傾斜板支持具および傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造
【課題】傾斜板の大きさや、傾斜板のフック間の距離が変わっても、同一の金型を用いて形成された傾斜板を用いることを可能とする、新規な傾斜板支持具および当該傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造の提供を目的とする。
【解決手段】沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板係止具であって、該傾斜板支持具が、傾斜板支持具本体と、該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、前記掛止部が、前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする。
【解決手段】沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板係止具であって、該傾斜板支持具が、傾斜板支持具本体と、該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、前記掛止部が、前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜板支持具および傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浄水場などに設けられる固液分離装置として、特許文献1に示されるような傾斜板を用いた固液分離装置が用いられている。図11〜12に示されるように、固液分離装置100は、沈殿池A内に設けられた架枠Bに多数の傾斜板101が一段または多段に設けられ、汚物を含む汚水が、傾斜板101に沿って下降する間に固形汚物の沈殿が促進され、固形汚物が分離された清浄水は、傾斜板の背面に沿って上昇することにより、清浄水と固形汚物の再撹乱が防止され、自然沈降法による場合に比べて分離効率が向上する。
【0003】
この固液分離装置に用いられる傾斜板101は、図11〜13に示されるように、架枠Bに取り付けられた支持棒102に、傾斜板101に一体的に形成されたフック103により、吊下げられている。図11に示されるようにフック103は、略長方形状の傾斜板101の四隅近傍にそれぞれ設けられており、このフック103を備えた傾斜板101は、工場等で真空成型により、フック103が傾斜板101に一体成型され、大量生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−7282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示されるように、沈殿池Aの端部に設けられる傾斜板101aは、沈殿池Aの中央部に設けられる傾斜板101bよりも短いものを設置する必要がある。この場合、傾斜板101bを、現場でカットすることにより設置することもできるが、傾斜板101bをカットした場合、傾斜板101bの上部または下部のフック103もカットされてしまうため、沈殿池Aの端部において、支持棒102に取り付けることができないという問題がある。したがって、従来は、傾斜板101aのために、別途小さい傾斜板101a用の金型を用意する必要があり、コストがかかってしまうという問題があった。
【0006】
また、沈殿池ごとに図12に示す架枠Bの垂直方向の間隔Lは、現場ごとによって変わることがあり、ある沈殿池用(たとえばL=2m)に一つの金型で製造された傾斜板101は、L2が異なる他の沈殿池(たとえばL=1.5m)では用いることができない。すなわち、架枠Bの垂直方向の間隔Lとフック103間の距離(L2)とは比例関係にあり(三平方の定理)、Lが変わると、フック103間の距離も変わるので、同じ金型で製造された傾斜板101を複数の現場で共通して用いることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、沈殿池の深さ、要求処理能力、配設位置等に起因して、傾斜板の大きさや、傾斜板のフック間の距離が変わっても、同一の金型を用いて形成された傾斜板を用いることを可能とする、新規な傾斜板支持具および当該傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の傾斜板支持具は、沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板支持具であって、該傾斜板支持具が、傾斜板支持具本体と、該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、前記掛止部が、前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする。
【0009】
また、前記掛止突起が、前記本体から延び、前記傾斜板の厚さと略同一の高さを有する首部と、該首部から延び、前記首部より幅広に設けられた幅広部とからなることが好ましい。
【0010】
また、前記板バネが、前記掛止突起とは別の位置に、前記本体と一体的に設けられ、前記板バネが、前記傾斜板方向に付勢されるように構成され、かつ前記傾斜板支持具を前記傾斜板に取り付けたときに、前記板バネの自由端が、前記掛止用孔に嵌め込まれるように構成されてなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の傾斜板支持構造は、前記傾斜板支持具と、該傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板とからなることを特徴とする。
【0012】
また、前記傾斜板に、掛止用孔が設けられ、前記掛止用孔が、前記掛止突起を差し込むための、前記掛止突起の幅より幅が広い差込開口部と、前記掛止突起がスライド移動するための幅狭のスリット部とからなることが好ましい。
【0013】
また、前記傾斜板に、前記傾斜板の垂直方向に沿って複数の溝状のリブが、互いに平行に設けられ、該溝状のリブに前記掛止用孔が設けられてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な操作で傾斜板に傾斜板支持具を取り付けることができるので、現場での作業が容易である。また、沈殿池の端部に設けられた短い傾斜板、または沈殿池の中央部の長い傾斜板のいずれにも簡単に取り付けることができるので、傾斜板の大きさごとに金型を起こす必要がない。また、傾斜板のフック間の距離、傾斜板が設置される沈殿池の架枠間の垂直方向の距離が変わる場合であっても、本発明の傾斜板支持具を用いることにより、同一の傾斜板を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の傾斜板支持具が、傾斜板に取り付けられた傾斜板保持構造を示す図である。
【図2】本発明の傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板の傾斜および傾斜板の配設ピッチを説明するための図である。
【図3】本発明の傾斜板支持具を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の傾斜板支持具を説明するための側面図である。
【図5】本発明の傾斜板支持具が取り付けられる傾斜板を説明するための図である。
【図6】図5における傾斜板の掛止用孔の拡大図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具が傾斜板に取り付けられる状態を説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具が傾斜板に取り付けられる状態を説明するための図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具に設けられた補強リブを説明するための図である。
【図10】本発明の傾斜板支持具に設けられた補強リブを説明するための図である。
【図11】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【図12】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【図13】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照し、本発明の傾斜板支持具および傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造を詳細に説明する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の傾斜板支持具1は、傾斜板2の四隅に着脱可能に取り付けられている。傾斜板2に取り付けられた傾斜板支持具1を介して、傾斜板2は、沈殿池(図示せず)内に互いに平行に設けられた上下一対の支持フレーム31a、31b、32a、32bを連結する複数の支持棒4に係止される。なお、「傾斜板」とは、浄水場、下水処理場などの水処理が必要な施設において、懸濁物質を効率良く沈降させるために、沈殿池内に、図1に示されるように傾斜した状態で配設される平板をいうものである。傾斜板2の材質は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよいし、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0018】
また、傾斜板2は、上下方向の剛性を高め、傾斜板2自体の撓みをおさえるために、図1に示す上下方向Xに沿ってリブ21が設けられたものであってもよい。図1では、リブ21は、上下方向Xに沿った溝状を呈している。
【0019】
図2に示すように、傾斜板2は、上下の支持棒4により、斜めに支持されており、たとえば、傾斜板2と下側の支持フレーム31b、32bとの角度θが、50〜70°、より好ましくは60°になるように支持され、傾斜板2と傾斜板2との間のピッチL3が、70〜120mmとなるように配設されている。この傾斜板2の配設角度θおよびピッチLは、傾斜板2が配設される現場ごとに変わり、適宜変更することができる。
【0020】
つぎに、図3により、傾斜板支持具1の構造を説明する。図3に示されるように、傾斜板支持具1は、傾斜板支持具本体(以下、単に本体という)11と、本体11の一方の側に一体的に突設されるフック部12と、本体11の他方の側、すなわち傾斜板2への取付時に傾斜板2に対向する側に、本体11と一体的に設けられる傾斜板支持具1を傾斜板2に掛止するための掛止部13とから構成されている。傾斜板支持具1は、傾斜板2と同様の材質からなり、その材質は、適宜選択可能である。
【0021】
掛止部13は、図3および4に示されるように、本体11から突出した掛止突起14と、本体11と一体的に設けられ、掛止突起14が傾斜板2に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具1の外れを防止する板バネ15とから構成されている。
【0022】
本体11自体は、全体的に偏平な形状を呈しており、その高さHは、5〜15mm程度であり、傾斜板2に設けられたリブ21の深さ(高さ)と略同一である。また、図4に示されるように、本体11には、板バネ15が、本体11側に付勢されたときに板バネ15が逃げることができるように、空洞部11aが設けられている。
【0023】
本体11から一体的に突設されるフック部12は、沈殿池内に配設された支持棒4に取り付けた際に、外れにくくするための係合突部12a、12bが設けられている。また、フック部12の形状は、支持棒4に取り付けることができれば、どのような形状であってもよい。
【0024】
掛止突起14は、本体11から延び、傾斜板2の厚さと略同一または少し高い高さを有する首部14aと、首部14aより幅広に設けられた幅広部14bとから構成されている。首部14aは、図3および4では、細長い柱状を呈しているが、円柱状や断面が正方形の正四角柱等他の形状であってもよい。幅広部14bは、図3および4に示されるように、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れないように、首部14aよりも幅広の薄板状の部材となっているが、その形状は特に限定されることはなく、図3に示すように略矩形状のものとすることもできるし、円形のものであってもよい。幅広部14bの厚さは、突出部分を減らすために、1〜3mm程度とすることができるが、この数値に限られるものではなく、高強度の材料を用いることにより、さらに薄くすることも可能である。幅広部14bが薄板状を呈することにより、傾斜板支持具1を傾斜板2に取り付けたときに、傾斜板2からの突出部分がほとんど無くなり、傾斜板2を伝うフロック等の固形物が、傾斜板2に堆積しにくくなる。通常傾斜板2に堆積したフロックは傾斜板上面(図2に参照符号USで示す側の面)を伝って沈殿池の底に落下するが、突出部分が大きいとフロックが堆積し、処理能力が低下しやすいため、薄板状の幅広部14bにより、処理能力の低下を防ぐことができる。
【0025】
板バネ15は、図3および4では、本体11から、細長い本体11の長手方向(すなわち、本体1が傾斜板2に取り付けられたときに、傾斜板2の上下方向X)に沿って延びる板バネとして示されている。板バネ15の自由端15bは、本体11との連結部15aを中心にして図4の紙面上下方向に旋回が可能である。板バネ15の自由端15b側には、板バネ15が付勢されていない状態で、本体11の一方の面(掛止突起14が設けられている方の面)から本体11の外側に突出している突出部15cが設けられている。
【0026】
上記傾斜板支持具1とともに用いられる傾斜板2の一例を図5に示す。図5に示されるように、傾斜板2は、複数の溝状のリブ21と、溝状のリブ21の間に位置する平板状の部分22とにより構成されている。図5においては、溝状のリブ21に傾斜板支持具1を固定するための掛止用孔23が設けられているが、当該掛止用孔23は、平板状の部分22に設けることも可能である。
【0027】
図6は、図5にYで示す掛止用孔23の拡大図であり、掛止用孔23は、図6に示されるように、掛止突起14を差し込むための、掛止突起14の幅広部14bより幅が広く、幅広部14b全体を貫通させることができる差込開口部23aと、掛止突起14の幅広部14bが差込開口部23aに差し込まれたあと、掛止突起14の首部14aをスライドさせるための幅狭のスリット部23bとから構成されている。差込開口部23aは、図5および6においては、略正方形状の開口部が図示されているが、掛止突起14の幅広部14b全体を差し込むことができる形状であれば、特に限定されるものではなく、その大きさも幅広部14bより大きければよく、たとえば略正方形状の幅広部を差し込むことができる、円形や長方形状の開口部であってもよい。図5においては、掛止用孔23の傾斜板2の上部側(図2中、紙面上側)に、幅狭のスリット部23bが位置し、傾斜板2の下部側(図2中、紙面下側)に差込開口部23aが連続して形成される「凸」字状の掛止用孔23が形成されている。スリット部23bを傾斜板2の上部側に形成することにより、スリット部23bの上端縁と掛止突起14の首部14aが当接し、傾斜板2の荷重を支持することができる(スリット部23bを差込開口部23aよりも下側に形成すると、板バネ15の突出部15cのみにより傾斜板2の荷重を支持しなければならず、板バネ15が変形し、支持具1が外れるおそれがある)。
【0028】
また、図5および6では、傾斜板支持具1の設置箇所につき、2つの掛止用孔23が設けられているが、傾斜板支持具1の掛止部13の数に合わせて変更が可能であり、たとえば、図3に示す掛止部13を1つ(掛止突起14と板バネ15が1つずつ)の場合は、掛止用孔23を1つとすることもできるし、1つの傾斜板支持具1に掛止部13を3つ設けた場合は、掛止用孔23を3つにすればよい。
【0029】
また、図5では、傾斜板支持具1を掛止する位置が、傾斜板2の四隅であるが、傾斜板支持具1を掛止する位置を増やすことも可能であり、四隅に限られるものではない。
【0030】
つぎに、図7および8を用いて、本発明の傾斜板支持具1の傾斜板2への取り付け方法について説明する。
【0031】
図7(a)および図8(a)に示される状態は、傾斜板2への傾斜板支持具1の取り付け前の状態であり、傾斜板支持具1を傾斜板に取り付ける場合は、まず傾斜板2の掛止用孔23の差込開口部23aに対応する位置に、傾斜板支持具1の掛止突起14を位置づける(図7(a)および図8(a)参照)。
【0032】
この状態から、傾斜板支持具1を傾斜板2側に移動させると、掛止突起14が差込開口部23aに差し込まれると同時に、傾斜板2と板バネ15の自由端15bが当接し、当接後も傾斜板支持具1を傾斜板2側に移動させると、自由端15bが傾斜板2により押圧され、本体11の空洞部11a側(紙面上方側)に弾性変形される(図7(b)および図8(b)参照)。
【0033】
この状態からさらに差込開口部23aに差し込まれた掛止突起14を、掛止用孔23のスリット部23b側にスライドさせ、掛止突起14の首部14aが、スリット部23b内をスライドすると、板バネ15の自由端15bが、弾性変形され、かつ傾斜板2方向への付勢力を持ったままスライドし、差込開口部23a上に自由端15bが位置すると、弾性変形された板バネ15は、傾斜板2方向への付勢力により自由端15bが、差込開口部23a内に入り込み、もとの状態(弾性変形していない状態)に戻り、自由端15bの突出部15cが、差込開口部23aに係止され(図7(c)および図8(c)参照)、これにより傾斜板支持具1が傾斜板2に取り付けられる。
【0034】
また、傾斜板支持具1を傾斜板2から取り外す場合は、上記した工程と逆の工程により簡単に取り外すことが可能である。すなわち、突出部15cを押圧しながら、係止突起14をスライド移動させ、係止突起14を差込開口部23aから取り外すことにより、簡単に分離が可能である。
【0035】
上記したように、本発明の傾斜板支持具1を用いることにより、傾斜板2への取り付けが容易となる。また、支持棒4に連結されるフックを、傾斜板2と一体成型していないため、現場または工場等で傾斜板2をカットして、カット後に傾斜板2に掛止用孔を穿設し、傾斜板支持具1を取り付けることにより、傾斜板2を支持棒4に取り付けることが可能である。したがって、長い傾斜板、短い傾斜板を用意する必要がなく、大きさに応じた型を起こす必要がないため、大幅にコストを削減することができる。
【0036】
また、フックと傾斜板2とを一体成型していないため、傾斜板2が設置される沈殿池が変わったりして、支持フレーム間の距離が変わることにより、必要な傾斜板2のフック間の距離が変動する場合であっても、容易に傾斜板支持具1の取り付け位置を変えることができるので、傾斜板2のフック間の距離に応じた型を起こす必要もなく、大幅にコストを削減することができる。
【0037】
また、傾斜板支持具1を、溝状のリブ内に設けられた掛止用孔を介して傾斜板2に取り付け、本体11の高さを溝状のリブの高さと合わせる場合、傾斜板支持具1のうち、傾斜板2の平板状の部分から突出する部分がフック部だけになるので、沈殿池内における水流を妨げる突出部分を最小限に減らし、水流の抵抗を最小限に減らすことができるうえ、フロックの堆積を最小限に減らすことができる。通常傾斜板2に堆積したフロックは傾斜板上面を伝って沈殿池の底に落下するが、突出部分が大きいとフロックが堆積し、処理能力が低下しやすいため、薄板状の幅広部14bにより、処理能力の低下を防ぐことができる。
【0038】
また、傾斜板支持具1を、傾斜板2に取り付けた際に、掛止突起14の幅広部14bがほとんど傾斜板2の表面から突出しない構成になっており、かつ板バネ15の突出部15cが傾斜板15からほとんど突出しないので、沈殿池内のフロックが、傾斜板支持具1においてほとんど堆積しない。
【0039】
また、傾斜板2の平板状の部分22からリブ21の突出する側を、傾斜板2の上面US側とし、溝状に窪んだ部分を傾斜板2の下側とするように傾斜板2を配設することにより、図1に示されるように、傾斜板2の平板状の部分22と支持棒4とが当接するため、従来よりも支持棒4と傾斜板2との接触面積を増やすことができるため、傾斜板2全体の強度を高めることができる。
【0040】
本発明の傾斜板支持具1は、上記したように傾斜板2に強固に固定されるものであるが、さらに図9に示されるようなテーパ部5を傾斜板支持具1に設けることにより、さらに傾斜板2から傾斜板支持具1を外れにくくすることができる。図9(a)〜(c)に示される傾斜板支持具1は、テーパ部5が設けられる以外は、図3等に示す傾斜板支持具1と同様であり、テーパ部5以外の説明は省略する。
【0041】
図9(a)〜(c)に示すように、傾斜板支持具1の本体11は、本体11の長手方向に沿って、フック部12と本体11との接合部側に延長された延長部16を有しており、当該延長部16の自由端側から、フック部12の支持棒4が支持される湾曲部分12cにわたって、延長部16の自由端側が低く、フック部12の湾曲部分12c側が高くなるように形成されたテーパ部5が設けられている。図9においては、テーパ部5は、三角形状を呈したプレート状を呈し、平板状の延長部16に対して垂直に配設されている。なお、図9において、フック部12の湾曲部分12cは、支持棒4が支持される部分が湾曲するように形成されているが、「湾曲部分」という用語は、フック部12の支持棒4が支持される部分の外側部分を平坦な面としたもの等も含む概念であり、当該平坦な外側の面にテーパ部5を設けることも可能である。また、テーパ部5は、傾斜板支持具1を側面から見たときに直線状になっているが、曲線状のテーパ部であってもよく、さらに、テーパ部5全体が曲面状に形成されたものであってもよい。
【0042】
つぎに、上記テーパ部5の機能について、図10を用いて説明する。図10に示されるように、傾斜板2が支持される支持棒4に、傾斜板2を取り付け、または取り外しする際に、傾斜板2と支持棒4とは、図10のような関係となる。このときに傾斜板2を図10中上方に移動させると、テーパ部5が形成されていない場合、支持棒4は、傾斜板支持具1の湾曲部分12cに当接し、傾斜板支持具1に直接下向きの応力が加わるため、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れる方向の力が加わる。テーパ部5を傾斜板支持具1のフック部12の湾曲部分12cを一部または全部覆う位置に設けることにより、支持棒4による力を受け流すことができるので、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れる危険性をさらに低くすることができる。テーパ部5の形状は、図12に示す形状に限られることはなく、フック部12の湾曲部分12cに当接する支持棒4からの傾斜板2に平行に加わる力を、他の方向に向け、傾斜板2に平行に加わる分力を減らすことができる形状であれば、特に限定されるものではない。たとえば、フック部12の幅方向全体にわたって、テーパ部5が設けられてもよい。すなわち、フック部12の湾曲部分12cから傾斜板支持具1の長手方向に沿って延びるテーパ部5を有し、テーパ部5が、湾曲部分12c側が高く、湾曲部分12cから離れるにしたがい高さが低くなるようにテーパ部が形成されていればよい。また、テーパ部5により、フック部12の強度自体を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 傾斜板支持具
11 本体
11a 空洞部
12 フック部
12a、12b 係合突部
13 掛止部
14 掛止突起
14a 首部
14b 幅広部
15 板バネ
15a 連結部
15b 自由端
15c 突出部
2 傾斜板
21 リブ
22 平板状の部分
23 掛止用孔
23a 差込開口部
23b スリット部
31a、31b、32a、32b 支持フレーム
4 支持棒
5 テーパ部
A 沈殿池
B 架枠
【技術分野】
【0001】
本発明は、傾斜板支持具および傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、浄水場などに設けられる固液分離装置として、特許文献1に示されるような傾斜板を用いた固液分離装置が用いられている。図11〜12に示されるように、固液分離装置100は、沈殿池A内に設けられた架枠Bに多数の傾斜板101が一段または多段に設けられ、汚物を含む汚水が、傾斜板101に沿って下降する間に固形汚物の沈殿が促進され、固形汚物が分離された清浄水は、傾斜板の背面に沿って上昇することにより、清浄水と固形汚物の再撹乱が防止され、自然沈降法による場合に比べて分離効率が向上する。
【0003】
この固液分離装置に用いられる傾斜板101は、図11〜13に示されるように、架枠Bに取り付けられた支持棒102に、傾斜板101に一体的に形成されたフック103により、吊下げられている。図11に示されるようにフック103は、略長方形状の傾斜板101の四隅近傍にそれぞれ設けられており、このフック103を備えた傾斜板101は、工場等で真空成型により、フック103が傾斜板101に一体成型され、大量生産される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実公昭63−7282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、図12に示されるように、沈殿池Aの端部に設けられる傾斜板101aは、沈殿池Aの中央部に設けられる傾斜板101bよりも短いものを設置する必要がある。この場合、傾斜板101bを、現場でカットすることにより設置することもできるが、傾斜板101bをカットした場合、傾斜板101bの上部または下部のフック103もカットされてしまうため、沈殿池Aの端部において、支持棒102に取り付けることができないという問題がある。したがって、従来は、傾斜板101aのために、別途小さい傾斜板101a用の金型を用意する必要があり、コストがかかってしまうという問題があった。
【0006】
また、沈殿池ごとに図12に示す架枠Bの垂直方向の間隔Lは、現場ごとによって変わることがあり、ある沈殿池用(たとえばL=2m)に一つの金型で製造された傾斜板101は、L2が異なる他の沈殿池(たとえばL=1.5m)では用いることができない。すなわち、架枠Bの垂直方向の間隔Lとフック103間の距離(L2)とは比例関係にあり(三平方の定理)、Lが変わると、フック103間の距離も変わるので、同じ金型で製造された傾斜板101を複数の現場で共通して用いることができないという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記問題点に鑑みて、沈殿池の深さ、要求処理能力、配設位置等に起因して、傾斜板の大きさや、傾斜板のフック間の距離が変わっても、同一の金型を用いて形成された傾斜板を用いることを可能とする、新規な傾斜板支持具および当該傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の傾斜板支持具は、沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板支持具であって、該傾斜板支持具が、傾斜板支持具本体と、該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、前記掛止部が、前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする。
【0009】
また、前記掛止突起が、前記本体から延び、前記傾斜板の厚さと略同一の高さを有する首部と、該首部から延び、前記首部より幅広に設けられた幅広部とからなることが好ましい。
【0010】
また、前記板バネが、前記掛止突起とは別の位置に、前記本体と一体的に設けられ、前記板バネが、前記傾斜板方向に付勢されるように構成され、かつ前記傾斜板支持具を前記傾斜板に取り付けたときに、前記板バネの自由端が、前記掛止用孔に嵌め込まれるように構成されてなることが好ましい。
【0011】
また、本発明の傾斜板支持構造は、前記傾斜板支持具と、該傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板とからなることを特徴とする。
【0012】
また、前記傾斜板に、掛止用孔が設けられ、前記掛止用孔が、前記掛止突起を差し込むための、前記掛止突起の幅より幅が広い差込開口部と、前記掛止突起がスライド移動するための幅狭のスリット部とからなることが好ましい。
【0013】
また、前記傾斜板に、前記傾斜板の垂直方向に沿って複数の溝状のリブが、互いに平行に設けられ、該溝状のリブに前記掛止用孔が設けられてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、簡単な操作で傾斜板に傾斜板支持具を取り付けることができるので、現場での作業が容易である。また、沈殿池の端部に設けられた短い傾斜板、または沈殿池の中央部の長い傾斜板のいずれにも簡単に取り付けることができるので、傾斜板の大きさごとに金型を起こす必要がない。また、傾斜板のフック間の距離、傾斜板が設置される沈殿池の架枠間の垂直方向の距離が変わる場合であっても、本発明の傾斜板支持具を用いることにより、同一の傾斜板を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の傾斜板支持具が、傾斜板に取り付けられた傾斜板保持構造を示す図である。
【図2】本発明の傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板の傾斜および傾斜板の配設ピッチを説明するための図である。
【図3】本発明の傾斜板支持具を説明するための斜視図である。
【図4】本発明の傾斜板支持具を説明するための側面図である。
【図5】本発明の傾斜板支持具が取り付けられる傾斜板を説明するための図である。
【図6】図5における傾斜板の掛止用孔の拡大図である。
【図7】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具が傾斜板に取り付けられる状態を説明するための図である。
【図8】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具が傾斜板に取り付けられる状態を説明するための図である。
【図9】(a)〜(c)は、本発明の傾斜板支持具に設けられた補強リブを説明するための図である。
【図10】本発明の傾斜板支持具に設けられた補強リブを説明するための図である。
【図11】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【図12】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【図13】従来の傾斜板保持具および傾斜板保持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を参照し、本発明の傾斜板支持具および傾斜板支持具を用いた傾斜板支持構造を詳細に説明する。
【0017】
図1に示されるように、本発明の傾斜板支持具1は、傾斜板2の四隅に着脱可能に取り付けられている。傾斜板2に取り付けられた傾斜板支持具1を介して、傾斜板2は、沈殿池(図示せず)内に互いに平行に設けられた上下一対の支持フレーム31a、31b、32a、32bを連結する複数の支持棒4に係止される。なお、「傾斜板」とは、浄水場、下水処理場などの水処理が必要な施設において、懸濁物質を効率良く沈降させるために、沈殿池内に、図1に示されるように傾斜した状態で配設される平板をいうものである。傾斜板2の材質は、特に限定されるものではないが、熱可塑性樹脂、たとえばポリ塩化ビニル等のビニル系樹脂、ポリカーボネート等のカーボネート系樹脂、ポリエチレンテレフタレート等のエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンやポリエチレン等のオレフィン系樹脂、ABS等のスチレン系樹脂あるいはこれらの共重合体や混合樹脂であってもよいし、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等の熱硬化性樹脂であってもよいし、金属、セラミック、木材、ゴム等であってもよい。
【0018】
また、傾斜板2は、上下方向の剛性を高め、傾斜板2自体の撓みをおさえるために、図1に示す上下方向Xに沿ってリブ21が設けられたものであってもよい。図1では、リブ21は、上下方向Xに沿った溝状を呈している。
【0019】
図2に示すように、傾斜板2は、上下の支持棒4により、斜めに支持されており、たとえば、傾斜板2と下側の支持フレーム31b、32bとの角度θが、50〜70°、より好ましくは60°になるように支持され、傾斜板2と傾斜板2との間のピッチL3が、70〜120mmとなるように配設されている。この傾斜板2の配設角度θおよびピッチLは、傾斜板2が配設される現場ごとに変わり、適宜変更することができる。
【0020】
つぎに、図3により、傾斜板支持具1の構造を説明する。図3に示されるように、傾斜板支持具1は、傾斜板支持具本体(以下、単に本体という)11と、本体11の一方の側に一体的に突設されるフック部12と、本体11の他方の側、すなわち傾斜板2への取付時に傾斜板2に対向する側に、本体11と一体的に設けられる傾斜板支持具1を傾斜板2に掛止するための掛止部13とから構成されている。傾斜板支持具1は、傾斜板2と同様の材質からなり、その材質は、適宜選択可能である。
【0021】
掛止部13は、図3および4に示されるように、本体11から突出した掛止突起14と、本体11と一体的に設けられ、掛止突起14が傾斜板2に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具1の外れを防止する板バネ15とから構成されている。
【0022】
本体11自体は、全体的に偏平な形状を呈しており、その高さHは、5〜15mm程度であり、傾斜板2に設けられたリブ21の深さ(高さ)と略同一である。また、図4に示されるように、本体11には、板バネ15が、本体11側に付勢されたときに板バネ15が逃げることができるように、空洞部11aが設けられている。
【0023】
本体11から一体的に突設されるフック部12は、沈殿池内に配設された支持棒4に取り付けた際に、外れにくくするための係合突部12a、12bが設けられている。また、フック部12の形状は、支持棒4に取り付けることができれば、どのような形状であってもよい。
【0024】
掛止突起14は、本体11から延び、傾斜板2の厚さと略同一または少し高い高さを有する首部14aと、首部14aより幅広に設けられた幅広部14bとから構成されている。首部14aは、図3および4では、細長い柱状を呈しているが、円柱状や断面が正方形の正四角柱等他の形状であってもよい。幅広部14bは、図3および4に示されるように、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れないように、首部14aよりも幅広の薄板状の部材となっているが、その形状は特に限定されることはなく、図3に示すように略矩形状のものとすることもできるし、円形のものであってもよい。幅広部14bの厚さは、突出部分を減らすために、1〜3mm程度とすることができるが、この数値に限られるものではなく、高強度の材料を用いることにより、さらに薄くすることも可能である。幅広部14bが薄板状を呈することにより、傾斜板支持具1を傾斜板2に取り付けたときに、傾斜板2からの突出部分がほとんど無くなり、傾斜板2を伝うフロック等の固形物が、傾斜板2に堆積しにくくなる。通常傾斜板2に堆積したフロックは傾斜板上面(図2に参照符号USで示す側の面)を伝って沈殿池の底に落下するが、突出部分が大きいとフロックが堆積し、処理能力が低下しやすいため、薄板状の幅広部14bにより、処理能力の低下を防ぐことができる。
【0025】
板バネ15は、図3および4では、本体11から、細長い本体11の長手方向(すなわち、本体1が傾斜板2に取り付けられたときに、傾斜板2の上下方向X)に沿って延びる板バネとして示されている。板バネ15の自由端15bは、本体11との連結部15aを中心にして図4の紙面上下方向に旋回が可能である。板バネ15の自由端15b側には、板バネ15が付勢されていない状態で、本体11の一方の面(掛止突起14が設けられている方の面)から本体11の外側に突出している突出部15cが設けられている。
【0026】
上記傾斜板支持具1とともに用いられる傾斜板2の一例を図5に示す。図5に示されるように、傾斜板2は、複数の溝状のリブ21と、溝状のリブ21の間に位置する平板状の部分22とにより構成されている。図5においては、溝状のリブ21に傾斜板支持具1を固定するための掛止用孔23が設けられているが、当該掛止用孔23は、平板状の部分22に設けることも可能である。
【0027】
図6は、図5にYで示す掛止用孔23の拡大図であり、掛止用孔23は、図6に示されるように、掛止突起14を差し込むための、掛止突起14の幅広部14bより幅が広く、幅広部14b全体を貫通させることができる差込開口部23aと、掛止突起14の幅広部14bが差込開口部23aに差し込まれたあと、掛止突起14の首部14aをスライドさせるための幅狭のスリット部23bとから構成されている。差込開口部23aは、図5および6においては、略正方形状の開口部が図示されているが、掛止突起14の幅広部14b全体を差し込むことができる形状であれば、特に限定されるものではなく、その大きさも幅広部14bより大きければよく、たとえば略正方形状の幅広部を差し込むことができる、円形や長方形状の開口部であってもよい。図5においては、掛止用孔23の傾斜板2の上部側(図2中、紙面上側)に、幅狭のスリット部23bが位置し、傾斜板2の下部側(図2中、紙面下側)に差込開口部23aが連続して形成される「凸」字状の掛止用孔23が形成されている。スリット部23bを傾斜板2の上部側に形成することにより、スリット部23bの上端縁と掛止突起14の首部14aが当接し、傾斜板2の荷重を支持することができる(スリット部23bを差込開口部23aよりも下側に形成すると、板バネ15の突出部15cのみにより傾斜板2の荷重を支持しなければならず、板バネ15が変形し、支持具1が外れるおそれがある)。
【0028】
また、図5および6では、傾斜板支持具1の設置箇所につき、2つの掛止用孔23が設けられているが、傾斜板支持具1の掛止部13の数に合わせて変更が可能であり、たとえば、図3に示す掛止部13を1つ(掛止突起14と板バネ15が1つずつ)の場合は、掛止用孔23を1つとすることもできるし、1つの傾斜板支持具1に掛止部13を3つ設けた場合は、掛止用孔23を3つにすればよい。
【0029】
また、図5では、傾斜板支持具1を掛止する位置が、傾斜板2の四隅であるが、傾斜板支持具1を掛止する位置を増やすことも可能であり、四隅に限られるものではない。
【0030】
つぎに、図7および8を用いて、本発明の傾斜板支持具1の傾斜板2への取り付け方法について説明する。
【0031】
図7(a)および図8(a)に示される状態は、傾斜板2への傾斜板支持具1の取り付け前の状態であり、傾斜板支持具1を傾斜板に取り付ける場合は、まず傾斜板2の掛止用孔23の差込開口部23aに対応する位置に、傾斜板支持具1の掛止突起14を位置づける(図7(a)および図8(a)参照)。
【0032】
この状態から、傾斜板支持具1を傾斜板2側に移動させると、掛止突起14が差込開口部23aに差し込まれると同時に、傾斜板2と板バネ15の自由端15bが当接し、当接後も傾斜板支持具1を傾斜板2側に移動させると、自由端15bが傾斜板2により押圧され、本体11の空洞部11a側(紙面上方側)に弾性変形される(図7(b)および図8(b)参照)。
【0033】
この状態からさらに差込開口部23aに差し込まれた掛止突起14を、掛止用孔23のスリット部23b側にスライドさせ、掛止突起14の首部14aが、スリット部23b内をスライドすると、板バネ15の自由端15bが、弾性変形され、かつ傾斜板2方向への付勢力を持ったままスライドし、差込開口部23a上に自由端15bが位置すると、弾性変形された板バネ15は、傾斜板2方向への付勢力により自由端15bが、差込開口部23a内に入り込み、もとの状態(弾性変形していない状態)に戻り、自由端15bの突出部15cが、差込開口部23aに係止され(図7(c)および図8(c)参照)、これにより傾斜板支持具1が傾斜板2に取り付けられる。
【0034】
また、傾斜板支持具1を傾斜板2から取り外す場合は、上記した工程と逆の工程により簡単に取り外すことが可能である。すなわち、突出部15cを押圧しながら、係止突起14をスライド移動させ、係止突起14を差込開口部23aから取り外すことにより、簡単に分離が可能である。
【0035】
上記したように、本発明の傾斜板支持具1を用いることにより、傾斜板2への取り付けが容易となる。また、支持棒4に連結されるフックを、傾斜板2と一体成型していないため、現場または工場等で傾斜板2をカットして、カット後に傾斜板2に掛止用孔を穿設し、傾斜板支持具1を取り付けることにより、傾斜板2を支持棒4に取り付けることが可能である。したがって、長い傾斜板、短い傾斜板を用意する必要がなく、大きさに応じた型を起こす必要がないため、大幅にコストを削減することができる。
【0036】
また、フックと傾斜板2とを一体成型していないため、傾斜板2が設置される沈殿池が変わったりして、支持フレーム間の距離が変わることにより、必要な傾斜板2のフック間の距離が変動する場合であっても、容易に傾斜板支持具1の取り付け位置を変えることができるので、傾斜板2のフック間の距離に応じた型を起こす必要もなく、大幅にコストを削減することができる。
【0037】
また、傾斜板支持具1を、溝状のリブ内に設けられた掛止用孔を介して傾斜板2に取り付け、本体11の高さを溝状のリブの高さと合わせる場合、傾斜板支持具1のうち、傾斜板2の平板状の部分から突出する部分がフック部だけになるので、沈殿池内における水流を妨げる突出部分を最小限に減らし、水流の抵抗を最小限に減らすことができるうえ、フロックの堆積を最小限に減らすことができる。通常傾斜板2に堆積したフロックは傾斜板上面を伝って沈殿池の底に落下するが、突出部分が大きいとフロックが堆積し、処理能力が低下しやすいため、薄板状の幅広部14bにより、処理能力の低下を防ぐことができる。
【0038】
また、傾斜板支持具1を、傾斜板2に取り付けた際に、掛止突起14の幅広部14bがほとんど傾斜板2の表面から突出しない構成になっており、かつ板バネ15の突出部15cが傾斜板15からほとんど突出しないので、沈殿池内のフロックが、傾斜板支持具1においてほとんど堆積しない。
【0039】
また、傾斜板2の平板状の部分22からリブ21の突出する側を、傾斜板2の上面US側とし、溝状に窪んだ部分を傾斜板2の下側とするように傾斜板2を配設することにより、図1に示されるように、傾斜板2の平板状の部分22と支持棒4とが当接するため、従来よりも支持棒4と傾斜板2との接触面積を増やすことができるため、傾斜板2全体の強度を高めることができる。
【0040】
本発明の傾斜板支持具1は、上記したように傾斜板2に強固に固定されるものであるが、さらに図9に示されるようなテーパ部5を傾斜板支持具1に設けることにより、さらに傾斜板2から傾斜板支持具1を外れにくくすることができる。図9(a)〜(c)に示される傾斜板支持具1は、テーパ部5が設けられる以外は、図3等に示す傾斜板支持具1と同様であり、テーパ部5以外の説明は省略する。
【0041】
図9(a)〜(c)に示すように、傾斜板支持具1の本体11は、本体11の長手方向に沿って、フック部12と本体11との接合部側に延長された延長部16を有しており、当該延長部16の自由端側から、フック部12の支持棒4が支持される湾曲部分12cにわたって、延長部16の自由端側が低く、フック部12の湾曲部分12c側が高くなるように形成されたテーパ部5が設けられている。図9においては、テーパ部5は、三角形状を呈したプレート状を呈し、平板状の延長部16に対して垂直に配設されている。なお、図9において、フック部12の湾曲部分12cは、支持棒4が支持される部分が湾曲するように形成されているが、「湾曲部分」という用語は、フック部12の支持棒4が支持される部分の外側部分を平坦な面としたもの等も含む概念であり、当該平坦な外側の面にテーパ部5を設けることも可能である。また、テーパ部5は、傾斜板支持具1を側面から見たときに直線状になっているが、曲線状のテーパ部であってもよく、さらに、テーパ部5全体が曲面状に形成されたものであってもよい。
【0042】
つぎに、上記テーパ部5の機能について、図10を用いて説明する。図10に示されるように、傾斜板2が支持される支持棒4に、傾斜板2を取り付け、または取り外しする際に、傾斜板2と支持棒4とは、図10のような関係となる。このときに傾斜板2を図10中上方に移動させると、テーパ部5が形成されていない場合、支持棒4は、傾斜板支持具1の湾曲部分12cに当接し、傾斜板支持具1に直接下向きの応力が加わるため、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れる方向の力が加わる。テーパ部5を傾斜板支持具1のフック部12の湾曲部分12cを一部または全部覆う位置に設けることにより、支持棒4による力を受け流すことができるので、傾斜板支持具1が傾斜板2から外れる危険性をさらに低くすることができる。テーパ部5の形状は、図12に示す形状に限られることはなく、フック部12の湾曲部分12cに当接する支持棒4からの傾斜板2に平行に加わる力を、他の方向に向け、傾斜板2に平行に加わる分力を減らすことができる形状であれば、特に限定されるものではない。たとえば、フック部12の幅方向全体にわたって、テーパ部5が設けられてもよい。すなわち、フック部12の湾曲部分12cから傾斜板支持具1の長手方向に沿って延びるテーパ部5を有し、テーパ部5が、湾曲部分12c側が高く、湾曲部分12cから離れるにしたがい高さが低くなるようにテーパ部が形成されていればよい。また、テーパ部5により、フック部12の強度自体を高めることができる。
【符号の説明】
【0043】
1 傾斜板支持具
11 本体
11a 空洞部
12 フック部
12a、12b 係合突部
13 掛止部
14 掛止突起
14a 首部
14b 幅広部
15 板バネ
15a 連結部
15b 自由端
15c 突出部
2 傾斜板
21 リブ
22 平板状の部分
23 掛止用孔
23a 差込開口部
23b スリット部
31a、31b、32a、32b 支持フレーム
4 支持棒
5 テーパ部
A 沈殿池
B 架枠
【特許請求の範囲】
【請求項1】
沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板支持具であって、該傾斜板支持具が、
傾斜板支持具本体と、
該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、
前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、
前記掛止部が、
前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、
前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする傾斜板支持具。
【請求項2】
前記掛止突起が、前記本体から延び、前記傾斜板の厚さと略同一の高さを有する首部と、該首部から延び、前記首部より幅広に設けられた幅広部とからなることを特徴とする請求項1記載の傾斜板支持具。
【請求項3】
前記板バネが、前記掛止突起とは別の位置に、前記本体と一体的に設けられ、前記板バネが、前記傾斜板方向に付勢されるように構成され、かつ前記傾斜板支持具を前記傾斜板に取り付けたときに、前記板バネの自由端が、前記掛止用孔に嵌め込まれるように構成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜板支持具。
【請求項4】
請求項1〜3の傾斜板支持具と、該傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板とからなることを特徴とする傾斜板支持構造。
【請求項5】
前記傾斜板に、掛止用孔が設けられ、前記掛止用孔が、
前記掛止突起を差し込むための、前記掛止突起の幅より幅が広い差込開口部と、
前記掛止突起がスライド移動するための幅狭のスリット部とからなることを特徴とする請求項4記載の傾斜板支持構造。
【請求項6】
前記傾斜板に、前記傾斜板の垂直方向に沿って複数の溝状のリブが、互いに平行に設けられ、該溝状のリブに前記掛止用孔が設けられてなることを特徴とする請求項4または5記載の傾斜板支持構造。
【請求項1】
沈殿池内に配設される傾斜板に、着脱自在に取り付けられるべき傾斜板支持具であって、該傾斜板支持具が、
傾斜板支持具本体と、
該本体の一方の側に前記本体と一体的に設けられる、傾斜板を沈殿池内の支持棒に支持するためのフック部と、
前記本体の他方の側に前記本体と一体的に設けられ、前記傾斜板支持具を傾斜板に掛止するための掛止部とからなり、
前記掛止部が、
前記傾斜板に穿設された掛止用孔を介して掛止される掛止突起と、
前記掛止突起が前記掛止用孔に掛止されるときに、ばね付勢により傾斜板支持具の外れを防止する板バネとからなることを特徴とする傾斜板支持具。
【請求項2】
前記掛止突起が、前記本体から延び、前記傾斜板の厚さと略同一の高さを有する首部と、該首部から延び、前記首部より幅広に設けられた幅広部とからなることを特徴とする請求項1記載の傾斜板支持具。
【請求項3】
前記板バネが、前記掛止突起とは別の位置に、前記本体と一体的に設けられ、前記板バネが、前記傾斜板方向に付勢されるように構成され、かつ前記傾斜板支持具を前記傾斜板に取り付けたときに、前記板バネの自由端が、前記掛止用孔に嵌め込まれるように構成されてなることを特徴とする請求項1または2記載の傾斜板支持具。
【請求項4】
請求項1〜3の傾斜板支持具と、該傾斜板支持具が取り付けられた傾斜板とからなることを特徴とする傾斜板支持構造。
【請求項5】
前記傾斜板に、掛止用孔が設けられ、前記掛止用孔が、
前記掛止突起を差し込むための、前記掛止突起の幅より幅が広い差込開口部と、
前記掛止突起がスライド移動するための幅狭のスリット部とからなることを特徴とする請求項4記載の傾斜板支持構造。
【請求項6】
前記傾斜板に、前記傾斜板の垂直方向に沿って複数の溝状のリブが、互いに平行に設けられ、該溝状のリブに前記掛止用孔が設けられてなることを特徴とする請求項4または5記載の傾斜板支持構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−96189(P2012−96189A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−247458(P2010−247458)
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002451)積水アクアシステム株式会社 (9)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【出願人】(000002451)積水アクアシステム株式会社 (9)
【出願人】(000100595)アァルピィ東プラ株式会社 (27)
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