説明

傾斜センサ

【課題】傾斜センサの傾斜状態を検出する第2電極を、傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置することにより、傾斜センサが垂直方向に振動したり、垂直方向に衝撃を加えられたりした時でも、誤まって、転倒・傾斜を判断することの無いようにした傾斜センサを提供する。
【解決手段】密閉した容器1と、前記容器内に形成した案内路2と、前記案内路内を移動可能な移動体3と、移動体を検出する検出センサ5とを備えた傾斜センサにおいて、前記検出センサは、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1電極5aと、傾斜センサの傾斜状態を検出する第2電極5bとを有し、前記第2電極は傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置したことを特徴とする傾斜センサである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜センサを構成する容器内に形成した案内路に移動体を配置し、傾斜によって移動体が案内路に沿って移動することにより傾斜あるいは転倒を検出することができる傾斜センサ(以下転倒センサを含む用語とする)に関するものであり、さらに詳細には傾斜センサの傾斜状態を検出する第2検出部を、傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置することにより、傾斜センサが垂直方向に振動したり、垂直方向に衝撃を加えられたりした時でも、誤まって、転倒・傾斜を判断することの無いようにした傾斜センサに関するものである。
【背景技術】
【0002】
密閉容器内に移動体を入れ、移動体の動きを検出し、傾斜や転倒の判断を行っている傾斜・転倒センサは広く知られている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−166822
【特許文献2】特開2000−241162
【特許文献3】特開平9−304062公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1に記載のものは、気泡管の底面に、第1電極を、気泡管の上面に気泡に対向させて第2電極、第3電極を配置し、第1電極の電位を0レベルとすることにより、漏れ抵抗及び浮遊容量の影響を受けずに、第1電極と第2電極間の静電容量及び第1電極と第3電極間の静電容量を求めることができるものである。
また、特許文献2に記載のものは、半円状の一対の差動電極が垂直方向に隣接配置され、これと対向するように共通電極が一定の間隔を設けて配置した、ゼロ点調整や温度補償等の調整が不要な静電容量式傾斜センサである。
さらに、特許文献3に記載のものは、傾斜センサのカバーの内部上面中央部に凸部を形成し、この凸部により傾斜センサの天地が反転した時に球体がカバーの中央部に停滞しないようにしたものである。
【0005】
さらに上記文献に記載したもの以外にも、容器内の案内路に円柱状(または球状等)をした移動体を配置し、容器が回転し、傾斜、転倒状態になると、移動体が案内路内を移動して案内路内での位置をかえ、この移動体の位置を容器に設けた検出センサにより検出することができる傾斜センサ等が知られている。
ところで、上述した傾斜センサ等のうち、特に、傾斜センサが傾いた状態のときに移動体が移動し停止する位置に対応して一対の電極(検出部)を配置し、移動体の有無を静電容量により判定する傾斜センサの場合には次のような問題が発生する。
即ち、検出部が静電容量方式の場合、多くの傾斜センサでは、検出部が傾斜センサが傾いていない状態のときでも、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1電極が非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向にも配置されている構成となっているため、言い換えると、留まっている移動体の垂直方向上方にも配置された構成となっているため、傾斜センサに垂直方向の振動あるいは衝撃が加わると移動体が垂直方向に移動し、傾斜センサが傾いていないにもかかわらず、前記検出部によって傾斜を検出してしまうという事態が発生する。
【0006】
そこで、本発明は、静電容量などによって移動体の位置を検出する傾斜センサにおいて、移動体の位置を検出する検出センサを、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1電極と、傾斜センサの傾斜状態を検出する第2電極とで構成し、前記第2電極を、傾斜センサが非傾斜状態(傾斜状態を検出しない初期位置状態)の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に設けることにより、移動体が垂直方向に振動したり、垂直方向に衝撃を加えられたりした時でも、誤まって、転倒・傾斜を判断することの無いようにした傾斜センサを提供することにより、上記問題点を解決することを目的とする。
本発明は傾斜センサの検出部の配置形状を工夫したことにより、傾斜時と、垂直方向の振動・衝撃時とによる移動体の移動状況を判別できるため、傾斜センサの傾斜状態を正確に判定することができる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術解決手段は、
密閉した容器と、前記容器内に形成した案内路と、前記案内路内を移動可能な移動体と、移動体を検出する検出センサとを備えた傾斜センサにおいて、前記検出センサは、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1検出部と、傾斜センサの傾斜状態を検出する第2検出部とを有し、前記第2検出部は傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置したことを特徴とする傾斜センサである。
また、前記傾斜センサにおいて、前記第1検出部を、移動体が留まっている位置から垂直方向に延長して配置したことを特徴とする傾斜センサである。
また、前記傾斜センサにおいて、傾斜センサが傾斜していない状態の時に移動体が留まっている位置から垂直方向の上部壁を中心側に向けた凸形状として形成したことを特徴とする傾斜センサである。
また、前記凸形状に隣接して案内路に凹形状を形成したことを特徴とする傾斜センサである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、移動体を検出する検出部(電極)の配置形状を工夫したことにより、傾斜時と、垂直方向の振動・衝撃時とによる移動体の移動状況を正確に判断できることになり、傾斜センサの傾斜状態を正確に判定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明は、密閉した容器と、前記容器内に形成した案内路と、前記案内路内を移動可能な移動体と、移動体を検出する検出センサとを備えた傾斜センサにおいて、前記検出センサは、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1検出部と、傾斜センサの傾斜状態を検出する第2検出部とを有し、前記第2検出部は傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置したことにより、傾斜センサが垂直方向に振動したり、衝撃を加えられたりして移動体が垂直方向に移動した時でも、誤まって、転倒・傾斜を判断することの無いようにしている。
【実施例】
【0010】
以下、本発明の実施例を図面を参照して説明すると、図1は案内路内に移動体(円柱、球、液体、液体中の気体など)を収納した傾斜センサの正面断面構成図(図3中のF−F断面図)、図2は図1に示す検出センサの詳細説明図、図3は図2のX−X断面図である。
図1において、1は容器であり、この容器は、図3に示すように例えばガラス材からなる左右壁1a、1aと、前記壁1a、1aの間に配置された例えばガラス材からなる周囲壁1bと、壁1aと周囲壁1bとの間に配置された中間部材(たとえばSi材等からなる部材)1cとで構成されており、左右壁1a、周囲壁1bと中間部材1cとは陽極接合されている。なお、左右壁1a、1a、周囲壁1bをガラス材で構成した場合、陽極接合するにあたってガラス同士を接着できないため、Si材(中間部材)を介する必要がある。 これら左右壁1a、周囲壁1b、中間部材1cは、樹脂、セラミック材などの適宜材料で構成し、それらを接着材や適宜結合手段を使用して接合したり、あるいは、一体で形成することもできる。前記容器1内には略三角形をした案内路2が形成されており、案内路内には移動体3が収納されている。案内路2内には傾斜センサの天地が反転した時に移動体3が案内路の中央部に停滞しないように、即ち天地が反転した時には移動体が必ず左右に移動した状態をとることができるように、周囲壁1bの上部(傾斜センサを設置した状態の時の上部)には凸部2aが形成されている。さらに前記凸部2aに隣接して案内路に凹形状2bが形成されている。
【0011】
案内路2内に収納される移動体は、円柱状、球、液球、あるいは液体中に入れた気体等の一つから構成されており(移動体は導電体が望ましい)、傾斜センサが傾斜すると、移動体3が案内路2内を移動する構成となっている。
また、案内路2の周囲の壁面には、移動体が案内路を形成する壁面に密着することを防止する溝4が形成されている。この溝4の断面形状は、移動体3と壁1aとの密着を防止できる形状のものであれば種々の形状を採用することができる。
【0012】
案内路2の左右壁1a、1aには、移動体を検出する検出センサ5が配置されている。検出センサ5は、傾斜センサが傾斜していない状態を検知する第1検出部(電極)5aと、傾斜センサが傾斜している状態を検知する第2検出部(電極)5bとで構成され、第1、第2検出部5a、5bはそれぞれ少なくとも対向する一対の電極で構成され、この電極は、案内路の壁面に適宜手段で設けられている。また第1検出部、第2検出部の電極面積は同一面積として構成されている。
【0013】
第1検出部5aは、図2に示すように傾斜センサが傾斜していない状態の時に移動体が位置する上方側に延長して配置されており、また第2検出部5bは傾斜センサが傾斜した状態の時に移動体が移動する左右位置に対応して配置されている。前記第1、第2検出部5a、5bは、それぞれの電極間に移動体が入ると、両電極間の静電容量が変化し、これによって移動体の有無を検出することができる。なお、第1検出部5aを図2中X−X軸で分割し、全部で左右4対の電極配置とすることができる。このように左右4対とすることで、左右の傾斜方向の判定をすることができる。
【0014】
前記検出部による検出手段を説明する。
図4(イ)(ロ)は電極からの出力に基づいて移動体の位置を検出する回路図である。 第1検出部5a、第2検出部5bを構成する一対の電極の面積を同一とした場合、図4(イ)に示すように第1検出部5aの静電容量あるいは電気抵抗等の出力信号と、第2検出部5bからの静電容量あるいは電気抵抗等の出力信号を作動アンプ部で判定し、傾斜状態を判定する。
また、図4(ロ)に示すように第1検出部5aからの静電容量あるいは電気抵抗等の出力信号と、第2検出部5bからの静電容量あるいは電気抵抗等の出力信号をマイコン(マイコンのA/DポートまたはI/Oポート)で判定し、傾斜状態を判定する。この時の出力状態を図5に示す。図5(イ)はアウトプットが敷居値よりも一定以上、上下にあるか否かにより転倒・傾斜状態を判定する。また図5(ロ)はアウトプットの差分を求めて転倒・傾斜状態を判定する。
【0015】
上記のように第1検出部5a、第2検出部5bにおいて対をなす電極面積を一定とすることにより、傾斜センサの転倒・傾斜状態を正確に判定することができる。
なお、検出センサは上記の例に限定することなく、同様の機能を達成できるセンサであれば、種々の形態のセンサを採用することができる。
【0016】
以上の構成からなる傾斜センサの作用を説明する。
傾斜センサが非傾斜状態の時には、図6に示すように移動体3は最下部に位置しており、この状態を第1検出部5aで検出している。
この状態から図7に示すように傾斜センサが転倒すると、移動体3は傾斜方向に移動し、第2検出部5bでその状態を検出する。
また、傾斜センサが傾斜していない時に、図8に示すように傾斜センサに上下方向の振動・衝撃が加わった場合には、移動体3は第1検出部5a内で上下に移動するため、傾斜センサは非傾斜状態と判定する。
なお、壁1aには溝4が形成されているため、移動体や気体が容器壁面に張付くことがなくスムーズな移動が可能となり、正確な傾斜状態を検出できる。
【0017】
以上、本発明に係る傾斜センサについて説明をしたが、案内路は三角形状に限定されることなく、同様の機能を達成できるものであれば、V字状、円弧状のものを使用することができる。また、移動体は円柱に限定されることなく、円盤、円筒等の円形状のものも使用することができる。さらに案内路、移動体等に滑りのよい材質を使用することで両者の摩擦を小さくし、移動体の円滑な移動を可能にすることもできる。
また、上記例では案内路内に移動体を配置した例について説明したが、案内路内に液体を満たしその中に円柱状、球状、気体の移動体を配置したりすることもできる。
また、第1、第2検出部として電極を使用したものを中心に説明したが、同様の機能を達成できるものであれば、他の検出手段を採用することができる。
さらにまた、本発明はその精神または主要な特徴から逸脱することなく、他のいかなる形でも実施できる。そのため、前述の実施例はあらゆる点で単なる例示にすぎず限定的に解釈してはならない。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明は、二輪車転倒検知センサ、加速度センサ、傾斜センサ等に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】案内路内に移動体(円柱、球、液体、液体中の気体など)を収納した傾斜センサの正面断面構成図(図3中のF−F断面図)である。
【図2】図1に示す検出センサの詳細説明図である。
【図3】図2のX−X断面図である。
【図4】(イ)(ロ)は電極からの出力に基づいて移動体の位置を検出する回路図である。
【図5】(イ)はアウトプットが敷居値よりも一定以上、上下にあるか否かにより転倒・傾斜状態を判定する説明図、図5(ロ)はアウトプットの差分を求めて転倒・傾斜状態を判定する説明図である。
【図6】移動体が最下部に位置した状態(非傾斜状態)の傾斜センサの断面図である。
【図7】転倒した状態の傾斜センサの断面図である。
【図8】傾斜センサが非傾斜状態にある時に、移動体が上下した状態の説明図である。
【符号の説明】
【0020】
1 容器
1a、1a 左右壁
1b 周囲壁
1c 中間部材
2 案内路
2a 凸部
2b 凹部
3 移動体
4 溝
5 検出センサ
5a 第1検出部(電極)
5b 第2検出部(電極)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉した容器と、前記容器内に形成した案内路と、前記案内路内を移動可能な移動体と、移動体を検出する検出センサとを備えた傾斜センサにおいて、前記検出センサは、傾斜センサの非傾斜状態を検出する第1検出部と、傾斜センサの傾斜状態を検出する第2検出部とを有し、前記第2検出部は傾斜センサが非傾斜状態の時に移動体が留まっている位置の垂直方向から外れた位置に配置したことを特徴とする傾斜センサ。
【請求項2】
前記傾斜センサにおいて、前記第1検出部を、移動体が留まっている位置から垂直方向に延長して配置したことを特徴とする請求項1に記載の傾斜センサ。
【請求項3】
前記傾斜センサにおいて、傾斜センサが傾斜していない状態の時に移動体が留まっている位置から垂直方向の上部壁を中心側に向けた凸形状として形成したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の傾斜センサ。
【請求項4】
前記凸形状に隣接して案内路に凹形状を形成したことを特徴とする請求項3に記載の傾斜センサ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−292395(P2006−292395A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−109345(P2005−109345)
【出願日】平成17年4月6日(2005.4.6)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)