が理解できる程度に各構成要素の配置関係などを概略的に示しているに過ぎず、この発明を図示例に限定するものではない。また、以下の説明において、特定の素子および動作条件などを取り上げることがあるが、これら素子および動作条件は好適例の一つに過ぎず、したがって、何らこれらに限定されない。
【0114】
<PMDの発生メカニズム及びPMD補償に関する基礎概念>
この発明の解決すべき課題及び、この発明のPMD生成装置、PMD補償装置、及びPMDエミュレーターの理解に資するため、図1〜図4を参照して、PMDの発生メカニズム、1次、2次及び高次PMD等に関して具体的に説明する。
【0115】
光通信において通信性能を制限する要因の一つは、上述したように、光信号を構成する光パルスが光ファイバ伝送路を伝播することによってその時間波形が歪むことにある。光パルスの時間波形が歪む要因の一つがPMDであり、PMDは以下に示す理由によって発現する。
【0116】
光ファイバの製造過程における製造誤差、光ファイバ伝送路の敷設状況による曲げ、捩れ、押圧等による応力の影響により、光ファイバのコアの断面形状が真円からずれることによって光ファイバに複屈折性が生じる。この複屈折性によって、光ファイバを伝播する光パルスの位相速度が光電場の振動方向に依存する現象が生じる。光パルスの位相速度が大きくなる振動方向が進相軸、小さくなる方向が遅相軸と呼ばれる。
【0117】
光パルスが光ファイバを伝播すると、この光パルスの電場成分の進相軸方向の振動成分と遅相軸方向の振動成分との伝播速度の差に起因して、光パルスの光搬送波の直交する偏波成分の間にDGDが生じる。この現象がPMDである。
【0118】
図1(A)〜(D)を参照して、このPMDによって、この光ファイバを伝播する光パルスの時間波形が歪む現象を説明する。
【0119】
図1(A)は、光通信システムの基本構成を示すブロック構成図であり、送信器40と受信器44とが光ファイバで構成される光ファイバ伝送路42によって接続されており、光信号43がこの光ファイバ伝送路42を伝播して送信器40から受信器44に伝送される。
【0120】
図1(B)は送信器40から出力される光信号の時間波形を示す図であり、図1(C)は受信器44で受信される光信号の時間波形を示す図であり、図1(D)は光ファイバ伝送路42を伝播中の光信号の時間波形を直交2偏波成分に分けてそれぞれの偏波成分の時間波形およびそれらの時間軸上での位置関係を模式的に示す図である。図1(B)及び図1(C)において横軸は時間軸を縦軸は信号強度をそれぞれ任意スケールで示してあり、図1(D)において横軸は時間軸示しており、直交するPSP+軸及びPSP-軸の方向に対する光強度をそれぞれの軸に対して模式的に示してある。ここで、PSP+軸は進相軸であり、PSP-軸は遅相軸である。PSP+軸及びPSP-軸は、偏波モードの方向を示すPSPを指定する座標である。
【0121】
送信器40から出力された直後の光信号は、図1(B)に示すように時間歪のない光パルスから構成されている。図1(B)では、「1,1,0,1」で与えられる2値デジタル光信号を例にとって示してあり、1ビットあたりの時間スロットの幅はTbである。一方、受信器44で受信される光信号は、図1(C)に示すようにその時間波形が歪んでいる。
【0122】
光ファイバ伝送路42を伝播する前、すなわち送信器40から出力された直後の光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分は、時間軸上でそのピーク位置が一致している。しかしながら、光ファイバ伝送路42が有する複屈折性によって、光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の群速度が異なり、光パルスが有限長だけ光ファイバ伝送路42を伝播すると光パルスのPSP+軸方向偏波成分とPSP-軸方向偏波成分とのそれぞれのピーク位置が、図1(D)に示すようにずれる。この時間軸上でのピーク位置のずれ量がDGDである。
【0123】
光信号43は、受信器44において光電変換器等で強度信号として電気信号に変換される。このため、光信号43が電気信号に変換された受信信号の時間波形は、光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分を足し合わせた光強度の時間波形と相似形の時間波形となる。
【0124】
従って、光信号43を構成する光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の時間軸上で両者のピーク位置が一致していれば、その時間波形は図1(B)に示すように単峰性のパルス波形となり、その時間波形に歪は存在しない。これに対して、DGDによって光パルスのPSP+軸及びPSP-軸方向の偏波成分の時間軸上で両者のピーク位置が一致していなければ、その時間波形は図1(C)に示すように多峰性のパルス波形となり、その時間波形は歪む。
【0125】
光信号の1ビット分に割り当てられる時間スロットの幅(図1(B)にTbとして示してあり、ビット周期ともいう。)の30%程度にDGDの値が達すると、ビットエラーレート、あるいは受信信号のQ値等で与えられる伝送品質が急激に劣化することが経験則として把握されている。例えば、この出願の発明者らは、Tb=6.25 psでDGDが1.8 psに達すると受信信号のQ値が急激に低下することを確かめている。すなわち、伝送速度が高いということはビット周期が短いことを意味するので、伝送速度が高くなるほどPMDの伝送品質に与える効果が大きくなる。
【0126】
上述したように、光ファイバは、光導波方向に沿って複数個配列されて接続されたものと見なし、それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルがランダムに異なっていると見なすことができる。
【0127】
図2(A)及び(B)を参照して、PMDベクトルがランダムに変化しているもとの見なした場合の光ファイバの概略的模式図及び、DGDの値の分布を与える関係について説明する。図2(B)の横軸はDGD値をps単位で目盛って示してあり、縦軸はDGDの値の出現頻度を目盛って示してある。
【0128】
それぞれの短い光ファイバのPMDベクトルの大きさを与えるDGDの値の分布は、図2(B)に示すマックスウエル分布となることが知られている。図2(B)では、光ファイバ伝送路のDGDの平均値をΔτと示してある。
【0129】
次に、図3を参照して、上述の特許文献1に開示された可変DGD発生器の概略的構成とその動作について説明する。この可変DGD発生器は、複屈折媒体50とモードミキサ52と反射鏡54とを備え、光パルスを、複屈折媒体50とモードミキサ52とで形成される光路を往復させることでPMDを発生させる。
【0130】
入力光パルス49が複屈折媒体50に入力されると、複屈折媒体50の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播速度が異なるので、入力光パルス49のSOPがストークス空間で当該ストークス空間を規定する直交3軸の内の1つの軸(例えば、S1軸)を中心として回転され光パルス51として出力されモードミキサ52に入力される。モードミキサ52でも同様に光パルス51のSOPが、複屈折媒体50における回転軸と直交する軸(例えば、S3軸)を中心として回転され光パルス53として出力され、反射鏡54で反射されて光パルス55となり、再びモードミキサ52に入力される。
【0131】
モードミキサ52に入力された光パルス55は、SOPがS3軸を中心に回転され光パルス57として出力される。光パルス57は、複屈折媒体50に入力されてSOPがS1軸を中心に回転されて出力光パルス59として出力される。出力光パルス59は、入力光パルス49にDGDが付加されたPMD含有光パルスである。
【0132】
図3に示す構成のDGD発生器によってPMDベクトルを発生させると、上述したように、1次PMDの発生に伴って2次PMDも発生し、この2次PMDも付加されてPMD含有光パルスとして出力される。したがって、図3に示す構成のDGD発生器によって、入力光パルスのPMDを等化するとこの等化動作に対応して2次PMDが発生する。すなわち、1次PMDは除去されるが2次PMDが新たに発生するという問題が生じる。
【0133】
次に、図4を参照して、上述の非特許文献2に開示された可変位相シフタを挟んで接続された4つの複屈折媒体により、高次PMD発生を抑圧しつつDGDを可変に発生させるPMD生成装置の概略的構成及びその動作について説明する。
【0134】
図4に示すPMD生成装置は、合同な構成の第1ブロック60と第2ブロック70との間に第2モードミキサ68を挟んで構成されている。第1ブロック60は、第1複屈折媒体62、第1モードミキサ64、及び第2複屈折媒体66を備えて構成されている。第2ブロック70は、第1複屈折媒体72、第1モードミキサ74、及び第2複屈折媒体76を備えて構成されている。ここで、第1ブロック60及び第2ブロック70は、単位機能ブロックと呼ばれる。
【0135】
図4において、非特許文献2の図1(Fig.1)で使われている記号と対応関係を明示するために、第1複屈折媒体62及び72、第2複屈折媒体66及び76をRと示し、第1モードミキサ64及び74をCoと示し、第2モードミキサ68をC1と示してある。
【0136】
入力光パルス61が第1ブロック60の第1複屈折媒体62に入力されると、第1複屈折媒体62の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播速度が異なるので、入力光パルス61のSOPがストークス空間を規定する直交3軸の内の1つの軸(例えば、S1軸)を中心として回転され光パルス63として出力され第1モードミキサ64に入力される。光パルス63は第1モードミキサ64でそのSOPが第1複屈折媒体62で生じるSOP回転軸と直交する軸(例えば、S3軸)を中心として回転され光パルス65として出力され第2複屈折媒体66に入力される。光パルス65はそのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス67として出力され第2モードミキサ68に入力される。
【0137】
第2モードミキサ68に入力された光パルス67は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス69として出力されて、第2ブロック70の第1複屈折媒体72に入力される。光パルス69は、第1複屈折媒体72においてそのSOPがS1軸を中心として回転され光パルス73として出力されて、第1モードミキサ74に入力される。光パルス73は、第1モードミキサ74でそのSOPがS3軸を中心として回転され光パルス75として出力されて、第2複屈折媒体76に入力される。光パルス76は、第2複屈折媒体76でそのSOPがS1軸を中心として回転され出力光パルス77として出力される。出力光パルス77は、入力光パルス61にDGDが付加されたPMD含有光パルスである。
【0138】
図4に示すPMD生成装置によってPMDベクトルを発生させると、上述したように、単位機能ブロックである第1ブロック60及び第2ブロック70が合同な構成であれば、第1ブロック60で発生した2次PMDを第2ブロック70によって相殺することが可能である。すなわち、第1ブロック60の第1モードミキサ64と、第2ブロック70の第1モードミキサ74とで発生させるDGDの大きさが等しくなるように制御できれば、第1ブロック60で発生した2次PMDを第2ブロック70によって相殺することが可能となる。
【0139】
<この発明の実施形態の第1のPMD生成装置>
図5を参照して、この発明の実施形態の第1のPMD生成装置の構成及びその動作について説明する。図5は、この発明の実施形態の第1のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【0140】
この発明の実施形態の第1のPMD生成装置928は、第1DGD発生部929、第1モードミキサ908、第2DGD発生部930、第2モードミキサ913、及び反射鏡914を具え、これらの素子がこの順に配列されて形成される。また、第1DGD発生部929及び第2DGD発生部930は、ここで発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えている。
【0141】
第1DGD発生部929及び第2DGD発生部930は、図5に示すように、マッハツェンダー干渉計の形態に形成される。更に、第1DGD発生部929の前段に、第1DGD発生部929へ入力される入力信号光11-1のSOPを任意に調整する偏波面コントローラ903が設けられている。
【0142】
そして、偏波面コントローラ903から出力された入力信号光が第1DGD発生部929に入力されて、第1DGD発生部929、第1モードミキサ908、第2DGD発生部930、第2モードミキサ913、及び反射鏡914にいたるまでの光路を往復して、1次PMDが入力信号光に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて出力される構成とされている。
【0143】
第1DGD発生部929、第1モードミキサ908、及び第2DGD発生部930は、単位機能ブロック931を構成している。
【0144】
第1DGD発生部929は、偏光ビームスプリッタ904、反射鏡905、反射鏡906、偏光ビームスプリッタ907を備えて構成されている。偏光ビームスプリッタ904によって偏波面コントローラ903から出力された出力光は、直交する偏波成分に2分岐され一方の偏波成分が反射鏡905、反射鏡906と順に反射され偏光ビームスプリッタ907で、先に偏光ビームスプリッタ904によって2分岐された他方の偏波成分と合波される。
【0145】
すなわち、偏光ビームスプリッタ904によって2分岐された一方の偏波成分は、反射鏡905及び反射鏡906で反射される光路を伝播し、他方の偏波成分は偏光ビームスプリッタ904から偏光ビームスプリッタ907に直接到達する光路を伝播する。このことによって、偏光ビームスプリッタ904で互いに直交する偏波成分を有する直交固有偏波モード間のDGDの量を可変に調整可能とされている。反射鏡905及び反射鏡906によって構成されるこの直交固有偏波モード間のDGDの量の可変調整機能を有する機構が第1DGD調整機構である。
【0146】
第2DGD発生部930も同様に、偏光ビームスプリッタ909、反射鏡910、反射鏡911、偏光ビームスプリッタ912を備えて構成されている。偏光ビームスプリッタ909、反射鏡910、反射鏡911、偏光ビームスプリッタ912は、それぞれ第1DGD発生部929が備える光ビームスプリッタ904、反射鏡905、反射鏡906、偏光ビームスプリッタ907に対応し、同一の機能を有している。すなわち、反射鏡910及び反射鏡911によって構成されるこの直交固有偏波モード間のDGDの量の可変調整機能を有する機構が第2DGD調整機構である。
【0147】
第1DGD調整機構と第2DGD調整機構とは、駆動ステージ915に一体化されて設置されており、駆動ステージ915を駆動することによって、両機構において等しいDGDを発生させることが可能に構成されている。
【0148】
入力信号光11-1は、光サーキュレータ902を介してこの第1のPMD生成装置928に入力され、1次PMDが付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて出力される。
【0149】
上述した非特許文献2に開示されたPMD生成装置を構成する構成要素とこの発明の実施形態の第1のPMD生成装置928を構成する構成要素間の対応関係は以下のとおりである。
【0150】
第1のPMD生成装置928が、入力信号光11-1を、単位機能ブロック931、第2モードミキサ913、及び反射鏡914に至るまでの光路を往復させる構成とされていることによって、図4に示す非特許文献2に開示されたPMD生成装置における合同な構成の第1ブロック60と第2ブロック70とが、この発明の実施形態の第1のPMD生成装置928における単位機能ブロック931に対応する。そして、第2モードミキサ913が図4に示す第2モードミキサ68と対応する。
【0151】
第1DGD発生部929の前段に偏波面コントローラ903が設けられているので、入力信号光11-1の偏波モードのPSPを指定する座標軸の方向が変動しても、任意のSOPに偏光変換することが可能であり、第1DGD発生部929に入力されるSOPを制御することができる。
【0152】
PMD補償装置としてPMD生成装置を利用するときは、偏波面コントローラ903は伝送路のPMDの影響を受けた光信号の進相軸と、PMD生成装置の遅相軸を一致させる目的で用いられ、入力信号光11-1のSOPが変動しても適応的に調整することが可能となる。また、PMDエミュレーターとしてPMD生成装置を利用するときは、PMD生成装置の進相軸と遅相軸間のパワー分岐比を変化させる目的で偏波面コントローラ903を利用することができる。
【0153】
第1のPMD生成装置928を利用するに当っては、まず第1DGD発生部929及び第2DGD発生部930で発生させるDGDの値を、対象とする入力信号光11-1の波長帯域により定まるFSRに対応するように設定するFSR設定ステップを実行する。FSR設定ステップは、第1DGD発生部929で生じるDGDと第2DGD発生部930で生じるDGDを同時に調整することによって実現される。入力信号光11-1の波長帯域内で十分なスペクトル平坦性を得るには、この出願の発明者の経験上、FSRの3倍程度を確保できるようにDGDの値を設定するのが望ましい。
【0154】
入力信号光11-1が偏波面コントローラ903に入力されると偏光変換されて、光信号13-1となって第1DGD発生部929に入力される。光信号13-1が第1DGD発生部929に入力されると、第1DGD発生部929の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播距離が異なるので、入力信号光11-1のSOPがストークス空間を規定する直交3軸の内の一つの軸(S1軸)を中心として回転されて光信号15-1として出力され第1モードミキサ908に入力される。
【0155】
光信号15-1は、第1モードミキサ908でそのSOPが、第1DGD発生部929における回転軸と直交する軸(例えば、S3軸)を中心として回転されて光信号17-1として出力され第2DGD発生部930に入力される。光信号17-1は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-1として出力され第2モードミキサ913に入力される。
【0156】
第2モードミキサ913に入力された光信号19-1は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光信号21-1として出力され反射鏡914で光信号21-2として反射されて第2モードミキサ913に再び入力される。光信号21-2は、第2モードミキサ913でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-2として出力され第2DGD発生部930に入力される。
【0157】
光信号19-2は、第2DGD発生部930でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号17-2として出力され第1モードミキサ908に入力される。光信号17-2は、第1モードミキサ908でそのSOPがS3軸を中心として回転され光信号15-2として出力され第1DGD発生部929に入力される。光信号15-2は、第1DGD発生部929でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号13-2として出力され偏波面コントローラ903に入力され、光サーキュレータ902を介してPMD付加光信号11-2として出力される。
【0158】
以上説明した様に、第1のPMD生成装置928を、単位機能ブロック931を構成する第1DGD発生部929、第1モードミキサ908、第2DGD発生部930を光信号が往復するように構成したことによって、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を実現している。
【0159】
そして、第1のPMD生成装置928が、単位機能ブロックを一つ設けるだけで形成されることから、装置の全体構成が簡潔化され、PMDの生成動作を制御することも容易となる。更に、第1のPMD生成装置928が、FSR設定ステップが実行可能とされた構成であるので、PMDに関して入力信号光11-1の波長帯域に依存しない装置が実現される。
【0160】
また、第1DGD調整機構と第2DGD調整機構とが、駆動ステージ915に一体化されて設置され、駆動ステージ915を駆動することによって、両機構において等しいDGDを発生させることが可能に構成されていることから、簡便な操作でFSRを設定することが可能となっている。すなわち、FSR設定ステップが、第1DGD発生部929で生じるDGDと第2DGD発生部930で生じるDGDを同時に調整することによって実現される。
【0161】
第1モードミキサ908を、第1DGD発生部929の側から第2DGD発生部930の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサ913を、第2移相子を配置して構成することにより、2次PMDの発生を効果的に抑制することが可能となる。
【0162】
2次PMDの発生を効果的に抑制するには、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと復路において発生する2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆であることが必要である。すなわち、往路でのSOPの回転方向と復路でのSOPの回転方向とが等しくなる状態を実現することが必要である。そこで、第1モードミキサ908を第1の1/4波長板、第1移相子、第2の1/4波長板を配置して構成することによって、偏波変換を往路と復路とで対称にすることが可能となり、往路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルと、復路において発生する2次PMDを与える2次PMDベクトルとは、その大きさが等しく向きが逆となる状況を実現できる。
【0163】
第1移相子をカー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミックス製の偏波面回転素子とすることによって、高速動作が実現される。更に、偏波面コントローラ903と第1移相子と第2移相子とを同一素子で実現させることも可能であり、このようにすれば実装が容易化される。
【0164】
<この発明の実施形態の第1のPMD補償装置>
図6を参照して、この発明の実施形態の第1のPMD補償装置の構成及びその動作について説明する。図6は、この発明の実施形態の第1のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【0165】
この発明の実施形態の第1のPMD補償装置は、第1のPMD生成装置928、偏波解析器917、演算器918、及びドライバ919を具え、入力信号光11-1を入力させて、この入力信号光11-1のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを光信号に付加してPMD補償光信号11-2を生成して出力するPMD補償装置である。ただし、この発明の実施形態の第1のPMD補償装置を構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第1のPMD生成装置928が利用されている。従って、上述した第1のPMD生成装置928の構成及び動作についてはその重複する説明を省略する。
【0166】
入力信号光11-1は、光サーキュレータ902を介して第1のPMD生成装置928に入力され、1次PMD(等化PMD)がこの入力信号光に付加され、かつこの1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて第1のPMD生成装置928から出力される。
【0167】
第1のPMD生成装置928から出力されるPMD付加光信号11-2は、光分岐器916に入力され2分岐された一方の光信号が、暫定PMD補償光信号921として偏波解析器917に入力される。また、光分岐器916で分岐されたもう一方の暫定PMD補償光信号920は、そのPMDの大きさが0となるように制御された時点でPMD補償光信号となる。実際の運用形態では、暫定PMD補償光信号920あるいは921のPMDの大きさを厳密な意味で0とすることはできないので、予め定めたPMDの大きさ以下になった時点で、PMD補償光信号として生成されたものとして扱われる。
【0168】
偏波解析器917に暫定PMD補償光信号921が入力されると、偏波解析器917は、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさをPMD補償パラメータ922として数値化して出力する。
【0169】
PMD補償パラメータ922は、暫定PMD補償光信号921の偏光度(DOP: Degree of Polarization)を利用することが可能である。DOPとは、光パルスの全光強度に対する偏光成分の光強度の占める割合として定義される値であるので、ストークスパラメータ(S0, S1, S2, S3)によって次式(3)で与えられる。
DOP={S12+S22+S32}1/2/S0 (3)
従って、ストークスパラメータ(S0, S1, S2, S3)が算出されれば、DOPは式(3)を用いて算出される。
【0170】
DOPはPMDが小さい場合は大きな値をとり、PMDが大きな場合は小さな値となる。従って、DOPの値が大きくなるように制御すればよいこととなる。このDOPを大きくするように制御する方法が、以下に説明するように知られている。
【0171】
なお、DOPをモニターしてPMDを補償する方法は、波形歪みの補償の対象である光信号の伝送ビットレートに依存せずに実行できること、及び任意のRZ(Return to Zero)フォーマットの光信号に対しても適用が可能であるという特長を有している。
【0172】
偏波解析器917は、DOP計測器(図示を省略してある。)及び演算処理装置(図示を省略してある。)を利用して周知の構成として形成することが可能である。DOP計測器には、例えば、ジェネラルフォトニクス社のDOP計測器POD-101A等が適宜利用できる。そして、偏波解析器917に、DOP計測器POD-101Aを利用し、DOP計測器POD-101Aから出力されるストークスパラメータを含むPMD補償パラメータ922を、USBインターフェース(図示を省略してある。)を介して、演算器918に供給する。演算器918には、PMD補償パラメータ922からDOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータ等を利用することが可能である。すなわち、このパーソナルコンピュータによって、PMD補償パラメータ922からDOPを算出させる構成とする。
【0173】
DOPを算出するプログラムがインストールされているパーソナルコンピュータを利用して、後述するこの発明の実施形態のPMD補償方法のPMD生成ステップ、偏波解析ステップ、演算ステップ、及び等化PMD制御ステップの各ステップを実行することが可能である。
【0174】
例えば、PMD生成ステップ、偏波解析ステップ、演算ステップ、及び等化PMD制御ステップの各ステップを、手動によってドライバ919を操作して制御することによって実行することが原理的に可能である。このとき、操作者は、偏波解析器917から出力されたDOPの値を読み取って、この値に対してDOPの値を増やすかあるいは減らすかを判断し、ドライバ919を操作して第1のPMD生成装置928を制御する。もちろん、これらのステップに対して、汎用コンピュータ等を利用して、以下に説明するように適宜自動化することも可能であることはいうまでもない。
【0175】
演算器918は、上述のようにPMD補償パラメータ922に基づいてDOPを算出すると共に、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号923を算出して出力させる構成とする。演算器918によってPMD補償指示信号923を算出する際のアルゴリズムとしては、周知の山登り法や粒子群最適化(PSO: Particle Swarm Optimization)アルゴリズム等の最適化アルゴリズムが適宜利用することが可能である。この最適化アルゴリズムの実行は手動でも可能であるが、入力信号光11-1のSOPが時間的に早い速度で変化する場合には、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号923を算出するソフトウエアが組み込まれた汎用コンピュータ等を利用して適宜自動化することが望ましい。
【0176】
ドライバ919は、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908、第2モードミキサ913、及び駆動ステージ915に対して、それぞれ制御信号924、926、927、及び925を供給して制御する。
【0177】
この発明の実施形態の第1のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法は、第1のPMD生成装置928によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器917によって実現される偏波解析ステップと、演算器918によって実現される演算ステップと、ドライバ919によって実現される等化PMD制御ステップとを含んで構成される。また、駆動ステージ915が制御信号925によって制御されることによって、FSR設定ステップが実現される。
【0178】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力信号光11-1に付加して暫定PMD補償光信号11-2(すなわち暫定PMD補償光信号921)を生成するステップである。偏波解析ステップは、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさに対応するPMD補償パラメータであるDOPに変換して出力するステップである。演算ステップは、偏波解析器917から出力されたDOPに基づいて、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号923を算出して出力するステップである。等化PMD制御ステップは、PMD補償指示信号923に基づいて、暫定PMD補償光信号921のDOPの値をモニターして第1のPMD生成装置928を制御し、PMD補償光信号11-2を出力するステップである。
【0179】
すなわち、偏波解析器917で暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさに対応するPMD補償パラメータであるDOPが求められPMD補償パラメータ922が出力される。このPMD補償パラメータ922によって指示されたDOPに基づいて、暫定PMD補償光信号921のPMDの大きさが減少する方向に等化PMDを発生させるためのPMD補償指示信号923が生成されて出力される。このPMD補償指示信号923に基づきドライバ919から、制御信号924、926及び927が生成されて出力され、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908及び第2モードミキサ913に対してそれぞれ供給され、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908及び第2モードミキサ913の状態が調整される。これによって、暫定PMD補償光信号921のDOPが変動するのでこの変動したDOPが偏波解析器917で測定されて同様の制御が行われるというフィードバック制御システムが形成される。
【0180】
<この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーター>
図7を参照して、この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーターの構成及びその動作について説明する。図7は、この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【0181】
この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーターは、第1のPMD生成装置928、偏波解析器917、演算器918、ドライバ919、及びPSP制御部940を具え、PMDを含まない入力信号光11-1を入力させて、予め設定された大きさのPMDが付加されたエミュレートPMD含有光信号11-2を生成し、エミュレートPMD含有光信号11-2のPSPを、予め設定されたPSPに調整して出力するPMDエミュレーターである。ただし、この発明の実施形態のPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第1のPMD生成装置928が利用されている。従って、上述した第1のPMD生成装置928の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0182】
また、上述のこの発明の実施形態の第1のPMD補償装置の動作説明において、PMD補償光信号11-2、暫定PMD補償光信号921、暫定PMD補償光信号920、PMD補償パラメータ922、PMD補償指示信号923とあるところを、この発明の実施形態の第1のPMDエミュレーターの動作説明においては、PMD付加光信号11-2、暫定PMD含有光信号921、暫定PMD含有光信号920、PMDパラメータ922、PMD付加指示信号923と表記し、同一の符号によって両者の信号を示してある。
【0183】
これは、PMD補償装置では第1のPMD生成装置928において、入力信号光に含まれるPMDを等化するためにPMDを発生させるのに対して、PMDエミュレーターでは同じく第1のPMD生成装置928において、PMDを含まない入力信号光に対して意図的にPMDを付加するためにPMDを発生させている。何れの装置においても第1のPMD生成装置928がPMDを発生させていることには変わりがないので、上述のように同一の符号によって両者の信号を示してある。
【0184】
PMDを含まない入力信号光11-1は、光サーキュレータ902を介して第1のPMD生成装置928に入力され、1次PMDがこの入力信号光に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて第1のPMD生成装置928から出力される。
【0185】
第1のPMD生成装置928から出力されるPMD付加光信号11-2は、光サーキュレータ902を介して光分岐器916に入力され2分岐された一方の光信号が、暫定PMD含有光信号921として偏波解析器917に入力される。
【0186】
また、光分岐器916で分岐されたもう一方の暫定PMD含有光信号920は、そのPSPが予め設定されたPSPに制御された時点、すなわちPMDの大きさが予め設定されたPSPを表す大きさと等しくなるように制御された時点でエミュレートPMD含有光信号となる。実際の運用形態では、暫定PMD含有光信号920あるいは921のPMDの大きさが厳密な意味で予め設定されたPSPを表す大きさと等しくなるようにすることはできないので、暫定PMD含有光信号921のPMDと予め定めたPMDとの差が、予め定めた値以下になった時点で、エミュレートPMD含有光信号として生成されたものとして扱われる。
【0187】
偏波解析器917に暫定PMD含有光信号921が入力されると、偏波解析器917は、暫定PMD含有光信号921のPMDの大きさをPMDパラメータ922として数値化して出力する。PMDパラメータ922は、暫定PMD含有光信号921のDOPを利用することが可能である。DOPはPMDが小さい場合は大きな値をとり、PMDが大きな場合は小さな値となる。従って、DOPの値が大きくなるように制御すればよいこととなる。このDOPを大きくするように制御する方法は、上述したこの発明の実施形態のPMD補償装置の場合と同様であるので、重複する説明を省略する。
【0188】
演算器918は、PMDパラメータ922に基づいてDOPを算出すると共に、暫定PMD含有光信号921の大きさが予め設定されたPMDの大きさに近づく方向にPMD付加指示信号923を出力する。
【0189】
ドライバ919は、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908、第2モードミキサ913、駆動ステージ915、に対して、それぞれに制御信号924、926、927、925を供給して制御する。
【0190】
PSP制御部940は、ドライバ919が出力するPSP制御部制御信号919Sに従って、暫定PMD含有光信号920のPSPを予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0191】
この発明の実施形態のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法は、第1のPMD生成装置928によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器917によって実現される偏波解析ステップと、演算器918によって実現される演算ステップと、ドライバ919によって実現されるエミュレートPMD制御ステップと、PSP制御部940によって実現されるPSP制御ステップと、を含んで構成される。また、駆動ステージ915が制御信号925によって制御されることによって、FSR設定ステップが実現される。
【0192】
偏波面コントローラ903において偏波調整ステップが実行される。偏波調整ステップは、伝送路の進相軸を通過した偏波成分のSOPをPMD生成装置の遅相軸へ一致させるステップであり、PMD生成装置の進相軸と遅相軸へのパワー分岐比を調整するステップである。
【0193】
PMD生成ステップは、暫定等化PMDを発生させ入力信号光11-1に付加して暫定PMD含有光信号11-2(すなわち暫定PMD含有光信号921)を生成するステップである。偏波解析ステップは、暫定PMD含有光信号921のPMDの大きさに対応するPMDパラメータであるDOPに変換して出力するステップである。演算ステップは、偏波解析器917から出力されたDOPに基づいて、暫定PMD含有光信号921のPMDの大きさが予め設定されたPMDの大きさに近づく方向にPMD付加指示信号923を算出して出力するステップである。エミュレートPMD制御ステップは、PMD付加指示信号923に基づいて、PMD含有光信号921のPMDの値を制御して、エミュレートPMD含有光信号920を出力するステップである。
【0194】
偏波解析器917で、PMD含有光信号11-2すなわち、暫定PMD含有光信号921のDOPが求められPMDパラメータ922が出力される。このPMDパラメータ922によって指示されたDOPに基づいて、暫定PMD含有光信号921のPMDの大きさが予め設定されたPMDの値に近づく方向に等化PMDを発生させるためのPMD付加指示信号923が生成されて出力される演算ステップが実行される。PSP制御ステップは暫定PMD含有光信号921を予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0195】
このPMD付加指示信号923に基づきドライバ919から、制御信号924、926及び927が生成されて出力され、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908及び第2モードミキサ913に対してそれぞれ制御信号924、926及び927が供給され、偏波面コントローラ903、第1モードミキサ908及び第2モードミキサ913の状態が調整される。これによって、暫定PMD付加光信号921のDOPが変動するのでこの変動したDOPが偏波解析器917で測定されて同様の制御が行われるというフィードバック制御システムが形成される。
【0196】
<この発明の実施形態の第2のPMD生成装置>
図8を参照して、この発明の実施形態の第2のPMD生成装置の構成及びその動作について説明する。図8は、この発明の実施形態の第2のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【0197】
第2のPMD生成装置430は、第1DGD発生部431、第1モードミキサ409、第2DGD発生部432、第2モードミキサ415、及び反射鏡416を具えて形成される。また、第1DGD発生部431及び第2DGD発生部432は、ここで発生する直交固有偏波モード間のDGD量を調整可変とするDGD調整機構をそれぞれ備えている。
【0198】
更に、第1DGD発生部431の前段に、第1DGD発生部431へ入力される入力信号光のSOPを任意に調整する偏波面コントローラ403が設けられている。
【0199】
第1DGD発生部431、第1モードミキサ409、及び第2DGD発生部432は、単位機能ブロック433を構成している。
【0200】
第1DGD発生部431は、偏光ビームスプリッタ404、反射鏡406、反射鏡408、1/4波長板405、1/4波長板407を備えて構成され、反射鏡408は駆動ステージ437に設置されており、光路長を変化させることで入力信号光の波長に応じてDGDを生成させることが可能である。反射鏡408によって構成されるこの直交固有偏波モード間のDGDの量の可変調整機能を有する機構が第1DGD調整機構である。
【0201】
第2DGD発生部432も同様に、偏光ビームスプリッタ410、反射鏡412、反射鏡414、1/4波長板411、1/4波長板413を備えて構成され、反射鏡414は駆動ステージ437に設置されており、光路長を変化させることで入力信号光の波長に応じてDGDを生成させることが可能である。
【0202】
偏光ビームスプリッタ410、反射鏡412、反射鏡414は、それぞれ第1DGD発生部431が備える光ビームスプリッタ404、反射鏡406、反射鏡408に対応し、同一の機能を有している。すなわち、反射鏡414によって構成されるこの直交固有偏波モード間のDGDの量の可変調整機能を有する機構が第2DGD調整機構である。
【0203】
第1DGD調整機構と第2DGD調整機構とは、駆動ステージ437に一体化されて設置されており、駆動ステージ437を駆動することによって、両機構において等しいDGDを発生させることが可能に構成されている。
【0204】
第1のPMD生成装置928と同様に、入力信号光11-1は、光サーキュレータ402を介して第2のPMD生成装置430に入力され、1次PMDが付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて出力される構成とされている。
【0205】
上述した非特許文献2に開示されたPMD生成装置を構成する構成要素とこの発明の実施形態の第2のPMD生成装置430を構成する構成要素間の対応関係は以下のとおりである。
【0206】
第2のPMD生成装置430が、入力信号光11-1を、単位機能ブロック433、第2モードミキサ415、及び反射鏡416に至るまでの光路を往復させる構成とされていることによって、図4に示す非特許文献2に開示されたPMD生成装置における合同な構成の第1ブロック60と第2ブロック70とが、この発明の実施形態の第2のPMD生成装置430における単位機能ブロック433に対応する。そして、第2モードミキサ415が図4に示す第2モードミキサ68と対応する。
【0207】
入力信号光11-1が光サーキュレータ402を介して偏波面コントローラ403に入力されると、偏光変換されて光信号13-1となって第1DGD発生部431に入力される。光信号13-1が第1DGD発生部431に入力されると、第1DGD発生部431の進相軸と遅相軸のそれぞれの方向の偏波成分の伝播距離が異なるので、光信号のSOPがストークス空間を規定する直交3軸の内の一つの軸(S1軸)を中心として回転されて光信号15-1として出力され第1モードミキサ409に入力される。
【0208】
光信号15-1は、第1モードミキサ409で同様にそのSOPが、マイケルソン干渉計の形態に構成された第1DGD発生部431における回転軸と直交する軸(例えば、S3軸)を中心として回転されて光信号17-1として出力され第2DGD発生部432に入力される。光信号17-1は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-1として出力され第2モードミキサ415に入力される。
【0209】
第2モードミキサ415に入力された光信号19-1は、そのSOPがS1軸を中心として回転され光信号21-1として出力され反射鏡416で光信号21-2として反射されて第2モードミキサ415に再び入力される。光信号21-2は、第2モードミキサ415でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号19-2として出力され第2DGD発生部432に入力される。
【0210】
光信号19-2は、第2DGD発生部432でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号17-2として出力され第1モードミキサ409に入力される。光信号17-2は、第1モードミキサ409でそのSOPがS3軸を中心として回転され光信号15-2として出力され第1DGD発生部431に入力される。光信号15-2は、第1DGD発生部431でそのSOPがS1軸を中心として回転され光信号13-2として出力され偏波面コントローラ403に入力され、光サーキュレータ402を介してPMD付加光信号11-2として出力される。
【0211】
以上説明した様に、第2のPMD生成装置430を、単位機能ブロック433を構成する第1DGD発生部431、第1モードミキサ409、第2DGD発生部432を光信号が往復するように構成したことによって、同一の構成の2つの単位機能ブロックを通過させることに相当する動作を実現している。
【0212】
そして、第2のPMD生成装置430が、FSR設定ステップが実行可能とされた構成であるので、PMDに関して入力信号光11-1の波長帯域に依存しない装置が実現される。
【0213】
また、第1DGD調整機構と第2DGD調整機構とが、駆動ステージ437に一体化されて設置され、駆動ステージ437を駆動することによって、両機構において等しいDGDを発生させることが可能に構成されていることから、簡便な操作でFSRを選択することが可能となっている。すなわち、FSR設定ステップが、第1DGD発生部431で生じるDGDと第2DGD発生部432で生じるDGDを同時に調整することによって実現されることから、第1DGD調整機構と第2DGD調整機構とが、駆動ステージ437に一体化されて設置するのが好適な構成である。
【0214】
第1DGD発生部431は、上述したようにマイケルソン干渉計の形態に形成される。偏光ビームスプリッタ404と反射鏡408の間には1/4波長板407が配置され、DGDが与えられた光信号は図8の下方に向って出力される。例えば、光信号が、偏波面コントローラ403から出力され、偏光ビームスプリッタ404へ入力された場合、反射鏡408で反射されて戻される光路では遅延が与えられ、偏光ビームスプリッタ404で反射されて反射鏡406で反射されて戻される光路をたどって偏光ビームスプリッタ404に戻される光路では遅延が与えられない。
【0215】
遅延が与えられて偏光ビームスプリッタ404に戻った光信号と遅延が与えられないで偏光ビームスプリッタ404に戻った光信号とが、偏光ビームスプリッタ404で合波されて、光信号15-1として第1モードミキサ409に向う方向に偏光ビームスプリッタ404から出力される。
【0216】
第2DGD発生部432も第1DGD発生部431と同様の構成であり、第1DGD発生部431の偏光ビームスプリッタ404と、第2DGD発生部432の偏光ビームスプリッタ410では、p偏光の光信号成分とs偏光の光信号成分とが等しい方向に分岐されるように設定する。すなわち、偏光ビームスプリッタ404でp偏光の光信号成分が反射鏡406に向う方向(進相軸)に分岐されるように設定されている場合、反射鏡406により反射された偏光成分は1/4波長板405の往復によりs偏光になるため、偏光ビームスプリッタ410ではs偏光成分が反射鏡412に向う方向に分岐されるように設定される。逆に、偏光ビームスプリッタ404でs偏光の光信号成分が反射鏡406に向う方向(進相軸)に分岐されるように設定されている場合、反射鏡406により反射された偏光成分は1/4波長板405の往復によりp偏光になるため、偏光ビームスプリッタ410ではp偏光成分が反射鏡412に向う方向に分岐されるように設定される。
【0217】
第1DGD調整機構(第1DGD発生部431)と第2DGD調整機構(第2DGD発生部432)とを、それぞれマイケルソン干渉計の形態に形成することによって、装置を細長い形状に形成されることなく、コンパクトに形成し易い利点がある。また、製造誤差や経時変化によるアライメントのずれが発生しにくいという特長がある。
【0218】
第1モードミキサ409を、第1DGD発生部431の側から第2DGD発生部432の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、第2の1/4波長板を配置して構成し、第2モードミキサ415を、第2移相子を配置して構成することにより、2次PMDの発生を効果的に抑制することが可能となる点も、上述の第1のPMD生成装置928の場合と同様である。
【0219】
<この発明の実施形態の第2のPMD補償装置>
図9を参照して、この発明の実施形態の第2のPMD補償装置の構成及びその動作について説明する。図9は、この発明の実施形態の第2のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【0220】
この発明の実施形態の第2のPMD補償装置は、第2のPMD生成装置430、偏波解析器417、演算器420、及びドライバ421を具え、入力信号光11-1を入力させて、この入力信号光11-1のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを光信号に付加してPMD補償光信号11-2を生成して出力するPMD補償装置である。ただし、この発明の実施形態の第2のPMD補償装置を構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第2のPMD生成装置430が利用されている。従って、上述した第2のPMD生成装置430の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0221】
ドライバ421は、偏波面コントローラ403、第1モードミキサ409、第2モードミキサ415、及び駆動ステージ437に対して、それぞれ制御信号424、422、423、及び425を供給して制御する。
【0222】
また、偏波解析器417、演算器420、及びドライバ421は、それぞれ、第1のPMD補償装置が備える偏波解析器917、演算器918、及びドライバ919に対応し、その機能も同一であるので、これらの機能に関する重複する説明を省略する。
【0223】
第1のPMD補償装置の動作説明で、光分岐器916、暫定PMD補償光信号921、暫定PMD補償光信号920、PMD補償パラメータ922、及びPMD補償指示信号923とあるところを、第2のPMD補償装置の動作説明においては、光分岐器418、暫定PMD補償光信号427、暫定PMD補償光信号426、PMD補償パラメータ428、及びPMD補償指示信号429と表記する。
【0224】
この発明の実施形態の第2のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法は、第2のPMD生成装置430によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器417によって実現される偏波解析ステップと、演算器420によって実現される演算ステップと、ドライバ421によって実現される等化PMD制御ステップとを含んで構成される。
【0225】
これらのステップも、この発明の実施形態の第1のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法が含むステップと同様なので、これらのステップに関する重複する説明を省略する。
【0226】
<この発明の実施形態の第2のPMDエミュレーター>
図10を参照して、この発明の実施形態の第2のPMDエミュレーターの構成及びその動作について説明する。図10は、この発明の実施形態の第2のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【0227】
この発明の実施形態の第2のPMDエミュレーターは、第2のPMD生成装置430、偏波解析器417、演算器420、ドライバ421、及びPSP制御部435を具え、PMDを含まない入力信号光11-1を入力させて、予め設定された大きさのPMDが付加されたエミュレートPMD含有光信号11-2を生成し、エミュレートPMD含有光信号11-2のPSPを、予め設定されたPSPに調整して出力するPMDエミュレーターである。ただし、第2のPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第2のPMD生成装置430が利用されている。従って、上述した第2のPMD生成装置430の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0228】
また、図9で、PMD補償光信号11-2、暫定PMD補償光信号427、暫定PMD補償光信号426、PMD補償パラメータ428、PMD補償指示信号429とあるところを、図10においては、PMD付加光信号11-2、暫定PMD含有光信号427、暫定PMD含有光信号426、PMDパラメータ428、PMD付加指示信号429と表記し、同一の符号によって両者の信号を示してある。
【0229】
これは、PMD補償装置では第2のPMD生成装置430において、入力信号光に含まれるPMDを等化するためにPMDを発生させるのに対して、PMDエミュレーターでは同じく第2のPMD生成装置430において、PMDを含まない入力信号光に対して意図的にPMDを付加するためにPMDを発生させている。何れの装置においても第2のPMD生成装置430がPMDを発生させていることには変わりがないので、上述のように同一の符号によって両者の信号を示してある。
【0230】
PMDを含まない入力信号光11-1は、光サーキュレータ402を介して第2のPMD生成装置430に入力され、1次PMDがこの入力信号光に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて第2のPMD生成装置430から出力される。
【0231】
偏波解析器417、演算器420、ドライバ421、及びPSP制御部435は、それぞれ図7に示した第1のPMDエミュレーターが備える偏波解析器917、演算器918、ドライバ919、及びPSP制御部940と同一である。そして、PSP制御部435は、ドライバ421が出力するPSP制御部制御信号421Sに従って、暫定PMD含有光信号426のPSPを予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0232】
また、第2のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法に含まれる各ステップも、第1のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法に含まれる各ステップと同一なので、これらのステップについてもその重複する説明を省略する。
【0233】
<この発明の実施形態の第3のPMD生成装置>
図11を参照して、この発明の実施形態の第3のPMD生成装置の構成及びその動作について説明する。図11は、この発明の実施形態の第3のPMD生成装置の概略的ブロック構成図である。
【0234】
第3のPMD生成装置120は、第1DGD調整機構及び第2DGD調整機構が、それぞれ発生するDGDの量が相異なる複数の複屈折結晶が直列に配置され、複屈折結晶の間にはこの複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子が配置されて形成されている。第1DGD調整機構は第1DGD発生部104で実現され、第2DGD調整機構は第2DGD発生部106で実現される。
【0235】
具体的には、図11に示すように、第3のPMD生成装置120は、光サーキュレータ102、第1DGD発生部104、第1モードミキサ105、第2DGD発生部106、第2モードミキサ107、及び反射鏡108を備え、これらがこの順に直列配置されて構成される。第1DGD発生部104と第2DGD発生部106は同一の構成である。更に、第1DGD発生部104の前後に、第1DGD発生部104へ入力される入力信号光11-1のSOPを任意に調整する偏波面コントローラ103が設けられている。
【0236】
第1DGD発生部104と第2DGD発生部106は、等しい光学軸をなすように配置されたDGD発生量が互いに異なる複数の複屈折結晶と、それらの間に複屈折結晶の進相軸と遅相軸の伝播軸をスイッチする90度可変偏光回転子が配置されている。
【0237】
例えば、図11に示すように、第1DGD発生部104は、複屈折結晶104-1C、90度可変偏光回転子104-1R、複屈折結晶104-2C、90度可変偏光回転子104-2R、複屈折結晶104-3C、90度可変偏光回転子104-3R、及び複屈折結晶104-4Cの順に配置されて構成されている。また、第2DGD発生部106は、複屈折結晶106-1C、90度可変偏光回転子106-1R、複屈折結晶106-2C、90度可変偏光回転子106-2R、複屈折結晶106-3C、90度可変偏光回転子106-3R、及び複屈折結晶106-4Cの順に配置されて構成されている。
【0238】
ここで、複屈折結晶104-1C、複屈折結晶104-2C、複屈折結晶104-3C、複屈折結晶104-4Cとして、DGDの発生量がそれぞれ順に、8、6、4、2 ps(ピコ秒)のものを使用した場合、最大20 psのDGDを発生させる第1DGD調整機構となる。
【0239】
20 ps以下のDGDを発生させるためには、90度可変偏光回転子104-1R、104-2R、104-3Rのいずれかを偏光回転量を0度と異なる90度に設定することによって、離散的に異なるDGDを発生させることができる。第2DGD発生部106についても同様である。
【0240】
入力信号光11-1は、光サーキュレータ102を介して偏波面コントローラ103に入力され、偏波面が制御されて第3のPMD生成装置120で生成されるPMDベクトルの方向が決定される。
【0241】
第1DGD発生部104及び第2DGD発生部106を構成する複屈折結晶の数は、上述の4つに限らず、2つ以上であれば幾つでもよい。構成する複屈折結晶の数が多いほど設定可能なDGDの値の種類を増やすことができる。
【0242】
偏波面コントローラ103から出力された光信号は、第1DGD発生部104へ入力される。第1DGD発生部104では、上述した第1及び第2のPMD生成装置が備える第1DGD発生部におけるのと同様に、入力信号光11-1の波長帯域に応じて設定されたDGDが与えられる。第1DGD発生部104においてPMDベクトルを付加された光信号は、第1モードミキサ105により、第1DGD発生部104で生じる偏光回転軸とストークス空間で直交する軸を中心に偏光状態が回転される。
【0243】
第1モードミキサ105により、偏光回転が与えられた光信号は、第2DGD発生部106に入力される。ここで、第1DGD発生部104と第2DGD発生部106で発生させるDGDの値は等しくなるように設定する。第1DGD発生部104、第1モードミキサ105、第2DGD発生部106では、第1モードミキサ105の偏光回転量で決定する波長に対して変化しないDGDが生じ、そのPMDベクトルの方向は波長変化に対してストークス空間上を回転する。
【0244】
例えば、第1DGD発生部104のPMDベクトルがストークス空間のS1軸方向を向くように第1DGD発生部104を設定した場合、波長変化に対してS1軸を中心としてPMDベクトルが回転する。第2DGD発生部106から出力された光信号は、第2モードミキサ107に入力される。ここで、第2DGD発生部106から出力された光信号のときのPMDベクトルは、波長に対するDGDが一定の第1モードミキサ105によって決定されるDGDであり、PMDベクトルに平行な単位ベクトルの方向は波長に対して回転する。
【0245】
第2モードミキサ107の偏光回転軸は、第1DGD発生部104を伝播する光信号に対する偏光回転軸と等しく、第1モードミキサ105の偏光回転軸と直交する。第2モードミキサ107は、反射構造の往路のPMDベクトルと復路のPMDベクトルの合成の際に、そのストークス空間における合成点を決定する。
【0246】
第2モードミキサ107により偏光状態が回転された光信号は、反射鏡108によって反射され、第2DGD発生部106、第1モードミキサ105、第1DGD発生部104へ順次入力される。第1DGD発生部104と第2DGD発生部106で生じるDGDは等しいので、第1DGD発生部104、第1モードミキサ105、第2DGD発生部106で生じるPMDベクトルと、その逆伝送光路である第2DGD発生部106、第1モードミキサ105、第1DGD発生部104で生じるPMDベクトルは等しく、2次PMDベクトルの方向を第2モードミキサ107で決定される中心波長の周辺において逆ベクトルとすることで、中心波長において1次PMDのみを発生させることができる。
【0247】
復路において第1DGD発生部104から出力された光信号11-2は、偏波面コントローラ103を再度通過するが、偏波面コントローラ103のPMDベクトルは無視できるので、PMD生成機能の影響を及ぼさない。復路において第1DGD発生部104から出力されたPMD付加光信号11-2は、光サーキュレータ102を介して出力される。
【0248】
<この発明の実施形態の第3のPMD補償装置>
図12を参照して、この発明の実施形態の第3のPMD補償装置の構成及びその動作について説明する。図12は、この発明の実施形態の第3のPMD補償装置の概略的ブロック構成図である。
【0249】
この発明の実施形態の第3のPMD補償装置は、第3のPMD生成装置120、偏波解析器110、演算器111、及びドライバ112を具え、入力信号光11-1を入力させて、この入力信号光11-1のPMDを等化する等化PMDを発生させ、この等化PMDを光信号に付加してPMD補償光信号を生成して、光サーキュレータ102を介して出力するPMD補償装置である。ただし、この発明の実施形態の第3のPMD補償装置を構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第3のPMD生成装置120が利用されている。従って、上述した第3のPMD生成装置120の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0250】
また、偏波解析器110、演算器111、及びドライバ112は、それぞれ、第1のPMD補償装置が備える偏波解析器917、演算器918、及びドライバ919に対応し、その機能も同一であるので、これらの機能に関する重複する説明を省略する。
【0251】
ドライバ112は、偏波面コントローラ103、第1モードミキサ105及び第2モードミキサ107に対して、それぞれ制御信号116、118-1及び118-2を供給して制御する。
【0252】
また、ドライバから出力される90度可変偏光回転子制御信号117-1は、90度可変偏光回転子104-1R、104-2R、104-3Rの偏光回転量を制御して0度あるいは90度に設定する信号であり、90度可変偏光回転子制御信号117-2は、90度可変偏光回転子106-1R、106-2R、106-3Rの偏光回転量を制御して0度あるいは90度に設定する信号である。
【0253】
第2のPMD補償装置の動作説明で、光分岐器418、暫定PMD補償光信号427、暫定PMD補償光信号426、PMD補償パラメータ428、及びPMD補償指示信号429とあるところを、第3のPMD補償装置の動作説明においては、光分岐器109、暫定PMD補償光信号113、暫定PMD補償光信号119、PMD補償パラメータ114、及びPMD補償指示信号115と表記する。
【0254】
この発明の実施形態の第3のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法は、第3のPMD生成装置120によって実現されるPMD生成ステップと、偏波解析器110によって実現される偏波解析ステップと、演算器111によって実現される演算ステップと、ドライバ112によって実現される等化PMD制御ステップとを含んで構成される。
【0255】
これらのステップも、この発明の実施形態の第1のPMD補償装置によって実現されるPMD補償方法が含むステップと同様なので、これらのステップに関する重複する説明を省略する。
【0256】
<この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーター>
図13を参照して、この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーターの構成及びその動作について説明する。図13は、この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーターの概略的ブロック構成図である。
【0257】
この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーターは、第3のPMD生成装置120、偏波解析器110、演算器111、ドライバ112、及びPSP制御部140を具え、PMDを含まない入力信号光11-1を入力させて、予め設定された大きさのPMDが付加されたエミュレートPMD含有光信号を生成し、エミュレートPMD含有光信号のPSPを、予め設定されたPSPに調整して出力するPMDエミュレーターである。ただし、この発明の実施形態のPMDエミュレーターを構成するPMD生成装置には、上述したこの発明の実施形態の第3のPMD生成装置120が利用されている。従って、上述した第3のPMD生成装置120の動作についてはその重複する説明を省略する。
【0258】
この発明の実施形態の第3のPMDエミュレーターの動作説明においては、暫定PMD含有光信号113、暫定PMD含有光信号119、PMDパラメータ114、及びPMD付加指示信号115と表記する。
【0259】
第3のPMD補償装置では第3のPMD生成装置120において、入力信号光に含まれるPMDを等化するためにPMDを発生させるのに対して、第3のPMDエミュレーターでは同じく第3のPMD生成装置120において、PMDを含まない入力信号光に対して意図的にPMDを付加するためにPMDを発生させている。何れの装置においても第3のPMD生成装置120がPMDを発生させていることには変わりがないので、図13において、暫定PMD含有光信号113、暫定PMD含有光信号119、PMDパラメータ114、及びPMD付加指示信号115について、図12と同一の符号によって示してある。
【0260】
そして、PSP制御部140は、ドライバ112が出力するPSP制御部制御信号112Sに従って、暫定PMD含有光信号119のPSPを予め設定されたPSPに調整して出力する。
【0261】
PMDを含まない入力信号光11-1は、光サーキュレータ102を介して第3のPMD生成装置120に入力され、1次PMDがこの入力信号光に付加され、かつ1次PMDの生成に伴い発生する2次PMDが相殺されて、PMD付加光信号11-2が生成されて第3のPMD生成装置120から出力される。
【0262】
偏波解析器110、演算器111、ドライバ112、及びPSP制御部140は、それぞれ図7に示した第1のPMDエミュレーターが備える偏波解析器917、演算器918、ドライバ919、及びPSP制御部940と同一である。
【0263】
また、第3のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法に含まれる各ステップも、第1及び第2のPMDエミュレーターによって実現されるPMDエミュレート方法に含まれる各ステップと同一なので、これらのステップについてもその重複する説明を省略する。
【0264】
<適用波長帯域を可変としたことによって得られる効果>
既に説明したように、この発明の第1〜第3のPMD生成装置において、第1DGD発生部及び第2DGD発生部で生じるDGDの値によってFSRが決定され、FSRの中心波長は第2DGD発生部で発生させる偏光回転量によって任意にシフトさせることができる。この中心波長をWDMのグリッドの中心波長に一致させれば、WDM信号を一括して評価可能なエミュレーターとして利用することができる。
【0265】
この発明の特長である、適用波長帯域を可変としたことによりFSRを任意に設定することが可能であるという機能によってもたらされる具体的な利点について、以下に説明する。
【0266】
PMDの波長(周波数)依存性は、複屈折結晶を光信号が通過した後に直交固有軸間に生じる位相差の波長(周波数)依存性によって生じる。例えば、複屈折結晶に信号光が入力されると、直交固有軸間に位相差φが生じる。このφの値は、複屈折結晶の長さをdとし、複屈折結晶の直交固有軸間の屈折率差をΔnとすると、φ=(2π/λ)Δndと与えられる。
【0267】
複屈折結晶を通過することによって生じる直交固有軸間の遅延差をτ(DGDの値)とし、光速度をcとすると、Δnd=cτで与えられる。ここで、φを、光信号の周波数をfとし、τを用いて表すとφ=2πfτ(ラジアン)となる。
【0268】
直交固有軸間の位相差φは、このように複屈折結晶を用いて実現される他、この発明の第1及び第2のPMD生成装置におけるように、マッハツェンダー干渉計の形態あるいはマイケルソン干渉計の形態に形成された機構によっても実現される。すなわち、第1のPMD生成装置928では、第1及び第2のDGD発生機構である第1及び第2DGD発生部が複屈折結晶を用いて構成されるものではないが、以下の理論は、直交固有軸間に位相差φを発生させるという機能に基づいて得られる共通の効果に基づくものであるので、上述の複屈折結晶によって直交固有軸間に位相差φを発生させる説明がそのまま適用される。そこで、第1のPMD生成装置928を例にとって説明する。
【0269】
第1のPMD生成装置928の、第1DGD発生部929、第2DGD発生部930で生じる2つの等しいPMDベクトルの絶対値をτ(PMDベクトルの絶対値はDGDの値に等しい)とすると、既に説明したようにFSRは、FSR=1/(2τ)で与えられる。すなわち、FSRはDGDの値によって決まる。
【0270】
第1モードミキサ908で生じる偏波回転量をα=π/2、第2モードミキサ913で生じる偏波回転量をβ=-π、第1DGD発生部929と第2DGD発生部930で生じる直交固有軸間の位相差をφ、第1DGD発生部929、第2DGD発生部930で生じるDGDの値を1 psとしたときのφに対するPMDスペクトル(PMDベクトルの大きさのφ依存性)を図14(A)及び(B)に示す。図14(A)は1次PMDスペクトルを示す図であり、図14(B)は2次PMDスペクトルを示す図である。
【0271】
図14(A)において、横軸はφをラジアン単位で目盛って示してあり、縦軸は1次PMDベクトルの大きさをps単位で目盛って示してある。また、図14(B)において、横軸はφをラジアン単位で目盛って示してあり、縦軸は2次PMDベクトルの大きさをps単位で目盛って示してある。横軸φの0〜2πの変化幅に対応する周波数幅は1 THzである。また、Nを整数として、β=-φ+Nπの条件で、DGD=23/2τ、2次PMDの大きさは0となる。
【0272】
このように、第1DGD発生部929と第2DGD発生部930で生じるDGDの値によってFSRが決定され、その中心波長は第2モードミキサ913で発生させる偏波回転量βによって任意にシフトさせることができる。β=-φ+Nπ(中心波長)となる波長において所望のPMDスペクトル特性が得られるので、この中心波長をWDMグリッドの中心波長に一致させれば、WDM信号を一括して評価可能なPMDエミュレーターが実現される。
【0273】
このことを、図15を参照して説明する。図15では、1次及び2次PMDスペクトルを、直交固有軸間の位相差φを、図14に示すよりも広い範囲にわたって示してある。そして、上段に第1DGD発生部929と第2DGD発生部930で生じるDGDの値が大きい場合のFSRを示し、下段にこのDGDの値を小さくすることによってFSRが変化する様子を示している。図15に示すように、PMD生成装置の中心波長をWDMグリッドの中心波長に一致させれば、WDM信号を一括して評価可能なPMDエミュレーターが実現されることが分かる。
【0274】
例えば、WDMグリッドを50 GHzグリッドとする場合では、第1DGD発生部929及び第2DGD発生部930で生じるDGDの値を10 psとすればWDM信号を一括して評価可能となる。また、100 GHzグリッドとする場合では5 ps、40 GHzグリッドとする場合では12.5 psとすればWDM信号を一括して評価可能となる。
【符号の説明】
【0275】
50:複屈折媒体
52:モードミキサ
54:反射鏡
60:第1ブロック
62、72:第1複屈折媒体
64、74:第1モードミキサ
66、76:第2複屈折媒体
68:第2モードミキサ
70:第2ブロック
102、402、902:光サーキュレータ
103、403、903:偏波面コントローラ
104、431、929:第1DGD発生部
104-1C、104-2C、104-3C、104-4C、106-1C、106-2C、106-3C、106-4C:複屈折結晶
104-1R、104-2R、104-3R、106-1R、106-2R、106-3R:90度可変偏光回転子
105、409、908:第1モードミキサ
106、432、930:第2DGD発生部
107、415、913:第2モードミキサ
108、406、408、412、414、416、905、906、910、911、914:反射鏡
109:418、916:光分岐器
110、417、917:偏波解析器
111、420、918:演算器
112、421、919:ドライバ
120:第3のPMD生成装置
140、435、940:PSP制御部
404、410、904、907、909、912:偏光ビームスプリッタ
405、407、411、413:1/4波長板
433、931:単位機能ブロック
437、915:駆動ステージ
430:第2のPMD生成装置
928:第1のPMD生成装置




【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡をこの順に配列して具え、、
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、当該第1微分群遅延発生部及び当該第2微分群遅延発生部で発生する直交固有偏波モード間の微分群遅延量を調整可変とする微分群遅延調整機構をそれぞれ備えており、
入力信号光が前記第1微分群遅延発生部から入力されて、前記第1微分群遅延発生部、前記第1モードミキサ、前記第2微分群遅延発生部、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの光路を往復して、1次偏波モード分散が前記入力信号光に付加され、かつ前記1次偏波モード分散の生成に伴い発生する2次偏波モード分散が相殺されて、偏波モード分散付加光信号が生成されて出力される構成とされている
ことを特徴とする偏波モード分散生成装置。
【請求項2】
前記第1微分群遅延発生部の前段に、前記第1微分群遅延発生部へ入力される前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラが更に配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項3】
前記第1モードミキサは、前記第1微分群遅延発生部の側から前記第2微分群遅延発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項1または2に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項4】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項3に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項5】
前記微分群遅延調整機構は、前記第1微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第1微分群遅延調整機構と、前記第2微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第2微分群遅延調整機構とが一体化されて当該微分群遅延量を調整することが可能な構成とされていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項6】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項7】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項8】
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、それぞれ
発生する微分群遅延の量が相異なる複数の複屈折結晶が直列に配置され、該複屈折媒体の間には当該複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子が配置されて形成されている
ことを特徴とする請求項5に記載の偏波モード分散生成装置。
【請求項9】
偏波モード分散生成装置、偏波解析器、演算器、及びドライバを具え、
入力信号光を入力させて、該入力信号光の偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ、該等化偏波モード分散を前入力信号光に付加して偏波モード分散補償光信号を生成して出力する偏波モード分散補償装置であって、
前記偏波モード分散生成装置は、第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、当該第1微分群遅延発生部及び当該第2微分群遅延発生部で発生する直交固有偏波モード間の微分群遅延量を調整可変とする微分群遅延調整機構をそれぞれ備えており、
前記入力信号光を前記第1微分群遅延発生部から入力して、前記第1微分群遅延発生部、前記第1モードミキサ、前記第2微分群遅延発生部、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの光路を往復させて、暫定等化偏波モード分散を前記入力信号光に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力し、
前記演算器は、前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力し、
前記ドライバは、前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記入力信号光に前記等化偏波モード分散を付加して前記偏波モード分散補償光信号を生成するように前記偏波モード分散生成装置を制御する
ことを特徴とする偏波モード分散補償装置。
【請求項10】
前記偏波モード分散生成装置において、前記第1微分群遅延発生部の前段に、前記第1微分群遅延発生部へ入力される前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラが更に配置されている
ことを特徴とする請求項9に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項11】
前記第1モードミキサは、前記第1微分群遅延発生部の側から前記第2微分群遅延発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項9又は10に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項12】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項11に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項13】
前記微分群遅延調整機構は、前記第1微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第1微分群遅延調整機構と、前記第2微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第2微分群遅延調整機構とが一体化されて当該微分群遅延量を調整することが可能な構成とされていることを特徴とする請求項9〜12のいずれか一項に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項14】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項15】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項16】
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、それぞれ
発生する微分群遅延の量が相異なる複数の複屈折結晶が直列に配置され、該複屈折媒体の間には当該複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子が配置されて形成されている
ことを特徴とする請求項13に記載の偏波モード分散補償装置。
【請求項17】
偏波モード分散生成装置、偏波解析器、演算器、ドライバ、及び主偏波状態制御部を具え、
偏波モード分散を含まない入力信号光を入力させて、予め設定された大きさの偏波モード分散を付加したエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成し、該エミュレート偏波モード分散含有光信号の主偏波状態を、予め設定された主偏波状態に調整して出力する偏波モード分散エミュレーターであって、
前記偏波モード分散生成装置は、第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ、及び反射鏡がこの順に配列されて構成されており、
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、当該第1微分群遅延発生部及び当該第2微分群遅延発生部で発生する直交固有偏波モード間の微分群遅延量を調整可変とする微分群遅延調整機構をそれぞれ備えており、
前記入力信号光を、前記第1微分群遅延発生部、前記第1モードミキサ、前記第2微分群遅延発生部、前記第2モードミキサ、及び前記反射鏡にいたるまでの光路を往復させて、暫定等化偏波モード分散を前記入力信号光に付加して暫定偏波モード分散含有光信号を生成し、
前記偏波解析器は、前記暫定偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力し、
前記演算器は、前記偏波モード分散パラメータに基づいて前記暫定偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力し、
前記ドライバは、前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて前記エミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するように前記偏波モード分散生成装置及び前記主偏波状態制御部を制御し、
前記主偏波状態制御部は、該暫定偏波モード分散含有光信号の主偏波状態を予め設定された主偏波状態に調整して出力する
ことを特徴とする偏波モード分散エミュレーター。
【請求項18】
前記偏波モード分散生成装置において、前記第1微分群遅延発生部の前段に、前記第1微分群遅延発生部へ入力される前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波面コントローラが更に配置されている
ことを特徴とする請求項17に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項19】
前記第1モードミキサは、前記第1微分群遅延発生部の側から前記第2微分群遅延発生部の側に向けて順に第1の1/4波長板、第1移相子、及び第2の1/4波長板が配置されて構成されており、
前記第2モードミキサは、第2移相子が配置されて構成されている
ことを特徴とする請求項17または18に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項20】
前記第1移相子は、カー効果による直交偏波成分間の屈折率変化を利用して構成される透過性光学セラミック製の偏波面回転素子であることを特徴とする請求項19に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項21】
前記微分群遅延調整機構は、前記第1微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第1微分群遅延調整機構と、前記第2微分群遅延発生部で発生する微分群遅延量を調整する第2微分群遅延調整機構とが一体化されて当該微分群遅延量を調整することが可能な構成とされていることを特徴とする請求項17〜20に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項22】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マッハツェンダー干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項23】
前記第1微分群遅延調整機構及び前記第2微分群遅延調整機構は、マイケルソン干渉計の形態に形成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項24】
前記第1微分群遅延発生部及び前記第2微分群遅延発生部は、それぞれ
発生する微分群遅延の量が相異なる複数の複屈折結晶が直列に配置され、該複屈折媒体の間には当該複屈折結晶を通過する光の進相軸及び遅相軸方向の電場成分を90度回転させて切り換える90度可変偏光回転子が配置されて形成されている
ことを特徴とする請求項21に記載の偏波モード分散エミュレーター。
【請求項25】
第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を発生させ該偏波モード分散を前記入力信号光に付加して偏波モード分散付加光信号を生成する偏波モード分散生成方法であって、
前記入力信号光の直交する偏波成分の間の伝播時間差である微分群遅延を生じさせ1次偏波モード分散を発生させる1次偏波モード分散発生ステップと、
前記1次偏波モード分散の発生に伴って発生する2次偏波モード分散を相殺させる2次偏波モード分散相殺ステップと
を含み、
前記1次偏波モード分散発生ステップ及び2次偏波モード分散相殺ステップにおいて、前記微分群遅延の量を前記入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
ことを特徴とする偏波モード分散生成方法。
【請求項26】
偏波面コントローラ、第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を発生させ該偏波モード分散を前記入力信号光に付加して偏波モード分散付加光信号を生成する偏波モード分散生成方法であって、
前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波調整ステップと、
前記入力信号の直交する偏波成分の間の伝播時間差である微分群遅延を生じさせ1次偏波モード分散を発生させる1次偏波モード分散発生ステップと、
前記1次偏波モード分散の発生に伴って発生する2次偏波モード分散を相殺させる2次偏波モード分散相殺ステップと
を含み、
前記1次偏波モード分散発生ステップ及び2次偏波モード分散相殺ステップにおいて、前記微分群遅延の量を前記入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
を含むことを特徴とする偏波モード分散生成方法。
【請求項27】
第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ該等化偏波モード分散を前記入力信号光に付加して偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散補償方法であって、
暫定等化偏波モード分散を発生させ前記入力信号光に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の値を制御して、前記偏波モード分散補償光信号を出力する等化偏波モード分散制御ステップと
を含み、
前記偏波モード分散生成ステップにおいて、前記入力信号光の直交固有偏波モード間の微分群遅延の量を当該入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項28】
偏波面コントローラ、第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、偏波モード分散を等化する等化偏波モード分散を発生させ該等化偏波モード分散を前記入力信号光に付加して偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散補償方法であって、
前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波調整ステップと、
暫定等化偏波モード分散を発生させ前記入力信号光に付加して暫定偏波モード分散補償光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散補償パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散補償パラメータに基づいて、前記暫定偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の大きさが減少する方向に前記等化偏波モード分散を発生させるための偏波モード分散補償指示信号を算出して出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散補償指示信号に基づいて、前記偏波モード分散補償光信号の偏波モード分散の値を制御して、前記偏波モード分散補償光信号を出力する等化偏波モード分散制御ステップと
を含み、
前記偏波モード分散生成ステップにおいて、前記入力信号光の直交固有偏波モード間の微分群遅延の量を当該入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
を含むことを特徴とする偏波モード分散補償方法。
【請求項29】
第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサ及び反射鏡をこの順序に配置して構成される光路に偏波モード分散を含まない入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、予め設定された大きさの偏波モード分散が付加され、かつ予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散エミュレート方法であって、
暫定等化偏波モード分散を発生させ、該暫定偏波モード分散が付加された暫定偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散パラメータに基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが前記予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の値を制御してエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するエミュレート偏波モード分散制御ステップと
前記エミュレート偏波モード分散含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を出力する主偏波状態制御ステップと
を含み、
前記偏波モード分散生成ステップにおいて、前記入力信号光の直交固有偏波モード間の微分群遅延の量を当該入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
を含むことを特徴とする偏波モード分散エミュレート方法。
【請求項30】
偏波面コントローラ、第1微分群遅延発生部、第1モードミキサ、第2微分群遅延発生部、第2モードミキサをこの順序に配置して構成される光路に偏波モード分散を含まない入力信号光を入力させて、該光路を往復させることによって、予め設定された大きさの偏波モード分散が付加され、かつ予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散エミュレート方法であって、
前記入力信号光の偏波状態を任意に調整する偏波調整ステップと、
暫定等化偏波モード分散を発生させ、該暫定偏波モード分散が付加された暫定偏波モード分散含有光信号を生成する偏波モード分散生成ステップと、
前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさを偏波モード分散パラメータとして数値化して出力する偏波解析ステップと、
前記偏波モード分散パラメータに基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の大きさが前記予め設定された偏波モード分散の値に近づく方向に偏波モード分散付加指示信号を出力する演算ステップと、
前記偏波モード分散付加指示信号に基づいて、前記偏波モード分散含有光信号の偏波モード分散の値を制御してエミュレート偏波モード分散含有光信号を生成するエミュレート偏波モード分散制御ステップと
前記エミュレート偏波モード分散含有光信号の偏波面を回転させて、予め設定された主偏波状態のエミュレート偏波モード分散含有光信号を出力する主偏波状態制御ステップと
を含み、
前記偏波モード分散生成ステップにおいて、前記入力信号光の直交固有偏波モード間の微分群遅延の量を当該入力信号光の波長帯域により定まる自由周波数領域に対応するように設定する自由周波数領域設定ステップを含む
を含むことを特徴とする偏波モード分散エミュレート方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2013−85214(P2013−85214A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−34313(P2012−34313)
【出願日】平成24年2月20日(2012.2.20)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成21年度独立行政法人情報通信研究機構「高度通信・放送研究開発委託研究/λユーティリティ技術の研究開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(000000295)沖電気工業株式会社 (6,645)
【Fターム(参考)】