傾斜センサおよび傾斜スイッチ
【課題】 液体の粘性を利用してチャタリングを抑制しつつ、液体の流動性も確保できる、簡素な構成で小型化も可能な安価な傾斜センサおよび傾斜スイッチを提供する。
【解決手段】 圧電セラミック等からなる振動部2と、接触することで前記振動部2の振動周波数特性を変化させる液体3と、傾斜することにより前記振動部2と液体3との適切な接触度合いを得ることができるケース1とから構成される傾斜センサ5において、前記ケース1の傾斜によって、振動部2と液体3との接触度合いに応じて変化する振動部2の周波数特性からケース1の傾斜角度αを検出するので、振動部2を加振することで振動部2に接触する液体3の流動性を円滑にし、液体3との接触度合いにより振動周波数特性が変化することを利用して、傾斜角度αを容易に検出でき、液体3を使用してチャタリングを抑制できるにも拘らず、液体3の流動性を確保できて小型化が可能となった。
【解決手段】 圧電セラミック等からなる振動部2と、接触することで前記振動部2の振動周波数特性を変化させる液体3と、傾斜することにより前記振動部2と液体3との適切な接触度合いを得ることができるケース1とから構成される傾斜センサ5において、前記ケース1の傾斜によって、振動部2と液体3との接触度合いに応じて変化する振動部2の周波数特性からケース1の傾斜角度αを検出するので、振動部2を加振することで振動部2に接触する液体3の流動性を円滑にし、液体3との接触度合いにより振動周波数特性が変化することを利用して、傾斜角度αを容易に検出でき、液体3を使用してチャタリングを抑制できるにも拘らず、液体3の流動性を確保できて小型化が可能となった。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いとを得ることができるケースとから構成される傾斜センサに関する。特に、二輪車の転倒等を検出するバイク傾斜センサに有用であるが、移動体の傾斜センサあるいは傾斜スイッチとしても採用が可能である。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等の移動体の傾斜を検出する傾斜センサとしては、傾斜によって移動する振り子や球の位置を磁気的に検出するMR素子(磁気抵抗素子)を用いたり、傾斜によって移動する振り子や球を光学的に検出する発光ダイオードやフォトセンサを用いていたが、これらのMR素子やフォトセンサは高価であり、小型化が困難であった。そこで、傾斜によって移動する振り子や球あるいは錘りによって直接傾斜スイッチを投入することも考えられた。この方法は、安価な反面、振動によるチャタリングの影響を受け易く、実用的でない。そのようなことから、比較的安価な静電容量式液体センサが提案された(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−20518号公報(特許請求の範囲参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示されたものを図16を用いて簡単に説明する。導電性密封容器21の内部に導電性液体22を略1/2満たし、容器21の一方の端面より一対のリード端子24、25を容器21に電気絶縁的に貫通固定する。それらの各リード端子24、25の容器内先端に、表面がシリコン酸化皮膜に覆われた短冊状の主電極26、27を、先端部が導電性液体22の表面に出るように取り付ける。かくして、センサが傾斜したときの、各主電極26、27と導電性液体22との間の静電容量の変化により傾斜角度または加速度を測定できるものである。
【0004】
上記特許文献1に開示された静電容量式液体センサにより、導電性密封容器内に導電性液体と主電極を配設しただけの比較的簡素な構造によって、安価に傾斜センサが提供されることとなったものの、表面張力に起因した液の流動性の低下が妨げとなって、小型化が困難であった。
【0005】
そこで本発明は、前記従来の傾斜センサの課題を解決して、液体の粘性を利用してチャタリングを抑制しつつ、液体の流動性も確保できる、簡素な構成で小型化も可能な安価な傾斜センサおよび傾斜スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することを特徴とする。また本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することを特徴とする。また本発明は、前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置したことを特徴とする。また本発明は、前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することにより、振動部を加振することで振動部に接触する液体の流動性を円滑にするとともに、液体との接触度合いにより振動周波数特性が変化することを利用して、傾斜角度を容易に検出できるので、液体を使用してチャタリングを抑制できるセンサにも拘らず、液体の流動性を確保できて小型化が可能となった。
【0008】
また、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することにより、傾斜スイッチとして、一定周波数での振動部の加振によって所定角度以上の傾斜のみを検出すればよいので、振動部への加振回路およびソフトの簡素化が図れる。
【0009】
さらに、前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置した場合は、両者の振動部の存在によって、検出精度が向上するとともに、互いに液体の流動性を向上させることができて、円滑な液体の流れを確保できるので、さらにセンサの小型化が可能となる。さらにまた、前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成した場合は、単一の振動部のみによる液漏れ時の誤検出を防止すべく互いを補完して、液漏れを確実に検出することができる。
【0010】
また、前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成した場合は、前記第1の振動部と共同して、検出精度の向上、互いの液体の流動性の向上による円滑な液体の流れの確保はもとより、傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設された第2の振動部の存在によって、傾斜方向が検出できることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4は本発明の傾斜センサの第1実施例を示すもので、図1(A)は本発明における第1実施例の傾斜センサを組み込んだ振動周波数特性により傾斜を検出する駆動回路例図、図1(B)は本発明の傾斜センサの第1実施例の傾斜状態を示す断面図、図2は図1(B)の(a)図のA−A断面における2つの自由度の断面例、図3はローパスフィルタの出力電圧を示す図、図4は傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【実施例1】
【0012】
本発明の傾斜センサの基本的な構成は、図1(B)の第1実施例に示すように、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部2と、接触することで前記振動部2の振動周波数特性を変化させる液体3と、傾斜することにより前記振動部2と液体3との適切な接触度合いとを得ることができるケース1とから構成される傾斜センサ5において、前記ケース1の傾斜によって、振動部2と液体3との接触度合いに応じて変化する振動部2の周波数特性からケース1の傾斜角度を検出することを特徴とする。
【0013】
本発明の傾斜センサでは、電気信号を機械振動に変換するセンサ素子(圧電セラミックス等)を正弦波によって加振し、この正弦波の周波数を任意の範囲で変化させる(スイープする)ことによって、センサ素子の周波数特性を検出し、センサ素子に液体が接触すると、この周波数特性が変化することを利用したものである。図1(A)において、同期信号発生部6にて発生させた信号を可変周波数発振器7により任意の範囲で周波数の変化する正弦波を発生させ、これをドライブアンプ8にて所定の振幅に増幅して加振用信号Vrを得る。
【0014】
このVrを抵抗9を通して電気信号を機械的振動に変える手段であるセンサ素子(例えば圧電セラミック振動板等)2に印加する。この抵抗9の両端にはセンサ素子2に流れる電流に対応した電圧が発生する。センサ素子2に流れる電流は周波数の変化によって変化するので、この抵抗9の両端に現れる電圧はセンサ素子2の周波数特性を反映したものになる。
【0015】
この抵抗9の両端の電圧を差動アンプ10で増幅して電圧Viを得る。さらにノイズの影響を除去するためにこの二つの信号VrとViを掛け算器11にて乗算を行う。さらにこの乗算器11の出力をローパスフィルタLPFに通して出力電圧V0 を得る。このV0 は加振用信号Vrの周波数変化に対するセンサ素子2の周波数特性(振幅と位相)を反映した信号になる。このときセンサ素子2の表面になにも接触していないと、センサ素子2の持つ固有振動数Fp付近の周波数にピークを持った電圧が図3の(1)のように現れる。
【0016】
次に、このセンサ素子2の周りに液体が充填されるとセンサ素子2の振動特性が変化して、図3の(2)のようにピーク電圧の位置と大きさが変化する。このようにピーク電圧の変化からセンサ素子2の周りが液体なのか空気なのかを容易に識別できる。上記作動原理を数式を用いて説明すると以下のようになる。
Vr=sin(ωt+α)、Vi=sin(ωt+β)とする。ただし、ωtは周波数、αβは位相のずれとする。
Vr×Vi=sin(ωt+α)×sin(ωt+β)=1/2〔cos(β−α)−cos(2ωt+α+β)〕 ・・・・式1
【0017】
式1の中のcos(β−α)の部分は位相差に合わせて変化する直流分であり、ここにViの振幅成分も含まれる。また、cos(2ωt+α+β)の部分は元の信号Vr、Viの2倍の周波数の信号である。我々が必要としている周波数特性の情報はViの振幅(受信信号Viの大きさ)なので、前記式1のcos(β−α)だけでよいので、ローパスフィルタ12を通過させてcos(2ωt+α+β)の成分を除去すればよい。このようにしてV0 には周波数特性が電圧の形で現れるのである。また、ここで使用している増幅器や乗算器などは現在市販されている安価な半導体で容易に実現可能である。
【0018】
図1(B)に、傾斜センサ5の構造例を示す。電気信号により振動する圧電セラミック2等のセンサ素子と、圧電セラミック2に接触することによりその振動の周波数特性を変化させる液体3および傾斜センサ5の傾きにより圧電セラミック2と液体3との適切な接触度合いを実現する形状のケース1とから構成される。傾斜センサ5の傾きαとピーク値の周波数Fpとの関係を図4に示す。図1(B)の(a)の傾きがゼロのとき圧電セラミック2と液体の接触度合いが最大であり、ピーク値周波数Fpが低い。傾きαが大きくなっていくと図1(B)の(b)、図1(B)の(c)のように液体の接触度合いが減りFpが大きくなる。よってFpから傾きαが求められる。
【0019】
このような液体の移動により傾きを検出するタイプのセンサでは、液体自身の粘性によるダンピング効果によりチャタリングが起こり難くなる。よって適切な液体の選定によりチャタリングを抑制できる。またMR素子やフォトセンサ等のような特別なセンサを使用していないため安価に製造できる。検出部分を圧電セラミック2のみで構成することができ、他の方式のものよりも小型化にも有利である。このような液体の移動を利用したセンサの小型化を考えると、小さくなればなるほど液体が表面張力等により移動し難くなるが、本発明では液体3の有無を検出する圧電セラミック2自身が振動しており、表面張力等の抵抗が緩和され液体が移動し易く一層小型化に有利である。
【0020】
傾斜センサ5の断面としては、図2(A)に示した2自由度タイプと、図2(B)に示した1自由度タイプが考えられる。図2(A)の2自由度タイプは断面が円形で、略直交して交差する傾斜軸の周りでの傾斜が検出可能である。図2(B)の1自由度タイプは、断面が傾斜軸に直交する方向に延びる薄板状で、傾斜軸周りでの傾斜のみの検出が可能である。暖房器具等の転倒を検知するようなセンサには2自由度タイプが適しており、バイクのように加減速する移動体としての乗り物の転倒を検知するようなものには1自由度タイプが適している。
【実施例2】
【0021】
傾斜センサ構造の第2実施例を図5に示す。傾きαsをしきい値とした傾斜スイッチ5として使用する場合に適した構造である。αs以上の傾きで圧電セラミック2と液体3が接触しない設定となっているのが特徴である。圧電セラミック2と液体3が接触していないときのスイープ波形を図7に実線で示した。このときのピーク値周波数をFp−sとする。液体3の接触度合いが大きくなるとピーク値周波数は低くなる。つまり入力周波数をスイープさせずFp−sで振動させた場合、出力V0 は液体3が接触していない傾きαs以上で最大となり、接触度合いが増すにつれ出力V0 は低下してゆく。よって図7に示したVp−sを出力のしきい値とすることで、振動周波数をスイープさせることなく一定の振動で傾きαsを検出でき、駆動回路およびソフトの簡素化がはかれる。図6はこのときの傾斜αとピーク値周波数Fpとの関係を示している。
【0022】
前記第1および第2実施例の傾斜センサ5に対する駆動回路の例を図8および図9に示す。図8では、前記図1(A)の駆動回路のLPF12の出力V0 側と、同期信号発生部16の出力側とに演算器14を設置し、該演算器14ではLPF12からの出力V0 から波形(図3)のピーク値Fpを求め、傾斜角α相当のVαを出力する。傾斜角αsをしきい値としたスイッチとする場合は、コンパレータ13を介しH/Lを出力する。
【0023】
図9の駆動回路は、前記図1の可変周波数発振器7に代えて、一定周波数の発振器7Bにより発振するもので、前記図8と同様にスイッチとして使用する場合にはコンパレータ13を介してH/Lを出力する。したがって、図8の駆動回路に比べて一定周波数で駆動するため回路がシンプルである。また、LPF12からの出力V0 から直接H/Lが判定できるため駆動回路もソフトもシンプルである。傾斜スイッチとして用いる場合は、回路とソフトのシンプルさから図9(構造は図5)が適しており、傾斜角αを検出するには図8(構造は図1(B))が適する。
【実施例3】
【0024】
傾斜センサの小型化を狙った場合、特に1自由度タイプ(図2(B))に示したような薄型のタイプでは、液体3が狭い液路を移動しなければなず、液体3の表面張力等の影響により円滑な液の流れが実現できず傾きを正しく検出できない。このような小型化の問題点を改善した傾斜センサの構造例を図10および図11に示す。傾斜センサ5が傾いた時、液体3が流れ込む位置に第2の圧電セラミック2Bを配置した点が特徴である。つまり、ケース1の傾斜により、液体3との接触度合いが減少する第1の振動部である圧電セラミック2Aと液体3との接触度合いが増大する第2の振動部である圧電セラミック2Bをケース1内に設置したものである。符号4A、4Bはそれぞれ圧電セラミック2A、2Bの電極を示す。
【0025】
両者の振動部2A、2Bの存在によって、検出精度が向上(接触度合いの減少を検出する圧電セラミック2Aによる傾斜角度の検出値と、接触度合いが増大する圧電セラミック2Bによる傾斜角度の検出値の比較により検出精度が向上する)するとともに、互いに液体3の流動性を向上させることができて、円滑な液体3の流れを確保できるので、さらに傾斜センサ5の小型化が可能となる。傾きのない位置から傾きが発生した時には傾きを検出している圧電セラミック2Aの振動が液体3の移動を促す。反対に傾いた状態から元に戻ろうとした場合、圧電セラミック2Bを振動させせることで液体3の移動を促すことができる。図10の例は、前述の図1(B)のものと同様に傾斜角度を検出するのに適し、図11の例は、前述の図5のものと同様に傾斜スイッチとして使用するのに適する。
【0026】
これらの傾斜センサ構造例の駆動回路の例を図12に示す。圧電セラミック2Bと圧電セラミック2Aの駆動源(ドライブアンプ)8を共通にできるため、回路部品の追加やソフトの変更が不要である。また、前記図10および図11の傾斜センサ構造では、圧電セラミック2Bにより(圧電セラミック2Aと同じように)液体3の有無を検出することにより、液漏れのフェールセーフ機能(自已診断機能)を持たせることができる。圧電セラミック2Bがないタイプで液漏れが発生した場合、傾きがなくても圧電セラミック2Aの周りに液体3がないため傾いていると判定してしまう。圧電セラミック2Bを設け圧電セラミック2Aと同様に液3の有無を検出することで、圧電セラミック2Aと2Bの両方で液体3ない場合の液漏れを検出できる。
【0027】
液漏れフェールセーフ機能付きの場合の駆動回路例を図13に示す。各圧電セラミック2Aと2Bの周囲の液体3の状態により、抵抗9Aと9Bの両端に現れる電圧はセンサ素子2の周波数特性を反映したものが出力され、差動アンプ10A、10B、掛け算器11A、11B、LPF12A、12Bを経て、コンパレータ13A、13Bにそれぞれの周波数特性の出力が入力される。液漏れにより、前記各圧電セラミック2Aと2Bの周囲に液体3がないと、コンパレータ13A、13BのいずれもからL信号が出力されて液漏れが検出される。
【実施例4】
【0028】
図14および図15は、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示すものである。本実施例のものは、前記図10および図11のものにおける第2の振動部である圧電セラミック2Bを、図14に示すように、傾斜方向の互いに対向する位置に分割して、第2圧電セラミック2Bおよび第3圧電セラミック2Cとして配設したものである。これにより、傾斜方向すなわち左右いずれに傾斜したかを検出できる。これらの第2圧電セラミック2Bおよび第3圧電セラミック2Cは、前記第1の振動部である圧電セラミック2Aと共同して、検出精度の向上、互いの液体3の流動性の向上による円滑な液体3の流れの確保も可能となる。図15のものは傾斜スイッチとして使用されるものである。
【0029】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、圧電セラミック等の振動部の形状、形式および材質(振動特性)ならびに加振形態、液体の種類、充填量、ケースの形状(2自由度の円形断面、1自由度の薄板状断面の他適宜の断面形状の他、液体が収容される正面視形状、例えば、直立位置から傾斜位置への液体の流下面を傾斜形成する等、適宜選定できる)、傾斜スイッチとしてのしきい値となる所定角度の選定、発振器の形式(可変周波数あるいは一定周波数)、アンプ、抵抗、掛け算器、LPF、演算器、コンパレータの形状、形式、ケースの傾斜により液体との接触度合いが減少する振動部と液体との接触度合いが増大する振動部のケース内での設置形態、液漏れの検出形態、傾斜方向検出のための振動部の配置形態等については適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の傾斜センサの第1実施例を示すもので、図1(A)は本発明における第1実施例の傾斜センサを組み込んだ振動周波数特性により傾斜を検出する駆動回路例図、図1(B)は本発明の傾斜センサの傾斜状態を示す断面図である。
【図2】同、図2(A)は図1(B)の(a)のA−A断面における2自由度の断面例、図2(B)は図1(B)の(a)のA−A断面における1自由度の断面例である。
【図3】同、ローパスフィルタの出力電圧を示す図である。
【図4】同、傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【図5】本発明の傾斜センサ構造の第2実施例を示すもので、傾斜スイッチとして使用する場合に適した構造例である。
【図6】前記第2実施例の傾斜センサ構造の傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【図7】圧電セラミックにおける液体との接触度合いとスイープ波形との関係を示す図である。
【図8】前記第1および第2実施例の傾斜センサ構造例に適用される駆動回路例図であり、可変周波数発振器と演算器を有する説明図である。
【図9】前記第1および第2実施例の傾斜センサ構造例に適用される駆動回路例図であり、一定可変周波数発振器を有する説明図である。
【図10】本発明の傾斜センサの第3実施例を示す傾斜センサの構造例断面図で、傾斜時に液体が流れ込む位置に第2圧電セラミックを配置した例である。
【図11】同、前記図10と同様の断面図で、傾斜スイッチとして使用されるものの例である。
【図12】前記図10および図11の傾斜センサ構造例の駆動回路例図である。
【図13】液漏れフェールセーフ機能付きの場合の駆動回路例図である。
【図14】本発明の傾斜センサの第4実施例を示すもので、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示す断面図である。
【図15】同、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示す断面図で、傾斜スイッチとして使用されるものである。
【図16】従来の傾斜センサの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ケース
2 圧電セラミック(振動部)
3 液体
4 電極
5 傾斜センサ(傾斜スイッチ)
7 可変周波数発振器
8 ドライブアンプ
9 抵抗
10 差動アンプ
11 掛け算器
12 LPF
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いとを得ることができるケースとから構成される傾斜センサに関する。特に、二輪車の転倒等を検出するバイク傾斜センサに有用であるが、移動体の傾斜センサあるいは傾斜スイッチとしても採用が可能である。
【背景技術】
【0002】
従来から、車両等の移動体の傾斜を検出する傾斜センサとしては、傾斜によって移動する振り子や球の位置を磁気的に検出するMR素子(磁気抵抗素子)を用いたり、傾斜によって移動する振り子や球を光学的に検出する発光ダイオードやフォトセンサを用いていたが、これらのMR素子やフォトセンサは高価であり、小型化が困難であった。そこで、傾斜によって移動する振り子や球あるいは錘りによって直接傾斜スイッチを投入することも考えられた。この方法は、安価な反面、振動によるチャタリングの影響を受け易く、実用的でない。そのようなことから、比較的安価な静電容量式液体センサが提案された(例えば下記特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−20518号公報(特許請求の範囲参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記特許文献1に開示されたものを図16を用いて簡単に説明する。導電性密封容器21の内部に導電性液体22を略1/2満たし、容器21の一方の端面より一対のリード端子24、25を容器21に電気絶縁的に貫通固定する。それらの各リード端子24、25の容器内先端に、表面がシリコン酸化皮膜に覆われた短冊状の主電極26、27を、先端部が導電性液体22の表面に出るように取り付ける。かくして、センサが傾斜したときの、各主電極26、27と導電性液体22との間の静電容量の変化により傾斜角度または加速度を測定できるものである。
【0004】
上記特許文献1に開示された静電容量式液体センサにより、導電性密封容器内に導電性液体と主電極を配設しただけの比較的簡素な構造によって、安価に傾斜センサが提供されることとなったものの、表面張力に起因した液の流動性の低下が妨げとなって、小型化が困難であった。
【0005】
そこで本発明は、前記従来の傾斜センサの課題を解決して、液体の粘性を利用してチャタリングを抑制しつつ、液体の流動性も確保できる、簡素な構成で小型化も可能な安価な傾斜センサおよび傾斜スイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このため本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することを特徴とする。また本発明は、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することを特徴とする。また本発明は、前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置したことを特徴とする。また本発明は、前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成したことを特徴とする。また本発明は、前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成したことを特徴とするもので、これらを課題解決のための手段とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することにより、振動部を加振することで振動部に接触する液体の流動性を円滑にするとともに、液体との接触度合いにより振動周波数特性が変化することを利用して、傾斜角度を容易に検出できるので、液体を使用してチャタリングを抑制できるセンサにも拘らず、液体の流動性を確保できて小型化が可能となった。
【0008】
また、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することにより、傾斜スイッチとして、一定周波数での振動部の加振によって所定角度以上の傾斜のみを検出すればよいので、振動部への加振回路およびソフトの簡素化が図れる。
【0009】
さらに、前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置した場合は、両者の振動部の存在によって、検出精度が向上するとともに、互いに液体の流動性を向上させることができて、円滑な液体の流れを確保できるので、さらにセンサの小型化が可能となる。さらにまた、前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成した場合は、単一の振動部のみによる液漏れ時の誤検出を防止すべく互いを補完して、液漏れを確実に検出することができる。
【0010】
また、前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成した場合は、前記第1の振動部と共同して、検出精度の向上、互いの液体の流動性の向上による円滑な液体の流れの確保はもとより、傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設された第2の振動部の存在によって、傾斜方向が検出できることとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。図1から図4は本発明の傾斜センサの第1実施例を示すもので、図1(A)は本発明における第1実施例の傾斜センサを組み込んだ振動周波数特性により傾斜を検出する駆動回路例図、図1(B)は本発明の傾斜センサの第1実施例の傾斜状態を示す断面図、図2は図1(B)の(a)図のA−A断面における2つの自由度の断面例、図3はローパスフィルタの出力電圧を示す図、図4は傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【実施例1】
【0012】
本発明の傾斜センサの基本的な構成は、図1(B)の第1実施例に示すように、電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部2と、接触することで前記振動部2の振動周波数特性を変化させる液体3と、傾斜することにより前記振動部2と液体3との適切な接触度合いとを得ることができるケース1とから構成される傾斜センサ5において、前記ケース1の傾斜によって、振動部2と液体3との接触度合いに応じて変化する振動部2の周波数特性からケース1の傾斜角度を検出することを特徴とする。
【0013】
本発明の傾斜センサでは、電気信号を機械振動に変換するセンサ素子(圧電セラミックス等)を正弦波によって加振し、この正弦波の周波数を任意の範囲で変化させる(スイープする)ことによって、センサ素子の周波数特性を検出し、センサ素子に液体が接触すると、この周波数特性が変化することを利用したものである。図1(A)において、同期信号発生部6にて発生させた信号を可変周波数発振器7により任意の範囲で周波数の変化する正弦波を発生させ、これをドライブアンプ8にて所定の振幅に増幅して加振用信号Vrを得る。
【0014】
このVrを抵抗9を通して電気信号を機械的振動に変える手段であるセンサ素子(例えば圧電セラミック振動板等)2に印加する。この抵抗9の両端にはセンサ素子2に流れる電流に対応した電圧が発生する。センサ素子2に流れる電流は周波数の変化によって変化するので、この抵抗9の両端に現れる電圧はセンサ素子2の周波数特性を反映したものになる。
【0015】
この抵抗9の両端の電圧を差動アンプ10で増幅して電圧Viを得る。さらにノイズの影響を除去するためにこの二つの信号VrとViを掛け算器11にて乗算を行う。さらにこの乗算器11の出力をローパスフィルタLPFに通して出力電圧V0 を得る。このV0 は加振用信号Vrの周波数変化に対するセンサ素子2の周波数特性(振幅と位相)を反映した信号になる。このときセンサ素子2の表面になにも接触していないと、センサ素子2の持つ固有振動数Fp付近の周波数にピークを持った電圧が図3の(1)のように現れる。
【0016】
次に、このセンサ素子2の周りに液体が充填されるとセンサ素子2の振動特性が変化して、図3の(2)のようにピーク電圧の位置と大きさが変化する。このようにピーク電圧の変化からセンサ素子2の周りが液体なのか空気なのかを容易に識別できる。上記作動原理を数式を用いて説明すると以下のようになる。
Vr=sin(ωt+α)、Vi=sin(ωt+β)とする。ただし、ωtは周波数、αβは位相のずれとする。
Vr×Vi=sin(ωt+α)×sin(ωt+β)=1/2〔cos(β−α)−cos(2ωt+α+β)〕 ・・・・式1
【0017】
式1の中のcos(β−α)の部分は位相差に合わせて変化する直流分であり、ここにViの振幅成分も含まれる。また、cos(2ωt+α+β)の部分は元の信号Vr、Viの2倍の周波数の信号である。我々が必要としている周波数特性の情報はViの振幅(受信信号Viの大きさ)なので、前記式1のcos(β−α)だけでよいので、ローパスフィルタ12を通過させてcos(2ωt+α+β)の成分を除去すればよい。このようにしてV0 には周波数特性が電圧の形で現れるのである。また、ここで使用している増幅器や乗算器などは現在市販されている安価な半導体で容易に実現可能である。
【0018】
図1(B)に、傾斜センサ5の構造例を示す。電気信号により振動する圧電セラミック2等のセンサ素子と、圧電セラミック2に接触することによりその振動の周波数特性を変化させる液体3および傾斜センサ5の傾きにより圧電セラミック2と液体3との適切な接触度合いを実現する形状のケース1とから構成される。傾斜センサ5の傾きαとピーク値の周波数Fpとの関係を図4に示す。図1(B)の(a)の傾きがゼロのとき圧電セラミック2と液体の接触度合いが最大であり、ピーク値周波数Fpが低い。傾きαが大きくなっていくと図1(B)の(b)、図1(B)の(c)のように液体の接触度合いが減りFpが大きくなる。よってFpから傾きαが求められる。
【0019】
このような液体の移動により傾きを検出するタイプのセンサでは、液体自身の粘性によるダンピング効果によりチャタリングが起こり難くなる。よって適切な液体の選定によりチャタリングを抑制できる。またMR素子やフォトセンサ等のような特別なセンサを使用していないため安価に製造できる。検出部分を圧電セラミック2のみで構成することができ、他の方式のものよりも小型化にも有利である。このような液体の移動を利用したセンサの小型化を考えると、小さくなればなるほど液体が表面張力等により移動し難くなるが、本発明では液体3の有無を検出する圧電セラミック2自身が振動しており、表面張力等の抵抗が緩和され液体が移動し易く一層小型化に有利である。
【0020】
傾斜センサ5の断面としては、図2(A)に示した2自由度タイプと、図2(B)に示した1自由度タイプが考えられる。図2(A)の2自由度タイプは断面が円形で、略直交して交差する傾斜軸の周りでの傾斜が検出可能である。図2(B)の1自由度タイプは、断面が傾斜軸に直交する方向に延びる薄板状で、傾斜軸周りでの傾斜のみの検出が可能である。暖房器具等の転倒を検知するようなセンサには2自由度タイプが適しており、バイクのように加減速する移動体としての乗り物の転倒を検知するようなものには1自由度タイプが適している。
【実施例2】
【0021】
傾斜センサ構造の第2実施例を図5に示す。傾きαsをしきい値とした傾斜スイッチ5として使用する場合に適した構造である。αs以上の傾きで圧電セラミック2と液体3が接触しない設定となっているのが特徴である。圧電セラミック2と液体3が接触していないときのスイープ波形を図7に実線で示した。このときのピーク値周波数をFp−sとする。液体3の接触度合いが大きくなるとピーク値周波数は低くなる。つまり入力周波数をスイープさせずFp−sで振動させた場合、出力V0 は液体3が接触していない傾きαs以上で最大となり、接触度合いが増すにつれ出力V0 は低下してゆく。よって図7に示したVp−sを出力のしきい値とすることで、振動周波数をスイープさせることなく一定の振動で傾きαsを検出でき、駆動回路およびソフトの簡素化がはかれる。図6はこのときの傾斜αとピーク値周波数Fpとの関係を示している。
【0022】
前記第1および第2実施例の傾斜センサ5に対する駆動回路の例を図8および図9に示す。図8では、前記図1(A)の駆動回路のLPF12の出力V0 側と、同期信号発生部16の出力側とに演算器14を設置し、該演算器14ではLPF12からの出力V0 から波形(図3)のピーク値Fpを求め、傾斜角α相当のVαを出力する。傾斜角αsをしきい値としたスイッチとする場合は、コンパレータ13を介しH/Lを出力する。
【0023】
図9の駆動回路は、前記図1の可変周波数発振器7に代えて、一定周波数の発振器7Bにより発振するもので、前記図8と同様にスイッチとして使用する場合にはコンパレータ13を介してH/Lを出力する。したがって、図8の駆動回路に比べて一定周波数で駆動するため回路がシンプルである。また、LPF12からの出力V0 から直接H/Lが判定できるため駆動回路もソフトもシンプルである。傾斜スイッチとして用いる場合は、回路とソフトのシンプルさから図9(構造は図5)が適しており、傾斜角αを検出するには図8(構造は図1(B))が適する。
【実施例3】
【0024】
傾斜センサの小型化を狙った場合、特に1自由度タイプ(図2(B))に示したような薄型のタイプでは、液体3が狭い液路を移動しなければなず、液体3の表面張力等の影響により円滑な液の流れが実現できず傾きを正しく検出できない。このような小型化の問題点を改善した傾斜センサの構造例を図10および図11に示す。傾斜センサ5が傾いた時、液体3が流れ込む位置に第2の圧電セラミック2Bを配置した点が特徴である。つまり、ケース1の傾斜により、液体3との接触度合いが減少する第1の振動部である圧電セラミック2Aと液体3との接触度合いが増大する第2の振動部である圧電セラミック2Bをケース1内に設置したものである。符号4A、4Bはそれぞれ圧電セラミック2A、2Bの電極を示す。
【0025】
両者の振動部2A、2Bの存在によって、検出精度が向上(接触度合いの減少を検出する圧電セラミック2Aによる傾斜角度の検出値と、接触度合いが増大する圧電セラミック2Bによる傾斜角度の検出値の比較により検出精度が向上する)するとともに、互いに液体3の流動性を向上させることができて、円滑な液体3の流れを確保できるので、さらに傾斜センサ5の小型化が可能となる。傾きのない位置から傾きが発生した時には傾きを検出している圧電セラミック2Aの振動が液体3の移動を促す。反対に傾いた状態から元に戻ろうとした場合、圧電セラミック2Bを振動させせることで液体3の移動を促すことができる。図10の例は、前述の図1(B)のものと同様に傾斜角度を検出するのに適し、図11の例は、前述の図5のものと同様に傾斜スイッチとして使用するのに適する。
【0026】
これらの傾斜センサ構造例の駆動回路の例を図12に示す。圧電セラミック2Bと圧電セラミック2Aの駆動源(ドライブアンプ)8を共通にできるため、回路部品の追加やソフトの変更が不要である。また、前記図10および図11の傾斜センサ構造では、圧電セラミック2Bにより(圧電セラミック2Aと同じように)液体3の有無を検出することにより、液漏れのフェールセーフ機能(自已診断機能)を持たせることができる。圧電セラミック2Bがないタイプで液漏れが発生した場合、傾きがなくても圧電セラミック2Aの周りに液体3がないため傾いていると判定してしまう。圧電セラミック2Bを設け圧電セラミック2Aと同様に液3の有無を検出することで、圧電セラミック2Aと2Bの両方で液体3ない場合の液漏れを検出できる。
【0027】
液漏れフェールセーフ機能付きの場合の駆動回路例を図13に示す。各圧電セラミック2Aと2Bの周囲の液体3の状態により、抵抗9Aと9Bの両端に現れる電圧はセンサ素子2の周波数特性を反映したものが出力され、差動アンプ10A、10B、掛け算器11A、11B、LPF12A、12Bを経て、コンパレータ13A、13Bにそれぞれの周波数特性の出力が入力される。液漏れにより、前記各圧電セラミック2Aと2Bの周囲に液体3がないと、コンパレータ13A、13BのいずれもからL信号が出力されて液漏れが検出される。
【実施例4】
【0028】
図14および図15は、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示すものである。本実施例のものは、前記図10および図11のものにおける第2の振動部である圧電セラミック2Bを、図14に示すように、傾斜方向の互いに対向する位置に分割して、第2圧電セラミック2Bおよび第3圧電セラミック2Cとして配設したものである。これにより、傾斜方向すなわち左右いずれに傾斜したかを検出できる。これらの第2圧電セラミック2Bおよび第3圧電セラミック2Cは、前記第1の振動部である圧電セラミック2Aと共同して、検出精度の向上、互いの液体3の流動性の向上による円滑な液体3の流れの確保も可能となる。図15のものは傾斜スイッチとして使用されるものである。
【0029】
以上、本発明の実施例について説明してきたが、本発明の趣旨の範囲内で、圧電セラミック等の振動部の形状、形式および材質(振動特性)ならびに加振形態、液体の種類、充填量、ケースの形状(2自由度の円形断面、1自由度の薄板状断面の他適宜の断面形状の他、液体が収容される正面視形状、例えば、直立位置から傾斜位置への液体の流下面を傾斜形成する等、適宜選定できる)、傾斜スイッチとしてのしきい値となる所定角度の選定、発振器の形式(可変周波数あるいは一定周波数)、アンプ、抵抗、掛け算器、LPF、演算器、コンパレータの形状、形式、ケースの傾斜により液体との接触度合いが減少する振動部と液体との接触度合いが増大する振動部のケース内での設置形態、液漏れの検出形態、傾斜方向検出のための振動部の配置形態等については適宜選定できる。実施例に記載の諸元はあらゆる点で単なる例示に過ぎず限定的に解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の傾斜センサの第1実施例を示すもので、図1(A)は本発明における第1実施例の傾斜センサを組み込んだ振動周波数特性により傾斜を検出する駆動回路例図、図1(B)は本発明の傾斜センサの傾斜状態を示す断面図である。
【図2】同、図2(A)は図1(B)の(a)のA−A断面における2自由度の断面例、図2(B)は図1(B)の(a)のA−A断面における1自由度の断面例である。
【図3】同、ローパスフィルタの出力電圧を示す図である。
【図4】同、傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【図5】本発明の傾斜センサ構造の第2実施例を示すもので、傾斜スイッチとして使用する場合に適した構造例である。
【図6】前記第2実施例の傾斜センサ構造の傾斜とピーク値の周波数との関係図である。
【図7】圧電セラミックにおける液体との接触度合いとスイープ波形との関係を示す図である。
【図8】前記第1および第2実施例の傾斜センサ構造例に適用される駆動回路例図であり、可変周波数発振器と演算器を有する説明図である。
【図9】前記第1および第2実施例の傾斜センサ構造例に適用される駆動回路例図であり、一定可変周波数発振器を有する説明図である。
【図10】本発明の傾斜センサの第3実施例を示す傾斜センサの構造例断面図で、傾斜時に液体が流れ込む位置に第2圧電セラミックを配置した例である。
【図11】同、前記図10と同様の断面図で、傾斜スイッチとして使用されるものの例である。
【図12】前記図10および図11の傾斜センサ構造例の駆動回路例図である。
【図13】液漏れフェールセーフ機能付きの場合の駆動回路例図である。
【図14】本発明の傾斜センサの第4実施例を示すもので、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示す断面図である。
【図15】同、傾きの方向を検出できるタイプの傾斜センサ構造例を示す断面図で、傾斜スイッチとして使用されるものである。
【図16】従来の傾斜センサの断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 ケース
2 圧電セラミック(振動部)
3 液体
4 電極
5 傾斜センサ(傾斜スイッチ)
7 可変周波数発振器
8 ドライブアンプ
9 抵抗
10 差動アンプ
11 掛け算器
12 LPF
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することを特徴とする傾斜スイッチ。
【請求項3】
前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【請求項4】
前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【請求項5】
前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成したことを特徴とする請求項3または4に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【請求項1】
電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜センサにおいて、前記ケースの傾斜によって、振動部と液体との接触度合いに応じて変化する振動部の周波数特性からケースの傾斜角度を検出することを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
電気信号を機械信号に変換する圧電セラミック等からなる振動部と、接触することで前記振動部の振動周波数特性を変化させる液体と、傾斜することにより前記振動部と液体との適切な接触度合いを得ることができるケースとから構成される傾斜スイッチにおいて、前記ケースの所定角度以上の傾斜により、前記振動部と液体とが完全に接触しないように構成するとともに、一定周波数で振動部を振動させてその振動周波数特性により所定角度以上の傾斜を検出することを特徴とする傾斜スイッチ。
【請求項3】
前記ケースの傾斜により、液体との接触度合いが減少する第1の振動部と、液体との接触度合いが増大する第2の振動部をケース内に設置したことを特徴とする請求項1または2に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【請求項4】
前記第1および第2の振動部のいずれもが液体との接触を検出しないことにより液漏れを検出するように構成したことを特徴とする請求項3に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【請求項5】
前記第2の振動部を傾斜方向の互いに対向する位置に分割して配設することにより傾斜方向を検出できるように構成したことを特徴とする請求項3または4に記載の傾斜センサまたは傾斜スイッチ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2006−292600(P2006−292600A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−115254(P2005−115254)
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年4月13日(2005.4.13)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
[ Back to top ]