説明

光ディスク画像形成装置

【課題】レーベル面の全体にわたり、コントラストが均一な画像を形成することができる光ディスク画像形成装置を提供する。
【解決手段】光ディスク画像形成装置10は、光ディスク200に画像を形成する場合、その光ディスク200の情報エリア212に記載された情報から描画エリア214に使用されている色素の種類の情報を読み出す。そして、光ディスク画像形成装置10は、この色素の種類の情報と、画像形成時の最大線速度(倍速数)の情報と、に対応するレーザパワー強度情報をテーブルから読み出して、このレーザパワー強度のレーザ光を照射して光ディスク200の描画エリア214に画像を形成する。これにより、描画エリア214の色素の変色が常に飽和するので、コントラストが一定の画像を光ディスクの描画エリアに形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光ディスクの描画面全体にわたって、コントラストが均一な画像を形成する光ディスク画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、CD−RやDVD−Rといったデータを記録可能な記録型光ディスクのデータ記録面やレーベル面に、文字や絵画などの画像を形成する画像形成装置や光ディスクに関する発明が開示されている(例えば、特許文献1,2参照。)。この技術は、光ディスクのデータ記録層(色素層)にレーザ光を照射してデータを記録した部分と、データを記録していない部分と、では色が異なるという現象を応用したものである。この技術を用いることで、光ディスクのデータ記録面や、色素層を形成した光ディスクのレーベル面に、画像を形成することができる。
【特許文献1】特開2004−355764公報
【特許文献2】特開2002−203321公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
光ディスクにレーザ光を照射して情報等を記録する工程において、光ディスクをCAV方式で(角速度一定で)回転させる場合には、光ディスクの半径方向の位置によって、つまり、光ディスクの内周部と外周部とでは線速度が異なる。そのため、一定のレーザパワーでレーザ光を照射した場合、単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度は線速度が速いほど弱くなる。
【0004】
単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度が均一とはならず場所により異なるので、画像にコントラストの差が生じてしまうという問題があった。
【0005】
本発明は、レーベル面の全体にわたり、コントラストが均一な画像を形成することができる光ディスク画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明は、上記の課題を解決するための手段として、以下の構成を備えている。
【0007】
(1)一定の角速度で光ディスクを回転させる回転手段と、
前記光ディスクを前記回転手段により一定の角速度で回転させている間に、この光ディスクに設定された、トラックが形成されていない色素が塗布された層からなる描画エリアへレーザ光を照射することにより画像形成を行うレーザ光照射手段と、
前記光ディスクを前記一定の角速度で回転させた場合に線速度が最大となる光ディスクの描画エリアの最外周において前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度に、画像形成時のレーザパワー強度を設定するレーザパワー設定手段と、
を備え、
前記光ディスクの描画エリア全てに対し、前記レーザパワー設定手段が設定した前記一定のレーザパワー強度のレーザ光照射で画像形成することにより、前記光ディスクの単位面積あたりに照射されるレーザ光の強度が当該光ディスクの半径方向の外周側ほど低くなるように画像形成を行うことを特徴とする。
【0008】
この構成においては、光ディスク画像形成装置は、色素が塗布された層を有する光ディスクを角速度一定で回転させながら、色素が塗布された層からなる描画エリアにレーザ光を照射して画像を形成する際に、光ディスクを前記一定の角速度で回転させた場合に線速度が最大となる光ディスクの描画エリアの最外周においてその色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度のレーザ光を描画エリア全体にわたって照射して画像を形成する。したがって、光ディスクを角速度一定で回転させると、光ディスクの半径方向の外周側ほど線速度が速くなるが、光ディスクの描画エリアの最外周において色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度のレーザ光を描画エリア全体にわたって照射するので、ほこりや面振れなどの外乱等の影響を受けることなく、常に色素の変色が飽和した、つまりコントラストが一定の画像を形成することができる。また、従来は、光ディスクを角速度一定で回転させると、光ディスクの半径方向の外周側ほど線速度が速くなるため、単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度を均一にするために、光ディスクの半径方向の記録位置が内周部から外周部へ移動するのにつれて、レーザパワーを徐々に強くさせる制御を行っていたが、本発明では、光ディスクの半径方向の位置に応じてレーザパワーを変更することなく、一定のレーザパワー強度のレーザ光を照射して光ディスクの描画面に画像を形成するので、レーザパワーの制御を簡略化できる。
【0009】
(2)前記レーザ光照射手段は、前記光ディスクに設定された情報エリアから前記描画エリアに使用されている色素の情報の読み出しを行い、
前記レーザパワー設定手段は、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度を前記色素の情報に基づいて設定することを特徴とする。
【0010】
この構成においては、光ディスク画像形成装置は、角速度一定で回転させた光ディスクにレーザ光を照射して画像を形成する際に、光ディスクに設定されている情報エリアから描画エリアに使用されている色素の情報を読み出して、その色素の変色が飽和するレーザパワー強度のレーザ光を描画エリア全体にわたって照射して画像を形成する。したがって、光ディスクに使用されている色素に応じて、その色素の変色が飽和する最適なレーザパワー強度のレーザ光を照射して、光ディスクの描画エリア全体にわたってコントラストが一定の画像を形成することができる。
【0011】
(3)前記レーザパワー設定手段は、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度として、光ディスクの描画エリアの最外周においてアシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を設定することを特徴とする。
【0012】
光ディスクの描画エリアに使用されている色素は、アシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度のレーザ光を照射すると、変色が飽和する。また、アシンメトリまたは変調度は、線速度が遅いときにはレーザパワー強度が弱いレーザ光でも飽和状態となるが、線速度を速くすると、そのままのレーザパワー強度では非飽和状態となり、アシンメトリまたは変調度を飽和状態にするためには、レーザパワー強度を強くしなければならない。この構成においては、画像形成時の線速度が最大のとき、すなわち、描画エリアにおける光ディスクの半径方向の最外周側において、レーザ光を照射すると色素の変色が飽和するレーザパワー強度に設定する。したがって、面振れ等の外乱により、描画エリアに照射するレーザパワー強度が変動したとしても、引き続き色素の変色が飽和するレーザパワー強度のレーザ光を照射できるので、その影響を受けることなくコントラストが一定の画像を描画エリアに形成することができる。
【0013】
(4)前記アシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を、前記描画エリアに使用される複数の色素毎に、かつ画像形成時に設定可能な最大線速度毎に、記憶する記憶手段を備え、
前記レーザパワー設定手段は、画像形成時に設定された最大線速度の情報と前記色素の情報とに応じたアシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を前記記憶手段から読み出し、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度として設定することを特徴とする。
【0014】
この構成においては、光ディスク画像形成装置は、光ディスクの情報エリアに記録された描画エリアに使用される色素の情報と、画像形成時の最大線速度の情報と、に対応する、アシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を記憶手段から読み出し、このレーザパワー強度を画像形成時に描画エリアへ照射するレーザ光の色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度に設定する。したがって、画像形成時の条件に応じて、適切なレーザパワー強度のレーザ光を照射して、光ディスクの描画エリアに画像を形成することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明の光ディスク画像形成装置は、光ディスクに形成する画像のコントラストを全面にわたって一定に保つことができる。また、従来のように、光ディスクの半径方向の位置に応じてレーザパワーを変更することなく、光ディスクの描画面に画像を形成できるので、レーザパワーの制御を簡略化できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る光ディスク画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。
【図2】画像形成可能な光ディスクのレーベル面の正面概略図及びA−A’断面図である。
【図3】(A)が光ディスクの半径方向の位置−アシンメトリ(β)特性を示すグラフであり、(B)がレーザパワー強度−アシンメトリ(β)特性を示すグラフであり、(C)が光ディスクの半径方向における線速度と単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度とを示すグラフである。
【図4】画像形成時に描画エリアに照射するレーザ光のレーザパワー強度データを格納するテーブルの一例である。
【図5】光ディスク画像形成装置の画像形成動作を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態に係る光ディスク画像形成装置は、一般的な光ディスク記録再生装置が有する光ディスクへの情報記録機能、光ディスクの記録情報読み出し機能に加えて、光ディスクに画像を一定のコントラストで形成する画像形成機能を備えている。
【0018】
まず、光ディスク画像形成装置の構成を説明する。なお、光ディスクのデータ記録面に情報を記録する機能、及び光ディスクのデータ記録面に記録した情報を読み出す機能は、周知技術であるため詳細な説明を省略する。また、以下の説明では、一例としてDVD−Rのレーベル面側に変色層を設けた光ディスクに画像を形成する場合について説明するが、本発明はこれに限るものではなく、他の種類の記録型光ディスクにも画像を形成できる。
【0019】
<光ディスク画像形成装置の構成>
図1は、本発明の実施形態に係る光ディスク画像形成装置の概略構成を示すブロック図である。図1に示すように、光ディスク画像形成装置10は、光ピックアップ100、スピンドルモータ130、回転検出器132、RF(Radio Frequency)アンプ134、デコーダ136、サーボ回路138、ステッピングモータ140、モータドライバ142、インタフェース150、バッファメモリ152、エンコーダ154、ストラテジ回路156、フレームメモリ158、データ変換器160、レーザパワー自動制御(Automatic_Laser Power Control:ALPC)回路162、レーザドライバ164、及び制御部170を備えている。光ディスク画像形成装置10は、インタフェース150を介してホストコンピュータ300に接続されている。また、光ディスク画像形成装置10は、CAV(Constant Angular Velocity)方式で光ディスク200に対して画像形成を行う。さらに、光ディスク画像形成装置10は、DVD系及びCD系の再生専用型・追記型・書換型の各種の光ディスクに対して、データの記録(再生専用型を除く。)・再生や、画像形成を行うことができる。
【0020】
スピンドルモータ130は、図外の保持機構で保持した光ディスク200を回転させる。
【0021】
回転検出器132は、スピンドルモータ130の回転速度に応じた周波数の信号FGを出力する。
【0022】
光ピックアップ100は、レーザダイオード、対物レンズなどの複数のレンズ、トラッキングサーボ機構、フォーカスサーボ機構などを備えており、回転中の光ディスク200に対して、レンズで集光させたレーザ光を照射する。
【0023】
ステッピングモータ140は、その回転によって光ピックアップ100を、光ディスク200の半径方向に移動させる。
【0024】
モータドライバ142は、制御部170から指示された方向及び移動量だけ光ピックアップ100を移動させる駆動信号を、ステッピングモータ140へ出力して、スレッド制御を行う。
【0025】
RFアンプ134は、光ピックアップ100から出力された受光信号Rvを増幅して、増幅後の信号をデコーダ136及びサーボ回路138へ出力する。
【0026】
デコーダ136は、光ディスク200の記録面を再生して、光ディスク200に記録された情報を読み出す場合には、光ピックアップ100から出力される受光信号Rvは、8/16変調されているので、これを復調して制御部170へ出力する。
【0027】
サーボ回路138は、信号FGによって検出されるスピンドルモータ130の回転速度が、制御部170から指示された角速度となるようにフィードバック制御(回転制御)を行う。また、サーボ回路138は、上記の回転制御に加えて、光ピックアップ100に対するトラッキング制御(トラッキングサーボ)及びフォーカス制御(フォーカスサーボ)を行う。
【0028】
制御部170は、詳細な構成についてROM171のみ図示しているが、他にCPU・RAMなどを備えた構成であり、ROM171に格納されたプログラムに従って不図示のCPUが各部を操作して、光ディスク200の記録面に対する情報記録や、光ディスク200のレーベル面や記録面に対する画像形成を行う。また、後述するように、光ディスク200に対して画像を形成する際に、ROM171に格納された補正パラメータに基づいてサーボ回路138やALPC回路162へ信号を出力して、レーザパワーまたはフォーカスゲインを補正する。
【0029】
インタフェース(I/F)150は、ホストコンピュータ300から供給される制御信号や情報を光ディスク画像形成装置10が受け取るためのインタフェースである。
【0030】
バッファメモリ152は、ホストコンピュータ300からインタフェース150を介して、光ディスク200の記録面に記録すべき情報(以下、記録データと称する。)が供給されると、この記録データをFIFO(先入れ先出し)形式で記憶する。
【0031】
エンコーダ154は、バッファメモリ152から読み出された記録データを8/16変調し、ストラテジ回路156に出力する。
【0032】
ストラテジ回路156は、エンコーダ154から供給された8/16変調信号に対して時間軸補正処理などを施して、レーザドライバ164へ出力する。
【0033】
フレームメモリ158は、ホストコンピュータ300からインタフェース150を介して、光ディスク200に形成する画像の情報(以下、画像データと称する。)が供給されると、この画像データを蓄積する。この画像データは、円盤状の光ディスク200に描画する画像の各画素の濃度を規定する階調データの集合である。
【0034】
データ変換器160は、光ディスク200に画像を形成する際に、フレームメモリ158から読み出した階調データ、及び制御部170から指示された周回数に応じて、レーザ光の強度を、レーザ光を照射すると変色層204が十分に変色する強度であるライトレベル、または、レーザ光を照射しても変色層204が変色しない強度であるサーボレベルを指示する信号に変換してレーザドライバ164へ出力する。
【0035】
ALPC回路162は、光ピックアップ100のレーザダイオードから照射されるレーザ光の強度を制御するためのものである。具体的には、ALPC回路162は、光ピックアップ100のフロントモニターダイオードによって検出されたレーザダイオードの出射光量値が制御部170によって供給される最適レーザパワーの目標値と一致するように、駆動信号Liの電流値を制御する。
【0036】
ここで、本実施形態では、上述したように角速度一定のCAV方式としているので、光ディスク200の外側ほど線速度が速くなる。そこで、制御部170は、データ記録時には、光ピックアップ100が光ディスク200の外側に位置するほど、最適レーザパワーの目標値を高く設定する。一方、制御部170は、画像形成時には、後述するように光ディスク200の変色層204における色素の変色が飽和するレーザパワーの目標値に設定する。
【0037】
レーザドライバ164は、情報記録時には、ストラテジ回路156から供給される変調データに従ってALPC回路162による制御内容を反映させた駆動信号Liを生成して、光ピックアップ100のレーザダイオードに供給する。また、画像形成時には、データ変換器160によって変換されたデータに従って、ALPC回路162による制御内容を反映させた駆動信号Liを生成して、光ピックアップ100のレーザダイオードに供給する。これにより、レーザダイオードによるレーザビームの強度は、制御部170から供給される目標値と一致するようにフィードバック制御される。
【0038】
<光ディスクの構成>
図2は、画像形成可能な光ディスクのレーベル面の正面概略図及びA−A’断面図である。光ディスク200は、図2に示すように、2枚の基材200Kと200Rを貼り合わせた構成のDVD−Rであり、レーベル面側の基材200Rは、レーベル面側から順に、保護層(ポリカーボネート基板)201、情報記録層202、変色層(色素層)204、反射層205、接着層206を順に積層した構造である。また、光ディスク200は、その中心に設けられたセンタホール210の周囲にクランプエリア211が設けられ、さらにその周囲に内周側から順に、情報エリア212、サーボ調整エリア213、描画エリア214が形成されている。
【0039】
なお、記録面側の基材200Kの層構成は、DVD−Rの周知の構成であるため、図示を省略している。また、図2に示した光ディスク200の構造は模式的なものであり、各層、各エリアの寸法比は必ずしも図示した通りではない。
【0040】
保護層201は、ポリカーボネートなどの透明の材料から成り、レーザ光が透過する。
【0041】
情報記録層202は、複数のピットから成るトラックをポリカーボネート基板上に形成した層であり、レーベル面についての情報が記録されている。具体的には、製造メーカを示すコード情報、変色層204に使用されている色素名、及び描画エリア214の開始位置及び終了位置の情報等が記録されている。また、光ディスク200はDVD−Rであるが、別の光ディスク装置が情報記録層202の情報を読み出して誤動作するのを防止するために、情報記録層202には、CD−ROMと同様に、複数のピットによりトラックが形成され、このトラックにCDのサブコーディングのフォーマットを用いて情報が記録されている。また、サブコーディングに用いる情報内容とは異なる情報(レーベル面に関する情報)を記録している。したがって、光ディスク画像形成装置10以外の光ディスク装置では、情報エリア212に記録されている情報を読み出すことができない。
【0042】
変色層204は、濃淡のはっきりした鮮やかな画像が形成できるように、基材200Kに設けられた図外の記録層とは異なる有機色素から成り、データ記録面の不図示の記録層に用いる色素よりも弱いパワーのレーザ光で変色し、その反射率の変化の程度が大きい。
【0043】
反射層205は、アルミなどの金属から成り、レーザ光を反射する。
【0044】
接着層206は、レーベル面側の基材200Rとデータ記録面側の基材200Kとを接着する層である。
【0045】
情報エリア212は、その全域に情報記録層202を含み、前記のように光ディスク200のレーベル面に形成した描画エリア214の開始位置及び終了位置の情報、光ディスク200の変色層に用いた色素の種類の情報等が記録されている。なお、光ディスク200の基材200Rにおいて、トラックが形成されているのは情報エリア212のみであり、他のエリアにはトラックは形成されていない。また、光ディスク200はDVD−Rであるが、情報記録層202に形成されているトラックには、CDに使用するサイズ,ピッチでピットが形成され、また、CDに使用するデータフォーマットでデータ(情報)が記録されている。したがって、情報エリア212に記録されている情報は、通常の光ディスク装置では読み出すことができないようになっている。
【0046】
サーボ調整エリア213は、光ディスク画像形成装置10が描画エリア214に画像を形成する際に、変色層が変化しないレーザパワーのレーザ光を照射し、その戻り光量を測定することで、フォーカスゲインの調整を行うための領域である。なお、サーボ調整エリア213は、必ずしも設けなくても良く、例えば、描画エリア214の領域を少しでも広くしたい場合などには、サーボ調整エリア213を設けなくても良い。この場合には、フォーカスゲインの調整を、情報エリア212で行うようにすると良い。
【0047】
描画エリア214は、光ディスク画像形成装置10が画像を形成する領域である。
【0048】
<光ディスクの変色特性>
光ディスクに画像を形成するために、変色層に照射するレーザ光のパワーや変色層に照射したレーザ光の戻り光の光量は、変色層に使用する色素の種類が異なると、それぞれ異なった値となる。また、角速度一定で回転させた光ディスクにレーザ光を照射して画像形成する場合には、前記のように光ディスクの半径方向の記録位置に応じて、レーザパワーを変化させて単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度を均一にしても、ほこりや面振れ等の外乱により、レーザパワー強度が変動することがある。そこで、本願の発明者らは、変色層の色素の変色について、レーザパワーと、アシンメトリ(β)または変調度と、の関係に着目して、以下のような実験を行った。
【0049】
図3は、(A)が光ディスクの半径方向の位置−アシンメトリ(β)特性を示すグラフであり、(B)がレーザパワー強度−アシンメトリ(β)特性を示すグラフであり、(C)が光ディスクの半径方向における線速度と単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度とを示すグラフである。図3において、P1<P2<P3であり、光ディスクを角速度一定で回転させたときのデータを示しているので、光ディスクの半径方向の位置が大きいほど線速度が速くなる。なお、図3には、パラメータとしてアシンメトリ(β)を示したが、これに代えて、変調度を用いても、図3に示す特性と同様の特性となる。
【0050】
図3(A)に示すように、光ディスクに一定のレーザパワーのレーザ光を照射した場合、光ディスクの半径方向の位置が大きくなるにつれて、アシンメトリ(β)の値は徐々に低下するが、レーザパワーの強度が強いほど、アシンメトリ(β)の値の低下の割合は緩やかとなる。また、レーザパワーがP3の場合には、光ディスクの半径方向の位置にかかわらずアシンメトリ〈β〉の値はほぼ一定となる。
【0051】
アシンメトリ(β)や変調度が一定となる状態では、レーザ光の照射を受けた変色層の色素の変化が完了して安定化し、光ディスクの変色層の色素が完全に変色した状態(色素の変色が飽和した状態)となっていた。また、光ディスクの変色層の色素は、レーザパワーP3のレーザ光が照射されると完全に変色(変化)するので、さらに強いレーザパワーのレーザ光が照射されても、変色層の色素は変色しなかった。
【0052】
図3(B)に示すグラフは、図3(A)に示したグラフのパラメータを入れ替えたものである。このグラフには、光ディスク200の半径方向の位置rが、r=24mm,40mm,58mmの場合について、光ディスクに照射するレーザパワーに対するアシンメトリ(β)の値の変化の状態を示している。図3(B)に示すように、光ディスク200の半径方向の位置rにかかわらず、つまり、線速度にかかわらず、レーザパワーPが大きくなるのに伴い、アシンメトリ(β)の値も大きくなり一定値となる(飽和した)。すなわち、光ディスクの半径方向の位置r=24mmのときにはレーザパワーP2でアシンメトリ(β)が飽和状態となる。しかし、光ディスクの半径方向の位置rにかかわらず、つまり線速度にかかわらず、レーザパワーP3でアシンメトリ(β)の値は飽和状態となる。
【0053】
このように、アシンメトリ(β)または変調度が飽和している状態では、変色層の色素が完全に変色した状態、すなわち変色が飽和した状態であった。そこで、本発明では、画像形成時には、上記のように、光ディスクの半径方向の位置rにかかわらず、つまり光ディスクの描画エリアにおいて線速度が最高速となる半径方向の位置rが最外周の位置において、アシンメトリ(β)の値または変調度が飽和するレーザパワーのレーザ光を照射するように設定する。これにより、図3(C)に示すように、光ディスクの半径方向の外周側ほど線速度が速くなるのに対して、光ディスクの描画エリアに照射するレーザ光のレーザパワー強度は一定値なので、単位面積当たりに照射されるレーザ光の強度は光ディスクの半径方向の外周側ほど低くなる。しかし、線速度にかかわらず、変色層の色素の変色が飽和するレーザパワー強度のレーザ光が照射されるので、光ディスクのレーベル面に対して画像形成中に、面振れ等の外乱によりレーザパワー強度が多少変化しても、その影響を受けることなく、変色層の色素の変色が飽和した状態の画像を形成することができる。すなわち、光ディスクの半径方向の位置にかかわらず、コントラストが一定の画像を形成することができる。
【0054】
光ディスク画像形成装置10には、上記のように、コントラストが一定の画像を光ディスクの描画エリアに形成できるように、光ディスクの変色層に使用される色素の種類や記録線速度(倍速数)に応じて、アシンメトリ(β)または変調度が飽和するレーザパワー強度のデータが格納されたテーブルを、制御部170のROM171が記憶している。このテーブルに格納されたレーザパワー強度のデータは、光ディスク画像形成装置10のメーカが実験により予め求めたものである。
【0055】
図4は、画像形成時に描画エリアに照射するレーザ光のレーザパワー強度データを格納するテーブルの一例である。図4に示すように、ROM171に記憶させているテーブルには、変色層に使用する色素名と、光ディスクに画像を形成する際に設定可能な倍速数(最高線速度)と、に対応するレーザパワーの設定値が格納されている。
【0056】
光ディスク画像形成装置10の制御部170は、光ディスクに画像を形成する際には、光ディスク200の情報エリア212に記録された、光ディスク200の変色層に使用されている色素の種類の情報を読み出す。また、制御部170は、ホストPC300において設定された画像形成時の倍速数(最高線速度)を不図示のRAMから読み出す。そして、これらの情報に基づいてROM171に格納されたテーブルから、その光ディスク200に応じたレーザパワーの設定値の設定値を読み出す。そして、光ディスク画像形成装置10は、これらの値に基づいて、レーザパワーの値を変更する。
【0057】
<光ディスク画像形成装置の画像形成動作>
次に、光ディスク画像形成装置10の画像形成動作について、フローチャートに基づいて説明する。図5は、光ディスク画像形成装置の画像形成動作を説明するためのフローチャートである。ここで、光ディスク画像形成装置10は、周知の画像形成方法で、光ディスク200のレーベル面に画像を形成する。また、一例としてDVD−Rのレーベル面側に変色層を設けた光ディスクに画像を形成する場合について説明する。
【0058】
光ディスク画像形成装置10の制御部170は、サーボ回路138に制御信号を出力して、スピンドルモータ130に光ディスク200を回転させるとともに、ALPC回路162に制御信号を出力して、光ピックアップ100から光ディスク200へ650nmのレーザ光及び780nmのレーザ光を照射させる(s1)。そして、光ディスク200の層構造がDVDであるか否かを確認する(s2)。制御部170は、光ディスク200がDVDの層構造を有していない場合には、CD系の光ディスクに対する処理を行う(s3)。
【0059】
一方、制御部170は、光ディスク200がDVDの層構造を有している場合には、モータドライバ142に制御信号を出力して、ステッピングモータ140により光ピックアップ100を情報エリア212に対向する位置に移動させる。そして、制御部170は、ALPC回路162に制御信号を出力して、光ピックアップ100の図外のレーザダイオードから650nmのレーザ光を照射させて、情報エリア212に記録された情報を読み出して、記録フォーマットを確認する(s4)。制御部170は、情報エリア212に記録されたデータがDVDフォーマットで記録されている場合には(s5)、DVD系の光ディスクに対する処理を行う(s6)。また、制御部170は、情報エリア212に記録された情報がCDフォーマットでもない場合や、情報エリア212にデータが記録されていない場合には(s7)、光ディスク画像形成装置10に対応した画像形成用の光ディスクでないので、処理を終了する。
【0060】
一方、制御部170は、情報エリア212に記録されたデータがCDフォーマットである場合には(s7)、本発明の光ディスク画像形成装置10に対応する光ディスクであるので、制御部170は、モータドライバ142に制御信号を出力して、ステッピングモータ140により光ピックアップ100をサーボ調整エリア213に対向する位置に移動させて、フォーカスゲインを調整する(s8)。続いて、制御部170は、モータドライバ142に制御信号を出力して、ステッピングモータ140により光ピックアップ100を情報エリア212に対向する位置に移動させて、情報エリア212に記録された情報をデコーダ136でデコードして、光ディスク200のレーベル面に形成した描画エリア214の開始位置及び終了位置、光ディスク200の変色層に使用されている色素の種類等の情報を読み出す(s9)。また、制御部170は、ホストPC300において設定された画像形成時の倍速数(最高線速度)を不図示のRAMから読み出す(s10)。そして、制御部170は、ROM171のテーブルから、光ディスク200の変色層に用いた色素の種類、及び画像形成時の倍速数(最高線速度)に応じたレーザパワーの設定値の情報を読み出して、レーザパワー強度をその値に設定する(s11)。例えば、制御部170は、図4に示したように、光ディスク200の変色層にオキソノールが使用され、8倍速で画像を形成する場合には、レーザパワーを38mWに設定する。
【0061】
続いて、制御部170は、モータドライバ142に制御信号を出力して、ステッピングモータ140により光ピックアップ100を描画エリア214の画像形成を開始点に対向する位置に移動させて(s12)、光ディスクを一定速度で回転させながら、光ディスクにステップs11で設定されたレーザパワー強度のレーザ光を照射するとともにフォーカスサーボを行って、ホストコンピュータ300から送られてきた画像データに応じた画像を形成する(s13)。制御部170は、ホストコンピュータ300から送られてきた画像データに応じた画像の形成が完了すると、処理を終了する。
【0062】
<光ディスクの別の構成及び光ディスク画像形成装置の動作>
光ディスク画像形成装置10は、図2に基づいて説明した構成の光ディスク200以外に、以下のような構成の光ディスクにも画像を形成することができる。すなわち、光ディスク画像形成装置10は、情報エリア212(情報記録層202)にグルーブ(案内溝)が形成された光ディスク221、情報エリア212及びサーボ調整エリア213にグルーブが形成された光ディスク222、及び情報エリア212に複数のピットによりトラックが形成され、サーボ調整エリア213にグルーブが形成された光ディスク223に、画像を形成することができる。なお、光ディスク221〜223は、図2に示した光ディスク200とほぼ同様の構成であるため、光ディスク221〜223の図示を省略する。
【0063】
光ディスク221及び222の情報エリア212(情報記録層202)には、複数のピットから成るトラックに代えて、LPP(Land Pre-Pit)方式(DVD−R/RWの場合)やADIP(Address In Pre-Groove )方式(DVD+R/RWの場合)で、DVD−R/RWやDVD+R/RWのデータ記録面のようにグルーブが形成されている。そして、それらグルーブにはDVD−R/RWやDVD+R/RWと同じアドレス情報が存在し、内容の異なるディスク物理情報(レーベル面に関する情報)が、同じフォーマットで記録されている。また、光ディスク222、及び223のサーボ調整エリア213には、光ディスク221の情報エリア212と同様の形式でアドレス情報とレーベル面に関する情報が記録されている。このように、DVD−R/RWやDVD+R/RWのデータ記録面とは異なる情報内容でレーベル面に関する情報が記録されているので、光ディスク画像形成装置10以外の光ディスク装置では、情報エリア212に記録されている情報を読み出しても、その内容を解読することができない。
【0064】
光ディスク画像形成装置10は、光ディスク221や光ディスク222に画像形成を行う場合には、情報エリア212にLPP方式またはADIP方式で記録された情報を読み出して、描画エリア214に画像形成処理を行う。
【0065】
また、光ディスク画像形成装置10は、光ディスク223に画像形成を行う場合には、光ディスク200の場合と同様に情報エリア212の情報を読み出して、描画エリア214に画像形成処理を行う。
【0066】
また、光ディスク画像形成装置10は、光ディスク200や光ディスク221に画像を形成する際には、サーボ調整エリア213に変色層204が変色しないレーザパワーのレーザ光を照射して、フォーカスゲインを調整する。一方、光ディスク画像形成装置10は、光ディスク222,223に画像を形成する際には、サーボ調整エリア213にトラッキングをかけ、変色層204が変色するレーザパワーのレーザ光を照射して、つまりOPCのように試し書きを行って、フォーカスゲインを調整することも可能である。このように、試し書きを行ってフォーカスゲインを調整することで、光ディスクのばらつきにかかわらず、濃淡がはっきりした視認性の良い画像を光ディスクの描画エリアに形成することができる。
【0067】
また、光ディスクのデータ記録面において、例えば半径方向の中間から外周側にかけて描画エリアを設けた場合には、光ディスクにLPP方式またはADIP方式でアドレス情報に加えて、その光ディスクにデータ記録面側の記録層に使用している色素名や、描画エリアの開始位置・終了位置の情報等を記録しておく。光ディスク画像形成装置10は、光ディスクのデータ記録面に画像を形成する場合には、これらの情報を読み出して、レーベル面側に画像を形成する場合と同様に各処理を行うことで、光ディスクのデータ記録面の描画エリアに画像を形成することができる。
【0068】
なお、光ディスク画像形成装置10に対応した光ディスク200の変色層204に使用される色素が1種類の場合には、記録速度とレーザパワー強度を対応づけたテーブルをROM171に記憶させておく。そして、描画時には、変色層204に使用されている色素情報を読み出さずに、画像形成時の最高線速度の情報に基づいて、レーザパワー強度を設定すると良い。
【0069】
また、変色層に使用する色素の種類が増えたときに、ファームウェアの更新により、テーブルを更新できるように構成すると良い。
【符号の説明】
【0070】
10−光ディスク画像形成装置 100−光ピックアップ 130−スピンドルモータ 132−回転検出器 134−RFアンプ 136−デコーダ 138−サーボ回路 140−ステッピングモータ 142−モータドライバ 150−インタフェース 152−バッファメモリ 154−エンコーダ 156−ストラテジ回路 158−フレームメモリ 160−データ変換器 162−ALPC回路(レーザパワー自動制御回路) 164−レーザドライバ 170−制御部 171−ROM 200−光ディスク 200K,200R−基材 201−保護層 202−情報記録層 204−変色層 205−反射層 206−接着層 210−センタホール 211−クランプエリア 212−情報エリア 213−サーボ調整エリア 214−描画エリア 300−ホストコンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一定の角速度で光ディスクを回転させる回転手段と、
前記光ディスクを前記回転手段により一定の角速度で回転させている間に、この光ディスクに設定された、色素が塗布された層からなる描画エリアへレーザ光を照射することにより画像形成を行うレーザ光照射手段と、
前記光ディスクを前記一定の角速度で回転させた場合に線速度が最大となる光ディスクの描画エリアの最外周において前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度に、画像形成時のレーザパワー強度を設定するレーザパワー設定手段と、
を備え、
前記光ディスクの描画エリア全てに対し、前記レーザパワー設定手段が設定した前記一定のレーザパワー強度のレーザ光照射で画像形成することにより、前記光ディスクの単位面積あたりに照射されるレーザ光の強度が当該光ディスクの半径方向の外周側ほど低くなるように画像形成を行うことを特徴とする光ディスク画像形成装置。
【請求項2】
前記レーザ光照射手段は、前記光ディスクに設定された情報エリアから前記描画エリアに使用されている色素の情報の読み出しを行い、
前記レーザパワー設定手段は、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度を前記色素の情報に基づいて設定する請求項1に記載の光ディスク画層形成装置。
【請求項3】
前記レーザパワー設定手段は、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度として、光ディスクの描画エリアの最外周においてアシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を設定する請求項1または2に記載の光ディスク画像形成装置。
【請求項4】
前記アシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を、前記描画エリアに使用される複数の色素毎に、かつ画像形成時に設定可能な最大線速度毎に、記憶する記憶手段を備え、
前記レーザパワー設定手段は、画像形成時に設定された最大線速度の情報と前記色素の情報とに応じたアシンメトリまたは変調度が飽和状態となるレーザパワー強度を前記記憶手段から読み出し、前記色素の変色が飽和する一定のレーザパワー強度として設定する請求項3に記載の光ディスク画像形成装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−84226(P2012−84226A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−17574(P2012−17574)
【出願日】平成24年1月31日(2012.1.31)
【分割の表示】特願2005−288743(P2005−288743)の分割
【原出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000004075)ヤマハ株式会社 (5,930)
【出願人】(000005201)富士フイルムホールディングス株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】